(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184017
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】作業機械、及び作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
E02F3/85 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091617
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AA02
2D003AA03
2D003AB04
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械において、作業の負荷に応じて、ブレードのピッチ角を容易、且つ、適切に調整可能とする。
【解決手段】第1センサは、第1パラメータを検出する。第1パラメータは、ブレードの刃先の下方への貫入力に関係する。コントローラは、第1パラメータに基づいて貫入力が不足しているかを判定する。コントローラは、貫入力が不足していると判定したときに、ブレードを前傾方向にピッチ動作させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に対してピッチ軸回りに回動可能に支持されるブレードと、
前記ブレードに接続され、前記ブレードを前記ピッチ軸回りに前傾方向と後傾方向とにピッチ動作させるピッチアクチュエータと、
前記ブレードの刃先の下方への貫入力に関係する第1パラメータを検出する第1センサと、
前記第1パラメータに基づいて前記貫入力が不足しているかを判定し、前記貫入力が不足していると判定したときに、前記ピッチアクチュエータを制御して前記ブレードを前記前傾方向にピッチ動作させるコントローラと、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持されるリフトフレームと、
前記リフトフレームと前記車体とに接続され、前記リフトフレームを前記リフト軸回りに上下にリフト動作させるリフトアクチュエータと、
をさらに備え、
前記リフトアクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記第1パラメータは、前記リフトアクチュエータのボトム圧である、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1パラメータが第1閾値以上であるときに、前記第1パラメータの増大に応じて、前記ブレードのピッチ角を前記前傾方向に増大させる、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記車体は、
フロントホイールと、
リアホイールと、
前記フロントホイールと前記リアホイールとに巻回される履帯と、
を含み、
前記第1閾値は、前記フロントホイールが浮き上がるときの前記貫入力に基づいて決定される、
請求項1から3のいずれかに記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記作業機械の掘削状態を判定し、
前記掘削状態に応じて、前記ブレードを前記前傾方向にピッチ動作させる、
請求項1から4のいずれかに記載の作業機械。
【請求項6】
前記ブレードの刃先が受ける水平方向の負荷に関係する第2パラメータを検出する第2センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記第2パラメータに基づいて、前記掘削状態を判定する、
請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記ピッチアクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記第2パラメータは、前記ピッチアクチュエータのヘッド圧である、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
車体と、前記車体に対してピッチ軸回りに回動可能に支持されるブレードと、前記ブレードに接続され、前記ブレードを前記ピッチ軸回りに前傾方向と後傾方向とにピッチ動作させるピッチアクチュエータとを備える作業機械を制御するための方法であって、
前記ブレードの刃先の下方への貫入力に関係する第1パラメータを検出することと、
前記第1パラメータに基づいて前記貫入力が不足しているかを判定することと、
前記貫入力が不足していると判定したときに、前記ピッチアクチュエータを制御して前記ブレードを前記前傾方向にピッチ動作させること、
を備える方法。
【請求項9】
前記作業機械は、
前記車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持されるリフトフレームと、
前記リフトフレームと前記車体とに接続され、前記リフトフレームを前記リフト軸回りに上下にリフト動作させるリフトアクチュエータと、
をさらに備え、
前記リフトアクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記第1パラメータは、前記リフトアクチュエータのボトム圧である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1パラメータが第1閾値以上であるときに、前記第1パラメータの増大に応じて、前記ブレードのピッチ角を前記前傾方向に増大させる、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記車体は、
フロントホイールと、
リアホイールと、
前記フロントホイールと前記リアホイールとに巻回される履帯と、
を含み、
前記第1閾値は、前記フロントホイールが浮き上がるときの前記貫入力に基づいて決定される、
請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記作業機械の掘削状態を判定することと、
前記掘削状態に応じて、前記ブレードを前記前傾方向にピッチ動作させること、
をさらに備える請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ブレードの刃先が受ける水平方向の負荷に関係する第2パラメータを検出することと、
前記第2パラメータに基づいて、前記掘削状態を判定すること、
をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ピッチアクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記第2パラメータは、前記ピッチアクチュエータのヘッド圧である、
請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、及び作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、オペレータの操作に応じてブレードのピッチ角を調整可能なものがある。例えば、特許文献1の作業機械では、ブレードのピッチ角を調整するための操作レバーが設けられている。操作レバーにはスイッチが設けられている。スイッチがオンのときに操作レバーが右に倒されると、ブレードがピッチダンプ(前傾)するように、油圧シリンダが制御される。スイッチがオンのときに操作レバーが左に倒されると、ブレードがピッチバック(後傾)するように、油圧シリンダが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレードのピッチ角は、掘削、或いは整地などの作業性に影響を与える。しかし、ブレードのピッチ角は、作業内容に応じて、適切な角度が異なる。例えば、ピッチ角が小さい、すなわちブレードが後傾しているときには、掘削抵抗が小さく、掘削性が良好である一方、ブレードの下方向への貫入力が小さい。そのため、負荷の小さい作業中にピッチ角が適正値よりも小さいときには、作業機械の履帯の前部が浮き上がってしまう場合がある。その場合、作業性が低下する。
【0005】
従って、作業の負荷に応じて、ブレードのピッチ角を適切に調整することが望ましい。しかし、熟練したオペレータであっても、作業の負荷に応じて、手動で適切なピッチ角を正確に選定することは容易ではない。本開示の目的は、作業機械において、作業の負荷に応じて、ブレードのピッチ角を容易、且つ、適切に調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る作業機械は、車体と、ブレードと、ピッチアクチュエータと、第1センサと、コントローラとを備える。ブレードは、車体に対してピッチ軸回りに回動可能に支持される。ピッチアクチュエータは、ブレードに接続され、ブレードをピッチ軸回りに前傾方向と後傾方向とにピッチ動作させる。第1センサは、第1パラメータを検出する。第1パラメータは、ブレードの刃先の下方への貫入力に関係する。コントローラは、第1パラメータに基づいて貫入力が不足しているかを判定する。コントローラは、貫入力が不足していると判定したときに、ピッチアクチュエータを制御してブレードを前傾方向にピッチ動作させる。
【0007】
本開示の第2態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、ブレードと、ピッチアクチュエータとを備える。ブレードは、車体に対してピッチ軸回りに回動可能に支持される。ピッチアクチュエータは、ブレードに接続され、ブレードをピッチ軸回りに前傾方向と後傾方向とにピッチ動作させる。当該方法は、ブレードの刃先の下方への貫入力に関係する第1パラメータを検出することと、第1パラメータに基づいて貫入力が不足しているかを判定することと、貫入力が不足していると判定したときにピッチアクチュエータを制御してブレードを前傾方向にピッチ動作させること、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械において、作業の負荷に応じて、ブレードのピッチ角を容易、且つ、適切に調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
【
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図6】リフトアクチュエータのボトム圧と貫入ストロークとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と作業機12とを備えている。
【0011】
車体11は、運転室13と、エンジン室14と、走行装置15とを含む。運転室13には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室14は、運転室13の前方に配置されている。走行装置15は、車体11の下部に設けられている。走行装置15は、フロントホイール41と、リアホイール42と、履帯16とを含む。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。フロントホイール41は、リアホイール42の前方に配置されている。履帯16は、フロントホイール41とリアホイール42とに巻回されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0012】
作業機12は、車体11に取り付けられている。作業機12は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とを有する。リフトフレーム17は、車体11に対してリフト軸X1回りに回動可能に支持される。リフト軸X1は、車体11の横方向に延びている。リフトフレーム17は、リフト軸X1回りに回動することで、上下にリフト動作する。
【0013】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17に対してピッチ軸X2回りに回動可能に支持される。ピッチ軸X2は、車体11の横方向に延びている。ブレード18は、ピッチ軸X2回りに回動することで、前傾方向と後傾方向とにピッチ動作する。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0014】
リフトアクチュエータ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトアクチュエータ19は、油圧シリンダである。リフトアクチュエータ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下にリフト動作する。リフトアクチュエータ19が縮むことによって、ブレード18が上昇する。リフトアクチュエータ19が延びることによって、ブレード18が下降する。
【0015】
ピッチアクチュエータ20は、リフトフレーム17とブレード18とに連結されている。ピッチアクチュエータ20は、油圧シリンダである。ピッチアクチュエータ20が伸縮することによって、ブレード18は、前後にピッチ動作する。ブレード18の一部、例えば上端が、前後に動作することで、ブレード18がピッチ軸X2回りにピッチ動作する。ピッチアクチュエータ20が伸びることによって、ブレード18は前傾する。ピッチアクチュエータ20が縮むことによって、ブレード18は後傾する。
【0016】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトアクチュエータ19とピッチアクチュエータ20とに供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0017】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置15に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0018】
制御システム3は、コントローラ26と制御弁27とを備える。コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ29とを含む。プロセッサ29は、例えばCPUを含む。記憶装置28は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサ29によって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0019】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトアクチュエータ19及びピッチアクチュエータ20などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトアクチュエータ19に供給される作動油の流量を制御する。制御弁27は、油圧ポンプ23からピッチアクチュエータ20に供給される作動油の流量を制御する。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0020】
制御システム3は、操作装置31と入力装置32とを備えている。操作装置31は、例えばレバーを含む。或いは、操作装置31は、ペダル、或いはスイッチを含んでもよい。オペレータは、操作装置31を用いて、作業機械1の走行と、作業機12の動作とを手動で操作することができる。操作装置31は、操作装置31の操作を示す操作信号を出力する。コントローラ26は、操作装置31から操作信号を受信する。
【0021】
操作装置31は、ブレード18のリフト動作を操作可能である。詳細には、操作装置31は、ブレード18の上げ操作と下げ操作との操作が可能である。オペレータが操作装置31に対して上げ操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が上昇するように、リフトアクチュエータ19を制御する。オペレータが操作装置31に対して下げ操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が下降するように、リフトアクチュエータ19を制御する。
【0022】
図3は、作業機械1のリフト動作を示す模式図である。
図3において、P1は、ブレード18の刃先P0の最高位置を示している。P2は、ブレード18の刃先P0の最低位置を示している。作業機械1は、最高位置P1と最低位置P2との間で、ブレード18をリフト動作させることができる。
【0023】
操作装置31は、ブレード18のピッチ動作を操作可能である。詳細には、操作装置31は、ブレード18の前傾操作と後傾操作との操作が可能である。オペレータが操作装置31に対して前傾操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が前傾するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。オペレータが操作装置31に対して後傾操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が後傾するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
【0024】
図4A~
図4Cは、ブレード18のピッチ角を示す図である。
図4A~
図4Cに示すように、ブレード18のピッチ角θ1-θ3は、ブレード18の刃先P0と履帯16の接地面G1との間のなす角である。
図4Bは、標準状態のブレード18のピッチ角θ2を示している。
図4Aは、標準状態よりも前傾したブレード18のピッチ角θ1を示している。
図4Cは、標準状態よりも後傾したブレード18のピッチ角θ3を示している。ブレード18が前傾するほどピッチ角は大きくなる。ブレード18が後傾するほどピッチ角は小さくなる。すなわち、θ1>θ2>θ3である。
【0025】
なお、操作装置31は、油圧パイロット式の装置であってもよい。例えば、操作装置31は、操作装置31の操作に応じたパイロット油圧を出力してもよい。操作装置31からのパイロット油圧によって制御弁27が制御されることで、リフトアクチュエータ19、或いはピッチアクチュエータ20が制御されてもよい。コントローラ26は、パイロット油圧を示す信号を、操作信号として受信してもよい。
【0026】
入力装置32は、例えばタッチパネルを含む。ただし、入力装置32は、スイッチなどの他の装置を含んでもよい。オペレータは、操作装置31を用いて、コントローラ26によるブレード18のピッチ角の制御モードの設定を行うことができる。ブレード18のピッチ角の制御モードについては、後に詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、制御システム3は、車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とを含む。車体センサ34は、車体11に取り付けられている。車体センサ34は、車体11の姿勢を検出する。フレームセンサ35は、リフトフレーム17に取り付けられている。フレームセンサ35は、リフトフレーム17の姿勢を検出する。ブレードセンサ36は、ブレード18に取り付けられている。ブレードセンサ36は、ブレード18の姿勢を検出する。
【0028】
車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とは、それぞれIMU(慣性計測装置、Inertial Measurement Unit)である。ただし、フレームセンサ35とブレードセンサ36とは、IMUに限らず、角度センサ、或いはシリンダのストロークセンサなどの他のセンサであってもよい。
【0029】
車体センサ34は、水平に対する車体11の前後方向の角度(車体ピッチ角)を検出する。フレームセンサ35は、リフトフレーム17の回転角度を検出する。ブレードセンサ36は、ブレード18のピッチ角を検出する。車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とは、それぞれ検出した角度を示す検出信号を出力する。
【0030】
制御システム3は、第1圧力センサ37と第2圧力センサ38とを備えている。第1圧力センサ37は、リフトアクチュエータ19のボトム圧を検出する。リフトアクチュエータ19のボトム圧は、リフトアクチュエータ19が縮むときに圧縮される作動油の油圧である。第2圧力センサ38は、ピッチアクチュエータ20のヘッド圧を検出する。ピッチアクチュエータ20のヘッド圧は、ピッチアクチュエータ20が延びるときに圧縮される作動油の油圧である。
【0031】
コントローラ26は、リフトアクチュエータ19のボトム圧を示す第1検出信号を第1圧力センサ37から受信する。コントローラ26は、ピッチアクチュエータ20のヘッド圧を示す第2検出信号を第2圧力センサ38から受信する。
【0032】
次に、ブレード18のピッチ角の制御モードについて説明する。ブレード18のピッチ角の制御モードは、自動モードと手動モードとを含む。コントローラ26は、入力装置32の操作に応じて、自動モードと手動モードとを切り替える。オペレータは、入力装置32を操作することで、自動モードと手動モードとを選択することができる。
【0033】
自動モードでは、コントローラ26は、第1検出信号と第2検出信号とに基づいて、ブレード18のピッチ角を制御する。コントローラ26は、所定の実行条件が満たされたときに、ピッチ角の自動制御を実行する。所定の実行条件は、第1条件と第2条件とを含む。第1条件は、リフトアクチュエータ19のボトム圧が第1閾値以上であることである。第2条件は、ピッチアクチュエータ20のヘッド圧が第2閾値以下であることである。
【0034】
図5は、ブレード18にかかる負荷を示す模式図である。
図5に示すように、ブレード18の刃先P0は、リフトアクチュエータ19のボトム圧によって、真下への貫入力F1で、接地面G1に押し付けられ、地面に貫入する。
図6に示すように、リフトアクチュエータ19のボトム圧は、この貫入ストロークに応じて変動する。すなわち、リフトアクチュエータ19のボトム圧は、ブレード18の刃先P0の貫入ストロークに関係する。リフトアクチュエータ19のボトム圧は、貫入ストロークの減少に応じて、増大する。第1閾値は、フロントホイール41が浮き上がるときのボトム圧B0の値に基づいて決定される。
図6において、B1は第1閾値を示している。S1は、リフトアクチュエータ19のボトム圧が第1閾値B1であるときの貫入ストロークを示している。
図6に示すように、第1閾値B1は、フロントホイール41が浮き上がるときのボトム圧B0よりも小さい。
【0035】
第2条件は、作業機械1が掘削作業中ではないことを示す。
図5に示すように、ブレード18の刃先P0は、水平方向の負荷F2を受ける。作業機械1が掘削作業中には、この水平方向の負荷F2が大きくなる。第2閾値は、作業機械1が掘削作業中ではないと見なせる程度に小さい値に決定される。
【0036】
コントローラ26は、第1条件と第2条件とが共に満たされたときに、ピッチ角の自動制御を実行する。コントローラ26は、第1条件と第2条件とが共に満たされたときには、ピッチ角を増大させる。すなわち、コントローラ26は、第1条件と第2条件とが共に満たされたときには、
図7に示すように、ブレード18を前傾させるようにピッチ角を変更する。それにより、下方への貫入力F1が増大することで、フロントホイール41の浮き上がりが防止される。
【0037】
コントローラ26は、ピッチ角データを記憶している。ピッチ角データは、リフトアクチュエータ19のボトム圧と目標ピッチ角との関係を規定している。コントローラ26は、自動制御において、ピッチ角データを参照して、リフトアクチュエータ19のボトム圧から、目標ピッチ角を決定する。コントローラ26は、ブレード18のピッチ角が目標ピッチ角になるように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
図8は、ピッチ角データの一例を示す図である。
【0038】
図8において、閾値B1は、上述した第1閾値である。コントローラ26は、リフトアクチュエータ19のボトム圧が第1閾値B1以上で、目標ピッチ角を増大させる。それにより、ブレード18が前傾する。コントローラ26は、リフトアクチュエータ19のボトム圧が第1閾値B1から第3閾値B2までの範囲で、リフトアクチュエータ19のボトム圧の増大に応じて、目標ピッチ角を増大させる。リフトアクチュエータ19のボトム圧が第3閾値B2以上では、目標ピッチ角は最大ピッチ角θmaxで一定となる。
【0039】
手動モードでは、コントローラ26は、操作装置31の操作に応じてブレード18のピッチ角を変更するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。また、操作装置31の操作が無いときには、コントローラ26は、ブレード18のピッチ角を維持するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。例えば、操作装置31の操作が無いときに、制御弁27において作動油の一部が漏れていても、コントローラ26は、ブレード18のピッチ角を維持するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、リフトアクチュエータ19のボトム圧に基づいて貫入力F1が不足しているかを判定する。リフトアクチュエータ19のボトム圧は、ブレード18の刃先P0の下方への貫入力F1に関係している。コントローラ26は、貫入力F1が不足していると判定したときに、ブレード18を前傾方向にピッチ動作させる。それにより、貫入力F1が増大することで、フロントホイール41の浮き上がりが防止される。以上のように、本実施形態に係る作業機械1では、作業の負荷に応じて、ブレード18のピッチ角を容易、且つ、適切に調整することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。コントローラ26による処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上述した自動モード或いは手動モードでの処理の一部が省略されてもよい。或いは、上述した処理の一部が変更されてもよい。
【0043】
リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とは、油圧シリンダに限らない。リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とは、例えば電動モータなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0044】
第1パラメータは、リフトアクチュエータ19のボトム圧に限らない。第1パラメータは、リフトフレームのピッチ角などの他のパラメータ、或いはそれらの組み合わせであってもよい。第2パラメータは、ピッチアクチュエータ20のヘッド圧に限らない。第2パラメータは、ブレード18のピッチ角などの他のパラメータ、或いはそれらの組み合わせであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示によれば、作業機械において、作業の負荷に応じて、ブレードのピッチ角を、容易、且つ、適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 車体
16 履帯
17 リフトフレーム
18 ブレード
19 リフトアクチュエータ
20 ピッチアクチュエータ
26 コントローラ
37 第1圧力センサ
38 第2圧力センサ
41 フロントホイール
42 リアホイール