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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018400
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】水門開閉器用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
E02B7/20 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121484
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】519304055
【氏名又は名称】株式会社ジェー・フィルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】谷 一身
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA57
(57)【要約】
【課題】既存の水門開閉器に取付けられて水門の開閉作業の電動化を図ると共に、作業者が遠隔からも操作を行うことができる安全性及び省力性に優れた水門開閉器用駆動装置を提供する。
【解決手段】手動ハンドル28が取付け可能な操作軸11を備え、操作軸11の正逆回転により水門を開閉する水門開閉器12に取付けられる水門開閉器用駆動装置10であって、(a)電動モータ17と、一側が電動モータ17に連結されたモータ用入力軸18及び一側又は他側が操作軸11に連結される直付け用出力軸19を有し電動モータ17の回転を操作軸11に伝達する回転伝達機構20とを備えた駆動部13と、(b)遠隔から駆動部13を操作するための制御信号を送信する遠隔コントローラ14と、(c)遠隔コントローラ14から送信される制御信号を受信して駆動部13の動作を制御する制御部15とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動ハンドルが取付け可能な操作軸を備え、該操作軸の正逆回転により水門を開閉する水門開閉器に取付けられる水門開閉器用駆動装置であって、
(a)電動モータと、一側が前記電動モータに連結されたモータ用入力軸及び一側又は他側が前記操作軸に連結される直付け用出力軸を有し前記電動モータの回転を前記操作軸に伝達する回転伝達機構とを備えた駆動部と、(b)遠隔から前記駆動部を操作するための制御信号を送信する遠隔コントローラと、(c)該遠隔コントローラから送信される前記制御信号を受信して前記駆動部の動作を制御する制御部とを有することを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の水門開閉器用駆動装置において、前記回転伝達機構は、前記モータ用入力軸の他側に取付けられたクラッチと、該クラッチを介して前記モータ用入力軸の他側に連結される外部入力軸と、該外部入力軸に取付けられた第1のギアと、前記直付け用出力軸に取付けられ前記第1のギアに直接又は仲介ギア機構部を介して連結された第2のギアと、前記直付け用出力軸の他側又は一側に設けられ前記手動ハンドル若しくは別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け部とを備え、前記電動モータによる駆動時にのみ、前記モータ用入力軸の回転を前記クラッチにより前記外部入力軸に伝達し、前記直付け用出力軸を連動させて前記操作軸を回転させ、前記手動ハンドル若しくは前記別の手動ハンドルによる駆動時には、前記操作軸を回転させる前記直付け用出力軸の回転に連動して回転する前記外部入力軸の回転を前記モータ用入力軸に伝達させないことを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の水門開閉器用駆動装置において、前記回転伝達機構は、前記外部入力軸の他側に、電動工具のチャックに取付けられる連結具が着脱可能に装着される工具連結部を有し、前記電動工具による駆動時に、前記外部入力軸の回転を前記モータ用入力軸に伝達することなく前記直付け用出力軸に伝達して前記操作軸を回転させることを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記電動工具の使用時に、該電動工具に取付けられた回り止め具を保持する工具固定手段を備えたことを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1記載の水門開閉器用駆動装置において、前記仲介ギア機構部は、仲介回転軸と、該仲介回転軸に取付けられ前記第1のギアに噛合する第3のギアと、前記仲介回転軸に取付けられ前記第2のギアに噛合する第4のギアとを備えたことを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記仲介回転軸に取付けられたエンコーダを有することを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1記載の水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記直付け用出力軸に取付けられた第1のスプロケットと、前記回転伝達機構が収容されるケーシングと、該ケーシングの下方に連結される脚部と、該脚部の高さ方向の途中に回転可能に保持され前記直付け用出力軸の代わりに一側又は他側が前記操作軸に連結される嵩上げ用出力軸と、該嵩上げ用出力軸に取付けられた第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットと前記第2のスプロケットに巻回されて前記直付け用出力軸の回転を前記嵩上げ用出力軸に伝達するチェーンとを備えたことを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1記載の水門開閉器用駆動装置において、前記制御部にバッテリーが内蔵されていることを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【請求項9】
請求項8記載の水門開閉器用駆動装置において、前記バッテリーに太陽光パネルが接続されていることを特徴とする水門開閉器用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路又は揚水場の水路等の各種の水路に配置された水門開閉器に取付けることにより、水門の開閉の電動化及び遠隔操作を実現する水門開閉器用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的小型の水門開閉器では、手動ハンドルで駆動軸を回転させることにより、水門の開閉を行っている。
しかしながら、人力で水門を開閉するには、十分な力と時間を必要とし、極めて作業性が悪いという問題があった。
そこで、本出願人は、特許文献1に示すように、電動工具を動力源として、既存の水門開閉器に付設される補助駆動装置を出願し、特許された。この特許文献1の水門開閉器の補助駆動装置においては、動力源となる電動工具が、ギアボックスに対して取付け取外しできるため、電動工具を収納する部屋を設ける必要がなく、装置全体の小型化が図られ、一台の電動工具で、複数の水門開閉器を順次、駆動することも可能であった。また、電動工具に取付けた水平ロッドが、ギアボックスの蓋材に形成された貫通孔に嵌入されることによって、電動工具の駆動時に発生する反回転力が作業者に伝わることが防止され、作業性の改善が図られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6293077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水門開閉器を駆動する(水門を開閉する)ためには、補助駆動装置が取付けられた水門開閉器の傍まで作業者が近付き、補助駆動装置に電動工具を装着して操作する必要がある。従って、作業者が水門開閉器のある現場から離れた場所にいる場合、作業者が現場に到着して作業を開始するまでに時間を必要とし、緊急時の対応に遅れが出る可能性がある。また、集中豪雨、洪水又は台風等が発生した場合、作業者が現場に近付くことが困難となり、作業不能となるおそれもある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、既存の水門開閉器に取付けられて水門の開閉作業の電動化を図ると共に、作業者が遠隔からも操作を行うことができる安全性及び省力性に優れた水門開閉器用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る水門開閉器用駆動装置は、手動ハンドルが取付け可能な操作軸を備え、該操作軸の正逆回転により水門を開閉する水門開閉器に取付けられる水門開閉器用駆動装置であって、
(a)電動モータと、一側が前記電動モータに連結されたモータ用入力軸及び一側又は他側が前記操作軸に連結される直付け用出力軸を有し前記電動モータの回転(正転又は逆転)を前記操作軸に伝達する回転伝達機構とを備えた駆動部と、(b)遠隔から前記駆動部を操作するための制御信号を送信する遠隔コントローラと、(c)該遠隔コントローラから送信される前記制御信号を受信して前記駆動部の動作を制御する制御部とを有する。
【0007】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記回転伝達機構は、前記モータ用入力軸の他側に取付けられたクラッチと、該クラッチを介して前記モータ用入力軸の他側に連結される外部入力軸と、該外部入力軸に取付けられた第1のギアと、前記直付け用出力軸に取付けられ前記第1のギアに直接又は仲介ギア機構部を介して連結された第2のギアと、前記直付け用出力軸の他側又は一側に設けられ前記手動ハンドル若しくは別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け部とを備え、前記電動モータによる駆動時にのみ、前記モータ用入力軸の回転(正転又は逆転)を前記クラッチにより前記外部入力軸に伝達し、前記直付け用出力軸を連動させて前記操作軸を回転させ、前記手動ハンドル若しくは前記別の手動ハンドルによる駆動時には、前記操作軸を回転(正転又は逆転)させる前記直付け用出力軸の回転に連動して回転する前記外部入力軸の回転を前記モータ用入力軸に伝達させないことが好ましい。
【0008】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記回転伝達機構は、前記外部入力軸の他側に、電動工具のチャックに取付けられる連結具が着脱可能に装着される工具連結部を有し、前記電動工具による駆動時に、前記外部入力軸の回転(正転又は逆転)を前記モータ用入力軸に伝達することなく前記直付け用出力軸に伝達して前記操作軸を回転させることができる。
【0009】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記電動工具の使用時に、該電動工具に取付けられた回り止め具を保持する工具固定手段を備えることが好ましい。
【0010】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記仲介ギア機構部は、仲介回転軸と、該仲介回転軸に取付けられ前記第1のギアに噛合する第3のギアと、前記仲介回転軸に取付けられ前記第2のギアに噛合する第4のギアとを備えることができる。
【0011】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記仲介回転軸に取付けられたエンコーダを有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記駆動部は、前記直付け用出力軸に取付けられた第1のスプロケットと、前記回転伝達機構が収容されるケーシングと、該ケーシングの下方に連結される脚部と、該脚部の高さ方向の途中に回転可能に保持され前記直付け用出力軸の代わりに一側又は他側が前記操作軸に連結される嵩上げ用出力軸と、該嵩上げ用出力軸に取付けられた第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットと前記第2のスプロケットに巻回されて前記直付け用出力軸の回転を前記嵩上げ用出力軸に伝達するチェーンとを備えることもできる。
【0013】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記制御部にバッテリーが内蔵されてもよい。
【0014】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置において、前記バッテリーに太陽光パネルを接続することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水門開閉器用駆動装置は、遠隔から電動モータを備えた駆動部を制御して水門開閉器を駆動することができるので、作業者が現場(水門)まで近付かなくても水門を開閉することができ、省力性及び安全性に優れる。
【0016】
水門開閉器の操作軸に連結される直付け用出力軸に、手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け部が設けられ、電動モータによる駆動と手動ハンドルによる駆動が、クラッチにより切替え可能な場合、必要に応じて、駆動方法を選択することができ、汎用性に優れる。
【0017】
駆動部が、電動工具が装着可能な外部入力軸を有する場合、電動モータによる駆動が不可能でも、電動工具を用いて簡単かつ確実に水門を開閉することができ、機能性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る水門開閉器用駆動装置の構成を示す説明図である。
図2】同水門開閉器用駆動装置の要部断面側面図である。
図3】同水門開閉器用駆動装置の要部正面図である。
図4】同水門開閉器用駆動装置の駆動に用いる電動工具の要部平面図である。
図5図2のA-A線断面図である。
図6】同水門開閉器用駆動装置の駆動部の変形例を示す要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示す本発明の一実施の形態に係る水門開閉器用駆動装置10は、手動ハンドルが取付け可能な操作軸11を備え、操作軸11の正逆回転により水門(図示せず)を開閉する水門開閉器12に取付けられて、水門の開閉の電動化及び遠隔操作を実現するものである。
水門開閉器用駆動装置10は、水門開閉器12に取付けられる駆動部13と、遠隔から駆動部13を操作するための制御信号を送信する遠隔コントローラ14と、水門開閉器12(又は駆動部13)の近傍に設置され、遠隔コントローラ14から送信される制御信号を受信して駆動部13の動作を制御する制御部15とを有している。そして、駆動部13は、図1図3に示すように、電動モータ17と、一側(図1図2では左側)が電動モータ17に連結されたモータ用入力軸18及び一側が操作軸11に連結される直付け用出力軸19を有し電動モータ17の回転を操作軸11に伝達する回転伝達機構20を備えている。
【0020】
回転伝達機構20は、図2図5に示すように、モータ用入力軸18の他側に取付けられたクラッチ22と、クラッチ22を介してモータ用入力軸18の他側に連結される外部入力軸23と、外部入力軸23に取付けられた第1のギア24と、直付け用出力軸19に取付けられ第1のギア24に仲介ギア機構部25を介して連結された第2のギア26を備えている。そして、直付け用出力軸19の他側には、手動ハンドル28が取付け可能なハンドル取付け部29が設けられている。ここで、仲介ギア機構部25は、仲介回転軸31と、仲介回転軸31に取付けられ第1のギア24に噛合する第3のギア32と、仲介回転軸31に取付けられ第2のギア26に噛合する第4のギア33を備えている。
【0021】
この回転伝達機構20は、電動モータ17による駆動時にのみ、モータ用入力軸18の回転(正転又は逆転)をクラッチ22により外部入力軸23に伝達し、直付け用出力軸19を連動させて操作軸11を回転させ、手動ハンドル28による駆動時には、操作軸11を回転させる直付け用出力軸19の回転に連動して回転する外部入力軸23の回転をモータ用入力軸18に伝達させないようになっている。つまり、モータ用入力軸18と外部入力軸23の間にクラッチ22が設けられることにより、通常は、モータ用入力軸18と外部入力軸23の間では回転が伝達されない状態となっており、手動ハンドル28で直付け用出力軸19を回転させても、その回転は操作軸11と外部入力軸23のみに伝達されるので、モータ用入力軸18(電動モータ17)で回転が妨げられることはない。そして、電動モータ17でモータ用入力軸18を回転させる際には、クラッチ22が動作してモータ用入力軸18の回転を外部入力軸23に伝達し、その回転をさらに直付け用出力軸19に伝達することができる。従って、必要に応じて、電動モータ17による駆動と、手動ハンドル28による駆動を選択する(切替える)ことができる。
【0022】
また、図2図4に示すように、電動工具35のチャック36には、六角柱状の連結具37が取付けられており、回転伝達機構20は、外部入力軸23を貫通する六角孔状の工具連結部38を有している。これにより、外部入力軸23の他側で、工具連結部38に対して、連結具37を着脱可能に装着することができ、電動モータ17による駆動と、手動ハンドル28による駆動に加え、電動工具35による駆動を選択することができる。なお、本実施の形態では、外部入力軸23を貫通するように六角孔状の工具連結部38を形成したが、工具連結部は、外部入力軸の他側で連結具を着脱可能に保持(固定)できるものであればよいので、六角孔(貫通孔)の代わりに、工具連結部として、外部入力軸の他側に断面六角形の凹部を形成してもよい。また、連結具と工具連結部は、雄型(凸部)と雌型(凹部)を互いに連結して回転を伝達できるものであればよく、その形状及び組合せは、適宜、選択することができる。例えば、雄型(凸部)と雌型(凹部)は、それぞれ六角形以外の多角形状に形成してもよいし、連結具を雌型(凹部)とし、工具連結部を雄型(凸部)としてもよい。なお、先に説明したように、モータ用入力軸18と外部入力軸23の間にクラッチ22が設けられることにより、通常は、モータ用入力軸18と外部入力軸23の間では回転が伝達されない状態となっているので、電動工具35による駆動時に、外部入力軸23の回転をモータ用入力軸18に伝達することなく直付け用出力軸19に伝達して操作軸11を回転させ、水門を開閉することができる。ここで、駆動部13は、回転伝達機構20が収容されるケーシング40と、ケーシング40に取付けられて電動モータ17を覆うモータカバー41を有している。そして、外部入力軸23の他側は第1の軸受42を介してケーシング40に回転可能に保持され、仲介回転軸31の一側及び他側はそれぞれ第2、第3の軸受43、44を介してケーシング40に回転可能に保持され、直付け用出力軸19の一側及び他側はそれぞれ第4、第5の軸受45、46を介してケーシング40に回転可能に保持されている。第1~第5の軸受42~46としては、ベアリングが好適に用いられる。
【0023】
また、ケーシング40には、図3に示すように、電動工具35の使用時に、電動工具35に取付けられた回り止め具47(図4参照)を保持する工具固定手段48が設けられている。従って、電動工具35による駆動時に、電動工具35をケーシング40に固定することができ、外部入力軸23から受ける回転反力により電動工具35が逆回転することを防止し、確実かつ効率的に水門の開閉作業を行うことができる。
本実施の形態では、図4に示すように、略円柱状に形成した回り止め具47を電動工具35の左側部に取付け、それに対応して、図3に示すように、ケーシング40(外部入力軸23の左側)に回り止め具47が挿通される丸孔状の工具固定手段48を設けたが、回り止め具の断面形状、大きさ及び配置は、適宜、選択することができ、それに対応して、工具固定手段の形状、大きさ及び配置も、適宜、選択することができる。
【0024】
駆動部13は、図1図2に示すように、仲介回転軸31に取付けられたエンコーダ49を有しており、このエンコーダ49で検出した仲介回転軸31の回転量を制御部15にフィードバックすることにより、水門の開閉量(昇降量)を正確に制御することができる。
第1のギア24、仲介ギア機構部25(第3のギア32と第4のギア33)及び第2のギア26は減速機構として機能し、電動モータ17又は電動工具35による駆動時に、外部入力軸23の回転が直付け用出力軸19に伝達される間に回転速度を下げ、トルクを増幅することができる。なお、仲介ギア機構部(減速機構)の構成は、これに限定されるものではなく、ギアの数、配置及び減速比等は、適宜、選択することができる。また、仲介ギア機構部を省略し、第1のギアに直接、第2のギアを連結(噛合)させることもできる。
【0025】
電動モータ17による駆動は、図1に示すように、遠隔コントローラ14から制御部15に送信される制御信号に基づいて、制御部15で駆動部13(電動モータ17、クラッチ22)の動作を制御することにより行われる。クラッチ22としては電磁クラッチが好適に用いられ、クラッチ22の動作は電動モータ17のオンオフと連動(同期)している。従って、先に説明したように、電動モータ17による駆動を開始する時には、それに連動(同期)して、モータ用入力軸18の回転が外部入力軸23に伝達されるようにクラッチ22が動作し、電動モータ17による駆動を停止する時には、それに連動(同期)して、モータ用入力軸18と外部入力軸23の間で回転が伝達されないようにクラッチ22が動作(初期状態に復帰)する。遠隔コントローラ14には、例えば、制御部15(電動モータ17)の電源のオンとオフを切替える電源ボタンと、水門の上昇ボタン及び下降ボタンがあり、作業者が遠隔コントローラ14を操作することにより、電動モータ17による水門の開閉作業を行うことができる。なお、遠隔コントローラ14に緊急停止ボタンを設けることにより、緊急時に電動モータ17を直ちに停止させて、水門の昇降を停止させることができる。
【0026】
制御部15は、図1に示すように、遠隔コントローラ14から送信される制御信号を受信アンテナ50を介して受信する受信手段や、受信手段で受信した制御信号及びエンコーダ49からフィードバックされる信号(フィードバックパルス)に基いて電動モータ17やクラッチ22の動作を指示する指示手段等を備えたメインコントローラ51の他に、バッテリー52を内蔵することができる。これにより、停電等で商用電源からの電力供給が停止した時でも、充電されたバッテリー52から駆動部13の動作に必要な電力を供給することができる。また、商用電源が利用できない場所に水門が設置されている場合は、バッテリー52に太陽光パネル53を接続し、太陽光発電で発電した電力でバッテリー52を充電することにより、それまで電力が使用できなかった場所でも、水門の開閉作業の電動化を図ることができる。但し、商用電源が利用できる場所であっても、太陽光パネル53を設置して、商用電源の使用量を削減することが可能である。なお、バッテリー52の充電はメインコントローラ51によって制御される。また、制御部15が電源ランプ54を備えることにより、駆動部13(電動モータ17)が駆動中か否かを確認することができる。図1では、駆動部13とメインコントローラ51を接続する信号ケーブル、駆動部13とバッテリー52を接続する電源ケーブル、バッテリー52と太陽光パネル53を接続する電源ケーブル等を省略した。なお、信号ケーブルと電源ケーブルは独立していてもよいし、可能な範囲で(一部を)複合化してもよい。
【0027】
以上のように構成された水門開閉器用駆動装置10によれば、既存の手動式の水門開閉器12を電動化することができ、必要に応じて、遠隔操作が可能な電動モータ17による駆動、電動工具35による駆動及び手動ハンドル28による駆動を選択する(切替える)ことができ、多様性に優れる。
なお、上記実施の形態では、図1に示したように、駆動部13の直付け用出力軸19を水門開閉器12の操作軸11に連結する場合について説明したが、必要に応じて、図6に示す変形例の駆動部55のように、回転伝達機構20が収容されるケーシング40の下方に脚部56を連結し、嵩上げを行うことができる。
【0028】
駆動部55は、直付け用出力軸19に取付けられた第1のスプロケット58と、脚部56の高さ方向の途中に回転可能に保持され直付け用出力軸19の代わりに一側が操作軸11に連結される嵩上げ用出力軸59と、嵩上げ用出力軸59に取付けられた第2のスプロケット60を有している。そして、第1のスプロケット58と第2のスプロケット60に、直付け用出力軸19の回転を嵩上げ用出力軸59に伝達するチェーン61が巻回されている。これにより、直付け用出力軸19及び外部入力軸23の位置(高さ)を嵩上げすることができ、手動ハンドル28による駆動及び電動工具35による駆動を楽な姿勢で行うことができる。駆動部55は、前述の遠隔コントローラ14及び制御部15と共に使用することにより、水門開閉器用駆動装置10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0029】
ここで、脚部56は筒型(中空状)に形成され、嵩上げ用出力軸59、第2のスプロケット60及びチェーン61を収容するハウジングを兼ねており、嵩上げ用出力軸59の両端を回転可能に保持する軸受62、63を備えている。
なお、駆動部13では、直付け用出力軸19に第1のスプロケットは取付けられていないが、脚部56による嵩上げの要否に関わらず、直付け用出力軸19に第1のスプロケットを取付けておけば、ケーシング40内の回転伝達機構の構造を共通化することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものであり、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することができる。
例えば、上記実施の形態において、嵩上げ用出力軸の他側に手動ハンドルが取付け可能な構成とすることもできる。
また、上記実施の形態では、直付け用出力軸の一側を操作軸に連結し、直付け用出力軸の他側に手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け部を設けたが、直付け用出力軸の他側を操作軸に連結し、直付け用出力軸の一側に手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け部を設けることもできる。なお、ハンドル取付け部に取付ける手動ハンドルは、既存の水門開閉器で使用されていた手動ハンドルをそのまま使用してもよいし、別の手動ハンドルを使用してもよい。
電動工具としては、主に電動ドライバー又は電動ドリルが用いられるが、その他の手持ち式の電動工具を適宜、用いることができる。なお、電動工具は、電池又は充電式のバッテリーで駆動できるものが好ましいが、制御部のバッテリーで駆動できるようにしてもよい。
また、遠隔コントローラには、ID及び/又はパスワードによる認証機能を搭載し、誤操作や悪戯を防止することができる。
エンコーダとしてはロータリエンコーダが好適に用いられるが、最終的に制御部で水門の開閉量(昇降量)を把握することができればよく、仲介回転軸の回転量を検出する代わりに、モータ用入力軸又は直付け用出力軸の回転量を検出してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10:水門開閉器用駆動装置、11:操作軸、12:水門開閉器、13:駆動部、14:遠隔コントローラ、15:制御部、17:電動モータ、18:モータ用入力軸、19:直付け用出力軸、20:回転伝達機構、22:クラッチ、23:外部入力軸、24:第1のギア、25:仲介ギア機構部、26:第2のギア、28:手動ハンドル、29:ハンドル取付け部、31:仲介回転軸、32:第3のギア、33:第4のギア、35:電動工具、36:チャック、37:連結具、38:工具連結部、40:ケーシング、41:モータカバー、42:第1の軸受、43:第2の軸受、44:第3の軸受、45:第4の軸受、46:第5の軸受、47:回り止め具、48:工具固定手段、49:エンコーダ、50:受信アンテナ、51:メインコントローラ、52:バッテリー、53:太陽光パネル、54:電源ランプ、55:駆動部、56:脚部、58:第1のスプロケット、59:嵩上げ用出力軸、60:第2のスプロケット、61:チェーン、62、63:軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6