(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183918
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20221206BHJP
F24C 15/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24C7/02 521H
F24C15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091451
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕希
(72)【発明者】
【氏名】平岩 成一
【テーマコード(参考)】
3L086
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA13
3L086BA07
3L086BC05
3L086BC06
3L086DA02
(57)【要約】
【課題】高出力/高加熱による調理に対して信頼性の高いドアスイッチ機構を備えた加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱室前板5の内側に設けられて凸部4a,4bの進入動作に応じて回動するカム7a,7bと、カム7a,7bの近傍に設けられるとともに当該カム7a,7bの動作に応動する複数のスイッチ8a,8b,8cと、加熱室前板5の内側において孔6bに設けられて凸部4bの進入を案内するガイドピース12と、複数のスイッチ8a~8cが組み込まれるスイッチケース10と、を備える。カム7a,7bの可動方向は、本体11の前後方向であり、複数のスイッチ8a~8cのすべては、カム7a,7bの円弧軌跡Ta~Tcの動作によってON/OFFする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を高周波加熱する加熱源と、
前記被加熱物が収納される加熱室を備えた本体と、
前記加熱室の前方に設けられた開閉可能なドアと、
前記ドアの開閉動作を前記本体側に伝達する一カ所あるいは複数カ所に設けられた凸部と、
前記ドアの裏面と対向した部位の前記加熱室の入口周囲に設けられた加熱室前板と、
前記凸部を受け入れる前記加熱室前板に設けられた孔と、
前記加熱室前板の内側に設けられて前記凸部の進入動作に応じて回動するカムと、
前記カムの近傍に設けられるとともに当該カムの動作に応動する複数のスイッチと、
前記加熱室前板の内側において前記孔の少なくとも一カ所に対応した位置に設けられて前記凸部の進入を案内するガイドピースと、
前記複数のスイッチが組み込まれるスイッチケースと、を備え、
前記カムの可動方向は、前記本体の前後方向であり、
前記複数のスイッチのすべては、前記カムの円弧軌跡の動作によってON/OFFすることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記カムの回動軸の中心から前記スイッチのアクチュエータまでの距離は、前記回動軸の中心から前記カムの前記凸部によって入力される作動点までの距離よりも短く設定されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記カムの回動軸の中心から別の前記スイッチのアクチュエータまでの距離は、前記回動軸の中心から前記カムの前記凸部によって入力される作動点までの距離よりも短く設定されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
一方の前記カムは、他方の前記カムに向けて突出して他方の前記カムと前記前後方向に重なって配置される重なり部を備え、
前記重なり部は、他方の前記カムと前記ガイドピースとの間に位置していることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジなどの高周波加熱装置において、ドアの開閉と連動するスイッチ機構部は、電波漏洩防止などに加え、電気用品取締法にもあるように、規制の多い部分である。例えば、特許文献1に示すように、複数のスイッチが設けられ、それぞれのスイッチをON/OFFさせることで、ドアの開閉を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の高出力/高火力での調理に伴い、熱によるドアの開閉不良ひいてはドアスイッチのON/OFF切替不良が想定され、要求されるドアスイッチ機構の仕様が高くなっている。
【0005】
特許文献1に記載の従来のドアスイッチを備えた加熱調理器では、ドアスイッチを高さ方向(上下方向)の動作でON/OFFすると、ドアスイッチをONにするカムの可動域が高さ方向に制限されるため、ドアの熱膨張によるドアスイッチの切替不良に十分に対応できない課題があった。
【0006】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、高出力/高加熱による調理に対して信頼性の高いドアスイッチ機構を備えた加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被加熱物を高周波加熱する加熱源と、前記被加熱物が収納される加熱室を備えた本体と、前記加熱室の前方に設けられた開閉可能なドアと、前記ドアの開閉動作を前記本体側に伝達する一カ所あるいは複数カ所に設けられた凸部と、前記ドアの裏面と対向した部位の前記加熱室の入口周囲に設けられた加熱室前板と、前記凸部を受け入れる前記加熱室前板に設けられた孔と、前記加熱室前板の内側に設けられて前記凸部の進入動作に応じて回動するカムと、前記カムの近傍に設けられるとともに当該カムの動作に応動する複数のスイッチと、前記加熱室前板の内側において前記孔の少なくとも一カ所に対応した位置に設けられて前記凸部の進入を案内するガイドピースと、前記複数のスイッチが組み込まれるスイッチケースと、を備え、前記カムの可動方向は、前記本体の前後方向であり、前記複数のスイッチのすべては、前記カムの円弧軌跡の動作によってON/OFFすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高出力/高加熱による調理に対して信頼性の高いドアスイッチ機構を備えた加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の加熱調理器を前面側から見たときの外観斜視図である。
【
図3】本実施形態の加熱調理器に設けられたスイッチ組立体を示す側面図である。
【
図8】本実施形態のスイッチ組立体を示す斜視図である。
【
図9】従来のスイッチ組立体のドア開時のカムの状態を示す側面図である。
【
図10】従来のスイッチ組立体のドア閉時のカムの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1に示す方向を基準として説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の加熱調理器を前面側から見たときの斜視図である。なお、
図1は、本体の上面および左右側面を覆うキャビネット(外枠)を取り外した状態である。
図1に示すように、加熱調理器1は、キャビネットの内側に被加熱物である被調理物(不図示)を収納する加熱室2を備えた本体11を有している。加熱室2の前方には、縦開きとなるドア3が設けられている。
【0012】
加熱室2は、底壁2a、奥壁2b、上壁2c、右側壁2d、左側壁2eおよびドア3によって囲まれることで四角箱状(直方体状)に構成されている。ドア3の裏面と対向した部位の加熱室2の入口周囲には、加熱室前板5が設けられている。
【0013】
ドア3は、加熱室2の内部に被調理物を出し入れするために開閉するもので、ドア3を閉めることで加熱室2を密閉状態にする。また、ドア3は、被調理物を加熱するときに使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0014】
また、ドア3の外側には、被調理物の加熱状態を確認するために高温に耐えることができるガラス窓(不図示)が設けられている。また、ドア3の内側には、複数の孔が形成された鉄板(パンチングメタル)がガラス窓に重ねて設けられている。また、ドア3の外周の内部には、マイクロ波の漏洩を防止するための鉄製のマイクロ波漏洩防止部材(不図示)が設けられている。また、ドア3の外側の上部には、ドア3を開閉するための取っ手3aが設けられている。
【0015】
また、ドア3の背面側の外周には、本体11側に形成されている電気回路(後記するスイッチ8a~8c)をオンオフ(ON/OFF)させるための凸部4a,4bが設けられている。凸部4a,4bは、上下方向に離間して配置されている。
【0016】
本体11には、右側壁2dの外面に、ドア3の開閉を検出するスイッチ組立体30が設けられている。
【0017】
図2は、
図1の加熱室前板の拡大斜視図である。なお、
図2は、ドア3が開いている状態である。
図2に示すように、加熱室前板5は、鉛直方向(上下方向)に延びる縦板部5aと、水平方向(左右方向)に延びる横板部5bとを有している。縦板部5aおよび横板部5bは、平らな面で形成され、ドア3の裏側の外周面3b(
図1参照)と密着するようになっている。
【0018】
また、加熱室前板5には、凸部4a(
図1参照)と対向する位置に丸形状の孔6aが形成されている。また、加熱室前板5には、凸部4aよりも下側の凸部4bと対向する位置に四角形状の孔6bが形成されている。孔6aは、縦板部5aと横板部5bとの境界近傍に位置し、該孔6aから突起部7cが突出するように構成されている。孔6bは、縦板部5aに位置し、該孔6bに、異物が挿入されるのを防止するガイドピース12がはめ込まれている。
【0019】
図3は、本実施形態の加熱調理器に設けられたスイッチ組立体を示す側面図である。なお、
図3では、ドア3が若干開いた状態を示している。
図3に示すように、本体11は、加熱室2(
図1参照)の底壁2aと本体11の底板(不図示)との間の空間に機械室Mが設けられている。この機械室Mには、食品(被加熱物)を加熱するための高周波を発生させる高周波加熱源21(加熱源)が設けられている。
【0020】
本体11の右側壁2dには、スイッチ組立体30が設けられている。このスイッチ組立体30とドア3の凸部4a,4bとによってドアスイッチ機構が構成されている。また、スイッチ組立体30は、カム7a、カム7b、スイッチ8a,8b,8c、コイルバネ9a,9b(コイルバネ9bは
図6参照)、スイッチケース10を備えて構成されている。
【0021】
また、ドア3に設けられる凸部4bは、凸部4aよりも外周面3bから本体11側に長く突出している。また、凸部4bは、凸部4aよりも、ドア3の下部の回転中心から近い側に位置している。このため、ドア3を閉じたときに凸部4bに対応するスイッチ8cが他のスイッチ8a,8bよりも先に動作するようになっている。
【0022】
図4は、
図3のスイッチ組立体の側面図である。なお、
図4は、ドア3が開いて、スイッチ8a~8cがすべてオフの状態である。
図4に示すように、カム7aは、スイッチケース10の紙面手前側に設けられている。カム7bは、破線で示すように、スイッチケース10の紙面裏側に設けられている。また、カム7a,7bは、加熱室前板5の内側に設けられている。
【0023】
カム7aは、細長い板状に形成され、回転中心となる回動軸g1がスイッチケース10に回動可能に支持されている。これにより、カム7aは、回動軸g1を中心として本体11の前後方向に動作するようになっている。
【0024】
また、カム7aの上端には、前方に向けて突出する突起部7c(作動点)が形成されている。この突起部7cは、ドア3の開時に、孔6aから突出している。また、カム7aは、突起部7cに凸部4a(
図3参照)が当接して、凸部4aが孔6aに進入することによって回動するようになっている。
【0025】
カム7aは、回動軸g1の前後方向の後方に円弧部7dが形成されている。この円弧部7dは、回動軸g1を中心とした円弧軌跡に沿って移動する。
【0026】
また、カム7aは、回動軸g1の下方にも円弧部7eが形成されている。この円弧部7eは、回動軸g1を中心とした円弧軌跡に沿って移動する。
【0027】
カム7bは、細長い板状に形成され、回転中心となる回動軸g2がスイッチケース10に回動可能に支持されている。これにより、カム7bは、回動軸g2を中心として本体11の前後方向に動作するようになっている。
【0028】
また、カム7bは、回動軸g2から上方に向けて、孔6bの高さ位置まで延びて形成されている。また、カム7bは、回動軸g2から下方に向けて、スイッチ8cまで延びている。
【0029】
また、カム7bは、回動軸g2の下方に円弧部7fが形成されている。この円弧部7fは、回動軸g2を中心とした円弧軌跡に沿って移動する。
【0030】
スイッチケース10には、スイッチ8a~8cが取り付けられている。スイッチ8aは、カム7aの近傍であるカム7aの後方に位置している。スイッチ8bは、カム7aの近傍であるカム7aの下方に位置している。スイッチ8cは、カム7bの近傍であるカム7bの下方に位置している。
【0031】
スイッチ8aは、カム7aの円弧部7dによってON/OFF動作するものであり、スイッチケース10の上部に位置している。また、スイッチ8aは、円弧部7dによって押圧されるアクチュエータ8a1を備えている。このアクチュエータ8a1は、前後方向の前方に向けて突出するように配置され、前後方向に動作するようになっている。また、アクチュエータ8a1は、押し込まれることで、スイッチがオンになる。
【0032】
スイッチ8bは、カム7aの円弧部7eによって動作するものであり、スイッチケース10の上下方向の中央部に位置している。また、スイッチ8bは、円弧部7eによって押圧されるアクチュエータ8b1を備えている。このアクチュエータ8b1は、上下方向の上方に向けて突出するように配置され、上下方向に動作するようになっている。また、アクチュエータ8b1は、押し込まれることで、スイッチがオンになる。
【0033】
スイッチ8cは、カム7bの円弧部7fによって動作するものであり、スイッチケース10の下部に位置している。また、スイッチ8cは、円弧部7fによって押圧されるアクチュエータ8c1を備えている。このアクチュエータ8c1は、上下方向の上方に向けて突出するように配置され、略上下方向に動作するようになっている。また、アクチュエータ8c1は、押し込まれることで、スイッチがオンになる。
【0034】
コイルバネ9aは、カム7aを初期位置に復帰させる付勢力を与えるものであり、カム7aの後方、かつ、スイッチ8aの下方に設けられている。また、コイルバネ9aは、その一端がカム7aの回動軸g1よりも下側の部分に接続され、他端がスイッチケース10に接続され、突起部7cを孔6aから突出する方向に付勢している。
【0035】
図5は、
図3のスイッチ組立体の斜視図である。
図5に示すように、スイッチ組立体30は、スイッチケース10の正面に、凸部4b(
図3参照)を案内するガイドピース12が取り付けられている。このガイドピース12の孔に凸部4b(
図3参照)が挿入されることによって、カム7bが押圧され、回動するようになっている。
【0036】
スイッチケース10には、スイッチ8bとスイッチ8cとの間にカム通し孔10aが形成されている。カム7bの円弧部7fは、カム通し孔10aを通してスイッチ8c側に突出し、スイッチ8cをON/OFFするようになっている。
【0037】
スイッチ8a~8cは、電線を介して、機械室M(
図3参照)に設けられた制御基板(不図示)と接続される。図示しない制御基板には、スイッチ8a~8cからのON信号、OFF信号が伝達される。
【0038】
図6は、ドア開時のカムの位置を示す側面図である。なお、
図6の左図は、カム7a側から見たときであり、
図6の右図は、カム7b側から見たときである。
図6の左図に示すように、ドア3が開いている場合には、カム7aは、コイルバネ9aの付勢力(弾性復帰力)によって図示反時計回り方向に回動し、カム7aの突起部7cが加熱室前板5(
図4参照)の孔6a(
図4参照)から突出している。
【0039】
また、ドア開時には、カム7aの円弧部7dがスイッチ8aのアクチュエータ8a1から外れた位置にあり、アクチュエータ8a1がケース(スイッチのケース)8a2から前方に突出し、スイッチ8aがオフの状態になっている。
【0040】
また、ドア開時には、カム7aの円弧部7eがスイッチ8bのアクチュエータ8b1から離れた位置まで回動し、アクチュエータ8b1がケース8b2から上方に突出し、スイッチ8bがオフの状態になっている。
【0041】
また、カム7aの円弧部7dは、円弧軌跡Taに沿って移動するようになっている。この円弧軌跡Taは、アクチュエータ8a1のみを動作させ、スイッチ8aのケース8a2に当たらないように設定されている。換言すると、円弧部7dは、ケース8a2に突き当たることなく、回動動作が規制されないように構成されている。
【0042】
また、カム7aの円弧部7eは、円弧軌跡Tbに沿って移動するようになっている。この円弧軌跡Tbは、アクチュエータ8b1のみを動作させ、スイッチ8bのケース8b2に当たらないように設定されている。換言すると、円弧部7eは、ケース8a2に突き当たることなく、回動動作が規制されないように構成されている。
【0043】
図6の右図に示すように、カム7bには、コイルバネ9bが接続されている。すなわち、コイルバネ9bは、その一端がカム7bの下部に接続され、他端がスイッチケース10に接続され、カム7bを図示時計回り方向に回動するように付勢している。
【0044】
ドア3が開いている場合には、カム7bは、コイルバネ9bの付勢力(弾性復帰力)によって
図6の右図示時計回り方向に回動し、カム7bの先端面7gがガイドピース12の裏側に当接している。
【0045】
また、ドア開時には、カム7bの円弧部7fがスイッチ8cのアクチュエータ8c1から外れた位置にあり、アクチュエータ8c1がケース8c2から略上方に突出し、スイッチ8cがオフの状態になっている。
【0046】
また、カム7bの円弧部7fは、円弧軌跡Tcに沿って移動するようになっている。この円弧軌跡Tcは、アクチュエータ8c1のみを動作させ、スイッチ8cのケース8c2に当たらないように設定されている。換言すると、円弧部7fは、ケース8c2に突き当たることなく、回動動作が規制されないように構成されている。
【0047】
図7は、ドア閉時のカムの位置を示す側面図である。なお、
図7の左図は、カム7a側から見たときであり、
図7の右図は、カム7b側から見たときである。
ドア3を閉じると、ドア3の外周面3b(
図3参照)が加熱室前板5(
図2参照)に当接し、凸部4a(
図3参照)がカム7aの突起部7cを後方(奥側に)に押圧する。これにより、カム7aは、コイルバネ9aの弾性復帰力に反発しながら回動する。
図7の左図に示すように、カム7aの時計回り方向の回動動作によって、円弧部7dがスイッチ8aのアクチュエータ8a1を押し込み、スイッチ8aがオン状態になる。このように、カム7aの円弧部7dが回動動作する軌跡上にスイッチ8aのケース8a2が位置しないようにすることで、スイッチ8aのON/OFFの範囲を円弧部7dの長さによって任意に決めることができる。
【0048】
また、ドア3を閉じると、凸部4a(
図3参照)がカム7aの突起部7cを後方(奥側)に押圧する。このとき、
図7の左図に示すように、カム7aの回動動作によって、円弧部7eがスイッチ8bのアクチュエータ8b1を押し込み、スイッチ8bがオン状態になる。このスイッチ8bにおいても、スイッチ8aと同様に、カム7aの円弧部7eの回転動作によってアクチュエータ8b1を押す機構となっている。このように、カム7aの円弧部7eの回動動作する軌跡上にスイッチ8bのケース8b2が位置しないようにすることで、スイッチ8bのON/OFFの範囲を円弧部7eの長さによって任意に決めることができる。
【0049】
また、ドア3を閉じると、ドア3の外周面3b(
図3参照)が加熱室前板5(
図2参照)に当接し、凸部4b(
図3参照)がガイドピース12に案内され、カム7bの上端の先端面7gが後方(奥側に)に押圧される。これにより、カム7bは、コイルバネ9bの弾性復帰力に反発しながら
図6の右図に示す状態から
図7の右図に示す状態に至る。このときのカム7bの回動動作によって、円弧部7fがスイッチ8cのアクチュエータ8a1を押し込み、スイッチ8aがオン状態になる。このように、スイッチ8cでは、カム7bの円弧部7fの回転動作する軌跡上にスイッチ8cのケース8c2が位置しないようにすることで、スイッチ8cのON/OFFの範囲を円弧部7fの長さによって任意に決めることができる。
【0050】
本実施形態のスイッチ組立体30では、ドア3を閉じた場合、まずカム7bによってスイッチ8cがオンになり、次にカム7aによってスイッチ8aがオンになり、最後にスイッチ8bがオンになる。このようにしてスイッチ8a~8cのすべてがONになることによって、ドア3が閉じられたことが検知される。逆に、ドア3を開いた場合には、前記とは逆で、まずスイッチ8bがオフになり、次にスイッチ8aがオフになり、最後にスイッチ8cがオフになる。
【0051】
図8は、本実施形態のスイッチ組立体を示す斜視図である。
図8に示すように、カム7a(他方のカム)は、回動軸g1よりも上部において、上方かつ前方に延びる腕部7hを有している。また、カム7b(一方のカム)は、カム7aの腕部7hとガイドピース12との間に向けて延びる曲げ部(重なり部)7iを有している。この曲げ部7iは、スイッチケース10に形成された切欠部10bからカム7a側に突出して形成される。曲げ部7iの前面は、前記した先端面7gとなっている。このように、カム7aの腕部7hとカム7bの曲げ部7iとは、ガイドピース12の後方において、前後方向に重なるように構成されている。
【0052】
このように、カム7bに曲げ部7iを形成することにより、閉じたドア3を開く際、仮に、カム7bが回動途中で引っかかって動作が停止したとしても、カム7aの腕部7hによってカム7bを押し出すことができる。その結果、すべてのスイッチ8a~8cをOFFにすることができる。
【0053】
ところで、従来の加熱調理器に搭載される一般的なドアスイッチの挙動について
図9および
図10を参照して説明する。
図9に示すように、スイッチ組立体100は、カム107a,107bと、スイッチ108a,108b,108cと、コイルバネ109aと、スイッチケース110と、を備えて構成されている。カム107aは、回動軸g101を支点に回動する。カム107bは、回動軸g102を支点として回動する。しかし、スイッチ108bは、カム107aの操作部107dの回動軌跡T100上にスイッチ108bのケースが位置している。このため、複数のスイッチ108a~108cのうち一つでも前記したスイッチ108bを備えたON/OFF機構のものがあると、スイッチ108bのアクチュエータ108b1をONにする範囲が、使用するスイッチのスペックによって制限されてしまう。
【0054】
そこで、本実施形態の加熱調理器1は、凸部4a,4b(
図1参照)と当接して応動するカム7a,7bによってスイッチ8a~8cがON/OFFする機構については一般的なドアスイッチと同等であるが、カム7a,7bの円弧軌跡Ta~Tcが、すべてのスイッチ8a~8cのケース8a2~8c2と重ならない機構にすることで、スイッチ8a~8cのON範囲を任意に設定することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の加熱調理器1は、被加熱物を高周波加熱する高周波加熱源21と、被加熱物が収納される加熱室2を備えた本体11と、加熱室2の前方に設けられた開閉可能なドア3と、を備える。また、加熱調理器1は、ドア3の開閉動作を本体11側に伝達するは複数カ所に設けられた凸部4a,4bと、ドア3の裏面と対向した部位の加熱室2の入口周囲に設けられた加熱室前板5と、凸部4a,4bを受け入れる加熱室前板5に設けられた孔6a,6bと、を備える。また、加熱調理器1は、加熱室前板5の内側に設けられて凸部4a,4bの進入動作に応じて回動するカム7a,7bと、カム7a,7bの近傍に設けられるとともに当該カム7a,7bの動作に応動する複数のスイッチ8a,8b,8cと、を備える。また、加熱調理器1は、加熱室前板5の内側において孔6bに設けられて凸部4bの進入を案内するガイドピース12と、複数のスイッチ8a~8cが組み込まれるスイッチケース10と、を備える。カム7a,7bの可動方向は、本体11の前後方向であり、複数のスイッチ8a~8cのすべては、カム7a,7bの円弧軌跡Ta~Tcの動作によってON/OFFする。これによれば、スイッチ8a~8cのスペックに頼らず任意にスイッチ8a~8cのON/OFF範囲を設定することが可能となる。その結果、カム7a,7bの可動域を、想定されるドア3の熱膨張に合わせて任意に設定できるようにして、ドア3の熱膨張によるスイッチ8a~8cのON/OFFの切替不良を解消できる。
【0056】
また、本実施形態は、カム7aの回動軸g1の中心からスイッチ8aのアクチュエータ8a1までの距離L1は、回動軸g1の中心からカム7aの凸部4aによって入力される突起部7c(作動点)までの距離L2よりも短く設定されている。このように、回動支点からの距離を短くすることで、より少ない力でアクチュエータ8a1を動作させることができ、カム7aの操作力を低減できる。
【0057】
また、本実施形態は、カム7aの回動軸g1の中心から別のスイッチ8bのアクチュエータ8b1までの距離L3は、回動軸g1の中心からカム7aの凸部4aによって入力される突起部7c(作動点)までの距離L2よりも短く設定されている。これにより、より少ない力でアクチュエータ8b1を動作せることができ、カム7aの操作力をさらに低減できる。
【0058】
また、本実施形態は、カム7bは、カム7aに向けて突出してカム7aと前後方向に重なって配置される曲げ部7iを備える。この曲げ部7iは、カム7aとガイドピース12との間に位置している。これにより、仮にカム7bが初期位置に戻る際にカム7bの動作が途中で停止したとしても、カム7aの動作力によってカム7bを初期位置に戻して、スイッチ8cを確実にOFFにすることが可能になる。
【0059】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が含まれる。例えば、本実施形態では、ドア3に複数の凸部4a,4bを設けた場合を例に挙げて説明したが、凸部を一つにして、本体11側にドア3によって押される突起部を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、3つのスイッチ8a~8cを設けた場合を例に挙げて説明したが、4つ以上のスイッチを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 加熱調理器
2 加熱室
3 ドア
4a,4b 凸部
5 加熱室前板
6a,6b 孔
7a カム(他方のカム)
7b カム(一方のカム)
7c 突起部(作動点)
7d,7e,7f 円弧部
7i 曲げ部(重なり部)
8a,8b,8c スイッチ
8a1,8b1,8c1 アクチュエータ
8a2,8b2,8c2 ケース
9a,9b コイルバネ
10 スイッチケース
11 本体
12 ガイドピース
21 高周波加熱源(加熱源)
30 スイッチ組立体
g1,g2 回動軸
L1 距離(カム7aの回動軸g1の中心からスイッチ8aのアクチュエータ8a1までの距離)
L2 距離(カム7aの回動軸g1の中心からカム7aの凸部4aによって入力される作動点までの距離)
L3 距離(カム7aの回動軸g1の中心から別のスイッチ8bのアクチュエータ8b1までの距離)
Ta,Tb,Tc 円弧軌跡