(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183962
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】経路決定方法、経路決定システム、及び経路決定プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221206BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 N
A01B69/00 303Z
A01B69/00 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091528
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁大
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB20
2B043BA09
2B043BB08
2B043DA17
2B043DC01
2B043EA22
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC15
2B043ED12
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD15
5H301GG06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG10
5H301HH10
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】作業車両が作業地の表土を痛めることなく自動走行しながら作業を行うことが可能な目標経路を決定する経路決定方法、経路決定システム、及び経路決定プログラムを提供すること。
【解決手段】経路決定方法は、圃場Fにおいて複数列に配置された作物列Vrに対して散布作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両10を走行させる目標経路Rの候補である複数の候補経路r1~r3を生成することと、複数の候補経路r1~r3の中から選択される第1候補経路を目標経路Rとして決定することと、を実行する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成することと、
前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定することと、
を実行する経路決定方法。
【請求項2】
前記作業地において前記作業対象物が配置される位置に基づいて一つの基準候補経路を生成し、
前記基準候補経路に対して所定距離だけオフセットすることにより他の候補経路を生成する、
請求項1に記載の経路決定方法。
【請求項3】
前記所定距離は、前記作業車両の種別及びサイズ、前記作業対象物の配列間隔、及び前記作業地の傾斜角度の少なくともいずれかに基づいて設定される、
請求項2に記載の経路決定方法。
【請求項4】
前記作業地において、前記作業対象物は複数列に配置されており、
各列における当該列の両端点を結ぶことにより前記基準候補経路を生成する、
請求項2又は3に記載の経路決定方法。
【請求項5】
前記第1候補経路は、前回の作業時に選択された候補経路とは異なる候補経路である、
請求項1~4のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項6】
前記第1候補経路は、ユーザーが選択した候補経路である、
請求項1~5のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項7】
前記第1候補経路は、前記作業地の表土状態に基づいて選択される候補経路である、
請求項1~5のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項8】
前記目標経路は、前記作業車両が前記所定の作業を行いながら直線状に走行する複数の作業経路と、前記作業車両が前記作業経路間を移動する移動経路とを含み、
前記移動経路は、前記作業経路に接続する旋回経路と、前記旋回経路に接続する直進経路とを含み、
前記複数の候補経路のそれぞれに対応する前記作業経路に接続する前記旋回経路の旋回開始位置を互いに異なる位置に設定し、前記複数の候補経路のそれぞれに対応する前記作業経路に接続する前記旋回経路の旋回終了位置を互いに異なる位置に設定する、
請求項1~7のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項9】
前記複数の候補経路のそれぞれに対応する前記作業経路に接続する前記旋回経路に接続する前記直進経路を、共通の経路として設定する、
請求項8に記載の経路決定方法。
【請求項10】
前記目標経路の経路データを前記作業車両に転送することをさらに実行する、
請求項1~9のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項11】
前記複数の候補経路を互いに異なる表示態様でユーザーの操作端末に表示させることをさらに実行する、
請求項1~10のいずれかに記載の経路決定方法。
【請求項12】
作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成する生成処理部と、
前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定する決定処理部と、
を備える経路決定システム。
【請求項13】
作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成することと、
前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための経路決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら自動走行する作業車両の目標経路を決定する経路決定方法、経路決定システム、及び経路決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場、農園などの作業地に植えられた作物に対して薬液を散布しながら目標経路を自動走行する作業車両が知られている(例えば特許文献1参照)。前記目標経路は、例えば、作物が並ぶ複数の列(作物列)において、列ごとに当該列の両端点を結ぶことにより生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両は、生成された前記目標経路を自動走行するため、作業を行う度に毎回同じ場所を走行する。このため、作業地において、作業車両が走行した部分の表土を痛めてしまう問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、作業車両が作業地の表土を痛めることなく自動走行しながら作業を行うことが可能な目標経路を決定する経路決定方法、経路決定システム、及び経路決定プログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る経路決定方法は、作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成することと、前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定することと、を実行する方法である。
【0007】
本発明に係る経路決定システムは、生成処理部と決定処理部とを備える。前記生成処理部は、作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成する。前記決定処理部は、前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定する。
【0008】
本発明に係る経路決定プログラムは、作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両を走行させる目標経路の候補である複数の候補経路を生成することと、前記複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を前記目標経路として決定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業車両が作業地の表土を痛めることなく自動走行しながら作業を行うことが可能な目標経路を決定する経路決定方法、経路決定システム、及び経路決定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両を左前方側から見た外観図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る作業車両を左側から見た左側面の外観図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る作業車両を右側から見た右側面の外観図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施形態に係る作業車両を背面側から見た背面の外観図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る作物列の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る目標経路の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7D】
図7Dは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7E】
図7Eは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7F】
図7Fは、本発明の実施形態に係る基準候補経路の生成方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る候補経路の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る経路情報の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
[自動走行システム1]
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と、操作端末20と、サーバー30と、基地局40と、衛星50とを含んでいる。作業車両10、操作端末20、及びサーバー30は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。また、作業車両10及び操作端末20のそれぞれと、サーバー30とは、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10が、圃場Fに植えられた作物V(
図5参照)に薬液、水などを散布する散布作業を行う車両である場合を例に挙げて説明する。圃場Fは本発明の作業地の一例であり、圃場Fは例えば葡萄園、林檎園などの果樹園である。作物Vは本発明の作業対象物の一例であり、作物Vは例えば葡萄の果樹である。前記散布作業は本発明の所定の作業の一例であり、前記散布作業は例えば作物Vに薬液、水などの散布物を散布する作業である。他の実施形態として、作業車両10は、除草作業を行う車両、葉刈作業を行う車両、収穫作業を行う車両であってもよい。前記除草作業及び前記収穫作業は、本発明の所定の作業の一例である。
【0014】
作物Vは、圃場Fにおいて所定の間隔で複数列に配置されている。具体的には、
図5に示すように、複数の作物Vは、所定の方向(D1方向)に直線状に植えられており、直線状に並ぶ複数の作物Vを含む作物列Vrを構成する。
図5には、3つの作物列Vrを例示している。各作物列Vrは列方向(D2方向)に所定の間隔W1で配置されている。隣り合う作物列Vrの間隔W2の領域(空間)は、作業車両10がD1方向に走行しながら作物Vに対して散布作業を行う作業通路となる。
【0015】
また、作業車両10は、予め設定された目標経路Rに沿って自動走行(自律走行)することが可能である。例えば
図6に示すように、作業車両10は、作業開始位置Sから作業終了位置Gまで、作業経路R1(作業経路R1a~R1f)及び移動経路R2を含む目標経路Rに沿って自動走行する。作業経路R1は、作業車両10が作物Vに対して散布作業を行う直線状の経路であり、移動経路R2は、作業車両10が散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する経路である。移動経路R2には、例えば旋回経路及び直進経路が含まれる。
図6に示す例では、圃場Fにおいて、作物列Vr1~Vr11から成る作物Vが配置されている。
図6では、作物Vが植えられている位置(作物位置)を「Vp」で表している。また、
図6の圃場Fを走行する作業車両10は、車体100が門型の形状を有しており(
図4C参照)、1つの作物列Vrを跨いで走行しながら、当該作物列Vrの作物V及び当該作物列Vrに隣接する作物列Vrに対して薬液を散布する。例えば
図6に示すように、作業車両10が作物列Vr5を跨いで走行する場合、作業車両10の左側車体(左側部100L)が作物列Vr4,Vr5の間の作業通路を走行し、作業車両10の右側車体(右側部100R)が作物列Vr5,Vr6の間の作業通路を走行し、かつ作物列Vr4,Vr5,Vr6の作物Vに対して薬液を散布する。
【0016】
また、作業車両10は、所定の列順序で自動走行を行う。例えば、作業車両10は、作物列Vr1を跨いで走行し、次に作物列Vr3を跨いで走行し、次に作物列Vr5を跨いで走行する。このように、作業車両10は、予め設定された作物列Vrの順番に応じて自動走行を行う。なお、作業車両10は、作物列Vrの配列順に1列ごとに走行してもよいし、複数列おきに走行してもよい。
【0017】
衛星50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局40は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局40は、作業車両10の現在位置を算出するための補正情報を作業車両10に送信する。
【0018】
作業車両10に搭載される測位装置16は、衛星50から送信されるGNSS信号を利用して作業車両10の現在位置(緯度、経度、高度)及び現在方位などを算出する測位処理を実行する。具体的には、測位装置16は、2台の受信機(アンテナ164及び基地局40)が受信する測位情報(GNSS信号など)と基地局40で生成される補正情報とに基づいて作業車両10を測位するRTK(Real Time Kinematic)方式などを利用して作業車両10を測位する。前記測位方式は周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
以下、自動走行システム1を構成する各構成要素の詳細について説明する。
【0020】
[作業車両10]
図3は、作業車両10を左前方側から見た外観図である。
図4Aは、作業車両10を左側から見た左側面の外観図であり、
図4Bは、作業車両10を右側から見た右側面の外観図であり、
図4Cは、作業車両10を背面側から見た背面の外観図である。
【0021】
図1~
図4に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、散布装置14、通信部15、測位装置16、カメラ装置17、障害物検出装置18などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、散布装置14、測位装置16、カメラ装置17、障害物検出装置18などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0022】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20、サーバー30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0023】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図10参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(例えばサーバー30)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rのデータが記憶される。例えば、目標経路Rのデータは、操作端末20からサーバー30に送信され、サーバー30から作業車両10に転送されて記憶部12に記憶される。
【0024】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0025】
車両制御装置11は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、車両制御装置11は、測位装置16により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて、目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させる。例えば、前記測位状態がRTK測位可能な状態になって、操作端末20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から前記作業開始指示を取得すると、測位装置16により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10の自動走行を開始させる。これにより、作業車両10は、目標経路Rに沿って自動走行を開始し、前記作業通路において散布装置14による散布作業を開始する。
【0026】
また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータがストップボタンを押下すると、操作端末20は前記走行停止指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から前記走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行を停止させる。これにより、作業車両10は、自動走行を停止し、散布装置14による散布作業を停止する。
【0027】
作業車両10は、圃場Fにおいて複数列に並べて植えられた作物V(果樹)を跨いで走行する門型の車体100を備える。
図4Cに示すように、車体100は、左側部100Lと、右側部100Rと、左側部100L及び右側部100Rを接続する接続部100Cとにより門型に形成されており、左側部100L、右側部100R、及び接続部100Cの内側に作物Vの通過を許容する空間100Sが確保される。
【0028】
車体100の左側部100L及び右側部100Rそれぞれの下端部には、クローラ101が設けられている。左側部100Lには、エンジン(不図示)、バッテリー(不図示)などが設けられている。右側部100Rには、散布装置14の貯留タンク14A(
図4B参照)などが設けられている。このように、車体100の左側部100L及び右側部100Rに構成部品を振り分けて配置することにより、作業車両10は、左右のバランスの均衡化及び低重心化が図られている。その結果、作業車両10は、圃場Fの斜面などを安定して走行することができる。
【0029】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。走行装置13は、エンジン、クローラ101などを備える。
【0030】
左右のクローラ101は、静油圧式無段変速装置による独立変速が可能な状態でエンジンからの動力により駆動される。これにより、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に等速駆動されることにより前進方向に直進する前進状態になり、左右のクローラ101が後進方向に等速駆動されることにより後進方向に直進する後進状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に不等速駆動されることにより前進しながら旋回する前進旋回状態になり、左右のクローラ101が後進方向に不等速駆動されることで後進しながら旋回する後進旋回状態になる。また、車体100は、左右いずれか一方のクローラ101が駆動停止された状態で他方のクローラ101が駆動されることによりピボット旋回(信地旋回)状態になり、左右のクローラ101が前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回(超信地旋回)状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が駆動停止されることで走行停止状態になる。尚、左右のクローラ101は、電動モータにより駆動される電動式に構成されていてもよい。
【0031】
図4Cに示すように、散布装置14は、薬液などを貯留する貯留タンク14A、薬液などを圧送する散布用ポンプ(不図示)、散布用ポンプを駆動する電動式の散布モータ(不図示)、車体100の背部において縦向き姿勢で左右に2本ずつ並列に備えられた散布管14B、各散布管14Bに3個ずつ備えられた合計12個の散布ノズル14C、薬液などの散布量及び散布パターンを変更する電子制御式のバルブユニット(不図示)、及び、これらを接続する複数の散布用配管(図示せず)、などを備えている。
【0032】
各散布ノズル14Cは、対応する散布管14Bに、上下方向に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布ノズル14Cは、隣り合う散布ノズル14Cとの間隔及び散布管14Bに対する高さ位置を散布対象物(作物V)に応じて変更することができる。また、各散布ノズル14Cは、車体100に対する高さ位置及び左右位置を散布対象物に応じて変更可能に取り付けられている。
【0033】
なお、散布装置14において、各散布管14Bに設けられる散布ノズル14Cの数量は、作物Vの種類、各散布管14Bの長さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0034】
図4Cに示すように、複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の左外方に位置する作物Vaに向けて薬液を左向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに隣接する左内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100における左右中央の空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の右外方に位置する作物Vcに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに隣接する右内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を左向きに散布する。
【0035】
上記の構成により、散布装置14においては、車体100の左側部100Lに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが左側の散布部14Lとして機能する。また、車体100の右側部100Rに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが右側の散布部14Rとして機能する。そして、左右の散布部14L,14Rは、車体100の背部において、左右方向への散布が可能な状態で、左右の散布部14L,14Rの間に作物Vbの通過(空間100S)を許容する左右間隔を置いて配置されている。
【0036】
散布装置14において、散布部14L,14Rによる散布パターンには、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンと、散布部14L,14Rによる散布方向が限定された方向限定散布パターンとが含まれる。前記方向限定散布パターンには、散布部14Lが左右の両方向に薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する左側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左右の両方向に薬液を散布する右側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する2方向散布パターンと、散布部14Lが左方向のみに散布し、かつ、散布部14Rが薬液を散布しない左側1方向散布パターンと、散布部14Rが右方向のみに散布し、かつ、散布部14Lが薬液を散布しない右側1方向散布パターンとが含まれる。
【0037】
車体100には、測位装置16から取得する測位情報などに基づいて車体100を圃場Fの目標経路Rに従って自動走行させる自動走行制御部、エンジンに関する制御を行うエンジン制御部、静油圧式無段変速装置に関する制御を行うHST(Hydro-Static Transmission)制御部、及び、散布装置14などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部などが搭載されている。各制御部は、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニット、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報及び制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、事前に生成された目標経路Rなどが含まれてもよい。本実施形態では、各制御部を総称して「車両制御装置11」という(
図2参照)。
【0038】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及びアンテナ164などを備える通信機器である。アンテナ164は、車体100の天井部(接続部100C)の前方及び後方に設けられている(
図3参照)。また車体100の天井部には、作業車両10の走行状態を表示する表示灯102などが設けられている(
図3参照)。なお、測位装置16には前記バッテリーが接続されており、測位装置16は、前記エンジンの停止中も稼働可能である。
【0039】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局40などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0040】
アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。アンテナ164が作業車両10の前方及び後方に設けられているため、作業車両10の現在位置を高精度に測位することができる。
【0041】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための制御プログラム、及び、測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。測位制御部161は、アンテナ164が衛星50から受信するGNSS信号に基づいて所定の測位方式(RTK方式など)により作業車両10の現在位置を測位する。
【0042】
障害物検出装置17は、車体100の前方左側に設けられたライダーセンサー171Lと、車体100の前方右側に設けられたライダーセンサー171Rとを備える(
図3参照)。各ライダーセンサーは、例えばライダーセンサーが照射したレーザー光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、ライダーセンサーから測定範囲の各測距点(測定対象物)までの距離を測定する。
【0043】
ライダーセンサー171Lは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、ライダーセンサー171Rは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各ライダーセンサーは、測定した各測距点までの距離、各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報を車両制御装置11に送信する。
【0044】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の超音波センサー172F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の超音波センサー172R(
図4A及び
図4B参照)とを備える。各超音波センサーは、超音波センサーが発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF方式により、超音波センサーから測定対象物までの距離を測定する。
【0045】
前方左側の超音波センサー172Fは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、前方右側の超音波センサー172Fは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方左側の超音波センサー172Rは、車体100の後方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方右側の超音波センサー172Rは、車体100の後方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各超音波センサーは、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを含む測定情報を車両制御装置11に送信する。
【0046】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の接触センサー173F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の接触センサー173R(
図4A及び
図4B参照)とを備える。車体100の前方側の接触センサー173Fは、接触センサー173Fに障害物が接触した場合に障害物を検出する。車体100の後方側の接触センサー173Rの前方(作業車両10の後方側)には散布装置14が設けられており、接触センサー173Rは、散布装置14に対して障害物が接触した場合に散布装置14が後方(作業車両10の前方側)に移動することにより障害物を検出する。各接触センサーは、障害物を検出した場合に検出信号を車両制御装置11に送信する。
【0047】
車両制御装置11は、障害物検出装置17から取得する障害物に関する測定情報に基づいて、作業車両10が障害物に衝突する可能性がある場合に障害物を回避する回避処理を実行する。
【0048】
上記の構成により、作業車両10を目標経路Rに沿って高精度に自動走行させることができるとともに、散布装置14による薬液などの散布作業を適正に行うことができる。
【0049】
上述した作業車両10の構成は、本発明の作業車両の一構成例であって、本発明は上述の構成に限定されない。上述の作業車両10は、第1作物列Vrを跨いで走行しながら、前記第1作物列Vrと、前記第1作物列Vrの左右方向それぞれの第2作物列Vrとに散布物を散布する散布作業を行うことが可能な車両である。他の実施形態として、作業車両10は、車体100が門型の形状ではなく、車体100全体が作物列Vrの間(作業通路)を走行する通常の形状であってもよい。この場合、作業車両10は、作物列Vrを跨がずに各作業通路を順に自動走行する。また、散布装置14は、一つの散布部を備え、左右の両方向に薬液を散布する散布パターンと、左方向のみに薬液を散布する散布パターンと、右方向のみに薬液を散布する散布パターンとを切り替えて散布作業を行う。
【0050】
[操作端末20]
図2に示すように、操作端末20は、制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0051】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10、サーバー30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0052】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡、車体100の周囲画像により、圃場F内を目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態、作業状況、及び周囲の状況を把握することが可能である。
【0053】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、制御部21に後述の自動走行処理(
図10参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0054】
制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0055】
図2に示すように、制御部21は、設定処理部211、生成処理部212、出力処理部213などの各種の処理部を含む。なお、制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0056】
設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)と、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)と、作業(ここでは散布作業)に関する情報(以下、作業情報という。)とを設定して登録する。
【0057】
前記作業車両情報の設定処理において、設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10においてアンテナ164が取り付けられている位置、作業機(ここでは散布装置14)の種類、作業機のサイズ及び形状、作業機の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。本実施形態では、作業機の情報として、散布装置14に関する情報が設定される。
【0058】
前記圃場情報の設定処理において、設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G(
図6参照)、作業方向等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。なお、作業方向とは、圃場Fから枕地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、散布装置14で散布作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0059】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10を手動により圃場Fの外周に沿って一回り周回走行させ、そのときのアンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0060】
前記作業情報の設定処理において、設定処理部211は、作業情報として、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅等を設定可能に構成されている。
【0061】
生成処理部212は、前記各設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である目標経路Rを生成する。目標経路Rは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの経路である(
図6参照)。
図6に示す目標経路Rは、作物Vが植えられた領域において作物Vに対して薬液を散布する直線状の作業経路R1と、散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する移動経路R2とを含む。
【0062】
具体的には、生成処理部212は、目標経路Rの候補である複数の候補経路を生成する。先ず、生成処理部212は、前記各設定情報と作物Vが配置される位置とに基づいて一つの基準候補経路r1を生成する。
【0063】
基準候補経路r1の生成方法の一例について、
図7A~
図7Fを用いて説明する。
図7A~
図7Fには、作物列Vrを模式的に示している。先ず、オペレータは作業車両10を手動により作物列Vrの外周に沿って走行させる(
図7A参照)。作業車両10は、走行中に各作物列Vrの一方側(
図7Aの下側)の端点E1と他方側(
図7Aの上側)の端点E2とを検出し、各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得する。なお、端点E1,E2は、既に植えられた作物Vの位置であってもよいし、これから植える予定の作物Vの位置を示す目標物の位置であってもよい。生成処理部212は、作業車両10から各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得する。
【0064】
次に、
図7Bに示すように、生成処理部212は、複数の端点E1を第1グループG1としてグループ化し、複数の端点E2を第2グループG2としてグループ化する。次に、
図7Cに示すように、生成処理部212は、第1グループG1に含まれる端点E1同士の間隔w1(列間隔)と、第2グループG2に含まれる端点E2同士の間隔w2(列間隔)とを算出する。また生成処理部212は、第1グループG1に含まれる全ての端点E1を結ぶ直線L1と、第2グループG2に含まれる全ての端点E2を結ぶ直線L2とを生成し、直線L1,L2のそれぞれの傾きを算出する。生成処理部212は、列間w1,w2と直線L1,L2の傾きとに基づいて、第1グループG1及び第2グループG2それぞれにおける端点E1,E2の欠落の有無を判定し、欠落が生じている場合に欠落箇所に仮想点Evを挿入して、欠落した端点E1,E2を補完する。
図7Cには、第1グループG1に2つの仮想点Evを挿入し、第2グループG2に1つの仮想点Evを挿入した例を示している。
【0065】
次に、
図7Dに示すように、生成処理部212は、第1グループG1の各端点E1と第2グループG2の各端点E2との対向する端点E1,E2同士を結ぶ直線L3を生成する。次に、
図7Eに示すように、生成処理部212は、各直線L3の平均的な傾きを算出し、算出した傾きを有する基準線L4を生成する。次に、生成処理部212は、第1グループG1の各端点E1に対して第2グループG2の各端点E2をペアリングする第1ペアリング処理と、第2グループG2の各端点E2に対して第1グループG1の各端点E1をペアリングする第2ペアリング処理とを実行する。
【0066】
具体的には、
図7Eに示すように、生成処理部212は、第1ペアリング処理において、第1グループG1における任意の端点E1を原点にした基準線L4を生成し、基準線L4から基準値以内に存在する第2グループG2の複数の端点E2を抽出し、抽出した複数の端点E2のうち基準線L4に距離w3が最も近い端点E2を、基準線L4の原点である端点E1とペアリングする。生成処理部212は、第1ペアリング処理を第1グループG1の全ての端点E1に対して実行する。また、生成処理部212は、第2ペアリング処理において、第2グループG2の各端点E2を原点にして、第1ペアリング処理と同様の処理を第2グループG2の全ての端点E2に対して実行する。生成処理部212は、第1ペアリング処理及び第2ペアリング処理を実行した後、各ペアリング処理のペアリング結果が同じであるか否かを判定し、ペアリング結果が同じである場合に、ペアリングが成功したと判定する。ペアリングが成功すると、生成処理部212は、
図7Fに示すように、ペアリングした端点E1,E2を結ぶ複数の直線L5を基準候補経路r1として生成する。
【0067】
このように、生成処理部212は、各作物列Vrにおける当該作物列Vrの両端点E1,E2を結ぶことにより基準候補経路r1を生成する。基準候補経路r1の生成方法は、上述の方法に限定されない。
【0068】
生成処理部212は、基準候補経路r1を生成すると、基準候補経路r1に基づいて他の候補経路を生成する。具体的には、生成処理部212は、基準候補経路r1に対して所定距離だけオフセットすることにより他の候補経路を生成する。例えば、
図8に示すように、生成処理部212は、基準候補経路r1に対してX1(cm)だけ右方向にオフセットした候補経路r2と、基準候補経路r1に対してX1(cm)だけ左方向にオフセットした候補経路r3とを生成する。前記所定距離は、予め設定された許容範囲内の値であり、作業車両10及び作業機(散布装置14)のそれぞれの種別及びサイズ、作物列Vrの間隔W1(
図5参照)、作業通路の間隔W2(
図5参照)、及び圃場Fの傾斜角度の少なくともいずれかに基づいて設定される。また、前記許容範囲は、作業車両10及び作業機(散布装置14)のそれぞれの種別及びサイズ、作物列Vrの間隔W1、作業通路の間隔W2、及び圃場Fの傾斜角度などに基づいて設定される。例えば、前記許容範囲が±5cmに設定されている場合、生成処理部212は、基準候補経路r1に対して±5cmのオフセット量を設定する。すなわち、生成処理部212は、基準候補経路r1に対して5cmだけ右方向にオフセットした候補経路r2と、基準候補経路r1に対して5cmだけ左方向にオフセットした候補経路r3とを生成する。なお、右方向(+方向)のオフセット量と、左方向(-方向)のオフセット量とが、互いに異なる値に設定されてもよい。
【0069】
また、前記所定距離は、前記許容範囲内において乱数を用いて設定されてもよい。例えば、生成処理部212は、-1.0~+1.0の範囲で正規化された乱数を生成し、生成した乱数を前記許容範囲の最大値(上記の例では5cm)に乗算して算出された値を前記所定距離として設定する。このように、生成処理部212は、前記オフセット量を設定するごとに、乱数を用いてランダムなオフセット量を設定してもよい。
【0070】
基準候補経路r1が目標経路Rとして設定された場合には、作業車両10は
図8の実線で示す経路を自動走行し、候補経路r2が目標経路Rとして設定された場合には、作業車両10は
図8の点線で示す経路を自動走行し、候補経路r3が目標経路Rとして設定された場合には、作業車両10は
図8の一点鎖線で示す経路を自動走行する。
【0071】
また、
図8に示すように、生成処理部212は、作業経路R1となる基準候補経路r1に接続する移動経路R2(
図8の実線経路)に含まれる旋回経路の旋回開始位置c11と、作業経路R1となる候補経路r2に接続する移動経路R2(
図8の点線経路)に含まれる旋回経路の旋回開始位置c21と、作業経路R1となる候補経路r3に接続する移動経路R2(
図8の一点鎖線経路)に含まれる旋回経路の旋回開始位置c31とを、互いに異なる位置に設定してもよい。同様に、生成処理部212は、作業経路R1となる基準候補経路r1に接続する移動経路R2(
図8の実線経路)に含まれる旋回経路の旋回終了位置c12と、作業経路R1となる候補経路r2に接続する移動経路R2(
図8の点線経路)に含まれる旋回経路の旋回終了位置c22と、作業経路R1となる候補経路r3に接続する移動経路R2(
図8の一点鎖線経路)に含まれる旋回経路の旋回終了位置c32とを、互いに異なる位置に設定してもよい。これにより、作業車両10は、作物列Vrの端点周辺における作業地の表土を痛めることなく自動走行しながら作業を行うことができる。
【0072】
また、
図8に示すように、生成処理部212は、作業経路R1となる基準候補経路r1に接続する移動経路R2(
図8の実線経路)に含まれる直進経路r0と、作業経路R1となる候補経路r2に接続する移動経路R2(
図8の点線経路)に含まれる直進経路r0と、作業経路R1となる候補経路r3に接続する移動経路R2(
図8の一点鎖線経路)に含まれる直進経路r0とを、同一の位置に共通の経路として設定してもよい。移動経路R2においては、作業車両10は作物Vが植えられていない領域を走行するため表土を痛めても問題なく、共通の経路を走行することできる。これにより、作業車両10が旋回走行中、どの位置を走行するかオペレータは把握することが可能となり安全性を向上させることができる。
【0073】
なお、制御部21は、
図8に示す候補経路r1~r3の情報を操作端末20に表示させてもよい。例えば、制御部21は、候補経路r1~r3のそれぞれを互いに異なる表示態様で操作端末20に表示させる。これにより、オペレータは、操作端末20において、候補経路r1~r3を容易に把握することができる。また、制御部21は、候補経路r1~r3のうち作業車両10が前回走行した走行経路を視認可能に表示させてもよい。これにより、オペレータは、操作端末20において、作業車両10が前回走行した走行経路、及び、今回選択すべき候補経路を容易に把握することができる。
【0074】
以上のように、生成処理部212は、目標経路Rの候補となる複数の候補経路を生成する。上記の例では、生成処理部212は、基準候補経路r1と候補経路r2,r3とを生成する。生成処理部212は、生成した複数の候補経路を記憶部22に記憶してもよい。
【0075】
出力処理部213は、生成処理部212が生成した複数の候補経路をサーバー30に出力する。上記の例では、出力処理部213は、基準候補経路r1と候補経路r2,r3とを含む候補経路の経路データをサーバー30に出力する。なお、出力処理部213は、前記複数の候補経路の経路データを作業車両10に出力してもよい。
【0076】
制御部21は、上述の処理に加えて、各種情報を操作表示部23に表示させる処理を実行する。例えば、制御部21は、作業車両情報、圃場情報、作業情報などを登録する登録画面、候補経路を生成する操作画面、作業車両10に自動走行を開始させる操作画面、作業車両10の走行状態などを表示する表示画面などを操作表示部23に表示させる。
【0077】
また制御部21は、オペレータから各種操作を受け付ける。具体的には、制御部21は、オペレータから作業車両10に作業を開始させる作業開始指示、自動走行中の作業車両10の走行を停止させる走行停止指示などを受け付ける。制御部21は、前記各指示を受け付けると、前記各指示を作業車両10に出力する。
【0078】
作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び作業を開始させる。また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び作業を停止させる。
【0079】
なお、操作端末20は、サーバー30が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、サーバー30の操作用端末として機能することが可能である。
【0080】
[サーバー30]
図2に示すように、サーバー30は、制御部31、記憶部32、操作表示部33、及び通信部34などを備えるサーバー装置である。なお、サーバー30は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、サーバー30で実行される各種の処理を、一又は複数のプロセッサーが分散して実行してもよい。
【0081】
通信部34は、サーバー30を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10、一又は複数の操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0082】
操作表示部33は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。
【0083】
記憶部32は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部32には、制御部31に後述の自動走行処理(
図10参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部32に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、他のサーバー(不図示)から通信網N1を介してサーバー30にダウンロードされて記憶部32に記憶されてもよい。
【0084】
また記憶部32には、操作端末20から出力される候補経路の経路情報D1が記憶される。
図9には、経路情報D1の位置を示している。経路情報D1には、候補経路ごとに、対応する「経路ID」、「候補経路名」、「オフセット量」などの情報が含まれる。前記経路IDは候補経路の識別情報であり、前記候補経路名は候補経路の名称である。前記オフセット量は、基準候補経路r1に対するオフセット量を示す情報である。
図9には、基準候補経路r1(候補経路ID:「r001」)、候補経路r2(候補経路ID:「r002」)、及び候補経路r3(候補経路ID:「r003」)に関する情報が登録されている。各候補経路の経路データは、前記経路IDに関連付けられて記憶部32に記憶される。
【0085】
なお、記憶部32には、作業車両10ごとに、当該作業車両10に対応する経路情報D1が記憶されてもよい。例えば、記憶部32に、作業車両10Aに対応する経路情報D1と、作業車両10Bに対応する経路情報D1とが記憶されてもよい。
【0086】
制御部31は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部31は、前記ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することによりサーバー30を制御する。
【0087】
図2に示すように、制御部31は、取得処理部311、決定処理部312、転送処理部313などの各種の処理部を含む。なお、制御部31は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0088】
取得処理部311は、作業車両10及び操作端末20から各種情報を取得する。例えば、取得処理部311は、操作端末20からユーザー情報、圃場情報、作業予定情報、候補経路情報などを取得する。また、取得処理部311は、作業車両10から作業実績などの情報を取得する。例えば、取得処理部311は、操作端末20から前記候補経路の経路データを取得すると、前記候補経路に関する経路情報D1(
図9参照)と経路データとを記憶部32に記憶する。
【0089】
決定処理部312は、作業車両10を自動走行させる目標経路Rを決定する。具体的には、決定処理部312は、複数の候補経路の中から選択される候補経路(本発明の第1候補経路)を目標経路Rとして決定する。
【0090】
例えば、決定処理部312は、前回の作業時に選択した候補経路とは異なる候補経路を選択して目標経路Rに決定する。例えば、作業車両10が前回の作業時に候補経路r1を目標経路Rとして自動走行及び散布作業を行った場合に、今回の作業において、決定処理部312は、経路情報D1に登録された複数の候補経路r1~r3の中から、候補経路r2又は候補経路r3を選択して目標経路Rに決定する。ここで、今回の作業において決定処理部312が候補経路r2を選択した場合には、次回の作業では、決定処理部312は、候補経路r1又は候補経路r3を選択して目標経路Rに決定する。
【0091】
このように、決定処理部312は、作業ごとに、複数の候補経路の中から、前回の作業時に選択した候補経路とは異なる候補経路をランダムに選択して目標経路Rに決定する。
【0092】
他の実施形態として、決定処理部312は、ユーザー(オペレータ)が選択した候補経路を目標経路Rに決定してもよい。例えば、操作端末20においてオペレータが候補経路r1~r3の中から所望の候補経路を選択すると、決定処理部312は、オペレータが選択した候補経路を目標経路Rに決定する。なお、操作端末20は、候補経路の選択画面に、過去(例えば前回)の目標経路Rの情報(走行実績)を表示させてもよい。これにより、オペレータは、前回の作業など過去の作業において作業車両10が走行した経路を把握することができる。また、決定処理部312は、前回の作業時に選択された候補経路を除いた候補経路の中から、ユーザーの選択操作を受け付けてもよい。また、決定処理部312は、過去の走行実績に基づいて、複数の候補経路のうち走行頻度の低い候補経路を優先的に選択画面に表示させたり、複数の候補経路を走行頻度の低い順に選択画面に表示させたりしてもよい。
【0093】
他の実施形態として、決定処理部312は、圃場Fの表土(土壌)の状態に基づいて選択した候補経路を目標経路Rに決定してもよい。例えば、作業車両10がカメラ(不図示)を備え、決定処理部312は、前回の作業時に当該カメラが撮像した表土の画像に基づいて、今回の作業の候補経路を選択する。例えば、決定処理部312は、前記画像を解析した結果、候補経路r2の表土が痛められている(荒れている)と判断した場合には、今回の作業において、候補経路r1又は候補経路r3を選択して目標経路Rに決定する。また例えば、決定処理部312は、前記画像を解析した結果、候補経路r3の表土が痛められていると判断した場合には、今回の作業において、候補経路r1又は候補経路r2を選択して目標経路Rに決定する。また決定処理部312は、前回の作業時に選択された候補経路の情報と、現在の表土の状態とに基づいて、候補経路を選択して目標経路Rに決定してもよい。上記実施形態に係る作業車両10には、障害物検出装置17及び前記カメラが併設されてもよい。
【0094】
上記のように、本発明の第1候補経路は、前回の作業時に選択された候補経路とは異なる候補経路であってもよいし、ユーザーが選択した候補経路であってもよいし、圃場Fの表土状態に基づいて選択される候補経路であってもよい。
【0095】
なお、決定処理部312は、操作端末20から自動走行を開始する指示(作業開始指示)を取得した場合に、目標経路Rを決定する処理を実行してもよい。
【0096】
転送処理部313は、決定処理部312が決定した目標経路R(
図6参照)の経路データを作業車両10に転送する。作業車両10は、サーバー30から転送される目標経路Rの経路データを記憶部12に記憶する。作業車両10は、測位装置16により作業車両10の現在位置を測位しつつ、目標経路Rに沿って自動走行を行う。
【0097】
ここで、作業車両10は、現在位置が圃場F内に位置している場合に自動走行できるように構成されており、現在位置が圃場F外(公道等)に位置している場合には自動走行できないように構成されている。また、作業車両10は、例えば現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に自動走行できるように構成されている。
【0098】
作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に、オペレータにより操作端末20においてスタートボタンが押されて作業開始指示が与えられると、車両制御装置11によって、自動走行を開始し、散布装置14による散布作業を開始する。すなわち、作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致していることを条件に自動走行を許可する。なお、作業車両10の自動走行を許可する条件は、前記条件に限定されない。
【0099】
車両制御装置11は、サーバー30から取得する目標経路Rに基づいて、作業車両10を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自動走行させる。また、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了すると、作業終了位置Gから圃場Fの入口まで自動走行させてもよい。作業車両10が自動走行している場合、操作端末20は、作業車両10の状態(位置、走行速度、作業状況等)を作業車両10から受信して操作表示部23に表示させることができる。
【0100】
他の実施形態として、サーバー30の制御部31が、前記基準候補経路を生成し、かつ前記基準候補経路に基づいて他の候補経路を生成してもよい。すなわち、すなわち、制御部31は、操作端末20の生成処理部212の機能を備えてもよい。また、他の実施形態として、操作端末20の制御部21が前記基準候補経路を生成し、サーバー30の制御部31が他の候補経路を生成してもよい。
【0101】
他の実施形態として、操作端末20が前記複数の候補経路の経路データを作業車両10に出力する構成の場合、作業車両10の車両制御装置11が、前記複数の候補経路の中から選択される候補経路を目標経路Rとして決定してもよい。すなわち、車両制御装置11は、サーバー30の決定処理部312の機能を備えてもよい。この場合、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、前記複数の候補経路の中から選択される候補経路を目標経路Rとして決定して、決定した目標経路Rに沿って自動走行を開始する。
【0102】
[自動走行処理]
以下、
図10を参照しつつ、作業車両10の車両制御装置11、操作端末20の制御部21、及びサーバー30の制御部31によって実行される前記自動走行処理の一例について説明する。
【0103】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11、制御部21、及び制御部31が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。また、前記自動走行方法は、本発明の経路決定方法を含む。
【0104】
ステップS1において、操作端末20の制御部21は、各種設定情報を登録する。具体的には、制御部21は、オペレータの設定操作に基づいて、作業車両10に関する情報(作業車両情報)と、圃場Fに関する情報(圃場情報)と、作業に関する情報(作業情報)とを設定して登録する。
【0105】
次にステップS2において、制御部21は、前記各設定情報に基づいて、目標経路Rの候補となる候補経路を生成する。例えば、制御部21は、圃場Fにおいて作物Vが配置される位置に基づいて一つの基準候補経路r1を生成し(
図7A~
図7F参照)、基準候補経路r1に対して所定距離(+X1、-X1)だけオフセットすることにより他の候補経路r2,r3を生成する(
図8参照)。制御部21は、生成した複数の候補経路r1~r3の経路データをサーバー30に出力する。
【0106】
次にステップS3において、サーバー30の制御部31は、操作端末20から出力された経路データを取得すると、候補経路r1~r3に関する経路情報D1(
図9参照)と経路データとを記憶部32に記憶する。
【0107】
ステップS4において、制御部31は、複数の候補経路(
図8、
図9参照)の中から選択される候補経路を目標経路Rとして決定する。具体的には、制御部31は、前回の作業時に選択した候補経路とは異なる候補経路を選択して目標経路Rに決定する。また、制御部31は、オペレータが選択した候補経路を目標経路Rに決定してもよい。また、制御部31は、圃場Fの表土状態に基づいて選択した候補経路を目標経路Rに決定してもよい。
【0108】
次にステップS5において、制御部31は、決定した目標経路Rの経路データを作業車両10に転送する。
【0109】
次にステップS6において、作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、オペレータが操作端末20においてスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11が操作端末20から作業開始指示を取得すると(S6:Yes)、処理はステップS7に移行する。車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得するまで待機する(S6:No)。
【0110】
次にステップS7において、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得し、かつサーバー30から転送された経路データを取得すると、当該経路データに応じた目標経路Rに沿って自動走行を開始する。なお、車両制御装置11は、サーバー30から取得した前記経路データを記憶部12に記憶する。これにより、作業車両10は、例えば
図6に示すように、作業開始位置Sから自動走行を開始し、目標経路Rに沿って、作物列Vr1~Vr11の作物Vに薬液を散布しながら作業終了位置Gまで自動走行する。
【0111】
次にステップS8において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10の位置が作業終了位置Gに一致する場合に作業を終了したと判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S8:Yes)、前記自動走行処理は終了する。車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了するまでステップS8の処理を繰り返して自動走行を継続する。
【0112】
なお、ステップS1~S4の処理と、ステップS5~S8の処理とは、独立して実行されてもよい。例えば、自動走行システム1は、作業車両10を導入した初期設定の段階でステップS1~S4の処理を実行する。また、自動走行システム1は、オペレータが作業車両10で作業を行うときにステップS5~S8の処理を実行する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、作業地(例えば圃場F)において複数列に配置された作業対象物(例えば作物V)に対して所定の作業(例えば散布作業)を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両10を走行させる目標経路Rの候補である複数の候補経路を生成し、生成した複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を目標経路Rとして決定する。また、本実施形態に係る自動走行方法(経路決定方法)は、一又は複数のプロセッサーが、作業地(例えば圃場F)において複数列に配置された作業対象物(例えば作物V)に対して所定の作業(例えば散布作業)を行いながら所定の列順序で自動走行する作業車両10を走行させる目標経路Rの候補である複数の候補経路を生成すること(生成処理)と、生成した複数の候補経路の中から選択される第1候補経路を目標経路Rとして決定すること(決定処理)とを実行する。
【0114】
上記の構成によれば、作業車両10を走行させる目標経路Rが、複数の候補経路の中から選択されるため、例えば作業車両10を前回走行した場所とは異なる場所を走行させることができる。このため、作業車両10が作業を行う度に毎回同じ場所を走行することを防ぐことができる。このように、作業車両10の走行場所を固定させず分散させることができるため、圃場Fの表土を痛めることを防ぐことができる。よって、作業車両10が圃場Fの表土を痛めることなく自動走行しながら作業を行うことが可能な目標経路Rを生成することができる。
【0115】
また、上記の構成によれば、一つの基準候補経路r1を生成することにより、基準候補経路r1を利用して一又は複数の候補経路を生成することができるため、自動走行システム1における経路生成の処理負荷の増大を防ぐことができる。なお、自動走行システム1は、基準候補経路r1のみを生成しておき、作業開始指示を取得した時点で他の候補経路を生成して目標経路Rを決定してもよい。
【0116】
また、自動走行システム1は、基準候補経路r1に対して許容範囲内のオフセット量に基づいて他の候補経路r2,r3を生成するため、作業車両10の走行及び作業の安全性を維持して走行経路を異ならせることができる。
【0117】
他の実施形態として、サーバー30は、基準候補経路r1に対するオフセット量を決定し、決定したオフセット量の情報を作業車両10に出力してもよい。この場合、作業車両10は、サーバー30から前記オフセット量を取得すると、基準候補経路r1に対して前記オフセット量を加えた経路を目標経路Rに設定して自動走行を行う。サーバー30は、乱数により前記オフセット量を決定してもよいし、予め設定された複数のオフセット量の中から前回の作業時とは異なるオフセット量を選択してもよい。これにより、サーバー30又は作業車両10は、記憶する経路データのデータ量を削減することができる。
【0118】
上述の実施形態では、操作端末20及びサーバー30が本発明に係る経路決定システムに相当するが、本発明に係る経路決定システムは、操作端末20単体又はサーバー30単体で構成されてもよい。また、本発明に係る経路決定システムは、操作端末20、サーバー30、及び作業車両10のうち一又は複数の構成要素で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
20 :操作端末
30 :サーバー
40 :基地局
50 :衛星
211 :設定処理部
212 :生成処理部
213 :出力処理部
311 :取得処理部
312 :決定処理部
313 :転送処理部
E1、E2:端点
F :圃場(作業地)
R :目標経路
V :作物(作業対象物)
Vr :作物列
r1 :基準候補経路、候補経路(第1候補経路)
r2 :候補経路(第1候補経路)
r3 :候補経路(第1候補経路)