(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183966
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】散布機
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20221206BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A01M7/00 E
B05B17/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091532
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 洋史
(72)【発明者】
【氏名】伊部 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】平澤 一暁
【テーマコード(参考)】
2B121
4D074
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CB02
2B121CB24
2B121CB31
2B121CB35
2B121CB45
2B121CB47
2B121CB61
2B121CB70
2B121CC01
2B121EA21
4D074AA05
4D074BB02
4D074CC04
4D074CC12
4D074CC24
4D074CC34
4D074CC38
4D074CC55
4D074CC57
(57)【要約】
【課題】散布物の散布量のムラの発生を抑制しやすい散布機を提供する。
【解決手段】散布機1は、機体10と、支持フレーム3と、散布部41と、を備える。支持フレーム3は、左右方向D2に沿って長さを有する横フレーム3C、及びそれぞれ上下方向D1に沿って長さを有し横フレーム3Cの両端部から下方に突出する一対の縦フレーム3L,3Rを含む。散布部41は、支持フレーム3に支持されており、散布物の散布を行う。支持フレーム3は、一対の縦フレーム3L,3Rと横フレーム3Cとの相対的な位置関係を維持した状態で、横フレーム3Cに設けられた支点部31を通り前後方向D3に沿った回転軸Ax1を中心として回転可能に機体10に支持されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
左右方向に沿って長さを有する横フレーム、及びそれぞれ上下方向に沿って長さを有し前記横フレームの両端部から下方に突出する一対の縦フレームを含む支持フレームと、
前記支持フレームに支持されており、散布物の散布を行う散布部と、を備え、
前記支持フレームは、前記一対の縦フレームと前記横フレームとの相対的な位置関係を維持した状態で、前記横フレームに設けられた支点部を通り前後方向に沿った回転軸を中心として回転可能に前記機体に支持されている、
散布機。
【請求項2】
前記支点部は、前記横フレームのうち前記一対の縦フレームから等距離となる位置に配置されている、
請求項1に記載の散布機。
【請求項3】
前記散布部から吐出される前記散布物を搬送する気流を発生する気流発生部を更に備える、
請求項1又は2に記載の散布機。
【請求項4】
前記気流発生部は、
前記上下方向に沿って空気を流す流路を形成するダクトと、
前記ダクトに前記空気を流す送風機と、を有し、
前記ダクトに形成された吹出孔から吹き出す前記空気が前記気流を形成する、
請求項3に記載の散布機。
【請求項5】
前記機体は走行部を有し、
前記散布部は、前記上下方向における前記走行部の中心よりも高い位置に配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の散布機。
【請求項6】
前記回転軸を中心として前記支持フレームを前記機体に対して回転させる回転力を発生する回転駆動装置を更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の散布機。
【請求項7】
前記回転駆動装置は、前記機体の姿勢に応じて前記支持フレームを回転させる、
請求項6に記載の散布機。
【請求項8】
前記支持フレームは、前記一対の縦フレームの間に前記散布物が散布される散布対象物を通過させる空間を形成する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の散布機。
【請求項9】
前記散布部である第1散布部に対して前記前後方向に並ぶように配置され、前記散布物の散布を行う第2散布部を更に備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布物の散布を行う散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、クローラ走行部と、左車体と、右車体と、エンジンと、散布部(薬剤噴射部)と、を備える作業機械(農作業用車両)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る作業機械では、クローラ走行部は、左右一対で配置され、散布対象物である植物を左右方向で挟むようにして走行する。左車体は、主として左側のクローラ走行部に支持されている。右車体は、主として右側のクローラ走行部に支持されている。エンジンは、左車体側に配置されている。
【0003】
関連技術に係る作業機械では、散布部は、左車体と右車体とのそれぞれに設けられている。各散布部は、右側及び左側の両方に薬剤を散布する。これにより、関連技術に係る作業機械は、左右一対のクローラ走行部間を通過する植物と、作業機械の左側に位置する植物と、作業機械の右側に位置する植物とに対して、同時に薬剤を散布できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術の構成では、例えば地面が傾斜している場合、左車体及び右車体が左右に傾くことがある。この場合、地面から鉛直方向にまっすぐ延びる植物においては、その上部と下部とで散布部からの距離が異なり、散布物の散布量にムラが生じる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、散布物の散布量のムラの発生を抑制しやすい散布機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る散布機は、機体と、支持フレームと、散布部と、を備える。前記支持フレームは、左右方向に沿って長さを有する横フレーム、及びそれぞれ上下方向に沿って長さを有し前記横フレームの両端部から下方に突出する一対の縦フレームを含む。前記散布部は、前記支持フレームに支持されており、散布物の散布を行う。前記支持フレームは、前記一対の縦フレームと前記横フレームとの相対的な位置関係を維持した状態で、前記横フレームに設けられた支点部を通り前後方向に沿った回転軸を中心として回転可能に前記機体に支持されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、散布物の散布量のムラの発生を抑制しやすい散布機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る散布機を左前方側から見た外観図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る散布機を背面側から見た背面の外観図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る散布機が使用される作物列の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る散布機を用いた自動走行システムの全体構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る散布機を左側から見た左側面の外観図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る散布機を右側から見た右側面の外観図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る散布機を上方から見た上面の外観図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る散布機を背面側から見た背面の外観図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る散布機を斜め後方から見た状態を示す概略図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る散布機の縦フレームから後方の部分についての断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る散布機について横傾斜の斜面を走行中の状態を背面側から見た背面の外観図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る散布機を右側から見た右側面の外観図である。
【
図13】
図13は、実施形態3に係る散布機を斜め後方から見た要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0011】
(実施形態1)
[1]全体構成
まず、本実施形態に係る散布機1の全体構成について、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態では、散布機1は、圃場F1で育成されている作物V1(
図2参照)に対して、例えば、薬液、水又は肥料等の散布物を散布する散布作業を行う。この散布機1は、圃場F1等の作業対象領域内で各種の作業を行う「作業機械」の一例である。
【0012】
つまり、散布機1は、作業として、例えば薬液、水又は肥料等の散布物を散布する散布作業を実行可能な作業機械である。本開示でいう「作業機械」には、散布機の他、例えば、トラクタ、田植機、噴霧機、播種機、移植機及びコンバイン等の作業車両が含まれる。つまり、作業機械は作業車両を含む。作業機械は「車両」に限らず、例えば、薬液、水又は肥料等の散布用のドローン又はマルチコプタ等の作業飛翔体等であってもよい。さらに、本開示でいう「作業機械」は農業機械(農機)に限らず、例えば、建設機械(建機)等であってもよい。
【0013】
また、本開示でいう「圃場」は、作業機械である散布機1が移動しながら、例えば散布作業等の各種の作業を行う作業対象領域の一例であって、農産物を育成する果樹園、牧草地、田んぼ及び畑等を含む。この場合、圃場F1で育成される作物V1は農産物である。さらに、植木畑で植木を育成している場合には植木畑が圃場F1となり、林業のように森林にて木材となる樹木を育成する場合には森林が圃場F1となる。この場合、圃場F1で育成される作物V1は植木又は樹木等である。ただし、作業機械が作業を行う作業対象領域は、圃場F1に限らず、圃場F1以外であってもよい。例えば、作業機械が建設機械であれば、建設機械が作業を行う現場が、作業対象領域となる。
【0014】
本実施形態では一例として、散布機1は、葡萄園又は林檎園等の果樹園である圃場F1を移動しつつ、圃場F1で育成されている作物V1に対して薬液を散布する車両であることとする。この場合、薬液は散布物の一例である。また、作物V1は、散布物(薬液)が散布される散布対象物の一例であって、例えば葡萄の果樹である。散布対象物である作物V1は、作業機械としての散布機1による作業の対象となる作業対象物の一例でもある。ここでいう散布物としての「薬液」は、農業の効率化又は農作物の保存等に使用される農薬であって、除草剤、殺菌剤、防黴剤、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤、植物V1の生長促進剤及び発芽抑制剤等を含む。
【0015】
作物V1は、圃場F1において所定の間隔で複数列に配置されている。具体的には、
図3に示すように、複数の作物V1は、平面視における縦方向A1に直線状に並べて植えられている。縦方向A1に直線状に並ぶ複数の作物V1は、作物列Vr1を構成する。
図3には、それぞれ縦方向A1に並ぶ6つの作物V1を含む3つの作物列Vr1を例示している。各作物列Vr1は幅方向A2に所定ピッチW1で配置されている。これにより、隣り合う作物列Vr1間には、作物列Vr1間の間隔に相当する幅W2(<W1)を有し、縦方向A1に沿って延びる作業通路が形成される。散布機1は、この作業通路を通って縦方向A1に移動(走行)しつつ、作物V1に対して散布物(薬液)の散布を行う。
【0016】
詳しくは後述するが、圃場F1を走行する散布機1は、門型の形状を有する機体10を備えている。つまり、機体10は、左右方向D2に並べて配置される第1ブロック10L及び第2ブロック10Rと、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rの上端部同士を連結する連結部10Cと、を有している。これにより、機体10は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて、空間Sp1の左方、右方及び上方の三方を囲む門型の形状を構成する。つまり、機体10の内側には、前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0017】
散布機1は、
図2に示すように、門型に形成された機体10にて1つの作物列Vr1を跨いた姿勢で走行しつつ、この作物列Vr1の作物V1、及びこの作物列Vr1に隣接する作物列Vr1の作物V1に対して散布物(薬液)を散布することが可能である。言い換えれば、散布機1は、門型に形成された機体10の内側の空間Sp1に、散布対象物(作業対象物)である作物V1を通過させるようにして走行可能である。つまり、
図2に例示すように、左右方向D2に並ぶ3つの作物列Vr11,Vr12,Vr13がある場合、散布機1は、これら3つの作物列Vr11,Vr12,Vr13のうちの任意の作業列Vr1を機体10で跨いで走行可能である。
【0018】
ここで、機体10が中央の作物列Vr12を跨ぐとすれば、第1ブロック10Lが左端の作物列Vr11と作物列Vr12との間の作業通路を走行し、第2ブロック10Rが右端の作物列Vr13と作物列Vr12との間の作業通路を走行する。そして、散布機1は、作物列Vr11の作物V11、作物列Vr12の作物V12、及び作物列Vr13の作物V13に対して、同時に散布物(薬液)を散布可能である。このように、本実施形態に係る散布機1は、走行中において、3列分の散布対象物(作物V1)に対して同時に散布物(薬液)を散布可能であるので、1列ずつ散布する構成に比べて、散布作業の効率がよい。
【0019】
さらに、本実施形態では一例として、散布機1は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)によらず、自動運転により動作する無人機である。そのため、散布機1は、
図4に示すように、操作端末201、サーバ202、基地局203及び衛星204等と共に、自動走行システム200を構成する。言い換えれば、自動走行システム200は、散布機1と、操作端末201と、サーバ202と、基地局203と、衛星204とを含んでいる。ただし、操作端末201、サーバ202、基地局203及び衛星204のうちの少なくとも一つは、自動走行システム200の構成要素に含まれなくてもよく、例えば、自動走行システム200は衛星204を含まなくてもよい。
【0020】
散布機1、操作端末201及びサーバ202は、相互に通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信(電波又は光を媒体とする通信)の適宜の通信方式により、直接的、又は通信網(ネットワーク)若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。例えば、散布機1及び操作端末201は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆電話回線、携帯電話回線網、パケット回線網又は無線LAN等を介して通信可能である。また、散布機1及び操作端末201のそれぞれと、サーバ202ともまた、インターネット等を介して通信可能である。
【0021】
衛星204は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局203は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局203は、散布機1の現在位置等を算出するための補正情報を散布機1に送信する。
【0022】
本実施形態に係る散布機1は、機体10の現在位置(緯度、経度及び高度等)、及び現在方位等を検出する測位装置2を備えている。測位装置2は、衛星204から送信されるGNSS信号を用いて、機体10の現在位置及び現在方位等を特定(算出)する測位処理を実行する。測位装置2は、例えば、2台の受信機(基地局203及びアンテナ21)が受信する測位情報(GNSS信号等)と、基地局203で生成される補正情報と、に基づいて測位を行うRTK(Real Time Kinematic)測位等の比較的高精度な測位方式を採用する。
【0023】
操作端末201は、例えば、タブレット端末又はスマートフォン等の情報処理装置である。操作端末201は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス又はキーボードのような操作部と、を備える。オペレータは、表示部に表示される操作画面において、操作部を操作して各種情報を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、操作部を操作して散布機1に対する作業開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。
【0024】
サーバ202は、サーバ装置等の情報処理装置である。サーバ202は、散布機1を自動走行させる目標経路等の情報を、散布機1に送信する。
【0025】
そして、散布機1は、予め設定された目標経路に沿って自動走行(自律走行)することが可能である。例えば、散布機1は、作業開始位置から作業終了位置まで、複数の作業経路及び移動経路を含む目標経路に沿って自動走行する。複数の作業経路は、それぞれ散布機1が作業対象物(散布対象物)である作物V1に対して作業(散布作業)を行う直線状の経路であり、移動経路は、散布機1が散布作業を行わないで作物列Vr1間を移動する経路であって旋回経路及び直進経路を含み得る。
【0026】
また、散布機1は、所定の列順序で自動走行を行う。
図2の例であれば、散布機1は、作物列Vr11を跨いで走行し、次に作物列Vr12を跨いで走行し、次に作物列Vr13を跨いで走行する。このように、散布機1は、予め設定された作物列Vr1の順番に応じて自動走行を行う。散布機1は、作物列Vr1の配列順に1列ごとに走行してもよいし、複数列おきに走行してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、説明の便宜上、
図1に示すように、散布機1が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。さらに、平面視において散布機1の中心点から見た方向を基準として、左右方向D2及び前後方向D3を定義する。つまり、散布機1の前進時における散布機1の進行方向が前後方向D3の前方となり、散布機1の後退時における散布機1の進行方向が前後方向D3の後方となる。ただし、これらの方向は、散布機1の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0028】
また、本開示でいう「平行」とは、一平面上の二直線であればどこまで延長しても交わらない場合、つまり二者間の角度が厳密に0度(又は180度)である場合に加えて、二者間の角度が0度に対して数度(例えば10度未満)程度の誤差範囲に収まる関係にあることをいう。同様に、本開示でいう「直交」とは、二者間の角度が厳密に90度で交わる場合に加えて、二者間の角度が90度に対して数度(例えば10度未満)程度の誤差範囲に収まる関係にあることをいう。
【0029】
[2]散布機の詳細
次に、散布機1の構成について、
図1、
図2、
図5、
図6及び
図7を参照してより詳細に説明する。
図1は、散布機1を左前方側から見た外観図であり、
図2は、散布機1を背面側(後方)から見た背面の外観図である。
図5は、散布機1を左側から見た左側面の外観図であり、
図6は、散布機1を右側から見た右側面の外観図であり、
図7は、散布機1を上方から見た上面の外観図である。
【0030】
散布機1は、機体10と、測位装置2と、支持フレーム3と、散布装置4と、を備えている。本実施形態では、散布機1は、気流発生部5、ユーザインタフェース61(
図6参照)、障害物検出装置62、動力源63、タンク64及び表示器65等を更に備えている。また、散布機1は、制御装置、通信端末、燃料タンク及びバッテリ等を更に備える。本実施形態では、機体10及び支持フレーム3等の散布機1の構造体は、基本的に金属製であって、必要な強度及び対候性等に応じて材質が選択される。ただし、散布機1の構造体は金属製に限らず、例えば、樹脂又は木材等が適宜用いられてもよい。
【0031】
機体10は、散布機1の本体であって、測位装置2及び支持フレーム3等の散布機1の殆どの構成要素が支持される。機体10は、フレーム101(
図2参照)と、カバー102と、を有している。フレーム101は、機体10の骨格を構成する部材であって、例えば動力源63及びタンク64等の重量物を支持する。カバー102は、機体10の外郭を構成する部材であって、フレーム101及びフレーム101に搭載された部材の少なくとも一部を覆うようにフレーム101に取り付けられている。機体10の後面(背面)及び右側面の一部では、フレーム101がカバー102に覆われておらずフレーム101が露出する。カバー102は、複数の部分に分割されており、これら複数の部分がフレーム101から個別に取外可能に構成されている。そのため、カバー102は、例えば、動力源63等の一部の装置(部材)に対応する部分のみ取り外すことが可能であって、これにより動力源63等の一部の装置(部材)を露出させることができる。
【0032】
機体10は、上述したように、左右方向D2に並べて配置される第1ブロック10L及び第2ブロック10Rを有している。第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとは、左右方向D2において、一定値以上の間隔をあけた状態で互いに対向する。本実施形態では一例として、第1ブロック10Lが左側に位置し、第2ブロック10Rが右側に位置している。そのため、機体10の左側部分は第1ブロック10Lによって構成され、機体10の右側部分は第2ブロック10Rによって構成される。さらに、機体10は、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとを連結する連結部10Cを有している。正面視において(前方から見て)、連結部10Cは左右方向D2に沿って長さを有しており、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rはそれぞれ上下方向D1に沿って長さを有している。
【0033】
ここで、連結部10Cは、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの上端部同士を連結しているので、言い換えれば、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ連結部10Cの(左右方向D2の)両端部から下方に突出する。これにより、機体10は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて、前後方向D3の両側に加えて下方に開放された門型の形状を構成する。そして、機体10の内側には、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて三方が囲まれ、かつ前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0034】
要するに、機体10は、
図2に示すように、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの間に、散布装置4(作業部)による作業(散布作業)の対象となる作物V1(作業対象物)を通過させる空間Sp1を形成する。具体的に、散布対象物である作物V1の標準的な大きさを基準に、それ以上の高さ及び幅の空間Sp1を形成するように、機体10の各部の寸法が設定される。そのため、標準的な大きさの作物V1であれば、機体10は、作物V1を跨いだ状態で、作物V1が機体10に接触しないように所定値以上の間隔を空けた状態で、空間Sp1にて作物V1の通過を許容することができる。空間Sp1を作物V1が通過中にあっては、第1ブロック10Lは作物V1の左方に位置し、第2ブロック10Rは作物V1の右方に位置し、連結部10Cは作物V1の上方に位置する。
【0035】
より詳細には、本実施形態では、機体10は、左右方向D2において略対称に構成されている。第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、側面視において略同サイズかつ同形状の矩形状に形成されている。第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ上下方向D1、左右方向D2及び前後方向D3のうちで左右方向D2の寸法が最小となる、左右方向D2に扁平な形状を有している。また、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ上下方向D1において中央部より上方の部分が、上端側ほど左右方向D2の寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。連結部10Cは、平面視において、左右方向D2よりも前後方向D3の寸法が大きくなるような矩形状に形成されている。連結部10Cは、上下方向D1、左右方向D2及び前後方向D3のうちで上下方向D1の寸法が最小となる、上下方向D1に扁平な形状を有している。
【0036】
このように、機体10は、大まかには、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cの3つの部分(ブロック)に分けることができる。そして、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cの各々が、フレーム101及びカバー102を有している。言い換えれば、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rの各々が、フレーム101及びカバー102を有している。さらに、測位装置2及び支持フレーム3等の散布機1の殆どの構成要素は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cに分散して設けられている。
【0037】
また、機体10は、走行部11を有している。走行部11は、散布機1を走行させる走行装置(車体)であって、機体10の下部に設けられている。走行部11により、機体10は地面を走行(旋回を含む)することで、圃場F1内を左右方向D2及び前後方向D3に移動可能となる。このような走行部11が機体10に設けられていることで、散布機1は、圃場F1内を移動しながら、作業(散布作業)を行うことが可能である。
【0038】
走行部11は、クローラ111を含むクローラ式の走行装置である。また、走行部11は、クローラ111を駆動するモータ112を備えている。つまり、走行部11は、モータ112にてクローラ111を駆動することにより、散布機1を走行させることができる。本実施形態では一例として、モータ112は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)であって、油圧ポンプからの作動油が供給されることで、クローラ111を駆動する。この構成によれば、圃場F1の路面状況が荒れているような場合でも、機体10は比較的安定して走行することが可能である。
【0039】
ここで、走行部11は、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rのそれぞれの下部に設けられている。つまり、機体10は、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとのそれぞれに走行部11を有する。言い換えれば、機体10は、左右一対の走行部11(クローラ111)を有している。第1ブロック10L側の走行部11及び第2ブロック10R側の走行部11は、左右方向D2において、空間Sp1を介して対向する。このように、一対の走行部11が空間Sp1の分だけ左右方向D2に離れて配置されていることで、散布機1は、左右方向D2のいずれかが低くなるような横傾斜の斜面等を含む様々な圃場F1の路面状況において、比較的安定した姿勢で走行することが可能である。
【0040】
これら一対の走行部11は、静油圧式無段変速装置による独立変速が可能な状態で動力源63からの動力により駆動される。そのため、機体10は、一対の走行部11(クローラ111)が前進方向に等速駆動されることにより前進方向に直進する前進状態になり、一対の走行部11が後進方向に等速駆動されることにより後進方向に直進する後進状態になる。また、機体10は、一対の走行部11が前進方向に不等速駆動されることにより前進しながら旋回する前進旋回状態になり、一対の走行部11が後進方向に不等速駆動されることで後進しながら旋回する後進旋回状態になる。また、機体10は、一対の走行部11のいずれか一方が駆動停止された状態で他方が駆動されることによりピボット旋回(信地旋回)状態になり、一対の走行部11が前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回(超信地旋回)状態になる。また、機体10は、一対の走行部11が駆動停止されることで走行停止状態になる。
【0041】
また、第1ブロック10Lには、動力源63等が搭載され、第2ブロック10Rには、タンク64等が搭載される。このように、機体10の第1ブロック10L及び第2ブロック10Rに、散布機1の構成部品が振り分けて配置されることにより、散布機1は、左右方向D2のバランスの均衡化及び低重心化が図られている。その結果、散布機1は、圃場F1の斜面等を安定して走行することができる。各構成部品の振り分けについては「[4]動力源等の配置」の欄で詳しく説明する。
【0042】
測位装置2は、上述したように、機体10の現在位置及び現在方位等を検出する装置である。測位装置2は、少なくともアンテナ21を有している。アンテナ21は、衛星204から送信されるGNSS信号等を受信する。つまり、アンテナ21は、機体10の位置を特定するための位置特定用アンテナを含む。ここで、アンテナ21は、衛星204からの信号(GNSS信号)を受信しやすくなるように、機体10の上面(天面)上に配置されている。言い換えれば、アンテナ21は、機体10のうち最も高い位置よりも更に高い位置に配置されている。さらに、測位装置2は、機体10の姿勢を検出する姿勢検出部等を含んでいる。
【0043】
本実施形態では、測位装置2は、第1アンテナであるアンテナ21とは別に、第2アンテナであるアンテナ22を更に有している。測位装置2は、これら2つのアンテナ21,22のそれぞれでGNSS信号等を受信する。ここで、アンテナ22(第2アンテナ)は、アンテナ21(第1アンテナ)に対して前後方向D3に並ぶように配置される。さらに、アンテナ22(第2アンテナ)は、後述する回転軸Ax1(
図1参照)を延長した仮想直線L1(
図7参照)上に位置する。要するに、測位装置2における2つのアンテナ21,22は、いずれも機体10の上面(天面)上に配置されており、前後方向D3に沿った仮想直線L1上に位置するように並べて配置されている。これにより、測位装置2は、アンテナ21,22のそれぞれで信号(GNSS信号等)の送受信が可能である。特に、アンテナ21,22が位置特定用アンテナである場合には、機体10の前部と後部とのそれぞれにおいて、現在位置を特定できるので、機体10の向き(現在方位)も含めて特定することが可能となる。
【0044】
支持フレーム3は、機体10の前後方向D3の一端部に取り付けられ、後述する散布装置4の散布部41を支持する部材である。本実施形態では、支持フレーム3は、機体10の後端部に取り付けられている。支持フレーム3は、機体10と同様に、門型の形状を有し、背面視において(後方から見て)、機体10と重なる位置に配置されている。つまり、支持フレーム3は、左右方向D2に並べて配置される縦フレーム3L(第1縦フレーム)及び縦フレーム3R(第2縦フレーム)と、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの上端部同士を連結する横フレーム3Cと、を有している。これにより、支持フレーム3は、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて、空間Sp1の左方、右方及び上方の三方を囲む門型の形状を構成する。
【0045】
具体的に、支持フレーム3は、左右方向D2に並べて配置される縦フレーム3L及び縦フレーム3Rを有している。縦フレーム3Lと縦フレーム3Rとは、左右方向D2において、一定値以上の間隔をあけた状態で互いに対向する。本実施形態では一例として、縦フレーム3Lが左側に位置し、縦フレーム3Rが右側に位置している。そのため、縦フレーム3Lは機体10の第1ブロック10Lの後方に位置し、縦フレーム3Rは機体10の第2ブロック10Rの後方に位置する。そして、背面視において(後方から見て)、横フレーム3Cは左右方向D2に沿って長さを有しており、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rはそれぞれ上下方向D1に沿って長さを有している。
【0046】
ここで、横フレーム3Cは、縦フレーム3Lと縦フレーム3Rとの上端部同士を連結しているので、言い換えれば、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cの(左右方向D2の)両端部から下方に突出する。このように、支持フレーム3は、左右方向D2に沿って長さを有する横フレーム3Cと、それぞれ上下方向D1に沿って長さを有し、横フレーム3Cの両端部から下方に突出する一対の縦フレーム3L,3Rを含んでいる。これにより、支持フレーム3は、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて、前後方向D3の両側に加えて下方に開放された門型の形状を構成する。そして、支持フレーム3の内側には、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて三方が囲まれ、かつ前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0047】
要するに、支持フレーム3は、
図2に示すように、一対の縦フレーム3L,3Rの間に散布装置4(作業部)による作業(散布作業)の対象となる作物V1(作業対象物、散布対象物)を通過させる空間Sp1を形成する。具体的に、散布対象物である作物V1の標準的な大きさを基準に、それ以上の高さ及び幅の空間Sp1を形成するように、支持フレーム3の各部の寸法が設定される。そのため、標準的な大きさの作物V1であれば、支持フレーム3は、作物V1を跨いだ状態で、作物V1が支持フレーム3に接触しないように所定値以上の間隔を空けた状態で、空間Sp1にて作物V1の通過を許容することができる。空間Sp1を作物V1が通過中にあっては、縦フレーム3Lは作物V1の左方に位置し、縦フレーム3Rは作物V1の右方に位置し、横フレーム3Cは作物V1の上方に位置する。
【0048】
より詳細には、本実施形態では、支持フレーム3は、左右方向D2において略対称に構成されている。縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、断面が円形状となる円筒状を有している。本実施形態では一例として、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ円筒状の部材が2本ずつ並設されて構成されている。横フレーム3Cは、断面が矩形状となる角筒状を有している。ここで、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cに対して、連結金具、筋交金具又は溶接等の適宜の固定手段によって強固に固定されている。そのため、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cに対して直交した状態を維持する。言い換えれば、背面視において、縦フレーム3Lと横フレーム3Cとの間の角部、及び縦フレーム3Rと横フレーム3Cとの間の角部は、それぞれ直角となる。
【0049】
ところで、本実施形態では、支持フレーム3は、一対の縦フレーム3L,3Rと横フレーム3Cとの相対的な位置関係を維持した状態で、回転軸Ax1を中心として回転可能に機体10に支持されている。回転軸Ax1は、横フレーム3Cに設けられた支点部31を通り前後方向D3に沿った軸である。つまり、作業部(散布部41)を支持する支持フレーム3は、前後方向D3に沿った回転軸Ax1を中心として回転可能に機体10に支持されている。ここで、本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。ただし、回転軸Ax1は、例えば軸ピンのように実体を伴う部材であってもよい。支持フレーム3を回転可能に支持するための構成について詳しくは、「[3]支持フレーム周辺の構成」の欄で説明する。
【0050】
散布装置4は、散布部41等を有している。散布装置4は、タンク64に貯留されている散布物としての薬液を、散布対象物である作物V1に散布する散布作業を実行する。散布部41は、支持フレーム3に支持されており、散布物の散布を行う部位である。本実施形態では一例として、散布部41は、実際に散布物(薬液)の出口となる散布用ノズルである。散布装置4は、散布用ノズルからなる散布部41を複数(本実施形態では一例として12個)有している。散布装置4について詳しくは、「[3]支持フレーム周辺の構成」の欄で説明する。
【0051】
気流発生部5は、散布部41から吐出される散布物(薬液)を搬送する気流を発生する。気流発生部5は、散布部41と共に支持フレーム3に支持されている。すなわち、本実施形態に係る散布機1は、気流発生部5で発生する気流を利用して散布物(薬液)を散布する、エアアシスト方式の散布機である。これにより、散布機1は、散布部41から比較的離れた位置にある散布対象物(作物V1)に対しても、効率的に散布物(薬液)を散布することが可能である。気流発生部5について詳しくは、「[3]支持フレーム周辺の構成」の欄で説明する。
【0052】
ユーザインタフェース61は、ユーザに対する情報の出力と操作の受け付けとの少なくとも一方を行う装置である。ここでは、ユーザインタフェース61は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部611と、操作を受け付けるタッチパネル、つまみ又は押釦スイッチのような操作部612と、を有する。ユーザの一例であるオペレータは、表示部611に表示される操作画面に従って、操作部612を操作して各種設定を行うことが可能である。具体的に、オペレータは、ユーザインタフェース61の操作部612を操作して、散布装置4の動作条件等の設定を行う。散布装置4の動作条件の一例としては、散布部41から散布物を散布する際の圧力(噴射圧)及び流量等がある。
【0053】
障害物検出装置62は、第1センサ621と、第2センサ622と、第3センサ623と、第4センサ624と、を備えている。第1センサ621~第4センサ624は、いずれも機体10の前方に向けて配置されている。第1センサ621は機体10の上面の左前端部、第2センサ622は機体10の上面の右前端部、第3センサ623は第1ブロック10Lの前面、第4センサ624は第2ブロック10Rの前面に、それぞれ配置される。また、障害物検出装置62は、第5センサ625(
図5参照)と、第6センサ626(
図6参照)と、を更に備えている。第5センサ625及び第6センサ626は、いずれも機体10の後方に向けて配置されている。第5センサ625は縦フレーム3L、第6センサ626は縦フレーム3Rに取り付けられている。
【0054】
第1センサ621~第6センサ626の各々は、例えば、イメージセンサ(カメラ)、ソナーセンサ、レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、機体10の周辺状況を検知する。本実施形態では一例として、第1センサ621~第6センサ626の各々は、光又は音が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、測定範囲の各測距点(測定対象物)までの距離を測定する3次元センサである。機体10の周辺状況には、例えば、機体10の進行方向の前方に存在する物体(障害物等)の有無、及び物体の位置(距離及び方位)等が含まれる。
【0055】
また、障害物検出装置62は、前方接触センサ627と、後方接触センサ628と、を更に備えている。前方接触センサ627は、機体10の前方側に左右一対配置され、後方接触センサ628は、機体10の後方側に左右一対配置されている。前方接触センサ627及び後方接触センサ628の各々は、障害物が接触した場合に障害物を検出する。各センサは、障害物を検出した場合に検出信号を制御装置に送信する。
【0056】
動力源63は、少なくとも走行部11に動力を供給する駆動源である。動力源63は、例えばディーゼルエンジン等のエンジンを有する。動力源63は、油圧ポンプを駆動し、走行部11のモータ112等に油圧ポンプから作動油を供給させることで、走行部11等を駆動する。
【0057】
タンク64は、薬液等の散布物を貯留する。タンク64に貯留されている散布物は、散布装置4に供給され、散布装置4の散布部41から散布される。タンク64には、外部から散布物である薬液を補充可能である。タンク64の容量は、一例として200L程度である。
【0058】
表示器65は、機体10の上面に配置されている。表示器65は、一例として上下方向D1に長さを有する円柱状に形成されている。表示器65は、散布機1の動作状態(走行状態及び散布作業の実行状態等)に応じて点灯状態が変化する。これにより、散布機1の周囲からでも散布機1の動作状態が視認可能となる。
【0059】
また、制御装置は、自動走行制御部、エンジン制御部、静油圧式無段変速装置に関する制御を行うHST(Hydro-Static Transmission)制御部、及び作業装置制御部等を含んでいる。自動走行制御部は、測位装置2から取得する測位情報などに基づいて機体10を圃場F1の目標経路に従って自動走行させる。エンジン制御部はエンジンに関する制御を行う。HST制御部は静油圧式無段変速装置に関する制御を行う。作業装置制御部は、散布装置4等の作業装置に関する制御を行う。各制御部は、マイクロコントローラ等が搭載された電子制御ユニット、マイクロコントローラの不揮発性メモリに記憶された各種の情報及び制御プログラムなどによって構築されている。
【0060】
通信端末は、散布機1を有線又は無線で通信網に接続し、通信網を介して操作端末201、サーバ202等の外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インタフェースである。測位装置2、制御装置及び通信装置等の電子機器は、バッテリに接続されており、動力源63の停止中も動作可能である。
【0061】
[3]支持フレーム周辺の構成
次に、本実施形態に係る散布機1の支持フレーム3の周辺となるリアセクションの構成について、
図8~
図11を参照して説明する。
【0062】
図8は、散布機1を背面側(後方)から見た背面の外観図である。
図9は、散布機1を斜め後方から見た状態を示す概略図であって、吹出内には一部拡大図を示している。
図10は、縦フレーム3Rから後方の部分についての断面図であって、
図8のB1-B1線断面に相当する。
図11は、横傾斜の斜面を走行中の散布機1を背面側(後方)から見た背面の外観図である。
【0063】
散布装置4は、散布用ノズルからなる散布部41に加えて、散布管42、ポンプ43(
図6参照)、バルブ44(
図6参照)及び散布用配管等を有している。
【0064】
散布部41は、作業(散布作業)を実行する作業部の一例であり、支持フレーム3に支持される。支持フレーム3は機体10に支持されるので、散布部41(作業部)は機体10に間接的に支持されることになる。本実施形態では、散布部41は、散布管42に取り付けられている。散布管42は、散布用配管により、バルブ44を介してポンプ43に接続されている。ポンプ43は、タンク64に貯留されている散布物(薬液)を散布管42に圧送する。バルブ44は、電磁バルブ等の電子制御式のバルブユニットであって、散布物を散布する際の圧力(噴霧圧)及び散布パターン等を変更する。これにより、タンク64内の薬液は、ポンプ43にてバルブ44及び散布管42を介して散布部41へと供給され、散布部41から散布される。ここで、散布用ノズルである散布部41からは霧状の薬液が吐出(噴霧)される。
【0065】
より詳細には、
図8及び
図9に示すように、散布管42は、上下方向D1に長さを有する配管であって、支持フレーム3の縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に対して2本ずつ取り付けられている。つまり、本実施形態では、散布装置4は計4本の散布管42を有している。縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に取り付けられる2本(一対)の散布管42は、左右方向D2に並べて配置されている。各散布管42は、その上端部から注入される散布物としての薬液を、菅内を通して下方に流しつつ、3つの散布部41から吐出させる。各散布管42には、散布部41が3つずつ取り付けられており、これにより散布装置4は計12個の散布部41を有している。
【0066】
各散布部41は、対応する散布管42に、上下方向D1に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布部41は、隣り合う散布部41との間隔及び散布管42に対する高さ位置を散布対象物(作物V1)に応じて変更することができる。また、各散布部41は、機体10に対する上下方向D1及び左右方向D2の位置、並びに向き(角度)を散布対象物に応じて変更可能に取り付けられている。ただし、散布装置4において、各散布管42に設けられる散布部41の個数等は、散布対象物(作物V1)の種類、又は各散布管42の長さ等に応じて適宜変更が可能である。
【0067】
また、気流発生部5は、ダクト51と、送風機52と、を有している。ダクト51は、上下方向D1に沿って空気を流す流路を形成する。送風機52は、ダクト51に空気を流す。気流発生部5は、ダクト51に形成された吹出孔511(
図9参照)から吹き出す空気が気流を形成する。要するに、気流発生部5は、送風機52がダクト51に送り込む空気をダクト51内の流路を通して吹出孔511から吹き出すことにより、吹出孔511から外方へと流れる空気の流れ(気流)を発生する。この構成によれば、比較的広範囲にわたって安定した気流を発生させることができる。さらに、気流発生部5は、送風機52の制御によって気流の風量を調節可能である。そして、気流発生部5は、風量を調節することで散布物の搬送距離を調節することができ、風量が大きいほど散布物を遠方まで搬送することが可能である。したがって、本実施形態に係る散布機1では、散布装置4による散布物の散布範囲を調節することができる。
【0068】
より詳細には、ダクト51は、上下方向D1に長さを有する配管であって、支持フレーム3の縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に対して1本ずつ取り付けられている。つまり、本実施形態では、気流発生部5は計2本のダクト51を有している。各ダクト51には、ダクト51の左側面及び左側面の各々に、上下方向D1に沿って一列に並ぶように複数の吹出孔511が形成されている。各ダクト51は、その上端部から流入する空気を、菅内を通して下方に流しつつ、複数の吹出孔511の各々から吹き出させる。送風機52は、各ダクト51の上端部に取り付けられており、ダクト51の上端部からダクト51内に空気を送り込む。つまり、本実施形態では、気流発生部5は計2個の送風機52を有している。ここで、各吹出孔511は、ダクト51の管壁を左右方向D2に貫通しており、各吹出孔511から吹き出す空気は、
図10に示すように、左右方向D2の外側に向けて流れる気流X1,X2を形成する。本実施形態では一例として、送風機52は、電動式でダクト51内に空気を送り込むブロワである。
【0069】
また、
図10に示すように、気流発生部5のダクト51は、縦フレーム3Rの後方に位置するように、取付金具53にて縦フレーム3Rに固定されている。さらに、散布装置4の2本の散布管42は、ダクト51の後方に位置するように、取付金具45にてダクト51に固定されている。これにより、2本の散布管42は、縦フレーム3Rに間接的に取り付けられることになり、各散布管42に取り付けられている散布部41は、縦フレーム3Rに間接的に支持されることになる。本実施形態では一例として、1つのダクト51に対して取付金具45は上下方向D1に複数(例えば3つ)設けられており、散布管42を長手方向(上下方向D1)の複数箇所でダクト51に固定する。さらに、取付金具45は散布部41の固定具を兼ねており、散布部41は取付金具45に取り付けられることで強固に固定される。
【0070】
ここで、ダクト51、これに取り付けられた2本の散布管42、及びこれら2本の散布管42に取り付けられた計6つの散布部41は、左右方向D2において対称に配置されている。そして、
図10に示すように、2本の散布管42のうち、左側の散布管42に設けられた3つの散布部41は、左前方に向けて散布物Y1を吐出し、右側の散布管42に設けられた3つの散布部41は、右前方に向けて散布物Y2を吐出する。そのため、左側の散布部41から吐出される霧状の散布物Y1は、ダクト51から左方に吹き出す気流X1に乗って左方へ搬送され、右側の散布部41から吐出される霧状の散布物Y2は、ダクト51から右方に吹き出す気流X2に乗って右方へ搬送される。
【0071】
よって、複数(12個)の散布部41のうち、最左端の散布管42に設けられた3つの散布部41は、機体10の左外方に位置する作物V1に向けて薬液を左向きに散布する。複数の散布部41のうち、最左端の散布管42に隣接する左内側の散布管42に設けられた3つの散布部41は、機体10の内側の空間Sp1に位置する作物V1に向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布部41のうち、最右端の散布管42に設けられた3つの散布部41は、機体10の右外方に位置する作物V1に向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布部41のうち、最右端の散布管42に隣接する右内側の散布管42に設けられた3つの散布部41は、機体10の内側の空間Sp1に位置する作物V1に向けて薬液を左向きに散布する。
【0072】
上記の構成により、散布装置4においては、支持フレーム3の縦フレーム3Lに設けられた2本の散布管42及び6つの散布部41が左側の散布ユニットとして機能する。また、支持フレーム3の縦フレーム3Rに設けられた2本の散布管42及び6つの散布部41が右側の散布ユニットとして機能する。そして、左右一対の散布ユニットは、機体10の後方において、左右方向D2への散布が可能な状態で、両者間に作物V1の通過を許容する間隔(空間Sp1)を空けて配置されている。
【0073】
さらに、支持フレーム3の縦フレーム3L又は縦フレーム3Rに取り付けられた各散布管42には、上下方向D1に離れて配置される複数(ここでは3つ)の散布部41が設けられている。そのため、散布装置4は、これら複数の散布部41により、支持フレーム3の縦フレーム3L又は縦フレーム3Rに沿って、上下方向D1における複数箇所から散布物を散布することができる。結果的に、散布装置4は、散布対象物である作物V1の下部から上部にかけて、散布物である薬液を満遍なく散布することが可能となる。
【0074】
また、散布装置4は、複数(12個)の散布部41が複数系統に分けれており、系統ごとに制御可能に構成されている。一例として、4本の散布管42のうち左右方向D2における内側の2本の散布管42に設けられた6つの散布部41が第1系統、最左端の散布管42に設けられた3つの散布部41が第2系統、最右端の散布管42に設けられた3つの散布部41が第3系統に分類される。そのため、散布装置4による散布パターンには、全ての散布部41から散布物(薬液)を散布する全散布パターンと、散布方向が限定された限定散布パターンとが含まれる。限定散布パターンには、第1系統の6つの散布部41のみ散布を行う第1散布パターンと、第2系統の3つの散布部41のみ散布を行う第2散布パターンと、第3系統の3つの散布部41のみ散布を行う第3散布パターンと、が含まれる。さらに、限定散布パターンには、第1系統及び第2系統の9つの散布部41のみ散布を行う第4散布パターンと、第1系統及び第3系統の9つの散布部41のみ散布を行う第5散布パターンと、第2系統及び第3系統の6つの散布部41のみ散布を行う第6散布パターンと、が含まれる。
【0075】
散布装置4は、制御装置(作業装置制御部)によって制御され、上述した複数の散布パターン(全散布パターン及び6つの限定散布パターンの計6パターン)が適宜切り替えられる。また、散布装置4は、系統ごとに散布物を散布する際の圧力(噴霧圧)を変更することでも、散布物の散布範囲を変更可能である。さらに、本実施形態では、気流発生部5の風量を調節することでも散布物の散布範囲を調節できるので、散布対象物(作物V1)又は散布物(薬液)に応じて、より多様な散布範囲を実現可能である。
【0076】
ところで、上述したように、本実施形態では、支持フレーム3は、一対の縦フレーム3L,3Rと横フレーム3Cとの相対的な位置関係を維持した状態で、回転軸Ax1を中心として回転可能に機体10に支持されている。すなわち、散布部41を支持する支持フレーム3は、機体10に対して相対的に固定されるのではなく、回転軸Ax1を中心に回転可能に構成されている。支持フレーム3が回転することにより、支持フレーム3に支持されている複数の散布部41についても回転軸Ax1を中心に回転することになる。
【0077】
具体的に、
図9に示すように、横フレーム3Cの長手方向(左右方向D3)の中央部には、支点部31が設けられている。支点部31は、支持フレーム3の回転時の支点となる部材であって、横フレーム3Cの上面から上方に突出する形で、溶接等の適宜の結合手段にて横フレーム3Cに結合されている。支点部31の上端部には、軸ピン32が前後方向D2に沿って支点部31を貫通するように設けられている。軸ピン32は、前後方向D2に沿って長さを有する円柱状の軸部材である。さらに、機体10の後端部の左右方向の中央部には、軸ピン32を支持する軸受台33が配置されている。軸受台33は、機体10のフレーム101の上面から上方に突出する形で、溶接等の適宜の結合手段にてフレーム101に結合されている。軸ピン32は、支点部31と軸受台33との少なくとも一方に対して、ベアリング等の軸受部材を介して回転可能に支持されている。
【0078】
上記構成によれば、支持フレーム3は、機体10に対して軸ピン32を支点として回転可能に支持されることになる。一方で、支持フレーム3は、機体10に対して軸ピン32を支点とする回転以外の移動、例えば、前後方向D1への平行移動等が禁止される。つまり、軸ピン32の中心軸が回転軸Ax1として機能し、支持フレーム3は、回転軸Ax1を中心に回転可能に機体10に支持される。
【0079】
ここにおいて、散布機1は、機体10に対する支持フレーム3の回転範囲(可動範囲)を制限する規制部材(図示せず)を更に備えている。規制部材は、機体10、支持フレーム3、支点部31及び軸受台33のいずれに設けられていてもよい。このような規制部材によって、支持フレーム3の回転範囲は、横フレーム3Cが機体10の上面に対して平行になる中立位置に対して、第1方向R1(
図9参照)及び第2方向R2(
図9参照)にそれぞれ所定角度ずつの範囲に制限される。第1方向R1は、後方から見て時計回り方向であって、第2方向R2は、後方から見て反時計回り方向である。ここで所定角度は、例えば、5度、10度、15度、20度又は30度等、適宜設定可能である。さらには、所定角度を調節可能な機構が備わっていてもよい。
【0080】
また、本実施形態に係る散布機1は、支持フレーム3を能動的に回転させるアクチュエータ等を備えていない。そのため、支持フレーム3は、支持フレーム3に対して外力が作用して初めて回転することになる。例えば、機体10が横傾斜の斜面を走行する際には、支持フレーム3の自重、つまり支持フレーム3に作用する重力によって、支持フレーム3が回転する。ここで、散布機1には、機体10に対する支持フレーム3の回転を禁止するストッパを取付可能であってもよく、例えば、散布機1の運搬時において、ストッパが取り付けられることで、支持フレーム3の振動を防止する。また、散布機1は、支持フレーム3に対して減衰力を作用させるダンパを備えていてもよく、これにより、例えば、機体10の走行時において支持フレーム3の振動が収束しやすくなる。
【0081】
ここで、支点部31は、横フレーム3Cのうち一対の縦フレーム3L,3Rから等距離となる位置に配置されている。ここでいう「等距離」とは、一対の縦フレーム3L,3Rからの距離が厳密に一致する場合に加えて、一対の縦フレーム3L,3Rからの距離の差が数cm(例えば10cm未満)程度の誤差範囲に収まる関係にあることをいう。そのため、支点部31を通る回転軸Ax1は横フレーム3Cの長手方向(左右方向D2)の中心(又は略中心)上に位置することになる。これにより、支持フレーム3の回転時に、縦フレーム3Lの上昇量(又は下降量)と、縦フレーム3Rの下降量(又は上昇量)とを一致させることができ、支持フレーム3をバランスよく回転させることができる。特に、支持フレーム3、及び支持フレーム3に支持される部材(散布部41、散布管42及び気流発生部5等)が、左右方向D2に対称となる重量バランスであれば、機体10が水平に保たれている限りは支持フレーム3が中立位置に維持されることになる。
【0082】
以上説明したような回転可能な支持フレーム3によれば、例えば、
図11に示すように、機体10が横傾斜の斜面を走行中には、支持フレーム3が回転する。すなわち、圃場F1の路面が左右方向D2の右方が低くなるような横傾斜であれば、機体10は右方に傾斜する一方、支持フレーム3は、自重により横フレーム3Cが水平となる姿勢を維持する。そのため、支持フレーム3は、機体10に対して回転軸Ax1を中心に第2方向R2(反時計回り)に回転する。ここで、支持フレーム3の回転角度θ1(回転量)は、機体10の傾斜角度、つまり圃場F1の水平面に対する回転軸Ax1を中心傾斜角度θ2に相当する。例えば、圃場F1の傾斜角度θ2が10度であれば、支持フレーム3は10度の回転角度θ1分だけ回転する。
図11は、回転角度θ1及び傾斜角度θ2がいずれも5度である場合を例示する。
【0083】
本実施形態に係る散布機1においては、
図11に例示するような斜面であっても、支持フレーム3が回転することによって、散布部41による散布物(薬液)の散布量のムラ(散布ムラ)の発生が生じにくい。要するに、支持フレーム3が機体10に固定的に支持されているとすれば、横傾斜の斜面を走行する際、機体10が傾くことがある。そして、この場合、地面(圃場F1)から鉛直方向にまっすぐ延びる作物V1(散布対象物)においては、その上部と下部とで散布部41からの距離が異なり、散布物の散布量にムラが生じる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る散布機1では、支持フレーム3が回転することで、支持フレーム3、及び支持フレーム3に支持されている散布部41等については、水平面を走行する際と同じ姿勢を維持することができる。そのため、地面(圃場F1)から鉛直方向にまっすぐ延びる作物V1(散布対象物)においても、その上部と下部とで散布部41からの距離がばらつきにくくなり、散布物の散布量のムラの発生を抑制しやすい、という利点がある。
【0084】
さらに、本実施形態では、気流発生部5も支持フレーム3に支持されているので、気流発生部5で発生する気流の向きについても、横傾斜の傾斜面を走行中の機体10の傾斜にかかわらず、水平方向に保つことができる。これにより、エアアシストにより、散布物を適切に搬送することができる。
【0085】
また、本実施形態では、
図8に示すように、散布部41は、上下方向D1における走行部11の中心C1よりも高い位置に配置されている。つまり、クローラ111を含む走行部11は、上下方向D1にある程度の高さを有するところ、その上下方向の中心位置を中心C1とした場合に、散布部41は、この中心C1よりも上方に位置する。本実施形態では、散布部41が複数(12個)設けられているので、そのうち最も低い位置にある散布部41でも、走行部11の中心C1よりも高い位置(上方)にある。この構成によれば、散布部41は圃場F1からある程度の高さを確保できるため、散布部41から適切な範囲に散布物を散布しやすくなる。さらに、支持フレーム3が機体10に対して回転した際にも、散布部41が圃場F1に接触しにくくなる。
【0086】
ところで、本実施形態では、測位装置2のアンテナ21(第1アンテナ)は、回転軸Ax1の上方に配置されている。具体的には、アンテナ21は、
図9に示すように、軸ピン32を支持する軸受台33上に配置されている。アンテナ21は、衛星204から送信される信号(GNSS信号等)を受信するので、この位置に配置されることにより、障害物の影響を受けずに信号を受信することができる。しかも、回転軸Ax1上であれば、例えば、振動によって支持フレーム3に揺れが生じるような場合でも、アンテナ21の位置変化を小さく抑えることができ、アンテナ21での信号の受信(又は送信)への影響を小さく抑えられる。特に、本実施形態においては、アンテナ21は、支持フレーム3の回転中心である軸ピン32を支持する軸受台33上に配置されているので、支持フレーム3が回転しても、アンテナ21が回転することはなくアンテナ21の向きが一定に維持されるので、アンテナ21での信号の受信(又は送信)の性能が安定しやすい。
【0087】
さらに、本実施形態では、回転軸Ax1は、支持フレーム3の左右方向D3における中央部に位置する。より厳密には、支点部31を通る回転軸Ax1は横フレーム3Cの長手方向(左右方向D2)の中心(又は略中心)上に位置する。そのため、アンテナ21は、機体10の基準となる位置上に配置されることになり、アンテナとしての性能が十分に発揮されやすい。特に、アンテナ21が位置特定用アンテナである場合には、平面視においてアンテナ21が中心にあることで、アンテナ21の位置が特定されることにより、機体10の左右方向D2の中心位置が特定されることになり、機体10の位置の特定処理が簡単になる。また、本実施形態のように、機体10が門型の形状を有する場合には、機体10の内側の空間Sp1を通過させる散布対象物(作物V1)の真上にアンテナ21が位置するため、散布対象物の位置を特定する意味でも、上記配置は有効である。
【0088】
加えて、本実施形態では、
図7に示すように、アンテナ21(第1アンテナ)とは別のアンテナ22(第2アンテナ)についても、回転軸Ax1を延長した仮想直線L1上に配置されている。したがって、2つのアンテナ21,22は、いずれも機体10の左右方向D2の中心線(仮想直線L1)上に位置することになり、アンテナとしての性能が十分に発揮されやすい。特に、アンテナ21,22が位置特定用アンテナである場合には、機体10の前部と後部とのそれぞれにおいて、正確に現在位置を特定できるので、機体10の向き(現在方位)も含めて精度よく特定することが可能となる。
【0089】
[4]動力源等の配置
次に、機体10における動力源63等の配置について、
図5、
図6及び
図7を参照してより詳細に説明する。
【0090】
動力源63及びタンク64等の散布機1の構成部品は、機体10における第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとに振り分けて配置されている。ここで、機体10を駆動するための動力源63は、第1ブロック10Lに配置され、ユーザに対する情報の出力と操作の受け付けとの少なくとも一方を行うユーザインタフェース61は、第2ブロック10Rに配置されている。本実施形態では、動力源63は、油圧ポンプを駆動することで、少なくとも走行部11に動力を供給するエンジンである。そのため、油圧ポンプ、及び動力源63に燃料を供給する燃料タンク等も、動力源63と同様に、第1ブロック10Lに配置されている。
【0091】
このように、本実施形態では、左右方向D2に並ぶ第1ブロック10L及び第2ブロック10Rに区分けされる機体10のうち、一方の第1ブロック10Lに動力源63が偏って配置されている。そのため、動力源63が配置される第1ブロック10L側においては、動力源63で発生する熱、振動、電磁ノイズ又は音等の影響が大きくなる。つまり、エンジン又はモータ等の動力源63は、駆動時には、熱を発生する熱源、振動を発生する振動源、電磁ノイズを発生するノイズ源、又は騒音を発生する騒音源等になり得る。例えば、ユーザインタフェース61が動力源63と同じ第1ブロック10L側に配置されるとすれば、ユーザインタフェース61を使用するユーザに対して、動力源63で発生する熱又は音等が影響し、ユーザの作業を妨げる可能性がある。さらに、ユーザインタフェース61のような電子機器にあっては、動力源63で発生する熱、振動又は電磁ノイズ等によりダメージを受けやすくなる。
【0092】
本実施形態に係る散布機1においては、少なくともユーザインタフェース61は、動力源63が配置される第1ブロック10L側ではなく、第2ブロック10Rに設けられている。そのため、ユーザインタフェース61を使用するユーザ、又はユーザインタフェース61自体に対して、動力源63で発生する熱、振動、電磁ノイズ又は音等が影響しにくくなる。結果的に、動力源63で発生する熱、振動、電磁ノイズ又は音等が問題となりにくい散布機1(作業機械)を実現することができる。
【0093】
特に、本実施形態では、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの間には、作物V1(作業対象物)を通過させる空間Sp1が形成される。そのため、上述した動力源63及びユーザインタフェース61の配置によれば、動力源63とユーザインタフェース61との間に空間Sp1が介在することになり、動力源63で発生する熱、振動、電磁ノイズ又は音等がユーザインタフェース61へ及ぼす影響を大幅に低減できる。
【0094】
具体的に、動力源63は、
図5に示すように、第1ブロック10Lの前半分の範囲に収容されている。動力源63は、基本的にはカバー102に覆われており、動力源63で発生する熱等の機体10の周囲への影響も抑制されている。一方、ユーザインタフェース61は、
図6に示すように、第2ブロック10Rに対して、右方に露出する形で配置されている。そのため、ユーザインタフェース61を使用するユーザにあっては、基本的には機体10の右側方に立った状態でユーザインタフェース61を使用することになる。これにより、例えば動力源63で発生する熱及び音等については、ユーザインタフェース61を使用するユーザへの影響は大幅に抑制される。
【0095】
また、本実施形態では、作業部は作業として散布物(薬液)の散布を行う散布部41を含んでおり、第2ブロック10Rには、散布物が貯留されるタンク64が配置される。つまり、動力源63と並んで重量物であるタンク64は、動力源63が配置される第1ブロック10L側ではなく、第2ブロック10Rに設けられている。そのため、機体10の第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの間で重量バランスをとりやすく、機体10の姿勢の安定化、及び走行性能(旋回性能を含む)の向上につながる。タンク64は、第2ブロック10Rのフレーム101に固定されている。第2ブロック10Rのうちタンク64に対応する部位にはカバー102が設けられておらず、少なくともタンク64の右側面及び上面は露出する。
【0096】
特に、本実施形態では、タンク64内の散布物の残量がタンク64の容量の半分(二分の一)のときに第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとで重量が均衡することで、散布機1の実際の使用時の重量バランスを好適なバランスとしている。すなわち、散布物の残量はタンク64の容量の100%と0%との間で変動し得るところ、その中央値である50%のときに、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとで重量が均衡する。そのため、散布機1の実際の使用中(稼働中)においては、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとで重量が均衡する状態(残量50%)を中心に散布物の残量が変動することになり、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの重量バランスをとりやすい。また、散布物の残量が50%より多いか又は少ない場合でも、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの重量の差は、タンク64の容量の半分の散布物の重量以下に抑えられるので、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとで重量バランスが極端に崩れることも回避できる。
【0097】
より詳細には、
図6に示すように、タンク64は、側面視において(右方から見て)、第2ブロック10Rの大部分を占め、一例として、前後方向D3に長い矩形状を基調に、前後方向D2の両側の下方の各角部が三角形に切り欠かれた六角形状を有する。このようなタンク64の形状によって、タンク64の下方には前方側及び後方側の各々にスペースが確保される。このようなタンク64下方のスペースのうち、前方側のスペースには散布装置4のポンプ43等が配置され、後方側のスペースにはバルブ44等が配置される。バルブ44は、複数の散布部41の系統ごとに設けられており、本実施形態では、3系統(第1系統、第2系統及び第3系統)に対応するべく3つのバルブ44が設けられている。
【0098】
本実施形態では、ユーザインタフェース61は、作業(散布作業)に関する調節のための操作を受け付ける操作部612と、操作に関連する情報を表示する表示部611と、を含んでいる。より詳細には、例えば液晶ディスプレイからなる表示部611は、第2ブロック10Rの前端寄りの位置に配置され、表示部611の下方には、操作部612としてのつまみ又は押釦スイッチ等が配置されている。これにより、ユーザは、表示部611に表示される設定画面等を見ながら、操作部612を操作することができる。
【0099】
また、ポンプ43の上方には、ポンプ43のモータを制御する制御ボックス613が配置されており、制御ボックス613にも操作部612としてのつまみ又は押釦スイッチ等が配置されている。さらに、バルブ44の上方には、バルブ44を制御するためのつまみが、操作部612として、3つのバルブに対応して3つ配置されている。ユーザにおいては、制御ボックス613の操作部612を操作することで、ポンプ43の動作を制御し、散布物(薬液)の流量を調節でき、バルブ44上方の操作部612を操作することで、バルブ44の開閉又は散布物の圧力(噴霧圧)を調節できる。これらの操作部612を操作する場合にも、例えば、流量計の計測値又は圧力計の計測値等を表示部611に表示させ、表示部611の表示を見ながら行うことで、作業に関する調節のための操作が容易になる。ただし、バルブ44上方の操作部612等にあっては、表示部611から比較的離れた位置にあるため、例えば2人のユーザが協力して、調節作業を行うことが好ましい。この場合、一方のユーザが表示部611の表示を確認し、他方のユーザが操作部612を操作することで、調節作業性の向上を図ることが好ましい。
【0100】
[5]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0101】
散布機1は、葡萄園又は林檎園等の果樹園に限らず、その他の圃場F1、又は圃場F1以外の作業対象領域での作業に用いられてもよい。さらに、散布機1が散布する散布物は薬液に限らず、例えば、水、肥料、消毒液若しくはその他の液体、又は粉体等であってもよい。散布物が散布される散布対象物も同様に、葡萄の果樹に限らず、その他の作物、又は作物以外の物体(無機物を含む)であってもよい。また、散布機1は、自動運転により動作する無人機に限らず、散布機1は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)により動作する構成であってもよく、例えば、オペレータが搭乗可能な乗用タイプ(有人機)であってもよい。この場合でも、散布機1の現在位置を把握するために、散布機1にはアンテナ21等が設けられる。
【0102】
また、支持フレーム3は、機体10の前後方向D3の一端部に取り付けられていればよく、機体10の前方に取り付けられていてもよい。この場合、支持フレーム3に支持されている作業部(散布部41)についても、機体10の後方ではなく前方に配置されることになる。
【0103】
また、機体10は、左右方向D2に並ぶ第1ブロック10L及び第2ブロック10Rを有していればよく、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rが左右逆転していてもよい。つまり、動力源63等が設けられた第1ブロック10Lが右側に位置し、ユーザインタフェース61等が設けられた第2ブロック10Rが左側に位置してもよい。
【0104】
また、走行部11は、クローラ式の走行装置に限らず、例えば、1つ又は複数の車輪を有し、車輪の回転によって走行する構成であってもよい。また、走行部11は、油圧モータによって駆動される構成に限らず、例えば、電動モータによって駆動される構成であってもよい。
【0105】
また、散布機1は、実施形態1のようにエアアシスト方式の散布機に限らず、例えば、静電散布方式、又はエアアシスト方式と静電散布方式とを組み合わせた方式等であってもよい。静電散布方式の散布機1であれば、気流発生部5は省略可能である。
【0106】
また、動力源63は、エンジンに限らず、例えば、モータ(電動機)を有していてもよいし、エンジンとモータとを含むハイブリッド式の動力源であってもよい。
【0107】
また、散布機1は、機体10が門型の形状ではなく、機体10全体が隣接する一対の作物列Vr1の間(作業通路)を走行する態様であってもよい。この場合、散布機1は、作物列Vr1を跨がずに各作業通路を走行する。この場合、散布装置4は、左右方向D2の両方に薬液を散布する散布パターンと、左方のみに薬液を散布する散布パターンと、右方のみに薬液を散布する散布パターンとを切り替えて散布作業を行う。
【0108】
また、アンテナ21,22は、位置特定用アンテナに限らず、例えば、無線通信用のアンテナであってもよい。さらに、アンテナ21,22は、受信用に限らず、送信用、又は受信及び送信用であってもよい。
【0109】
また、ユーザインタフェース61は、表示部611に加えて又は代えて、例えば、音声出力等によりユーザに情報を提示する手段を有してもよい。さらに、ユーザインタフェース61の操作部612を用いて調整項目(流量又は圧力等)の少なくとも一つは、制御装置によって自動的に調整されてもよい。この場合、操作部612は適宜省略可能であって、ユーザインタフェース61は、調整結果を表示部611に表示するだけでもよい。
【0110】
また、実施形態1では、作業機械の一例として散布機1について説明したが、作業機械は散布機1に限らない。例えば、作業機械は摘芯機であってもよく、この場合、摘芯作業を行う摘芯部が作業部の一例となり、支持フレーム3に支持される。
【0111】
(実施形態2)
本実施形態に係る散布機1Aは、
図12に示すように、散布部41(第1散布部)に対して前後方向D3に並ぶように配置され、散布物(薬液)の散布を行う散布部41A(第2散布部)を更に備える点で、実施形態1に係る散布機1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0112】
本実施形態では、散布機1Aは、機体10の後方に設けられた支持フレーム3(第1支持フレーム)に加えて、機体10の前方に設けられた支持フレーム3A(第2支持フレーム)を備えている。支持フレーム3Aには、散布装置4A及び気流発生部5Aが支持されている。散布装置4A(第2散布装置)は、散布装置4(第1散布装置)と前後方向D3に対称に構成されており、散布装置4と同様に、散布部41A及び散布管42Aを有している。気流発生部5A(第2気流発生部)は、気流発生部5(第1気流発生部)と前後方向D3に対称に構成されており、気流発生部5と同様に、ダクト51A及び送風機52Aを有している。
【0113】
要するに、散布機1Aは、作業部である第1作業部(散布部41)に対して前後方向D3に並ぶように配置され、作業(散布作業)を実行する第2作業部(散布部41A)を備えている。これにより、散布機1Aは、前後方向D3に並ぶ2つの散布部41,41Aの各々において、作業(散布作業)を実行することができ、いずれか一方の作業部のみで作業を行う場合に比べて、作業効率の向上を図ることができる。
【0114】
また、支持フレーム3Aは、支持フレーム3と同様に、機体10に対して回転軸Ax1を中心に回転可能に支持されている。そのため、支持フレーム3Aに取り付けられた散布装置4A及び気流発生部5Aについても、機体10が横傾斜の斜面を走行中に、支持フレーム3Aが回転することによって、散布部41Aによる散布物(薬液)の散布量のムラ(散布ムラ)の発生が生じにくい。
【0115】
実施形態2の変形例として、前後方向D3に並ぶ支持フレーム3,3Aの少なくとも一方は、機体10に対して回転不能に構成されていてもよい。例えば、機体10に対して支持フレーム3が回転可能に支持され、支持フレーム3Aが固定的に支持される。
【0116】
実施形態2の他の変形例として、前後方向D3において、散布部(散布装置)は3段以上設けられていてもよい。例えば、散布機1Aは、前後方向D3において、一対の散布部41,41Aの間に位置する散布部(第3散布部)を更に備えていてもよい。
【0117】
実施形態2の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0118】
(実施形態3)
本実施形態に係る散布機1Bは、
図13に示すように、回転駆動装置12を備える点で、実施形態1に係る散布機1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0119】
回転駆動装置12は、回転軸Ax1を中心として支持フレーム3を機体10に対して回転させる回転力を発生する。つまり、回転駆動装置12は、支持フレーム3を能動的に回転させるアクチュエータである。具体的には、回転駆動装置12は、軸受台33に設けられたモータ及び減速機等であって、軸ピン32に回転力を作用させる。回転駆動装置12は、軸ピン32を介して支持フレーム3を回転させ、任意の回転角度で支持フレーム3を停止させる。これにより、支持フレーム3が外力に応じて受動的に回転する構成に比較して、支持フレーム3を狙い通りの回転角度に制御しやすくなる。
【0120】
また、本実施形態では、回転駆動装置12は、機体10の姿勢に応じて支持フレーム3を回転させる。すなわち、
図13に示すように、散布機1Bは、機体10に設けられた姿勢センサ13を備えており、姿勢センサ13にて機体10の姿勢を監視している。姿勢センサ13は、例えば、ジャイロセンサ等であって、横傾斜の傾斜面を走行中の機体10の傾斜角度等を、機体10の姿勢として検知する。回転駆動装置12は、姿勢センサ13の検知結果に基づいて、支持フレーム3を回転駆動させる。一例として、圃場F1の傾斜角度が5度であって、機体10が右方に5度傾斜するような場合(
図11参照)には、回転駆動装置12は、支持フレーム3を第2方向R2に5度だけ回転させる。これにより、機体10の姿勢に応じた適切な回転角度に、支持フレーム3を回転させることができる。
【0121】
実施形態3の変形例として、回転駆動装置12は、機体10の姿勢によらずに支持フレーム3を回転駆動してもよい。この場合、姿勢センサ13は適宜省略可能である。
【0122】
実施形態3の構成は、実施形態1又は実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1,1A,1B 散布機
3,3A 支持フレーム
3C 横フレーム
3L,3R 縦フレーム
5,5A 気流発生部
10 機体
11 走行部
12 回転駆動装置
31 支点部
41 (第1)散布部
41A (第2)散布部
51,51A ダクト
511 吹出孔
52,52A 送風機
Ax1 回転軸
C1 中心
D1 上下方向
D2 左右方向
D3 前後方向
Sp1 空間
V1 作物(散布対象物)