IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セーレン株式会社の特許一覧

特開2022-183872養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シート
<>
  • 特開-養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シート 図1
  • 特開-養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183872
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シート
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/24 20060101AFI20221206BHJP
   C04B 40/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091384
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】不破 順清
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055AC01
4G055BA10
4G112RD02
(57)【要約】
【課題】プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に適した養生シートを提供する。
【解決手段】フォーム材シート10の両側に、クロスシート21,31を含む積層体20,30が設けられた養生シート1であって、一方の積層体20の最外層がクロスシート21からなり、他方の積層体30の最外層が無通気性フィルム32からなる。積層体20,30は、押出フィルム層22,34を含み、押出フィルム層22,34が融着することにより、フォーム材シート10と積層体20,30とが一体化している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーム材シートの両側に、クロスシートを含む積層体が設けられた養生シートであって、
一方の積層体の最外層がクロスシートからなり、
他方の積層体の最外層が無通気性フィルムからなる養生シート。
【請求項2】
前記積層体は、押出フィルム層を含み、
前記押出フィルム層が融着することにより、前記フォーム材シートと前記積層体とが一体化している請求項1に記載の養生シート。
【請求項3】
前記無通気性フィルムは、JIS L 1096に規定のフラジール形法に準拠して測定される通気性が1cm/(cm・s)以下である請求項1又は2に記載の養生シート。
【請求項4】
前記無通気性フィルムは、金属練り込みフィルムである請求項1~3の何れか一項に記載の養生シート。
【請求項5】
厚みが、0.5~7mmである請求項1~4の何れか一項に記載の養生シート。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の養生シートからなる複数の長尺状の基布片を接合してなるプレキャストコンクリート部材製造用養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に用いる養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
十分な強度を持つ高品質なコンクリートを得るためには、打設後のコンクリートを硬化に必要な温度及び湿度に保つ養生が必要となる。例えば、建設現場で打設されたコンクリートの養生では、保水性を有する養生シートで表面を一定期間に亘って覆い水分を供給する湿布養生により、打設後のコンクリートの乾燥の防止が図られている。
【0003】
従来のコンクリート養生シートとして、不織布等の繊維シートにフィルム及びネットを積層したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1のコンクリート養生シートは、コンクリートに接触する側の面に樹脂製のネットが配されていることで、養生終了時にコンクリートから剥離する際に繊維シートから構成繊維が脱落することが抑制され、繰り返し使用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-245526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコンクリート養生シートは、建設現場で打設されたコンクリートにシートを密着させる湿布養生に用いるものであるが、コンクリートの養生には様々な方法があり、養生方法に応じて養生シートに求められる性能が異なる。
【0006】
プレキャストコンクリート部材の製造工場では、生産性向上を目的として、ボイラー等で発生させた水蒸気を供給することによりコンクリートの強度発現を促進する蒸気養生が行われる。蒸気養生に用いる養生シートには、蒸気の温度を保つ高い保温性や蒸気を漏らさない無通気性等が求められる。また、プレキャストコンクリート部材の製造には鋼製型枠が使用されるため、プレキャストコンクリート部材の製造に用いる養生シートには、鋼製型枠に引っ掛けても裂けや破れ等の破損が容易に生じない十分な強度が求められる。さらに、蒸気養生における養生期間は数時間から一日以内であり、数日間の養生が必要な建設現場と比べて、製造工場では養生シートを頻繁に繰り返し使用することになるが、経済的な観点から一年以上の長期間に亘って使用できることが望まれるため、養生シートには高い耐久性が求められる。
【0007】
この点に関し、特許文献1のコンクリート養生シートは、繊維シートによって水を保持する湿布養生に使用するものであるため、蒸気養生に必要な保温性及び無通気性を有するものではなかった。また、特許文献1のコンクリート養生シートの強度及び耐久性は、コンクリートから剥離する際に繊維シートからの構成繊維の脱落を抑制する程度に過ぎず、プレキャストコンクリート部材の製造工場での使用において求められる強度及び耐久性を満たすものではなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に適した養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る養生シートの特徴構成は、
フォーム材シートの両側に、クロスシートを含む積層体が設けられた養生シートであって、
一方の積層体の最外層がクロスシートからなり、
他方の積層体の最外層が無通気性フィルムからなることにある。
【0010】
本構成の養生シートは、フォーム材シートの両側に、クロスシートを含む積層体が設けられた養生シートであって、一方の積層体の最外層がクロスシートからなり、他方の積層体の最外層が無通気性フィルムからなるため、フォーム材シートと無通気性フィルムとにより、蒸気養生において優れた保温性、及び無通気性が得られる。また、フォーム材シートの両側に設けられた積層体にクロスシートが含まれることにより、型枠に引っ掛かっても容易に破損しない優れた強度、及び一年以上の長期間に亘って繰り返し使用に耐え得る高い耐久性が得られる。この結果、本構成の養生シートは、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に適したものとなる。
【0011】
本発明に係る養生シートにおいて、
前記積層体は、押出フィルム層を含み、
前記押出フィルム層が融着することにより、前記フォーム材シートと前記積層体とが一体化していることが好ましい。
【0012】
本構成の養生シートによれば、積層体が押出フィルム層を含み、押出フィルム層が融着することにより、フォーム材シートと積層体とが一体化しているため、押出ラミネートの特徴である柔軟性及び引裂強さを有するものとなり、プレキャストコンクリート部材の製造に好適に使用することができる。
【0013】
本発明に係る養生シートにおいて、
前記無通気性フィルムは、JIS L 1096に規定のフラジール形法に準拠して測定される通気性が1cm/(cm・s)以下であることが好ましい。
【0014】
本構成の養生シートによれば、JIS L 1096に規定のフラジール形法に準拠して測定される無通気性フィルムの通気性が上記の範囲にあるため、蒸気養生において蒸気漏れをより確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る養生シートにおいて、
前記無通気性フィルムは、金属練り込みフィルムであることが好ましい。
【0016】
本構成の養生シートによれば、無通気性フィルムが金属練り込みフィルムであるため、優れた保温性を長期間に亘って維持することができる。
【0017】
本発明に係る養生シートにおいて、
厚みが、0.5~7mmであることが好ましい。
【0018】
本構成の養生シートによれば、厚みが、上記の範囲にあるため、施工性、運搬性が良好なものとなり、且つ適切な保温性が得られる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係るプレキャストコンクリート部材製造用養生シートの特徴構成は、
上記何れかの養生シートからなる複数の長尺状の基布片を接合してなることにある。
【0020】
本構成のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、上記何れかの養生シートからなる複数の長尺状の基布片を接合してなるため、大型のボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材の製造において、蒸気を漏らすことがないように、大型の型枠全体を隙間なく覆うことができるサイズに形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る養生シートの概略断面図である。
図2図2は、本発明に係るプレキャストコンクリート部材製造用養生シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シートについて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。なお、図面において、本発明の養生シートを構成する複数の層が図示されているが、各層の厚み関係は説明容易化のため適宜変更しており、実際の養生シートにおける各層の厚みの大小関係(縮尺)を正確に反映したものではない。
【0023】
<養生シート>
図1は、本発明に係る養生シート1の概略断面図である。養生シート1は、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に適した養生シートであって、フォーム材シート10の両側に積層体20,30が設けられる。
【0024】
フォーム材シート10は、主に養生シート1の保温性を担う部材であり、内部に気泡が形成された樹脂発泡シートを用いることができる。樹脂発泡シートに用いられる樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、及びブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、及び共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びアミン-ウレタン共重合体等のポリウレタン系樹脂が挙げられ、特に、経済性や生産性に優れるポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合した混合物として用いてもよい。また、フォーム材シート10に用いる樹脂発泡シートには、耐候剤、親水剤、金属フィラー、及び顔料等を含有させてもよい。
【0025】
フォーム材シート10の厚みは、0.5~5mmであることが好ましく、2~4mmであることがより好ましい。本発明において養生シート1を構成する各層の厚みは、養生シート1の断面を、スケール付きの拡大鏡やマイクロスコープを用いて20倍の倍率で拡大したものを、目視にて読み取り測定するものとする。フォーム材シート10の厚みが上記の範囲にあれば、十分な断熱効果が期待でき、養生シート1が蒸気養生において求められる保温性を有するものとなる。また、運搬性、施工性にも優れたものとなる。
【0026】
積層体20,30は、主に養生シート1の強度及び耐久性を担う部材であり、夫々がクロスシート21,31を含む。フォーム材シート10の両側に設けられた積層体20,30に、引裂強さが大きく形状安定性に優れるクロスシート21,31が含まれることにより、養生シート1は、型枠に引っ掛かっても容易に破損しない優れた強度、及び一年以上の長期間に亘って繰り返し使用に耐え得る高い耐久性を有するものとなる。積層体20,30は、夫々の積層構造が異なるため、以降は、積層体20,30を夫々「第一積層体20」及び「第二積層体30」と称する。
【0027】
第一積層体20は、フォーム材シート10と対向する側とは反対側の最外層にクロスシート21が配され、このクロスシート21のフォーム材シート10側に押出フィルム層22が積層された積層構造を有する。
【0028】
クロスシート21は、割繊しテープ状にしたフィルムを格子等の多角形状やクモの巣状に交叉させたネット状や織物のシートであり、例えば、ソフ(登録商標)(住化積水フィルム株式会社製)やワリフ(登録商標)(JX ANCI株式会社製)を用いることができる。このようなクロスシート21は、引裂強さが大きいだけではなく、形状安定性に優れる。
【0029】
押出フィルム層22は、第一積層体20をフォーム材シート10に接着する部材である。押出フィルム層22は、例えば、Tダイを用いてクロスシート21上に押出成形された樹脂フィルムとすることが好ましい。押出フィルム層22を押出成形することで、フォーム材シート10と第一積層体20とが押出ラミネートによって強固に一体化し、その結果、養生シート1が押出ラミネートにより得られる特徴である引裂強さを発揮する。押出フィルム層22は、樹脂フィルムとしてクロスシート21上に一様に形成することで、養生シート1全体の通気性をさらに小さくすることができ、蒸気養生において蒸気漏れの発生を確実に防止することができる。また、クロスシート21上に押出フィルム層22となる樹脂フィルムをプレコートとして形成し、熱ラミネートや超音波溶着等の方法により、フォーム材シート10と第一積層体20とを接着したり、押出フィルム層22に代えて、ドライラミネート、ウエットラミネートにおいてクロスシート21の全面に接着樹脂を塗布することで樹脂フィルムを形成し、フォーム材シート10と第一積層体20とを接着してもよい。樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、及びブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、及び共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、ポリアクリレート樹脂、並びにエチレン-四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン、及びパーフルオロエチレン-パーフルオロプロピレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等が挙げられ、特に、経済性や生産性に優れるポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合した混合物として用いてもよい。押出フィルム層22の厚みは、3~50μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。押出フィルム層22の厚みが上記の範囲にあれば、フォーム材シート10と第一積層体20との押出ラミネートによる接着が十分な強度を有し、養生シート1が耐久性に優れたものとなる。また、押出フィルム層22となる樹脂フィルムの硬さが抑えられ、養生シート1は柔軟で取り扱いが容易となり、型枠に被せた際に型枠への追従性が良好であるため蒸気漏れも起こりにくい。
【0030】
第二積層体30は、フォーム材シート10と対向する側とは反対側の最外層に無通気性フィルム32が配され、この無通気性フィルム32のフォーム材シート10側に押出フィルム層33、クロスシート31、及び押出フィルム層34がこの順に積層された積層構造を有する。第二積層体30におけるクロスシート31は、第一積層体20におけるクロスシート21と同様の構成であり、第二積層体30における押出フィルム層33,34は、第一積層体20における押出フィルム層22と同様の構成である。
【0031】
無通気性フィルム32は、例えば、基材となる樹脂に金属粒子を練り込んだ金属練り込みフィルム、基材となる樹脂フィルムに金属を蒸着した金属蒸着フィルム等を用いることができ、特に、耐久性に優れる金属練り込みフィルムを用いることが好ましい。金属練り込みフィルムの基材となる樹脂としては、押出フィルム層22と同様のものを用いることができる。金属練り込みフィルムに練り込む金属としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銀、錫、チタン、鉄、亜鉛、銅、珪素、及びマグネシウムが挙げられ、特に、経済性や生産性に優れるアルミニウム又はステンレスが好ましい。これらの金属は単体で用いてもよいし、これらを合金として用いてもよい。無通気性フィルム32は、「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.26 通気性」に規定のA法(フラジール形法)に準拠して、フラジール形試験機により測定される通気性(以下、単に「通気性」と称する。)が1cm/(cm・s)以下であることが好ましい。無通気性フィルム32の通気性が1cm/(cm・s)以下であれば、蒸気漏れを防ぐとともに、養生シート1の保温性を向上させることができる。
【0032】
押出フィルム層22,33,34、及び無通気性フィルム32には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤、可塑剤、末端封鎖剤、滑剤、有機滑剤、塩素捕捉剤、ブロッキング剤、及び粘度調整剤等を必要に応じて添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、及びニッケル系等の薬剤が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾトリゾアール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、有機ニッケル系、ヒンダードピペリジン系、及びヒンダードアミン系の薬剤が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系、ブレンド系、及びホスファイト系等の薬剤が挙げられる。
【0033】
養生シート1の厚みは、0.5~7mmであることが好ましく、2~5mmであることがより好ましい。本発明において養生シート1の厚みは、「JIS K 7153 プラスチック-試験片の直線寸法の求め方」の「5.6 ノギスによる測定」に規定の方法に準拠して、試験片の表面を圧縮又は損傷しないようにノギスの外側用ジョウを接触させて測定した測定値である。養生シート1の厚みが上記の範囲にあれば、適切な保温性が得られるフォーム材シート10を含んだ上で、適度なハリやコシと型枠の形状に対する良好な追従性が得られ、施工性や運搬性に優れたものとなる。
【0034】
養生シート1の単位面積当たりの重量は、100~700g/mであることが好ましい。単位面積当たりの重量が上記の範囲にあれば、施工性や運搬性に優れたものとなり、特に、施工時に風の影響によるバタつき等を軽減することができる。
【0035】
養生シート1は、「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.17 引裂強さ」に規定のA法(シングルタング法)に準拠して、引張試験機により測定される引裂強さ(以下、単に「引裂強さ」と称する。)が、100~300Nであることが好ましく、120~250Nであることがより好ましい。製造工場ではプレキャストコンクリート部材の製造に鋼製型枠が使用されるため、蒸気養生において養生シート1を被せたり外したりする際に型枠に引っ掛かり易いが、養生シート1の引裂強さが上記の範囲にあれば、鋼製型枠に引っ掛けても裂けや破れ等の破損が容易に生じない十分な強度を有するものとなる。
【0036】
養生シート1の製品形態としては、ロールが好ましく、そのサイズは、幅が0.8~2mであり、1巻の長さが10~400mであることが好ましく、幅が1~1.5mであり、1巻の長さが20~200mであることがより好ましい。このような製品形態であれば、養生シート1の施工性、運搬性の面で優れたものとなる。
【0037】
なお、養生シート1は、蒸気養生において型枠の形状に追従する柔軟性を損なわない範囲で、第一積層体20、及び第二積層体30に他の層を追加してもよい。例えば、第一積層体20に、金属練り込みフィルムを無通気性フィルムとして追加してもよい。ただし、第一積層体20における最外層をクロスシート21とするために、第一積層体20において無通気性フィルムは、クロスシート21よりもフォーム材シート10側に積層することが好ましい。
【0038】
以上のように構成された養生シート1は、蒸気養生において、最外層にクロスシート21を有する第一積層体20を蒸気が供給されたコンクリート側に向け、最外層に無通気性フィルム32を有する第二積層体30を外気側に向けて使用することが好ましい。このような使用方法では、養生シート1は、コンクリート側において引裂強さに優れるクロスシート21が型枠と接触するため、養生シート1を被せたり外したりする際に型枠に引っ掛かっても容易に破損することがない。また、無通気性フィルム32が外気と接触することで、蒸気養生における蒸気の保温性がより向上したものとなる。ただし、本発明の養生シート1は、上記とは逆に、最外層に無通気性フィルム32を有する第二積層体30を蒸気が供給されたコンクリート側に向け、最外層にクロスシート21を有する第一積層体20を外気側に向けて使用した場合であっても、蒸気養生において、実用上問題のない保温性、無通気性、並びに強度及び耐久性を有する。
【0039】
<プレキャストコンクリート部材製造用養生シート>
図2は、本発明に係るプレキャストコンクリート部材製造用養生シート100の斜視図である。例えば、幅が0.8~2mであり、1巻の長さが10~400mである養生シートでは、大型のボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材を製造する際に、そのままでは型枠全体を覆うことができない。そこで、大型のプレキャストコンクリート部材を製造する際には、複数枚の養生シート1を接合し、大型のプレキャストコンクリート部材製造用養生シート100として使用することが好ましい。
【0040】
プレキャストコンクリート部材製造用養生シート100は、例えば、複数の長尺状の養生シート1を基布片として幅方向に並べ、隣接する二枚の養生シート1の長辺同士を接合することで得られる。また、カバーする型枠が基布片となる養生シート1よりも長い場合には、複数の養生シート1を基布片として長手方向に並べ、隣接する二枚の養生シート1の短辺同士を接合することで、型枠全体を覆うことができるプレキャストコンクリート部材製造用養生シート100を形成することができる。プレキャストコンクリート部材製造用養生シート100の形状及びサイズは、カバーする型枠の形状、サイズ等に応じて選定すればよい。
【0041】
プレキャストコンクリート部材製造用養生シート100において、基布片となる養生シート1の接合方法は、縫製、融着、接着等が挙げられ、特に、接合部1aの接合強度が優れたものとなる縫製により接合することが好ましい。さらに、縫製に加えて、融着や接着を組み合わせることにより、接合部1aの接合強度をさらに高めることができる。
【0042】
基布片を縫製により接合する場合、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、及び扁平縫い等の通常適用されている縫い方により実施することができる。縫い糸の太さは、700dtex(20番手相当)~2800dtex(0番手相当)であることが好ましく、運針数は2~10針/cmであることが好ましい。接合強度の観点から、基布片となる養生シート1が接合された接合部1aには、複数列の縫い目線が形成されていることが好ましい。複数列の縫い目線は、例えば、縫い目針間の距離を2~30mm程度とした多針型ミシンを用いて形成することができるが、接合部1aが短い場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものから適宜選定すればよい。縫い糸の素材としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、及びスチール等が挙げられる。また、縫い糸の形態は、紡績糸、フィラメント合撚糸、フィラメント樹脂加工糸等とすることができる。基布片を融着により接合する場合、熱融着や高周波溶着等により行うことができ、基布片を接着により接合する場合、接着剤を用いて行うことができる。
【0043】
プレキャストコンクリート部材製造用養生シート100は、接合部1aにおいて隣接する二枚の養生シート1が重なり合うことが好ましい。これにより、接合部1aからの蒸気の漏れをより確実に抑制することができる。
【0044】
プレキャストコンクリート部材製造用養生シート100には、施工方法に応じて端部や角部にハトメを設けてもよい。ハトメの材質は限定せず、真鍮、アルミ、鉄等を使用することができる。
【0045】
以上のように構成されたプレキャストコンクリート部材製造用養生シート100は、
養生シート1からなる複数の長尺状の基布片を接合してなるため、大型のボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材の製造において、蒸気を漏らすことがないように、大型の型枠全体を隙間なく覆うことができるサイズに形成することができる。さらに、接合部1aが縫製により接合されている場合、養生シートを被せたり外したりする際に、接合部1aが型枠に引っ掛かっても破損しにくい強度を有するものとなる。
【実施例0046】
以下、本発明のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートの実施例について説明する。本実施例では、本発明の構成を有するプレキャストコンクリート部材製造用養生シート(実施例1~5)を作製した。また、比較のため、フォーム材シートの一方側にクロスシートを含む積層体を設けているが、他方側には当該積層体ではない層を設けたプレキャストコンクリート部材製造用養生シート(比較例1)を作製した。
【0047】
<実施例1>
厚みが3mm強の無架橋ポリエチレン発泡シート(フォーム材シート)を準備した。アルミ練り込みポリエチレンフィルムと、ポリエチレンフラットヤーンを経緯ともに8本/2.54cmで平織にしたフラットヤーン織物(クロスシート)とを準備し、これらをTダイ押出成形により成形したポリエチレン押出フィルム層を介して押出ラミネートにより積層接着した。この積層体のクロスシート側の面に、押出成形によりポリエチレン押出フィルム層を積層し、さらに押出ラミネートにより無架橋ポリエチレン発泡シートを積層し、フォーム材シートの片側に第二積層体が積層された中間体を作製した。
【0048】
次に、ポリエチレンフラットヤーンを経緯ともに8本/2.54cmで平織にしたフラットヤーン織物(クロスシート)を準備し、このクロスシート上に、押出成形によりポリエチレン押出フィルム層を積層し、第一積層体とした。この第一積層体のポリエチレン押出フィルム層側の面と、先に作成した中間体のフォーム材シート側の面とを対向させ、熱ラミネートにより積層し、幅2m、長さ20mの養生シートを得た。
【0049】
この養生シートを10枚使用して、隣接する養生シートの長辺同士をポリエステル5番のミシン糸を使用して2重環縫いミシンにより5mmピッチで縫製することで接合し、縦方向に約20m、横方向に約20mの正方形のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを得た(実施例1)。なお、養生シートの作成に用いたアルミ練り込みポリエチレンフィルムは、JIS L 1096に規定のフラジール形法に準拠して測定される通気性が0cm/(cm・s)であった。
【0050】
<実施例2>
フォーム材シートとして、厚みが1mm強の無架橋ポリエチレン発泡シートを用いた。その他は、実施例1に準じて、実施例2のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを得た。
【0051】
<実施例3>
フォーム材シートとして、厚みが5mm強の無架橋ポリエチレン発泡シートを用いた。その他は、実施例1に準じて、実施例3のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを得た。
【0052】
<実施例4>
養生シートにおける積層構造は、実施例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートと同一であるが、実施例4のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、蒸気養生及び後述の各評価において、実施例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートとは表裏を反転させた。
【0053】
<実施例5>
実施例1において使用したものと同一の養生シートを10枚使用して、隣接する養生シートの長辺同士を一部重ね合わせて熱融着により接合し、実施例5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを得た。
【0054】
<比較例1>
実施例1において作製した中間体のフォーム材シート側の面に、押出成形によりポリエチレン押出フィルム層のみを積層した。その他は、実施例1に準じて、比較例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートを得た。
【0055】
実施例1~5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シート、及び比較例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートについて、夫々10枚ずつ使用し、各種測定及び評価を行った。
【0056】
<測定方法>
1.1 厚み[mm]
「JIS K 7153 プラスチック-試験片の直線寸法の求め方」の「5.6 ノギスによる測定」に規定の方法に準拠して、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの厚みを測定した。
【0057】
1.2 単位面積当たりの質量[g/m
「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.3 単位面積当たりの質量」に規定のA法(JIS法)に準拠して、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの単位面積当たりの質量を測定した。
【0058】
1.3 養生シートの引裂強さ[N]
「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.17 引裂強さ」に規定のA法(シングルタング法)に準拠して、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートに用いた養生シートの引裂強さを測定した。
【0059】
1.4 接合部の強度[N]
水平に支持したプレキャストコンクリート部材製造用養生シートの接合部にバネ秤のJ字様のフックの先端を引っ掛け、その後、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートに水平方向に力を加え、接合部が破れる時点での荷重を測定し、接合部の強度とした。
【0060】
<評価方法>
2.1 耐久性(耐破れ)
プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生において、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートを、毎月20回の使用頻度で2年間使用し、その後、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの表面状態を目視で観察した。評価基準は、以下のとおりとした。
(評価基準)
A:10mm以上の破れが0~5個/100mであり、接合部に破れがない。
B:10mm以上の破れが6~10個/100mであり、接合部に破れがない。
C:10mm以上の破れが0~5個/100mであるが、接合部に破れが多数ある。
D:10mm以上の破れが10個/100m以上であり、接合部にも破れがある。
【0061】
2.2 耐久性(養生シートの引裂強さ[N])
プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生において、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートを、毎月20回の使用頻度で2年間使用し、その後、「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.17 引裂強さ」に規定のA法(シングルタング法)に準拠して、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの接合部を含まない位置で引裂強さを測定した。
【0062】
2.3 耐久性(接合部の強度[N])
プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生において、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートを、毎月20回の使用頻度で2年間使用し、その後、上記の「1.4 接合部の強度[N]」に記載の方法により、耐久性(接合部の強度)を測定した。
【0063】
2.4 折り曲げ反発性[g]
使用前のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートから200mm×50mmの試験片を採取し、試験片を長辺の中央部で180度に折り曲げた。この試験片を0~1kgまで計測可能な重量計に乗せ、指で上方から押さえて180度に折り曲げた状態を維持したまま、重量計が示す値を読み取った。読み取った値から試験片の重さを差し引いた値を折り曲げ反発性とした。
【0064】
2.5 保温率[%]
「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」の「8.27 保温性」に規定のA法(恒温法)に準拠して、ASTM形保温性試験機を用いて、20℃、65%RHの試験環境において保温率を求めた。なお、実施例1~3,5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シート、及び比較例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、ASTM形保温性試験機において、第一積層体側を恒温発熱体に接触させ、実施例4のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、ASTM形保温性試験機において、第二積層体側を恒温発熱体に接触させて、保温率を測定した。
【0065】
2.6 施工性
ボックスカルバート(幅7.0m、高さ5.5m、奥行き2.0m)の製造における蒸気養生において、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートを型枠の上から施工し、その施工性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
(評価基準)
A:初期からこなれている。
B:初期は嵩張るが5回蒸気養生に使用した後はこなれている。
C:初期は嵩張るが20回蒸気養生に使用した後はこなれている。
D:200回蒸気養生に使用した後も嵩張る。
【0066】
実施例1~5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シート、及び比較例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートの詳細、測定結果、及び評価を表1に示す。なお、表1において、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートを構成する各層の厚みは、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの断面をスケール付きの拡大鏡を用いて20倍の倍率で拡大し、目視にて読み取った測定値を示している。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1~5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、何れも使用前の養生シートの引裂強さが150N以上であることから、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に適した強度を有し、且つ2年間使用後の耐久性の評価において養生シートの引裂強さが100N未満に低下することがないことから、製造工場での頻繁な繰り返し使用に耐え得る優れた耐久性を有することが確認された。なお、2年間使用後の目視による耐久性(耐破れ)の観察においても、10mm以上破れた箇所が少なく、耐久性を持続していた。
【0069】
接合方法が縫製である実施例1~4のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、何れも使用前の接合部の強度が300N以上であり、且つ2年間使用後の耐久性の評価において接合部の強度が300N以上に維持されていることから、製造工場での頻繁な繰り返し使用において、型枠に被せたり外したりする際に、接合部が型枠に引っ掛かっても破損しにくい強度を有することが確認された。特に、実施例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、接合方法が熱融着である実施例5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートと同じ養生シートを接合したものであるが、使用前の接合部の強度、及び2年間使用後の接合部の強度の何れも、実施例5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートよりも大きかった。従って、プレキャストコンクリート部材製造用養生シートの接合部の接合方法は、縫製によるものがより好ましいと言える。
【0070】
また、実施例1~5のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、何れも保温率が36%以上であり、蒸気養生に十分な保温性を有することが確認された。なお、実施例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートと、実施例4のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートとは、同一の構造であるが、実施例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、保温率の測定において、第一積層体のクロスシートを恒温発熱体に接触させ、第二積層体の無通気性フィルムを外気に接触させたところ、第二積層体の無通気性フィルムを恒温発熱体に接触させ、第一積層体のクロスシートを外気に接触させた実施例4のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートよりも保温率が高くなった。このことから、本発明に係るプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、最外層が無通気性フィルムからなる第二積層体側を外気に接するように使用することが望ましいと言える。
【0071】
一方、第一積層体にクロスシートを有しない比較例1のプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、使用前の養生シートの引裂強さが80N、接合部の強度が127Nと何れも低く、且つ2年間使用後の耐久性の評価において養生シートの引裂強さが30Nまで大幅に低下し、接合部の強度も83Nまで大幅に低下したことから、プレキャストコンクリート部材の製造における蒸気養生に求められる強度及び耐久性を有するものではなかった。なお、2年間使用後の目視による耐久性(耐破れ)の観察において、10mm以上の破れが100個/100m以上観察され、接合部に破れが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の養生シート、及びプレキャストコンクリート部材製造用養生シートは、製造工場におけるボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材の製造において、蒸気養生に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 養生シート
10 フォーム材シート
20,30 積層体
21,31 クロスシート
22,33,34 押出フィルム層
32 無通気性フィルム
100 プレキャストコンクリート部材製造用養生シート
図1
図2