(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183910
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】陽極、溶融塩電解装置及び金属の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20221206BHJP
C25C 7/00 20060101ALI20221206BHJP
C25C 3/04 20060101ALI20221206BHJP
C25C 7/06 20060101ALI20221206BHJP
C22B 26/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C25C7/02 308Z
C25C7/00 302B
C25C3/04
C25C7/06 302
C22B26/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091434
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】秋元 文二
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001AA27
4K001AA38
4K001BA08
4K058AA30
4K058BA05
4K058BB05
4K058CB05
4K058DD30
4K058EA10
4K058ED03
(57)【要約】
【課題】溶融塩電解に使用する陽極の酸化消耗の影響を軽減することが可能な陽極を提供する。
【解決手段】陽極130であって、溶融塩浴Bfが貯留される電解槽110にて用いられる陽極本体132と、陽極本体132の一部を覆うカバー部材134と、陽極本体132とカバー部材134との間に存在する空隙部136とを備え、陽極本体132の外側面132aとカバー部材134の内面134bとの距離が、0.5~20mmの範囲内である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩浴が貯留される電解槽にて用いられる陽極本体と、
該陽極本体の一部を覆うカバー部材と、
前記陽極本体と前記カバー部材との間に存在する空隙部とを備え、
前記陽極本体の外側面と前記カバー部材の内面との距離が、0.5~20mmの範囲内である、陽極。
【請求項2】
当該陽極は、前記溶融塩浴の浴面の高さ位置よりも低い位置において、前記空隙部の開口端を備える、請求項1に記載の陽極。
【請求項3】
前記陽極本体は、少なくとも1段の段差を有し、
前記カバー部材は、前記段差の平坦面よりも高い位置で前記陽極本体の少なくとも一部を覆う、請求項1又は2に記載の陽極。
【請求項4】
前記カバー部材が、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムから選ばれる1種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の陽極。
【請求項5】
前記陽極本体が、黒鉛製である、請求項1~4のいずれか一項に記載の陽極。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の陽極を備える、溶融塩電解装置。
【請求項7】
請求項6に記載の溶融塩電解装置を使用する金属の製造方法であって、
前記溶融塩浴に含有される金属塩化物の電気分解を実施する電解工程を含む、金属の製造方法。
【請求項8】
前記空隙部において前記溶融塩浴の浴面よりも高い位置に溶融塩固化層を形成する固化層形成工程を更に含む、請求項7に記載の金属の製造方法。
【請求項9】
電気分解される金属塩化物が塩化マグネシウムである、請求項7又は8に記載の金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極、溶融塩電解装置及び金属の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンの鋳塊等は、工業的にはクロール法によって製造されたスポンジチタンを使用して製造されている。そして、このクロール法を含むスポンジチタン製造プロセスは、塩化工程、還元分離工程、破砕工程及び電解工程の四工程に大別しうる。これらの工程の一つである電解工程は、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元してスポンジチタンを製造する還元分離工程の副生成物である塩化マグネシウムを、溶融塩電解により分解して、金属マグネシウムを得る工程である。
【0003】
当該溶融塩電解に関し、例えば特許文献1には、「溶融塩浴で溶融塩の電気分解を行う電解室と、該電解室と連通するメタル回収室とを備える溶融塩電解槽であって、前記メタル回収室の金属を貯留する溶融金属貯留部は少なくともその一部に第1の壁を備え、前記第1の壁の内表面上の少なくとも一部に溶融塩固化層を有する、溶融塩電解槽。」が記載されている。このような溶融塩電解槽を用いれば、金属塩化物の電気分解で得られた溶融金属への不純物の混入を有効に抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば金属マグネシウムを製造する溶融塩電解は、一般的に650~700℃程度の高温である溶融塩浴を使用し、且つ反応生成物として塩素ガスが発生する等の過酷な条件で実施される。また、溶融塩電解で発生した塩素が外部に漏洩しないよう、溶融塩電解装置内部は外部環境に対して負圧に維持される。そのため、陽極と上蓋との間の微小なクリアランスから外気が電解槽内に入り込むことがあるので、通常はクリアランスをシールしている。しかしながら、陽極は大型でありかつ黒鉛製であることが多い。該大型である黒鉛製の陽極は高温加熱処理を経て製造されることがあり、これに起因して陽極は微小な孔が含まれている。よって、前記クリアランスに適切なシールを施しても、溶融塩電解装置の内部が負圧に維持されているので、該シール部ではなく陽極内部を通過して溶融塩電解装置内部に外気が入り込むことがある。
ここで、溶融塩電解装置内であって溶融塩浴の浴面上方の空間では、浴面付近の温度が高く、上蓋付近で温度は低くなり、高さ方向において温度の勾配がある。陽極内部を通過する外気中の酸素と黒鉛は高温において反応がより早く、陽極が酸化消耗されうる。酸化消耗により減肉がある程度進んだ陽極は、自重により折れてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は一実施形態において、溶融塩電解に使用する陽極の酸化消耗の影響を軽減することが可能な陽極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は一側面において、溶融塩浴が貯留される電解槽にて用いられる陽極本体と、該陽極本体の一部を覆うカバー部材と、前記陽極本体と前記カバー部材との間に存在する空隙部とを備え、前記陽極本体の外側面と前記カバー部材の内面との距離が、0.5~20mmの範囲内である、陽極である。
【0008】
本発明に係る陽極の一実施形態において、当該陽極は、前記溶融塩浴の浴面の高さ位置よりも低い位置において、前記空隙部の開口端を備える。
【0009】
本発明に係る陽極の一実施形態において、前記陽極本体は、少なくとも1段の段差を有し、前記カバー部材は、前記段差の平坦面よりも高い位置で前記陽極本体の少なくとも一部を覆う。
【0010】
本発明に係る陽極の一実施形態において、前記カバー部材が、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムから選ばれる1種以上を含む。
【0011】
本発明に係る陽極の一実施形態において、前記陽極本体が、黒鉛製である。
【0012】
また、本発明は別の側面において、上記いずれかの陽極を備える、溶融塩電解装置である。
【0013】
また、本発明は別の側面において、上記の溶融塩電解装置を使用する金属の製造方法であって、前記溶融塩浴に含有される金属塩化物の電気分解を実施する電解工程を含む、金属の製造方法である。
【0014】
本発明に係る金属の製造方法の一実施形態において、前記空隙部において前記溶融塩浴の浴面よりも高い位置に溶融塩固化層を形成する固化層形成工程を更に含む。
【0015】
本発明に係る金属の製造方法の一実施形態において、電気分解される金属塩化物が塩化マグネシウムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、溶融塩電解に使用する陽極の酸化消耗の影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明に係る溶融塩電解装置の実施形態の内部構造を説明するための概略断面図である。
【
図1D】本発明に係る溶融塩電解装置の実施形態の電解室の溶融塩固化層の形成を説明するための概略端面図である。
【
図2A】本発明に係る溶融塩電解装置の別の実施形態の内部構造を説明するための概略断面図である。
【
図2C】本発明に係る溶融塩電解装置の別の実施形態の電解室の溶融塩固化層の形成を説明するための概略端面図である。
【
図3】本発明に係る溶融塩電解装置の別の実施形態の内部構造を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は以下に説明する各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して発明を形成してもよい。なお、図面では、発明に含まれる実施形態等の理解を助けるため概略として示す部材もあり、図示された大きさや位置関係等については必ずしも正確でない場合がある。
さらに、本明細書において、「上方」は、例えば
図1A、
図1B、
図1D、
図2A、
図2B、
図2C、
図2D、
図2E、
図3において矢印で示すように、電解槽110の底壁112側から上蓋120側へ向かう方向を意味し、「下方」は、上蓋120側から電解槽110の底壁112側へ向かう方向を意味する。また、本明細書において、「溶融金属」は、金属塩化物を電解分解したことで得られた溶融状態の金属を意味する。また、本明細書において、「溶融塩固化層」は、溶融塩が固体となった層を意味し、後述する実施形態の説明では陽極本体とカバー部材との間の空隙に溶融塩固化層が形成される。なお、後述するとおり、溶融塩固化層は電解槽110内の溶融塩浴を使用して形成してもよいし、外部から別途供給する溶融塩を使用して形成してもよい。外部から別途供給する溶融塩は、溶融塩浴と同様の組成とすることができる。
【0019】
[1.溶融塩電解装置]
図1Aに示す溶融塩電解装置100は、電解槽110と、上蓋120と、陽極130と、陰極140と、電解室150と、金属回収室160とを備える。
【0020】
(電解槽)
電解槽110は、上側に開口部が形成された容器形状であり、例えば主として酸化アルミニウム等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる。電解槽110は、底壁112と該底壁に連結されて上方に延在した2対の側壁114とで構成される。この電解槽110には、その内部に供給された金属塩化物を含む溶融塩からなる溶融塩浴Bfが貯留される。また、電解槽110では、第1の隔壁116及び第2の隔壁117の存在により電解室150及び金属回収室160が区画されている。電解室150で溶融塩の電解で生成された金属を金属回収室160に送るとともに、溶融塩を金属回収室160から電解室150に送って、溶融塩浴を循環させるため、第1の隔壁116及び第2の隔壁117が配置される。すなわち、溶融塩電解装置100は、第1の隔壁116と第2の隔壁117との間に、流通口115を形成したことで、矢印Aに示す溶融塩浴の流動(電解室150から金属回収室160への流れ)を確保することができる。また、第2の隔壁117の下面側にも溶融塩浴の流動が可能な通路が形成されており、矢印Bの流動(金属回収室160から電解室150への流れ)を確保できる。
【0021】
(溶融塩)
以下、溶融塩に塩化マグネシウム(MgCl2)が含まれる場合を例として説明する。この場合、塩化マグネシウムの電気分解により、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素(Cl2)ガスが発生する。溶融塩には、上記の塩化マグネシウム(MgCl2)の他、支持塩として、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)及び/又は、フッ化カルシウム(CaF2)等を含ませる場合がある。支持塩として使用される成分は、塩化マグネシウムよりも電気分解される電圧が高いものを使用することが好ましい。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、チタン鉱石の塩化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
【0022】
(上蓋)
上蓋120は、溶融塩浴Bfが高温であることから電解槽110の外部に対する断熱の役割を果たす。また、上蓋120を配置して電解槽110を閉空間とし、溶融塩電解時に陽極本体132から生じる塩素ガスの漏洩を防止するために外部に対して電解槽110内を負圧にする。
また、上蓋120の材質は特に限定されるものではないが、溶融塩電解時に上蓋120と陽極本体132との間で生じる短絡を防ぐ観点から、該上蓋120の溶融塩浴Bf側である蓋裏面121側が絶縁性材料であればよく、また上蓋120の溶融塩浴Bf側の蓋裏面121側にセラミック材料を配置してよく、また、キャスタブル耐火物を施行してもよい。このキャスタブル耐火物を設ける方法は公知の方法であればよく、例えば乾式吹付けや湿式吹付け等にて蓋裏面121側にキャスタブル耐火物を施行すればよい。
【0023】
上蓋120には、供給口122と、第1のガス回収口124と、第2のガス回収口126と、給排口128とが設けられてよい。これらの口はそれぞれ1つでもよく、複数でもよい。
このうち、供給口122は、陽極本体132とカバー部材134との間の空隙部136に溶融塩を供給するためのものである。供給口122は、電解室150が位置する領域であって、陽極本体132とカバー部材134との間に位置する領域に設けられる。先述した閉空間を形成する観点から、通常、供給口122は溶融塩浴を構成する成分の粉体や粒体が充填されている。供給口122から溶融塩を供給する際は、一旦該充填物を除去し、溶融塩供給後に再度供給口122に前記粉体や粒体を充填すればよい。
また、第1のガス回収口124は、電解室150において電気分解により生成した塩素ガスを回収することに用いられる。第1のガス回収口124は、電解室150が位置する領域に設けられている。
また、第2のガス回収口126では、電解室150において電気分解により生成したガスが回収されることがある。第2のガス回収口126は、金属回収室160が位置する領域に設けられている。第2のガス回収口126は、電気分解で発生したガスのうち、第1のガス回収口124で回収されずに金属回収室160に流れた残りのガスの回収に用いられることがある。
また、給排口128は、電解室150において電気分解により生成した溶融金属の回収や、電解槽110内への溶融塩の供給に使用される。給排口128は、金属回収室160が位置する領域に設けられている。
【0024】
(電解室)
電解室150では、溶融塩を電気分解して、該電気分解により溶融金属を生成する。例えば塩化マグネシウムの電気分解では、溶融金属マグネシウムの他、塩素ガスが生成する。電解室150の内部には、溶融塩浴の深さ方向(
図1Aでは上下方向)と略平行な電解面を有する陽極本体132及び陰極140が配置されている。
【0025】
陽極130は、溶融塩浴Bfが貯留される電解槽110に配置され電気分解に用いられる陽極本体132と、該陽極本体132の一部を覆うカバー部材134とを有する。
図1A及び
図1Bに示すように、陽極本体132は、上蓋120に挿通され下方に延在し、溶融塩浴Bfにその一部が浸漬するように配置されている。カバー部材134も、上蓋120に挿通され下方に延在し、溶融塩浴Bfにその一部が浸漬している。但し、カバー部材134は、電解槽110の側壁114に挿通され第1の隔壁116及び第2の隔壁117に向かって延在する陰極140と、陽極本体132との間を遮らないようにするために、該カバー部材134の下端面134aが溶融塩浴Bfの浴面Sよりも低い位置であって陰極140の上端面140aよりも高い位置となるように配置することが好ましい。
なお、陽極本体132と上蓋120との間及びカバー部材134と上蓋120との間に極僅かなクリアランスがあれば、溶融塩電解中に電解槽110の内部の負圧により電解槽110内に外気が入り込むことがある。そこで、電解槽110内の閉空間を形成する観点から、該クリアランスにシーリング部材を設ければよく、例えば溶融塩浴を構成する成分の粉体や粒体等を充填してシーリング部材とすればよい。
【0026】
図1Cに示すように、陽極本体132とカバー部材134との間には、空隙部136が存在する。陽極本体132の一部及びカバー部材134の一部がいずれも溶融塩浴Bfに浸漬しているので、空隙部136の一方の開口端136aは、溶融塩浴Bfの浴面Sの高さ位置よりも低い位置に配置される。陽極本体132の外側面132aとカバー部材134の内面134bとの距離D1は、0.5~20mmの範囲内である。このような構成であれば、空隙部136では、例えば、溶融塩浴Bfの溶融塩が毛細管現象により電解槽110における溶融塩浴Bfの浴面Sより高い位置まで上昇しうるし、該毛細管現象を利用できない場合は供給口122より溶融塩を供給することができ、また、溶融塩浴に塩化マグネシウムを意図的に過剰供給すること等で空隙部136の高い位置まで溶融塩浴を供給することができる。空隙部136における溶融塩は、蓋裏面121に近づくにつれて温度が低くなる。そして、空隙部136にて上方に位置する溶融塩が、冷却されて固化し、
図1Dに示すように、空隙部136内に溶融塩固化層138が形成される。なお、この溶融塩固化層138は栓の役割を果たすので、その後は溶融塩固化層138の下側に溶融塩浴が充填されていなくとも外部からの酸素の混入を抑制できる。なお、図示のとおり、空隙部136の開口端136bは溶融塩浴Bfの浴面Sより高い位置に設けられることが好ましく、これにより溶融塩固化層138をより高い位置に形成でき、電解槽内の気相部に位置する陽極本体132の減肉を抑制できる。
ここで、典型的には溶融塩電解時において電解槽内は、溶融塩浴からなる液相と陽極本体から発生する塩素等のガスを含む気相とに分かれる。先述した通り、気相には外気が流入しうる。そのため、従来は、流入した外気中の酸素の影響で陽極が減肉し、溶融塩電解の操業途中で陽極が折れて落下することがあるという問題があった。この陽極の減肉は、浴面Sよりも高い位置で生じることが多く、さらには、蓋裏面121近傍にて陽極の減肉が生じることが多かった。
これに対し、本発明では、陽極本体132とカバー部材134との間の空隙部136では、溶融塩浴Bfの浴面Sよりも高い位置に溶融塩浴が進入し、さらには溶融塩固化層138が形成されることで陽極本体132が電解槽内の気相に露出する部位を減らす。また、黒鉛製の陽極本体132の作製時の高温加熱処理等により形成された微小な孔が陽極本体132に存在しても、溶融塩固化層138が微小な孔を塞ぐことで陽極本体132の内部を通過する外気の量を低減する。さらに、溶融塩固化層138は溶融塩が冷やされ固化して形成されるので、仮に陽極本体の内部を外気が通過するとしても、通過するのは主として低温側となるので、陽極本体と酸素との反応は抑制される。以上の結果、前記陽極本体132の減肉は抑制され、陽極本体の酸化消耗の影響を低減することができる。さらには、以下のような運用により陽極本体の酸化消耗の影響を低減可能である。すなわち、陽極本体132において減肉部が生じてしまった場合、溶融塩浴Bfの浴面Sを上下動させ、又は外部から溶融塩を空隙部136に供給する、等の適宜の方法にて減肉部に溶融塩固化層138を形成して陽極本体を補強可能である。これにより、見掛け上、陽極本体132の肉厚が大きくなり減肉部が溶融塩固化層138で保護されるので、その結果陽極本体132の折損を抑制できる。
また、空隙部136のもう一方の開口端136bが、溶融塩浴Bfの浴面Sの高さ位置よりも高い位置に配置されている場合、上蓋120の供給口122を用いて溶融塩を開口端136bから空隙部136に向けて供給してもよい。これにより、空隙部136における溶融塩が電解槽110における溶融塩浴Bfの浴面Sより高くなり、そこに溶融塩固化層138を形成することができる。
なお、上記距離D1は、下限側として例えば0.5mm以上であり、また例えば1.0mm以上である。また、上記距離D1は、上限側として例えば20mm以下であり、また例えば5mm以下である。
【0027】
陽極本体132の形状としては特に限定されず、例えば板状、円柱状及び角柱状等が挙げられる。カバー部材134の形状は、陽極本体132の形状に合わせて適宜変更すればよいが、例えば、板状、角筒状及び円筒状等であればよい。カバー部材が板状であるものとしては、例えば
図1Eに示す陽極130が挙げられる。当該陽極130は、陽極本体132と、陽極本体132の外側面132aに板状のカバー部材135とを備える。当該陽極本体132及びカバー部材135のそれぞれ一部を溶融塩浴に浸漬した場合、該陽極本体132とカバー部材135との間の空隙部に溶融塩浴が進入し、先述したように溶融塩浴の浴面よりも高い位置の空隙部内に溶融塩固化層138が形成される。なお、その溶融塩浴が陽極本体の微小な孔に入り、溶融塩固化層138が形成されることで微小な孔を塞ぐこととなる。カバー部材135の配置方法は特段限定されず、その上端側を延長させて
図1Aに示す実施形態のように上蓋120に接続して配置してもよいし、絶縁性の材料で成形したボルト等の接続用具を使用して陽極本体132にカバー部材135を接続して配置してもよいし、カバー部材135の一部を陽極本体132の一部に載置する等して配置してもよい。
溶融金属の製造効率の観点から、溶融塩電解装置100は陽極、陰極、バイポーラ電極をそれぞれ複数備えるものとしてよい。
【0028】
次に、別の実施形態を
図2A~E及び
図3を使用しながら以下に説明する。なお、先述した実施形態の各構成については適宜適用可能であり、重複記載を割愛する。
【0029】
別の実施形態において、
図2A及び
図2Bに示す溶融塩電解装置200の陽極230は、外側面に下方に向かって少なくとも1段の段差を有する陽極本体232と、カバー部材234とを備える。当該段差は、陽極本体232の上部の外側面232aと、陽極本体232の下部の外側面232bとが平坦面231でそれぞれ連結される。当該陽極本体232は、図示の例では1段の段差を有するが、2段以上の複数段の段差でもよい。
カバー部材234は、陽極本体232の段差の平坦面231よりも高い位置で該陽極本体232の少なくとも一部を覆っている。陽極本体232とカバー部材234との間に空隙部を設け、陽極本体232の外側面232aとカバー部材234の内面234bとの距離D1は、0.5~20mmの範囲内である。ここで、陽極本体232とカバー部材234との間に空隙部を設けるだけでなく、陽極本体232の段差の平坦面231とカバー部材234との間にも空隙部を設けてよく、該空隙部が溶融塩浴Bfの浴面Sより下に位置すれば、溶融塩は陽極本体232の段差の平坦面231とカバー部材234の下端面234aで形成された開口端236aから陽極本体232とカバー部材234間の空隙部に進入できる。このように溶融塩浴の進入が確保されれば、開口端の配置やその形状は特段限定されない。例えば、カバー部材234の下端面側に、複数の貫通孔237を並べて前記空隙部に溶融塩浴を進入可能としてもよい。
図2A~
図2Cに示す実施形態は上述した開口端236aと貫通孔237とを備えているが、いずれか一方のみを備えることとしてもよい。さらに、図示しないが、陽極230は、カバー部材234の下端面234aにU字状又は逆凹状の切欠き部を設け、カバー部材234と平坦面231を接触させることで貫通孔を形成してもよい。当該貫通孔237が浴面Sの高さ位置よりも低い位置にあれば空隙部の開口端が溶融塩浴Bfの浴面Sより下に位置するので、溶融塩浴Bfが空隙部に進入できる。
陽極本体232の段差の平坦面231とカバー部材234の下端面234aとの距離D2は、上述のとおり、空隙部への溶融塩の進入が可能であれば特段限定されないが、あえて一例を挙げると0.5~20mmの範囲内であることが好ましい。前記開口端から前記空隙部に貫通孔が設けられている場合は、前記距離D2は開口端内で取り得る最長線分長さを意味する。先述したように、空隙部における溶融塩浴Bfの浴面Sが高くになるにつれ、その部位の溶融塩浴Bfの温度が低くなり、上蓋120側の一部の溶融塩浴Bfが冷却されて固化し、
図2Cに示すように、空隙部において溶融塩固化層138が形成される。また、空隙部のもう一方の開口端236bが、溶融塩浴Bfの浴面Sの高さ位置よりも高い位置に配置されている場合、上蓋120の供給口122を開けて溶融塩を開口端236bから空隙部に向けて供給することで、空隙部において溶融塩固化層138を形成してもよい。
図2Dに示すように、陽極本体232とカバー部材234との間に空隙部を設けるが、陽極本体232の段差の平坦面231とカバー部材234との間に空隙部を設けなくてもよい。すなわち、陽極本体232の段差の平坦面231は、カバー部材234の下端面234aに当接されている。この場合、貫通孔237から空隙部内に溶融塩浴が進入できる。当該カバー部材234の上端部が上蓋120に挿通されているが、
図2Eに示す陽極230のようにカバー部材の上端部が上蓋120に挿通されていなくてもよい。
なお、図示は省略するが、
図2Dに示すように陽極本体232の段差の平坦面231とカバー部材234との間に空隙部を設けず、かつ、カバー部材234に貫通孔237を設けないこととしてもよい。空隙部の上側の開口端236bが、溶融塩浴Bfの浴面Sの高さ位置よりも高い位置に配置されており、上蓋の供給口を開けて溶融塩を開口端236bから空隙部に向けて供給することができる。これにより、空隙部にて溶融塩が電解槽110における溶融塩浴Bfの浴面Sより高くなり、上蓋120側の一部の溶融塩浴Bfが冷却されて固化し、空隙部において溶融塩固化層138が形成される。
【0030】
カバー部材134、234は煉瓦等で形成できるし、また例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のセラミック及び鋼から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、絶縁性の観点から、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムのいずれ1種であることがより好ましく、中でも耐熱性及び耐腐食性の観点から、窒化ケイ素又は炭化ケイ素であることが特に好ましい。なお、カバー部材134、234を鋼製とする場合、カバー部材134、234と上蓋120との絶縁を確保するため、上蓋120はキャスタブル耐火物等の絶縁体を備えるとよい。
【0031】
陽極本体132、232と陰極140とは、導電線を介して電源に接続されている。該陽極本体132、232及び該陰極140においては、例えば下記化学式(1)等といった所定の反応に基づいて、陽極本体132、232の溶融塩浴Bf中に浸漬した電解面で酸化反応により塩素含有ガスが生じるとともに、陰極140の溶融塩浴Bf中に浸漬した電解面で還元反応により金属マグネシウム等の溶融金属が生成される。
MgCl2→Mg+Cl2・・・化学式(1)
なお、陰極140の材質は特に限定されるものではないが、鉄や黒鉛等が挙げられる。また、陰極140の形状は、陽極本体132、232の形状を勘案して適宜変更可能である。
【0032】
少なくとも陽極本体132、232及び陰極140を有するものであれば、溶融塩浴中の金属塩化物の電気分解を行うことができるが、電解室150は、電気分解の生産効率を向上させるという観点から、電極を複数対有してもよい。また、電極は、電気分解の生成効率向上等の観点より、
図1B及び
図2Bに示すように、陽極本体132、232と陰極140との間に、陽極本体132、232と陰極140との間への電圧の印加によって分極する一枚以上のバイポーラ電極142、144をさらに有することが好ましい。この例では、バイポーラ電極142、144は二枚としているがバイポーラ電極の数は適宜調整可能である。但し、このようなバイポーラ電極142、144は必ずしも必要ではない。なお、陽極本体132、232とバイポーラ電極142、陰極140とバイポーラ電極144、バイポーラ電極142と144の電極間距離はそれぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
(金属回収室)
金属回収室160では、電解室150において電気分解により生成した溶融金属を回収する。金属回収室160は、電解室150と連通しており、熱交換器(不図示)を有することがある。
【0034】
熱交換器は、電解槽110内の溶融塩浴Bfの温度を調整することができる。該熱交換器は、流体を流す流入口と、流体を排出する流出口と、該流入口と流出口とを連結する管とを備えている構成としてよい。そして、管は鋼(炭素鋼またはステンレス鋼)製であってよい。
【0035】
(熱交換室)
図3に示す溶融塩電解装置300は、電解槽110と、上蓋120と、陽極130と、陰極140と、電解室150と、金属回収室160と、熱交換器(不図示)を有する熱交換室370とを備えている。なお、当該溶融塩電解装置300においては、電解室150、金属回収室160、及び熱交換室370が、図示の横方向にこの順でそれぞれ並んで位置している。上蓋120は、給排口328を熱交換室370の領域に設けている。これにより、溶融金属の回収は給排口128を使用して行い、溶融塩化マグネシウム等の溶融塩の補充は給排口328を使用して行うことができる。その結果、金属回収室160内にて溶融金属をより安定して貯留できる。熱交換室370はこれらの他、溶融塩浴Bfを撹拌するための撹拌機(不図示)を更に有してよい。
【0036】
電解槽110は、第1の隔壁116、第2の隔壁317及び第3の隔壁318により、電解室150と、金属回収室160と、熱交換室370とがそれぞれ区画されている。
【0037】
[2.金属の製造方法]
本発明に係る金属の製造方法の一実施形態において、先述した溶融塩電解装置100、200、300を用いて金属を製造する電解工程を含んでいる。さらに、電解工程前や電解工程中など適宜のタイミングにおいて、固化層形成工程を更に含んでよい。以下、
図1A~
図1Dに示す溶融塩電解装置100を用いた各工程について好適な態様を説明する。
【0038】
<固化層形成工程>
固化層形成工程においては、先述した方法で陽極本体132とカバー部材134との間の空隙部136において溶融塩浴Bfの浴面Sよりも高い位置に溶融塩固化層138を形成する。溶融塩固化層138の下側には溶融塩を充填することができるが、溶融塩固化層138の下側に溶融塩が充填されていなくてもよい。溶融塩電解を長期間実施すると浴面Sが上下動することがあるが、こういった場合でも溶融塩固化層138は有効に機能する。なお、この浴面Sの上下動により陽極内部を通過して溶融塩電解装置100の内部に外気が入り込むことがあるが、上述した溶融塩固化層138の働きにより外気の進入は抑制される。以上より、溶融塩固化層138の形成により、陽極本体132の内部を通過して溶融塩電解装置100の内部に外気が入り込むことを抑制でき、ひいては陽極本体132の酸化消耗の影響を軽減できる。この結果、陽極本体132は溶融塩電解において長寿命化される。
【0039】
<電解工程>
電解工程においては、溶融塩浴Bfに含有される金属塩化物の電気分解を実施する。一例として、溶融塩電解装置100内の溶融塩浴Bfにスポンジチタンの生成で得られた副生成物である溶融塩化マグネシウムを投入して、その溶融塩化マグネシウムを電気分解して金属マグネシウムを製造する。固化層形成工程は任意のタイミングで実施可能であり、例えば電解工程の開始前に実施してもよいし、電解工程を開始した後に実施してもよい。
【0040】
溶融塩浴Bfが、
図1Aに示す矢印Aのように電解室150から流通口115を通って金属回収室160に流動し、
図1Aに示す矢印Bのように金属回収室160から第2の隔壁117の下側を通って電解室150に流動する。電解室150では、溶融塩浴Bf中の金属塩化物が電気分解されて、溶融金属が生成される。そして、この溶融金属は、溶融塩浴Bfの流動によって金属回収室160に流入する。その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属は、金属回収室160の浅い箇所に浮上してそこに溜まる。金属回収室160で浮上した溶融金属は、給排口128に回収用のパイプ等を挿通して回収することができる。
【0041】
また、電解工程中、固化層形成工程において形成された溶融塩固化層138にクラック等が発生することがある。この場合、溶融塩固化層138を再度形成しなおすことが好ましい。例えば、上蓋120の給排口128から溶融塩を投入して溶融塩浴Bfの浴面Sの高さ位置を蓋裏面121近くまで上げて一度溶融塩固化層を溶融させる。溶融後、該給排口128に回収用のパイプ等を挿通して該パイプから溶融塩浴Bfの一部をゆっくり抜き取り、溶融塩固化層138を形成させながら浴面Sを低下させていく。形成された溶融塩固化層138は溶融塩浴との接触がなくても維持されるので、溶融塩固化層138により外部からの酸素混入が抑制される。
【0042】
溶融塩電解装置100、200、300を用いて溶融塩電解を実施する場合、当該溶融塩電解装置100、200、300内に外気が入り込まないように陽極本体132、232と上蓋120とのクリアランスに溶融塩浴Bfを構成する成分の粉体等を充填してシール部材とすることがある。長期間の溶融塩電解の実施中、電解槽110内への上記粉体等の滑落量が増えることがある。また、電極間の電気抵抗が急激に上がることもある。これらの現象が生じたときは、陽極本体132の減肉が疑われるので、溶融塩固化層138の形成や再形成を実施することが好ましい。
【実施例0043】
本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例及び比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための試験的な具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0044】
[実施例1]
(溶融塩固化層の形成)
実施例1においては、
図1A~
図1Cに示す構成を備える溶融塩電解装置100を使用した。溶融塩電解装置100は、電解槽110、第1の隔壁116、第2の隔壁117の材質がそれぞれ酸化アルミニウムを含む定型耐火物(耐火煉瓦)とし、上蓋120の材質は炭素鋼であり、その上蓋120の蓋裏面121に絶縁性であるキャスタブル耐火物の層を施工した。また、陽極本体132、陰極140、2枚のバイポーラ電極142、144はいずれも板形状とし、板状の陽極本体132の外側に角筒状のカバー部材134を配置した。当該カバー部材134は、耐火煉瓦製(ムライト)にした。また、陽極本体132の幅(厚さ)は200mmとし、陽極本体132の各外側面132aとカバー部材134の各内面134bとの間の距離D1は、3mmとなるように調整した。次に、溶融塩電解装置100に、溶融塩を投入して、溶融塩の温度を650~700℃に調整した。その結果、高さ方向におけるカバー部材134の下端面134aから浴面Sまでの距離は30mm~150mmの範囲内となった。なお、溶融塩の組成は、塩化マグネシウムが5~25質量%、塩化カルシウムが28~36質量%、及び塩化ナトリウムが47~59質量%の範囲内とした。また、陽極本体132の材質は黒鉛とし、陰極140の材質は炭素鋼とした。バイポーラ電極142、144の材質は黒鉛とした。
【0045】
溶融塩浴Bfの温度を650~700℃の範囲内で維持した。この維持により、開口端136aから溶融塩浴Bfが空隙部136内に進入可能であり、毛細管現象により空隙部136における溶融塩浴Bfの浴面Sがあがり、上蓋120に近づくことで冷却され、空隙部136における上蓋120側の溶融塩浴Bfの一部が固化して、
図1Dに示すように溶融塩固化層138が形成された。
【0046】
(金属マグネシウムの製造)
電源から導電線を介して陽極本体132と陰極140と間に電流を供給することで電解工程を実施した。電解工程は、溶融塩固化層の形成後に開始した。電気分解の開始時から30か月経過した後、電流の供給を停止した。その後、溶融塩電解装置100の陽極本体132を取り出し確認したが、陽極本体132の幅方向において、減肉の深さの最大は20mmであった。その結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例2においては、表1に示すようにカバー部材134を窒化ケイ素製に変更したこと以外、実施例1と同様に溶融塩電解装置100の操業を実施した。電気分解の開始時から30か月経過した後、電流の供給を停止した。その後、溶融塩電解装置100の陽極本体132を取り出し確認したが、陽極本体132の幅方向において、減肉の深さの最大は1mm以下であった。その結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
比較例1においては、表1に示すようにカバー部材を使用しなかったこと以外、実施例1と同様に溶融塩電解装置の操業を実施した。電気分解の開始時から30か月経過した後、電流の供給を停止した。その後、溶融塩電解装置の陽極本体を取り出し確認したところ、上蓋に挿通した陽極本体132の幅方向において、減肉深さの最大は50mmであった。その結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
(実施例による考察)
実施例1~2は、比較例1と比べ陽極本体の幅方向において減肉の度合いは小さかったことから、陽極本体の酸化消耗の影響を低減することができた。すなわち、実施例1~2においては、陽極本体の一部にカバー部材を被覆し、陽極本体の外側面とカバー部材の内面との距離が0.5~20mmの範囲内にすることが有用であるといえる。
また、実施例2は、実施例1と比べ陽極本体の幅方向において減肉の度合いがかなり小さかった。この理由は、窒化ケイ素はムライトよりも伝熱が良く、溶融塩固化層を形成しやすいことによると考えられる。また、窒化ケイ素のカバー部材はムライトのカバー部材より長寿命であり、カバー部材の割れが生じにくい。よって、カバー部材の割れに起因する溶融塩固化層の割れが生じにくいことも良好な結果に寄与していると考えられる。