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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183867
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091374
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕徳
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕典
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA42
2H033BA25
2H033BA38
2H033BB18
2H033BB22
(57)【要約】
【課題】ヒーターの破壊などにより、アース接点に過電流が流れることを抑制できる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置5は、シートSに形成されたトナー像をシートSに加熱定着させる。定着装置5は、ヒートローラー10と、アース接点14とを備える。ヒートローラー10は、シートSに形成されたトナー像を加熱する。アース接点14は、ヒートローラー10をアースする。アース接点14は、第1導電性部材30と、第2導電性部材31と、絶縁部材32とを有する。第1導電性部材30は、ヒートローラー10と電気的に接続される。第2導電性部材31は、第1導電性部材30と対向して配置され、ヒートローラー10をアースする。絶縁部材32は、第1導電性部材30と第2導電性部材31とに挟まれて配置され、第1導電性部材30と第2導電性部材31とを絶縁する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに形成されたトナー像をシートに加熱定着させる定着装置であって、
前記定着装置は、
シートに形成されたトナー像を加熱するヒートローラーと、
前記ヒートローラーをアースするアース接点と
を備え、
前記アース接点は、
前記ヒートローラーと電気的に接続される第1導電性部材と、
前記第1導電性部材と対向して配置され、前記ヒートローラーをアースする第2導電性部材と、
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とに挟まれて配置され、前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とを絶縁する絶縁部材と
を有する、定着装置。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記第1導電性部材に対向する第1面と、前記第2導電性部材に対向する第2面との間に介在する、所定の厚みを有するシート状部材である、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記アース接点を配置するハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記アース接点を取り付ける凸部を有し、
前記第1導電性部材と、前記第2導電性部材と、前記絶縁部材とは、それぞれ前記凸部に嵌合する孔部を有する、請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ヒートローラーを回動可能に軸支する導電性軸受と、
電源部から電力を供給されて発熱し、前記ヒートローラーを加熱するヒーターと
をさらに備え、
前記アース接点は、前記絶縁部材により、前記ヒーターに供給する電力によって発生する前記導電性軸受の過電流を抑制する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ヒーターは、前記電源部から電力を供給されて発熱するフィラメントを有し、
前記アース接点は、前記フィラメントが前記ヒートローラーに接触することによる、前記導電性軸受の過電流を抑制する、請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材との間に配置され、前記定着装置に流れる過電流を遮断する遮断部材をさらに備え、
前記第1導電性部材は、前記遮断部材の一端を支持する第1スリットを有し、
前記第2導電性部材は、前記遮断部材の他端を支持する第2スリットを有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヒーターの破損を防止する定着装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-103975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、ヒーターの破壊などにより、アース接点に過電流が流れた場合の対策について開示していない。
【0005】
本発明は、ヒーターの破壊などにより、アース接点に過電流が流れることを抑制できる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る定着装置は、シートに形成されたトナー像をシートに加熱定着させる定着装置である。前記定着装置は、ヒートローラーと、アース接点とを備える。前記ヒートローラーは、シートに形成されたトナー像を加熱する。前記アース接点は、前記ヒートローラーをアースする。前記アース接点は、第1導電性部材と、第2導電性部材と、絶縁部材とを有する。前記第1導電性部材は、前記ヒートローラーと電気的に接続される。前記第2導電性部材は、前記第1導電性部材と対向して配置され、前記ヒートローラーをアースする。前記絶縁部材は、前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とに挟まれて配置され、前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とを絶縁する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の定着装置によれば、ヒーターの破壊などにより、アース接点に過電流が流れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置を示す図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の構造を示す図である。
図3】本実施形態に係る定着装置の比較例を示す図である。
図4】本実施形態に係る定着装置の詳細な構造を示す図である。
図5】本実施形態に係る定着装置の詳細な構造を示す図である。
図6】本実施形態に係る定着装置の詳細な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本実施形態では、図中に、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す。Z軸は鉛直面に平行であり、X軸およびY軸は水平面に平行である。
【0010】
本実施形態では、画像形成部4において、シートSの搬送方向を副走査方向と記述することがある。副走査方向に直交するX軸方向を主走査方向と記述することがある。
【0011】
図1図6を参照して、本発明の実施形態に係る定着装置5を有する画像形成装置1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る定着装置5を備える画像形成装置1を示す図である。図2は、本実施形態に係る定着装置5の構造を示す図である。図3は、本実施形態に係る定着装置5の比較例を示す図である。図4図6は、本実施形態に係る定着装置5の詳細な構造を示す図である。
【0012】
本実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真方式であり、シート給送装置2と、シート搬送装置3と、画像形成部4と、定着装置5と、シート排出部6と、電源部と、駆動部と、制御部とを備える。
【0013】
シート給送装置2は、一例として、例えば、シートトレイと、ピックアップローラーとを有する。
【0014】
シート搬送装置3は、一例として、搬送路と、搬送ローラーと、搬送モーターとを有する。
【0015】
搬送路は、シートSが搬送される。
【0016】
搬送ローラーは、搬送路に配置され、シートSを搬送する。
【0017】
搬送モーターは、搬送ローラーを回転駆動する。
【0018】
次に、図1に示すように、画像形成部4は、文書画像データに基づいて、シートSに図示しないトナー像を形成する。
【0019】
画像形成部4は、例えば、画像データ取得部と、感光体ドラムと、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する。
【0020】
画像データ取得部は、例えば、スキャナー、パーソナルコンピューター、サーバー、またはクラウドなどから画像データを取得する。画像データ取得部は、一例として、ASICで実現され得る。
【0021】
感光体ドラムは、回転軸を有するドラム形状である。感光体ドラムは、回転軸を中心に回転する。感光体ドラムは、外周面側に感光層を有する。
【0022】
帯電部は、感光体ドラムの感光層を所定の電位に帯電させる。
【0023】
露光部は、感光体ドラムの感光層にレーザー光を照射して露光する。露光部は、画像データに基づいて感光体ドラムを露光する。この結果、感光体ドラムに静電潜像が形成される。露光部の一例は、LED(Light Emitting Diode)である。
【0024】
現像部は、一例として、磁性体からなるキャリアおよびトナーを含む二成分現像剤を収容する。そして、現像部は、トナーによって感光体ドラムに形成された静電潜像を現像して、感光体ドラムにトナー像を形成する。
【0025】
転写部は、感光体ドラム上のトナー像をシートSに転写する。
【0026】
クリーニング部は、転写後に感光体ドラムに残留している残留トナーを除去する。画像形成部4によってトナー像が形成されたシートSは、定着装置5まで搬送される。
【0027】
次に、図2を参照して、定着装置5を説明する。定着装置5は、シートSに形成されたトナー像をシートSに加熱定着させる。
【0028】
定着装置5は、ヒートローラー10と、導電性軸受13とをさらに備える。ヒートローラー10は、シートSに形成されたトナー像を加熱する。導電性軸受13は、ヒートローラー10を回動可能に軸支する。
【0029】
図2に示すように、定着装置5は、ヒートローラー10と、プレスローラー11と、ヒーター12と、導電性軸受13と、アース接点14と、遮断部材15とを有する。アース接点14、および遮断部材15については、図4図6を参照して詳述する。
【0030】
ヒートローラー10は、シートSに形成されたトナー像を加熱する。ヒートローラー10は、中空円筒状のローラーである。ヒートローラー10は一例であり、ベルトであってもよい。
【0031】
プレスローラー11は、ヒートローラー10に圧着し、ヒートローラー10とニップ部を形成する。プレスローラー11は、駆動部により回転駆動され、ヒートローラー10とニップ部を形成することにより、ヒートローラー10を回転させる。
【0032】
シートSがヒートローラー10とプレスローラー11との間に形成されたニップを通過する。ニップを通過するシートSに形成されたトナー像が、ヒートローラー10に加熱される。加熱溶融されたトナーがプレスローラー11によりシートSに圧着され、シートSにトナー像が形成される。
【0033】
定着装置5は、ヒーター12をさらに備える。ヒーター12は、電源部から電力を供給されて発熱し、ヒートローラー10を加熱する。
【0034】
ヒーター12は、電源部から電力を供給されて、ヒートローラー10を加熱する。ヒーター12は、ヒートローラー10の内周面に近接して配置される。シート搬送装置3に搬送されたシートSは、ニップ部を通過することにより、ヒーター12に加熱され、トナー像が定着される。
【0035】
ヒーター12は、ハロゲンランプ20と、フィラメント21とを有してもよい。フィラメント21は、電源部から電力を供給されて発熱する。フィラメント21は、ハロゲンランプ20の内部に配置される。すなわち、ハロゲンランプ20は、ハロゲンガスが封入された略棒状(略円柱状)に形成されたガラス管内に長手方向に配設されたフィラメント21を有する。フィラメント21は、コイル状に巻き回されている。
【0036】
ハロゲンランプ20は、さらにガラス管の軸方向両端部に一対の電極部を有する。フィラメント21は、一対の電極部に接続されている。フィラメント21は、一対の電極部を介して電源部から電力を供給されて発熱する。
【0037】
フィラメント21は、一例として、タングステンにより形成される。フィラメント21に電流が流れると、フィラメント21自体の電気抵抗によって、フィラメント21が2千数百℃に熱せられ、白熱化する。
【0038】
ハロゲンランプ20は、フィラメント21から放射される赤外域の光を利用して、ヒートローラー10を内側から加熱する。ハロゲンランプ20は、これに代えて、カーボンヒーター等が採用されてもよい。
【0039】
図示しない制御部は、電源部によるヒーター12への電力供給を制御する。制御部は、電源部によるヒーター12への電力供給をON/OFFする。制御部は、ヒートローラー10の表面温度が、一例として、160℃から180℃になるよう、フィラメント21に流れる電流量を制御する。
【0040】
図2に示すように、導電性軸受13は、ヒートローラー10を回動可能に軸支する。
【0041】
次に、図4図6を参照して、アース接点14と遮断部材15とを詳細に説明する。
【0042】
まず、アース接点14は、ヒートローラー10をアースする。図4図5に示すように、アース接点14は、第1導電性部材30と、第2導電性部材31と、絶縁部材32とを有する。
【0043】
図4に示すように、第1導電性部材30は、第1スリット40を有してもよい。第2導電性部材31は、第2スリット41を有してもよい。
【0044】
第1導電性部材30(第1板バネ30)は、ヒートローラー10と電気的に接続される。第2導電性部材31(第2板バネ31)は、第1導電性部材30と対向して配置され、ヒートローラー10をアースする。
【0045】
第1導電性部材30は、第1板バネ30と記述することがある。すなわち、第1導電性部材30は、導電性を有する板バネであってもよい。第1導電性部材30は、ステンレス、ニッケル、モリブデン、銅などである。
【0046】
第1導電性部材30は、ヒートローラー10と電気的に接続される。
【0047】
絶縁部材32(絶縁シート32)は、第1導電性部材30と第2導電性部材31とに挟まれて配置され、第1導電性部材30と第2導電性部材31とを絶縁する。
【0048】
絶縁部材32は、絶縁シート32と記述することがある。すなわち、絶縁部材32は、シート状部材であってもよい。絶縁部材32の一例は、ポリイミドエポキシ樹脂である。
【0049】
絶縁部材32は、第1導電性部材30に対向する第1面と、第2導電性部材31に対向する第2面との間に介在する、所定の厚みを有するシート状部材である。絶縁部材32の、第1導電性部材30に対向する第1面と、第2導電性部材31に対向する第2面との距離は、0.5mmであってもよい。
【0050】
アース接点14は、絶縁部材32により、ヒーター12が導電性軸受13に接触することによって発生する導電性軸受13の過電流を抑制する。アース接点14は、絶縁部材32により、ヒーター12に供給する電力によって発生する導電性軸受13の過電流を抑制する。
【0051】
アース接点14は、フィラメント21がヒートローラー10に接触することによって発生する導電性軸受13の過電流を抑制する。アース接点14は、フィラメント21が導電性軸受13に接触することによって発生する導電性軸受13の過電流を抑制する。
【0052】
遮断部材15は、第1導電性部材30と、第2導電性部材31との間に配置され、定着装置5に流れる過電流を遮断する。
【0053】
第1導電性部材30の第1スリット40は、遮断部材15の一端を支持する。
【0054】
第1導電性部材30は、導電性軸受13と電気的に接続される。
【0055】
第2導電性部材31は、第2板バネ31と記述することがある。すなわち、第2導電性部材31は、導電性を有する板バネであってもよい。第2導電性部材31は、ステンレス、ニッケル、モリブデン、銅などである。
【0056】
第2導電性部材31の第2スリット41は、遮断部材15の他端を支持する。
【0057】
遮断部材15は、第1導電性部材30の第1スリット40に一端を取り付け、第2導電性部材31の第2スリット41に他端を取り付けることにより、図4の点線で示す取付位置に取り付けられる。
【0058】
次に、本実施形態に係る定着装置5のアース接点14が果たす機能について説明する。
【0059】
図2で先述したように、ヒートローラー10の内部には、ヒーター12が配置され、ヒーター12を構成するハロゲンランプ20にフィラメント21が配置されている。
【0060】
ハロゲンランプ20はガラス管で構成されていることが多い。そのため、定着装置5を落下させるなどにより、ハロゲンランプ20が破損することがある。
【0061】
そして、定着装置5を落下させるなどにより、ハロゲンランプ20が破損することにより、ハロゲンランプ20の内部に配置されたフィラメント21が表出し、金属製部材で形成されたヒートローラー10の内周面に接触することがある。
【0062】
ここで、比較例として、図3を参照する。図3に示すように、1枚の板バネで定着装置5をアースした場合、フィラメント21がヒートローラー10の内周面に接触すると、フィラメント21からアース部材により接地されている導電性軸受13を通して電流が流れ、過電流により導電性軸受13が発火することがある。
【0063】
導電性軸受13の発火を防止する対策として、図4に示すように、アース部材にヒューズなどの遮断部材15を設けることが考えられる。しかし、画像形成装置1の振動や落下によりヒューズなどの遮断部材15がアース部材から脱落することがある。
【0064】
ヒューズなどの遮断部材15がアース部材から脱落すると、導電性軸受13の接地ができなくなる。
【0065】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、アースの機能を果たす構成として、第1導電性部材30と第2導電性部材31の2枚の板バネを設け、第1導電性部材30と第2導電性部材31との間に遮断部材15とともに、絶縁部材32を配置した。
【0066】
絶縁部材32を薄いシート部材であり、第1導電性部材30と第2導電性部材31との間に配置することにより、ヒューズなどの遮断部材15が定着装置5から脱落しても、第1導電性部材30の側が高圧電位になった場合に、絶縁部材32により形成される第2導電性部材31との隙間において放電が発生する。そのため、ヒートローラー10が帯電して高電位の状態になるのを抑制することができる。
【0067】
ここで、絶縁部材32が厚い構成とした場合に、第1導電性部材30と第2導電性部材31とが絶縁性が向上するが、帯電によりヒートローラー10の表面電位が4~5kVに上昇してしまい、シートSのトナー像に画像不良が発生し易くなる。
【0068】
それに対し、図4に示すように、ヒューズなどの遮断部材15が第1導電性部材30と第2導電性部材31とに取り付けられている場合、遮断部材15により第1導電性部材30と第2導電性部材31が導通してヒートローラー10の帯電電荷が導電性軸受13を介してアースされるため、ヒートローラー10の表面電位は、一例として、100V~500Vに抑制される。
【0069】
本実施形態のように、薄いシート状の絶縁部材32を第1導電性部材30と第2導電性部材31との間に配置して絶縁すると、仮にヒューズなどの遮断部材15が定着装置5から脱落しても、ヒートローラー10の帯電電荷が過剰になると第1導電性部材30と第2導電性部材31との間の放電により一部の電荷がアースされ、ヒートローラー10の画像形成動作中の表面電位は、一例として、1.5kV程度以下に抑制される。
【0070】
そのため、通常のAC電圧240Vでは導電性軸受13が発火することを防止することができる。ヒートローラー10の画像形成動作中の帯電による表面電位は100~500Vから最大で1.5kVに上昇するものの、まったくアースしない絶縁時に比べて低い電圧であるため、画像不良は軽微になる。
【0071】
次に、図5に示すように、定着装置5は、ハウジングを備える。ハウジングにはアース接点14を配置する。定着装置5のハウジングには、アース接点14を取り付ける凸部が配置されている。第1導電性部材30、第2導電性部材31、絶縁部材32は、凸部に嵌合する孔部を有する。
【0072】
アース接点14は、定着装置5のハウジングに近い側から、第1導電性部材30、絶縁部材32、第2導電性部材31の順に重ねられ、図6に示すように、留め具で止められる。
【0073】
絶縁部材32の外形は、第1導電性部材30および第2導電性部材31の互いに対向する対向面の外形よりも少し大きく形成されている。凸部に嵌合する第1導電性部材30、第2導電性部材31、絶縁部材32の孔部の直径は、凸部の直径よりもはめあい公差程度大きく形成されている。第1導電性部材30と第2導電性部材31の対向面の外縁部では、外力による変形により重なり方向において離れる可能性があるが、凸部に篏合する孔部では留め具により重なり方向に離れるのが規制される。そのため、第1導電性部材30と第2導電性部材31の孔部の縁部同士の絶縁距離は、絶縁部材32の厚さにより一定に保たれる。
【0074】
さらに、ヒューズなどの遮断部材15が、第1導電性部材30の第1スリット40と、第2導電性部材31の第2スリット41とに取り付けられる。
【0075】
本実施形態によれば、アース接点14を通して導電性軸受13に過電流が流れることを防止し、定着装置5が発火することを防止できる。さらに、遮断部材15が第1導電性部材30または第2導電性部材31から外れても、絶縁部材32により定着装置5が発火することを防止できるとともに、画像形成動作中にヒートローラー10が高電位に帯電するのを抑制できる。
【0076】
また、アース接点14を、第1導電性部材30および第2導電性部材31で構成して、第1導電性部材30と第2導電性部材31との間に絶縁部材32を配置することにより、ヒートローラー10の導電性軸受13とアースとの間に適切な絶縁抵抗を持たせることができる。すなわち、第1導電性部材30および第2導電性部材31の間に高圧電位がかかると、孔部の縁部の間で放電が発生して電位差が緩和される。
【0077】
また、絶縁部材32の厚みにより、第1導電性部材30に対向する第1面と、第2導電性部材31に対向する第2面との距離を0.5mmとすることにより、電源部から定着装置5に交流240Vがかかっても、定着装置5を好適に絶縁でき、かつ、ヒートローラー10の静電気を好適に放電できる。絶縁部材32は、0.5mm厚のシート部材で形成してもよいし、0.25mm厚のシート部材で形成して2枚重ねで使用してもよい。
【0078】
シート排出部6は、画像形成装置1の筐体の外部にシートSを排出する。シート排出部6は、排出ローラーと、排出トレイとを有してもよい。排出ローラーは、定着装置5から搬送ローラーで搬送されたシートSを排出トレイに排出する。排出トレイは、排出されたシートSを積載する。
【0079】
また、電源部は、画像形成装置1の各部に電力を供給する。特に、電源部は、定着装置5のフィラメント21に電力を供給する。
【0080】
駆動部は、画像形成装置1の各部を駆動する。特に、駆動部は、定着装置5のプレスローラー11を駆動する。駆動部の一例は、モーターである。
【0081】
制御装置は、画像形成装置1の各部を制御する。特に、制御装置は、定着装置5のヒーター12に供給する電力および温度を制御する。制御装置の一例は、CPU(Central Processing Unit)である。
【0082】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、定着装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 画像形成装置
5 定着装置
10 ヒートローラー
11 プレスローラー
12 ヒーター
13 導電性軸受
14 アース接点
15 遮断部材
20 ハロゲンランプ
21 フィラメント
30 第1導電性部材
31 第2導電性部材
32 絶縁部材
40 第1スリット
41 第2スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6