(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183956
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221206BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 N
A01B69/00 303M
A01B69/00 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091522
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁大
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA05
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB07
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2B043BB12
2B043DA17
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2B043EE06
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
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5H301GG06
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5H301HH10
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】障害物の判定精度を高めることにより作業車両の作業効率を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供すること。
【解決手段】自動走行方法は、圃場Fにおいて、予め設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させることと、作業車両10に設けられる検出部により圃場F内の検出対象物を検出することと、前記検出部を基準とするセンサー座標系における検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、前記第1座標位置を、圃場Fを基準とするNED座標系における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、前記第2座標位置に基づいて検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、を実行する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出することと、
前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、
前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、
前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記検出対象物が障害物であると判定された場合に、前記作業車両を停止又は減速させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記第2座標位置が、前記作業車両から所定範囲に設定される走行制限領域に含まれる場合に、前記検出対象物を障害物であると判定する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記走行制限領域は、減速走行領域と停止領域とを含み、
前記第2座標位置が前記減速走行領域に含まれる場合に、前記検出対象物を障害物であると判定して前記作業車両を減速走行させ、
前記第2座標位置が前記停止領域に含まれる場合に、前記検出対象物を障害物であると判定して前記作業車両を停止させる、
請求項3に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記検出部は、前記検出対象物の位置を検出可能な第1検出部と、前記検出対象物までの距離を検出可能な第2検出部とを含み、
前記第1検出部の検出結果に基づいて検出される前記検出対象物の前記第2座標位置と、前記第2検出部の検出結果に基づいて検出される前記検出対象物の前記第2座標位置とに基づいて、前記検出対象物が障害物であるか否かを判定する、
請求項1~4のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記第1検出部の検出結果に基づいて検出される前記検出対象物の前記第2座標位置の検出回数に応じた第1評価値と、前記第2検出部の検出結果に基づいて検出される前記検出対象物の前記第2座標位置の検出回数に応じた第2評価値とに基づいて、前記検出対象物が障害物であるか否かを判定する、
請求項5に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記検出対象物が障害物であるか否かを判定する判定処理における前記第2評価値の重みを前記第1評価値の重みよりも小さくする、
請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記第1評価値及び前記第2評価値の合計値が予め設定された閾値以上の場合に、前記検出対象物を障害物であると判定する、
請求項7に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記第1検出部により検出される前記検出対象物の位置に応じて設定される経路に沿って前記作業車両を自動走行させる、
請求項5~8のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項10】
前記走行領域の地面から所定高さまでの範囲において前記検出部により検出されず、かつ前記所定高さから上方の所定範囲において前記検出部により検出される前記検出対象物を障害物と判定しない、
請求項1~9のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項11】
前記作業車両に設けられる接触検出部により前記作業車両に対する接触が検出された場合に、前記検出対象物が障害物であるか否かに関わらず、前記作業車両を停止させる、
請求項1~10のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項12】
走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させる走行処理部と、
前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出する検出処理部と、
前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得する取得処理部と、
前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換する変換処理部と、
前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定する判定処理部と、
を備える自動走行システム。
【請求項13】
走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出することと、
前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、
前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、
前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行領域において目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場、農園などの作業地に植えられた作物に対して薬液を散布しながら目標経路を自動走行する作業車両が知られている(例えば特許文献1参照)。前記作業車両は、例えば、第1作物列を跨いで走行しながら、前記第1作物列と、前記第1作物列の左右方向それぞれの第2作物列とに散布物を散布する散布作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記作業車両は、例えば作物が配置されている領域を走行する場合、衛星から受信する信号(例えばGNSS信号)を利用して作業車両を測位しながら、作物の位置に応じて設定された作物列経路に沿って走行する。ここで、例えば、前記作業車両が前記作物列経路に沿って自動走行しているときに前記作業車両の姿勢が変化して前記作物列経路に対して位置偏差、方位偏差が大きくなると、前記作業車両が、前記作物列経路の作物や、前記作物列経路に隣接する作物などを所定回数検出することにより障害物として判定してしまう場合がある。この場合、前記作業車両は、障害物との衝突を回避するために、減速走行又は停止などの走行制限処理を実行する。このように、従来の技術では、障害物を誤認識することにより、作業車両の作業効率が低下する問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、障害物の判定精度を高めることにより作業車両の作業効率を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行方法は、走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出することと、前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、を実行する方法である。
【0007】
本発明に係る自動走行システムは、走行処理部と検出処理部と取得処理部と変換処理部と判定処理部とを備える。前記走行処理部は、走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させる。前記検出処理部は、前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出する。前記取得処理部は、前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得する。前記変換処理部は、前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換する。前記判定処理部は、前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定する。
【0008】
本発明に係る自動走行プログラムは、走行領域において、予め設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両に設けられる検出部により前記走行領域内の検出対象物を検出することと、前記検出部を基準とする第1座標系における前記検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、前記第1座標位置を、前記走行領域を基準とする第2座標系における前記検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、前記第2座標位置に基づいて前記検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、障害物の判定精度を高めることにより作業車両の作業効率を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両を左前方側から見た外観図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る作業車両を左側から見た左側面の外観図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る作業車両を右側から見た右側面の外観図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施形態に係る作業車両を背面側から見た背面の外観図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る作物列の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る目標経路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る作物列経路用走行モードの走行方法の概要を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態に係るライダーセンサーを基準としたセンサー座標系の一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施形態に係る超音波センサーを基準としたセンサー座標系の一例を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、本発明の実施形態に係る作業車両を基準としたセンサー座標系の一例を示す図である。
【
図8D】
図8Dは、本発明の実施形態に係るNED座標系の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る障害物地図の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る平均化処理の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図12D】
図12Dは、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図12E】
図12Eは、本発明の実施形態に係る障害物判定領域の一例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、本発明の実施形態に係る目標経路の生成方法を説明するための図である。
【
図13B】
図13Bは、本発明の実施形態に係る目標経路の生成方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
[自動走行システム1]
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と、操作端末20と、基地局40と、衛星50とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10が、圃場Fに植えられた作物V(
図5参照)に薬液、水などを散布する散布作業を行う車両である場合を例に挙げて説明する。圃場Fは本発明の走行領域の一例であり、圃場Fは例えば葡萄園、林檎園などの果樹園である。作物Vは例えば葡萄の果樹である。前記散布作業は、例えば作物Vに薬液、水などの散布物を散布する作業である。他の実施形態として、作業車両10は、除草作業を行う車両、葉刈作業を行う車両、収穫作業を行う車両であってもよい。
【0014】
作物Vは、圃場Fにおいて所定の間隔で複数列に配置されている。具体的には、
図5に示すように、複数の作物Vは、所定の方向(D1方向)に直線状に植えられており、直線状に並ぶ複数の作物Vを含む作物列Vrを構成する。
図5には、3つの作物列Vrを例示している。各作物列Vrは列方向(D2方向)に所定の間隔W1で配置されている。隣り合う作物列Vrの間隔W2の領域(空間)は、作業車両10がD1方向に走行しながら作物Vに対して散布作業を行う作業通路となる。
【0015】
また、作業車両10は、予め設定された目標経路Rに沿って自動走行(自律走行)することが可能である。例えば
図6に示すように、作業車両10は、作業開始位置Sから作業終了位置Gまで、作業経路R1(作業経路R1a~R1f)及び移動経路R2を含む目標経路Rに沿って自動走行する。作業経路R1は、作業車両10が作物Vに対して散布作業を行う直線状の経路であり、移動経路R2は、作業車両10が散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する経路である。移動経路R2には、例えば旋回経路及び直進経路が含まれる。
図6に示す例では、圃場Fにおいて、作物列Vr1~Vr11から成る作物Vが配置されている。
図6では、作物Vが植えられている位置(作物位置)を「Vp」で表している。また、
図6の圃場Fを走行する作業車両10は、車体100が門型の形状を有しており(
図4C参照)、1つの作物列Vrを跨いで走行しながら、当該作物列Vrの作物V及び当該作物列Vrに隣接する作物列Vrに対して薬液を散布する。例えば
図6に示すように、作業車両10が作物列Vr5を跨いで走行する場合、作業車両10の左側車体(左側部100L)が作物列Vr4,Vr5の間の作業通路を走行し、作業車両10の右側車体(右側部100R)が作物列Vr5,Vr6の間の作業通路を走行し、かつ作物列Vr4,Vr5,Vr6の作物Vに対して薬液を散布する。
【0016】
また、作業車両10は、所定の列順序で自動走行を行う。例えば、作業車両10は、作物列Vr1を跨いで走行し、次に作物列Vr3を跨いで走行し、次に作物列Vr5を跨いで走行する。このように、作業車両10は、予め設定された作物列Vrの順番に応じて自動走行を行う。なお、作業車両10は、作物列Vrの配列順に1列ごとに走行してもよいし、複数列おきに走行してもよい。
【0017】
衛星50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局40は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局40は、作業車両10の現在位置を算出するための補正情報を作業車両10に送信する。
【0018】
作業車両10に搭載される測位装置16は、衛星50から送信されるGNSS信号を利用して作業車両10の現在位置(緯度、経度、高度)及び現在方位などを算出する測位処理を実行する。具体的には、測位装置16は、2台の受信機(アンテナ164及び基地局40)が受信する測位情報(GNSS信号など)と基地局40で生成される補正情報とに基づいて作業車両10を測位するRTK(Real Time Kinematic)方式などを利用して作業車両10を測位する。前記測位方式は周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
以下、自動走行システム1を構成する各構成要素の詳細について説明する。
【0020】
[作業車両10]
図3は、作業車両10を左前方側から見た外観図である。
図4Aは、作業車両10を左側から見た左側面の外観図であり、
図4Bは、作業車両10を右側から見た右側面の外観図であり、
図4Cは、作業車両10を背面側から見た背面の外観図である。
【0021】
図1~
図4に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、散布装置14、通信部15、測位装置16、障害物検出装置17などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、散布装置14、測位装置16、障害物検出装置17などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0022】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0023】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図14参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rの情報を含む経路データが記憶される。例えば、前記経路データは、操作端末20から作業車両10に転送されて記憶部12に記憶される。
【0024】
ここで、作業車両10は、圃場Fにおいて複数列に並べて植えられた作物V(果樹)を跨いで走行する門型の車体100を備える。
図4Cに示すように、車体100は、左側部100Lと、右側部100Rと、左側部100L及び右側部100Rを接続する接続部100Cとにより門型に形成されており、左側部100L、右側部100R、及び接続部100Cの内側に作物Vの通過を許容する空間100Sが確保される。
【0025】
車体100の左側部100L及び右側部100Rそれぞれの下端部には、クローラ101が設けられている。左側部100Lには、エンジン(不図示)、バッテリー(不図示)などが設けられている。右側部100Rには、散布装置14の貯留タンク14A(
図4B参照)などが設けられている。このように、車体100の左側部100L及び右側部100Rに構成部品を振り分けて配置することにより、作業車両10は、左右のバランスの均衡化及び低重心化が図られている。その結果、作業車両10は、圃場Fの斜面などを安定して走行することができる。
【0026】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。走行装置13は、エンジン、クローラ101などを備える。
【0027】
左右のクローラ101は、静油圧式無段変速装置による独立変速が可能な状態でエンジンからの動力により駆動される。これにより、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に等速駆動されることにより前進方向に直進する前進状態になり、左右のクローラ101が後進方向に等速駆動されることにより後進方向に直進する後進状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に不等速駆動されることにより前進しながら旋回する前進旋回状態になり、左右のクローラ101が後進方向に不等速駆動されることで後進しながら旋回する後進旋回状態になる。また、車体100は、左右いずれか一方のクローラ101が駆動停止された状態で他方のクローラ101が駆動されることによりピボット旋回(信地旋回)状態になり、左右のクローラ101が前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回(超信地旋回)状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が駆動停止されることで走行停止状態になる。尚、左右のクローラ101は、電動モータにより駆動される電動式に構成されていてもよい。
【0028】
図4Cに示すように、散布装置14は、薬液などを貯留する貯留タンク14A、薬液などを圧送する散布用ポンプ(不図示)、散布用ポンプを駆動する電動式の散布モータ(不図示)、車体100の背部において縦向き姿勢で左右に2本ずつ並列に備えられた散布管14B、各散布管14Bに3個ずつ備えられた合計12個の散布ノズル14C、薬液などの散布量及び散布パターンを変更する電子制御式のバルブユニット(不図示)、及び、これらを接続する複数の散布用配管(図示せず)などを備えている。
【0029】
各散布ノズル14Cは、対応する散布管14Bに、上下方向に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布ノズル14Cは、隣り合う散布ノズル14Cとの間隔及び散布管14Bに対する高さ位置を散布対象物(作物V)に応じて変更することができる。また、各散布ノズル14Cは、車体100に対する高さ位置及び左右位置を散布対象物に応じて変更可能に取り付けられている。
【0030】
なお、散布装置14において、各散布管14Bに設けられる散布ノズル14Cの数量は、作物Vの種類、各散布管14Bの長さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0031】
図4Cに示すように、複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の左外方に位置する作物Vaに向けて薬液を左向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに隣接する左内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100における左右中央の空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の右外方に位置する作物Vcに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに隣接する右内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を左向きに散布する。
【0032】
上記の構成により、散布装置14においては、車体100の左側部100Lに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが左側の散布部14Lとして機能する。また、車体100の右側部100Rに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが右側の散布部14Rとして機能する。そして、左右の散布部14L,14Rは、車体100の背部において、左右方向への散布が可能な状態で、左右の散布部14L,14Rの間に作物Vbの通過(空間100S)を許容する左右間隔を置いて配置されている。
【0033】
散布装置14において、散布部14L,14Rによる散布パターンには、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンと、散布部14L,14Rによる散布方向が限定された方向限定散布パターンとが含まれる。前記方向限定散布パターンには、散布部14Lが左右の両方向に薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する左側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左右の両方向に薬液を散布する右側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する2方向散布パターンと、散布部14Lが左方向のみに散布し、かつ、散布部14Rが薬液を散布しない左側1方向散布パターンと、散布部14Rが右方向のみに散布し、かつ、散布部14Lが薬液を散布しない右側1方向散布パターンとが含まれる。
【0034】
車体100には、測位装置16から取得する測位情報などに基づいて車体100を圃場Fの目標経路Rに従って自動走行させる自動走行制御部、エンジンに関する制御を行うエンジン制御部、静油圧式無段変速装置に関する制御を行うHST(Hydro-Static Transmission)制御部、及び、散布装置14などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部などが搭載されている。各制御部は、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニット、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報及び制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、事前に生成された目標経路Rなどが含まれてもよい。本実施形態では、各制御部を総称して「車両制御装置11」という(
図2参照)。
【0035】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及びアンテナ164などを備える通信機器である。アンテナ164は、車体100の天井部(接続部100C)の前方及び後方に設けられている(
図3参照)。また車体100の天井部には、作業車両10の走行状態を表示する表示灯102などが設けられている(
図3参照)。なお、測位装置16には前記バッテリーが接続されており、測位装置16は、前記エンジンの停止中も稼働可能である。
【0036】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局40などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0037】
アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。アンテナ164が作業車両10の前方及び後方に設けられているため、作業車両10の現在位置及び現在方位を高精度に測位することができる。
【0038】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための制御プログラム、及び、測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。測位制御部161は、アンテナ164が衛星50から受信するGNSS信号に基づいて所定の測位方式(RTK方式など)により作業車両10の現在位置及び現在方位を測位する。
【0039】
障害物検出装置17は、作業車両10に設けられる検出部(ライダーセンサー、超音波センサー)により圃場F内の検出対象物を検出する。障害物検出装置17は、車体100の前方左側に設けられたライダーセンサー171Lと、車体100の前方右側に設けられたライダーセンサー171Rとを備える(
図3参照)。各ライダーセンサーは、例えばライダーセンサーが照射したレーザー光が測距点(検出対象物)に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、ライダーセンサーから測定範囲の各測距点までの距離を測定する。
【0040】
ライダーセンサー171Lは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、ライダーセンサー171Rは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各ライダーセンサーは、測定した各測距点までの距離、各測距点に対する走査角などの測定情報(座標位置)を車両制御装置11に送信する。このように、ライダーセンサー171L,171Rは、自身(取付位置)を基準とする座標系(センサー座標系)において測距点(検出対象物)の位置(座標位置)を検出することが可能である。
【0041】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の超音波センサー172F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の超音波センサー172R(
図4A~
図4C参照)とを備える。各超音波センサーは、超音波センサーが発信した超音波が測距点(検出対象物)に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF方式により、超音波センサーから測距点までの距離を測定する。
【0042】
前方左側の超音波センサー172Fは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、前方右側の超音波センサー172Fは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方左側の超音波センサー172Rは、車体100の後方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方右側の超音波センサー172Rは、車体100の後方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各超音波センサーは、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを含む測定情報を車両制御装置11に送信する。このように、超音波センサー172Fは、自身(取付位置)を基準とする座標系(センサー座標系)において測距点(検出対象物)までの距離を検出することが可能である。ライダーセンサー171L,171R及び超音波センサー172Fは、本発明の検出部の一例である。
【0043】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の接触センサー173F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の接触センサー173R(
図4A及び
図4B参照)とを備える。車体100の前方側の接触センサー173Fは、接触センサー173Fに障害物が接触した場合に障害物を検出する。車体100の後方側の接触センサー173Rの前方(作業車両10の後方側)には散布装置14が設けられており、各接触センサー173Rは、散布装置14に対して障害物が接触した場合に散布装置14が後方(作業車両10の前方側)に移動することにより障害物を検出する。各接触センサーは、障害物を検出した場合に検出信号を車両制御装置11に送信する。接触センサー173F,173Rは、本発明の接触検出部の一例である。
【0044】
車両制御装置11は、障害物検出装置17から取得する検出対象物に関する測定情報に基づいて、検出対象物が障害物であるか否かを判定し、検出対象物を障害物であると判定した場合に、作業車両10に障害物を回避させる回避処理(走行制限処理)を実行する。障害物検出装置17は、本発明の検出処理部の一例である。
【0045】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0046】
車両制御装置11は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、
図2に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111、取得処理部112、変換処理部113、判定処理部114などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0047】
走行処理部111は、作業車両10の走行動作を制御する走行処理を実行する。例えば、走行処理部111は、測位装置16により測位される作業車両10の位置及び方位を含む測位情報に基づいて、目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させる目標経路用走行モードM1で走行させる。例えば、作物Vが配置されていない領域(枕地領域、非作業領域など)において測位状態がRTK測位可能な状態である場合に、走行処理部111は、測位装置16により測位される作業車両10の測位情報に基づいて作業車両10を目標経路用走行モードM1で自動走行を開始させる。これにより、作業車両10は、目標経路Rに沿って自動走行を開始する。なお、前記測位状態がRTK測位可能な状態(高精度状態)であることは、作業車両10が自動走行を開始する条件(自動走行開始条件)に含まれる。
【0048】
このように、走行処理部111は、圃場Fのうち作物Vが配置されていない領域(枕地領域など)において、作業車両10を目標経路用走行モードM1で自動走行させる。作業車両10は、GNSS信号を利用して自己位置を推定しながら目標経路Rに沿って走行する。
【0049】
また、走行処理部111は、作業車両10が圃場F内に配置された作物Vの位置に応じて設定された作物列経路R0に沿って自動走行を行う作物列経路用走行モードM2で作業車両10を走行させる。作物列経路用走行モードM2は、例えばライダーセンサー171L,171Rの測定結果に基づいて推定した作物列経路R0に沿って作業車両10を走行させる走行モードである。具体的には、障害物検出装置17は、作業経路R1上の障害物の検出結果とライダーセンサー171L,171Rの測定結果とを統合して、作業車両10が跨いでいる作業経路R1、具体的には作物列(
図6では作物列Vr5)の作物列経路R0を推定する。また障害物検出装置17は、推定した作物列経路R0の始点及び終点の位置(座標)を車両制御装置11に送信する。走行処理部111は、作物列経路用走行モードM2において、GNSS信号を利用して自己位置を推定しながら、推定された作物列経路R0に沿って作業車両10を自動走行させる。このように、走行処理部111は、目標経路用走行モードM1では前記測位情報を利用して目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させる一方、作物列経路用走行モードM2では前記測位情報と作物Vの検出結果とを利用して作物列経路R0に沿って作業車両10を自動走行させる。
【0050】
図7には、作物列経路用走行モードM2の走行方法の概要を示している。
図7のR0は推定された作物列Vraの経路を表し、Ev1は作物列Vraの始点を表し、Ev2は作物列Vraの終点を表し、Vpは作物列Vraに含まれる作物を表し、Peは作業車両10の現在位置(中心位置)を表している。なお、終点Ev2は、
図6に示す端点(終点)と同一であってもよい。また、始点Ev1は、例えば作物列Vraに含まれる作物Vのうち現在位置Peに最も近い作物Vの位置である。
【0051】
走行処理部111は、作物列Vraに対する作業車両10の横方向の位置偏差L1及び方位偏差θ1を算出し、位置偏差L1及び方位偏差θ1が小さくなるように作業車両10の姿勢を制御しながら現在位置Peから終点Ev2まで走行させる。
【0052】
ここで、作物列Vraの推定結果には誤差が含まれるため、算出した位置偏差L1及び方位偏差θ1に移動平均フィルターやローパスフィルター等を用いたフィルタリング処理を行うことが好ましい。そして、走行処理部111は、前記フィルタリング処理の結果を用いて作業車両10の走行を制御することが好ましい。
【0053】
また、作物列Vraの推定精度を高めるために、過去の作物列Vraの推定結果を用いてもよい。この場合、作物列Vraの端点の数を増やす必要があり、過去のデータを使用するために作業車両10の相対移動量を算出し、過去の作物列Vraの検出位置の座標変換が必要になる。前記相対移動量の算出は、クローラ101に取り付けられた回転数センサー及び慣性計測ユニット(IMU)のデータをカルマンフィルタ等の既知の手法で統合し、作物列Vraの移動量を推定する。作業車両10が自動走行中は毎制御周期、測位情報(GNSS位置情報)から終点までの距離を算出しているため、走行処理部111は、測位精度が所定精度未満になる前の終点までの距離の情報と推定した作業車両10の移動量とから、作物列Vraの端点(終点Ev2)への到達判定処理を実行し、端点到達時まで自動走行させる。なお、作物Vの配置状態によってはライダーセンサー171L,171Rセンサーが作物Vを検出できない事態も起こり得る。この場合には、走行処理部111は、作物列Vraの推定エラーが規定回数連続で発生した場合に作物列経路用走行モードM2の自動走行を終了させる。
【0054】
以上のように、走行処理部111は、圃場F内の作物Vの位置に応じて目標経路用走行モードM1又は作物列経路用走行モードM2で作業車両10を自動走行させる。
【0055】
ここで、例えば、作業車両10が作物列経路用走行モードM2で作物列経路R0に沿って自動走行しているときに作業車両10の姿勢が変化して作物列経路R0に対して位置偏差L1、方位偏差θ1が大きくなると、作業車両10が、作物列経路R0の作物Vや、作物列経路R0に隣接する作物Vなどを所定回数検出することにより障害物として判定してしまう場合がある。例えば、作業車両10が、姿勢変化して、作物列経路R0の作物Vを所定回数検出し、さらに作物列経路R0に隣接する作物Vを所定回数検出することにより、合計検出回数が閾値以上になると、作業車両10は、障害物との衝突を回避するために、減速走行又は停止などの走行制限処理を実行する。このように、従来の技術では、障害物を誤認識することにより、作業車両10の作業効率が低下する問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る作業車両10は、以下に示すように、障害物の判定精度(認識精度)を高めることにより作業効率を向上させることが可能である。
【0056】
具体的には、取得処理部112は、障害物検出装置17を基準とする座標系における検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得する。例えば
図8Aに示すように、障害物検出装置17は、ライダーセンサー171L,171Rが検出対象物を検出した場合に、ライダーセンサー171Lを基準としたセンサー座標系(本発明の第1座標系の一例)の座標位置とライダーセンサー171Rを基準としたセンサー座標系(本発明の第1座標系の一例)の座標位置とを算出して車両制御装置11に送信する。取得処理部112は、障害物検出装置17からライダーセンサー171L,171Rを基準とした各座標位置の情報を取得する。ライダーセンサー171L,171Rは、本発明の第1検出部の一例である。
【0057】
また例えば
図8Bに示すように、障害物検出装置17は、左右の超音波センサー172Fが検出対象物を検出した場合に、左側の超音波センサー172Fを基準としたセンサー座標系(本発明の第1座標系の一例)における検出対象物までの距離と右側の超音波センサー172Fを基準としたセンサー座標系(本発明の第1座標系の一例)における検出対象物までの距離とを算出して車両制御装置11に送信する。取得処理部112は、障害物検出装置17から左右の超音波センサー172Fのそれぞれを基準とした各距離の情報を取得する。なお、障害物検出装置17は、超音波センサー172Fの検出可能範囲(検出幅)と検出結果(距離)とに基づいて、センサー座標系における検出対象物の座標位置を算出し、当該座標位置の情報を車両制御装置11に送信してもよい。超音波センサー172Fは、本発明の第2検出部の一例である。
【0058】
変換処理部113は、障害物検出装置17を基準とするセンサー座標系における検出対象物の位置を表す第1座標位置を、圃場Fを基準とする座標系(本発明の第2座標系の一例)における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換する。圃場Fを基準とする座標系は、グローバル座標系であって、例えばNorth-East-Down(北-東-下)の三方向を正とする三次元座標系(NED座標系)である。
【0059】
変換処理部113は、各センサー座標系で取得した検出対象物の座標位置をNED座標系の座標位置に変換する。具体的には、変換処理部113は、各センサー(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)の取付位置と、各センサーが検出した検出対象物の座標位置とに基づいて、検出対象物の座標位置をセンサー座標系から車両座標系(
図8C参照)の座標位置に変換する。そして、変換処理部113は、車両座標系における各センサーが検出した検出対象物の座標位置を、現在のNED座標系における作業車両10の中心位置Peと、前回の座標変換時の作業車両10の方位角及び現在の作業車両10の方位角の平均値とを使用して、NED座標系(
図8D参照)に変換する。
【0060】
なお、変換処理部113は、過去の検出対象物の検出結果も使用して検出対象物の座標位置をNED座標系の座標位置に変換する。また、各センサーの検出対象物のNED座標データには、使用するセンサー毎に記憶する最大点数に上限が設けられており、変換処理部113は、データ点数が規定点数以上となった場合には一番古いデータから破棄する。
【0061】
判定処理部114は、圃場Fを基準とする座標系(NED座標系)における検出対象物の位置を表す第2座標位置に基づいて検出対象物が障害物であるか否かを判定する。具体的には、判定処理部114は、前記第2座標位置が、作業車両10から所定範囲に設定される障害物判定領域Arに含まれる場合に、検出対象物を障害物であると判定する。また、判定処理部114は、ライダーセンサー171L,171Rの検出結果に基づいて検出される検出対象物の前記第2座標位置と、超音波センサー172Fの検出結果に基づいて検出される検出対象物の前記第2座標位置とに基づいて、検出対象物が障害物であるか否かを判定する。
【0062】
具体的には、判定処理部114は、検出対象物が障害物であるか否かを判定するための障害物地
図GM(グリッドマップ)を作成する。
図9は、障害物地
図GMの一例を示す図である。障害物地
図GMは、作業車両10の中心位置Peを原点とし、Y方向に3.0m及びX方向に±1.3mのエリアを格子状に区切ったグリッドマップである。一つの格子(正方形グリッド)の一辺の長さは0.1mである。障害物地
図GM全体では、Y(高さ)方向に30グリッド(H)及びX(幅)方向に26グリッド(W)のサイズを有する。
図9に示すP1は、ライダーセンサー171L,171Rが検出した検出対象物の位置を示しており、
図9に示すP2は、超音波センサー172Fが検出した検出対象物の位置を示している。
【0063】
判定処理部114は、各グリッドに相当する位置に検出対象物が存在する場合、当該グリッドのスコア(評価値)を算出する。具体的には、判定処理部114は、障害物地
図GM内の各グリッドにおいて、検出対象物を検出したセンサー(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)ごとに異なる重みでスコアを更新する。以下、センサーごとのスコアの算出方法の一例を示す。
【0064】
判定処理部114は、ライダーセンサー171L,171Rで検出した検出対象物の座標位置をグリッドマップ座標grid[i][j]に変換したとき、i<Hかつj<Wを満たす場合に、以下の式により各グリットスコアを更新する。なお、同じ検出対象物を複数回検出することもあるため、同じ位置の検出対象物の検出回数が大きくなるほどグリッドのスコアは大きくなる。
grid[i][j]=grid[i][j]+1.0
【0065】
また判定処理部114は、超音波センサー172Fで検出した検出対象物の座標位置をgrid[i][j]に変換したとき、i<Hかつj<Wを満たす場合に、以下の式により各グリットスコアを更新する。
grid[i][j]+=0.2
grid[i][j-1]+=0.2
grid[i][j+1]+=0.2
【0066】
ここで、判定処理部114は、超音波センサー172Fの場合は検出対象物の横方向(X方向)の位置が不明であるため、超音波センサー172Fの検出幅を横方向に拡張してもよい。これにより、判定処理部114は、拡張した検出幅の領域内に検出対象物が存在することを予測する。また、超音波センサー172Fは作業車両10の姿勢によって地面を検出したり、作物列Vrから間隔W2(
図5参照)の領域(空間)に飛び出た枝葉を検出したりする可能性があるため、判定処理部114は、障害物の判定精度を高めるために、超音波センサー172Fのスコアをライダーセンサー171L,171Rのスコアに対して相対的に低くなるように調整する。具体的には、判定処理部114は、検出対象物が障害物であるか否かを判定する判定処理における超音波センサー172Fのスコア(本発明の第2評価値の一例)の重みを、ライダーセンサー171L,171Rのスコア(本発明の第1評価値の一例)の重みよりも小さい値に設定する。
【0067】
なお、作業車両10が枕地領域を旋回走行する場合、姿勢が大きく変化するため、作業車両10の近傍の障害物を確実に検出する必要があり、超音波センサー172Fは、ライダーセンサー171L,171Rの死角領域の障害物を検出することが必要である。なお、作業車両10が旋回走行する場合、走行速度が直進走行よりも遅くなるため、障害物を検出する回数が多くなる。このため、超音波センサー172Fのスコアの重みを、ライダーセンサー171L,171Rのスコアの重みよりも小さい値に設定した場合であっても実用上問題はない。
【0068】
ここで、障害物検出装置17(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)は、検出対象物の座標位置を検出するが、検出対象物の形状(大きさ)を特定することはできない。そこで、判定処理部114は、下記式のガウス分布に基づき、観測点から近い位置に障害物が存在する可能性があると仮定し、障害物の周辺グリッドのスコアを更新する。
【数1】
【0069】
判定処理部114は、
図10に示す注目グリッドP0近傍のカーネルを用いた畳み込み処理により障害物地
図GMのスコアを更新する。例えば、判定処理部114は、注目グリッドP0のスコア「1.0」を
図10に示すカーネルを用いて「0.275」に変換する。すなわち、判定処理部114は、障害物地
図GMのスコアについて、平均化処理(例えばガウシアンフィルタ処理)を実行する。なお、判定処理部114は、他の周知の平均化処理を実行してもよい。
【0070】
また、判定処理部114は、作業車両10の作業領域に応じた障害物判定領域Ar(
図11参照)を設定し、設定した障害物判定領域Ar内のグリッドの最大スコアが予め設定された閾値以上の場合に、検出対象物を障害物であると判定する。
【0071】
図11には、作業車両10の走行領域に応じて設定される複数の障害物判定領域Ar1~Ar5を示している。障害物判定領域Ar1は、作業車両10を減速走行させる減速判定領域(本発明の減速走行領域の一例)を示す。障害物判定領域Ar2,Ar3は、作業領域(作業経路R1)に設定される領域であって、作業車両10を停止させる停止判定領域(本発明の停止領域の一例)を示す。障害物判定領域Ar4,Ar5は、非作業領域(枕地領域)に設定される領域であって、作業車両10を停止させる停止判定領域(本発明の停止領域の一例)を示す。
【0072】
例えば、障害物判定領域Ar1は、左右のクローラ101の中心位置(作業車両10の中心位置Peから横方向±0.5m)を基準として奥行2.5m、幅0.4m(片側0.2m)のエリアに設定される。障害物判定領域Ar2は、左右のクローラ101の中心位置を基準として奥行2.3m、幅0.2mのエリアに設定される。障害物判定領域Ar3は、左右のクローラ101の中心位置を基準として奥行1.6m、幅0.6mのエリアに設定される。障害物判定領域Ar4は、左右のクローラ101の中心位置を基準として奥行1.6m、幅0.4mのエリアに設定される。障害物判定領域Ar5は、作業車両10の中心位置Peを基準として奥行1.4m、幅1.0m(トレッド幅)のエリアに設定される。なお、枕地領域では、作業車両10が低速走行するため、減速判定領域を設定せず、停止判定領域(障害物判定領域Ar4,AR5)のみ設定してもよい。
【0073】
判定処理部114は、検出対象物に対応するスコアが前記閾値以上となるグリッドが障害物判定領域Ar(障害物判定領域Ar1~AR5)に含まれる場合に、検出対象物を障害物であると判定する。障害物判定領域Ar1~AR5は、本発明の走行制限領域の一例である。
【0074】
このように、判定処理部114は、ライダーセンサー171L,171Rにより検出される検出対象物に対応する前記第2座標位置の検出回数に応じた第1スコア(本発明の第1評価値)と、超音波センサー172Fにより検出される検出対象物に対応する前記第2座標位置の検出回数に応じた第2スコア(本発明の第2評価値)とに基づいて、検出対象物が障害物であるか否かを判定する。また、判定処理部114は、検出対象物が障害物であるか否かを判定する判定処理における前記第2スコアの重みを前記第1スコアの重みよりも小さい値に設定する。また、判定処理部114は、前記第1スコア及び前記第2スコアの合計値が予め設定された閾値以上の場合に、検出対象物を障害物であると判定する。
【0075】
走行処理部111は、検出対象物が障害物であると判定された場合に、障害物判定領域Arに応じた走行制限処理(減速走行、停止など)を実行する。例えば、作業車両10が作業経路R1を走行中に検出された検出対象物(障害物)に対応するスコアが前記閾値以上となるグリッドP0が障害物判定領域Ar1(
図12A参照)内である場合に、走行処理部111は、作業車両10を減速走行させる。また例えば、作業車両10が作業経路R1を走行中に検出された検出対象物(障害物)に対応するスコアが前記閾値以上となるグリッドP0が障害物判定領域Ar2(
図12B参照)又は障害物判定領域Ar3(
図12C参照)内である場合に、走行処理部111は、作業車両10を停止させる。また例えば、作業車両10が枕地領域を走行中に検出された検出対象物(障害物)に対応するスコアが前記閾値以上となるグリッドP0が障害物判定領域Ar4(
図12D参照)又は障害物判定領域Ar5(
図12E参照)内である場合に、走行処理部111は、作業車両10を停止させる。
【0076】
このように、本発明の走行制限領域は、減速走行領域(障害物判定領域Ar1)と停止領域(障害物判定領域Ar2~Ar5)とを含む。そして、走行処理部111は、圃場Fを基準とする座標系(NED座標系)における検出対象物の位置を表す第2座標位置が前記減速走行領域に含まれる場合に、検出対象物を障害物であると判定して作業車両10を減速走行させる。また、走行処理部111は、前記第2座標位置が前記停止領域に含まれる場合に、検出対象物を障害物であると判定して作業車両10を停止させる。
【0077】
以上のように、判定処理部114は、障害物検出装置17を基準とするセンサー座標系における検出対象物の第1座標位置を、圃場Fを基準とする座標系(NED座標系)における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換して、前記第2座標位置に基づいて検出対象物が障害物であるか否かを判定する。
【0078】
これにより、検出対象物の位置を圃場F(グローバル座標)を基準とした位置として特定することができるため、検出対象物が障害物であるか否かを正確に判定することができる。
【0079】
他の実施形態として、判定処理部114は、圃場Fの地面から所定高さまでの範囲において障害物検出装置17により検出されず、かつ前記所定高さから上方の所定範囲において障害物検出装置17により検出される検出対象物を障害物と判定しない構成としてもよい。また判定処理部114は、障害物検出装置17が圃場Fの地面から所定高さまで連続して伸びる検出対象物を検出した場合に、当該検出対象物を障害物と判定する構成としてもよい。この構成によれば、例えば、作物列Vrから間隔W2(
図5参照)の領域(空間)に飛び出た枝葉を障害物と判定しなくなるため、作業車両10が不要に減速したり停止したりすることを防ぐことができる。
【0080】
また、他の実施形態として、走行処理部111は、接触センサー173F,173R(
図3参照)が検出対象物の接触を検出した場合には、検出対象物が障害物であるか否かに関わらず、作業車両10を停止させてもよい。これにより、作業車両10の損傷を防ぐことができる。なお、接触センサー173F,173Rが検出対象物の接触を検出した場合に、判定処理部114は判定処理を省略してもよい。
【0081】
なお、他の実施形態として、走行処理部111は、ライダーセンサー171L,171R及び超音波センサー172Fが障害物を検出した場合に作業車両10を減速走行させ、接触センサー173F,173Rが障害物を検出した場合に作業車両10を停止させてもよい。これにより、ライダーセンサー171L,171R及び超音波センサー172Fが障害物を検出した場合に作業車両10を停止させることがないため、作業効率を向上させることができる。
【0082】
なお、走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータがストップボタンを押下すると、操作端末20は前記走行停止指示を作業車両10に出力する。走行処理部111は、操作端末20から前記走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行を停止させる。これにより、作業車両10は、自動走行を停止し、散布装置14による散布作業を停止する。
【0083】
上述した作業車両10の構成は、本発明の作業車両の一構成例であって、本発明は上述の構成に限定されない。上述の作業車両10は、第1作物列Vrを跨いで走行しながら、前記第1作物列Vrと、前記第1作物列Vrの左右方向それぞれの第2作物列Vrとに散布物を散布する散布作業を行うことが可能な車両である。他の実施形態として、作業車両10は、車体100が門型の形状ではなく、車体100全体が作物列Vrの間(作業通路)を走行する通常の形状であってもよい。この場合、作業車両10は、作物列Vrを跨がずに各作業通路を順に自動走行する。また、散布装置14は、一つの散布部を備え、左右の両方向に薬液を散布する散布パターンと、左方向のみに薬液を散布する散布パターンと、右方向のみに薬液を散布する散布パターンとを切り替えて散布作業を行う。
【0084】
[操作端末20]
図2に示すように、操作端末20は、制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0085】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0086】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡、車体100の周囲画像により、圃場F内を目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態、作業状況、及び周囲の状況を把握することが可能である。
【0087】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、制御部21に後述の自動走行処理(
図14参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0088】
制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0089】
図2に示すように、制御部21は、設定処理部211、経路生成処理部212、出力処理部213などの各種の処理部を含む。なお、制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0090】
設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)と、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)と、作業(ここでは散布作業)に関する情報(以下、作業情報という。)とを設定して登録する。
【0091】
前記作業車両情報の設定処理において、設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10においてアンテナ164が取り付けられている位置、作業機(ここでは散布装置14)の種類、作業機のサイズ及び形状、作業機の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。本実施形態では、作業機の情報として、散布装置14に関する情報が設定される。
【0092】
前記圃場情報の設定処理において、設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G(
図6参照)、作業方向等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。なお、作業方向とは、圃場Fから枕地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、散布装置14で散布作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0093】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10を手動により圃場Fの外周に沿って一回り周回走行させ、そのときのアンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0094】
前記作業情報の設定処理において、設定処理部211は、作業情報として、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅等を設定可能に構成されている。
【0095】
経路生成処理部212は、前記各設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である目標経路Rを生成する。目標経路Rは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの経路である(
図6参照)。
図6に示す目標経路Rは、作物Vが植えられた領域において作物Vに対して薬液を散布する直線状の作業経路R1と、散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する移動経路R2とを含む。
【0096】
目標経路Rの生成方法の一例について
図13A及び
図13Bを用いて説明する。
図13Aには、作物列Vrを模式的に示している。先ず、オペレータは作業車両10を手動により作物列Vrの外周に沿って走行させる(
図13A参照)。作業車両10は、走行中に各作物列Vrの一方側(
図13Aの下側)の端点E1と他方側(
図13Aの上側)の端点E2とを検出し、各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得する。なお、端点E1,E2は、既に植えられた作物Vの位置であってもよいし、これから植える予定の作物Vの位置を示す目標物の位置であってもよい。経路生成処理部212は、作業車両10から各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得すると、対応する端点E1,E2同士を結ぶ線L1(
図13B参照)を作物列Vrの作業経路に設定し、複数の作業経路と移動経路(旋回経路)とを含む目標経路Rを生成する。目標経路Rの生成方法は、上述の方法に限定されない。経路生成処理部212は、生成した目標経路Rを記憶部22に記憶してもよい。
【0097】
出力処理部213は、経路生成処理部212が生成した目標経路Rの情報を含む経路データを作業車両10に出力する。なお、出力処理部213は、前記経路データをサーバー(不図示)に出力してもよい。前記サーバーは、複数の操作端末20のそれぞれから取得する複数の前記経路データを操作端末20及び作業車両10に関連付けて記憶し管理する。
【0098】
制御部21は、上述の処理に加えて、各種情報を操作表示部23に表示させる処理を実行する。例えば、制御部21は、作業車両情報、圃場情報、作業情報などを登録する登録画面、目標経路Rを生成する操作画面、作業車両10に自動走行を開始させる操作画面、作業車両10の走行状態などを表示する表示画面などを操作表示部23に表示させる。
【0099】
また制御部21は、オペレータから各種操作を受け付ける。具体的には、制御部21は、オペレータから作業車両10に作業を開始させる作業開始指示、自動走行中の作業車両10の走行を停止させる走行停止指示などを受け付ける。制御部21は、前記各指示を受け付けると、前記各指示を作業車両10に出力する。
【0100】
作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び散布作業を開始させる。また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び散布作業を停止させる。
【0101】
なお、操作端末20は、サーバーが提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、サーバーの操作用端末として機能することが可能である。
【0102】
[自動走行処理]
以下、
図14を参照しつつ、作業車両10の車両制御装置11によって実行される前記自動走行処理の一例について説明する。
【0103】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0104】
ステップS1において、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、オペレータが操作端末20においてスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11が操作端末20から作業開始指示を取得すると(S1:Yes)、処理はステップS2に移行する。車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得するまで待機する(S1:No)。
【0105】
ステップS2において、車両制御装置11は自動走行を開始する。例えば、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得し、作物Vを検出して作物列経路R0を推定すると、走行モードを作物列経路用走行モードM2に設定する。そして、車両制御装置11は、作業車両10の測位情報(RTK測位情報)に基づいて、作物列経路R0に沿って自動走行を開始する。また車両制御装置11は、作物列Vrに対して薬液を散布する散布作業を散布装置14に開始させる。
【0106】
次にステップS3において、車両制御装置11は、検出対象物を検出したか否かを判定する。具体的には、ライダーセンサー171L,171R及び超音波センサー172Fの少なくともいずれかが検出対象物を検出した場合に、車両制御装置11は、検出対象物を検出したと判定する。車両制御装置11が検出対象物を検出したと判定した場合(S3:Yes)、処理はステップS4に移行する。車両制御装置11が検出対象物を検出したと判定しない場合(S3:No)、処理はステップS12に移行する。
【0107】
次にステップS4において、車両制御装置11は、検出対象物の座標位置を取得する。具体的には、車両制御装置11は、障害物検出装置17を基準とする座標系における検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得する。
【0108】
例えば、車両制御装置11は、ライダーセンサー171L,171Rが検出対象物を検出した場合に、ライダーセンサー171L,171Rを基準としたセンサー座標系(
図8A参照)の座標位置の情報を障害物検出装置17から取得する。また例えば、車両制御装置11は、左右の超音波センサー172Fが検出対象物を検出した場合に、各超音波センサー172Fを基準としたセンサー座標系(
図8B参照)の座標位置との情報を障害物検出装置17から取得する。
【0109】
次にステップS5において、車両制御装置11は、障害物検出装置17から取得した第1座標位置を、圃場Fを基準とするNED座標系における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換する。具体的には、車両制御装置11は、各センサー(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)の取付位置と、各センサーが検出した検出対象物の座標位置とに基づいて、検出対象物の座標位置をセンサー座標系から車両座標系(
図8C参照)の座標位置に変換する。また、車両制御装置11は、現在のNED座標系における作業車両10の中心位置Pe、前回の座標変換時の作業車両10の方位角、現在の作業車両10の方位角、車両座標系における各センサーが検出した検出対象物の座標位置をNED座標系(
図8D参照)に変換する。
【0110】
次にステップS6において、車両制御装置11は、検出対象物が障害物であるか否かを判定するための障害物地
図GM(
図9参照)を作成する。
【0111】
次にステップS7において、車両制御装置11は、障害物地
図GMにおける各グリッドに相当する位置に検出対象物が存在する場合に、当該グリッドのスコア(評価値)を算出する。具体的には、車両制御装置11は、障害物地
図GM内の各グリッドにおいて、検出対象物を検出したセンサー(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)ごとに異なる重みでスコアを更新する。前記スコアの算出方法は、上述のとおりである。
【0112】
次にステップS8において、車両制御装置11は、算出した前記スコアが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。前記スコアが前記閾値以上である場合(S8:Yes)、処理はステップS9に移行する。一方、前記スコアが前記閾値未満である場合(S8:No)、処理はステップS81に移行する。
【0113】
ステップS9では、車両制御装置11は、検出対象物を障害物であると判定し、その後、処理はステップS10に移行する。一方、ステップS81では、車両制御装置11は、検出対象物を障害物でないと判定し、その後、処理はステップS12に移行する。
【0114】
ステップS10では、車両制御装置11は、障害物が作業車両10の走行領域に応じて設定された障害物判定領域Ar1~AR5に含まれるか否かを判定する。前記障害物が障害物判定領域Ar1~AR5に含まれる場合(S10:Yes)、処理はステップS11に移行する。一方、前記障害物が障害物判定領域Ar1~AR5に含まれない場合(S10:No)、処理はステップS12に移行する。
【0115】
ステップS11において、車両制御装置11は、走行制限処理を実行する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が作業経路R1を走行中に検出した障害物が障害物判定領域Ar1(
図12A参照)内である場合に、作業車両10を減速走行させる。また例えば、車両制御装置11は、作業車両10が作業経路R1を走行中に検出した障害物が障害物判定領域Ar2(
図12B参照)又は障害物判定領域Ar3(
図12C参照)内である場合に、作業車両10を停止させる。また例えば、車両制御装置11は、作業車両10が枕地領域を走行中に検出した障害物が障害物判定領域Ar4(
図12D参照)又は障害物判定領域Ar5(
図12E参照)内である場合に、作業車両10を停止させる。
【0116】
ステップS12において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10の位置が作業終了位置G(
図6参照)に一致する場合に作業を終了したと判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S12:Yes)、前記自動走行処理は終了する。
【0117】
車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了するまでステップS3~S11の処理を繰り返す(S12:No)。例えば、車両制御装置11は、検出対象物を検出した結果、当該検出対象物を障害物でないと判定した場合(S81)、作業車両10の走行を制限(減速走行又は停止)することなく自動走行を継続する。また、車両制御装置11は、検出対象物を検出した結果、当該検出対象物が障害物であったとしても当該障害物が障害物判定領域Ar1~AR5に含まれない場合には(S10:No)、作業車両10の走行を制限(減速走行又は停止)することなく自動走行を継続する。車両制御装置11は、作業を終了するまで、検出対象物を検出するごとに前記ステップS3~S11の処理を実行する。
【0118】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、走行領域(例えば圃場F)において、予め設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。また、自動走行システム1は、作業車両10に設けられる検出部(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)により圃場F内の検出対象物を検出し、前記検出部を基準とする第1座標系(センサー座標系)における検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得する。また、自動走行システム1は、前記第1座標位置を、圃場Fを基準とする第2座標系(NED座標系)における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換し、前記第2座標位置に基づいて検出対象物が障害物であるか否かを判定する。
【0119】
また、本実施形態に係る自動走行方法は、一又は複数のプロセッサーが、走行領域(例えば圃場F)において、予め設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させることと、作業車両10に設けられる検出部(ライダーセンサー171L,171R、超音波センサー172F)により圃場F内の検出対象物を検出することと、前記検出部を基準とする第1座標系(センサー座標系)における検出対象物の位置を表す第1座標位置を取得することと、前記第1座標位置を、圃場Fを基準とする第2座標系(NED座標系)における検出対象物の位置を表す第2座標位置に変換することと、前記第2座標位置に基づいて検出対象物が障害物であるか否かを判定することと、を実行する。
【0120】
上記の構成によれば、各センサーが検出した検出対象物の位置を圃場F(グローバル座標)を基準とした位置として特定することができるため、検出対象物が障害物であるか否かを正確に判定することができる。このため、作業車両10の姿勢変化などに伴って異なる作物Vを複数回検出することにより障害物であると誤認識することを防ぐことができる。そして、誤認識による作業車両10の走行制限を防ぐことができる。このように、障害物の誤認識による不要な走行制限を防ぐことができるため、作業車両10の作業効率を向上させることができる。以上のように、本発明によれば、障害物の判定精度を高めることにより作業車両10の作業効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0121】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
111 :走行処理部
112 :取得処理部
113 :変換処理部
114 :判定処理部
14 :散布装置
16 :測位装置
17 :障害物検出装置
171L :ライダーセンサー(検出部、第1検出部)
171R :ライダーセンサー(検出部、第1検出部)
172F :超音波センサー(検出部、第2検出部)
173F :接触センサー(接触検出部)
173R :接触センサー(接触検出部)
20 :操作端末
211 :設定処理部
212 :経路生成処理部
213 :出力処理部
40 :基地局
50 :衛星
F :圃場(走行領域)
R :目標経路
R0 :作物列経路
V :作物(作業対象物)
Vr :作物列
Pe :現在位置(中心位置)
M1 :目標経路用走行モード
M2 :作物列経路用走行モード
GM :障害物地図(グリッドマップ)
Ar :障害物判定領域(走行制限領域)
Ar1 :減速判定領域(減速走行領域)
Ar2~Ar5 :停止判定領域(停止領域)