(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183987
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】情報処理システムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20221206BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091560
(22)【出願日】2021-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520123032
【氏名又は名称】株式会社KINTO
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯 潔倫
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】長沼 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 純也
(72)【発明者】
【氏名】利根 優太
(72)【発明者】
【氏名】石塚 真規
(72)【発明者】
【氏名】田中 唯之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】横井 友香
(72)【発明者】
【氏名】林 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】濱田 優
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の塗装に関する情報を一元管理する情報処理装置及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】車両管理システムは、複数の車両を管理する管理サーバ100と、車両拠点に対応する拠点サーバ200と、ユーザ端末300と、で構成される。所定の車両について、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶するデータベースを有する管理サーバ100が、車両に対して行われた塗装作業の内容を表す作業データを取得し、当該作業データに基づいて、データベースを更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車両について、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶するデータベースと、
前記車両に対して行われた前記塗装作業の内容を表す作業データを取得することと、
前記作業データに基づいて、前記データベースを更新することと、
を実行する制御部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記塗装作業は、
前記車両が有する第一の塗装膜の上に、前記易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作業、または、前記車両から前記第二の塗装膜を剥離する作業、のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記作業データは、前記第二の塗装膜の構成についての情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第二の塗装膜は、複数の層からなり、前記作業データは、各層についての情報を含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものである、
請求項2から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記作業データは、前記塗装作業前における前記車両の現状に関するデータを含み、
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致しているか否かを判定する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、その旨を通知するデータを生成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、前記車両について、現時点までの塗装作業の履歴が不明である旨のレコードを前記データベースに追加する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記データベースは、前記塗装作業を行った拠点の識別子をさらに関連付けたデータである、
請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記データベースは、前記塗装作業の発注者に関する情報をさらに関連付けたデータである、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記作業データを、前記拠点に対応する装置から受信する、
請求項9または10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、外部装置からの問い合わせに応答して、第一の車両についての前記塗装作業の履歴を前記データベースから検索し、得られた結果を前記外部装置に送信する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記データベースは、前記塗装作業後における前記第一の車両の写真をさらに関連付けたデータである、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第一の車両の写真を前記外部装置にさらに送信する、
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
所定の車両に対して易剥離層を含む塗装膜を用いて行われた塗装作業の内容を表す作業データを取得するステップと、
前記作業データに基づいて、前記塗装作業の履歴を前記車両ごとに記憶するデータベースを更新するステップと、を含む、情報処理方法。
【請求項16】
前記塗装作業は、
前記車両が有する第一の塗装膜の上に、前記易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作業、または、前記車両から前記第二の塗装膜を剥離する作業、のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項15に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記作業データは、前記第二の塗装膜の構成についての情報を含む、
請求項16に記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものである、
請求項16または17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記作業データは、前記塗装作業前における前記車両の現状に関するデータを含み、
前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致しているか否かを判定するステップをさらに含む、
請求項18に記載の情報処理方法。
【請求項20】
外部装置からの問い合わせに応答して、第一の車両についての前記塗装作業の履歴を前記データベースから検索し、得られた結果を前記外部装置に送信するステップをさらに含む、
請求項15から19のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のメンテナンスに関する情報を一元管理するシステムが知られている。これに関連する発明として、例えば、特許文献1には、給油所に来店する顧客の自動車に関する情報をナンバープレートと関連付けて保持するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車両の塗装に関する情報を一元管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の態様は、所定の車両について、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶するデータベースと、前記車両に対して行われた前記塗装作業の内容を表す作業データを取得することと、前記作業データに基づいて、前記データベースを更新することと、を実行する制御部と、を有する、情報処理装置である。
【0006】
また、本開示の第二の態様は、所定の車両に対して易剥離層を含む塗装膜を用いて行われた塗装作業の内容を表す作業データを取得するステップと、前記作業データに基づいて、前記塗装作業の履歴を前記車両ごとに記憶するデータベースを更新するステップと、を含む、情報処理方法である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両の塗装に関する情報を一元管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】管理サーバ、拠点サーバ、およびユーザ端末の構成を説明する図。
【
図6】拠点サーバが実行する処理のフローチャート。
【
図9】管理サーバが実行する処理のフローチャート。
【
図10】第一の実施形態において管理サーバが実行する処理のフローチャート。
【
図11】第一の実施形態において塗装履歴の照会を行う画面の例。
【
図12】第一の実施形態において塗装履歴の照会を行う画面の例。
【
図14】第二の実施形態において管理サーバが実行する処理のフローチャート。
【
図16】第二の実施形態において塗装履歴の照会を行う画面の例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
易剥離層を含む塗装膜を利用して、車両のボディに剥がせる塗装を施す技術がある。斯様な塗装膜は容易に剥離することができるため、任意のタイミングで車体色を変更することができる。これにより、例えば、車両の購入時に、中古車市場において人気のある車体色を選択したうえ、自分の好みの色を上塗りして使用し、売却時に元の色に戻すといったことが可能になる。
また、上塗り塗装をすることによって、オリジナルの塗装膜が保護されるため、上塗り塗装を施さない場合と比較して中古車の価値を向上させることができる。
【0011】
なお、本明細書において、「上塗り」とは、車両が有する第一の塗装膜の上に、易剥離層を含む第二の塗装膜を形成することを指す。第二の塗装膜は、事後的に剥離することができる、一層以上の塗装膜である。また、「(塗装の)剥離」とは、第二の塗装膜を剥離(除去)することを指す。また、「上塗り塗装」とは、易剥離層を含む塗装膜を使用して、既存の塗装膜の上に重ね塗りされた、剥離可能な塗装を指す。
なお、本明細書において、塗装膜とは、塗装の過程において施工される塗料の膜、剥離可能な膜、または、これらの組み合わせを指す語として用いる。
【0012】
このような、塗装の上塗りが容易に行えるシステムが普及すると、車体の外観だけでは、車両の来歴を推定することが難しくなることが予想される。例えば、ある車両が中古販売されている場合に、オリジナルの車体色とは異なる塗装が施されているのか、そうでないかを一見して判別することは難しい。また、上塗り塗装を剥離した直後は、新車同様の外観に見えるため、車両のコンディションと外観が一致していないということが起こりうる。また、易剥離層を含む塗装膜は力をかけることで剥離するため、塗装の状態を正しく把握していないと、洗車機や高圧洗浄機の使用によってトラブルが発生してしまうといったことが予想される。
本開示に係る情報処理装置は、かかる問題を解決する。
【0013】
本開示の第一の態様に係る情報処理装置は、所定の車両について、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶するデータベースと、前記車両に対して行われた前記塗装作業の内容を表す作業データを取得することと、前記作業データに基づいて、前記データベースを更新することと、を実行する制御部と、を有することを特徴とする。
【0014】
易剥離層とは、車体に施工可能であり、かつ、事後的に剥がせる層を指す。易剥離層を含む塗装膜とは、例えば、剥離可能なフィルム状の膜と通常の塗装膜の組み合わせであってもよいし、色を持つ塗装膜自体が剥離可能なもの(易剥離性塗料)であってもよい。
車両が本来有する塗装膜の上に、易剥離層を含む塗装膜を形成することで、上塗りされた塗装を事後的に剥離できる(すなわち、車体色を元に戻すことができる)ようになる。
【0015】
データベースは、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶する。塗装作業とは、所定の車体色を持つ車両に対して、易剥離層を含む塗装膜を上塗りする作業、または、当該塗装膜を剥離(除去)する作業、のうちの少なくともいずれかとすることができる。
【0016】
情報処理装置は、外部から取得した作業データに基づいて、当該データベースを更新す
る。かかる構成によると、所定の車両について行われた上塗り塗装、および、上塗り塗装の除去に関する記録を残すことができる。
【0017】
また、前記作業データは、前記第二の塗装膜の構成についての情報を含むことを特徴としてもよい。
第二の塗装膜の構成についての情報とは、例えば、上塗り塗装を行う際に使用した塗料についての詳細な情報や、重ね塗りの順序などに関するものであってもよい。
【0018】
また、前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものであることを特徴としてもよい。
これにより、新車状態から行われた全ての塗装作業の履歴をデータベース化することができる。
【0019】
また、前記作業データは、前記塗装作業前における前記車両の現状に関するデータを含み、前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致しているか否かを判定することを特徴としてもよい。
車両の現状に関するデータとは、例えば、当該車両の現在の塗装色であってもよいし、当該車両の外観画像などであってもよい。かかる構成によると、データベースによって管理されている内容が、実車と整合しているか否かを判定することができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、その旨を通知するデータを生成することを特徴としてもよい。
また、前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、前記車両について、現時点までの塗装作業の履歴が不明である旨のレコードを前記データベースに追加することを特徴としてもよい。
かかる構成によると、データベースと実車の状態が整合していない状態のまま履歴が追加されてしまうことを防ぐことができる。
【0021】
また、前記データベースは、前記塗装作業を行った拠点の識別子をさらに関連付けたデータであることを特徴としてもよい。
また、前記データベースは、前記塗装作業の発注者に関する情報をさらに関連付けたデータであることを特徴としてもよい。
塗装作業を行った拠点とは、例えば、車両の製造工場、整備工場、または、カーディーラー等である。発注者は、塗装作業を発注した者である。これにより、どのような背景で塗装作業が行われたかを記録に残すことが可能になる。作業データは、前記拠点に対応する装置から受信してもよい。
【0022】
また、前記制御部は、外部装置からの問い合わせに応答して、第一の車両についての前記塗装作業の履歴を前記データベースから検索し、得られた結果を前記外部装置に送信することを特徴としてもよい。
外部装置は、例えば、第一の車両を売買する事業者や、第一の車両の購入を検討しているユーザが利用する装置とすることができる。かかる構成によると、任意のユーザに対して車両の塗装履歴を示すことができる。
【0023】
また、前記データベースは、前記塗装作業後における前記第一の車両の写真をさらに関連付けたデータであることを特徴としてもよい。
また、前記制御部は、前記第一の車両の写真を前記外部装置にさらに送信することを特徴としてもよい。
車両の外観を示す画像を、塗装作業が発生するごとに保存することで、過去の任意の時
点における車両の外観を確認することが可能になる。
【0024】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る車両管理システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。
本実施形態に係る車両管理システムは、複数の車両を管理する管理サーバ100と、車両拠点に対応する拠点サーバ200と、ユーザ端末300と、を含んで構成される。
【0026】
管理サーバ100は、メーカーによって製造され、ユーザに供給される車両を管理する装置である。管理対象の車両は、所定の車両拠点において、塗装作業を行うことができる。塗装作業とは、例えば、(1)車両が有する第一の塗装膜(例えば、オリジナルの塗装膜)の上に易剥離性塗料によって第二の塗装膜を形成する作業、または、(2)当該車両から第二の塗装膜を剥離する作業等を含む。車両拠点において、第二の塗装膜の形成または剥離を行うことで、車両の車体色を変更することができる。
管理サーバ100は、管理下にある複数の車両について、過去に行われた塗装作業の履歴(以下、塗装履歴)を記録するデータベースを有している。
【0027】
拠点サーバ200は、車両に対して塗装作業を行う車両拠点に関連付いたサーバ装置である。車両拠点とは、例えば、車両の製造工場、整備工場、カーディーラーなどである。拠点サーバ200は、所定の車両に塗装作業を行った際に、当該塗装作業の詳細を表すデータ(以下、作業データ)を生成して管理サーバ100に送信する。これにより、データベースの更新が行われる。
【0028】
ユーザ端末300は、システムの管理下にある車両を売買するユーザが利用するコンピュータである。ユーザは、ユーザ端末300を介して管理サーバ100にアクセスし、所与の車両(例えば、中古車として購入を検討している車両)についての塗装履歴を照会することができる。
ユーザ端末300は、ユーザが所有するコンピュータであってもよいし、事業者の店舗(例えば、中古車販売店等)に設置されたコンピュータであってもよい。
【0029】
図2は、本実施形態に係る車両管理システムに含まれる、管理サーバ100、拠点サーバ200、およびユーザ端末300の構成要素をより詳細に示した図である。ここではまず、ユーザ端末300について説明する。
ユーザ端末300は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、個人情報端末といった、個人が利用するコンピュータである。ユーザ端末300は、制御部301、記憶部302、通信部303、および入出力部304を含んで構成される。
【0030】
制御部301は、ユーザ端末300が行う制御を司る演算装置である。制御部301は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置によって実現することができ
る。
制御部301は、管理サーバ100にアクセスしてインタラクションを行う機能を実行する。当該機能は、ユーザ端末300で動作するウェブブラウザや、専用のアプリケーションソフトウェアによって実現されてもよい。
【0031】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御
部301によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部301において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。補助記憶装置には、制御部301で実行されるプログラムをアプリケーションとしてパッケージ化したものを記憶してもよい。また、これらのアプリケーションを実行するためのオペレーティングシステムを記憶してもよい。補助記憶装置に記憶されたプログラムが主記憶装置にロードされ、制御部301によって実行されることで、以降に説明する処理が行われる。
【0032】
主記憶装置は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含んでもよい。また、補助記憶装置は、EPROM(Erasable Programmable ROM)やハード
ディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)を含んでもよい。さらに、補助記憶装置
は、リムーバブルメディア、すなわち可搬記録媒体を含んでもよい。
【0033】
通信部303は、ユーザ端末300をネットワークに接続するための無線通信インタフェースである。通信部303は、例えば、無線LANや3G、LTE、5G等の移動体通信サービスを介して、管理サーバ100と通信可能に構成される。
入出力部304は、ユーザが行った入力操作を受け付け、ユーザに対して情報を提示するユニットである。入出力部304は、例えば、一つのタッチパネルディスプレイからなる。入出力部304は、液晶ディスプレイとその制御手段、タッチパネルとその制御手段から構成されてもよい。
【0034】
次に、管理サーバ100について説明する。
管理サーバ100は、管理下にある複数の車両について、その塗装履歴を管理するデータベースを記憶する。また、拠点サーバ200から受信した作業データに基づいて、データベースの更新を行う。さらに、管理サーバ100は、ユーザ端末300からの問い合わせに応答してデータベースの検索を行い、所定の車両について塗装履歴を取得し、提供する。
【0035】
本実施形態では、管理サーバ100は、拠点サーバ200およびユーザ端末300とのインタラクションを行うためのWebサーバを実行可能に構成されてもよい。この場合、例えば、拠点サーバ200およびユーザ端末300が、ブラウザを用いてWebサービスにアクセスすることで、情報の入出力を行うことができる。なお、管理サーバ100は、Webサーバ以外の手段によってサービスを提供してもよい。例えば、拠点サーバ200やユーザ端末300にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアと所定のプロトコルによって対話するサービスを管理サーバ100において実行してもよい。
【0036】
管理サーバ100は、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、管理サーバ100は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0037】
管理サーバ100は、制御部101、記憶部102、および、通信部103を有して構成される。
制御部101は、管理サーバ100が行う制御を司る演算装置である。制御部101は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部101は、データ更新部1011、および、情報提供部1012の2つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0038】
データ更新部1011は、拠点サーバ200から受信したデータに基づいて、車両の塗装履歴を記憶するデータベースを更新する。データ更新部1011は、以下の処理のうちのいずれかを実行する。
(1)車両が新規に製造された場合に、車両に対応するデータベースを新規に生成する
(2)拠点サーバ200から作業データを受信した場合に、対応するデータベースに、その内容に応じたレコードを追加する
【0039】
車両が新規に製造された場合、当該車両は、オリジナルの車体色を有している。一方、当該車両に対して塗装作業が実施された場合、塗装の上塗りが行われ、車体色が変わる。また、上塗りされた塗装を剥離した場合も同様に、車体色が変わる。
データベースは、新車製造時からの塗装作業の履歴を全て保持しているため、第三者は、データベースを参照することで、所与の車両の塗装が現在どのような状態であるかについての情報を得ることができる。データベースの詳細については後述する。
【0040】
情報提供部1012は、ユーザ端末300から取得したリクエストに応答し、指定された車両の塗装履歴を取得し、ユーザ端末300に提供する。
【0041】
記憶部102は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部101によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部101において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0042】
また、記憶部102は、車両データ102A、および、履歴データ102Bを記憶する。
【0043】
車両データ102Aは、管理下にある車両のそれぞれに固有な情報である。
図3(A)は、車両データ102Aの一例である。図示したように、車両データ102Aは、車両の識別子、車種の識別子、製造日、車体色の識別子、履歴データへのポインタ等を含む。車体色とは、車両が有しているオリジナルの車体色である。
【0044】
履歴データ102Bは、特定の車両に対して行われた塗装作業の履歴を表したデータの集合である。
図3(B)に、履歴データ102Bの例を示す。
本実施形態では、塗装作業は、(1)易剥離塗料を上塗りする作業、(2)易剥離塗料を剥離する作業、(3)易剥離塗料による塗装を補修する作業のいずれかである。履歴データ102Bは、車両単位で生成され、一つのレコードが、一回の塗装作業に対応する。拠点サーバ200から作業データを受信した場合(すなわち、ある車両に対して塗装作業が行われた場合)、当該車両に対応する履歴データ102Bに、塗装作業に対応するレコードが新規に追加される。
【0045】
履歴データ102Bは、塗装作業を行った日付、塗装作業を行った車両拠点、塗装作業の発注者、施工種別(塗装作業の種別。すなわち、前述した(1)~(3)のいずれか)、塗装についての詳細情報などを含む。塗装についての詳細情報とは、例えば、何層目にどのような塗装を施したかを表す情報である。
【0046】
前述した各データは、プロセッサによって実行されるデータベース管理システム(DBMS)のプログラムが、記憶装置に記憶されるデータを管理することで構築されてもよい
。この場合、各データは、例えばリレーショナルデータベースとすることができる。
【0047】
通信部103は、管理サーバ100をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部103は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信インタフェースを含んで構成される。
【0048】
次に、拠点サーバ200について説明する。
拠点サーバ200は、車両の塗装作業を行う拠点に設置された装置であって、車両に対して塗装作業が行われた場合に、当該塗装作業の内容に関するデータを管理サーバ100に送信する。
塗装作業は、例えば、ユーザによるオーダーがあった際に行われる。また、対象の車両がリース車両である場合、車両の返却時に塗装を剥離し、元の車体色に戻す場合がある。さらに、中古車として買い取られた車両の塗装を、事業者の指示によって剥離する場合もある。
【0049】
なお、拠点サーバ200は、車両を製造する拠点(製造拠点)に設置されていてもよい。また、車両が新規に製造された場合、拠点サーバ200が、その旨を管理サーバ100に通知してもよい。これにより、新しい車両に対応するデータベースの生成をトリガすることができる。
【0050】
拠点サーバ200は、管理サーバ100と同様に、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、拠点サーバ200は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。
【0051】
拠点サーバ200は、制御部201、記憶部202、通信部203、および、入出力部204を有して構成される。
制御部201は、拠点サーバ200が行う制御を司る演算装置である。制御部201は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部201は、データ取得部2011、および、データ送信部2012の2つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0052】
データ取得部2011は、車両拠点の係員によって行われた入力の内容に基づいて、作業データを生成する。
図4(A)は、作業データの内容を例示する図である。
作業データには、図示したように、車両の識別子、作業日、車両拠点、施工種別、塗装の詳細情報、発注者の各フィールドが含まれる。
車両の識別子は、作業対象の車両を一意に識別する識別子(例えば、車台番号やVIN(Vehicle Identification Number)等)である。作業日は作業を行った日付、車両拠点
は、塗装作業を行った車両拠点を一意に識別する識別子である。施工種別には、「(塗装の)上塗り」「(上塗り塗装の)剥離」「(上塗り塗装の)補修」のいずれかが格納される。
【0053】
塗装の詳細情報は、塗装の詳細に関する情報が格納されるフィールドである。
具体的には、塗料の特徴(剥離可能であるか否か)、色に関する情報(色番号等)、重ね塗りの有無、重ね塗りの順序、付加層(クリア等)の有無などが格納される。
発注者は、塗装作業を発注した者の識別子が格納されるフィールドである。例えば、車両オーナーの希望で塗装作業が行われた場合、当該オーナーの識別子が格納され、事業者の判断で塗装作業が行われた場合、当該事業者の識別子が格納される。
【0054】
図4(A)および
図4(B)は、塗装の上塗り、および、上塗りされた塗装の剥離を行った場合に生成される作業データの例である。
【0055】
作業データは、塗装の補修を行った際にも生成される。
図4(C)は、施工種別が「補修」である場合における作業データの例である。本例では、前述した例に加え、補修対象の箇所、および、補修の方法に関するデータ(符号401)が追加される。例えば、「右フロントドア」に対して、「塗装を剥離して再塗装を行った」旨のデータが追加される。
これらの作業データは、後述する入出力部204を介して入力された情報に基づいて生成することができる。
【0056】
なお、拠点サーバ200が、車両の製造拠点に対応する装置である場合、拠点サーバ200は、作業データの代わりに、車両が新規に製造された旨を管理サーバ100に対して通知するデータを生成してもよい。このようなデータを通知データと称する。通知データは、車両の識別子、車両の製造日、車両を製造した拠点、車体色の詳細情報などを含んでもよい。
【0057】
データ送信部2012は、データ取得部2011が生成した作業データ(ないし通知データ)を管理サーバ100に送信する。
【0058】
記憶部202は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部201によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部201において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータ(作業データおよび通知データを含む)が記憶される装置である。
【0059】
通信部203は、拠点サーバ200をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部203は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信インタフェースを含んで構成される。
入出力部204は、ユーザが行った入力操作を受け付け、ユーザに対して情報を提示するユニットである。入出力部204は、例えば、外部ディスプレイとのインタフェース、キーボード、マウス等を含んでもよい。
【0060】
なお、
図2に示した構成は一例であり、図示した機能の全部または一部は、専用に設計された回路を用いて実行されてもよい。また、図示した以外の、主記憶装置および補助記憶装置の組み合わせによってプログラムの記憶ないし実行を行ってもよい。
【0061】
ここで、易剥離性塗料について簡単に説明する。
図5(A)は、車体が有するボディ部材(例えば鋼板)と、ボディ部材に施工された塗装膜を示す概略断面図である。図示したように、ボディ部材は、金属加工され、電着層が形成された鋼板10と、電着層の上に順に形成された中塗り層20、ベース層30、および、クリア層40を有する。
これらの層が、一層目の塗装(オリジナルの塗装)に該当する。
【0062】
ボディ部材の外側面には、二層目の塗装として、剥離層50が形成されている。剥離層50は、易剥離性塗料の層であって、通常の塗装膜と比べ、力を加えることで容易に剥離できるという性質を持っている。剥離層50が、本開示における「易剥離層」であり、二層目として図示した塗装膜が、「易剥離層を含む塗装膜」である。剥離層50は、例えば噴霧法で易剥離性塗料をボディ部材に塗装することにより形成される。易剥離性塗料としては、例えばキシレン、エチルベンゼン、酸化防止剤、メチルエチルケトン、シリカ反応物、酸化チタン(ナノ粒子)、および、有機溶剤等からなる塗料が挙げられる。
【0063】
易剥離性塗料による車両の上塗り塗装は、所定の車両拠点において行うことができる。これにより、車両の車体色を容易に変更(すなわち、第一車体色から第二車体色へ変更)することができる。剥離層50の剥離も同様である。剥離層50を、所定の車両拠点において剥離することで、車両の車体色をオリジナルのものに戻す(すなわち、第二車体色から第一車体色へ戻す)ことができる。
【0064】
なお、本例ではボディ部材として鋼板を例示したが、ボディ部材は、樹脂部材であってもよい。この場合、中塗り層20はプライマー層となる。また、剥離層50の上にさらにクリア層を設けてもよい。
なお、
図5(A)の例は、塗料自体に易剥離性を与えたものであるが、易剥離性を有する層の上に通常の塗装を施してもよい。例えば、
図5(B)に示したように、剥離層50と同様の材料によって、着色されていない剥離層60を形成し、剥離層60の上に、ベース層30Aおよびクリア層40Aを形成してもよい。ベース層30Aは、ベース層30とは異なる色を持つ塗料の層である。かかる形態においても、剥離層60を剥離することで、塗料の層を除去することができる。この場合、剥離層60が、本開示における「易剥離層」となり、二層目として図示した塗装膜が、「易剥離層を含む塗装膜」となる。
【0065】
なお、本例では、車体色、および、上塗り塗装の色として一色を例示したが、複数の色からなる塗装を行ってもよい。例えば、複数の色を所定のパターンによって配置したものを、車体色としてもよい。また、本明細書における「色」とは、単一の層だけでなく、複数の塗料ないし材料の層によって表現されるものであってもよい。複数の層は、例えば、クリア層、ガラスフレーク層、マイカ層、パール層などを含んでいてもよい。
また、上塗り塗装は、オリジナル塗装の少なくとも一部に対して行うものであってもよい。すなわち、上塗り塗装は、オリジナル塗装のすべてを覆うものでなくてもよい。例えば、オリジナルの車体色が黒色である場合、その一部に青色の上塗りを行うことで、黒色と青色のツートンカラーを持つ車両を得ることができる。
【0066】
次に、車両管理システムに含まれる各装置が実行する処理の詳細を説明する。
図6は、拠点サーバ200(データ取得部2011)が実行する処理を示したフローチャートである。
図6に示した処理は、所定の車両拠点において、車両に対する塗装が行われた場合に実行される。
【0067】
まず、ステップS11で、対象の車両が新規に製造されたものであるか否かを判定する。対象の車両が新規に製造されたものである場合、処理はステップS17へ遷移し、車両が新規に製造された旨の通知データを生成する。
それ以外の場合、処理はステップS12へ遷移する。
【0068】
ステップS12では、塗装作業の内容についての情報を取得する。本ステップでは、例えば、車両の識別子、および、施工種別を取得する。施工種別は、本例では、「(塗装の)上塗り」「(上塗り塗装の)剥離」「(上塗り塗装の)補修」のいずれかである。これらの情報は、例えば、
図7に示したような画面を介して入力させてもよい。
図7の例では、符号701が、車両識別子を入力させるためのGUI部品である。また、符号702が、施工種別を選択させるためのGUI部品である。
【0069】
ステップS13では、施工種別が、「上塗り塗装」「塗装の剥離」「塗装の補修」のいずれかであるかを判定する。
【0070】
施工種別が上塗り塗装である場合、処理はステップS14へ遷移する。
ステップS14では、上塗り塗装に関する詳細情報を取得し、作業データを生成する。本ステップでは、例えば、上塗りを行う際に形成した層の数や、各層に対応する塗料の詳
細情報などを取得する。これらの情報は、例えば、
図8に示したような画面を介して入力させてもよい。例えば、
図8(A)は、透明な剥離層を設けたあと、ベース層を設け、次いでクリア層を設けた場合の入力例である。また、
図8(B)は、剥離層を設けたあと、異なる二種類の色を持つベース層を設け、次いでクリア層を設けた場合の入力例である。このように、層ごとの詳細な情報を入力することもできる。本ステップでは、データ取得部2011が、このような情報に基づいて作業データを生成する。
【0071】
施工種別が塗装の剥離である場合、処理はステップS15へ遷移する。
ステップS15では、塗装の剥離に関する詳細情報を取得し、作業データを生成する。本ステップでは、例えば、最も上の層を所定の手段によって剥離した旨の作業データが生成される。所定の手段とは、例えば、高圧水流によるもの、手作業によるもの等である。作業データには、剥離に利用した設備の名称や、水圧の設定値などを含ませてもよい。
【0072】
施工種別が塗装の補修である場合、処理はステップS16へ遷移する。
ステップS16では、塗装の補修に関する詳細情報を取得し、作業データを生成する。本ステップでは、補修を行った箇所、補修の方法などに関する情報を取得する。
補修を行った箇所とは、ボンネット、ルーフ、フェンダー、ドア、クォーターなど、補修を行った部位を特定するための情報である。また、補修の方法とは、例えば、「上塗りされた層のみを補修」、「上下の層を同時に補修」、「上塗り塗装を除去してから再塗装」などである。
【0073】
拠点サーバ200によって生成された通知データないし作業データは、管理サーバ100に送信され、データ更新部1011によって処理される。
図9は、管理サーバ100(データ更新部1011)が行う、データベースの更新処理のフローチャートである。
【0074】
まず、ステップS21で、拠点サーバ200から送信された通知データまたは作業データを取得する。
次に、ステップS22で、対象の車両が新規に製造されたものであるか否かを判定する。例えば、ステップS21で受信したデータが通知データである場合、対象の車両が新規に製造されたものであると判定することができる。
本ステップで否定判定となった場合、処理はステップS23へ遷移する。本ステップで肯定判定となった場合、処理はステップS24へ遷移する。
【0075】
ステップS23では、車両データ102Aを参照して、当該車両に対応する履歴データ102Bを特定し、当該履歴データに、作業データによって表された塗装作業に対応する履歴を追加する。すなわち、作業日、車両拠点、発注者、施工種別、塗装の詳細情報からなるレコードを新規に追加する。なお、データベースの更新が完了したタイミングで、その旨を拠点サーバ200に通知してもよい。
【0076】
処理がステップS24に遷移した場合、当該車両がデータベースに存在していないことを意味する。この場合、データ更新部1011は、車両データ102Aに新規のレコードを追加し、当該車両に対応する履歴データ102Bを生成する。
【0077】
以上に説明した処理によって、管理サーバ100が有するデータベースの更新が行われる。
【0078】
次に、管理サーバ100が有するデータベースを照会する機能について説明する。
管理サーバ100は、ユーザ端末300から送信されたリクエスト(以下、履歴リクエスト)に応答して、管理下にある車両の塗装履歴を検索し、提供することができる。
図10は、塗装履歴の検索を行う処理のフローチャートである。図示した処理は、ユーザ端末300が履歴リクエストを送信したタイミングで、情報提供部1012によって開始される。
【0079】
まず、ステップS31で、ユーザ端末300から送信された履歴リクエストを受信する。履歴リクエストには、対象の車両を一意に識別するための識別子が含まれる。
図11は、ユーザ端末300上で提供される画面の例である。当該識別子は、例えば、
図11に示したような画面を介して入力されたものであってもよい。
【0080】
次に、ステップS32で、指定された車両の履歴データを取得する。具体的には、指定された車両の識別子をキーとして車両データ102Aを検索し、当該車両に対応する履歴データ102Bを全て取得する。
【0081】
次に、ステップS33で、車両データ102Aおよび履歴データ102Bに基づいて、ユーザに提示する情報を生成し、ユーザ端末300に送信する。
例えば、情報提供部1012は、作業日、施工種別、塗装作業の概要などを説明する画面を生成し、ユーザ端末300に提供する。
図12(A)は、履歴データ102Bに基づいて生成された画面の例である。当該画面は、塗装作業の内容を時系列で並べたものであることが好ましい。これによりユーザは、対象車両の、塗装に関する履歴を把握することができる。なお、当該画面において、現在の車体色(すなわち、現在露出している塗装膜の色)や、塗装状態(例えば、現在露出している塗装膜が、易剥離性塗料によるものであるか否か)を表示してもよい。
【0082】
以上説明したように、第一の実施形態に係る車両管理システムでは、管理サーバ100が、管理下にある複数の車両について、易剥離性塗料による塗装作業の履歴をデータベース化し、作業データに基づいてこれを更新する。これにより、所定の車両について、上塗り塗装を施したタイミング、また、上塗り塗装を除去したタイミングについての記録を残すことができる。
また、問い合わせに応じて、データベースの検索を行い、得られた塗装履歴を提供する。これにより、ユーザが車両の状態や価値を的確に把握することが可能になる。また、当該車両の現在の塗装が、易剥離性塗料によるものであるか否かを示すことができるため、塗装に関連するトラブルを避けるための情報(例えば、高圧洗浄機の使用可否など)を提供することができる。
【0083】
(第一の実施形態の変形例)
第一の実施形態では、作業データの内容として、
図4に示したものを例示したが、作業データに画像を含ませてもよい。当該画像は、例えば、塗装作業が終了した後における車両の外観を示す画像であってもよい。また、塗装作業が塗装の補修作業である場合、補修の過程を示した画像であってもよい。
【0084】
また、管理サーバ100は、作業データに含まれた当該画像を、履歴データ102Bに格納してもよい。これにより、塗装作業が発生したタイミングにおける車両の状態を記録することができる。
【0085】
記憶された画像は、ステップS33においてユーザに提示してもよい。例えば、
図12(A)に例示した画面において、ユーザが各履歴を選択した場合に、対応する画像を表示するようにしてもよい。
図12(B)は、画像の表示例である。これにより、過去の任意の時点における車両の外観をユーザに確認させることが可能になる。
【0086】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、車両が製造されてからの全ての塗装作業の履歴をデータベースに記憶した。一方で、認証された車両拠点以外で塗装作業が行われた場合、履歴が欠落してしまうケースが生じうる。第二の実施形態は、管理サーバ100が、対象車両の現状と、データベースに記憶された塗装履歴が整合していないことを検出する実施形態である。
【0087】
第二の実施形態では、拠点サーバ200(データ取得部2011)が、作業対象の車両について、現在の状況に関するデータ(以下、状況データ)をさらに取得し、当該状況データを作業データに含ませる。
図13は、第二の実施形態における作業データの一例である。状況データとして、例えば、以下のようなものが例示できる。
(A)上塗り塗装を行う前の車体色
(B)上塗り塗装を剥離した後の車体色
(C)上塗り塗装を補修した際に確認できた、下層の車体色
図13の例では、上塗り塗装を行う前の車体色を状況データとしている(符号1301)。なお、ここでは車体色をカラーコードで表すものとする。
【0088】
第二の実施形態では、管理サーバ100(データ更新部1011)が、作業データに含まれる状況データと、対応する車両の履歴データ102Bを参照し、双方の間に矛盾が存在しないかを確認する処理を実行する。
図14は、第二の実施形態において管理サーバ100(データ更新部1011)が実行する処理のフローチャートである。点線で示したステップは第一の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0089】
本実施形態では、ステップS41において、受信した作業データに含まれている状況データと、車両に対応する履歴データ102Bとの間に矛盾が無いかを判定する。本ステップでは、例えば、以下のようなケースが発生した場合、双方が矛盾していると判定することができる。
(1)受信した作業データに含まれる施工種別が「上塗り」であって、履歴データに記録されている最新の車体色が、上記(A)と異なる場合
(2)受信した作業データに含まれる施工種別が「剥離」であって、履歴データに記録されている、最後の上塗り塗装が行われる直前の車体色が、上記(B)と異なる場合
(3)受信した作業データに含まれる施工種別が「補修」であって、履歴データに記録されている、最後の上塗り塗装が行われる直前の車体色が、上記(C)と異なる場合
ステップS41において矛盾が検出されなかった場合、処理はステップS23へ遷移する。一方、ステップS41において矛盾が検出された場合、処理はステップS42へ遷移し、矛盾が発生している旨を記録する処理を実行する。
【0090】
ステップS42では、データ更新部1011が、車両に対応する履歴データと状況データとが整合していない旨を拠点サーバ200に通知する。さらに、データ更新部1011が、矛盾を検出したタイミングを識別するためのレコードを履歴データ102Bに追加する。
【0091】
図15は、ステップS42において追加されるレコードを説明する図である。
本例では、符号1501で示した履歴データがある状態において、塗装の剥離を行った場合に、色コードがC021である車体色が確認できたものとする。この場合、履歴上の車体色はC011であるため、双方が矛盾している。そこで、データ更新部1011は、その旨を拠点サーバ200に通知するとともに、矛盾が発生したタイミングを識別するためのレコード(符号1502)を履歴データ102Bに追加する。当該レコードは、当該レコードよりも前の履歴データに不備がある(例えば、色コードがC021である塗装を行った記録が無い)旨を表すものとなる。符号1503は、塗装作業(上塗り塗装の剥離)に対応して追加される通常のレコードである。
【0092】
第二の実施形態では、履歴の照会時に斯様なレコードが存在した場合に、ステップS33において、その旨を示す案内をユーザに対して行う。
図16は、
図15の履歴データをユーザに案内する画面の例である。例えば、符号1601で示したような案内を挿入することで、履歴が不明である期間があることを示すことができる。
【0093】
なお、本実施形態では、状況データとして車体色(カラーコード)を用いたが、状況データは、車両を撮影して得られた画像等であってもよい。この場合、画像を解析することで車体色を特定し、ステップS41において、特定した車体色に基づいて判定を行ってもよい。なお、判定内容に疑義がある場合、ユーザにその旨を問い合わせてもよい。また、これに応答して得られたコメントをデータベースに追加してもよい。
【0094】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0095】
また、実施形態の説明では、所定の車両拠点に設置された拠点サーバ200が作業データを生成したが、塗装の剥離など、専門性を必要としない作業については、ユーザに行わせてもよい。この場合、ユーザが所持するコンピュータ(ユーザ端末300であってもよい)が、作業データを生成し、管理サーバ100に送信するようにしてもよい。
【0096】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0097】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0098】
100・・・管理サーバ
101,201,301・・・制御部
102,202,302・・・記憶部
103,203,303・・・通信部
200・・・拠点サーバ
300・・・ユーザ端末
204,304・・・入出力部
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車両について、易剥離層を含む塗装膜を用いた塗装に関する作業である塗装作業の履歴を記憶するデータベースと、
前記車両に対して行われた前記塗装作業の内容を表す作業データを取得することと、
前記作業データに基づいて、前記データベースを更新することと、
を実行する制御部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記塗装作業は、
前記車両が有する第一の塗装膜の上に、前記易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作業、または、前記車両から前記第二の塗装膜を剥離する作業、のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記作業データは、前記第一の塗装膜の色と、前記第二の塗装膜の色についての情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記作業データは、前記第二の塗装膜の構成についての情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第二の塗装膜は、複数の層からなり、前記作業データは、各層についての情報を含む、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものである、
請求項2から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記作業データは、前記第二の塗装膜の色に関する情報を含み、
前記データベースは、前記車両の製造時の情報をさらに関連付けたものであり、前記製造時の情報は、前記第一の塗装膜の色に関する情報を含む、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記作業データは、前記塗装作業前における前記車両の現状に関するデータを含み、
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致しているか否かを判定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、その旨を通知するデータを生成する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、前記車両について、現時点までの塗装作業の履歴が不明である旨のレコードを前記データベースに追加する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記データベースは、前記塗装作業を行った拠点の識別子をさらに関連付けたデータであり、
前記作業データは、前記塗装作業を行った拠点の識別子を含む、
請求項1から10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記データベースは、前記塗装作業の発注者に関する情報をさらに関連付けたデータであり、
前記作業データは、前記塗装作業の発注者に関する情報を含む、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記作業データを、前記拠点に対応する装置から受信する、
請求項11または12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、外部装置からの問い合わせに応答して、第一の車両についての前記塗装作業の履歴を前記データベースから検索し、得られた結果を前記外部装置に送信する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記データベースは、前記塗装作業後における前記第一の車両の画像をさらに関連付けたデータである、
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記第一の車両の画像を前記外部装置にさらに送信する、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
所定の車両に対して易剥離層を含む塗装膜を用いて行われた塗装作業の内容を表す作業データを取得するステップと、
前記作業データに基づいて、前記塗装作業の履歴を前記車両ごとに記憶するデータベースを更新するステップと、を含む、情報処理方法。
【請求項18】
前記塗装作業は、
前記車両が有する第一の塗装膜の上に、前記易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作
業、または、前記車両から前記第二の塗装膜を剥離する作業、のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記作業データは、前記第一の塗装膜の色と、前記第二の塗装膜の色についての情報を含む、
請求項18に記載の情報処理方法。
【請求項20】
前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両の製造時における前記第一の塗装膜の色に関する情報と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものであり、
前記作業データは、前記第二の塗装膜の色に関する情報を含む、
請求項18に記載の情報処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車両が有している第一の塗装膜の色についての情報と、前記車両が有する第一の塗装膜の上に、易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作業である塗装作業の履歴と、を関連付けて少なくとも記憶するデータベースを有する第一の装置と、
前記塗装作業を行う拠点に対応する第二の装置と、
を含む情報処理システムであって、
前記第二の装置は、
前記第二の塗装膜の色に係る情報の入力を受け付けることと、
前記第二の塗装膜の色についての情報を含む作業データを生成することと、
を実行し、
前記第一の装置は、
前記第二の装置から前記作業データを取得することと、
前記作業データに基づいて、前記車両、前記第一の塗装膜の色、および前記第二の塗装膜の色の組み合わせを前記データベースに記憶させることと、
を実行する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記作業データは、前記第二の塗装膜の構成についての情報をさらに含む、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第二の塗装膜は、複数の層からなり、前記作業データは、各層についての情報をさらに含む、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記データベースは、前記車両の識別子と、前記車両が製造されてから前記車両に対して行われた前記塗装作業の履歴とを関連付けたものである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記作業データは、前記塗装作業前における前記車両の現状に関するデータをさらに含み、
前記第二の装置は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致しているか否かを判定する、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記第二の装置は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、その旨を通知するデータを生成する、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記第二の装置は、前記車両に関連付いた最新の履歴が、前記車両の現状と一致していない場合に、前記車両について、現時点までの塗装作業の履歴が不明である旨のレコードを前記データベースに追加する、
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記データベースは、前記塗装作業を行った拠点の識別子をさらに関連付けたデータであり、
前記作業データは、前記塗装作業を行った拠点の識別子をさらに含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記データベースは、前記塗装作業の発注者に関する情報をさらに関連付けたデータであり、
前記作業データは、前記塗装作業の発注者に関する情報をさらに含む、
請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記第二の装置は、外部装置からの問い合わせに応答して、第一の車両についての前記塗装作業の履歴を前記データベースから検索し、得られた結果を前記外部装置に送信する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記データベースは、前記塗装作業後における前記第一の車両の画像をさらに関連付けたデータである、
請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記第二の装置は、前記第一の車両の画像を前記外部装置にさらに送信する、
請求項11に記載の情報処理システム。
【請求項13】
所定の車両が製造時に有している第一の塗装膜の色についての情報と、
前記車両が有する第一の塗装膜の上に、易剥離層を含む第二の塗装膜を施工する作業、または、前記車両から前記第二の塗装膜を剥離する作業、のうちの少なくともいずれかを含む塗装作業の履歴と、を関連付けて記憶するデータベースと、
前記第二の塗装膜の色についての情報を含む作業データを取得することと、
前記作業データに基づいて、前記データベースを更新することと、
前記データベースに記憶された情報に基づいて、前記車両の製造時における色情報と、前記車両の現在の色情報と、を出力することと、
を実行する制御部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、複数の前記塗装作業の履歴に基づいて、前記車両の現在の色情報を判定する、
請求項13に記載の情報処理装置。