(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183863
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】配賦処理実行装置、配賦処理実行方法および配賦処理実行プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20221206BHJP
【FI】
G06Q40/00 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091369
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野見山 真成
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB64
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原価費目毎に異なる配賦の条件及び配賦に用いる計算式を考慮して配賦処理を実行する配賦処理実行装置、配賦処理実行方法並びに配賦処理実行プログラムを提供する。
【解決手段】製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行装置100であって、制御部及び記憶部を備える。制御部は、集計対象レコード中の原価費目と紐付く集計単位識別データ及び計算式取得用データを取得する集計単位取得部と、集計対象レコード中の製造経費を集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計部と、計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、取得した配賦率算出用計算式を用いて配賦率を算出する配賦率算出部と、製造経費集計手段で集計した製造経費を配賦率を用いて集計単位で集計対象レコード中の原価費目へと配賦する配賦処理実行部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部および記憶部を備え、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行装置であって、
前記記憶部には、
原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、
前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、
前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、
が格納されており、
前記制御部は、
前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得手段と、
前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得手段で取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計手段と、
前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得手段で取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出手段と、
前記製造経費集計手段で集計した前記製造経費を、前記配賦率算出手段で算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行手段と、
を備えること、
を特徴とする配賦処理実行装置。
【請求項2】
前記配賦率算出用計算式として、配賦係数に配賦基準を乗じる式が設定されており、
前記記憶部には、
前記下位組織識別データと、前記製造物の1回の製造あたりの製造量である単位製造量と、当該1回の製造に要したエネルギー量であって前記原価費目に関するものと、を含む配賦係数マスタと、
前記下位組織識別データと、前記製造物の製造予定数と、を含む製造予定データと、
が更に格納されており、
前記配賦率算出手段は、
前記配賦係数マスタ中の前記エネルギー量を前記集計単位で集計した値および前記配賦係数マスタ中の前記単位製造量を前記集計単位で集計した値に基づいて、前者の値を後者の値で除することにより前記配賦係数を算出し、前記製造予定データ中の前記製造予定数を前記集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出し、当該算出した配賦係数に当該算出した配賦基準を乗じることで前記配賦率を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の配賦処理実行装置。
【請求項3】
前記配賦率算出用計算式として、配賦基準が設定されており、
前記記憶部には、
前記下位組織識別データと、前記製造物の製造予定数と、を含む製造予定データ
が更に格納されており、
前記配賦率算出手段は、
前記製造予定データ中の前記製造予定数を前記集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出し、当該算出した配賦基準を前記配賦率とすること、
を特徴とする請求項1に記載の配賦処理実行装置。
【請求項4】
制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行方法であって、
前記記憶部には、
原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、
前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、
前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、
が格納されており、
前記制御部で実行される、
前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得ステップと、
前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得ステップで取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計ステップと、
前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得ステップで取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出ステップと、
前記製造経費集計ステップで集計した前記製造経費を、前記配賦率算出ステップで算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行ステップと、
含むこと、
を特徴とする配賦処理実行方法。
【請求項5】
制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行プログラムであって、
前記記憶部には、
原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、
前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、
前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、
が格納されており、
前記制御部に実行させるための、
前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得ステップと、
前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得ステップで取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計ステップと、
前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得ステップで取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出ステップと、
前記製造経費集計ステップで集計した前記製造経費を、前記配賦率算出ステップで算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行ステップと、
含むこと、
を特徴とする配賦処理実行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配賦処理実行装置、配賦処理実行方法および配賦処理実行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、間接製造費用の新たな配賦条件に応じた製品別の直接製造費用を新たな配賦条件に応じた収集プログラムを新規に作成することなく収集し、新たな配賦条件に応じた間接製造費用をタイムリーに配賦することができる配賦処理システム及び当該システムに使用する配賦処理プログラムが開示されている(特許文献1の0006段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、製造業界等において原価管理を行う際には、製造の過程で発生した製造経費を所定の組織単位で(例えば、原価グループ単位や原価部門単位等)で所定の原価費目へと配賦する必要がある。
【0005】
しかしながら、まず、発生した製造経費をどの組織単位で集計するか、また、どのような計算式を用いて配賦の計算を行うか、そして、どの組織単位で配賦するかは、例えば、電力費や部門一律費等の原価費目によって異なることが多い。つまり簡単にいうと、配賦の条件(製造経費集計の組織単位や配賦先の組織単位)および配賦に用いる計算式は、原価費目毎に異なるため、配賦処理を自動化することは、上記特許文献1に記載の技術ではできていなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、原価費目毎に異なる配賦の条件および配賦に用いる計算式を考慮して、配賦処理を実行することができる配賦処理実行装置、配賦処理実行方法および配賦処理実行プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る配賦処理実行装置においては、制御部および記憶部を備え、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行装置であって、前記記憶部には、原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、が格納されており、前記制御部は、前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得手段と、前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得手段で取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計手段と、前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得手段で取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出手段と、前記製造経費集計手段で集計した前記製造経費を、前記配賦率算出手段で算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行手段と、を備えること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る配賦処理実行装置においては、前記配賦率算出用計算式として、配賦係数に配賦基準を乗じる式が設定されており、前記記憶部には、前記下位組織識別データと、前記製造物の1回の製造あたりの製造量である単位製造量と、当該1回の製造に要したエネルギー量であって前記原価費目に関するものと、を含む配賦係数マスタと、前記下位組織識別データと、前記製造物の製造予定数と、を含む製造予定データと、が更に格納されており、前記配賦率算出手段は、前記配賦係数マスタ中の前記エネルギー量を前記集計単位で集計した値および前記配賦係数マスタ中の前記単位製造量を前記集計単位で集計した値に基づいて、前者の値を後者の値で除することにより前記配賦係数を算出し、前記製造予定データ中の前記製造予定数を前記集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出し、当該算出した配賦係数に当該算出した配賦基準を乗じることで前記配賦率を算出すること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る配賦処理実行装置においては、前記配賦率算出用計算式として、配賦基準が設定されており、前記記憶部には、前記下位組織識別データと、前記製造物の製造予定数と、を含む製造予定データが更に格納されており、前記配賦率算出手段は、前記製造予定データ中の前記製造予定数を前記集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出し、当該算出した配賦基準を前記配賦率とすること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る配賦処理実行方法においては、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行方法であって、前記記憶部には、原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、が格納されており、前記制御部で実行される、前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得ステップと、前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得ステップで取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計ステップと、前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得ステップで取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出ステップと、前記製造経費集計ステップで集計した前記製造経費を、前記配賦率算出ステップで算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行ステップと、含むこと、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る配賦処理実行プログラムにおいては、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、製造物を製造するのにかかった製造経費を所定の組織単位で原価費目へと配賦する配賦処理実行プログラムであって、前記記憶部には、原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データと、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データと、前記原価費目と、前記製造経費と、を有する集計対象レコードを複数含む集計対象データと、前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データと、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データと、を含む集計単位設定マスタと、前記計算式取得用データと、前記配賦率算出用計算式と、を含む計算式設定マスタと、が格納されており、前記制御部に実行させるための、前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得ステップと、前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得ステップで取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計ステップと、前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得ステップで取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出ステップと、前記製造経費集計ステップで集計した前記製造経費を、前記配賦率算出ステップで算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行ステップと、含むこと、を特徴とする配賦処理実行プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原価費目毎に異なる配賦の条件および配賦に用いる計算式を考慮して、配賦処理を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、配賦処理実行装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、原価グループおよびこれに属する原価部門の階層構造の一例を示すイメージ図である。
【
図3】
図3は、製造経費の集計の一例を示すイメージ図である。
【
図4】
図4は、製造経費の集計の一例を示すイメージ図である。
【
図5】
図5は、原価費目と配賦パターンの紐付けの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、原価費目「電力費」についての配賦率の算出の一例を示すイメージ図である。
【
図7】
図7は、原価費目「労務費」についての配賦率の算出の一例を示すイメージ図である。
【
図8】
図8は、部門単価算出の一例を示すイメージ図である。
【
図9】
図9は、補助部門から直接部門への配賦の一例を示すイメージ図である。
【
図10】
図10は、原価費目配賦率計算マスタに含まれる項目の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、配賦パターンマスタに含まれる項目の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、配賦係数マスタに含まれる項目の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、製造経費原価部門集計対象データ、原価費目配賦率計算マスタおよび配賦パターンマスタの設定例を示す図である。
【
図14】
図14は、配賦係数マスタおよび生産予定データの設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る配賦処理実行装置、配賦処理実行方法および配賦処理実行プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
[1.概要]
プラントで製造物を製造する業界(化学製造業等)においては、プラント製造中にユーティリティ費用(原価償却費、高熱費および水道費等の製造経費)が発生する。このような業界においては、工場全体の費用を工場内のコストセンター(化成品、溶剤プラントおよび特殊活性剤等)毎に配賦し、部門単価を算出する必要がある。
【0016】
しかしながら、前記部門単価を算出するための配賦の計算式として、企業毎に独自のものを使用していることが多いため、前記部門単価をシステムで計算することは従来難しかった。また、事業再編や来期の事業計画等により計算プロセスが変わるという事実も、前記部門単価をシステムで計算することが難しい理由の一つであった。
【0017】
このため、従来においては、前記部門単価をシステムで計算せず、システム外で手動により計算していた。
【0018】
そこで、本実施形態においては、例えば、製造経費を品目別に原価算入するための配賦率算出をシステム化した。具体的には、製造経費の集計単位を原価グループ単位と原価部門単位のどちらにするかを原価費目毎に選択可能とし、また、配布の計算式も原価費目毎に設定可能とした。要するに、本実施形態においては、原価グループを工場と捉えるような設定をすることで、工場毎の配賦と原価部門毎の配賦をコントロールできるようにした。
【0019】
以上をまとめると、製造にかかるユーティリティ費用(製造経費)の配賦は、原価費目によって配賦の考え方が異なるため、本実施形態においては、製造経費の集計単位や配賦の計算方法を原価費目別に設定できるようにすることで、より精度の高い製造原価を捉えることができるようにした。言い換えると、配賦パターン別の計算定義と、配賦係数の設定と、配賦対象の原価費目別に設定された配賦パターンと、に基づいて、経費の配賦計算を行えるようにした。
【0020】
これにより、本実施形態においては、例えば、以下の1~3の効果を奏する。
1.システムでの配賦計算が可能となるため、原価計算処理の早期化が可能となった。
2.配賦計算を柔軟にできるようになるため、各製品の費目別原価を正確に捉えることが可能となった。
3.より正確に費目別原価を捉えることにより、コストが過大な部分を把握しやすくなった。
以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0021】
[2.構成]
本実施形態に係る配賦処理実行装置100の構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、配賦処理実行装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
配賦処理実行装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、配賦処理実行装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0023】
配賦処理実行装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。配賦処理実行装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0024】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、配賦処理実行装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、配賦処理実行装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0025】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0026】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0027】
記憶部106は、例えば、集計対象データとしての製造経費原価部門集計対象データ106a(以下、単に「集計対象データ106a」という。)と、集計単位設定マスタとしての原価費目配賦率計算マスタ106b(以下、単に「配賦率計算マスタ106b」という。)と、計算式設定マスタとしての配賦パターンマスタ106cと、配賦係数マスタ106dと、製造予定データとしての生産予定データ106eと、を備えている。
【0028】
集計対象データ106aは、集計対象となる製造経費を管理するためのデータである。集計対象データ106aは、
図13に示すように、例えば、会計年月と、原価管理上の上位の組織を識別するための上位組織識別データ(原価グループ)と、前記上位の組織に属する原価管理上の下位の組織を識別するための下位組織識別データ(原価部門コード)と、原価費目(原価費目区分)と、製造物を製造するのにかかった前記製造経費(製造経費金額)と、等を含む。
【0029】
配賦率計算マスタ106bは、前記原価費目毎に、前記製造経費の集計単位を設定するためのマスタである。配賦率計算マスタ106bは、
図10および
図13に示すように、例えば、前記原価費目と、前記製造経費をどの組織単位で集計するかを識別するための集計単位識別データ(集計単位)と、前記製造経費を前記原価費目へと配賦する際に用いる配賦率を算出するための配賦率算出用計算式を取得するための計算式取得用データ(配賦パターン)と、等を含む。
【0030】
配賦パターンマスタ106cは、前記原価費目毎に、配賦の計算基準(計算式)を設定するためのマスタである。配賦パターンマスタ106cは、
図11および
図13に示すように、例えば、前記計算式取得用データ(配賦パターン)と、前記配賦率算出用計算式(計算区分)と、配賦係数区分と、配賦基準区分と、等を含む。
【0031】
配賦係数マスタ106dは、各品目について単位製造数当たりの諸経費を格納しているマスタであり、例えば、部門単価算出時に1L当たりの数値に換算して使用する。前記単位製造数とは、1回の製造行為で生産される数量であり、1バッチと表現することもある。前記1L当たりの数値は、その品目の在庫管理単位であり、例えば化学業界ではLで在庫管理することが多い。
【0032】
配賦係数マスタ106dは、
図14に示すように、例えば、前記会計年月と、前記下位組織識別データ(原価部門)と、品目識別データ(品目)と、前記製造物の1回の製造あたりの製造量である単位製造量(単位製造数)と、当該1回の製造に要したエネルギー量であって前記原価費目に関するもの(単位数量2)と、等を含む。
図14に示す配賦係数マスタ106dでは、前記原価費目が「電力費」である場合のマスタ設定例を示しており、例えば1行目のレコード(品目S1)は、1回の製造あたりで2,000の電力を使用して100Lの製造物を製造することを意味している。
【0033】
配賦係数マスタ106dは、
図12に示すように、例えば、更に、前記原価費目(原価区分)、工程番号、製造指示区分、単位作業時間および設備稼働時間等を含んでいてもよい。
【0034】
生産予定データ106eは、
図14に示すように、例えば、前記会計年月と、前記下位組織識別データ(原価部門)と、前記品目識別データ(品目)と、前記製造物の製造予定数(生産予定数)と、等を含む。
【0035】
制御部102は、配賦処理実行装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0036】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)前記集計単位設定マスタから、前記集計対象レコード中の前記原価費目と紐付く集計単位識別データおよび計算式取得用データを取得する集計単位取得手段としての集計単位取得部102aと、(2)前記集計対象レコード中の前記製造経費を、前記集計単位取得手段で取得した集計単位識別データで特定される集計単位で集計する製造経費集計手段としての製造経費集計部102bと、(3)前記計算式設定マスタから、前記集計単位取得手段で取得した計算式取得用データと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて前記配賦率を算出する配賦率算出手段としての配賦率算出部102cと、(4)前記製造経費集計手段で集計した前記製造経費を、前記配賦率算出手段で算出した配賦率を用いて、前記集計単位で前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する配賦処理実行手段としての配賦処理実行部102dと、を備えている。
【0037】
集計単位取得部102aは、前記原価費目と前記集計単位と前記配賦パターンとを含む配賦率計算マスタ106b(
図13参照)から、前記原価グループと前記原価部門と前記原価費目と前記製造経費とを有する集計対象レコード(
図13参照)中の原価費目と紐付く集計単位および配賦パターンを取得する。
【0038】
製造経費集計部102bは、前記集計対象レコード(
図13参照)中の製造経費を、集計単位取得部102aで取得した集計単位で集計する。
【0039】
配賦率算出部102cは、前記配賦パターンと前記配賦率算出用計算式(計算区分)とを含む配賦パターンマスタ106c(
図13参照)から、集計単位取得部102aで取得した配賦パターンと紐付く配賦率算出用計算式を取得し、当該取得した配賦率算出用計算式を用いて配賦率を算出する。
【0040】
前記配賦率算出用計算式(計算区分)が、「配賦係数×配賦基準」である場合、配賦率算出部102cは、次のようにして配賦率を算出する。すなわち、配賦率算出部102cは、配賦係数マスタ106d(
図14参照)中の前記単位数量を、集計単位取得部102aで取得した集計単位で集計した値および配賦係数マスタ106d(
図14参照)中の前記単位製造数を、集計単位取得部102aで取得した集計単位で集計した値に基づいて、前者の値を後者の値で除することにより前記配賦係数を算出し、一方で、生産予定データ106e(
図14参照)中の前記生産予定数を、集計単位取得部102aで取得した集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出する。そして、配賦率算出部102cは、当該算出した配賦係数に当該算出した配賦基準を乗じることで前記配賦率を算出する。
【0041】
前記配賦率算出用計算式が、「配賦基準」である場合、配賦率算出部102cは、次のようにして配賦率を算出する。すなわち、配賦率算出部102cは、生産予定データ106e(
図14参照)中の前記生産予定数を、集計単位取得部102aで取得した集計単位で集計することにより前記配賦基準を算出し、当該算出した配賦基準を前記配賦率とする。
【0042】
配賦処理実行部102dは、製造経費集計部102bで集計した前記製造経費を、配賦率算出部102cで算出した配賦率を用いて、集計単位取得部102aで取得した集計単位で、前記集計対象レコード中の前記原価費目へと配賦する。
【0043】
[3.機能概要]
本項目では、本実施形態に係る処理の機能概要を、
図2~
図9を用いて説明する。
【0044】
ここで、本願明細書および本願図面において、財務会計組織とは、製造経費の計上部門を差し、原価管理組織とは、製造原価の認識部門を指す。前記財務会計組織は、実組織に近しい組織体系であり様々な製品の製造を行うが、原価計算を行う際は、例えば、化成品、溶剤プラントおよび特殊活性剤等の製品の種類に応じて配賦処理を行う必要がある。このため、配賦処理を行う際は、前記財務会計組織で計上した製造経費を前記原価管理組織毎に割り振って配賦処理を行うことが必要である。以下、当該配賦処理に至るまでに本実施形態で行われる処理について、機能概要1~4に項目を分けて説明する。
【0045】
(1)機能概要1
まず、費目毎の製造経費が、原価グループ単位または原価部門単位で集計される。製造経費の集計単位は、原価費目配賦率計算マスタ106bにおいて設定可能である。[3.機能概要]においては、
図2に示すように、前記原価グループが、A工場であり、前記原価部門が、A工場に属する事業部門A~Cであるという設定で説明を進める。
【0046】
本段落では、
図3の例について説明する。A工場共通で発生した電力料が、原価費目「電力費」で、前記原価グループであるA工場に集計される。製造部門で発生した賃金が、原価費目「直接労務費」として、前記原価部門である事業部門Aおよび事業部門Bに集計される。設計部門および購買部門で発生した賃金が、原価費目「間接労務費」として、前記原価部門である事業部門Cに集計される。
【0047】
本段落では、
図4の例について説明する。製造部門で発生した福利厚生費が、原価費目「直接労務費」で、前記原価部門である事業部門Aおよび事業部門Bに集計される。設計部門および購買部門で発生した福利厚生費が、原価費目「間接労務費」として、前記原価部門である事業部門Cに集計される。
【0048】
(2)機能概要2
次に、原価費目毎に配賦パターンの紐付けが行われる。当該紐付けは、原価費目配賦率計算マスタ106bにおいて設定可能である。
【0049】
当該紐付けの具体例としては、例えば、
図5に示すように、原価費目「電力費」に対して配賦パターン「電力費」を紐付けるという設定、原価費目「直接労務費」に対して配賦パターン「作業時間」を紐付けるという設定、および、原価費目「直接設備費」に対して配賦パターン「設備稼働時間」を紐付けるという設定等を行うことができる。
【0050】
(3)機能概要3
次に、配賦率が算出される。当該配賦率は、例えば、配賦係数マスタ106dに基づいて算出される。
【0051】
図6の左側に示すように、前記原価グループであるA工場の単位での原価費目「電力費」についての配賦率は、例えば、「電力量(1バッチあたり)÷単位製造数×生産予定数」という計算式により算出される。そして、当該算出された配賦率は、
図6の右側に示すように、前記原価グループであるA工場に属する前記原価部門である事業部門Aおよび事業部門Bに一律にセットされる。
【0052】
図7の左側に示すように、前記原価部門である事業部門Aの単位での原価費目「労務費」についての配賦率および前記原価部門である事業部門Bの単位での原価費目「労務費」についての配賦率は、共に、例えば、「単位作業時間÷単位製造数×生産予定数」という計算式により算出される。そして、当該算出された配賦率は、それぞれ、
図7の右側に示すように、前記原価部門である事業部門Aおよび事業部門Bにセットされる。
【0053】
そして、配賦率の算出が完了すると、(1)で集計した製造経費を本項目(2)で算出した配賦率で除することにより、部門単価が算出される。部門単価算出のイメージを、
図8に示す。
【0054】
(4)機能概要4
最後に、
図9に示すように、(3)において算出した部門単価が、補助部門から直接部門へと配賦される。
【0055】
[4.機能詳細]
本項目では、本実施形態に係る処理の機能詳細を説明する。本項目では、製造経費から原価費目「電力費」への配賦処理および製造経費から原価費目「部門一律費」への配賦処理について、項目を分けて説明する。
【0056】
なお、本項目における説明の前提として、集計対象データ106a、配賦率計算マスタ106bおよび配賦パターンマスタ106cは、
図13に示す内容で予め設定されており、また、配賦係数マスタ106dおよび生産予定データ106eは、
図14に示す内容で予め設定されているものとする。
【0057】
[4-1.製造経費から原価費目「電力費」への配賦処理]
本項目では、製造経費から原価費目「電力費」への配賦処理により部門単価を算出する例について説明する。本項目では、原価費目「電力費」への配賦処理であるため、
図13の集計対象データ106aにおける1~3行目のレコード(原価費目区分=電力費)を対象として配賦処理が実行される。なお、本項目で説明する機能詳細1~4は、それぞれ、[3.機能概要]で説明した機能概要1~4に対応している。
【0058】
(1)機能詳細1
最初に、費目毎の製造経費が原価グループへと集計される。以下、具体的な処理を説明する。
【0059】
まず、集計単位取得部102aは、
図13の配賦率計算マスタ106bから、
図13の集計対象データ106aにおける1~3行目のレコード中の原価費目「電力費」と紐付く情報として、集計単位「原価グループ」および配賦パターン「電力量」を取得する。
【0060】
次に、製造経費集計部102bは、
図13の集計対象データ106aにおける1~3行目のレコード中の製造経費を、集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価グループ」で集計する。すなわち、製造経費集計部102bは、原価グループAについては、製造経費を10,000+20,000=30,000と集計し、原価グループBについては、製造経費を50,000と集計する。
【0061】
(2)機能詳細2
次に、原価費目毎に、配賦パターンとの紐付けが行われる。(1)で説明したように、原価費目「電力費」は、配賦パターン「電力量」と紐付く。
【0062】
(3)機能詳細3
次に、配賦率が算出される。以下、具体的な処理を説明する。
【0063】
配賦率算出部102cは、
図13の配賦パターンマスタ106cから、集計単位取得部102aで取得した配賦パターン「電力量」と紐付く情報として、計算区分「配賦係数×配賦基準」を取得する。当該取得した計算区分が、配賦率を算出するための計算式である。
【0064】
ここで、
図13の配賦パターンマスタ106cを参照すると、配賦係数区分として「単位数量2」が設定されている。この場合、配賦率算出部102cは、
図14の配賦係数マスタ106d中の単位数量2(電力量を意味する)を集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価グループ」で集計した値および
図14の配賦係数マスタ106d中の単位製造数(Lを意味する)を集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価グループ」で集計した値に基づいて、前者の値を後者の値で除することにより、1Lあたりの電力量へと変換し、配賦係数を算出する。具体的には、配賦率算出部102cは、原価グループAの配賦係数を「(2,000+3,000+5,000+3,000)÷(100+150+250+100)」≒21と算出し、また、原価グループBの配賦係数を「(5,000+9,000)÷(100+300)」=35と算出する。
【0065】
一方で、
図13の配賦パターンマスタ106cを参照すると、配賦基準区分として「製造数」が設定されている。この場合、配賦率算出部102cは、
図14の生産予定データ106e中の生産予定数を集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価グループ」で集計する。具体的には、配賦率算出部102cは、原価グループAの配賦基準を「30+10+10+20」=70と算出し、また、原価グループBの配賦基準を「10+40」=50と算出する。
【0066】
そして、配賦率算出部102cは、「配賦係数×配賦基準」という計算式に、前々段落と前段落で算出した値を代入することで、各グループの配賦率を算出する。具体的には、配賦率算出部102cは、原価グループAの配賦率を「21×70」=1,470と算出し、また、原価グループBの配賦率を「35×50」=1,750と算出する。
【0067】
以上の処理により、各グループの配賦率が算出されたため、配賦処理実行部102dは、各グループの原価費目「電力費」についての部門単価を算出する。すなわち、配賦処理実行部102dは、原価グループAの原価費目「電力費」についての部門単価を「(1)において製造経費集計部102bで集計した製造経費30,000÷配賦率算出部102cで算出した配賦率1,470」≒20と算出し、また、原価グループBの原価費目「電力費」についての部門単価を「(1)において製造経費集計部102bで集計した製造経費50,000÷配賦率算出部102cで算出した配賦率1,750」≒28と算出する。
【0068】
(4)機能詳細4
最後に、補助部門から直接部門へと配賦される。すなわち、前段落で求めた部門単価は、原価グループ単位での部門単価であるため、これが原価部門へと配賦される。この際、同一原価グループ内の原価部門は、同一の部門単価となる。具体的には、原価部門A01(原価グループAに属する)の部門単価は20となり、原価部門A02(原価グループAに属する)の部門単価も同じく20となり、一方で、原価部門B01(原価グループBに属する)の部門単価は28となる。
【0069】
[4-2.製造経費から原価費目「部門一律費」への配賦処理]
本項目では、製造経費から原価費目「部門一律費」への配賦処理により部門単価を算出する例について説明する。本項目では、原価費目「部門一律費」への配賦処理であるため、
図13の集計対象データ106aにおける4~6行目のレコード(原価費目区分=部門一律費)を対象として配賦処理が実行される。なお、本項目で説明する機能詳細1~4は、それぞれ、[3.機能概要]で説明した機能概要1~4に対応している。
【0070】
(1)機能詳細1
最初に、費目毎の製造経費が原価部門へと集計される。以下、具体的な処理を説明する。
【0071】
まず、集計単位取得部102aは、
図13の配賦率計算マスタ106bから、
図13の集計対象データ106aにおける4~6行目のレコード中の原価費目「部門一律費」と紐付く情報として、集計単位「原価部門」および配賦パターン「製造数」を取得する。
【0072】
次に、製造経費集計部102bは、
図13の集計対象データ106aにおける4~6行目のレコード中の製造経費を、集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価部門」で集計する。すなわち、製造経費集計部102bは、原価部門A01については製造経費を20,000と集計し、原価部門A02については製造経費を40,000と集計し、原価部門B01については製造経費を50,000と集計する。
【0073】
(2)機能詳細2
次に、原価費目毎に、配賦パターンとの紐付けが行われる。(1)で説明したように、原価費目「部門一律費」は、配賦パターン「製造数」と紐付く。
【0074】
(3)機能詳細3
次に、配賦率が算出される。以下、具体的な処理を説明する。
【0075】
配賦率算出部102cは、
図13の配賦パターンマスタ106cから、集計単位取得部102aで取得した配賦パターン「製造数」と紐付く情報として、計算区分「配賦基準」を取得する。当該取得した計算区分が、配賦率を算出するための計算式である。
【0076】
図13の配賦パターンマスタ106cを参照すると、配賦基準区分として「製造数」が設定されている。この場合、配賦率算出部102cは、
図14の生産予定データ106e中の生産予定数を集計単位取得部102aで取得した集計単位「原価部門」で集計する。具体的には、配賦率算出部102cは、原価部門A01の配賦基準を「30+10+10」=50と算出し、原価部門A01の配賦基準を「30+10+10」=50と算出し、原価部門A02の配賦基準を20と算出し、原価部門B01の配賦基準を「10+40」=50と算出する。
【0077】
ここで、配賦率を算出するための計算式は、前述のとおり、「配賦基準」であるため、前段落で算出した配賦基準が、そのまま配賦率となる。つまり、原価部門A01の配賦率は50となり、原価部門A02の配賦率は20となり、原価部門B01の配賦率は50となる。
【0078】
以上の処理により、各部門の配賦率が算出されたため、配賦処理実行部102dは、各部門の原価費目「部門一律費」についての部門単価を算出する。すなわち、配賦処理実行部102dは、原価部門A01の原価費目「部門一律費」についての部門単価を「(1)において製造経費集計部102bで集計した製造経費20,000÷配賦率算出部102cで算出した配賦率50」=400と算出し、また、原価部門A02の原価費目「部門一律費」についての部門単価を「(1)において製造経費集計部102bで集計した製造経費40,000÷配賦率算出部102cで算出した配賦率20」=200と算出し、そして、原価部門B01の原価費目「部門一律費」についての部門単価を「(1)において製造経費集計部102bで集計した製造経費50,000÷配賦率算出部102cで算出した配賦率50」=1,000と算出する。
【0079】
(4)機能詳細4
(3)で既に各部門(直接部門)についての部門単価が算出されているため、補助部門から直接部門への配賦はなされない。
【0080】
[5.本実施形態のまとめ]
このように、本実施形態に係る配賦処理実行装置100によれば、最初の設定段階で配賦率計算マスタ106bにおいて前記集計単位および前記配賦パターンを前記原価費目毎に設定しておけば、原価費目毎に異なる配賦の条件および配賦に用いる計算式を考慮して、配賦処理を実行することができる。この結果、システム外で配賦の計算を行う必要がなくなる。
【0081】
[6.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0084】
[7.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0085】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0086】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0087】
また、配賦処理実行装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0088】
例えば、配賦処理実行装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて配賦処理実行装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0089】
また、このコンピュータプログラムは、配賦処理実行装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0090】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0091】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0092】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0093】
また、配賦処理実行装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、配賦処理実行装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0094】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば、生産の過程においてユーティリティ費用(原価償却費、高熱費および水道費等の製造経費)が発生する業界において有用であり、特に、化学品製造業界、食品業界および機械製造業界においては極めて有用である。
【符号の説明】
【0096】
100 配賦処理実行装置
102 制御部
102a 集計単位取得部
102b 製造経費集計部
102c 配賦率算出部
102d 配賦処理実行部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 製造経費原価部門集計対象データ
106b 原価費目配賦率計算マスタ
106c 配賦パターンマスタ
106d 配賦係数マスタ
106e 生産予定データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク