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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183881
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】偏光板および有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221206BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221206BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20221206BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221206BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/30 365
G09F9/00 307A
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091396
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有賀 草平
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB11
2H149AB14
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149DA35
2H149DB28
2H149DB33
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA19
2H149FA02Z
2H149FA03W
2H149FA05Y
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA54Y
2H149FA54Z
2H149FA66
2H149FA70
2H149FD05
2H149FD09
2H149FD25
2H149FD47
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF15
5C094AA31
5C094BA27
5C094DA12
5C094ED14
5C094ED20
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094JA01
5C094JA08
5C094JA09
5C094JA11
5C094JA13
5G435AA14
5G435BB05
5G435DD12
5G435FF05
5G435GG16
5G435HH02
5G435HH20
(57)【要約】
【課題】紫外線遮蔽性を有し、紫外線吸収剤のブリードアウトや結晶化が抑制された有機EL表示装置用偏光板を提供する。
【解決手段】偏光板(10)は、第一主面および第二主面を有する偏光子(11)と、偏光子の第一主面側に積層された位相差層(13)とを備え、偏光子の第一主面側が有機ELセル(70)に対向するように配置して用いられる。位相差層(13)は、厚みが5μmより大きく、波長380nmにおける光透過率が60%以下である第一位相差層を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面および第二主面を有する偏光子と、前記偏光子の第一主面側に積層された第一位相差層とを備え、前記偏光子の第一主面側が有機ELセルに対向するように配置される有機EL表示装置用偏光板であって、
前記第一位相差層は、厚みが5μmより大きく、波長380nmにおける光透過率が60%以下である、
有機EL表示装置用偏光板。
【請求項2】
波長380nmにおける光透過率が4%以下である、請求項1に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項3】
前記第一位相差層が紫外線吸収剤を含む、請求項1または2に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項4】
前記第一位相差層に含まれる紫外線吸収剤の濃度が、0.01~1.5重量%である、請求項3に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項5】
前記第一位相差層の遅相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向とのなす角が10°~80°である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項6】
前記第一位相差層の遅相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向とのなす角が40°~50°である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項7】
前記第一位相差層の波長550nmにおける正面レターデーションR(550)が、100~180nmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項8】
前記第一位相差層は、波長450nmにおける正面レターデーションR(450)が、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)よりも小さい、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項9】
前記第一位相差層が延伸フィルムである、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項10】
前記第一位相差層が斜め延伸フィルムである、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項11】
前記偏光子と前記第一位相差層との間、または前記第一位相差層の前記偏光子と反対側の面に、第二位相差層を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項12】
前記第二位相差層は、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nz>nx≧nyを満たす、請求項11に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項13】
さらに、前記偏光子の第二主面側に積層された透明フィルムを備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項14】
前記透明フィルムの波長380nmにおける光透過率が15~30%である、請求項13に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項15】
前記透明フィルムがセルロース系樹脂フィルムである、請求項13または14に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項16】
前記偏光子と前記透明フィルムとの積層体の波長380nmにおける光透過率が5~9%である、請求項13~15のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項17】
偏光板を構成する光学層の中で、前記第一位相差層が最も厚みが大きい、請求項1~16のいずれか1項に記載の有機EL表示装置用偏光板。
【請求項18】
有機ELセルと、前記有機ELセルの光出射面側に配置された偏光板とを備え、前記偏光板が、請求項1~17のいずれか1項に記載の偏光板である、有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の表示デバイスにおいて、有機EL素子を搭載した有機EL表示装置が実用化されている。有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、有機ELセル(有機EL素子)の視認側表面に円偏光板が配置される。
【0003】
外光に含まれる紫外線が有機EL素子に入射すると、有機EL素子の劣化の原因となり得る。紫外線による有機EL素子の劣化を抑制するために、有機ELセルの視認側表面に紫外線吸収剤を含有する層を配置することが提案されている。例えば、特許文献1では、円偏光板と有機ELセルとを貼り合わせるための粘着剤層、または円偏光板の視認側表面にカバーウインドウを貼り合わせるための粘着剤層に紫外線吸収剤を含めることにより、紫外線吸収性を付与することが提案されている。特許文献2では、円偏光板のλ/4板を構成する配向液晶層に紫外線吸収剤を含めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-139108号公報
【特許文献2】特開2017-120431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、紫外線による有機EL素子の劣化を抑制するためには、有機EL素子の視認側に配置される光学部材に紫外線遮蔽性を持たせる必要がある。しかし、特許文献1で提案されているように、粘着剤層に紫外線吸収剤を含めると、紫外線吸収剤のブリードアウトや結晶化等に起因する透明性の低下や接着性低下等の物性変化が懸念される。また、特許文献2で提案されているように、配向液晶層に紫外線吸収剤を添加する場合は、配向液晶層の厚みが小さいため、紫外線遮蔽性を高める(有機EL素子に到達する紫外線の量を十分に低減する)には紫外線吸収剤の濃度を高める必要があり、液晶分子の配向不良や紫外線吸収剤のブリードアウトが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、偏光子の一方の面(第一主面)に位相差層を備える有機EL表示装置用偏光板に関する。有機EL表示装置では、偏光板の位相差層が配置されている面(偏光子の第一主面側)が、有機ELセルに対向するように配置される。
【0007】
偏光子の一方の面に貼り合わせられた位相差層は、1層または2層以上からなり、少なくとも1層の位相差層(第一位相差層)は、厚みが5μmより大きく、波長380nmにおける光透過率が60%以下である。
【0008】
偏光子の一方の面に配置された位相差層が複数の位相差層の積層構成であり、上記の第一位相差層に加えて第二位相差層を含む場合、第一位相差層と偏光子との間に第二位相差層が配置されていてもよく、第一位相差層の偏光子と反対側の面に第二位相差層が配置されていてもよい。位相差層は3層以上の積層構成であってもよい。
【0009】
第一位相差層は、紫外線吸収剤を含んでいてもよく、第一位相差層に含まれる紫外線吸収剤の濃度は、0.01~1.5重量%であってもよい。
【0010】
有機EL表示装置用偏光板において、第一位相差層の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向は、平行でも直交でもない角度で配置されていてもよい。第一位相差層の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角度は、例えば10°~80°であり、40°~50°であってもよい。
【0011】
一実施形態において、第一位相差層は、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)が100~180nmである1/4波長板(λ/4板)である。偏光子の一方の面に配置された位相差層が複数の位相差層の積層構成である場合、第一位相差層以外の位相差層がλ/4板であってもよい。
【0012】
一実施形態において、第一位相差層は、波長450nmにおける正面レターデーションR(450)が、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)よりも小さい。偏光子の一方の面に配置された位相差層が複数の位相差層の積層構成である場合、第一位相差層以外の位相差層がR(450)<R(550)を満たしていてもよい。
【0013】
有機EL表示装置用偏光板は、偏光子の一方の面に上記の位相差層が積層され、偏光子の他方の面に偏光子保護フィルムとしての透明フィルムが積層されたものであってもよい。偏光子保護フィルムとしての透明フィルムは、波長380nmにおける光透過率が15~30%であってもよい。偏光子保護フィルムとしての透明フィルムは、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂フィルムであってもよい。
【0014】
偏光子と透明フィルムとの積層体の波長380nmにおける光透過率は、5~9%であってもよい。偏光板の波長380nmにおける光透過率は4%以下が好ましい。
【0015】
一実施形態では、偏光板を構成する光学層の中で、第一位相差層が最も厚みが大きい。
【発明の効果】
【0016】
厚みが大きい位相差層に紫外線遮蔽性を持たせることにより、有機EL素子に入射する紫外線が低減されるため、有機EL素子の劣化を抑制できる。厚みが大きい位相差層は、低濃度の紫外線吸収剤で、紫外線の透過率を十分に小さくできるため、紫外線吸収剤の結晶化やブリードアウトを抑制しつつ、有機EL素子の劣化抑制に必要な紫外線遮蔽性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の有機EL表示装置の積層構成を示す断面図である。
図2】一実施形態の偏光板の積層構成を示す断面図である。
図3】一実施形態の偏光板の積層構成を示す断面図である。
図4】一実施形態の偏光板の積層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、一実施形態の有機EL表示装置の積層構成を示す断面図である。有機EL表示装置901は、有機ELセル70の光出射面に、偏光板10を備える。偏光板10の視認側表面には、必要に応じてカバーウインドウ80が配置されていてもよい。
【0019】
有機ELセル70は、トップエミッション型でもボトムエミッション型でもよい。トップエミッション型の有機ELセルは、基板上に、金属電極、有機発光層および透明電極を順に備え、基板と反対側の面から光を取り出す構成である。ボトムエミッション型の有機ELセルは、基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極を順に備え、基板側の面から光を取り出す構成である。
【0020】
有機ELセルの基板としては、ガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。トップエミッション型の有機ELセルでは、基板は透明である必要はなく、基板としてポリイミドフィルム等の高耐熱性フィルムを用いてもよい。有機発光層は、それ自身が発光層として機能する有機層の他に、電子輸送層、正孔輸送層等を備えていてもよい。透明電極は、金属酸化物層または金属薄膜であり、有機発光層からの光を透過する。
【0021】
有機ELセルの金属電極は光反射性である。そのため、外光が有機ELセルの内部に入射すると、金属電極で光が反射し、外部からは反射光が鏡面のように視認される。有機ELセルの視認側表面に、円偏光板を配置することにより、金属電極での反射光の外部への再出射を防止して、画面の視認性および意匠性を向上できる。
【0022】
[有機EL表示装置用偏光板の構成]
円偏光板10(有機EL表示装置用偏光板)は、偏光子11の一方の面(第一主面)に積層された位相差層13を備え、位相差層13側の面が、有機ELセル70に対向するように配置される。偏光子11と位相差層13とは、適宜の接着剤または粘着剤を介して貼り合わせられていることが好ましい。偏光子11と位相差層13との間に、適宜の透明保護フィルムが配置されていてもよい。
【0023】
<偏光子>
偏光子11としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0024】
偏光子11として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号、特許第4751481号に記載されている偏光子が挙げられる。薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素等の二色性材料により染色する工程とを含む製法により得られる。
【0025】
<位相差層>
位相差層13が、λ/4の正面レターデーションを有し、位相差層13の遅相軸方向と偏光子11の吸収軸方向とのなす角度が45°である場合に、偏光子11と位相差層13との積層体である偏光板が、有機ELセル70の金属電極での反射光の再出射を抑制するための円偏光板として機能する。
【0026】
位相差層13は、単一層でもよく、複数層からなるものでもよい。例えば、偏光子11とλ/2板とλ/4板とを、それぞれの光学軸が所定の角度をなすように積層することにより、可視光の広帯域にわたって円偏光板として機能する広帯域円偏光板が得られる。また、λ/4板に加えて、nx>nz>nyまたはnz>nx≧nyの屈折率異方性を有する位相差層を積層することにより、表示装置の斜め方向(法線方向から傾いた方向)の反射光を低減できる。
【0027】
本発明においては、偏光子11の第一主面側に積層された位相差層13の少なくとも1層(以下「第一位相差層」と記載)が、5μmよりも大きい厚みを有し、かつ紫外線遮蔽性を有している。例えば、第一位相差層が紫外線吸収剤を含有することにより、紫外線遮蔽性を付与できる。位相差層13が複数層からなる場合、最も厚みの大きい層が紫外線遮蔽性を有していることが好ましい。
【0028】
第一位相差層の波長380nmにおける光透過率は、60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、または30%以下であってもよい。第一位相差層の波長380nmにおける光透過率は、0%であってもよく、0.1%以上、0.5%以上または1%以上であってもよい。
【0029】
第一位相差層は、可視光の吸収が少なく、透明であることが好ましい、第一位相差層の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。第一位相差層の波長440nmにおける光透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0030】
第一位相差層の厚みは、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましく、25μm以上または30μm以上であってもよい。第一位相差層の厚みが大きいほど、低濃度の紫外線吸収剤でも、高い紫外線遮蔽性(小さな紫外線透過率)を実現できる。第一位相差層の厚みの上限は特に限定されないが、位相差層の形成性や画像表示装置の薄型化の観点から、250μm以下が好ましく、200μm以下、150μm以下または100μm以下であってもよい。
【0031】
第一位相差層は、自己支持性を有するフィルムであることが好ましい。第一位相差層の引張弾性率(ヤング率)は、1~4GPa程度であってもよい。
【0032】
第一位相差層の材料としては、非液晶性の樹脂材料(ポリマー)が好ましい。非液晶性材料を用いることにより、第一位相差層の厚みを上記範囲として、低濃度の紫外線吸収剤の添加で高い紫外線遮蔽性を付与できる。非液晶性の樹脂材料としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系(ポリノルボルネン系)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースエステル類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、フマル酸エステル系樹脂等が挙げられる。
【0033】
(紫外線吸収剤)
第一位相差層が紫外線吸収剤を含有することにより、可視光の透明性を維持しつつ、紫外線吸収性を付与できる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつ各種ポリマーとの相溶性に優れることから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤、および1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0034】
紫外線吸収剤として市販品を用いてもよい。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 400」)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 405」)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 460」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「TINUVIN 577」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 479」), 2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製「Tinosorb S」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(ADEKA製「ADK STAB LA-46」)、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(ADEKA製「ADK STAB LA-F70」等が挙げられる。
【0035】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BASF製「TINUVIN PS」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 900」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製「TINUVIN571」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(BASF製「TINUVIN P」、ADEKA製「ADK STAB LA-36G」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 234」)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 326」、ADEKA製「ADK STAB LA-36G」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(BASF製「TINUVIN 328」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 329」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(ADEKA製「ADK STAB LA-29」)、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](ADEKA製「ADK STAB LA-31G」)、ベンゼンプロパン酸と3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物(BASF製「TINUVIN384-2」)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(BASF製「TINUVIN1 130」)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(BASF製「TINUVIN 213」)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(住友化学製「Sumisorb250」)等が挙げられる。
【0036】
第一位相差層の紫外線吸収剤の含有量(濃度)は、1.5重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.7重量%以下または0.5重量%以下であってもよい。第一位相差層は厚みが5μmよりも大きいため、紫外線吸収剤の濃度が小さい場合でも、有機EL素子の劣化抑制に必要な紫外線遮蔽性を持たせることが可能である。紫外線吸収剤の濃度を高める必要がないため、紫外線吸収剤の析出や結晶化等に起因する表面性の変化や透明性の低下等が抑制される。紫外線遮蔽性を高める観点から、第一位相差層の紫外線吸収剤の濃度は、0.01重量%以上が好ましく、0.03重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上、0.07重量%以上、または0.1重量%以上であってもよい。
【0037】
<偏光子保護フィルム>
偏光板10は、偏光子11の視認側の面(第二主面)に、適宜の接着剤または粘着剤を介して、偏光子保護フィルムとしての透明フィルム12が積層されたものであってもよい。偏光子11の視認側に配置される透明フィルム12は、可視光の吸収が少なく、透明であることが好ましい。透明フィルム12の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。透明フィルム12の波長440nmにおける光透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0038】
透明フィルム12の材料としては、非液晶性の樹脂材料が好ましく、その具体例としては第一位相差層の樹脂材料として前述したものが挙げられる。中でも、機械強度および透明性に優れ、偏光子との接着性にも優れることから、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましい。
【0039】
透明フィルム12の厚みは特に限定されないが、ハンドリング性および表面保護性等の観点から、5~250μmが好ましく、10~100μmまたは15~50μmであってもよい。透明フィルム12の偏光子11と反対側の面(視認側の面)には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層等が設けられていてもよい。
【0040】
偏光子11の視認側に配置される透明フィルム12は、紫外線遮蔽性を有していてもよく、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。一方、透明フィルム12のみで、有機EL素子の劣化を防止するための紫外線遮蔽性を持たせることは困難であり、紫外線遮蔽性(紫外線吸収性)を高めるために紫外線吸収剤の添加量を増大させると、紫外線吸収剤のブリードアウトや結晶化等の問題が生じる場合がある。透明フィルム12の波長380nmにおける光透過率は、15~30%であってもよい。
【0041】
上記のように、偏光板10は、偏光子11の有機ELセル70側に配置される位相差層13が紫外線遮蔽性を有している。そのため、透明フィルム12による紫外線遮蔽性が十分でない場合でも、偏光板10に、有機EL素子の劣化を抑制可能な紫外線遮蔽性(例えば、波長380nmにおける光透過率が4%以下)を持たせることができる。
【0042】
偏光板10の波長380nmにおける光透過率は、4%以下が好ましく、3.5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2.5%以下または2%以下であってもよい。位相差層13を貼り合わせる前の偏光子11と透明フィルム12との積層体(偏光子11の片面に透明フィルム12が積層された片保護偏光板)の波長380nmにおける光透過率は、5~9%であってもよい。
【0043】
<粘接着剤層>
上記の通り、偏光子11と位相差層13、および偏光子11と透明フィルム12は、それぞれ、適宜の接着剤または粘着剤を介して貼り合わせられる。粘接着剤層の厚みは、例えば、0.01~30μm程度である。
【0044】
接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤系、活性エネルギー線硬化型接着剤等の各種形態のものが用いられる。これらの中でも、接着剤層の厚みを小さくできることから、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。塗布後の硬化反応により接着性を示す接着剤を用いる場合、接着剤層の厚みは0.01~5μmが好ましく、0.03~3μmがより好ましい。
【0045】
水系接着剤のポリマー成分としては、ビニルポリマー、ゼラチン、ビニル系ラテックス、ポリウレタン、ポリエステ系、エポキシ等を例示できる。これらの中でも、易接着フィルムと偏光子との接着性に優れることから、ビニルポリマーが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の中でも、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコールが好ましい。
【0046】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合可能な接着剤である。中でも、低エネルギーで硬化可能であることから、紫外線照射により重合が開始する光ラジカル重合性接着剤、光カチオン重合性接着剤、または光カチオン重合と光ラジカル重合を併用するハイブリッド型接着剤が好ましい。
【0047】
ラジカル重合性接着剤のモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、ビニル基を有する化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。カチオン重合性接着剤の硬化性成分としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物が用いられる。
【0048】
粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性を示し、かつ耐候性や耐熱性等に優れることから、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
粘着剤層の厚みは、1~30μmが好ましく、2~25μmがより好ましい。上記のように、位相差層13を構成する第一位相差フィルムが紫外線吸収性を有しているため、偏光子11と位相差層13または偏光子11と透明フィルム12を貼り合わせるための粘着剤層には紫外線吸収性を持たせる必要がない。そのため、紫外線遮蔽性を高める目的で粘着剤層の厚みを大きくする必要がなく、粘着剤層の薄型化が可能である。偏光子11と位相差層13または偏光子11と透明フィルム12を貼り合わせるための粘着剤層の厚みは、15μm以下、10μm以下または7μm以下であってもよい。
【0050】
偏光板10を構成する光学層の中で、上記の第一位相差層が最も厚みが大きい層であってもよい。偏光板10を構成する光学層は、偏光子11、透明フィルム12、位相差層13を構成する1または2以上の光学層(その中に第一位相差層が含まれる)、およびこれらの各層を貼り合わせるための粘接着剤層を含む。これらの中で、厚みが最も大きい第一位相差層に紫外線吸収剤を含有させることにより、低濃度の紫外線吸収剤で高い紫外線遮蔽性を付与できるため、紫外線吸収剤のブリードアウトや結晶化等を抑制しつつ、偏光板10に、有機EL素子の劣化抑制に必要な紫外線遮蔽性を持たせることができる。
【0051】
偏光板10の視認側の面には、カバーウインドウ80等の透明部材との貼り合わせのための粘着剤層21が設けられていてもよい。偏光板10の有機ELセル70側の面には、有機ELセルとの貼り合わせのための粘着剤層22が設けられていてもよい。これらの粘着剤層の厚みは、一般には、5~300μm程度である。
【0052】
粘着剤層21,22の表面には、粘着剤層の汚染防止等を目的として、セパレータを仮着してもよい。セパレータとしては、プラスチックフィルムの表面を、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、フッ素系離型剤等の剥離剤でコーティングしたものが好ましく用いられる。
【0053】
[位相差層の構成の具体例]
上記の通り、有機EL表示装置用偏光板10は、偏光子11の一方の面に位相差層13を備えることにより、円偏光板として機能して、有機ELセル70の金属電極等による反射光の再出射を抑制する。また、位相差層13は1または2以上の光学層からなり、そのうちの少なくとも1層(第一位相差層)が紫外線遮蔽性を有するため、有機EL素子の劣化抑制にも寄与する。以下では、偏光板10の位相差層13の構成の具体例について説明する。
【0054】
図2に示す偏光板102は、位相差層13が1層の位相差層131からなる構成である。位相差層131はλ/4板であり、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)は、100~180nmが好ましく、110~170nmがより好ましく、120~150nmがさらに好ましく、125~145nmであってもよい。
【0055】
位相差層131の遅相軸方向と、偏光子11の吸収軸方向とのなす角は、10~90°であり、40~50°が好ましく、43~47°または44~46°であってもよい。位相差層131がλ/4板であり、位相差層131の遅相軸方向と偏光子11の吸収軸方向とのなす角が45°付近であれば、偏光板102は円偏光板として作用する。
【0056】
λ/4板である位相差層131は、波長450nmにおける正面レターデーションR(450)が、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)よりも小さいものであってもよい。λ/4板は、R(450)<R(550)であることに加えて、波長650nmにおける正面レターデーションR(650)がR(550)より大きく、R(550)<R(650)を満たすものであってもよい。長波長ほど大きなレターデーションを有するλ/4板を用いることにより、円偏光板10が、可視光の広い波長領域で円偏光板として機能するため、反射光の色付きを低減できる。
【0057】
位相差層131のR(450)/R(550)は、0.70~0.95、0.75~0.90または0.80~0.87であってもよい。位相差層131のR(650)/R(550)は、1.05~1.30、1.10~1.25、または1.13~1.20であってもよい。
【0058】
位相差層131は、好ましくは延伸フィルムである。樹脂フィルムを所定方向に延伸して、正面レターデーションR(550)が上記範囲となる光学異方性を付与することにより、延伸フィルムである位相差層131が得られる。延伸方法は特に限定されず、ロール延伸機を用いた自由端一軸延伸であってもよい。樹脂フィルムの一方の面または両面に熱収縮フィルムを貼り合わせ、延伸と同時に熱収縮フィルムの収縮作用を利用して、延伸方向と直交する方法(幅方向)にフィルムを過剰に収縮させ、厚みが増大するように延伸を行ってもよい。延伸方法として、テンター延伸機を用いた横延伸、縦横二軸延伸、または斜め延伸を採用してもよい。
【0059】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料が正の固有複屈折を有する材料である場合、自由端一軸延伸により、nx>ny≒nzの屈折率異方性を有する位相差層(ポジティブAプレート)が得られる。nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。
【0060】
熱収縮フィルムの収縮力等を利用して幅方向に過剰に収縮させながら延伸を実施すると、厚み方向の屈折率nzが、幅方向(進相軸方向)の屈折率nyよりも大きくなるため、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差層が得られる。nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差層は、視認角度によるレターデーションの変化が小さいため、位相差層131として、nx>nz>nyの屈折率異方性を有するλ/4板を用いれば、表示装置の正面(法線方向)だけでなく、斜め方向の反射光も低減できる。
【0061】
上記のように、偏光板102では、偏光子11と位相差層131は、両者の光学軸が平行でも直交でもない方向(例えば、吸収軸方向と遅相軸方向のなす角が45°)となるように積層される。偏光子と位相差層をロールトゥーロールで積層して円偏光板を得るためには、位相差層13として斜め延伸フィルムを用いることが好ましい。例えば、長手方向(搬送方向)に対して45°方向が遅相軸方向となるように延伸した斜め延伸フィルムと、長手方向に吸収軸を有する偏光子とをロールトゥーロールで積層することにより、長尺の円偏光板を作製できるため、生産効率および歩留まりを大幅に向上できる。斜め延伸フィルムは、一般に、nx>ny>nzの屈折率異方性を有している。
【0062】
図3は、有機EL表示装置用偏光板の構成の他の例であり、偏光板103は、位相差層13が位相差層131と位相差層133の2層により構成されている。位相差層131は、図2の偏光板102における位相差層と同様のλ/4板である。位相差層133は、nz>nx≧nyの屈折率異方性を有している。
【0063】
例えば、位相差層131が、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有しており、位相差層133がnz>nx≒nyの屈折率異方性を有するポジティブCプレートである場合、位相差層133により、位相差層131の斜め方向の位相差が打ち消されるため、位相差層131と位相差層133との積層体である位相差層13は、nx>nz>nyの屈折率異方性を有し、視認角度によるレターデーションの変化が小さいため、表示装置の正面だけでなく、斜め方向の反射光も低減できる。
【0064】
nz>nx≒nyの屈折率異方性を有するポジティブCプレートとしては、液晶分子を位相差層の法線方向(厚み方向)に配向させたホメオトロピック配向液晶層、負の固有複屈折を有するポリマーをコーティングにより面内に配向させたコーティングフィルム、負の固有複屈折を有するポリマーのフィルムを正面レターデーションが略0となるように二軸延伸した延伸フィルム等が挙げられる。nx≒nyとは、nxとnyが完全に一致している場合に限定されず、正面レターデーションR(550)が10nm以下であればよい。ポジティブCプレートの正面レターデーションR(550)は、5nm以下が好ましく、3nm以下または1nm以下であってもよい。
【0065】
位相差層13が、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有する位相差層(λ/4板)131と、nz>nx≒nyの屈折率異方性を有する位相差層(ポジティブCプレート)133との積層構成である場合は、位相差層131および位相差層133のいずれか一方が紫外線遮蔽性を有する第一位相差層であればよい。紫外線吸収剤を含めることにより紫外線遮蔽性を付与する場合は、相対的に厚みが大きい位相差層が紫外線吸収剤を含み、波長380nmにおける光透過率が60%以下であることが好ましい。
【0066】
例えば、位相差層131が延伸フィルムであり、位相差層133が配向液晶層からなるポジティブCプレートである場合、一般的に延伸フィルムの方が液晶層よりも厚みが大きいため、相対的に厚みが大きい位相差層131が第一位相差層であり、波長380nmにおける光透過率が60%以下であることが好ましく、nz>nx≒nyである位相差層133(第二位相差層)は紫外線遮蔽性を有していなくてもよい。
【0067】
位相差層131および位相差層133の両方が非液晶性の樹脂材料からなるポリマーフィルムである場合は、位相差層131および位相差層133のいずれか一方が紫外線遮蔽性を有していればよく、相対的に厚みが大きい位相差層が紫外線遮蔽性を有し、波長380nmにおける光透過率が60%以下であることが好ましい。例えば、位相差層131の厚みが位相差層133の厚みよりも小さい場合、λ/4板としての位相差層131が紫外線遮蔽性を有する第一位相差層であることが好ましく、ポジティブCプレートである第二位相差層133は紫外線遮蔽性を有していなくてもよい。位相差層131および位相差層133の両方が紫外線遮蔽性を有していてもよい。
【0068】
図3では、λ/4板である位相差層131の偏光子11と反対側の面にポジティブCプレートである位相差層133が配置された形態を図示しているが、偏光子11と位相差層131の間に、位相差層133が配置されていてもよい。
【0069】
図4は、有機EL表示装置用偏光板の構成の他の例であり、偏光板104は、位相差層13が位相差層131と位相差層135の2層により構成されている。位相差層131は、図2の偏光板102における位相差層と同様のλ/4板である。位相差層135は、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する。
【0070】
nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差層135は、前述の偏光板103における位相差層133と同様、位相差層131の斜め方向の位相差を打ち消す作用を有し得る。また、位相差層135を、その遅相軸方向が、偏光子11の吸収軸方向と平行または直交となるように配置することにより、位相差層135が、斜め方向から視認した際の偏光子11の見かけ上の光学軸方向のズレを補償する作用を有する。
【0071】
位相差層135の遅相軸方向と偏光子11の吸収軸方向とのなす角は、0°~5°または85°~90°が好ましく、0°~3°または87°~90°がより好ましく、0°~
1°または89°~90°がさらに好ましい。
【0072】
位相差層135は、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、0より大きく1未満である。位相差層135のNZ係数は、0.1~0.9が好ましく、0.2~0.8がより好ましく、0.3~0.7がさらに好ましく、0.4~0.6または0.45~0.55であってもよい。
【0073】
位相差層135の波長550nmにおける正面レターデーションR(550)は、例えば、100~400nmである。位相差層135のR(550)は、200~350nm、220~330nm、240~310nm、250~300nmまたは260~290であってもよい。
【0074】
位相差層13が、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有する位相差層(λ/4板)131と、nx>ny>nzの屈折率異方性を有する位相差層135との積層構成である場合は、位相差層131および位相差層135のいずれか一方が紫外線遮蔽性を有する第一位相差層であればよく、位相差層131および位相差層135の両方が紫外線遮蔽性を有していてもよい。
【0075】
本発明の有機EL表示装置用偏光板における位相差層13の構成は、図2~4に示す実施形態に限定されるものではなく、位相差層を構成する少なくとも1層が、5μmよりも大きな厚みを有し、かつ波長380nmにおける光透過率が60%以下であればよい。位相差層13は、3層以上の位相差層の積層構成であってもよい。
【0076】
[有機EL表皮装置]
有機ELセル70の光出射面に、上記の有機EL表示装置用偏光板10を貼り合わせることにより、有機EL表示装置が形成される。有機ELセル70と偏光板10との間には、タッチパネル(不図示)が配置されていてもよい。
【0077】
偏光板10上には、外表面からの衝撃による有機ELセル7の破損防止等を目的として、カバーウインドウ80を配置してもよい。カバーウインドウ80としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、透明ポリイミド樹脂等の透明樹脂板、またはガラス板等が用いられる。カバーウインドウ80の厚みは、例えば20~2000μm程度である。カバーウインドウ80はタッチパネルセンサーと一体化されたものでもよい。カバーウインドウ80の視認側表面には、反射防止層やハードコート層等が設けられていてもよい。
【0078】
上記の様に、偏光板10と有機ELセル70との貼り合わせ、および偏光板10とカバーウインドウ80との貼り合わせには、粘着剤層21,22を用いることが好ましい。本発明においては、偏光板10が紫外線遮蔽性を有しているため、粘着剤層21,22が紫外線吸収剤を含まない場合であっても、外光に含まれる紫外線の有機ELセル70への入射量が低減されるため、有機EL素子の劣化を抑制できる。
【実施例0079】
以下に、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0080】
[粘着シートの製造例]
<粘着シートA>
反応容器に、モノマーとして、アクリル酸ブチル:92重量部、N-アクリロイルモルホリン(ACMO):5重量部、アクリル酸:2.9重量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル:0.1重量部、ならびに重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル:0.1重量部を、酢酸エチルと共に加え、窒素ガス気流下、55℃で8時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量178万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。この溶液に、ポリマー100重量部に対して、架橋剤として、ジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製「ナイパーBMT」):0.15重量部、およびトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー製「コロネートL」):0.6重量部を配合して、粘着剤組成物を得た。
【0081】
上記の粘着剤組成物を、離型フィルム(シリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面に塗布し、150℃で乾燥および架橋処理を行い、厚みが5μmの粘着シートを作製した。
【0082】
<粘着シートB>
粘着剤組成物の調製において、ポリマー溶液に、架橋剤に加えて、紫外線吸収剤(5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノール;BASF製「Tinosorb S」):6重量部を配合した。それ以外は粘着シートAの作製と同様にして、厚み5μmの粘着シートを得た。
【0083】
<粘着シートC>
粘着剤組成物の調製において紫外線吸収剤の配合量を0.8重量部に変更し、粘着シートの厚みを40μmに変更した。それ以外は粘着シートBの作製と同様にして、厚み40μmの粘着シートを得た。
【0084】
[位相差フィルムの製造例]
<位相差フィルムA>
(ポリカーボネート(PC)樹脂の調製)
反応容器に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン:38.06重量部、イソソルビド(ロケットフルーレ製「POLYSORB」):53.73重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス・トランス混合物、SKケミカル製):9.64重量部、およびジフェニルカーボネート(三菱ケミカル製):81.28重量部、ならびに触媒としての酢酸カルシウム一水和物を投入し、減圧窒素置換した後、窒素ガス気流下、150℃で約10分間攪拌して、原料を溶解させた。220℃に昇温した後、常圧で60分反応を行った。その後、常圧から13.3kPaに減圧し、30分間保持して、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで、240℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで減圧して、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止した。生成したポリカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてポリカーボネート(PC)樹脂ペレットを得た。
【0085】
(延伸フィルムの作製)
上記のポリカーボネート樹脂ペレットを用い、溶融押出法により、厚み100μmの未延伸フィルムを作製した。このフィルムを、左右のクリップの進行速度を独立制御可能なテンター式延伸機により、温度137℃、延伸倍率約2.5倍で斜め延伸して、遅相軸方向がフィルムの長手方向に対して45°である延伸位相差フィルムを得た。
【0086】
<位相差フィルムB>
ポリカーボネート樹脂の調製において、反応停止後のポリカーボネート溶融液100重量部に、トリアジン系紫外線吸収剤(2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン;ADEKA製「アデカスタブ LA-F70」):0.2重量部を配合して、紫外線吸収剤を含むポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このペレットを用いたこと以外は、位相差フィルムAの作製と同様にして、延伸位相差フィルムを作製した。
【0087】
<位相差フィルムC,D>
ポリカーボネート樹脂の調製において、紫外線吸収剤(アデカスタブ LA-F70)の配合量を、0.3重量部(位相差フィルムC)、1.0重量部(位相差フィルムD)に変更した。それ以外は位相差フィルムBの作製と同様にして、延伸位相差フィルムを作製した。
【0088】
<位相差フィルムE,F>
ポリカーボネート樹脂の調製において、紫外線吸収剤の種類を2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]に変更し、配合量を、0.7重量部(位相差フィルムE)、0.9重量部(位相差フィルムF)とした。それ以外は位相差フィルムBの作製と同様にして、延伸位相差フィルムを作製した。
【0089】
<位相差フィルムG>
ポリカーボネート樹脂の調製において、紫外線吸収剤(アデカスタブ LA-F70)の配合量を、0.05重量部に変更して、ポリカーボネート樹脂ペレットを作製し、溶融押出法により、厚み235μmの未延伸フィルムを作製した。このフィルムの両面に、粘着シートを積層した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製「トレファン」)を貼り合わせた。この積層体を、ロール延伸機により、温度145℃で長手方向に約1.5倍に自由端一軸延伸した。その後、両面の二軸延伸プロピレンフィルムを剥離除去して、厚み方向の屈折率nzが幅方向(進相軸方向)の屈折率nyよりも大きい延伸位相差フィルムを得た。
【0090】
<延伸フィルムH>
環状オレフィンポリマー(COP)の樹脂ペレット(JSR製「ARTON R5000」):100重量部、および紫外線吸収剤(アデカスタブ LA-F70):0.05重量部を、塩化メチレンに溶解し、溶液成膜法により厚み130μmの未延伸フィルムを作製した。このフィルムの両面に、粘着シートを積層した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製「トレファン」)を貼り合わせ、ロール延伸機により、温度140℃で長手方向に約1.3倍に自由端一軸延伸した後、両面の二軸延伸プロピレンフィルムを剥離除去して、厚み方向の屈折率nzが幅方向の屈折率nyよりも大きい延伸位相差フィルムを得た。
【0091】
<位相差フィルムI>
(フマル酸エステル(FAE)系樹脂の調製)
オートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業製「メトローズ60SH-50」):48重量部、蒸留水:15600重量部、フマル酸ジイソプロピル:8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル:240重量部、および重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを投入し、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持して、ラジカル懸濁重合を行なった。次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマー粒子を、蒸留水およびメタノールで洗浄した後、80℃で減圧乾燥してフマル酸エステル系樹脂を得た。
【0092】
(フィルムの作製)
上記のフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶媒に溶解して樹脂溶液を調製し、溶液製膜法により厚み6μmの未延伸フィルム(コーティング位相差フィルム)を作製した。
【0093】
<位相差フィルムJ>
フィルムの作製において、フマル酸エステル系樹脂100重量部に対して紫外線吸収剤(アデカスタブ LA-F70):0.9重量部を添加して溶液を調製した。それ以外は、位相差フィルムJの作製と同様にして、コーティング位相差フィルムを作製した。
【0094】
[粘着シートおよび位相差フィルムの評価]
<紫外線吸収剤の析出・結晶化>
試料を200mm×300mmのサイズに切り出し、温度20℃、相対湿度98%の恒温恒湿槽内で500時間保持した後に取り出し、顕微鏡により観察して、紫外線吸収剤の析出・結晶化の有無を確認した。
【0095】
<透過率>
紫外-可視分光光度計(日立ハイテク製「U-4100」)により透過スペクトルを測定し、得られたスペクトルから、波長380nmにおける光透過率を読み取った。
【0096】
<レターデーション>
位相差フィルムA~Jを50mm×50mmのサイズに切り出し、偏光・位相差測定システム(Axometrics製「AxoScan」)により、測定波長550nmで正面レターデーション、および遅相軸方向を回転中心として試料を40°傾斜した状態でのレターデーションを測定した。これらの測定値から、波長550nmにおける正面レターデーションRe=(nx-ny)×dおよび厚み方向レターデーションRth=(nx-nz)×dを算出した。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率、dは位相差フィルムの厚みである。厚み方向レターデーションの計算に際しては、アタゴ社製のアッベ屈折率計により測定した平均屈折率を用いた。
【0097】
粘着シートA~C,および位相差フィルムA~Jの材料(樹脂種)、紫外線吸収剤(UVA)の種類および添加量、厚み、ならびに評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
[円偏光板の作製]
<片保護偏光板の作製>
(偏光子の作製)
厚み100μmの非晶質ポリエステルフィルム(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート;ガラス転移温度75℃)の片面にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業 「ゴーセファイマーZ200」;重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上)を9:1の重量比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み11μmのPVA系樹脂層が設けられた積層体を作製した。
【0100】
この積層体を、120℃のオーブン内で長手方向に2.0倍に自由端一軸延伸した。延伸後の積層体を、30℃の4%ホウ酸水溶液に30秒間浸漬した後、30℃の染色液(0.2%ヨウ素、1.0%ヨウ化カリウム水溶液)に60秒間浸漬した。次いで、30℃の架橋液(ヨウ化カリウムを3%、ホウ酸3%水溶液)に30秒間浸漬して架橋処理を行った。その後、積層体を、70℃のホウ酸4%、ヨウ化カリウム5%水溶液に浸漬しながら、総延伸倍率が5.5倍となるように長手方向に自由端一軸延伸した。その後、積層体を30℃の洗浄液(4%ヨウ化カリウム水溶液)に浸漬して、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み5μmのPVA系偏光子が設けられた積層体を得た。
【0101】
(偏光子保護フィルムの貼り合わせ)
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部およびアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と、光重合開始剤(BASF製「イルガキュア819」)3重量部とを混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。この接着剤を、上記の積層体の偏光子の表面に約1μmの厚みで塗布し、その上に、偏光子保護フィルムとして厚み25μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせ、積算照射量1000/mJ/cmの紫外線を照射して接着剤を硬化させた。その後、非晶質ポリエステルフィルム基材を剥離し、厚み約5μmの薄型偏光子の片面に接着剤を介してTACフィルムが貼り合わせられた片保護偏光板を得た。この片保護偏光板の波長380nmにおける光透過率は6.6%であった。
【0102】
<比較例1>
ロールラミネータを用いて、片保護偏光板の偏光子側の面に、粘着シートAを介して位相差フィルムAを貼り合わせて円偏光板を作製した。偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸(延伸方向)とのなす角は45°であった。
【0103】
<実施例1~5、比較例2,3>
粘着シートおよび位相差フィルムの種類を表1に示す様に変更したこと以外は、比較例1と同様にして円偏光板を作製した。
【0104】
<実施例6>
片保護偏光板および位相差フィルムGを矩形に切り出し、片保護偏光板の偏光子側の面に、粘着シートAを介して位相差フィルムGを貼り合わせて円偏光板を作製した。偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸(延伸方向)とのなす角は45°であった。
【0105】
<実施例7>
ロールラミネータを用いて、片保護偏光板の偏光子側の面に、粘着シートAを介して位相差フィルムHを貼り合わせ、位相差フィルムH上に粘着シートAを介して位相差フィルムAを貼り合わせて、円偏光板を作製した。偏光子の吸収軸と位相差フィルムHの遅相軸(延伸方向)は並行であり、偏光子の吸収軸と位相差フィルムAの遅相軸とのなす角は45°であった。
【0106】
<実施例8>
ロールラミネータを用いて、片保護偏光板の偏光子側の面に、粘着シートAを介して位相差フィルムHを貼り合わせ、位相差フィルムH上に粘着シートAを介して位相差フィルムAを貼り合わせて、円偏光板を作製した。偏光子の吸収軸と位相差フィルムHの遅相軸(延伸方向)は並行であり、偏光子の吸収軸と位相差フィルムAの遅相軸とのなす角は45°であった。
【0107】
<実施例9,10>
位相差フィルムの種類を表2に示す様に変更したこと以外は、実施例8と同様にして、偏光子の一方の面に2層の位相差フィルムを備える円偏光板を作製した。
【0108】
実施例および比較例の円偏光板の積層構成、および円偏光板の波長380nmにおける光透過率を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
表1に示す様に、粘着シートを構成する粘着剤に紫外線吸収剤を配合した場合は、高湿度環境下で紫外線吸収剤の析出・結晶化が生じていたのに対して、位相差フィルムに紫外線吸収剤を配合した場合は紫外線吸収剤の析出・結晶化がみられず、良好な外観を有していた。
【0111】
位相差フィルムに紫外線吸収剤を含めることにより、紫外線吸収剤の結晶化や析出を生じさせることなく、粘着シートに紫外線吸収剤を含める場合(比較例2,3)と同等以上の紫外線遮蔽性を付与できる。位相差フィルムは厚みが大きいため、1%以下の低濃度の紫外線吸収剤でも優れた紫外線遮蔽性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0112】
10,102,103,104 偏光板(円偏光板)
11 偏光子
12 透明フィルム(偏光子保護フィルム)
13 位相差層
131 位相差層(λ/4板)
133,135 位相差層
70 有機ELセル
80 カバーウインドウ
21,22 粘着剤層
901 有機EL表示装置

図1
図2
図3
図4