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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183982
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20221206BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/015 101
B41J2/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091550
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】林 将芳
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 貴文
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB08
2C056EB40
2C056EC24
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA04
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA13
2C057AF75
2C057AL14
2C057AM31
2C057AN01
2C057AR16
2C057BA14
2C057DB01
2C057DD02
2C057DE02
(57)【要約】
【課題】差分信号の精度を判定し、ノズル検査の信頼性を向上させる。
【解決手段】プリンタの制御部は、生成された差分信号の第2信号部分に関する値が、閾値以上か否かを判定する判定処理を実行する。そして、制御部は、判定処理において第2信号部分に関する値が閾値未満である場合、差分信号に基づいてノズルが異常ノズルであるか否かを判定するノズル判定処理を実行し、判定処理において第2信号部分に関する値が閾値以上である場合、差分信号の生成条件を変更して差分信号を再生成し、判定処理を再実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに実行させたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の非実行時に前記信号出力部から出力される信号を非駆動時信号として取得し、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の実行時に前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成し、
前記差分信号は、前記ノズルが前記異常ノズルでない場合に前記検査用駆動によって値の変動が所定値よりも大きい部分を含む第1信号部分と、前記第1信号部分とは別の第2信号部分と、を有し、
前記制御部は、
生成された前記差分信号の前記第2信号部分に関する値が、閾値以上か否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において前記第2信号部分に関する値が前記閾値未満である場合、前記差分信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定するノズル判定処理を実行し、
前記判定処理において前記第2信号部分に関する値が前記閾値以上である場合、前記差分信号の生成条件を変更して前記差分信号を再生成し、前記判定処理を再実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2信号部分に関する値は、前記差分信号の前記第2信号部分の値の最大値であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2信号部分に関する値は、前記差分信号の前記第2信号部分の値の総和であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2信号部分に関する値は、前記差分信号の前記第2信号部分の値を二乗した値の総和であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記生成条件の変更が所定回数行われた場合であって、前記所定回数目に生成された前記差分信号における前記判定処理において、前記第2信号部分に関する値が前記閾値以上である場合には、前記ノズルを異常ノズルとすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに実行させたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の非実行時に前記信号出力部から出力される信号を非駆動時信号として取得し、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の実行時に前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成し、
前記差分信号は、前記ノズルが前記異常ノズルでない場合に前記検査用駆動によって値の変動が所定値よりも大きい部分を含む第1信号部分と、前記第1信号部分とは別の第2信号部分と、を有し、
前記制御部は、
生成された前記差分信号の前記第1信号部分に関する値が、第1閾値以上且つ前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満であるか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において前記第1信号部分に関する値が前記第1閾値未満または前記第2閾値以上である場合、前記差分信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定するノズル判定処理を実行し、
前記判定処理において前記第1信号部分に関する値が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満である場合、前記差分信号の生成条件を変更して前記差分信号を再生成し、前記判定処理を再実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1信号部分に関する値は、前記差分信号の前記第1信号部分の一部の区間における値であることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記一部の区間は、前記差分信号の前記第1信号部分において、最大値を取ると推定されるタイミングを含む区間であることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記一部の区間は、前記差分信号の前記第1信号部分において、最小値を取ると推定されるタイミングを含む区間であることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第1信号部分に関する値は、前記差分信号の前記第1信号部分における最大値と最小値との差の値であることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記最大値は、前記差分信号の前記第1信号部分において、最大値を取ると推定されるタイミングを含む区間における最大値であり、
前記最小値は、前記差分信号の前記第1信号部分において、最小値を取ると推定されるタイミングを含む区間における最小値であることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記生成条件の変更が所定回数行われた場合であって、前記所定回数目に生成された前記差分信号における前記判定処理において、前記第1信号部分に関する値が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満である場合には、前記ノズルを異常ノズルとすることを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記生成条件の変更が所定回数行われた場合には、前記所定回数以降の生成条件の変更を行わないことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記判定処理後に前記差分信号の前記生成条件を変更する場合、当該判定処理前までの前記差分信号の前記生成条件である、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように前記差分信号を生成するというものから、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差が前記最も小さくなるときの次に小さくなるように前記差分信号を生成するというものに変更し、当該生成条件に基づいて前記差分信号を再生成することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記判定処理後に前記差分信号の前記生成条件を変更する場合、前記判定用信号を再度取得することで、前記差分信号の前記生成条件を変更し、当該再取得した前記判定用信号を用いて前記差分信号を再生成することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記判定処理後に前記差分信号の前記生成条件を変更する場合、前記非駆動時信号を再度取得することで、前記差分信号の前記生成条件を変更し、当該再取得した前記非駆動時信号を用いて前記差分信号を再生成することを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、インクを良好に吐出できるか否かを調べる吐出検査を行う。吐出検査では、ヘッドのピエゾ素子に駆動信号を印加したときに検出される検出信号の振幅(最高電位と最低電位との差)が閾値を超えたか否かに基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。
【0003】
また、特許文献1のプリンタでは、ノイズの有無を判定するノイズ検査を行っており、ノイズ検査でノイズがないと判定されたときに、吐出検査の結果に基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-210768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上述したように、ノイズ検査を行い、ノイズがないと判定されたときに、吐出検査の結果に基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。しかしながら、特許文献1のようなプリンタでは、例えば、交流電源から常にある程度のノイズが入る等、実際には、ノイズがない状態で吐出検査を行うことが難しい。
【0006】
本発明者は、検査用駆動を液体吐出ヘッドに実行させたときに信号出力部から出力される判定用信号と、液体吐出ヘッドが検査用駆動の非実行時に信号出力部から出力された非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成し、当該差分信号に基づいてノズルから液体が吐出されたか否かを判定することで、ノイズの影響を抑えて異常ノズルであるか否かを精度よく判定する判定技術を開発した。しかしながら、ノズル検査を実行する際に、上記の判定技術を用いて得られた差分信号が精度良く生成されていないと、当該ノズル検査の信頼性が低下する場合があることが分かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、差分信号の精度を判定し、ノズル検査の信頼性を向上させることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出装置は、第1の観点では、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに実行させたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備えている。前記制御部は、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の非実行時に前記信号出力部から出力される信号を非駆動時信号として取得し、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の実行時に前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成する。前記差分信号は、前記ノズルが前記異常ノズルでない場合に前記検査用駆動によって値の変動が所定値よりも大きい部分を含む第1信号部分と、前記第1信号部分とは別の第2信号部分と、を有する。そして、前記制御部は、生成された前記差分信号の前記第2信号部分に関する値が、閾値以上か否かを判定する判定処理を実行し、前記判定処理において前記第2信号部分に関する値が前記閾値未満である場合、前記差分信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定するノズル判定処理を実行し、前記判定処理において前記第2信号部分に関する値が前記閾値以上である場合、前記差分信号の生成条件を変更して前記差分信号を再生成し、前記判定処理を再実行する。
【0009】
また、本発明の液体吐出装置は、第2の観点では、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに実行させたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備えている。前記制御部は、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の非実行時に前記信号出力部から出力される信号を非駆動時信号として取得し、前記液体吐出ヘッドが前記検査用駆動の実行時に前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成する。前記差分信号は、前記ノズルが前記異常ノズルでない場合に前記検査用駆動によって値の変動が所定値よりも大きい部分を含む第1信号部分と、前記第1信号部分とは別の第2信号部分と、を有する。そして、前記制御部は、生成された前記差分信号の前記第1信号部分に関する値が、第1閾値以上且つ前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満であるか否かを判定する判定処理を実行し、前記判定処理において前記第1信号部分に関する値が前記第1閾値未満または前記第2閾値以上である場合、前記差分信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定するノズル判定処理を実行し、前記判定処理において前記第1信号部分に関する値が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満である場合、前記差分信号の生成条件を変更して前記差分信号を再生成し、前記判定処理を再実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体吐出装置の第1及び第2の観点によると、判定処理により、生成された差分信号が精度良く生成されているか否かを判定することが可能となる。このため、ノズル判定処理での判定精度の低下を抑制し、ノズル検査の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び信号処理回路との接続関係を説明するための図である。
図3】(a)はノイズがない場合の、検査用駆動でノズルからインクが吐出されたときに信号処理回路から出力される信号を示す図であり、(b)はノイズがない場合の、検査用駆動でノズルからインクが吐出されなかったときに信号処理回路から出力される信号を示す図である。
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図5】検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
図6図5に示す差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
図7図5に示すノズル判定処理の流れを示すフローチャートである。
図8図5に示す差分信号再生成処理の流れを示すフローチャートである。
図9】(a)はノイズを含む実際の非駆動時信号の一例を示す図であり、(b)は検査用駆動によってインクが吐出されたときのノイズを含む実際の判定用信号の一例を示す図である。
図10】第1変形例に係るプリンタの差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第2変形例に係るプリンタの差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
図12】第3変形例に係るプリンタの差分信号再生成処理の流れを示すフローチャートである。
図13】第4変形例に係るプリンタの差分信号再生成処理の流れを示すフローチャートである。
図14】第5変形例に係るプリンタの検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
図15】第5変形例に係るプリンタにおける生成された差分信号の説明図である。
図16】第5変形例に係るプリンタの差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8、コンセント19などを備えている。
【0014】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0015】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0016】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0017】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0018】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0019】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0020】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0021】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0022】
また、図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する検査用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、信号処理回路78が接続されている。信号処理回路78は、微分回路などを含み、検出用電極76から出力される電位の信号に対して、微分処理を含む処理を行った信号を出力する。すなわち、信号処理回路78から出力される信号は、検出用電極76の電圧に応じた電圧信号である。ただし、信号処理回路78から出力される信号は、電流の信号であってもよい。なお、本実施形態では、検出用電極76と高電圧電源回路77と信号処理回路78と抵抗79とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。
【0023】
キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させたうえで、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させ、且つ、後述する検査用駆動を行わせていない状態では、信号処理回路78から出力される信号(非駆動時信号)の電圧は、仮にノイズの影響がないとした場合、図3(a)、(b)に示す電圧V0となる。
【0024】
そして、本実施形態では、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させたうえで、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動させる検査用駆動を行わせる。
【0025】
ノズル10が、インクの吐出に異常のある異常ノズルでなければ、検査用駆動を行ったときに、ノズル10から帯電したインクが吐出される。これにより、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が変化する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0026】
このとき、信号処理回路78から出力される信号は、仮にノイズの影響がないとすると、図3(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも大きい電圧V1まで上昇し、その後、電圧V0よりも小さい電圧V2まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。これにより、信号処理回路78から出力される信号は、最大値が電圧V1、最小値が電圧V2の信号となる。
【0027】
一方、ノズル10が異常ノズルである場合には、検査用駆動を行っても、ノズル10からインクが吐出されない。そのため、信号処理回路78から出力される信号は、図3(b)に示すように、電圧V0から変化しない。
【0028】
また、信号処理回路78から出力される信号は、ノズル10が異常ノズルでない場合(正常なノズルである場合)に検査用駆動によって値が変動する第1信号部分R1と、第1信号部分の後に続く、ノズル10が異常ノズルであるか否かによらず検査用駆動によっては値がほとんど変動しない第2信号部分R2とを有するものとなる。より詳細には、第1信号部分R1は、図3(a)に示すように、値が所定値[V0+Vt]よりも大きな部分及び所定値[V0-Vt]よりも小さな部分を含む範囲である。つまり、第1信号部分R1は、値の変動が所定値2Vtよりも大きな部分を含む範囲である。また、第2信号部分R2は、第1信号部分とは別の部分であって、値が所定値[V0+Vt]よりも小さく且つ所定値[V0-Vt]よりも大きな部分のみを含む範囲である。つまり、第2信号部分R2は、値の変動が所定値2Vt以下の部分のみを含む範囲である。なお、Vtは、V0より大きく且つV1よりも小さい値である。
【0029】
このように、本実施形態では、ノズル10が異常ノズルであるか否かによって、検査用駆動を行ったときに信号処理回路78から出力される信号が異なる。そして、本実施形態では、このことを利用して、後述するようにノズル10が異常ノズルであるか否かを判定する。
【0030】
コンセント19は、図示しない交流電源に接続可能である。そして、プリンタ1では、コンセント19が挿されて交流電源に接続されているときには、コンセント19から電力が供給される。コンセント19が抜かれると、コンセント19からの電力の供給が途絶える。
【0031】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図4に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77等の動作を制御する。また、制御部80は、信号処理回路78から信号を受信する。
【0032】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0033】
<検査指示信号の受信時の処理>
次に、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときの制御部80の処理の流れについて説明する。例えば、ユーザが、プリンタ1の図示しない操作部、プリンタに接続されたPC等を操作して、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示したときに、操作部、PC等から検査指示信号が送信され、制御部80がこの検査指示信号を受信する。あるいは、例えば、プリンタ1が時刻を示す信号を出力する時計部を有し、所定時刻になる毎に異常ノズルであるか否かの検査を行うように設定されている場合に、時計部から所定時刻となったことを示す信号が送信されたときに、制御部80がこの信号を検査指示信号として受信する。
【0034】
検査指示信号を受信したときに、制御部80は、図5のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御部80は、まず、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうちいずれかのノズル10を、異常ノズルであるか否かの検査の対象となる対象ノズルに設定する(S101)。
【0035】
続いて、制御部80は、非駆動時信号取得処理を実行する(S102)。非駆動時信号取得処理では、制御部80は、インクジェットヘッド4が検査用駆動の非実行時に信号処理回路78から出力される信号を、非駆動時信号として取得する。ここで、非駆動時信号は、コンセント19を介して交流電源から供給される電力の影響によるノイズを含み、例えば図9(a)に示すように、交流電源から供給される電力の周期Tで繰り返される信号を含んでいる。周期Tは、例えば、交流電源が60Hzのものである場合に(1/60)秒であり、交流電源が50Hzのものである場合に(1/50)秒である。また、S102で取得する非駆動時信号は、周期Tよりも長い時間の信号である。
【0036】
続いて、制御部80は、検査用駆動処理を実行する(S103)。検査用駆動処理では、制御部80は、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させた状態で、インクジェットヘッド4に、対象ノズルについての検査用駆動を行わせ、このときに信号処理回路78から出力される判定用信号を取得する。
【0037】
続いて、制御部80は、差分信号生成処理を実行し(S104)、変数Nを0にリセットする(S105)。差分信号生成処理では、制御部80は、S102で取得した非駆動時信号の値と、S103で取得した判定用信号の値との差の信号である差分信号を生成する。ここで、S102の非駆動時信号取得処理で取得した非駆動時信号、及び、S103で取得した判定用信号には、ノイズの成分が含まれているが、S104の差分信号生成処理によって得られる差分信号は、判定用信号からノイズの成分が低減されたものとなっている。差分信号生成処理の詳細については後程説明する。また、変数Nは、S104の差分信号生成処理で差分信号が生成されてから、差分信号の生成条件が変更された回数、すなわち、当該変更した生成条件に基づいて差分信号が生成された回数に対応する。
【0038】
続いて、制御部80は、生成された差分信号の第2信号部分R2に関する値Bが閾値以上であるかを判定する(S106:本発明の「判定処理」)。ここでいう差分信号の値Bとは、後述するように差分信号の第2信号部分R2について、各タイミングの値のうちの最大値である。ここで、上記のタイミングとは、信号が持つ値の時間軸上における各位置のことである。以降は、単にタイミングとだけ記す。また、ここでいう閾値は、生成された差分信号が、ノイズ成分が低減されたものであるかを判定するための値である。つまり、値Bが当該閾値以上であると、ノイズ成分の低減が不十分であると判定し、値Bが当該閾値未満であると、ノイズ成分の低減が十分であると判定する。
【0039】
S106において値Bが、閾値未満である場合(S106:NO)、制御部80はノズル判定処理を実行し(S107)、S112に進む。ノズル判定処理では、制御部80が、生成された差分信号に基づいて対象ノズルが異常ノズルであるか否かを判定する。ノズル判定処理の詳細については、後程説明する。
【0040】
S106において値Bが、閾値以上である場合(S106:YES)、制御部80は変数Nが所定値Nt以上であるか否かを判定する(S108)。変数Nが所定値Nt未満の場合(S108:NO)、制御部80は、差分信号再生成処理を実行し(S109)、変数Nの値を1増加させて(S110)、S106に戻る。なお、本実施形態における所定値Ntは、1であるが、2以上に適宜設定してもよい。差分信号再生成処理では、S104において差分信号を生成するときの生成条件を変更して、新たに差分信号を生成する。差分信号再生成処理の詳細については後程説明する。
【0041】
S108において、変数Nが所定値Nt以上の場合(S108:YES)、つまり、1つの対象ノズルにおける差分信号の再生成回数がNt以上の場合、制御部80はフラッシュメモリ84に当該対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させ(S111)、S112に進む。
【0042】
続いて、制御部80は、S112において、異常ノズルであるか否かの判定を行っていない未判定のノズル10が存在するか否かを判定する。未判定のノズル10が存在する場合には(S112:YES)、制御部80は、対象ノズルを、未判定のノズル10のうちのいずれかに変更し(S113)、S103に戻る。これにより、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について順に、S103~S112の処理によって異常ノズルであるか否かが判定される。
【0043】
S112において未判定のノズル10が存在しない場合には(S112:NO)、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10についてのS107の判定処理の結果及びS111の処理に基づいて、異常ノズルが存在するか否かを判定する(S114)。異常ノズルが存在しない場合には(S114:NO)、そのまま処理を終了する。異常ノズルが存在する場合には(S114:YES)、制御部80は、パージ処理を実行してから(S115)、処理を終了する。パージ処理では、制御部80は、吸引ポンプ72などを制御して、吸引パージを行わせて異常ノズルを回復させる。
【0044】
<差分信号生成処理>
次に、S104の差分信号生成処理について説明する。差分信号生成処理では、制御部80は、図6のフローに沿って処理を行う。
【0045】
より詳細に説明すると、制御部80は、まず、変数Kの値を0にリセットする(S201)。変数Kは、後述する二乗和A0を算出した回数に対応する。続いて、制御部80は、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する初期設定に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる(S202)。上記初期設定は、例えば、予めフラッシュメモリ84に記憶されている。続いて、S202で重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和A0を算出し(S203)、この二乗和A0を二乗和A1としてフラッシュメモリ84に記憶させ(S204)、変数Kの値を1増加させる(S205)。ここで、S203にて、S202で重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和A0を算出していたが、これに限らない。例えば各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の総和をA0としてもよく、また、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差のうち最も大きいものをA0としてもよい。つまり、A0は、重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分において、差の値を用いた値であればよい。
【0046】
続いて、制御部80は、判定用信号と非駆動時信号とを時間ΔTずらして重ね(S206)、S206で重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和A0を算出し(S207)、変数Kの値を1増加させる(S208)。ここで、時間ΔTは、周期Tよりも短い時間である。
【0047】
S207で算出した二乗和A0が、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A1未満の場合には(S209:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A1をS207で算出した二乗和A0に更新するとともに、フラッシュメモリ84に記憶されている判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定を、S207の二乗和A0の算出時のものに更新してから(S210)、S214に進む。このS210においては、更新前の二乗和A1を二乗和A2として記憶又は更新し、当該更新前の二乗和A1における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定を、二乗和A2の設定としてフラッシュメモリ84に記憶又は更新する。二乗和A2における時間軸上の位置に関する設定は、差分信号を再生成するときに使用する。
【0048】
S207で算出した二乗和A0が、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A1以上の場合には(S209:NO)、制御部80は、フラッシュメモリ84に二乗和A2を記憶しているか否かを判定する(S211)。二乗和A2を記憶していない場合(S211:NO)、制御部80は、S207で算出した二乗和A0を二乗和A2としてフラッシュメモリ84に記憶させる(S212)。また、制御部80は、後述のS213からS212に進んできた場合、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A2をS207で算出した二乗和A0に更新する。また、S212においては、記憶又は更新された二乗和A2における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定もフラッシュメモリ84に記憶又は更新する。
【0049】
S211において、二乗和A2を記憶している場合(S211:YES)、制御部80は、S207で算出した二乗和A0が、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A2未満の場合には(S213:YES)、S212に進み、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和A2以上の場合には(S213:NO)、そのままS214に進む。
【0050】
S214では、(K×ΔT)が周期T以上であるか否かを判定する。(K×ΔT)が周期T未満の場合には(S214:NO)、S206に戻る。(K×ΔT)が周期T以上の場合には(S214:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている、二乗和A1における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成する(S215)。このように差分信号生成処理における差分信号の生成条件は、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和が最も小さいときの、二乗和A1における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成することである。
【0051】
続いて、制御部80は、生成した差分信号の第2信号部分R2の各タイミングの値のうちの最大値B0を導出し(S216)、この最大値B0を最大値Bとしてフラッシュメモリ84に記憶させる(S217)。こうして、図5のフローに戻る。
【0052】
ここで、対象ノズルが異常ノズルである場合、判定用信号は、図9(a)に示すように、非駆動時信号と同様の信号となる。一方、対象ノズルが異常ノズルでない場合、判定用信号は、図9(b)に示すように、図9(a)の信号から検査用駆動時の検出用電極76の電圧の変化に応じて変化した信号となる。したがって、上記のように判定用信号と非駆動時信号とを、二乗和A0が最小となる時間軸上の位置で合わせて重ねて、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号は、対象ノズルが異常ノズルでない場合、図3(a)とほぼ同じ信号となり、対象ノズルが異常ノズルである場合、図3(b)とほぼ同じ信号となる。つまり、差分信号においても、信号処理回路78から出力される信号と同様に、上述の第1信号部分R1と第2信号部分R2とを有する。ただし、差分信号では、図3(a)、(b)の電圧V0は、ほぼ0となる。
【0053】
<ノズル判定処理>
次に、S107のノズル判定処理について説明する。ノズル判定処理では、制御部80は、図7のフローに沿って処理を行う。
【0054】
より詳細に説明すると、制御部80は、生成された差分信号の最大値Mと最小値mとの差[M-m]が閾値Jt以上であるか否かを判定する(S301)。[M-m]が閾値Jt以上の場合には(S301:YES)、制御部80はフラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルでないことを記憶させ(S302)、図5のフローに戻る。[M-m]が閾値Jt未満の場合には(S301:NO)、制御部80はフラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させ(S303)、図5のフローに戻る。
【0055】
<差分信号再生成処理>
次に、S109の差分信号再生成処理について説明する。差分信号再生成処理では、制御部80は、図8のフローに沿って処理を行う。
【0056】
より詳細に説明すると、制御部80は、差分信号の生成条件を、S104の生成条件から、二乗和A2における時間軸上の位置の情報に変更する(S401)。
【0057】
次に、制御部80は、変更された差分信号の生成条件に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成する(S402)。このように差分信号再生成処理における差分信号の生成条件は、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和が最も小さいときの二乗和A1の次に小さい二乗和A2における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成することである。
【0058】
続いて、制御部80は、上述のS216,S217と同様に、再生成した差分信号の第2信号部分R2の各タイミングの値のうちの最大値B0を導出し(S403)、この最大値B0を最大値Bとしてフラッシュメモリ84に記憶させる(S404)。こうして、図5のフローに戻る。
【0059】
本実施形態では、判定用信号と非駆動時信号とで、ノイズによる成分が共通している。したがって、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号は、判定用信号においてノイズの成分が低減された信号となる。これにより、ノズル判定処理においては、差分信号に基づいて異常ノズルであるか否かを精度よく判定することができる。
【0060】
また、本実施形態では、S104において、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを時間軸上で重ねて差分信号を生成する。これにより、差分信号をノイズ影響の小さい信号とすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、S104において、各タイミングにおける判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号を時間軸上で重ねて差分信号を生成する。これにより、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を最も小さくすることができる。
【0062】
ここで、本実施形態では、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗している。二乗することにより、差の値が小さい場合よりも、差の値が大きい場合の方が、より重みづけされて総和の値に影響を及ぼすこととなる。これにより、大きく外れた値があるものをより抽出しやすくすることができる。
【0063】
また、ノイズの成分が同じであれば、判定用信号の第2信号部分と、非駆動時信号の第2信号部分に対応する部分とはほぼ同じ信号となる。そこで、本実施形態では、判定用信号の第2信号部分と非駆動時信号との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて、差分信号を生成する。これにより、差分信号をノイズ影響の小さいものとすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、差分信号は、判定用信号においてノイズの成分が低減された信号であるため、差分信号の最大値Mと最小値mとの差[M-m]が閾値Jt未満であるか否かに基づいて、異常ノズルであるか否かを精度よく判定することができる。
【0065】
非駆動時信号におけるノイズは交流電源から供給される電力の周期Tで変化する。そこで、本実施形態では、非駆動時信号を周期Tよりも長い信号とする。これにより、非駆動時信号を、交流電源から供給される電力の周期Tに応じて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置を調整するのに十分に長いものとすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、検査用駆動処理の直前に非駆動時信号設定処理を実行している。すなわち、検査用駆動の直前に非駆動時信号を取得している。これにより、判定用信号と非駆動時信号とで、含まれるノイズの成分を近いものにすることができる。
【0067】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、S106の判定処理により、生成された差分信号が精度良く生成されているか否かを判定することが可能となる。このため、S107のノズル判定処理での判定精度の低下を抑制し、ノズル検査の信頼性が向上する。
【0068】
また、S106の判定処理では、生成された差分信号の第2信号部分R2について、各タイミングの値のうちの最大値である差分信号の値Bが閾値以上であるかを判定する。これにより、値Bの導出が容易となり、判定処理による、差分信号の判定を容易に行うことが可能となる。
【0069】
また、S211~S213では、二乗和A1の次に大きい二乗和A2のみを記憶したがこれに限らない。更に、A2の次に大きいA3、A3の次に大きいA4を記憶してもよい。つまりは、再生成処理を実行する回数に応じて、二乗和の値に応じた情報を小さい順から記憶しておけばよい。
【0070】
<第1変形例>
第1変形例として、図10に示すように、S104の差分信号生成処理において、S216を、生成された差分信号の第2信号部分R2について、各タイミングでの値の総和C0を算出する処理(S501)に変更し、S217を、当該総和C0を値Bとしてフラッシュメモリ84に記憶させる処理(S502)に変更してもよい。そして、S106の判定処理において、当該値B(総和C0)が閾値以上であるかを判定してもよい。これにより、ノイズの成分が大きいものをより抽出しやすくなる。したがって、判定処理による、差分信号の判定精度が向上する。なお、S109の差分信号再生成処理におけるS403,S404も同様にS501,S502に変更してもよい。これにおいても同様の効果を得ることができる。なお、判定処理における閾値は、値Bの導出方法によって適宜変更すればよい。
【0071】
<第2変形例>
第2変形例として、図11に示すように、S104の差分信号生成処理において、S216を、生成された差分信号の第2信号部分R2について、各タイミングでの値を二乗した値の総和である二乗和D0を算出する処理(S601)に変更し、S217を、当該最大値D0を値Bとしてフラッシュメモリ84に記憶させる処理(S602)に変更してもよい。このように値Bが、二乗した値の総和であることで、二乗していない値の総和に比して、より重みづけされて総和の値に影響を及ぼすこととなる。これにより、大きく外れた値があるものをより抽出しやすくすることができる。したがって、判定処理による、差分信号の判定精度がより向上する。なお、S109の差分信号再生成処理におけるS403,S404も同様にS601,S602に変更してもよい。これにおいても同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、S108において、変数Nが所定値Nt以上の場合(1つの対象ノズルにおける差分信号の再生成回数がNt以上の場合)、制御部80はフラッシュメモリ84に当該対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させる。S107において異常ノズルであるか否かを判定することができなかった対象ノズルを異常ノズルとすることができるため、S115によりノズル10の回復動作である吸引パージを行うことが可能となる。このため、印刷による画質が向上する。
【0073】
また、S106からS108を経由してS111へと進む場合、すなわち、差分信号の生成条件の変更がNt回行われた場合、当該差分信号の生成条件の変更がNt回以降は行われない。これにより、対象ノズルにおける生成条件の変更がNt回数(所定回数)までとなり、以上繰り返し行われないために、検査に要する時間が長くなるのを抑制することができる。
【0074】
<第3,第4変形例>
上述の実施形態においては、S106からS109の差分信号再生成処理に進んだときに、差分信号の生成条件を、二乗和A1から二乗和A2における時間軸上の位置の情報に変更しているが、第3変形例として、判定用信号を再度取得することで、差分信号の生成条件を変更してもよいし、第4変形例として、非駆動時信号を再度取得することで、差分信号の生成条件を変更してもよい。つまり、第3変形例としては、図12に示すように、S109の差分信号再生成処理において、S401を、差分信号の生成条件を、判定用信号を再度取得することに変更する処理(S701)に変更してもよい。これにより、S402においては、変更された差分信号の生成条件に基づいて、S103と同様な検査用駆動処理が再度実行され、判定用信号が再度取得される。そして、取得した判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成する。このとき、判定用信号と非駆動時信号とは、二乗和A1における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成してよい。また、この変形例として、判定用信号と非駆動時信号とは、二乗和A2における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成してよい。これらにおいても、差分信号を容易に再生成することが可能となる。
【0075】
また、第4変形例としては、図13に示すように、S109の差分信号再生成処理において、S401を、差分信号の生成条件を、非駆動時信号を再度取得することに変更する処理(S801)に変更してもよい。これにより、S402においては、変更された差分信号の生成条件に基づいて、S102と同様な非駆動時信号取得処理が再度実行され、非駆動時信号が再度取得される。そして、判定用信号と再取得した非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成する。このとき、判定用信号と非駆動時信号とは、二乗和A1における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成してよい。また、この変形例として、判定用信号と非駆動時信号とは、二乗和A2における判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、差分信号を生成してよい。また、別の変形例として、第3変形例において、S701に加えてS801を実行してもよい。これらにおいても、差分信号を容易に再生成することが可能となる。
【0076】
<第5変形例>
上述の実施形態においては、S106の判定処理において、差分信号の第2信号部分R2に関する値Bが閾値以上であるかを判定していたが、第5変形例として、図14に示すように、S106を、差分信号の第1信号部分R1に関する値Eが第1閾値Vt1以上且つ第2閾値Vt2未満であるかを判定する処理(S901)に変更してもよい。
【0077】
本変形例における差分信号の値Eとは、図15に示すように、差分信号の第1信号部分R1における区間T内の最大値Vmaxと最小値Vminとの差の値である。区間Tとは、差分信号の第1信号部分R1において、最大値Vmaxを取ると推定されるタイミングと最小値Vminを取ると推定されるタイミングとを含む時間軸上の区間である。つまり、最大値Vmaxは区間Tにおける最大値であり、最小値Vminは区間Tにおける最小値である。第1閾値Vt1は、電圧V0よりも小さく最小値Vminよりも大きい値であり、第2閾値Vt2は電圧V0よりも大きく最大値Vmaxよりも小さい値である。つまり、第2閾値Vt2は、第1閾値Vt1よりも大きい値である。そして、第1及び第2閾値は、差分信号のノイズ成分が低減されたものであるかを判定するために予め設定された値である。
【0078】
また、本変形例においては、図16に示すように、S104の差分信号生成処理において、S216を、生成された差分信号の第1信号部分R1ついて、区間Tにおける最大値Vmaxと最小値Vminとの差である値E0を算出する処理(S1001)に変更し、S217を、当該値E0を値Eとしてフラッシュメモリ84に記憶させる処理(S1002)に変更する。このような第5変形例においても、判定処理により、生成された差分信号が精度良く生成されているかを判定することが可能となる。このため、ノズル判定処理での判定精度の低下を抑制し、ノズル検査の信頼性が向上する。
【0079】
値Eが、生成された差分信号の第1信号部分R1の一部の区間Tにおける最大値Vmaxと最小値Vminとの差である。このため、判定処理による、差分信号の判定精度がより一層向上する。
【0080】
<第6変形例>
第5変形例においては、予め定められた区間Tにおける最大値Vmaxと最小値Vminとの差が値Eであったが、第6変形例として、差分信号の第1信号部分R1全体の中の、最大値と最小値との差を値Eとしてもよい。つまり、上述のS1001において、第1信号部分R1全体の中の最大値と最小値との差である値E0を算出する。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0081】
<第7変形例>
第5変形例においては、区間Tにおける最大値Vmaxと最小値Vminとの差が値Eであったが、第7変形例として、差分信号の区間Tにおける何れかの値を値Eとしてもよい。この場合、上述のS1001において、生成された差分信号の当該区間Tにおける最大値Vmax又は最小値Vminを値E0として導出してもよい。なお、区間Tは、差分信号の第1信号部分R1において、最大値Vmax又は最小値Vminを取ると推定されるタイミングを含む区間となる。このように、差分信号の一部の区間Tである値をE0として導出することで、生成された差分信号の判定をより容易に行うことが可能となる。また、上述のS1001において、生成された差分信号の当該区間Tにおける値であれば、最大値Vmax及び最小値Vmin以外の値を値E0として導出してもよい。
【0082】
また、第7変形例における区間Tは、差分信号の第1信号部分R1の最大値Vmaxと最小値Vminとを取ると推定されるタイミングの含む区間であるが、これら最大値Vmax及び最小値Vminの一方の値を取ると推定されるタイミングを含む区間を、差分信号の第1信号部分R1の一部の区間としてもよいし、これら最大値Vmax及び最小値Vminの両方の値と取ると推定されるタイミング以外のタイミングを含む区間を当該一部の区間としてもよい。いずれの場合においても、上述と同様に、差分信号の判定を容易に行うことが可能となる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0084】
上述の実施形態及び第1~4変形例においては、差分信号の第2信号部分R2に関する値が、正の値および負の値のいずれでもよく、当該値の絶対値であってもよく、適宜設定すればよい。
【0085】
また、差分信号の生成は、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する初期設定に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねて生成するだけであってもよい。要するに、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成しておればよい。
【0086】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、一律に吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、異常ノズルの数が多いほど吸引パージにおけるインクの排出量を多くするなどしてもよい。
【0087】
また、パージは、吸引パージであることにも限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。
【0088】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。また、パージの代わりに、インクジェットヘッド4に少なくとも異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせてもよい。また、パージとフラッシングの両方を行わせてもよい。
【0089】
また、異常ノズルが存在する場合に、制御部80が自動的に吸引パージなどを行わせることにも限られない。例えば、異常ノズルが存在する場合に、ユーザへの報知を行って、ユーザに吸引パージを行うか否かを選択させ、吸引パージを行うことが選択されたときに吸引パージを行わせてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいて異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電圧の変化に応じて、信号処理回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。
【0092】
例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧の変化に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0093】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御部80に、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0094】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0095】
また、以上の例では、信号出力部が、ノズル10からインクが吐出されたか否かに応じた信号を出力するものであったが、これには限られない。信号出力部は、インクが吐出されないこと以外の異常がある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するものであってもよい。インクが吐出されないこと以外の異常とは、例えば、インクの吐出方向に異常があることである。
【0096】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0097】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0098】
1 プリンタ(液体吐出装置)
4 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
76 検出用電極(信号出力部の一部)
77 高電圧電源回路(信号出力部の一部)
78 信号処理回路(信号出力部の一部)
79 抵抗(信号出力部の一部)
80 制御部
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