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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183871
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0221 20160101AFI20221206BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20221206BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20221206BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221206BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
H01M8/0221
B29C43/18
B29C43/34
H01M8/10 101
B29K101:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091382
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390004215
【氏名又は名称】株式会社高木化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】永田 達也
(72)【発明者】
【氏名】平田 和之
(72)【発明者】
【氏名】脇本 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】高木 優州
(72)【発明者】
【氏名】永谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松山 一夫
【テーマコード(参考)】
4F204
5H126
【Fターム(参考)】
4F204AA11
4F204AA17
4F204AA24
4F204AA28
4F204AA34
4F204AB18
4F204AG01
4F204AH33
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FN11
4F204FN15
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD04
5H126EE05
5H126FF04
5H126GG02
5H126GG05
5H126GG18
5H126HH01
5H126HH02
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】
【課題】セパレータの厚さのばらつきを低減できる燃料電池用セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】セパレータの製造方法は、加熱工程と、プレス工程と、流路成形工程とを備えている。加熱工程では、熱可塑性樹脂に炭素材料粒子を分散させて形成されたシート材を熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱する。プレス工程では、加熱工程において加熱されたシート材を第1金型を用いてプレスすることで、シート材を所定の厚さに成形した後に、第1金型と共にシート材を冷却する。流路成形工程では、第1金型によってプレスされたシート材を第2金型を用いてプレスすることで、シート材にガス流路を成形する。シート材として、熱可塑性樹脂の含有量が20重量%以上30重量%以下であり、炭素材料粒子の含有量が70重量%以上80重量%以下であるものを用いる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、導電性を有する炭素材料粒子とを含んで構成され、反応ガスが流通するガス流路が設けられた燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂に前記炭素材料粒子を分散させて成形されたシート材を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において加熱された前記シート材を第1金型を用いてプレスすることで、前記シート材を所定の厚さに成形した後に、前記第1金型と共に前記シート材を冷却するプレス工程と、
前記第1金型によってプレスされた前記シート材を第2金型を用いてプレスすることで、前記シート材に前記ガス流路を成形する流路成形工程と、を備え、
前記シート材として、前記熱可塑性樹脂の含有量が20重量%以上30重量%以下であり、前記炭素材料粒子の含有量が70重量%以上80重量%以下であるものを用い、
前記加熱工程では、前記シート材を前記熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱する、
燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記シート材を加熱炉内において加熱し、
前記加熱工程と前記プレス工程との間に、前記シート材を前記加熱炉から前記第1金型に移送する移送工程を備える、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
前記移送工程では、前記シート材を保温容器に収容した状態で移送する、
請求項2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記プレス工程では、前記第1金型を加熱した状態で前記シート材をプレスする、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、前記シート材を厚さ方向において2つの金属板によって挟んだ状態で当該2つの金属板と共に前記シート材を加熱し、
前記プレス工程では、前記2つの金属板を介して前記シート材をプレスする、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記プレス工程では、前記2つの金属板の各々と前記第1金型との間に弾性部材を介在させた状態で前記シート材をプレスする、
請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記プレス工程では、前記2つの金属板の各々と前記シート材との間に離型性を有する離型層を介在させた状態で前記シート材をプレスする、
請求項5または請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記プレス工程と前記流路成形工程との間に、前記シート材を厚さ方向において2つの金属部材で挟んだ状態で冷却して固化させる冷却工程を備える、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項9】
前記流路成形工程では、前記第2金型を前記熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度に加熱した状態で前記シート材をプレスする、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記流路成形工程の後に、前記シート材を厚さ方向において2つの金属部材で挟んだ状態で冷却して固化させる冷却工程を備える、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂の粒子と前記炭素材料粒子とを粉砕する粉砕機を用いて得られた均一な粉体組成物を、加圧加熱部及び加圧冷却部を含むダブルベルトプレス装置を用いて加熱溶融後に冷却固化することによって、前記シート材を成形する、
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形の燃料電池は、複数の発電セルが積層されることにより構成されている。発電セルは、膜電極接合体を有する発電部と、発電部を挟持する2つのセパレータとを備えている。セパレータには、反応ガスが流れる複数のガス流路が設けられている。
【0003】
特許文献1には、カーボン粉末と熱可塑性樹脂とを配合した混合体からなる燃料電池用セパレータの製造方法が開示されている。この製造方法では、まず、上記混合体を押出成形することによってシート状成形物を成形する。その後、ガス流路の形状に対応した溝を有する圧延ローラにより、当該溝をシート状成形物に転写する。こうして、ガス流路が設けられたセパレータが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-198062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたセパレータにおいて、セパレータ全体における厚さのばらつきが大きい場合には、セパレータと発電部との接触面積が低下することで、これらの間の接触抵抗が増加するおそれがある。このため、燃料電池の性能を向上させる上で、セパレータの厚さのばらつきを低減させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための燃料電池用セパレータの製造方法は、熱可塑性樹脂と、導電性を有する炭素材料粒子とを含んで構成され、反応ガスが流通するガス流路が設けられた燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂に前記炭素材料粒子を分散させて成形されたシート材を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱された前記シート材を第1金型を用いてプレスすることで、前記シート材を所定の厚さに成形した後に、前記第1金型と共に前記シート材を冷却するプレス工程と、前記第1金型によってプレスされた前記シート材を第2金型を用いてプレスすることで、前記シート材に前記ガス流路を成形する流路成形工程と、を備え、前記シート材として、前記熱可塑性樹脂の含有量が20重量%以上30重量%以下であり、前記炭素材料粒子の含有量が70重量%以上80重量%以下であるものを用い、前記加熱工程では、前記シート材を前記熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱する。
【0007】
同方法によれば、加熱工程において熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱されたシート材が、プレス工程において所定の厚さに成形されて冷却される。その後、流路成形工程においてシート材にガス流路が成形される。
【0008】
ここで、シート材における熱可塑性樹脂の含有量は、20重量%以上30重量%以下であり、炭素材料粒子の含有量は70重量%以上80重量%以下である。このようなシート材を、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱することで、同融点以下の温度に加熱する場合に比べて、熱可塑性樹脂の流動性を高めつつ、シート材の形状が崩れることを抑制することができる。これにより、プレス工程が行われたシート材の厚さのばらつきを低減できる。そして、流路成形工程では、厚さのばらつきが低減されたシート材にガス流路が成形される。したがって、セパレータ全体における厚さのばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の燃料電池用セパレータが設けられる燃料電池の概略構成を示す断面図。
図2】燃料電池用セパレータの斜視図。
図3】燃料電池用セパレータの製造方法の工程を順に示すフローチャート。
図4】加熱工程を示す断面図。
図5】移送工程を示す断面図。
図6】プレス工程を示す断面図。
図7】第1冷却工程を示す断面図。
図8】流路成形工程において、第2金型が型締めされる前の状態を示す断面図。
図9】流路成形工程において、第2金型が型締めされた後の状態を示す断面図。
図10】第2冷却工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図10を参照して、燃料電池用セパレータの製造方法の一実施形態について説明する。
各図面においては、構成の一部が誇張または簡略化されている場合がある。また、各図面においては、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
【0011】
(燃料電池の構成)
まず、燃料電池用セパレータが設けられる燃料電池について説明する。
図1に示すように、燃料電池は、複数の発電セル11が積層されたセルスタック10を備えている。
【0012】
発電セル11は、シート状の膜電極ガス拡散層接合体20と、膜電極ガス拡散層接合体20を厚さ方向において挟持する2つのセパレータ30とを備えている。
膜電極ガス拡散層接合体20は、膜電極接合体21と、アノードガス拡散層25と、カソードガス拡散層26とを有している。
【0013】
膜電極接合体21は、例えば固体高分子膜によって構成された電解質層22と、電解質層22を厚さ方向において挟持するアノード電極層23及びカソード電極層24とを有している。
【0014】
アノードガス拡散層25は、アノード電極層23における電解質層22とは反対側の面を覆っている。カソードガス拡散層26は、カソード電極層24における電解質層22とは反対側の面を覆っている。アノードガス拡散層25及びカソードガス拡散層26は、例えば共に炭素繊維によって構成されている。
【0015】
(セパレータ30の構成)
発電セル11における一方のセパレータ30は、アノードガス拡散層25におけるアノード電極層23とは反対側の面に設けられている。発電セル11における他方のセパレータ30は、カソードガス拡散層26におけるカソード電極層24とは反対側の面に設けられている。
【0016】
セパレータ30は、例えば、長方形板状をなしている。セパレータ30は、熱可塑性樹脂と、導電性を有する炭素材料粒子とを含んで構成されている。セパレータ30の内部では、熱可塑性樹脂に炭素材料粒子が厚さ方向の全体にわたって分散している。
【0017】
図2に示すように、セパレータ30は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数のガス流路31と、互いに隣り合うガス流路31同士の間においてガス流路31に沿って延びる複数のリブ32とを有している。すなわち、セパレータ30には、ガス流路31とリブ32とが交互に並列して設けられている。
【0018】
ガス流路31は、膜電極ガス拡散層接合体20に向かって開口する溝状をなしている。一方のセパレータ30のガス流路31には、反応ガスとしての水素ガスが流通する。他方のセパレータ30のガス流路31には、反応ガスとしての空気が流通する。
【0019】
発電セル11において、一方のセパレータ30は、各リブ32の頂面がアノードガス拡散層25に接触するように配置されている。これにより、各ガス流路31を流れる水素ガスが、アノードガス拡散層25を通じてアノード電極層23に供給される。
【0020】
他方のセパレータ30は、各リブ32の頂面がカソードガス拡散層26に接触するように配置されている。これにより、各ガス流路31を流れる空気が、カソードガス拡散層26を通じてカソード電極層24に供給される。
【0021】
膜電極接合体21では、アノード電極層23に供給された水素ガスと、カソード電極層24に供給された空気とが電気化学反応することにより発電が行われる。
(セパレータ30の製造方法)
次に、セパレータ30の製造方法について説明する。
【0022】
図3に示すように、セパレータ30の製造方法では、加熱工程、移送工程、プレス工程、第1冷却工程、流路成形工程、及び第2冷却工程がこの順で行われる。
図4図10に示すように、セパレータ30の製造においては、熱可塑性樹脂に炭素材料粒子を分散させて成形されたシート材40からセパレータ30が製造される。
【0023】
ここで、シート材40の全量を100重量%とするとき、シート材40には、例えば、熱可塑性樹脂が25重量%含まれており、炭素材料粒子が75重量%含まれている。
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及びポリカーボネート(PC)などから、1種の材料を単独で、または2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態の熱可塑性樹脂は、ポリアミドである。なお、ポリアミドの融点は、約280℃である。
【0024】
炭素材料粒子としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、及び膨張黒鉛などから、1種の材料を単独で、または2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、及び土壌黒鉛などが挙げられる。本実施形態の炭素材料粒子は、鱗片状黒鉛である。鱗片状黒鉛の平均粒子径は、例えば40μmである。
【0025】
なお、図示は省略するが、シート材40の成形に際しては、まず、熱可塑性樹脂の粒子と炭素材料粒子とを摩擦力または衝撃力により粉体同士をすりつぶす粉砕機を用いて、均一な粉体組成物を得る。そして、得られた粉体組成物を、加圧加熱部及び加圧冷却部を含むダブルベルトプレス装置を用いて加熱溶融及び冷却固化することによってシート材40を成形する。
【0026】
以下、セパレータ30の製造方法における各工程について説明する。
(加熱工程)
図4に示すように、加熱工程では、まず、シート材40が厚さ方向において2つの金属板100によって挟まれる。そして、2つの金属板100によって挟まれたシート材40が、2つの金属板100と共に加熱炉110において加熱される。加熱炉110によってシート材40が加熱されることで、シート材40が均一に加熱されやすくなる。
【0027】
加熱工程では、シート材40が熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱される。これにより、熱可塑性樹脂が溶融する。本実施形態では、シート材40が300℃~350℃に加熱される。
【0028】
金属板100としては、例えば、熱伝導率及び熱膨張率が比較的小さい炭素鋼などの金属材料を用いることができる。
各金属板100におけるシート材40に対向する面には、離型性を有する離型層101が設けられている。離型層101は、例えば、フッ素化合物を含むコーティング層である。
【0029】
(移送工程)
図5に示すように、移送工程では、加熱工程において加熱されたシート材40が、断熱性を有する保温容器120に収容された状態で加熱炉110から第1金型130に移送される。このとき、シート材40は、2つの金属板100によって挟まれた状態で保温容器120に収容されて移送される。
【0030】
(プレス工程)
図6に示すように、プレス工程では、第1金型130によってシート材40がプレスされる。
【0031】
ここで、第1金型130の構成について説明する。
第1金型130は、固定型131と、固定型131に対して進退可能に設けられた可動型134とを備えている。固定型131及び可動型134には、互いに対向するとともにシート材40を成形する成形面132,135がそれぞれ設けられている。また、固定型131及び可動型134の内部には、これらを加熱するためのヒータ133,136がそれぞれ設けられている。また、固定型131及び可動型134の内部には、これらを冷却するための冷媒が流れる冷却流路137,138がそれぞれ設けられている。
【0032】
プレス工程では、固定型131と金属板100との間に弾性部材140が介在されている。同様に、可動型134と金属板100との間に弾性部材140が介在されている。弾性部材140は、弾性変形可能に構成されたシート状をなしている。弾性部材140は、例えば、ガラス繊維とフッ素ゴムとを含んで構成されている。
【0033】
第1金型130は、プレス工程が開始される前に各ヒータ133,136によって加熱されている。すなわち、プレス工程では、第1金型130が加熱された状態でシート材40がプレスされる。プレス工程では、第1金型130が、例えば100℃~350℃に加熱されることが好ましい。本実施形態では、第1金型130が、熱可塑性樹脂の融点である約280℃よりも高い温度に、より詳しくは、330℃~350℃に加熱される。
【0034】
プレス工程では、加熱工程において加熱されたシート材40が第1金型130によって2つの金属板100と共にプレスされることで、シート材40が所定の厚さに成形される。本実施形態における所定の厚さとは、セパレータ30の厚さを指す。なお、プレス工程では、各金属板100と第1金型130との間に弾性部材140が介在した状態、且つ各金属板100とシート材40との間に離型層101が介在した状態でシート材40がプレスされる。
【0035】
プレス工程では、シート材40が上記所定の厚さに成形された後に、第1金型130と共にシート材40が冷却される。こうした冷却は、第1金型130の冷却流路137,138に冷媒を流すことによって行われる。なお、第1金型130の冷却は、第1金型130が型締めされた状態で行われる。
【0036】
シート材40が冷却されることによって、熱可塑性樹脂の流動性が低下する。これにより、プレス工程が行われたシート材40の形状が維持されやすくなる。すなわち、プレス工程では、シート材40が第1金型130によってプレスされた後、シート材40の形状が維持される程度に熱可塑性樹脂が固化するまでシート材40が冷却される。
【0037】
(第1冷却工程)
図7に示すように、第1冷却工程では、プレス工程が行われたシート材40が厚さ方向において2つの第1金属部材150で挟まれた状態で冷却されて固化される。
【0038】
第1冷却工程では、シート材40が、2つの第1金属部材150で挟まれた状態で常温下において空冷される。これにより、シート材40が、例えば100℃以下に冷却される。
【0039】
第1金属部材150は、例えば、板状をなしている。第1金属部材150としては、熱伝導率が比較的高く、熱膨張率が比較的小さい金属材料が好ましい。第1金属部材150の材料としては、例えば銅または銅合金を用いることができる。
【0040】
(流路成形工程)
図8に示すように、流路成形工程では、第2金型160によってシート材40がプレスされる。
【0041】
ここで、第2金型160の構成について説明する。
第2金型160は、固定型161と、固定型161に対して進退可能に設けられた可動型164とを備えている。固定型161及び可動型164には、互いに対向するとともにシート材40を成形する成形面162,165がそれぞれ設けられている。各成形面162,165には、シート材40にガス流路31及びリブ32を転写するための複数の溝162a,165aがそれぞれ設けられている。また、固定型161及び可動型164の内部には、これらを加熱するためのヒータ163,166がそれぞれ設けられている。また、固定型161及び可動型164の内部には、これらを冷却するための冷媒が流れる冷却流路167,168がそれぞれ設けられている。
【0042】
図9に示すように、流路成形工程では、第2金型160によってシート材40がプレスされることで、シート材40にガス流路31及びリブ32が成形される。
第2金型160は、流路成形工程が開始される前に各ヒータ163,166によって加熱されている。すなわち、流路成形工程では、第2金型160が加熱された状態でシート材40がプレスされる。流路成形工程では、第2金型160が熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度に、より詳しくは、50℃~160℃に加熱されることが好ましい。本実施形態では、第2金型160が、熱可塑性樹脂のガラス転移温度である約90℃付近の温度に加熱される。
【0043】
(第2冷却工程)
図10に示すように、第2冷却工程では、流路成形工程が行われたシート材40が、厚さ方向において2つの第2金属部材170で挟まれた状態で冷却されて固化される。
【0044】
第2金属部材170は、例えば、板状をなしている。第2金属部材170としては、熱伝導率が比較的高く、熱膨張率が比較的小さい金属材料が好ましい。第2金属部材170の材料としては、例えば銅または銅合金を用いることができる。
【0045】
第2冷却工程では、シート材40が、2つの第2金属部材170で挟まれた状態で常温下において空冷される。これにより、シート材40が、例えば常温付近の温度に冷却される。
【0046】
なお、図示は省略するが、第2冷却工程の後に、プレス装置によってシート材40が打ち抜かれる打ち抜き工程が行われる。打ち抜き工程には、例えば、シート材40に貫通孔が設けられる工程や、シート材40の外周部がトリミングされる工程が含まれる。
【0047】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)セパレータ30の製造方法は、加熱工程と、プレス工程と、流路成形工程とを備えている。加熱工程では、熱可塑性樹脂に炭素材料粒子を分散させて成形されたシート材40を熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱する。プレス工程では、加熱工程において加熱されたシート材40を第1金型130を用いてプレスすることで、シート材40を所定の厚さに成形した後に、第1金型130と共にシート材40を冷却する。流路成形工程では、第1金型130によってプレスされたシート材40を第2金型160を用いてプレスすることで、シート材40にガス流路31を成形する。シート材40として、熱可塑性樹脂の含有量が25重量%であり、炭素材料粒子の含有量が75重量%であるものを用いる。
【0048】
こうした方法によれば、加熱工程において熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱されたシート材40が、プレス工程において所定の厚さに成形されて冷却される。その後、流路成形工程においてシート材40にガス流路31が成形される。
【0049】
ここで、シート材40における熱可塑性樹脂の含有量は、20重量%以上30重量%以下であり、炭素材料粒子の含有量は70重量%以上80重量%以下である。このようなシート材40を、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱することで、同融点以下の温度に加熱する場合に比べて、熱可塑性樹脂の流動性を高めつつ、シート材40の形状が崩れることを抑制することができる。これにより、プレス工程が行われたシート材40の厚さのばらつきを低減できる。そして、流路成形工程では、厚さのばらつきが低減されたシート材40にガス流路31が成形される。したがって、セパレータ30全体における厚さのばらつきを低減できる。
【0050】
また、加熱工程において熱可塑性樹脂の流動性が高まることで、プレス工程において第1金型130のプレス荷重を小さくすることができる。
また、シート材40を熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱することで、熱可塑性樹脂がセパレータ30の内部において偏在することが抑制される。このため、セパレータ30におけるクラックやピンホールの発生を抑制できる。
【0051】
(2)加熱工程では、シート材40を加熱炉110内において加熱する。セパレータ30の製造方法は、加熱工程とプレス工程との間に、シート材40を加熱炉110から第1金型130に移送する移送工程を備えている。
【0052】
例えば第1金型130を加熱することで加熱工程を行う場合、第1金型130を熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱する必要がある。この場合、プレス工程において、上記融点よりも高い温度まで加熱された第1金型130を冷却するまでに多くの時間を要することとなる。
【0053】
この点、上記方法によれば、シート材40が、第1金型130とは別の設備によって加熱された後に第1金型130に移送される。このため、第1金型130を上記融点よりも高い温度まで加熱しなくて済む。これにより、プレス工程においてシート材40を冷却するまでに要する時間を短くすることができる。したがって、セパレータ30の生産性が低下することを抑制できる。
【0054】
(3)移送工程では、シート材40を保温容器120に収容した状態で移送する。
こうした方法によれば、シート材40が加熱炉110から第1金型130に移送されるまでの間に、シート材40の温度が低下することを抑制できる。このため、熱可塑性樹脂の流動性が低下することを抑制できる。これにより、プレス工程における第1金型130のプレス荷重を小さくすることができる。
【0055】
(4)プレス工程では、第1金型130を加熱した状態でシート材40をプレスする。
こうした方法によれば、プレス工程において、第1金型130に配置されたシート材40がプレスされるまでの間に、シート材40の温度が低下することを抑制できる。このため、熱可塑性樹脂の流動性が低下することを抑制できる。これにより、プレス工程における第1金型130のプレス荷重を小さくすることができる。
【0056】
(5)加熱工程では、シート材40を厚さ方向において2つの金属板100によって挟んだ状態で当該2つの金属板100と共にシート材40を加熱する。
プレス工程では、2つの金属板100を介してシート材40をプレスする。
【0057】
こうした方法によれば、加熱工程において、シート材40が2つの金属板100と共に加熱される。そして、プレス工程において、加熱された2つの金属板100を介してシート材40がプレスされる。このため、プレス工程が行われるまでの間にシート材40の温度が低下することを抑制できる。これにより、プレス工程における第1金型130のプレス荷重を小さくすることができる。
【0058】
また、上記方法によれば、加熱工程とプレス工程との双方において、シート材40が2つの金属板100によって挟まれる。このため、加熱工程におけるシート材40の熱膨張に伴う変形、及びプレス工程におけるシート材40の熱収縮に伴う変形を抑制できる。
【0059】
(6)プレス工程では、2つの金属板100の各々と第1金型130との間に弾性部材140を介在させた状態でシート材40をプレスする。
こうした方法によれば、第1金型130のプレス荷重によって弾性部材140が弾性変形することで、当該プレス荷重が2つの金属板100を介してシート材40全体に均一に作用しやすくなる。したがって、プレス工程が行われたシート材40の厚さのばらつきを一層低減できる。
【0060】
(7)プレス工程では、2つの金属板100の各々とシート材40との間に離型性を有する離型層101を介在させた状態でシート材40をプレスする。
こうした方法によれば、プレス工程後において、各金属板100とシート材40との間に離型層101が介在しているため、シート材40からの各金属板100の離型性を高めることができる。したがって、セパレータ30の製造が容易となる。
【0061】
(8)セパレータ30の製造方法は、プレス工程と流路成形工程との間に、シート材40を厚さ方向において2つの第1金属部材150で挟んだ状態で冷却して固化させる第1冷却工程を備えている。
【0062】
こうした方法によれば、2つの第1金属部材150を介してシート材40が放熱するため、プレス工程後における熱可塑性樹脂を早期に固化させることができる。これにより、流路成形工程を早期に開始することができる。したがって、セパレータ30の生産性を向上させることができる。
【0063】
また、上記方法によれば、第1冷却工程においてシート材40が2つの第1金属部材150によって挟まれるため、シート材40の熱収縮に伴う変形を抑制できる。
(9)流路成形工程では、第2金型160を熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度に加熱した状態でシート材40をプレスする。
【0064】
こうした方法によれば、所定の厚さに成形されたシート材40の寸法精度を維持しつつ、熱可塑性樹脂を軟化させることができる。これにより、流路成形工程において、シート材40にガス流路31を容易に成形することができる。
【0065】
(10)セパレータ30の製造方法は、流路成形工程の後に、シート材40を厚さ方向において2つの第2金属部材170で挟んだ状態で冷却して固化させる第2冷却工程を備えている。
【0066】
こうした方法によれば、2つの第2金属部材170を介してシート材40が放熱するため、流路成形後における熱可塑性樹脂を早期に固化させることができる。したがって、セパレータ30の生産性を向上させることができる。
【0067】
また、上記方法によれば、第2冷却工程においてシート材40が2つの第2金属部材170によって挟まれるため、シート材40の熱収縮に伴う変形を抑制できる。
(11)熱可塑性樹脂の粒子と炭素材料粒子とを粉砕する粉砕機を用いて得られた均一な粉体組成物を、加圧加熱部及び加圧冷却部を含むダブルベルトプレス装置を用いて加熱溶融後に冷却固化することによって、シート材40を成形する。
【0068】
こうした方法によれば、複合構造が高度に制御された状態で炭素材料粒子同士が連結されるため、高い熱伝導性及び電気伝導性を有するシート材40が成形される。こうしたシート材40を用いたセパレータの製造方法によれば、シート材40の複合構造を維持でき、熱および電気的性能を損なうことなく、当該性能をセパレータ30に反映させることができる。
【0069】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・第2金属部材170は、銅または銅合金とは異なる金属材料からなるものであってもよい。
・第2冷却工程を省略することができる。この場合、例えば第2金型160が冷却されることによってシート材40が冷却されて固化されてもよい。
【0071】
・流路成形工程では、第2金型160が加熱されることなく、第2金型160によってシート材40がプレスされてもよい。
・第1金属部材150は、銅または銅合金とは異なる金属材料からなるものであってもよい。
【0072】
・第1冷却工程を省略することができる。この場合、例えば第1金型130が冷却されることによってシート材40が冷却されて固化されてもよい。
・離型層101は、例えば、金属板100とシート材40との間において金属板100とは別体に設けられた離型シートであってもよい。
【0073】
・金属板100から離型層101を省略することができる。
・プレス工程では、2つの弾性部材140が省略されてもよい。
・加熱工程では、2つの金属板100が省略されるとともにシート材40のみが加熱されてもよい。この場合、プレス工程では、シート材40が第1金型130によって直接プレスされてもよい。
【0074】
・プレス工程では、第1金型130が加熱されることなく、第1金型130によってシート材40がプレスされてもよい。
・移送工程では、保温容器120を省略することができる。
【0075】
・加熱工程では、加熱炉110に代えて、ヒータ133,136によって第1金型130が加熱されることでシート材40が加熱されてもよい。この場合、第1金型130が型締めされた状態でシート材40が加熱されることが好ましい。
【符号の説明】
【0076】
30…セパレータ
31…ガス流路
40…シート材
100…金属板
101…離型層
110…加熱炉
120…保温容器
130…第1金型
140…弾性部材
150…第1金属部材
160…第2金型
170…第2金属部材
図1
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図10