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  • 特開-安全設備の設置方法 図1
  • 特開-安全設備の設置方法 図2
  • 特開-安全設備の設置方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183914
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】安全設備の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
E04G21/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091441
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】相樂 敏男
(72)【発明者】
【氏名】伊勢本 遼
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智昭
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 千晶
(72)【発明者】
【氏名】藤井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】安原 志哉
(57)【要約】
【課題】RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備を合理的に設置できるようにして、当該安全設備を設置する上での作業性の向上や作業時間の短縮などを図れるようにする。
【解決手段】RC造の躯体構造物10を構築する場合に使用する安全設備の設置方法であって、躯体構造物成形用の立上り型枠21よりも上方に延出する延出部4Aを有する複数の縦端太材4を使用して立上り型枠21を建て込む型枠建て込み工程と、複数の延出部4Aを使用して手摺6を架設する手摺架設工程とを行う。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備の設置方法であって、
躯体構造物成形用の立上り型枠よりも上方に延出する延出部を有する複数の縦端太材を使用して前記立上り型枠を建て込む型枠建て込み工程と、複数の前記延出部を使用して手摺を架設する手摺架設工程とを行う安全設備の設置方法。
【請求項2】
前記立上り型枠は、前記躯体構造物の外周部の成形に使用する外側型枠である請求項1に記載の安全設備の設置方法。
【請求項3】
前記外側型枠は、前記躯体構造物の前記外周部としての梁の成形に使用する梁型枠に含まれており、
前記手摺架設工程を、前記梁型枠の内側にスラブ型枠を敷き込む型枠敷き込み工程、又は、敷き込んだ前記スラブ型枠上にスラブ筋を配筋するスラブ筋配筋工程よりも前に行う請求項2に記載の安全設備の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、RC造建築物の建築現場において、親綱又は安全柵を支持する複数の支柱をコンクリート用型枠の横端太材と桟木とに取り付けることにより、親綱又は安全柵を、コンクリート用型枠を形成した後の配筋作業やスラブ構築作業などにおいて安全設備として使用可能にするものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-043678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、安全設備を設置するに当たり、親綱又は安全柵を支持する専用の支柱を用意してコンクリート用型枠に取り付ける必要があることから、安全設備の設置に要する作業性の向上や作業時間の短縮などを図る上において改善の余地がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備を合理的に設置できるようにして、当該安全設備を設置する上での作業性の向上や作業時間の短縮などを図れるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備の設置方法であって、
躯体構造物成形用の立上り型枠よりも上方に延出する延出部を有する複数の縦端太材を使用して前記立上り型枠を建て込む型枠建て込み工程と、複数の前記延出部を使用して手摺を架設する手摺架設工程とを行う点にある。
【0007】
本構成によると、立上り型枠の建て込みに使用した各縦端太材の延出部を手摺の支持部材に利用することから、手摺を支持する専用の支柱部材を別途用意する必要がなくなり、これにより、その支柱部材を型枠に取り付ける手間を要することなく、手摺を、型枠建て込み工程後の作業で使用可能な安全設備として設置することができる。
その結果、RC造の躯体構造物を構築する場合に使用する安全設備を合理的に設置することができ、当該安全設備を設置する上での作業性の向上や作業時間の短縮などを図ることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記立上り型枠は、前記躯体構造物の外周部の成形に使用する外側型枠である点にある。
【0009】
本構成によると、型枠建て込み工程後の作業においては、手摺を、構築する躯体構造物の外周部に躯体構造物を囲むように備えられた安全設備として使用することができる。
その結果、型枠建て込み工程後の作業を、構築する躯体構造物の外周部に安全設備が設置されて安全性が確保された状態で行うことができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記外側型枠は、前記躯体構造物の前記外周部としての梁の成形に使用する梁型枠に含まれており、
前記手摺架設工程を、前記梁型枠の内側にスラブ型枠を敷き込む型枠敷き込み工程、又は、敷き込んだ前記スラブ型枠上にスラブ筋を配筋するスラブ筋配筋工程よりも前に行う点にある。
【0011】
本構成によると、手摺架設工程にて架設した手摺を、型枠を建て込んだ後に行う型枠敷き込み工程又はスラブ筋配筋工程の段階から、それ以後の、型枠で区画されたコンクリート打設領域にコンクリートを打設するコンクリート打設工程などにおいて、安全設備として使用することができる。
その結果、型枠建て込み工程後に行われる型枠敷き込み工程、スラブ筋配筋工程、及び、コンクリート打設工程などを、安全設備が設置されて安全性が確保された状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】手摺架設工程を終えて型枠敷き込み工程を終えた段階の施工状態を示す斜視図
図2】手摺架設工程を終えて型枠敷き込み工程を行う前の段階の施工状態を示す垂直断面図
図3】コンクリート打設工程を終えて基礎部が構築された段階の施工状態を示す垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図3に示すように、本実施形態においては、RC造の躯体構造物としてRC造の建物の基礎部10が例示されている。
以下、この基礎部10を構築する場合の施工手順の一例を図1~3に基づいて説明する。
【0015】
先ず、地盤1(図2~3参照)を掘削して基礎部10を構築する基礎部構築領域1A(図2~3参照)を形成する根切り工程を行った後、基礎部構築領域1Aに捨てコンクリート2(図2~3参照)を打設する捨てコン打設工程を行い、捨てコンクリート2の養生後に、基礎部10に含まれる地中梁11(図3参照)を構築するための梁主筋11Aやあばら筋11Bなどを捨てコンクリート2上に配筋する梁鉄筋配筋工程と、地中梁11に対する柱(図示せず)の建て込みを可能にする柱主筋11C(図1参照)を配筋する柱主筋配筋工程とを行う。
【0016】
次に、基礎部成形用の型枠20のうちの立上り型枠の一例である複数の梁型枠21を、断面矩形状の型枠鋼管からなる複数の横端太材3(図2~3参照)や縦端太材4などを使用して梁主筋11Aに沿って建て込む型枠建て込み工程を行い、型枠建て込み工程後に、基礎部成形用の型枠20のうちのスラブ成形用の底版である複数のスラブ型枠22(図1図3参照)を、断面矩形状の型枠鋼管からなる複数の根太材5(図3参照)や、根太材5などを支持する複数の支保工(図示せず)などを使用して敷き込む型枠敷き込み工程を行う。
【0017】
そして、型枠20の設置後に、基礎部10に含まれるスラブ12(図3参照)を構築するためのスラブ筋12A(図3参照)をスラブ型枠22上にスペーサ(図示せず)などを使用して配筋するスラブ筋配筋工程を行った後、梁型枠21やスラブ型枠22で区画されたコンクリート打設領域1Bにコンクリートを打設しつつバイブレータ(図示せず)で適度な振動を与えて内部の気泡を除去するコンクリート打設工程を行う。
【0018】
このような施工手順で作業を行うことにより、基礎部10を構築することができる。
尚、基礎部10にエレベータピットなどが含まれている場合には、型枠建て込み工程において、立上り型枠の一例であるエレベータピット成形用の型枠などを複数の横端太材3や縦端太材4などを使用して建て込むようにすればよい。
【0019】
図2~3に示すように、各梁型枠21としては、基礎部10の外周部として成形される地中梁11の外側に建て込まれる外側型枠21Aや、その地中梁11の内側に建て込まれる内側型枠21Bなどが備えられている。
【0020】
図1~3に示すように、各縦端太材4のうち、外側型枠21Aを支持する各縦端太材4は、外側型枠21Aよりも上方に延出する延出部4Aを有している。そして、これらの延出部4Aの上部側には手摺6が架設され、延出部4Aの上下中間部には中桟7が架設されている。そのため、基礎部10を構築する施工手順には、手摺6と中桟7とのそれぞれを複数の延出部4Aに架設する手摺架設工程が含まれている。そして、手摺架設工程は、型枠建て込み工程において梁型枠21の外側型枠21Aを支持する縦端太材4の延出部4Aを使用することから、前述した施工手順のうちの型枠敷き込み工程よりも前の型枠建て込み工程の直後に行われ、手摺架設工程の後に型枠敷き込み工程などが行われるようになっている。
【0021】
つまり、手摺架設工程が型枠敷き込み工程よりも前に行われることから、手摺架設工程にて縦端太材4の延出部4Aに架設される手摺6及び中桟7は、基礎部10を構築する場合の施工工程のうち、複数のスラブ型枠22を複数の根太材5や支保工などを使用して敷き込む型枠敷き込み工程を行う段階から、敷き込んだスラブ型枠22上にスラブ筋12Aを配筋するスラブ筋配筋工程、及び、型枠20で区画されたコンクリート打設領域1Bにコンクリートを打設しつつバイブレータで適度な振動を与えて内部の気泡を除去するコンクリート打設工程などにおいて使用することが可能な安全設備として、構築する基礎部10の外周部に基礎部10を囲むように設置されている。
【0022】
これにより、型枠建て込み工程後に行われる型枠敷き込み工程、スラブ筋配筋工程、及び、コンクリート打設工程などを、構築する基礎部10の外周部に安全設備が設置されて安全性が確保された状態で行うことができる。
【0023】
そして、梁型枠21の建て込みに使用した各縦端太材4の延出部4Aを手摺6及び中桟7の支持に利用することから、手摺6及び中桟7を支持する専用の支柱部材を別途用意する必要がなくなり、これにより、専用の支柱部材を梁型枠21に取り付ける手間を要することなく、手摺6及び中桟7を、型枠建て込み工程以後の作業で使用可能な安全設備として容易に設置することができる。
その結果、RC造の基礎部10を構築する場合に使用する安全設備を合理的に設置することができ、当該安全設備を設置する上での作業性の向上や作業時間の短縮などを図ることができる。
尚、型枠建て込み工程において、例えばエレベータピット成形用の型枠などを建て込む場合には、その建て込みに前述した延出部4Aを有する縦端太材4を使用することにより、その後の手摺架設工程においては、その延出部4Aを利用して、複数の手摺6及び中桟7を、エレベータピットなどを囲むような配置で架設されたエレベータピット用の安全設備などとして設置することができる。
【0024】
手摺6及び中桟7には、横端太材3と同じ断面矩形状の型枠鋼管が使用されており、これにより、手摺6及び中桟7は、横端太材3を縦端太材4に固定する固定金具(図示せず)と同じものを使用することで縦端太材4の延出部4Aに固定することができる。
【0025】
各手摺6は、基礎部構築領域1Aに構築される基礎部10の上端からの高さ位置が、労働安全衛生規則に準じた高さ(例えば900mm以上の高さ)になるように縦端太材4の延出部4Aに固定されている。各中桟7は、基礎部10の上端からの高さ位置が、労働安全衛生規則に準じた高さ(例えば450mm程度の高さ)になるように縦端太材4の延出部4Aに固定されている。各外側型枠21Aは、基礎部10の上端から上方への延出長さが、労働安全衛生規則に準じた巾木の高さに対応する長さ(例えば100mm以上)になるように、それらの上下長さが設定されている。
【0026】
これにより、例えば基礎部10にアンカーを打ち込んで新たな安全設備を設置するまでの間、手摺6、中桟7、及び、外側型枠21Aを安全設備として使用することが可能となっている。
【0027】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0028】
(1)上記の実施形態においては、手摺架設工程を、前述した施工手順のうちの型枠敷き込み工程よりも前として、型枠建て込み工程の直後に行うものを例示したが、これに限らず、例えば、手摺架設工程を型枠建て込み工程と同時に行うようにしてもよい。又、型枠建て込み工程を、前述した外側型枠21Aを建て込む外型枠建て込み工程と、前述した内側型枠21Bなどを建て込む内型枠建て込み工程とに分けて、外型枠建て込み工程の直後、又は、外型枠建て込み工程と同時に手摺架設工程を行った後に、内型枠建て込み工程を行うようにしてもよい。
【0029】
(2)上記の実施形態においては、手摺架設工程を前述した施工手順のうちの型枠敷き込み工程よりも前に行うものを例示したが、これに限らず、例えば、手摺架設工程をスラブ筋配筋工程よりも前で型枠敷き込み工程の後に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
4 縦端太材
4A 延出部
6 手摺
10 躯体構造物
11 梁(躯体構造物の外周部)
12A スラブ筋
21 梁型枠
21A 外側型枠(立上り型枠)
22 スラブ型枠
図1
図2
図3