(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183991
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20221206BHJP
A63F 13/213 20140101ALI20221206BHJP
A63F 13/212 20140101ALI20221206BHJP
A63F 13/428 20140101ALI20221206BHJP
【FI】
A63B69/00 Z
A63F13/213
A63F13/212
A63F13/428
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091567
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】521237365
【氏名又は名称】▲高▼木 将之
(71)【出願人】
【識別番号】521234582
【氏名又は名称】▲高▼木 康之
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将之
(57)【要約】
【課題】バリエーションに富んだ、様々な利用者の動作に対応することができる利便性の高い制御システムの提供。
【解決手段】制御システム1は、利用者Uを内部に格納し、全方向へ回転することができる略球体状の格納装置10と、格納装置10内部に設けられ、格納装置10内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサ11と、取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて、利用者Uが踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者Uが踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段12と、算出された方向および距離に基づいて、格納装置10を任意の方向へ回転させる動力装置13(13a)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を内部に格納し、全方向へ回転することができる略球体状の格納装置と、
前記格納装置内部に設けられ、前記格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、
取得された前記物体の時間毎の位置情報に基づいて、前記利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、
前記算出された方向および距離に基づいて、前記格納装置を任意の方向へ回転させる動力装置と、
を含む制御システム。
【請求項2】
利用者を内部に格納し、前記利用者が乗り全方向へ回転することができる略球体状の球体部分を含む格納装置と、
前記格納装置内部に設けられ、前記格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、
取得された前記物体の時間毎の位置情報に基づいて、前記利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、
算出された方向および距離に基づいて、前記球体部分を任意の方向へ移動させる動力装置と、
を含む制御システム。
【請求項3】
前記動力装置は、前記利用者が踏み出した足先とは異なる方の足先の接地面を、算出された前記方向と逆方向に算出された前記距離分移動させるように前記格納装置を回転させる請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
床面に設けられ、前記格納装置を下方から支持する第一の支持部と、
前記床面から延びる支柱に設けられ、前記格納装置を上方から支持する第二の支持部と、
を含む請求項1または3のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記センサは、前記格納装置内部に設けられた光学センサである請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記センサは、前記利用者のそれぞれの足に装着されるものである請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記センサは、前記足に装着されるものと、前記格納装置内部に埋め込まれるものとにより生じる電位差に基づいて位置情報を取得する請求項6に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の一部が格納装置の一部の面に接され(以下、利用者の一部が接する格納装置の一部の面を「接地面」という。)、利用者の荷重が接地面に支えられながら利用者の移動や運動が行われる制御システムであり、接地面が移動することにより、格納装置内部における利用者の位置を任意の範囲内に留まらせる制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の動作、例えば歩行や左右のステップなどに対して、利用者が居る位置を変化させて、利用者の位置を一定の範囲内に留まらせる技術がある。このような技術は、仮想現実(VR:Virtual Reality)技術と組み合わされることで、利用者が、仮想現実の世界内でより自由な動きを体験することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザーを仮想現実に没入させるための方法及び装置が記載されている。具体的には、特許文献1には、現実の閉鎖空間を限定する閉鎖外殻が形成され、外殻は中心軸を中心に回転自在に支持手段に取り付けられており、ユーザーは外殻の中に入り内側面に沿って自由に運動できる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、よりバリエーションに富んだ、様々な利用者の動作に対応することができる利便性の高い制御システムが求められている。そこで、本発明は、格納装置内部における利用者の位置を任意の範囲内に留まらせることができ、かつ、様々な利用者の動作(移動や運動など)に対応することができる制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御システムは、利用者を内部に格納し、全方向へ回転することができる略球体状の格納装置と、格納装置内部に設けられ、格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて、利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、算出された方向および距離に基づいて、格納装置を任意の方向へ回転させる動力装置と、を含む。
これにより、格納装置内部に設けられたセンサにより取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて利用者が踏み出した足先の方向および距離が算出され、当該算出結果に基づいて格納装置が任意の方向へ回転(例えば利用者の右足が前方に踏み出された場合、格納装置は利用者から見て後方へ回転)される。
【0007】
また、本発明の制御システムは、利用者を内部に格納し、利用者が乗り全方向へ回転することができる略球体状の球体部分を含む格納装置と、格納装置内部に設けられ、格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて、利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、算出された方向および距離に基づいて、球体部分を任意の全方向へ移動させる動力装置と、を含む。
これにより、格納装置内部に設けられたセンサにより取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて利用者が踏み出した足先の方向および距離が算出され、当該算出結果に基づいて利用者が乗っている球体部分が任意の方向へ回転(例えば利用者の右足が前方に踏み出された場合、球体部分は利用者から見て後方へ回転)される。
【0008】
また、動力装置は、利用者が踏み出した足先とは異なる方の足先の接地面を、算出された方向と逆方向に算出された距離分移動させるように格納装置や球体部分を回転させる。
これにより、利用者が足をどの方向にどのような歩幅(距離)で踏み出した場合でも、当該方向とは逆方向に当該歩幅(距離)分格納装置が回転される。
【0009】
また、制御システムはさらに、床面に設けられ、格納装置を下方から支持する第一の支持部と、床面から延びる支柱に設けられ、格納装置を上方から支持する第二の支持部と、を含む。
これにより、格納装置がどのような形状であったり、どのような動き(回転)をする場合であっても、格納装置は第一の支持部や第二の支持部により安定して支持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の制御システムは、利用者を内部に格納し、全方向へ回転することができる略球体状の格納装置と、格納装置内部に設けられ、格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて、利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、算出された方向および距離に基づいて、格納装置を任意の方向へ回転させる動力装置と、を含む構成により、格納装置内部に設けられたセンサにより取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて利用者が踏み出した足先の方向および距離が算出され、当該算出結果に基づいて格納装置が任意の方向へ回転(例えば利用者の右足が前方に踏み出された場合、格納装置は利用者から見て後方へ回転)されるため、格納装置内部にいる利用者がどのような動作をしても、取得された位置情報に基づいてその動作に関する情報が算出されてその動作に対応する格納装置の制御が行われるため、常に利用者を任意の範囲内に留まらせることができる。同時に、格納装置は回転制御されるため、常に一定の場所に留まり続け、スペースを取ることなくどのような場所でも使うことができたり、かつどのような使い方も可能となる。
【0011】
また、本発明の制御システムは、利用者を内部に格納し、利用者が乗り全方向へ回転することができる略球体状の球体部分を含む格納装置と、格納装置内部に設けられ、格納装置内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサと、取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて、利用者が踏み出した足先の位置情報の変化より当該利用者が踏み出した足先の方向および距離を算出する演算手段と、算出された方向および距離に基づいて、球体部分を任意の全方向へ移動させる動力装置と、を含む構成により、格納装置内部に設けられたセンサにより取得された物体の時間毎の位置情報に基づいて利用者が踏み出した足先の方向および距離が算出され、当該算出結果に基づいて利用者が乗っている球体部分が任意の方向へ回転(例えば利用者の右足が前方に踏み出された場合、球体部分は利用者から見て後方へ回転)されるため、格納装置内部にいる利用者がどのような動作をしても、取得された位置情報に基づいてその動作に関する情報が算出されてその動作に対応する球体の制御が行われるため、利用者を常に任意の範囲内に留まらせることができる。同時に、球体部分は回転制御されるため、常に一定の場所に留まり続け、スペースを取ることなくどのような場所でも使うことができたり、かつどのような使い方も可能となる。
【0012】
また、動力装置は、利用者が踏み出した足先とは異なる方の足先の接地面を、算出された方向と逆方向に算出された距離分移動させるように格納装置や球体部分を回転させる構成により、利用者が足をどの方向にどのような歩幅(距離)で踏み出した場合でも、当該方向とは逆方向に当該歩幅(距離)分格納装置が回転されるため、利用者がどの方向にどのような動作をした場合であっても、常に利用者を任意の範囲内に留まらせることができる。
【0013】
また、制御システムはさらに、床面に設けられ、格納装置を下方から支持する第一の支持部と、床面から延びる支柱に設けられ、格納装置を上方から支持する第二の支持部と、を含む構成により、格納装置がどのような形状であったり、どのような動き(回転)をする場合であっても、格納装置は第一の支持部や第二の支持部により安定して支持されるため、安定性が増し、利用者が激しい動作をする場合であっても安全に制御システムを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る制御システムの概略斜視図である。
【
図2】格納装置の上部から見て、利用者が足を平行に揃えて立っている状態の位置関係を示す図である。
【
図3】格納装置の背面から見て、利用者が足を平行に揃えて立っている状態の位置関係を示す図である。
【
図4】利用者が右足を一歩前方へ踏み出した場合の制御システムの動作を示す図であり、(A)は、一歩前方へ踏み出す前、(B)は、一歩前方へ踏み出した後を示す図である。
【
図5】本発明の別の実施の形態に係る制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0016】
[制御システム]
図1は、本発明の実施の形態に係る制御システムの概略斜視図である。制御システム1は、利用者Uを内部に格納する格納装置10と、センサ11と、演算手段12と、格納装置10を回転させて格納装置10内部の利用者Uとの接地面を移動させる動力装置13とを含む。また、制御システム1は、床面20に設けられ、格納装置10を下方から支持する第一の支持部14と、床面20から延びる支柱Pに設けられ、格納装置10を上方から支持する第二の支持部15とを含む。
【0017】
格納装置10は、利用者Uが内部に格納される装置であり、内部は空洞になっている。格納装置10には入口である扉(図示せず)が設けられており、利用者Uは、当該扉を使用して格納装置10に出入りする。また、本実施の形態において、格納装置10は全方向(
図1の矢印参照)へ回転することができる球体であり、底面は凹状に湾曲している。大きさは、半径が約1.5m~約15mである。格納装置10は略球体状であればよく、全方向へ回転することができれば、例えば切頂二十面体のような形状であってもよい。
【0018】
センサ11は、格納装置10内部に設けられ、格納装置10内部の物体の時間毎の位置情報を取得するセンサである。格納装置10内部の物体とは、利用者Uや利用者Uの所持する物、またはその他の物などである。つまり、センサ11は、利用者Uの所持する物、例えば、ポケットに入れておいた財布が当該ポケットから飛び出した場合、利用者Uとは別に当該財布も取得することができる。センサ11には、光学センサを用いることができる。
【0019】
センサ11により取得される位置情報とは、格納装置10内部の物体が格納装置10内部のどこの位置(場所)にあるかを示す情報であり、例えば、任意の基準点からの三次元(縦、横、高さ)情報である。
【0020】
例えば、本実施の形態において、センサ11は格納装置10内面(球体内面)の垂直・水平方向の最長円周部に沿ってそれぞれ設けられたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconducоr)イメージセンサである。CMOSイメージセンサを用いることにより、格納装置10内部の物体、例えば利用者Uの足や手などの部位の連続画像を取得することができる。
【0021】
演算手段12は、センサ11により取得された連続画像の差分から、後述するように動いている部分(動体)の移動方向や移動速度、移動距離などを求める。演算手段12は、センサ11により取得された情報に基づいて演算処理を行うプログラムであり、本実施の形態において、演算手段12は動力装置13に組み込まれているものとする。つまり、演算手段12は、動力装置13のハード資源(メモリやCPU)を用いて実行されるプログラムである。
【0022】
動力装置13は、格納装置10を任意の方向へ回転させる。具体的には、動力装置13は、格納装置10を任意の方向へ回転させることで、格納装置10内部の利用者Uとの接地面を移動させる。本実施の形態において、格納装置10は球体(回転体)であるため、動力装置13は球体を回転させる制御機構である。
【0023】
具体的には、
図1に示すように、動力装置13は凹凸の無い筒状のゴム製のものであり、球体と接触し摩擦により球体を縦方向(垂直方向)に回転させる動力装置13aと、球体を横方向(水平方向)に回転させる動力装置13bとを含む。本実施の形態において、動力装置13aは3ヵ所、動力装置13bは支柱Pに1ヵ所設けられているが、これらの数は4ヵ所,5ヵ所と増やしてもよいし、一続き(一繋がり)の円形状(サークル形状)で構成されていてもよい。
【0024】
また、動力装置13(13a,13b)は、一部の動力装置が稼動して格納装置10を制御する際に、他の動力装置が当該制御の妨げとならないような構成とする。例えば、動力装置13bが格納装置10を水平方向に回転させる際、動力装置13aは当該水平方向への回転の妨げとならないように、そのタイミングだけ格納装置10と接触しない(格納装置10との空間を空ける)などの制御を行う。つまり、動力装置13は、格納装置10がスムーズにかつ全方向へ回転できるような構成とする。
【0025】
なお、動力装置13は、センサ11と有線または無線により通信する。つまり、動力装置13は、センサ11により取得された各種情報を受信し、当該各種情報に基づいて演算手段12により算出された移動方向などに基づいて、格納装置10内部の利用者Uとの接地面が移動するように格納装置10の動きを制御する(格納装置10を回転させる)。
【0026】
第一の支持部14は、床面20に設けられ、格納装置10を下方から支持する。また、第二の支持部15は、床面20から延びる支柱Pに設けられ、格納装置10を上方から支持する。本実施の形態において、支柱Pは3本であるが、支柱Pの本数や第一の支持部14・第二の支持部15の数や形状は、格納装置10が安定して設けられるように適宜設計変更可能である。
【0027】
[制御システムの動作]
以下、各図面を参照して、制御システム1の動作について説明する。以下の説明において、演算手段12は動力装置13に組み込まれているものとする。
【0028】
利用者Uは、格納装置10内部で、移動や運動などの何らかの動作を行う。
図2は、格納装置10の上部から見て、利用者Uが足F(
図1参照)を平行に揃えて立っている状態の位置関係を示す図である。具体的には、x軸方向に沿って同軸上に、地点Lに左足F1が、地点Rに右足F2が位置している状態である。
【0029】
図3は、格納装置10の背面から見て、利用者Uが足Fを平行に揃えて立っている状態の位置関係を示す図である。
図3に示すように、右足F2は格納装置10(球体)内部の湾曲した面に接地しており、当該接地点から垂直下方に位置する地面(仮地面)の位置が地点Rとなる。左足F1に対する地点Lも同様である。
【0030】
なお、
図3に示す仮地面とは、
図1に示すように、動作時に格納装置10(球体)は地面と接触していない(浮いている)ため、格納装置10(球体)が地面と接触していると仮定した場合の線(ライン)を仮地面として表している。
【0031】
また、地点Cは、格納装置10(球体)が仮地面に対して接地(接触)している地点である。つまり、地点Cは、格納装置10(球体)の最下点である。
なお、地点Oは、格納装置10(球体)と接地している仮地面の地点である。
【0032】
図4は、利用者Uが右足F2を一歩前方へ踏み出した場合の制御システム1の動作を示す図であり、
図4(A)は、一歩前方へ踏み出す前、
図4(B)は、一歩前方へ踏み出した後を示す図である。
【0033】
この場合、センサ11は、格納装置10(球体)内部の動体の時間毎の位置情報を取得し、動力装置13へ当該位置情報を送信する。時間毎とは、例えば、1ミリ秒毎や10ミリ秒毎、またはそれ以上の間隔でもよいし、1ミリ秒毎以下の間隔でもよい。
【0034】
そして、動力装置13に組み込まれた演算手段12は、当該位置情報に基づいて、接地面から右足F2が離れる前の時点と離れた後の時点、利用者Uのそれぞれの足Fの位置情報を抽出する。例えば、右足F2は踏み出す(足先を浮き上がらせる)ことにより位置情報が変化しているが、左足F1は位置情報が変化していない、つまり、右足F1の縦、横、高さなどの情報が変化していないため、左足F1は軸足であると判断できる。
もしくは、センサ11が取得した画像データ(連続画像)に基づいて動力装置13が画像分析を行い、接地面から利用者の足が離れているか否かを判断することもできる。
【0035】
また、上述したようなセンサ11が取得する時点はあくまで一例であり、一歩前方へ踏み出す前と一歩前方へ踏み出した後の他、例えば、膝が曲げられて踏み出そうとしている足先が上昇中である、足先が再頂点にである、下降中である、などの位置情報も抽出することができる。
【0036】
そして、演算手段12は、このような位置情報より、踏み出した足先(右足F2)の方向および距離を算出する。例えば、
図4(A)に示すように、一歩前方へ踏み出す前の右足F2の地点が地点R、一歩前方へ踏み出した後の右足F2の地点が地点R´である場合、地点Rと地点R´との位置情報(縦、横)の差分より、踏み出した足先の方向や距離が算出される。同時に、地点Rと地点R´との位置情報(縦、横、高さ)の差分より、単位時間当たりに進んだ距離が求められるため、速度も算出することができる。
【0037】
そして、動力装置13は、利用者Uが踏み出した足先(右足F2)とは異なる方の足先(左足F1)の接地面を、算出された方向と逆方向に、算出された距離分移動させるように格納装置10を回転させる。つまり、地点Lが、地点L´の位置まで移動するように、格納装置10を回転させる。これにより、接地面に接地している(軸足である)左足F1は、地点L´の位置まで移動する。一方、接地面に接地していない(空中に浮いている状態である)右足F2は、踏み下ろした際、踏み出した方向とは逆方向に、踏み出した距離分接地面が移動しているので、仮地面から見た地点R´の位置は、踏み出す前の地点Rの位置と同じ位置にくる。
【0038】
要するに、踏み出す方の足が接地面から離れて再び接地面に接地する間に格納装置10(球体)が回転するため、
図3,4に示すように格納装置10内部の面Aは面A´の位置に移動し、接地面と接地している軸足は接地面と共に移動し、接地面と接地していない踏み出す足は移動せず、元の位置に踏み下ろされることとなる(
図4(B)参照)。
【0039】
なお、本実施の形態において、格納装置10は球体であるため、利用者Uの斜め方向の動きにも対応することができる。そして、格納装置10は球体であるため、回転後、最下点Cがあった位置には回転移動してきた別の最下点Cが位置し、逆の足(左足F1)が踏み出される場合であっても、同様に格納装置10(球体)の回転の制御が行われる。つまり、格納装置10自体は、外部から見たら設置されている位置は変わらず、同じ場所で回転するが、格納装置10内部の接地面は、利用者Uの動きに合わせて任意の方向へ移動することになる。
【0040】
また、動力装置13の動作は、踏み出す方の足(本制御システムの動作の説明においては、右足F2)が空中に浮いている状態で接地面を移動させてもよく、踏み出す方の足が接地面に接地する直前に接地面を移動させてもよい。踏み出す方の足が接地面に接地する直前の判断は、例えば、センサ11が位置情報を縦、横に加え、高さを含む三次元座標として取得し、演算手段12により当該踏み出す方の足の高さが一定値以下であると判断された場合、踏み出す方の足が接地面に接地する直前と判断することができる。
【0041】
以上のように本制御システム1の動作を説明したが、制御システム1は、踏み出す方の足が真っすぐ(例えば、y軸方向に沿って)だけでなく、斜め方向や横方向、または後ろ方向であっても同様に適切な接地面の移動を制御することができる。そのため、歩行やランニングなどの移動行動だけでなく、ダンスなどバリエーションに富んだ、様々な利用者の動作にも対応することができる。同時に、格納装置は回転制御されるため、常に一定の場所に留まり続け、スペースを取ることなく、屋内や屋外などどのような場所でも使うことができたり、アトラクションや遊戯としてだけでなく、トレーニングなどどのような使い方も可能となる。
【0042】
また、センサ11から取得される情報は、接地面から右足F2が離れる前と離れた後の2種類で説明したが、当然、位置情報を取得する時間(スパン)をさらに細分化してもよい。なお、それに合わせて、動力装置13が接地面を移動させるタイミング(格納装置10を回転させるタイミング)も、適宜設計変更することができる。
【0043】
その他、右足F2の位置情報は、右足F2の中心部分(土踏まずあたり)としてもよく、踵や親指など、別の部分を右足F2の位置情報として採用してもよい。また、右足F2の各指、土踏まず、踵など複数の情報を1セットとして、右足F2の位置情報として採用してもよい。
【0044】
(別の実施の形態)
図5は、本発明の別の実施の形態に係る制御システムの概略図である。本実施の形態において、格納装置10は利用者Uを内部に格納し、全方向へ回転することができる球体として説明したが、別の実施の形態において、格納装置10Aは、利用者Uを内部に格納し、利用者Uが乗り全方向へ回転することができる球体部分10sを含むものとすることができる。もちろん、球体部分10sは、全方向へ回転することができれば球体でなくてもよい(略球体状であればよい)。
【0045】
以下、各図面を参照して別の実施の形態に係る制御システム1Aの動作を説明するが、制御システム1と同じ構成については、同符号を付けて説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、球体部分10sは、床面20から見えている球体10aの一部である。利用者Uは、球体部分10sの上に乗って移動や運動を行う。そして、センサ11は、格納装置10A内部の動体の時間毎の位置情報を取得し、動力装置13(
図5において図示せず)へ当該位置情報を送信する。
【0047】
動力装置13に組み込まれた演算手段12(
図5において図示せず)は、受信した位置情報に基づいて利用者Uの移動や運動を判断(例えば、利用者Uの踏み出した足先の方向および距離を算出)する。そして、動力装置13は、算出された方向や距離に基づいて、任意の方向へ球体10aを回転させる。それにより、球体部分10sも回転し、格納装置10A内部における利用者Uの位置を任意の範囲内に留まらせることができる。このような球体10aや球体部分10sの回転は、球体部分10sの床面20との縁に沿って複数設けられたベアリングBによって、スムーズな回転を実現することができる。
【0048】
[変形例]
以上のように説明した実施の形態の変形例として、利用者のそれぞれの足の移動方向や移動距離を取得するセンサ11は、利用者のそれぞれの足に角速度センサ(ジャイロセンサ)として設けられてもよい。例えば、利用者が履く靴にセンサ11の一部が内蔵されていてもよく、センサ11を内蔵するタグをアンクレットのように装着してもよい。これにより、利用者が激しい動作を行う場合であっても、利用者の足に関する情報を正確に取得することができる。
【0049】
さらに、センサ11は、上述したような利用者の足に設けられるセンサと、格納装置内部に埋め込まれる感電センサ(図示せず)とを組み合わせることでも実現することができる。これにより、これらのセンサの距離(接触している/離れているなど)により生じる電位差(静電気帯分布)から、利用者の足の位置情報(座標情報)を取得することもできる。
【0050】
なお、利用者の足に設けられるセンサは発信機であり、床面や格納装置内に設けられる受信機と通信することで、利用者の足の位置情報を取得してもよい。もちろん、発信機は、利用者の足だけでなく様々な部分や様々な動体(利用者の所持する物など)にも取り付けることができる。
【0051】
また、センサ11は、位置情報に基づいて、利用者の姿勢を取得(判定)することもできる。利用者の姿勢とは、例えば、片足で立っていたり、手を挙げていたり、または任意のポーズを取っているなどである。これにより、例えば利用者Uが運動中に落し物をした際、落とした物(財布や鍵など)を取得して、制御システム1を緊急停止させることができる。
【0052】
また、動力装置13は、本実施の形態で説明したような、摩擦により球体を任意の方向へ回転させるような機構以外のものも採用することができる。例えば、球体と動力装置とにそれぞれ歯車を設け、当該歯車を介して動力装置からの回転力を球体に伝えることで球体を任意の方向へ回転させてもよい。または、球体を水に浮かべて、水流により球体を回転させるような制御機構としてもよい。
【0053】
以上のように説明した実施の形態はあくまで一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能である。例えば、格納装置10は楕円形状などきれいな球体でなくてもよく、格納装置10を構成する材質は問わない。さらに、演算手段12は動力装置13以外の装置に組み込まれていてもよく、ハード構成に特に制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、バリエーションに富んだ、様々な利用者の動作に対応することができる制御システムとして用いることができ、例えば仮想現実技術と組み合わされ、アトラクションや遊戯施設で利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 制御システム
10,10A 格納装置
10a 球体
10s 球体部分
11 センサ
12 演算手段
13,13a,13b 動力装置
14 第一の支持部
15 第二の支持部
20 床面
U 利用者
F 足
F1 左足
F2 右足
P 支柱
B ベアリング