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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183932
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20221206BHJP
   B43K 21/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B43K21/00 K
B43K21/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091482
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】上原 康孝
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FE06
2C353FE08
(57)【要約】
【課題】芯繰出機構を作動させた際に、連続して芯の繰出しを可能とするとともに、繰り出し動作で前進した押圧部材を容易に元の位置に戻すことが可能となるシャープペンシルを提供すること。
【解決手段】芯90を収納する芯収容部を有する前軸20と、前軸20に係止された後軸30と、後軸30内に前後動自在に収容された押圧部材80と、押圧部材80を繰り出し可能な繰出機構40と、を備え、繰出機構80の前方には押圧部材80を保持する保持部46aを有し、前軸20内には、芯90を保持する芯保持部23aと、芯収容部と芯保持部とを連通する芯通路50dと、を有し、各々が後軸30に対して前後動可能に係止され、操出機構40を操作可能な第1操作部と、押圧部材80に係止された第2操作部と、を備え、押圧部材80は、少なくとも一部が芯収容部に挿入可能、且つ、前端部と芯90とが当接可能に構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用の芯を収納する芯収容部を有する前軸と、前記前軸に対して着脱自在に係止された後軸と、少なくとも一部が前記後軸内に前後動自在に収容された押圧部材と、前記押圧部材を前方へ繰り出し可能な繰出機構と、を備え、
前記繰出機構の前方には前記押圧部材を保持する保持部を有し、
前記前軸内には、前記芯を保持する芯保持部と、前記芯収容部と前記芯保持部とを連通する芯通路と、を有し、
各々が前記後軸に対して前後動可能に係止され、該後軸から少なくとも一部が外部へ露出し前記操出機構を操作可能な第1操作部と、当該後軸から少なくとも一部が外部へ露出し前記押圧部材に係止された第2操作部と、を備え、
前記押圧部材は、少なくとも一部が前記芯収容部に挿入可能、且つ、前端部と前記芯とが当接可能に構成されたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記後軸内に、前記押圧部材または前記第2操作部の前方への移動を制限する規制部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯収容部が、横断面から視て旋回するにつれ中心部に近づく渦巻状に形成された芯収容溝を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記前軸の側面または後面に、前記芯収容溝と連通する芯挿入口を備えたことを特徴とする請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記前軸を異なる芯径の芯を収容し保持できる別の前軸に交換可能に構成するとともに前記異なる芯径の芯を前記押圧部材で押圧して繰り出し可能としたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯を収納する芯収納部の後方に当該芯の繰出機構を備えたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芯を収納する芯収納部の後方に当該芯の繰出機構を備えたシャープペンシルが知られている。(特許文献1)
【0003】
特許文献1のシャープペンシルは、芯送出用棒体が進退自在に装着された芯繰出機構と芯送出口との間に芯筒が回動自在に装着されており、芯筒は軸心部に芯送出孔が貫設され且つ側面長手方向には芯送出孔に連通する芯誘導口が形或された芯送出管状部と、該管状部の両端に芯誘導口が上方に位置した時上方に向って拡開状又は平行状となる隔壁が連設されて、芯収納管部と、空間部が区画されていると共に、少くとも空間部における芯送出管状部の背面部位置に錘り部が形或されている。これにより、芯繰出機構を作動することで芯送出用棒体を前進させ、芯筒内の芯を前進させ芯送出口から繰り出すことができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のシャープペンシルの構造では、芯繰出機構におけるチャックの前方に該芯送出用棒体を前進させた状態で保持する当該芯送出用棒体用の保持部材がないため、前進したチャックにより同時に前進させた芯送出用棒体が当該チャックが後退する際にチャックと共に後退してしまう。一方、芯送出用棒体により前方へ押圧された芯は、芯保持具で保持されることから後退することは無いため、前進した位置に留まることから、芯と芯送出用棒体の間に隙間が生じてしまう。このため、次の芯繰出機構を作動させチャックを前進させる際には芯と芯送出用棒体とが離間していることから、2回目の繰り出し動作では芯は前進しないか極少量の前進しかできない虞がある。但し、2回目の芯繰り出し動作でチャックが前進した際に前進したチャックが開くことで芯送出用棒体の把持が一旦解除されることから、芯送出用棒体はその重さにより芯と当接するまで前進することが考えられる。このため、3回目の芯繰り出し動作では、1回目同様に芯は正常に前進する。つまり、特許文献1の構造では2回に1回しか芯が正常に前進しない虞があった。
【0005】
さらに、先行文献1の構造では、筆記により芯が摩耗した際、芯繰り出し動作で前進させた芯送出用棒体を次の芯を押圧するために元の位置に戻すことが必要になるが、その動作は本体の芯繰り出し機構を作動させた状態で先端部側を上方に向け、チャックによる保持が解除された芯送出用棒体をその重さにより後退させ基の位置に戻す構造である。このため、チャックの前部に芯送出用棒体用の保持部材を設けた場合、芯繰り出し機構を作動させた状態で先端部側を上方に向けても、保持部材により保持された芯送出用棒体は元の位置に後退できないことから、保持部材を設けることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭59-7109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の背景をもとになされたものであり、その目的とするところは、芯繰出機構を作動させた際に、連続して芯の繰出しを可能とするとともに、繰り出し動作で前進した押圧部材を容易に元の位置に戻すことが可能となるシャープペンシルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筆記用の芯を収納する芯収容部を有する前軸と、前記前軸に対して着脱自在に係止された後軸と、少なくとも一部が前記後軸内に前後動自在に収容された押圧部材と、前記押圧部材を前方へ繰り出し可能な繰出機構と、を備え、前記繰出機構の前方には前記押圧部材を保持する保持部を有し、前記前軸内には、前記芯を保持する芯保持部と、前記芯収容部と前記芯保持部とを連通する芯通路と、を有し、各々が前記後軸に対して前後動可能に係止され、該後軸から少なくとも一部が外部へ露出し前記操出機構を操作可能な第1操作部と、当該後軸から少なくとも一部が外部へ露出し前記押圧部材に係止された第2操作部と、を備え、前記押圧部材は、少なくとも一部が前記芯収容部に挿入可能、且つ、前端部と前記芯とが当接可能に構成されたことを特徴とするシャープペンシルである。
尚、本発明においては、軸方向における前軸の前端開口部がある側を前方と表現しその反対方向を後方と表現する。また、前軸及び後軸の軸心に向かう方向を内方と表現し、その反対方向を外方と表現する。
【0009】
本発明のシャープペンシルによれば、前軸に芯を収容するための芯保持部を有し、更に、繰出機構の前方に押圧部材を保持する保持部を有していることから、第1操作部を操作して繰出機構を作動させ芯の繰り出し動作を行った際に、押圧部材がを一定量前進させるとともに、押圧部材の前進に伴い当該押圧部材で芯を押圧することで芯の繰り出しを行うことができる。また、保持部により繰り出し動作後の芯に対する押圧部材の位置が略一定となるため、芯の繰り出し動作時に毎回同様に芯を繰り出すことが可能となる。また、押圧部材には少なくとも一部が後軸の外部へ露出した第2操作部が係止されていることから、チャックが押圧部材の把持を解除した状態であれば、第2操作部を外部から操作することで前進した押圧部材を元の位置に戻すことができる。
【0010】
また、前記後軸内に、前記押圧部材の前方への移動を制限する規制部を設けてもよく、この場合、規制部により押圧部材の前進が規制されるため、繰り出し機構を作動し続けても押圧部材が繰り出し機構から脱落することを防止できる。尚、規制部と当接する当接箇所は押圧部材に設けてもよく、押圧部材が係止される第2操作部に設けてもよい。
【0011】
また、前記芯収容部が、横断面から視て旋回するにつれ中心部に近づく渦巻状に形成された芯収容溝を備えていてもよく、この場合、例えば中心部に芯通路を設けることで渦巻状に並んだ芯収容部内の芯を中心部から順に使用することで、芯同士の接触が減ることから芯同士の干渉を押さえつつ芯の繰り出しが容易にできると共に、多くの芯を芯収容部内に収容可能となる。
【0012】
また、前記前軸の側面または後面に、前記芯収容溝と連通する芯挿入口を備えていてもよく、この場合、筆記することで芯が摩耗し、芯収容部内の芯が減っても、芯収容部の芯収容溝に芯挿入口から芯を補充することができる。
【0013】
また、前記前軸を取り外すことで、異なる芯径の芯を収容し保持できる別の前軸を装着可能としてもよく、この場合、前軸が自由に交換可能となるため、同じ芯径であれば芯の補充時間を短縮することができ、さらに、異なる芯径の芯を収容した前軸と交換した場合は、異なる線幅の筆跡を得られるシャープペンシルへと容易に仕様変更することができるため、非常に便利なものとなる。尚、押圧部材の先端の芯との当接部は、隣り合う芯との干渉が起きないように、交換可能な最小な芯径より小さく形成することが好ましい。
【0014】
また、芯収納溝は前方端に底部を有し、底部が横断面における芯収納溝の一端部から他端部に向かって傾斜する傾斜部を備えていてもよく、この場合、例えば芯収納溝の一端部を前方に向かって深く形成し、他端部が浅くなるよう形成することで、シャープペンシルを重力方向に沿ってペン先が地面側にくるように把持した際に芯収納溝内の予備芯は他端部から一端部へ傾斜部に沿って移動するよう促すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芯繰出機構を作動させた際に、連続して芯の繰出しを可能とするとともに、繰り出し動作で前進した押圧部材を容易に元の位置に戻すことが可能となるシャープペンシルを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態におけるシャープペンシルの外観図である。
図2図1のA-A端面を示す拡大端面図である。
図3図2のB-B端面を示す拡大端面図である。
図4図2のC-C端面を示す拡大端面図である。
図5】芯収納部の芯収納溝を展開した展開図である。
図6図2の状態からノック体を押圧して芯を繰り出す状態を説明するための説明図である。
図7図2の状態からノック体を複数回押圧して押圧部材が最前進した状態を説明するための説明図である。
図8図1のシャープペンシルにおいて、芯を芯収納溝に補充する状態を説明するための説明図である。
図9図1のシャープペンシルにおいて、後軸から前軸を取り外して別の前軸に交換することを説明するための説明図である。
図10図2とは異なる芯径の芯(予備芯)を収納した前軸の拡大縦端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるシャープペンシルの外観図であり、図2は、図1のA-A端面を示す端面図であり、図3は、図2のB-B端面を示す端面図であり、図4は、図2のC-C端面を示す端面図であり、図5は、芯収納部の芯収納溝を展開した展開図であり、図6は、図2の状態からノック体を押圧して芯を繰り出す状態を説明するための説明図であり、図7は、図2の状態からノック体を複数回押圧して押圧部材が最前進した状態を説明するための説明図であり、図8は、図1のシャープペンシルにおいて、芯を芯収納溝に補充する状態を説明するための説明図であり、図9は、図1のシャープペンシルにおいて、後軸から前軸を取り外して別な前軸に交換することを説明するための説明図であり、図10は、図2とは異なる芯径の芯(予備芯)を収納した前軸の拡大縦端面図である。
【0019】
図1から図5に示すように、シャープペンシル10は、前軸20と、前軸20の後部に着脱自在に螺着された後軸30と、後軸30の内部に配設され押圧部材80を挟持するチャック41を備えた繰出機構40と、繰出機構40の前方且つ前軸内に形成され芯90(予備芯91)を収納する芯収納部となる芯収納部材50と、繰出機構40の後方かつ後軸30の端開口部から後方へ突出するノック体60(第1操作部の一例)と、後軸30の外周部に当該後軸30に対して前後動自在に係止されたスライダー70(第2操作部の一例)と、後軸30内に前後動自在に配置されスライダー70と係止する押圧部材80と、により構成されている。
【0020】
前軸20は、前軸本体21と、前軸本体21の前方に配設され前軸本体21に螺着された先口22と、前軸本体21の外周面に係止された蓋部材24と、で構成されている。
【0021】
前軸本体21は略筒状に形成され、前部外周部に先口22の後部内周部に形成した後部雌螺子部22aと螺着する前部雄螺子部21aと、後部外周部には後軸30の前部内周部に形成した前部雌螺子部30aと螺着する後部雄螺子部21bと、を有している。また、図2および図3に示すように、前軸本体21の内部には芯収納部となる芯収納部材50が収納されている。そして、前軸本体21の外周部には芯収容部材50に形成された芯収容溝50aの他端部50eに連通する芯挿入口21cを有している。芯挿入口21cは、外方から視て矩形状に形成されると共に、軸方向に沿って長く延びて形成されている。芯挿入口21cの軸方向に沿った長さは予備芯91(芯90)の長さより長く形成してあり、予備芯91を前軸20に対して軸方向沿って並行に配置した状態でも芯挿入口21cから前軸本体21の内部に挿入可能に構成されている。さらに、図3に示すように、前軸本体21の内周部には軸方向に沿って延びる溝状部21dが軸心を挟んで対象に2ヶ所形成されている。
【0022】
先口22は、前後に貫通する内孔を有しており、前端には芯90が出没する前端開口部22bが形成されている。また、先口22の前部内周部には合成ゴム製の芯保持部材23が圧入固着されており、芯保持部材23の内孔部に形成した芯保持部23aにより、芯90が軽い力(約0.2N)で保持可能に構成されている。
【0023】
芯収納部となる芯収納部材50の内方には後端から前方へ向かって延びる芯収納溝50aを有しており、芯収納溝50aの前端部には底部50bが形成されている。また、芯収納部材50の外周面には、軸方向に沿って延び外方へ向かって突出するレール部50gが軸心を挟んで対象に2ヶ所形成してあり、レール部50gを前軸本体21の溝状部21dに挿入することで、芯収納部材50を後軸22(軸筒20)に対して回動不能に構成されている。さらに、芯収納部材50の外周部には芯収納溝50aに連設された開口部50hを有しており、開口部50hと前軸本体21の芯挿入口21cとの位置が一致するよう構成することで、芯挿入口21cと芯収納溝50aとが連通し、芯挿入口21cから芯収納溝50aに芯90(予備芯91)を補充可能に構成される。
【0024】
また、図3および図5に示すように、芯収納溝50aは、横断面方向からみて外周部の芯挿入口21cから旋回するにつれ中心部に近づく渦巻状に形成してあり、一端部50c(中央部)には芯保持部23aに連通する芯通路50dを有している。芯通路50dは芯90が1本は通るが2本は通らない内径を有しており、これにより、芯通路50dを介して芯90が1本ずつ芯保持部23aに供給される。また、図5に示すように芯収納溝50aを平面状に展開すると、芯収納溝50aの底部50bは、一端部50c(図3における中央部)から他端部50e(図3における外周部)に向かって傾斜して形成された傾斜部50fを有している。この傾斜部50fにより、シャープペンシル10を把持して筆記するために、筆記先端部を重力方向下方に向けると予備芯91は傾斜部50fに沿って一端部50c側に進むように構成される。尚、軸方向に直交する方向に対する傾斜部50fの角度は、傾斜が大きすぎると、一端部50c側にある芯90に負荷が掛かりすぎ、芯90が隣り合う予備芯91と係合することで芯通路50dから排出され難くなる虞がある。また、傾きが小さすぎると予備芯91が一端部50c側に進み難くなることから、傾斜部50fの傾斜角度Xは、5°<X<45°で形成することが好ましく、15°<X<30°で形成することがより好ましい。本実施形態では、具体的に傾斜部50fの傾斜角度Xを25°に形成することで予備芯91が一端部50c側に徐々に移動させることができる。
【0025】
前軸20内に収容される芯90(予備芯91)は、JIS S 6005(2019)に規定されたシャープペンシル用の芯において、表示直径0.5の芯である。具体的に、本実施形態では、芯90(予備芯91)は約φ0.57mm、長さ60mmで形成されている。
【0026】
芯収容部材50の後方には、中栓25が配設されており、前軸本体21の後部外周部に内周部まで貫通するよう形成された外周孔部21eに、中栓25の外周部に形成した係止突起25aを係止させることで、中栓25を前軸本体21に固定するとともに芯収容部材50が前軸本体21の後部から抜けてしまうことを防止してある。また、中栓25の前端中心部には、芯収納部材50の芯収容溝50aに収容される芯90(予備芯91)の外径より小さい内径を有する連絡内孔25bが形成されている。このため、中栓25により、芯収納部材50に収納された芯90(予備芯91)が、連絡内孔25bから外部へ排出されてしまうことが防止される。尚、具体的に、本実施形態において連絡内孔25bは、φ0.35mmで形成されていることから、連絡内孔25bから芯90(予備芯91)が排出されることは無い。
【0027】
蓋部材24は、前軸本体21の芯挿入口21cを閉口するように装着され、軸方向に沿って延びレール状に形成された係止部24aを有している。係止部24aが、芯挿入口21cの内周部に形成された被係止部21fと係止することで蓋部材24は前軸本体21に装着され、芯挿入口21cが閉口される。また、本実施形態では蓋部材24の取り付け、取り外しが容易にできて繰り返し着脱しても係止力が低下しないよう、蓋部材24が弾性体で形成されている。具体的に蓋部材24を構成する弾性体の材料としては、シリコンゴム、ニトリルゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等が好適に使用できる。また、これに限らず、蓋部材24は比較的硬い樹脂や金属で構成してもよい。本実施形態では、蓋部材24はシリコンゴムで形成されている。
【0028】
後軸30は、筒状に形成されており外周部には軸方向に沿って貫通する内孔を有している。後軸30の側面には、軸方向に沿って延びるスリット状の摺動孔30bが形成され、摺動孔30bにはスライダー70が前後動自在に挿入されている。また、後軸30の前部は後部に比べて縮径された縮径部30cを有しており、縮径部30cには前部雄螺子部30aが形成されている。さらに、摺動孔30bの前方部には内孔まで貫通する外周孔30dが軸心を挟んで対称に2ヶ所形成されている。
【0029】
次に繰出機構40について詳述する。図2に示すように、繰出機構40は、チャック41と、該チャック41の後方に連結され且つ押圧部材80が内部に収納されている筒体45と、チャック41の頭部41aに外嵌された締具42と、締具42を後方で受け止める固定部材43と、固定部材43の前方に配置され、当該固定部材43に係止(螺着)された連結具44と、連結具44の内部に圧入固着された保持部材46と、固定部材43と筒体45との間に帳架されたコイルスプリング47と、で構成されている。
【0030】
チャック41は、筒体45とともに連結具44及び固定部材43に対して前後動可能に構成してある。そして、チャック41の頭部41aは軸方向に沿って二分割されており、分割されたそれぞれの頭部41aは前方へ向かって互いが次第に離間するように形成され、頭部41aがそれぞれ径方向内方に向かって撓むことで棒状の押圧部材80が挟持可能に構成されている。
【0031】
固定部材43は、後部外周面に雄螺子部43aが形成され、連結具44の後部内周部に形成した雌螺子部44aと螺着することで連結具44に固定されている。また、前述したように連結具44の内段と筒体45の前端との間にコイルスプリング47が張架してあり、コイルスプリング47の弾発力により、チャック41と筒体45とが、固定部材43および連結具44に対して後方へ弾発されている。このコイルスプリング47の弾発力で後方へ付勢されたチャック41の頭部41aが、固定部材43により後方への移動が制限された締具42で締め付けられることで楔力が発生し、チャック41の頭部41aで押圧部材80が挟持されている。
【0032】
連結具44は、略筒状に形成され、前述したように前部内周部に合成ゴムで形成された保持部材46が圧入固着されており、保持部材46の内孔部に形成した保持部46aにより、押圧部材80が軽い力(約0.2N)で保持可能に構成されている。また、連結具44の中央内周部にはチャック41の頭部41aが収納されるとともに内段44bが形成され、内段44bに締具42の前端が当接することで締具42の前方への移動が制限されている。さらに、後部外周部には固定用突起44cが形成され、固定用突起44cを後軸30の前部外周面に内面まで届くように貫設された前部外周孔30dに係止することで、連結具44が後軸30に固定されている。これにより、繰出機構40が後軸30に対して固定される。
【0033】
筒体45は、図2および図4に示すように、略筒状に形成されるとともに、後端側面から前方へ向かって延びるスリット溝45aを有しており、前端部をチャック41の後部に圧入固着することでチャック41に固定されている。また、筒体45の内部には、後述するスライダー70の一部が前後動自在且つ着脱不能に挿入されている。
【0034】
第2操作体の一例であるスライダー70は、一部が後軸30の側面から外方へ向かって突出するスライダー本体71と、少なくとも一部が筒体45の内部に収納され、スライダー本体71に係止されたコネクター72と、で構成されている
【0035】
スライダー本体71は、後軸30の側面に沿うように配置された操作部71aと、操作部71aの後軸30側の側端から後軸30内部へ延びる摺動部71bとを有している。摺動部71bは後軸30の側面に形成された摺動孔30bに挿入されており、これにより、スライダー本体71は後軸30に対して前後に摺動自在に構成されている。
【0036】
コネクター72は、コネクター本体72aが筒体45の内周部に前後動自在に配置され、コネクター本体72aの側面から外方へ突起部72bが延びるように形成されており、突状部72bが筒体45のスリット溝45a内に挿入されることで、コネクター72が筒体45に対して前後に摺動可能かつ回動不能に構成される。また、コネクター本体72aの前部中心には前端から後方へ向かって延びる係止穴部72cが形成され、係止穴部72cに押圧部材80を圧入装着することで、コネクター72と押圧部材80とを固定してある。そして、突状部72bの外方端72dは摺動部71bに形成した固定孔71cに着脱不能に装着されており、これにより、スライダー70は後軸30及び筒体45に対して軸方向に沿って摺動自在に構成される。
【0037】
尚、摺動部71bの前端は、スライダー70が摺動孔30bに沿って前進した際に固定部材43の後端と当接するよう構成されている。このため、固定部材43の後端がスライダー70及びスライダー70に固定された押圧部材80の前進が規制される規制部として機能する。
【0038】
押圧部材80は、ステンレスなどの金属で形成されると共に断面が円形の棒状体として形成され、チャック41で把持可能であり、且つ、保持部材46で保持可能な外径を有している。具体的に本実施形態ではφ0.30mm×長さ108mmで形成されている。また、押圧部材80の前部は中栓25の連絡内孔25bを通して芯収納部材50の芯収容溝50a内に前後動自在に挿入されており、前端部は芯90に当接可能に構成されている。
【0039】
第1操作部の一例となるノック体60は、内孔を有しており、後部内孔に筒体45の後部を圧入することで、筒体45に対してノック体60が固定されている。この際、ノック体60の前部は後軸30内に挿入され、後部は後軸30の後端から後方へ突出するように配置されるとともに、後軸30に対して前後動自在に装着されている。
【0040】
次に、図6を用いてノック体60を前進させることで、芯90が先口22の前端開口部22bから繰り出される状態を説明する。
図2の状態から、ノック体60を前方へ押圧すると、ノック体60が固定されている筒体45及び筒体45が固定されているチャック41が同時に押圧され、コイルスプリング47の弾発力に抗してチャック41とチャック41に外嵌された締具42が前進する。そして、チャック41は締具42による楔力で押圧部材80を挟持しているため押圧部材80も共に前進し、押圧部材80に固定されているスライダー70も摺動溝30bに沿って前進する。また、図2において押圧部材80の前端は芯90の後端に当接しているため芯90が押圧部材80に押されて前進し、先口22の前端開口部22bから芯90が繰り出される。そして、前進した締具42の前端が連結具44の内段44bに当接することで、締具42がチャック41の頭部41aから離脱し、頭部41aが拡開して押圧部材80の挟持状態が解除される。そして、押圧部材80とスライダー70の前進が止まり、同時に芯90の前進が停止する。ここで、ノック体60の前方への押圧を解除すると、チャック41はコイルスプリング47の弾発力で後退し、再び締具42が頭部41aに外嵌されて押圧部材80がチャック41により挟持される。また、筒体45とノック体60はコイルスプリング47の弾発力で後退し、元の位置(図2の位置)まで戻る。尚、本実施形態では、チャック41の前方に押圧部材80を保持する保持部材46を有していることから、前進したチャック41が後方に戻る際に保持部材46で保持されている押圧部材80の後退を防止でき、芯90の後端と押圧部材80の前端との位置関係が常に一定に保たれることから、ノック体60押圧動作における芯90の前進量が常に安定する。また、本実施形態のシャープペンシル10を用いて筆記する際、芯90はチャック41で挟持されている押圧部材80により支持されることから筆圧を掛けても芯90が後退することを防止して筆記することができ、押圧部材80は金属製であることから筆記用の芯をチャックで挟持している一般的なシャープペンシルと比べて挟持部の摩耗が抑制されるため、挟持力が安定して、筆記時に芯90が後退して先口22内に後退することを防止できる。
【0041】
また、本実施形態において、芯90の繰り出し動作を継続すると、押圧部材80は、前述したように、スライダー70の摺動部71bが固定部材43の後端に当接するまで前進する。この際、押圧部材80の前端は、図7に示すように、芯保持部材23の前端より前方の位置まで前進することから、押圧部材80に押されて前進した芯90は芯保持部材23による保持が解除され、先口22の前端開口部22bから排出される。すなわち、芯90は芯保持部材23で保持している間は押圧部材80に支持されて筆記が継続できることから、廃棄する使用済みの芯90の長さを短くでき、廃棄物が減ることで環境への負荷を軽減できる。そして、次の予備芯91を繰り出す方法としては、ノック体60を前方へ押圧しチャック41の頭部41aが拡開して押圧部材80の挟持状態を解除した状態にし、ノック体60の押圧状態を維持したまま、スライダー70を摺動溝30bに沿って指で掴んで後退させ、図2のスライダーの位置より後方まで後退させる。すると、押圧部材80も同時に後退するため、筆記していた芯90に隣接していた一端部50c側にある予備芯91が傾斜部50fにより更に一端部50c(図3における中央部)側に移動し、予備芯91が芯通路50dに入る。この状態で、スライダー70を指で前方へ移動すると一端部50c側に移動した予備芯91の後端に押圧部材80の前端が当接する。そして、さらにスライダー70を前進させることで押圧部材80及び予備芯91が前進し、先口22の前端開口部22bから予備芯91を突出させる。この状態で、ノック体60の前方への押圧状態を解除するとチャック41が後退して押圧部材80を再び挟持し、図2の筆記可能状態にすることができる。
【0042】
次に、図8を用いて、芯収納部材50の芯収納溝50aに芯90(予備芯91)を補充する状態を説明する。
図2の状態からシャープペンシル10を用いて筆記を行い芯収納溝50aに収納されている予備芯91が無くなったり減ったりした際には、蓋部材24を指で把持して引っ張ることで、図8に示すように前軸本体21(前軸20)の芯挿入口21cから蓋部材24を取り外すことができる。このため、芯挿入口21cから芯90(予備芯91)を補充することができる。この際、本実施形態では蓋部材24を弾性体(シリコンゴム)で形成しているため、蓋部材24を指で引っ張ることで係止部24aと被係止部21fとの係止状態が端から徐々に解除され簡単に取り外すことができる。この図8の状態では、芯挿入口21cが開口され、芯挿入口21cと芯収納溝50aの他端部50eは開口部50hを通じて連通しているため、芯挿入口21cから芯90(予備芯91)を芯収納溝50aの他端部50eに補充することができる。芯収納溝50aの他端部50eに入った芯90(予備芯91)を一端部50c(図3における中心部)側に移動させる手段としては、芯挿入口21cに取り外した蓋部材24を再装着して閉口したのち、シャープペンシル10を周方向に回転させることや、シャープペンシル10を前端開口部22bが重力方向下方に向くように立てて把持し、少し上下に弱い振動を与えることで、芯90(予備芯91)を傾斜部50fによって一端部50c側へ移動させることができる。尚、芯収納溝50aは図3に示すように横断面方向から視て渦巻状に形成されていることから、他端部50eから一端部50cに向かって曲率する壁面が多く形成され、その曲率半径は一端部に向けて徐々に小さくなるよう形成してある。このため、芯収納溝50aに入っている芯90(予備芯91)は、シャープペンシル10を立てて把持しても芯収納溝50aの曲率した壁面に支えられて倒れることなく軸方向に沿った向きの状態を維持しながら一端部50cへ向かって移動可能に構成されている。
【0043】
また、本実施形態では、芯収納溝40aを横断面方向から視た際に、一端部40c(中心部)から他端部40d(外周部)に向けて旋回するにつれ中心部に近づく渦巻状に形成されている。このため、芯収納溝50aは細長い帯状の形状となることから、芯90(予備芯91)が芯収納溝50aに整列して並ぶことで芯同士の干渉を最小限に押さえつつ多数の予備芯91を芯収納溝40a内に収納することが可能となる。具体的に、本実施形態では、一端部側にある芯90と芯収納溝50aに収容された複数の予備芯91を合わせると59本以上の芯を収納することができた。そして、芯収納溝50aに収納された予備芯91は底部50bに傾斜部50fを有しているため一端部50c側へ集まるように構成され、芯通路50cから予備芯91を芯保持部材23に移動させることができる。ここで、芯収納溝50aが横断面方向から視て直線状に延びた形で形成されていた場合、一端部50c側の予備芯91に他端部50e側の予備芯91の全ての重量が掛かり、その重量による圧力で一端部50cにある予備芯91が芯通路50dに入ることが阻害される虞が生じる。しかしながら、本実施形態では、芯収納溝50aが多くの曲面を有する渦巻状であるため、他端部50e側の予備芯91の重さは曲率した芯収納溝50aの壁部に当接することで分散され、一端部50cにある予備芯91に掛かる力を軽減する効果を奏する。特に一端部50c付近では芯収納溝50aの壁面の曲率半径が小さくなるため、前記した効果が顕著となる。このため、他端部50e側の予備芯91の重量により一端部50cにある予備芯91に掛かる圧力は軽減され、予備芯91は自由に芯通路50dを介して芯保持部材23側にスムーズに移動することができる。
【0044】
また、本実施形態では、芯の補充、筆記濃度や色が異なる芯への切り替え、または、芯径の異なる芯への切り替えを目的とした場合に、前軸20を同じ仕様、または、別な仕様のものへ交換することでその目的を達成してもよい。
本実施形態では、前軸20と後軸30とは螺着されており、後軸30に対して前軸20を回転させることで、図9に示すように、螺着状態を解除して後軸30から前軸20を取り外すことができる。そして、同じ仕様の芯が収容された別の前軸、または、異なる仕様(異なる濃度、異なる色、異なる芯径)の芯を収納した別の前軸に交換することで、芯の補充や仕様変更を容易に実施できる。尚、取り外した前軸20は、前部に芯を保持可能な芯保持部材23を有し、後部には収容している芯より径の小さい連絡孔25bを有していることから、内部に収容している芯90(予備芯91)が前軸20から前後方向に抜け出ることが防止される。このため、前軸20はそのまま替芯ケースとしての機能をもつため、筆箱等に入れて持ち運ぶことができ、前軸20から芯90(予備芯91)を取り出したいときや、芯90(予備芯91)を補充したい場合は、前軸20から蓋部材24を取り外すことで実施できる。このため、本発明のシャープペンシル10は替芯ケースとなる複数の仕様の前軸を同時に持ち運ぶことで、簡単に芯濃度や芯径の仕様を切り替え可能なシャープペンシルセットとして使用することができる。
【0045】
ここで、芯90とは異なる仕様の芯190を収容可能な前軸120について説明する。尚、前軸20と同じ部分は説明を省略する。
【0046】
図10は、図2とは異なる芯径の芯190(予備芯191)を収納可能に構成した前軸120の拡大縦端面図である。
【0047】
前軸120内に収容される芯190(予備芯191)は、JIS S 6005(2019)に規定されたシャープペンシル用芯において、表示直径0.7の芯であり、芯90と比較して太い外径を有している。具体的に、本実施形態では、芯190(予備芯191)は約φ0.70mm、長さ60mmで形成されている。
【0048】
先口122は、芯190(予備芯191)が出没する前端開口部122bを有している。また、先口122の前部内周部には合成ゴム製の芯保持部材123が圧入固着されており、芯保持部材123の内孔部に形成した芯保持部123aにより、芯190を軽い力(約0.2N)で保持可能に構成してある。
【0049】
芯収納部となる芯収納部材150の内方には後端から前方へ向かって延びる芯収納溝150aを有しており、芯収納溝50aの溝幅は芯190が1本は通るが2本は並ばない幅で形成され、芯収納溝50aの前端部には底部50bが形成されている。芯収納溝150aを平面状に展開すると、芯収納溝150aの底部150bは、一端部50c(中央部)から他端部50e(外周部)に向かって傾斜して形成された傾斜部150fを有している。
【0050】
本実施形態のシャープペンシル10は、図8に示すように、前軸20を後軸から取り外し、異なる芯径の芯190(予備芯191)を収納した前軸120を取り付けることで、容易に芯径の異なる芯を繰り出せるシャープペンシルに仕様変更が可能である。尚、本実施形態で繰り出し可能な芯は、前軸内に収納でき、且つ、芯径が押圧部材80前部の直径より大きければ、前軸を交換することで仕様を組み替えることができるため非常に便利である。
【符号の説明】
【0051】
10…シャープペンシル、
20…前軸、
21…前軸本体、21a…前部雄螺子部、21b…後部雄螺子部、
21c…芯挿入口、21d…溝状部、21e…外周孔部、21f…被係止部、
22…先口、22a…後部雌螺子部、22b…前端開口部、
23…芯保持部材、23a…芯保持部、
24…蓋部材、24a…係止部、
25…中栓、25a…係止突起、25b…連絡孔、
30…後軸、30a…前部雄螺子部、30b…摺動孔、30c…縮径部、
30d…外周孔、
40…繰出機構
41…チャック、41a…頭部、
42…締具、
43…固定部材、43a…雄螺子部、
44…連結具、44a…雌螺子部、44b…内段、44c…固定用突起、
45…筒体、45a…スリット溝、
46…保持部材、46a…保持部、
47…コイルスプリング、
50…芯収納部材、50a…芯収納溝、50b…底部、50c…一端部、
50d…芯通路、50e…他端部、50f…傾斜部、50g…レール部、
50h…開口部、
60…ノック体、
70…スライダー、
71…スライダー本体、71a…操作部、71b…摺動部、71c…固定孔、
72…コネクター、72a…コネクター本体、72b…突状部、
72c…係止穴部、72d…外方端、
80…押圧部材、
90…芯、
91…予備芯、
120…前軸、
122…先口、122b…前端開口部、
123…芯保持部材、123a…芯保持部、
150…芯収納部材、150a…芯収納溝、150b…底部、150c…一端部、
150d…芯通路、
190…芯、
191…予備芯。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10