(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184022
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】印刷装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 305
B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091622
(22)【出願日】2021-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 証明書1の別紙記載の公開日に製品を出荷した。 令和3年2月10日に、サーバーを介して証明書2の別紙記載の公開場所に発明を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 慎吾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB12
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC34
2C056EC71
2C056EC74
2C056EC80
2C056FA10
2C056HA30
(57)【要約】
【課題】印刷画像の画質を向上する。
【解決手段】印刷実行部は、印刷ヘッドの複数個のノズルよりも搬送方向の上流側で印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材を備える。制御装置は、第2部分印刷をN回実行させた後に、印刷媒体を第1搬送量よりも小さな第2搬送量搬送させ、その後に印刷媒体の搬送方向の上流側の端部の所定の位置が対向部材と対向する特定位置に印刷媒体が位置する状態で実行される第3部分印刷をN回実行させ、その後に印刷媒体を搬送させ、その後に印刷媒体が対向部材と対向しない状態で実行される第4部分印刷をN回実行させる。N回の部分印刷の間の(N-1)回の印刷媒体の搬送量は、N回の第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、N回の第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも搬送方向の上流側に位置するラスタラインの本数が第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上になるように決定される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、
前記印刷実行部は、
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、
を備え、
前記制御装置は、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を交互に複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させ、
前記制御装置は、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、
前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第1部分印刷をN回(Nは2以上の整数)実行させ、
前記第1部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を第1搬送量搬送させ、
前記第1搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第2部分印刷をN回実行させ、
前記第2部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を前記第1搬送量よりも小さな第2搬送量搬送させ、
前記第2搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体の前記搬送方向の上流側の端部の所定の位置が前記対向部材と対向する前記搬送方向の特定位置に前記印刷媒体が位置する状態で実行される前記部分印刷である第3部分印刷をN回実行させ、
前記第3部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を搬送させ、
その後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向しない状態で実行される前記部分印刷である第4部分印刷をN回実行させ、
N回の前記第1部分印刷にて印刷される第1領域は、前記第1部分印刷のみで印刷される第1通常領域と、前記第1通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第1部分印刷と前記第2部分印刷との両方にて印刷される第1端部領域と、を含み、
N回の前記第2部分印刷にて印刷される第2領域は、前記第1端部領域と、前記第1端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷のみで印刷される第2通常領域と、前記第2通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷と前記第3部分印刷との両方にて印刷される第2端部領域と、を含み、
N回の前記第3部分印刷にて印刷される第3領域は、前記第2端部領域と、前記第2端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第3部分印刷と前記第4部分印刷との両方にて印刷される第3端部領域と、を少なくとも含み、前記第2端部領域と前記第3端部領域との間に、前記第3部分印刷のみで印刷される第3通常領域を含む場合があり、
N回の前記第4部分印刷にて印刷される第4領域は、前記第3端部領域と、前記第3端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第4部分印刷のみで印刷される第4通常領域と、を含み、
前記第1通常領域内の複数本の第1ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第1ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第1ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第1部分印刷にて印刷され、
前記第1通常領域内の複数本の第2ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第2ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第2ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第2部分印刷にて印刷され、
前記第3通常領域内の複数本の第3ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第3ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第3ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第3部分印刷にて印刷され、
前記第4通常領域内の複数本の第4ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第4ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第4ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第4部分印刷にて印刷され、
前記制御装置は、N回の前記第1部分印刷の間と、N回の前記第2部分印刷の間と、N回の前記第3部分印刷の間と、N回の前記第4部分印刷の間とに、それぞれ、(N-1)回の前記印刷媒体の搬送を実行し、
前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量は、前記第2搬送量が最小値に設定される場合においてN回の前記第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、N回の前記第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも前記搬送方向の上流側に位置する上流側ラスタラインの本数が前記第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上になるように決定される、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量は、前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量の合計と、前記第2搬送量の最小値と、の和が、前記第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数分の前記搬送方向の長さ以上になるように決定される、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、第1印刷モードでの印刷と、第2印刷モードでの印刷とを実行可能であり、
前記印刷画像は、前記第1印刷モードにて印刷される第1印刷画像であり、
前記制御装置は、前記第2印刷モードにて印刷される第2印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる際に、
前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第5部分印刷をN回実行させ、
前記第5部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を第5搬送量搬送させ、
前記第5搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第6部分印刷をN回実行させ、
前記第6部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を前記第5搬送量よりも小さな第6搬送量搬送させ、
前記第6搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体の前記搬送方向の上流側の端部の所定の位置が前記対向部材と対向する前記搬送方向の特定位置に前記印刷媒体が位置する状態で実行される前記部分印刷である第7部分印刷をN回実行させ、
前記第7部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を搬送させ、
その後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向しない状態で実行される前記部分印刷である第8部分印刷をN回実行させ、
N回の前記第5部分印刷にて印刷される第5領域は、前記第5部分印刷のみで印刷され、
N回の前記第6部分印刷にて印刷される第6領域は、前記第6部分印刷のみで印刷され、
N回の前記第7部分印刷にて印刷される第7領域は、前記第7部分印刷のみで印刷され、
N回の前記第8部分印刷にて印刷される第8領域は、前記第8部分印刷のみで印刷され、
前記第5領域内の複数本の第5ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第5ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第5ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第5部分印刷にて印刷され、
前記第6領域内の複数本の第6ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第6ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第6ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第6部分印刷にて印刷され、
前記第7領域内の複数本の第7ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第7ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第7ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第7部分印刷にて印刷され、
前記第8領域内の複数本の第8ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第8ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第8ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第8部分印刷にて印刷され、
前記制御装置は、N回の前記第5部分印刷の間と、N回の前記第6部分印刷の間と、N回の前記第7部分印刷の間と、N回の前記第8部分印刷の間とに、それぞれ、(N-1)回の前記印刷媒体の搬送を実行し、
前記第2印刷モードにおける前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量は、前記第1印刷モードにおける前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量よりも小さい、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記第2印刷モードにおいて前記第5部分印刷と前記第6部分印刷にて使用されるノズルの個数は、前記第1印刷モードにおいて前記第1部分印刷と前記第2部分印刷にて使用されるノズルの個数よりも多い、印刷装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の印刷装置であって、
前記第2印刷モードにて印刷される前記第2印刷画像は、一次元コードと二次元コードとの少なくも一方を示すコード画像を含む、印刷装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の印刷装置であって、さらに、
前記印刷ヘッドを搭載し、前記印刷媒体に対して前記搬送方向と直交する走査方向に走査するキャリッジを備え、
前記制御装置は、前記キャリッジを前記走査方向に走査させながら、前記印刷ヘッドから前記印刷媒体にインクを吐出させることによって、前記部分印刷を実行させる、印刷装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の印刷装置であって、
N回の前記第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうちの前記上流側ラスタラインが位置する領域は、
前記第1端部領域に印刷されるラスタラインと同数の前記上流側ラスタラインを含む前記第3端部領域を少なくとも含み、
前記上流側ラスタラインの本数が前記第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数よりも多い場合には、前記第3通常領域をさらに含む、印刷装置。
【請求項8】
印刷実行部を制御する制御装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部は、
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を交互に複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させることを前記制御装置のコンピュータに実現させ、
前記コンピュータプログラムは、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、
前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第1部分印刷をN回(Nは2以上の整数)実行させ、
前記第1部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を第1搬送量搬送させ、
前記第1搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第2部分印刷をN回実行させ、
前記第2部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を前記第1搬送量よりも小さな第2搬送量搬送させ、
前記第2搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体の前記搬送方向の上流側の端部の所定の位置が前記対向部材と対向する前記搬送方向の特定位置に前記印刷媒体が位置する状態で実行される前記部分印刷である第3部分印刷をN回実行させ、
前記第3部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を搬送させ、
その後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向しない状態で実行される前記部分印刷である第4部分印刷をN回実行させ、
N回の前記第1部分印刷にて印刷される第1領域は、前記第1部分印刷のみで印刷される第1通常領域と、前記第1通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第1部分印刷と前記第2部分印刷との両方にて印刷される第1端部領域と、を含み、
N回の前記第2部分印刷にて印刷される第2領域は、前記第1端部領域と、前記第1端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷のみで印刷される第2通常領域と、前記第2通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷と前記第3部分印刷との両方にて印刷される第2端部領域と、を含み、
N回の前記第3部分印刷にて印刷される第3領域は、前記第2端部領域と、前記第2端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第3部分印刷と前記第4部分印刷との両方にて印刷される第3端部領域と、を少なくとも含み、前記第2端部領域と前記第3端部領域との間に、前記第3部分印刷のみで印刷される第3通常領域を含む場合があり、
N回の前記第4部分印刷にて印刷される第4領域は、前記第3端部領域と、前記第3端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第4部分印刷のみで印刷される第4通常領域と、を含み、
前記第1通常領域内の複数本の第1ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第1ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第1ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第1部分印刷にて印刷され、
前記第1通常領域内の複数本の第2ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第2ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第2ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第2部分印刷にて印刷され、
前記第3通常領域内の複数本の第3ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第3ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第3ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第3部分印刷にて印刷され、
前記第4通常領域内の複数本の第4ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第4ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第4ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第4部分印刷にて印刷され、
前記コンピュータプログラムは、N回の前記第1部分印刷の間と、N回の前記第2部分印刷の間と、N回の前記第3部分印刷の間と、N回の前記第4部分印刷の間とに、それぞれ、(N-1)回の前記印刷媒体の搬送を実行することを前記コンピュータに実現させ、
前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量は、前記第2搬送量が最小値に設定される場合においてN回の前記第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、N回の前記第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも前記搬送方向の上流側に位置する上流側ラスタラインの本数が前記第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上になるように決定される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数個のノズルを有する印刷ヘッドと印刷ヘッドに対して印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部とを備える印刷実行部の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたプリンタは、複数回のパス処理で印刷を行う際に、各パス処理で印刷されるバンド領域の境界付近の一部の領域を2回のパス処理で印刷する。これによってバンド領域の境界付近においてバンディングが目立つことを抑制している。このプリンタは、印刷ヘッドの複数個のノズルよりも搬送方向の上流側に、用紙を印刷面側から押さえる押さえ部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、用紙の印刷面と対向可能な対向部材(例えば、上記の押さえ部材)を有する印刷実行部による印刷画像の画質を向上する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、前記印刷実行部は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、を備え、前記制御装置は、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を交互に複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させ、前記制御装置は、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第1部分印刷をN回(Nは2以上の整数)実行させ、前記第1部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を第1搬送量搬送させ、前記第1搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される前記部分印刷である第2部分印刷をN回実行させ、前記第2部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を前記第1搬送量よりも小さな第2搬送量搬送させ、前記第2搬送量搬送させた後に、前記印刷媒体の前記搬送方向の上流側の端部の所定の位置が前記対向部材と対向する前記搬送方向の特定位置に前記印刷媒体が位置する状態で実行される前記部分印刷である第3部分印刷をN回実行させ、前記第3部分印刷をN回実行させた後に、前記印刷媒体を搬送させ、その後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向しない状態で実行される前記部分印刷である第4部分印刷をN回実行させ、N回の前記第1部分印刷にて印刷される第1領域は、前記第1部分印刷のみで印刷される第1通常領域と、前記第1通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第1部分印刷と前記第2部分印刷との両方にて印刷される第1端部領域と、を含み、N回の前記第2部分印刷にて印刷される第2領域は、前記第1端部領域と、前記第1端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷のみで印刷される第2通常領域と、前記第2通常領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第2部分印刷と前記第3部分印刷との両方にて印刷される第2端部領域と、を含み、N回の前記第3部分印刷にて印刷される第3領域は、前記第2端部領域と、前記第2端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第3部分印刷と前記第4部分印刷との両方にて印刷される第3端部領域と、を少なくとも含み、前記第2端部領域と前記第3端部領域との間に、前記第3部分印刷のみで印刷される第3通常領域を含む場合があり、N回の前記第4部分印刷にて印刷される第4領域は、前記第3端部領域と、前記第3端部領域よりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記第4部分印刷のみで印刷される第4通常領域と、を含み、前記第1通常領域内の複数本の第1ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第1ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第1ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第1部分印刷にて印刷され、前記第1通常領域内の複数本の第2ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第2ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第2ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第2部分印刷にて印刷され、前記第3通常領域内の複数本の第3ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第3ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第3ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第3部分印刷にて印刷され、前記第4通常領域内の複数本の第4ラスタラインであって前記搬送方向に並ぶ前記複数本の第4ラスタラインのうち、互いに隣接するN本の第4ラスタラインは、それぞれ、互いに異なる前記第4部分印刷にて印刷され、前記制御装置は、N回の前記第1部分印刷の間と、N回の前記第2部分印刷の間と、N回の前記第3部分印刷の間と、N回の前記第4部分印刷の間とに、それぞれ、(N-1)回の前記印刷媒体の搬送を実行し、前記(N-1)回の前記印刷媒体の搬送の搬送量は、前記第2搬送量が最小値に設定される場合においてN回の前記第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、N回の前記第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも前記搬送方向の上流側に位置する上流側ラスタラインの本数が前記第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上になるように決定される、印刷装置。
【0007】
上記構成によれば、N回の第3部分印刷は、印刷媒体が特定位置に位置する状態、すなわち、印刷媒体の搬送方向の上流側の端部の所定の位置が対向部材と対向する状態で行われる。このために、印刷媒体が安定した状態で第3部分印刷を行うことができるので、印刷画質を向上できる。ここで、N回の第3部分印刷を印刷媒体が特定位置に位置する状態で行うために第2搬送量が小さくなる場合がある。さらに、上記構成によれば、第2搬送量が最小値に設定される場合においてN回の第3部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、N回の第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも搬送方向の上流側に位置するラスタラインの本数が第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上になるように決定されている。この結果、N回の第2部分印刷にて印刷可能な複数本のラスタラインよりも搬送方向の上流側に、N回の第3部分印刷にて第1端部領域に印刷されるラスタラインの本数以上のラスタラインを印刷できる。この結果、N回の第3部分印刷とN回の第4部分印刷との両方で印刷される第3端部領域のラスタラインの本数を第1端部領域のラスタラインの本数以上とすることができる。したがって、第3端部領域のラスタラインの本数を確保できないことに起因してバンディングが目立つことを抑制できる。以上のように、上記構成によれば、印刷実行部による印刷画像の画質を向上することができる。
【0008】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷実行部の制御方法、印刷方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例のプリンタ200の構成を示すブロック図。
【
図3】用紙台145と複数個の押さえ部材146との斜視図。
【
図6】通常印刷モード用の印刷データ出力処理のフローチャート。
【
図7】分割パターンデータPDとヘッド位置P0~P2にて実行される部分印刷の記録率とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施例:
A-1:プリンタ200の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、実施例のプリンタ200の構成を示すブロック図である。
【0011】
プリンタ200は、例えば、印刷実行部としての印刷機構100と、制御装置としてCPU210と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置220と、RAMなどの揮発性記憶装置230と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部260と、液晶ディスプレイなどの表示部270と、通信部280と、を備えている。通信部280は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。プリンタ200は、通信部280を介して、外部装置、例えば、ユーザの端末装置300と通信可能に接続される。
【0012】
揮発性記憶装置230は、CPU210が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域231を提供する。不揮発性記憶装置220には、コンピュータプログラムPGが格納されている。コンピュータプログラムPGは、本実施例では、プリンタ200を制御するための制御プログラムである。コンピュータプログラムPGは、プリンタ200の出荷時に不揮発性記憶装置220に格納されて提供され得る。これに代えて、コンピュータプログラムPGは、サーバからダウンロードされる形態で提供されても良く、DVD-ROMなどに格納される形態で提供されてもよい。CPU210は、コンピュータプログラムPGを実行することにより、例えば、後述する印刷処理を実行する。これによって、CPU210は、印刷機構100を制御して印刷媒体(例えば、用紙)上に画像を印刷する。
【0013】
印刷機構100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれのインク(液滴)を用いてドットを用紙M上に形成可能であり、これによってカラー印刷を行う。印刷機構100は、印刷ヘッド110とヘッド駆動部120と主走査部130と搬送部140とを備えている。
【0014】
図2は、印刷機構100の概略構成を示す図である。
図2に示すように、主走査部130は、キャリッジ133と、摺動軸134と、を備えている。キャリッジ133は、印刷ヘッド110を搭載する。摺動軸134は、キャリッジ133を主走査方向(
図2のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する。主走査部130は、図示しない主走査モータの動力を用いて、キャリッジ133を摺動軸134に沿って往復動(走査とも呼ぶ)させる。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド110を往復動させる主走査が実現される。
【0015】
搬送部140は、用紙Mを保持しつつ、主走査方向と交差する搬送方向AR(
図2の+Y方向)に用紙Mを搬送する。
図2(A)に示すように、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、用紙台145と、複数個の押さえ部材146と、を備えている。以下では、搬送方向ARの上流側(-Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向ARの下流側(+Y側)を単に下流側とも呼ぶ。
【0016】
上流ローラ対142は、印刷ヘッド110よりも上流側(-Y側)で用紙Mを保持し、下流ローラ対141は、印刷ヘッド110よりも下流側(+Y側)で用紙Mを保持する。用紙台145は、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、の間の位置であって、かつ、印刷ヘッド110のノズル形成面111と対向する位置に配置されている。図示しない搬送モータによって下流ローラ対141と上流ローラ対142とが駆動されることによって、用紙Mが搬送方向ARに搬送される。
【0017】
ヘッド駆動部120(
図1)は、主走査部130が印刷ヘッド110の主走査を行っている最中に、印刷ヘッド110に駆動信号を供給して、印刷ヘッド110を駆動する。印刷ヘッド110は、駆動信号に従って、搬送部140によって搬送される用紙上にインクを吐出してドットを形成する。
【0018】
図2(B)は、-Z側(
図2における下側)から見た印刷ヘッド110の構成が図示されている。
図2(B)に示すように、印刷ヘッド110のノズル形成面111には、複数のノズルからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NC、NM、NY、NKが形成されている。各ノズル列は、搬送方向ARに沿って並ぶ複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向AR(+Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向ARに沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向ARに隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向ARの長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルNZのうち、最も下流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向ARの長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。ノズル長Dは、ノズル数を単位として、各ノズル列に含まれるノズル数で表される。なお、実際の製品では、複数個のノズルNZのうち、搬送方向ARの両端近傍のノズルNZを印刷に使用しない場合もあるが、本実施例では、ノズル長D分の全てのノズルNZを用いて印刷を行う場合を例として説明する。本実施例にて印刷に用いるノズルNZを使用可能ノズルと呼ぶ。
【0019】
ノズル列NC、NM、NY、NKの主走査方向(
図2(B)のX方向)の位置は、互いに異なり、搬送方向AR(
図2(B)のY方向)の位置は、互いに重複している。例えば、
図2(B)の例では、Yインクを吐出するノズル列NYの+X方向に、ノズル列NMが配置されている。
【0020】
図3を参照して、搬送部140についてさらに説明する。
図3は、用紙台145と複数個の押さえ部材146との斜視図である。
図3(A)は、用紙Mが保持されていない状態を示し、
図3(B)は、用紙Mが保持された状態を示している。用紙台145は、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPと、平板BBと、備えている。
【0021】
平板BBは、主走査方向(X方向)と搬送方向(+Y方向)とにほぼ平行な板部材である。平板BBの上流側(-Y側)の端は、上流ローラ対142の近傍に位置している。平板BBの下流側(+Y側)の端は、下流ローラ対141の近傍に位置している。
【0022】
図3(A)に示すように、複数個の高支持部材HPと複数個の低支持部材LPは、平板BB上に、X方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、各低支持部材LPは、該低支持部材に隣接する2個の高支持部材HPの間に配置されている。各支持部材HP、LPは、Y方向に沿って延びるリブである。
図2(A)に示すように、各高支持部材HPの上流側(-Y側)の端は、平板BBの上流側の端に位置している。各高支持部材HPの下流側(+Y側)の端は、平板BBのY方向の中央部に位置している。各低支持部材LPのY方向の両端の位置は、高支持部材HPのY方向の両端の位置と同じである。
【0023】
複数個の押さえ部材146は、複数個の低支持部材LPの+Z側の位置に配置されている。複数個の押さえ部材146のX方向の位置は、複数個の低支持部材LPのX方向の位置と同じである。すなわち、各押さえ部材146のX方向の位置は、該押さえ部材146に隣接する2個の高支持部材HPの間に位置している。複数個の押さえ部材146は、-Y方向に向かうほど低支持部材LPに近づくように傾斜した板部材である。複数個の押さえ部材146のY方向の位置は、印刷ヘッド110よりも上流側(-Y側)であり、上流ローラ対142よりも下流側(+Y側)である。
【0024】
図3(B)に示すように、用紙Mの搬送時には、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPは、印刷面とは反対側の面Mb側と対向し、面Mb側から用紙Mを支持する。複数個の押さえ部材146は、印刷面Maと対向し、印刷面Ma側から用紙Mを押さえる。このように、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPと、複数個の押さえ部材146と、は、用紙MをX方向に沿って波状に変形させた状態で保持する(
図3(B))。そして、用紙Mは、印刷ヘッド110のノズル形成面111と対向する位置において、波状に変形された状態で搬送方向(-Y方向)に搬送される。用紙Mを波状に変形させると、Y方向に沿った変形に対する用紙Mの剛性を高めることができる。この結果、用紙MがY方向に沿って反るように変形して、用紙Mが用紙台145から印刷ヘッド110側へ浮き上がることや、用紙Mが用紙台145側へ垂れさがることを抑制することができる。用紙Mが浮き上がると、あるいは、用紙Mが垂れさがると、ドットの形成位置のずれによって、印刷画像の画質低下、例えば、バンディングによる画質低下が引き起こされ得る。また、用紙Mが浮き上がると、印刷ヘッド110に用紙が接触して、用紙Mが汚れ得る。
【0025】
なお、搬送中の用紙Mの上流側の端(-Y側の端)が、
図2(A)の位置Ysよりも上流側(-Y側)に位置している状態では、用紙Mは、押さえ部材146によって押さえられている。搬送中の用紙Mの上流側の端が、
図2(A)の位置Ysよりも下流側(+Y側)に位置している状態では、用紙Mは、押さえ部材146によって押さえられていない。用紙Mが押さえ部材146によって押さえられている状態では、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられていない状態よりも、用紙Mが安定して保持されるために、用紙Mとノズル形成面111との距離も安定する。このために、ドットの形成位置を安定させて画質を安定させるためには、出来るだけ、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられている状態で印刷を行うことが好ましい。
【0026】
A-2.印刷処理
プリンタ200のCPU210(
図1)は、操作部260を介してユーザによって入力される印刷指示に基づいて、印刷処理を実行する。印刷指示には、印刷すべき画像を示す画像データの指定が含まれる。
図4は、印刷処理のフローチャートである。S110では、CPU210は、印刷指示によって指定される画像データを不揮発性記憶装置220から取得する。これに代えて、印刷指示および画像データは、端末装置300から取得されても良い。取得される画像データは、例えば、JPEG圧縮された画像データや、ページ記述言語で記述された画像データなどの各種のフォーマットを有する画像データである。
【0027】
S120では、CPU210は、取得された画像データに対して、ラスタライズ処理を実行して、RGB画像データを生成する。これによって、本実施例の対象画像データとしてのRGB画像データが取得される。RGB画像データは、RGB値を画素ごとに含むビットマップデータである。RGB値は、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の成分値を含むRGB表色系の色値である。
【0028】
S130では、CPU210は、RGB画像データを印刷データに変換する。具体的には、CPU210は、RGB画像データに対して色変換処理とハーフトーン処理とを実行する。色変換処理は、RGB画像データに含まれる複数個の画素のRGB値をCMYK値に変換する処理である。CMYK値は、印刷に用いられるインクに対応する成分値(本実施例では、C、M、Y、Kの成分値)を含むCMYK表色系の色値である。色変換処理は、例えば、RGB値とCMYK値との対応関係を規定する公知のルックアップテーブルを参照して実行される。ハーフトーン処理は、色変換済みの画像データを印刷データ(ドットデータとも呼ぶ)に変換する処理である。印刷データは、CMYKのそれぞれの色成分について、ドット形成状態を画素ごとに表すデータである。ドットデータの各画素の値は、例えば、「ドット無し」と「ドット有り」の2階調、あるいは、「ドット無し」「小」「中」「大」の4階調のドットの形成状態を示す。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法などの公知の手法を用いて実行される。
【0029】
S140では、CPU210は、実行すべき印刷の印刷モードが、バーコード印刷モードであるか否かを判断する。本実施例では、バーコード印刷モードと通常印刷モードとの2種類の印刷モードでの印刷が実行可能である。バーコード印刷モードは、バーコードなどの一次元コードやQRコード(登録商標)などの二次元コードを含む画像を印刷するために好適な印刷モードである。通常印刷モードは、一般的な画像、例えば、文字、写真、描画(グラフィック)を印刷するために好適な印刷モードである。例えば、印刷モードを指定する指示は、印刷指示とともにユーザによって入力されるため、CPU210は、当該指示に基づいて、印刷モードがバーコード印刷モードであるか否かを判断する。
【0030】
これに代えて、CPU210は、S110にて取得される画像データやS130にて取得される印刷データを解析することによって、印刷すべき画像に一次元コードや二次元コードが含まれるか否かを判断しても良い。この場合には、解析の結果、印刷すべき画像に一次元コードや二次元コードが含まれる場合に、実行すべき印刷の印刷モードは、バーコード印刷モードであると判断され、印刷すべき画像に一次元コードや二次元コードが含まれない場合に、実行すべき印刷の印刷モードは、通常印刷モードであると判断される。
る。
【0031】
実行すべき印刷モードが通常印刷モードである場合には(S140:NO)、S150にて、CPU210は、通常印刷モード用の印刷データ出力処理を実行する。実行すべき印刷モードがバーコード印刷モードである場合には(S140:YES)、S160にて、CPU210は、バーコード印刷モード用の印刷データ出力処理を実行する。印刷データ出力処理は、後述する1回の部分印刷ごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。制御データには、部分印刷の前に実行すべきシート搬送の搬送量を指定するデータが含まれる。印刷データ出力処理では、部分印刷データが、実行すべき部分印刷の回数分だけ出力される。印刷データ出力処理の詳細については、後述するが、通常印刷モード用の印刷データ出力処理では、印刷される画像において、後述する端部領域が設けられ、バーコード印刷モード用の印刷データ出力処理では、印刷される画像において、端部領域が設けられない。
【0032】
印刷処理を実行することによって、CPU210は、印刷機構100に印刷画像PIを印刷させることができる。具体的には、CPU210は、ヘッド駆動部120と、主走査部130と、搬送部140と、を制御して、部分印刷とシート搬送とを、交互に繰り返し複数回に亘って実行させることによって印刷を行う。1回の部分印刷では、用紙Mを用紙台145上に停止させた状態で、1回の主走査を行いつつ、印刷ヘッド110のノズルNZから用紙M上にインクを吐出することによって、印刷画像の一部分が用紙Mに印刷される。1回のシート搬送では、印刷データ出力処理において決定される搬送量だけ用紙Mが搬送方向ARに搬送される。
【0033】
図5は、第1実施例の通常印刷モードでの印刷の第1の説明図である。
図5には、用紙Mに印刷される印刷画像PIの一例が示されている。印刷画像PIは、それぞれが
図5のX方向(印刷時の主走査方向)に延び、Y方向(印刷時の搬送方向AR)の位置が互い異なる複数本のラスタライン(例えば、
図5のRL1)を含んでいる。各ラスタラインは、複数個のドットが形成され得るラインである。
【0034】
図5には、さらに、ヘッド位置、すなわち、用紙Mに対する印刷ヘッド110の搬送方向の相対的な位置が図示されている。ヘッド位置P0a、P0b、P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b、P4a、P4bは、複数回の部分印刷のうち、最後に実行される10回の部分印刷のヘッド位置である。
【0035】
ヘッド位置のうち、ハッチングされている範囲は、該ヘッド位置にて実行される部分印刷にて印刷に使用されるノズルNZ(使用ノズルとも呼ぶ)が位置する範囲である。使用ノズルは、使用可能ノズルのうちの全部または一部である。
【0036】
図5において、用紙M上に形成される印刷画像PIは、複数個の通常領域(例えば、
図5のハッチングされていない領域NA0~NA4)と、複数個の端部領域(例えば、
図5のハッチングされた領域SA0~SA3)と、を含む。
【0037】
通常領域は、それぞれ、2回の部分印刷にて印刷される(いわゆるマルチパス印刷)。1つの通常領域を印刷する2回の部分印刷を部分印刷セットとも呼ぶ。例えば、
図5の通常領域NA0は、ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セットで印刷される。同様に、通常領域NA1、NA2、NA3、NA4は、それぞれ、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セット、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セット、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セット、ヘッド位置P4a、P4bにて実行される部分印刷セットで印刷される。
【0038】
通常領域内の搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインのうち、互いに隣接する2本のラスタライン(搬送方向ARに連続する2本のラスタライン)は、それぞれ、互いに異なる部分印刷にて印刷される。例えば、通常領域内の搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインのうち、奇数番目のラスタラインは、該通常領域を印刷する部分印刷セットを構成する先の部分印刷にて印刷され、偶数番目のラスタラインは、該部分印刷セットを構成する後の部分印刷にて印刷される。これによって、印刷画像PIの搬送方向ARの印刷解像度は、通常領域が1回の部分印刷のみで印刷される場合と比較して2倍になる。
【0039】
ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA0は、通常領域NA0と、通常領域NA0よりも上流側(-Y側)の端部領域SA0と、を含む。ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA1は、通常領域NA1と、通常領域NA1よりも下流側(+Y側)の端部領域SA0と、通常領域NA1よりも上流側(-Y側)の端部領域SA1と、を含む。ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA2は、通常領域NA2と、通常領域NA2よりも下流側(+Y側)の端部領域SA1と、通常領域NA2よりも上流側(-Y側)の端部領域SA2と、を含む。ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA3は、通常領域NA3と、通常領域NA3よりも下流側(+Y側)の端部領域SA2と、通常領域NA3よりも上流側(-Y側)の端部領域SA3と、を含む。ヘッド位置P4a、P4bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA4は、通常領域NA4と、通常領域NA4よりも下流側(+Y側)の端部領域SA3と、を含む。
【0040】
通常領域では、それぞれ、領域内の各ラスタラインが1回の部分印刷のみで印刷される。例えば、
図5の通常領域NAk(kは0~4の整数)の各ラスタラインには、ヘッド位置Pka、Pkbにて行われる部分印刷セットを構成する1つの部分印刷のみでドットが形成される。したがって、通常領域NAkの各ラスタラインの特定色のドット、例えば、Cのドットは、ノズル列NCのうち、該ラスタラインに対応する1個のノズルNZを用いて形成される。
【0041】
端部領域は、領域内のラスタラインが2回の部分印刷で印刷される。例えば、
図5の端部領域SAl(lは0~3の整数)の各ラスタラインには、ヘッド位置Pla、Plbにて行われる部分印刷セットを構成する1つの部分印刷と、ヘッド位置P(l+1)a、P(l+1)bにて行われる部分印刷セットを構成する1つの部分印刷と、の両方でドットが形成される。したがって、端部領域SAlの各ラスタラインの特定色のドット、例えば、Cのドットは、ノズル列NCのうち、該ラスタラインに対応する2個のノズルNZを用いて形成される。
【0042】
端部領域の搬送方向ARの長さH(
図5)は、ラスタラインを単位として、例えば、3~数十であり、本実施例では8である。本実施例では、ノズルNZとラスタラインとは対応しているので、ラスタラインを単位とすることは、ノズル数を単位とすることに等しい。
【0043】
端部領域を設ける理由を説明する。仮に、端部領域を設けずに、通常領域に印刷される画像だけで印刷画像が構成されているとする。この場合には、用紙Mの搬送量のばらつき等に起因して、互いに搬送方向ARに隣り合う2個の通常領域の境界に、白スジや黒スジが現れるいわゆるバンディングと呼ばれる不具合が発生し得る。バンディングは、印刷画像PIの画質を低下させる。2個の通常領域の間に端部領域を設けて、該領域内に画像を印刷することで、上述したバンディングと呼ばれる不具合を抑制できる。端部領域では、1個のラスタライン上のドットが2回の部分印刷にて形成されるので、1個のラスタライン上の全ドットが、他のラスタライン上の全ドットに対して、同じようにずれることを抑制できるためである。
【0044】
本実施例では、複数回の部分印刷セットのうち、最後の部分印刷セットを除く部分印刷セットは、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられている状態、すなわち、用紙Mの印刷面が押さえ部材146と対向する状態で行われる。最後の部分印刷セットは、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられていない状態で行われる。ここで、本実施例では、出来るだけ、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられている状態で印刷を行うために、最後の1回前の部分印刷セットを、用紙Mの上流端の近傍の特定位置SPが押さえ部材146によって押さえられた状態で行う。
図5に示すように、最後の1回前の部分印刷セットは、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットである。
図5において、ヘッド位置P3bの上流側に示す押さえ部材146は、特定位置SPを押さえる搬送方向ARの位置に図示されている。これによって、最後の部分印刷セット、すなわち、
図5のヘッド位置P4a、P4bにて実行される部分印刷セットにて印刷される画像を小さくすることができる。したがって、最後の部分印刷セットは、複数個のノズルNZのうち、下流側の一部分だけを用いて実行することができる。その結果、最後の部分印刷セットは、下流ローラ対141のみで用紙Mが保持された状態で行われるが、最後の部分印刷の際に下流ローラ対141から用紙Mの上流端までの長さを短くできる。このために、用紙Mの上流端が印刷ヘッド110のノズル形成面111に触れる不具合が発生することを抑制できるとともに、ドットの形成位置を安定化させることができる。以下では、押さえ部材146が用紙Mの特定位置SPを押さえる状態となるヘッド位置P3a、P3bを、端部押さえヘッド位置とも呼ぶ。
【0045】
図5には、さらに、シート搬送T0b、T1a、T1b、T2a、T2b、T3a、T3b、T4aが矢印で図示されている。シート搬送T1a、T2a、T3a、T4aは、それぞれ、部分印刷セットを構成する2回の部分印刷の間に実行されるシート搬送(セット内搬送とも呼ぶ)である。シート搬送T1a、T2a、T3a、T4aの搬送量をセット内搬送量ΔTLとも呼ぶ。部分印刷セットを構成する先の部分印刷の使用可能ノズルは、ノズル長D分の複数個のノズルNZのうち、セット内搬送量ΔTLに応じた下流側(+Y側)の数個のノズルNZを除いたノズルNZである。部分印刷セットを構成する後の部分印刷の使用可能ノズルは、ノズル長D分の複数個のノズルNZのうち、セット内搬送量ΔTLに応じた上流側(-Y側)の数個のノズルNZを除いたノズルNZである。1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの最大長さNL(すなわち、使用可能ノズルが位置する搬送方向ARの範囲の長さ、
図5)は、ラスタラインを単位として(2D-ΔTL)である。
【0046】
シート搬送T0bは、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットの直前に行われるシート搬送である。シート搬送T1b、T2b、T3bは、それぞれ、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットの直前、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットの直前、ヘッド位置P4a、P4bにて実行される部分印刷セットの直前、に行われるシート搬送である。シート搬送T0b、T1b、T2b、T3bの搬送量をセット前搬送量TLとも呼ぶ。
【0047】
セット前搬送量TLは、印刷データ出力処理(
図6)を説明する際に後述するように、ノズルシフト量NS(後述)によって変動し、セット前搬送量TLの最小値TLminは、ラスタラインを単位として表され、本実施例では1である。最小値TLminは、1より大きな値(例えば、2、3、5)とされても良い。セット内搬送量ΔTLは、本実施例では、端部領域SA0~SA3の搬送方向ARの幅Hから、セット前搬送量TLの最小値TLminを減じた値である(ΔTL=(H-TLmin))。セット内搬送量ΔTLは、ラスタラインを単位として表される固定値であり、奇数に設定される。上述のように、本実施例では、端部領域SA0~SA3の搬送方向ARの幅Hは8であり、最小値TLminは1であるので、セット内搬送量ΔTLは、7である。
【0048】
A-3.通常印刷モード用の印刷データ出力処理
次に、
図3のS150の通常印刷モード用の印刷データ出力処理について説明する。印刷データ出力処理は、上述したように、S130にて生成される印刷データを用いて、部分印刷SPごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。
図6は、通常印刷モード用の印刷データ出力処理のフローチャートである。
【0049】
図4のS130にて生成される印刷データは、印刷すべき印刷画像PI(
図5)を示している。このため、印刷データは、印刷画像PIに含まれる複数本のラスタラインに対応する複数個のラスタデータを含んでいる。
【0050】
S200では、CPU210は、複数個のラスタデータのうち、1本の注目ラスタラインに対応するラスタデータ(以下、注目ラスタデータとも呼ぶ)を取得する。注目ラスタラインは、印刷画像PIに含まれ、搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインから、印刷時の搬送方向ARの下流側(
図5の+Y側)から順次に1本ずつ選択される。
【0051】
ここで、注目ラスタラインを印刷する部分印刷セットを注目部分印刷セットとも呼ぶ。ただし、注目ラスタラインが2回の部分印刷セットで印刷される場合、すなわち、注目ラスタラインが、端部領域内に位置する場合には、2回の部分印刷セットのうち、先に行われる部分印刷セットを注目部分印刷セットとする。例えば、
図5のラスタラインRL1、RL2が、注目ラスタラインである場合には、注目部分印刷セットは、ヘッド位置P0a、P0b(
図5)にて行われる部分印刷セットである。注目部分印刷セットにおいて注目ラスタライン上のドットの形成に用いられるノズルNZを注目ノズルとも呼ぶ。例えば、最初に処理されるラスタライン、すなわち、印刷画像PIの最下流に位置するラスタラインが注目ラスタラインである場合には、注目ノズルは、注目部分印刷セットにおける使用可能ノズルのうちの最下流に位置するノズルNZである。
【0052】
S205では、CPU210は、注目ラスタデータが分割対象であるか否かを判断する。注目ラスタラインが端部領域内に位置する場合、換言すれば、注目ノズルが、注目部分印刷セットの使用可能ノズルのうちの上流側の端部に位置する所定数(本実施例では8個)のノズルNZである場合には、注目ラスタデータは分割対象であると判断される。注目ラスタラインが通常領域内に位置する場合には、注目ラスタデータは分割対象ではないと判断される。
【0053】
注目ラスタデータが分割対象ではない場合には(S205:NO)、すなわち、注目ラスタラインが通常領域内に位置する場合には、S210にて、CPU210は、注目ラスタデータを注目ノズルに割り当てる。印刷データ出力処理の開始時点での注目ノズルは、注目部分印刷セットの使用可能ノズルの下流端のノズルNZである。
【0054】
注目ラスタデータが分割対象である場合には(S205:YES)、すなわち、注目ラスタラインが端部領域内に位置する場合には、S215にて、CPU210は、注目ラスタデータを、注目部分印刷セット用のデータと次の部分印刷セット用のデータとに分割する。
【0055】
具体的には、CPU210は、注目ラスタラインに対応する分割パターンデータPDを取得する。
図7は、分割パターンデータPDと、ヘッド位置P0~P2にて実行される部分印刷の記録率と、を示す図である。
図7(A)に示すように、分割パターンデータPDは、注目ラスタラインの各画素に対応する値を有する二値データである。分割パターンデータPDの値「0」は、その画素に対応するドットが、注目部分印刷セットにて形成されるべきであることを示している。分割パターンデータPDの値「1」は、その画素に対応するドットが、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットにて形成されるべきであることを示している。
【0056】
ここで、
図7(B)の記録率R0は、ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セットにおける記録率である。記録率R1は、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットにおける記録率である。記録率R2は、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットにおける記録率である。
図7(B)では、搬送方向ARの位置に対する各記録率R0、R1、R2が示されている。通常領域NA0に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R0は、100%である。同様に、通常領域NA1、NA2に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R1、R2は、100%である。
【0057】
端部領域SA0に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R0は、搬送方向ARの上流側(
図7(B)の下側)に向かうに連れて、直線的に減少する。端部領域SA0に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R1は、搬送方向ARの下流側(
図7(B)の上側)に向かうに連れて、直線的に減少する。端部領域SA0(
図5)に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R0と記録率R1との和は、100%である。端部領域SA1に対応する搬送方向ARの範囲における記録率R1、R2についても同様である。
【0058】
分割パターンデータPDは、端部領域における注目ラスタラインの搬送方向ARの位置に応じて、上述した記録率が実現されるように、生成される。CPU210は、分割パターンデータPDに従って、注目ラスタデータを、注目部分印刷セット用のデータと次の部分印刷セット用のデータとに分割する。
【0059】
S220では、CPU210は、注目部分印刷セット用のデータを注目ノズルに割り当てる。S225では、CPU210は、次の部分印刷セット用のデータを次の部分印刷セット用の対応ノズルに割り当てる。ここで、対応ノズルは、次の部分印刷セットにおいて注目ラスタライン上のドットの形成に用いられるノズルNZである。印刷データ出力処理の開始時点での対応ノズルは、次の部分印刷セットの使用可能ノズルの下流端のノズルNZである。例えば、
図5のラスタラインRL2が注目ラスタラインである場合には、対応ノズルは、ヘッド位置P1a、P1bおける使用ノズルのうちの下流側(
図5の+Y側)の端部に位置するノズルNZである。
【0060】
S230では、CPU210は、次の部分印刷セットの対応ノズルを示す番号を更新する。すなわち、CPU210は、対応ノズルを示す番号を、現在の対応ノズルより1つだけ上流側のノズルNZの番号に変更する。
【0061】
S235では、CPU210は、注目ノズルを示す番号を更新する。すなわち、CPU210は、注目ノズルを示す番号を、現在の注目ノズルより1つだけ上流側のノズルNZの番号に変更する。
【0062】
S240では、CPU210は、注目部分印刷セットにおける全ての使用ノズル(2回の部分印刷分の全ての使用ノズル)にラスタデータを割り当てたか否かを判断する。具体的には、更新後の注目ノズルを示す番号が、使用ノズルのうちの最上流のノズルの番号を超えた場合に、全ての使用ノズルにラスタデータが割り当てられたと判断される。ラスタデータが割り当てられていない使用ノズルがある場合には(S240:NO)、S200に戻る。
【0063】
全ての使用ノズルにラスタデータが割り当てられた場合には(S240:YES)、S245にて、CPU210は、注目部分印刷セットを構成する2回の部分印刷分の部分印刷データと、2回分の搬送量データと、を印刷機構100に出力する。部分印刷データは、使用ノズルに割り当てられたラスタデータ群である。搬送量データは、搬送量を示す制御データである。2回分の搬送量データは、注目部分印刷セットの直前に実行されるべきシート搬送のセット前搬送量TLと、セット内搬送量ΔTLと、を含む。セット内搬送量ΔTLは、上述のように、固定値(本実施例では7))である。
【0064】
セット前搬送量TLは、注目部分印刷セットが最初の部分印刷セットである場合には、印刷画像PIの下流端を印刷すべき用紙M上の位置と、注目部分印刷セットにおける使用可能ノズルのうちの下流端のノズルNZの位置と、が一致するように、決定される。注目部分印刷セットが2回目の部分印刷セットである場合には、セット前搬送量TLは、1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの最大長さNLから、端部領域分のラスタラインの数と、搬送量ΔTLと、を減じた値である。本実施例では、上述したように、最大長さNLは、(2D-ΔTL)であり、端部領域分のラスタラインの数は、端部領域の搬送方向ARの長さHであるので、注目部分印刷が2回目の部分印刷である場合に決定されるセット前搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL)である。この搬送量は、2回目の部分印刷セットのヘッド位置が端部押さえヘッド位置になることはない、という前提で予め決定されている。注目部分印刷セットが3回目以降の部分印刷セットである場合には、セット前搬送量TLは、後述するS280にて決定される。印刷機構100は、2回分の部分印刷データと2回分の搬送量データとを受け取ると、搬送量データによって示されるセット前搬送量TLだけシート搬送を実行し、その後に、部分印刷データを用いて1回目の部分印刷を実行する。さらに、印刷機構100は、搬送量データによって示されるセット内搬送量ΔTLだけシート搬送を実行し、その後に、2回目の部分印刷を実行する。このように、注目部分印刷セットを構成する2回の部分印刷が実行される。
【0065】
S250では、CPU210は、全ての部分印刷セットを処理したか否かを判断する。全ての部分印刷セットが処理された場合には(S250:YES)、CPU210は、印刷データ出力処理を終了する。全ての部分印刷セットが処理されていない場合には(S250:NO)、CPU210は、S251にて、注目部分印刷セットを更新する。すなわち、注目部分印刷セットを、現在の注目部分印刷セットの次の注目部分印刷セットとする。具体的には、現時点における次の注目部分印刷セットの対応ノズルの番号が、新たに注目ノズルの番号に設定される。現時点における次の注目部分印刷セットの対応ノズルの番号は、通常領域の下流端のノズルの番号になっている。このために、新たな注目ノズルの番号は、通常領域の下流端のノズルの番号に設定される。
【0066】
S252では、CPU210では、注目部分印刷セットは、端部押さえヘッド位置にて実行される部分印刷セットであるか否かを判断する。
図5の例では、注目部分印刷セットがヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットである場合には、注目部分印刷セットは、端部押さえヘッド位置にて実行される部分印刷セットであると判断される。注目部分印刷セットが端部押さえヘッド位置にて実行される部分印刷セットでない場合には(S252:NO)、S255に処理を進める。
【0067】
S255では、CPU210は、注目部分印刷セットにおける押さえ基準位置の超過量VOを算出する。超過量VOは、注目部分印刷セットにおけるヘッド位置における使用可能ノズルのうちの最上流のノズルNZが、押さえ基準位置RLよりも上流側に位置する場合において、押さえ基準位置RLから最上流のノズルNZまでの長さを示す。押さえ基準位置RL(
図5)は、用紙M上に定められる搬送方向ARの位置である。注目部分印刷セットにおける最上流のノズルNZが押さえ基準位置RLよりも上流側に位置する場合に、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットは、端部押さえヘッド位置(
図5のヘッド位置P3a、P3b)にて実行される。
図5の例では、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットが注目部分印刷セットである場合には、ヘッド位置P2a、P2bにおける最上流のノズルNZは、押さえ基準位置RLよりも上流側に位置するので、
図5に示す超過量VOが算出される。超過量VOの単位は、例えば、ラスタラインの数で示される。
【0068】
最上流のノズルが、押さえ基準位置RLと同じ、もしくは、押さえ基準位置RLよりも下流側に位置する場合には、超過量VOは0である。
図5の例では、ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セット、あるいは、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットが注目部分印刷セットである場合には、これらのヘッド位置における最上流のノズルは、押さえ基準位置RLよりも下流側に位置するので、超過量VOは0である。
【0069】
S265では、CPU210は、超過量VOに基づいて注目部分印刷セットの次の部分印刷セットのノズルシフト量NSを設定する。ノズルシフト量NSは、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットにおいて、使用可能ノズルのうち、下流側において使用しないノズルNZ(下流側不使用ノズルとも呼ぶ)の数を示す。ノズルシフト量NSが0である場合には、下流側不使用ノズルは設けられない。ノズルシフト量NSが1以上である場合には、使用可能ノズルのうち、下流側(
図5の+Y側)のノズルシフト量NS分のノズルNZは、下流側不使用ノズルである。したがって、この場合には、使用可能ノズルのうち、下流側不使用ノズルを除いたノズルが、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットの使用ノズルである。具体的には、S265にて、CPU210は、ノズルシフト量NSを超過量VOに設定する。
【0070】
注目部分印刷セットが端部押さえヘッド位置にて実行される部分印刷セットである場合には(S252:YES)、S272にて、CPU210は、ノズルシフト量NSを0に設定する。注目部分印刷セットが端部押さえヘッド位置である場合には、次の部分印刷セットは、最後の部分印刷セットとなる。最後の部分印刷セットでは、使用可能ノズルのうちの下流端に不使用ノズルを設定しないためである。
【0071】
S280では、CPU210は、ノズルシフト量NSに基づいて、注目部分印刷セットの後に行われるシート搬送の搬送量、換言すれば、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットの直前に行われるシート搬送のセット前搬送量TLを決定する。セット前搬送量TLは、ラスタラインを単位として算出される。セット前搬送量TLは、1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの最大長さNLから、端部領域分のラスタラインの数と搬送量ΔTLとノズルシフト量NSとを減じた値に決定される。本実施例では、最大長さNLは、(2D-ΔTL)であり、端部領域分のラスタラインの数は、端部領域の搬送方向ARの長さHであるので、セット前搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL-NS)である。
【0072】
S285では、CPU210は、注目部分印刷セットの次の部分印刷セットの対応ノズルの番号を初期値に設定する。初期値は、部分印刷セットの使用可能ノズルのうち、下流端からノズルシフト量NSだけ上流側に位置するノズルの番号である。CPU210は、S285の後に、処理をS200に戻す。
【0073】
以上説明した本実施例の印刷について、
図5を参照してさらに説明する。端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットよりも前の部分印刷セットでは、高速な印刷を実現するために使用可能ノズルを全て使用して印刷を行うことが好ましい。このために、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セット、および、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットのノズルシフト量NSは0に設定され(
図6のS265)、これらの部分印刷セットの直前のシート搬送T0b、T1bのセット前搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL)に設定される(
図6のS280)。また、ヘッド位置P4a、P4bにて実行される最後の部分印刷セットは、下流ローラ対141から用紙Mの上流端までの長さができる限り短い状態で実行されることが好ましいので、ヘッド位置P4a、P4bの下流側のノズルを用いて実行されることが好ましい。このために、最後の部分印刷セットのノズルシフト量NSは0に設定され(
図6のS272)、最後の部分印刷セットの直前のシート搬送T3bの搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL)に設定される(
図6のS280)。
【0074】
端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bは、用紙Mに対して固定された搬送方向ARの位置である。このために、ヘッド位置P2bの搬送方向ARの位置に応じて、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットのノズルシフト量NSが設定され(
図6のS255、S260)、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットの直前のシート搬送T2bの搬送量TLが決定される(
図6のS280)。したがって、用紙Mに対するヘッド位置P2bが偶然に端部押さえヘッド位置よりも(2D-H-2ΔTL)だけ下流側である場合を除いて、ヘッド位置P3a、P3bでの部分印刷セットのノズルシフト量NSは0より大きな値に設定され、シート搬送T2bの搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL)よりも小さな値に決定される。
【0075】
A-4.バーコード印刷モード用の印刷データ出力処理
次に、
図3のS160のバーコード印刷モード用の印刷データ出力処理について説明する。
図8は、バーコード印刷モードでの印刷の説明図である。
図8には、
図5と同様の説明図が、バーコード印刷モードでの印刷について図示されている。バーコード印刷モードでは印刷画像PIbに端部領域が設けられない点が、
図5の通常印刷モードと異なる。このために、
図8において、用紙M上に形成される印刷画像PIbは、複数個の通常領域(例えば、
図8の領域NA0~NA4)を含み、端部領域を含まない。
【0076】
したがって、バーコード印刷モードでは、ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セットにて印刷される領域RA0は、ヘッド位置P0a、P0bにて実行される部分印刷セットのみで印刷され、他の部分印刷セットでは、印刷されない。同様に、領域RA1は、ヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットのみで印刷され、領域RA2は、ヘッド位置P2a、P2bにて実行される部分印刷セットのみで印刷される。領域RA3は、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷セットのみで印刷され、領域RA4は、ヘッド位置P4a、P4bにて実行される部分印刷セットのみで印刷される。
【0077】
バーコード印刷モードでは端部領域が設けられない理由を説明する。バーコードなどの一次元コードや、QRコード(登録商標)などの二次元コードでは、これらのコードを構成する線やブロックの太さや間隔によって、これらのコードによって示される情報の内容が異なる。このために、印刷画像においてコードを構成する線やブロックの太さや間隔が精度良く印刷されることが重要である。端部領域では、1本のラスタライン上のドットが複数回の部分印刷にて形成されるので、1本のラスタライン上において、1つの部分印刷で形成されるドットと他の部分印刷で形成されるドットとが搬送方向ARにずれる場合がある。この場合には、1本のラスタラインで表現される線の太さが変動し、これに起因して印刷されるコードの線やブロックの太さや間隔が変動する可能性がある。このために、本実施例のバーコード印刷モードでは、端部領域が設けられない。
【0078】
なお、バーコード印刷モードでも通常印刷モードと同様に、通常領域内の搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインのうち、互いに隣接する2本のラスタライン(搬送方向ARに連続する2本のラスタライン)は、それぞれ、互いに異なる部分印刷にて印刷される。例えば、通常領域内の搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインのうち、奇数番目のラスタラインは、該通常領域を印刷する部分印刷セットを構成する先の部分印刷にて印刷され、偶数番目のラスタラインは、該部分印刷セットを構成する後の部分印刷にて印刷される。このために、バーコード印刷モードの印刷画像PIbの搬送方向ARの印刷解像度は、通常印刷モードの印刷画像PIの搬送方向ARの印刷解像度と同じである。
【0079】
さらに、バーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLx(例えば、
図8のシート搬送T1a、T2a、T3a、T4aの搬送量)が、通常印刷モードのセット内搬送量ΔTL(本実施例では7)よりも小さい(ΔTL>ΔTLx)。本実施例では、バーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxは、ラスタラインを単位として、3である。
【0080】
バーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxが通常印刷モードよりも小さいために、バーコード印刷モードの使用可能ノズルの個数は、通常印刷モードよりも多い。このために、バーコード印刷モードにおいて1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの長さNLx(
図8)は、(2D-ΔTLx)であり、通常印刷モードにおいて1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの長さNL(
図5、2D-ΔTL)よりも長い(NLx>NL)。
【0081】
このように、バーコード印刷モードでは、1つの部分印刷セットにて印刷可能な搬送方向ARの長さNLxが長いこと、および、端部領域を設けないことによって、印刷画像の印刷に要する部分印刷の回数が通常印刷モードよりも少なくし得る。このために、バーコード印刷モードでは、通常印刷モードの印刷速度よりも印刷時間が短縮され得る。
【0082】
バーコード印刷モード用の印刷データ出力処理は、
図6の通常印刷モード用の印刷データ出力処理と同様に実行される。ただし、バーコード印刷モードでは、上述のように端部領域を設けないために、
図6のS205において、注目ラスタデータが分割対象であると判断されることはない。したがって、バーコード印刷モードでは、
図6のS205の後に、必ず
図6のS210に処理が進められるので、
図6のS215~S230が実行されることはない。また、通常印刷モードにおいて、
図6のS280では、セット前搬送量TLは、(2D-H-2ΔTL-NS)の式によって決定される。バーコード印刷モードでは、端部領域が設けられないためにH=0であり、セット内搬送量はΔTLxであるので、
図6のS280では、セット前搬送量TLは、(2D-2ΔTLx-NS)の式によって決定される。
【0083】
以上説明した本実施例において、通常印刷モードのセット内搬送量ΔTLが、バーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxよりも大きな値に設定されている理由を説明する。
図5の例では、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置と、端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bの搬送方向ARの位置と、が比較的離れている。ここで、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置は、印刷画像PIの下流側(
図5の+Y側)の余白や用紙Mの搬送方向ARの長さ等に起因して変動する。また、印刷画像PIの搬送方向ARの途中に空白部分がある場合に、該空白をスキップして印刷を行う場合には、印刷画像PIに含まれる空白部分に応じて、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置は変動する。このために、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置と、端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bの搬送方向ARの位置と、が近接する場合がある。このような場合の印刷について、本実施例と比較例とを比較しながら説明する。
【0084】
図9は、第1実施例の通常印刷モードの印刷の第2の説明図である。
図10は、比較例の通常印刷モードの印刷の説明図である。
図9(A)には、
図5と同様の本実施例の説明図が、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置と、端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bの搬送方向ARの位置と、が近接する場合について示されている。
図10(A)には、比較例の説明図が、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置と、端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bの搬送方向ARの位置と、が近接する場合について示されている。比較例では、本実施例と異なり、セット内搬送量がバーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxに設定されている。
【0085】
図9、
図10の例では、ヘッド位置P2a、P2bの搬送方向ARの位置と、端部押さえヘッド位置であるヘッド位置P3a、P3bの搬送方向ARの位置と、が近接するために、シート搬送T2bが3(ラスタライン3本分)に設定されている(
図6のS280)。このような場合において、本実施例(
図9)では、端部領域SA2の搬送方向ARの長さと端部領域SA3の搬送方向ARの長さとの両方が、端部領域の長さとして確保すべき長さH(ラスタラインのH本分)だけ確保できる。比較例(
図10)では、端部領域SA2の搬送方向ARの長さは、確保すべき長さHだけ確保できるものの、端部領域SA3の搬送方向ARの長さは、確保すべき長さHより小さくなる。
【0086】
図9(B)には、
図9(A)にて破線で囲んだ領域AAの拡大図が示されている。
図10(B)には、
図10(A)にて破線で囲んだ領域AAxの拡大図が示されている。
図9(B)、
図10(B)において、ヘッド位置P2a、P2b、P3a、P3b、P4a、P4bの内部に示される丸および四角は、ノズルNZを示している。黒丸は、端部領域を印刷するノズルNZを示す。四角は、通常領域を印刷するノズルNZを示す。白丸は、使用されないノズルNZを示す。
【0087】
図9(B)の本実施例において、ヘッド位置P2a、P2b、P3a、P3bのノズル群NG2は、端部領域SA2を印刷するノズル群である。ヘッド位置P3a、P3b、P4a、P4bのノズル群NG3は、端部領域SA3を印刷するノズル群である。ヘッド位置P3a、P3b、のノズル群NGnは、通常領域NA3を印刷するノズル群である。ノズル群NG2、NG3のそれぞれは、搬送方向ARに確保すべき長さH(本実施例ではラスタライン8本分)分のノズルNZを含んでいる。すなわち、
図9(B)の本実施例では、端部領域SA2および端部領域SA3の搬送方向ARの長さが確保すべき長さHだけ確保できている。
【0088】
これは、セット内搬送量ΔTLが、端部領域SA0~SA3の搬送方向ARの幅Hから、セット前搬送量TLの最小値TLminを減じた値(ΔTL=(H-TLmin)、本実施例では7)に設定されているためである。すなわち、本実施例では、セット内搬送量ΔTLが7に設定されているために、シート搬送T2bの搬送量に拘わらずに、ヘッド位置P2a、P2bにて印刷に用いられる上流端(
図9(B)の下側の端)のノズルNZendよりも上流側(
図9(B)の下側)に、ヘッド位置P3a、P3bにて印刷に用いられる8個以上のノズル(
図9(B)のノズル群NGd)を確保できる。
図9(B)の例では、シート搬送T2bの搬送量が3であるので、ノズル群NGd(
図9(B))は、10個のノズルを含んでいる。
図9(B)から、シート搬送T2bの搬送量が1であったとしても、8個のノズルが少なくとも確保されることが解る。8個のノズルが確保されていれば、8本分のラスタラインを含む端部領域SA3を印刷することができる。
【0089】
換言すれば、本実施例では、セット内搬送量ΔTLは、シート搬送T2bの搬送量が最小値(本実施例では1)に設定される場合においても、ヘッド位置P3a、P3bでの部分印刷セットにて印刷可能な複数本のラスタラインのうち、ヘッド位置P2a、P2bにて印刷可能な複数本のラスタラインよりも上流側に位置する上流側ラスタラインの本数が端部領域SA3に印刷されるラスタラインの本数H以上になるように決定されている。この結果、端部領域SA3の搬送方向ARの長さを十分に確保できるので、
図7にて説明した適切な端部領域SA3の印刷を実行でき、印刷画像PIにおいてバンディングが目立つことを抑制できる。
【0090】
なお、
図9(B)の例では、ノズル群NGd(
図9(B))は、10個のノズルを含んでいるので、10個のノズルのうち、上流側の8個のノズル(
図9(B)のノズル群NG3に属するノズル)を用いて、端部領域SA3が印刷される。そして、残りの2個のノズル(
図9(B)のノズル群NGnに属するノズル)を用いて、通常領域NA3が印刷される。シート搬送T2bの搬送量が1である場合には、8個のノズルが確保されるので、これらの8個のノズルを用いて、端部領域SA3が印刷され、通常領域NA3は印刷されない。すなわち、この場合には、端部領域SA2と端部領域SA3とは直接に隣接し、端部領域SA2と端部領域SA3との間に通常領域は存在しない。このように、ヘッド位置P3a、P3bにて実行される部分印刷にて印刷される領域RA3は、端部領域SA2と端部領域SA3とを少なくとも含むが、端部領域SA2と端部領域SA2との間に、通常領域を含む場合(
図9)と含まない場合(図示省略)とがあり得る。
【0091】
図10(B)の比較例では、セット内搬送量ΔTLxが、本実施例のセット内搬送量ΔTLよりも小さい。このために、
図10(B)では、ヘッド位置P2a、P2bにて印刷に用いられる上流端のノズルNZendよりも上流側に、ヘッド位置P3a、P3bにて印刷に用いられるノズルとして、6個のノズル(
図10(B)のノズル群NGdx)しか確保できない。シート搬送T2bの搬送量が最小値(本実施例では1)である場合には、確保できるノズル数は、さらに、少なくなり、4個だけとなる。このために、
図10(B)の比較例では、シート搬送T2bの搬送量が小さい場合に、端部領域SA3の搬送方向ARの長さが、確保すべき長さHより小さなHxになる。したがって、比較例では、例えば、
図7にて説明した適切な端部領域SA3の印刷を実行できないので、端部領域SA3においてバンディングが目立つ可能性がある。
【0092】
さらに、本実施例によれば、バーコード印刷モードにおけるセット内搬送量ΔTLxは、通常印刷モードにおけるセット内搬送量ΔTLよりも小さい。この結果、印刷モードに応じて適切なセット内搬送量が設定できる。例えば、これによって、バーコード印刷モードにおいてヘッド位置P1a、P1bにて実行される部分印刷セットにて使用されるノズルの個数は、通常印刷モードにおいて当該部分印刷セットにて使用されるノズルの個数よりも多くできる(NLx>NL)。したがって、バーコード印刷モードにおける印刷時間を、通常印刷モードにおける印刷時間よりも短縮し得る。
【0093】
以上の説明から解るように、本実施例の通常印刷モードにおけるヘッド位置P1a、P2aにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第1部分印刷の例であり、通常印刷モードにおけるヘッド位置P2a、P2bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第2部分印刷の例である。通常印刷モードにおけるヘッド位置P3a、P3bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第3部分印刷の例であり、通常印刷モードにおけるヘッド位置P4a、P4bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第4部分印刷の例である。また、通常印刷モードにおける端部領域SA1、SA2、SA3、SA4は、それぞれ、第1端部領域、第2端部領域、第3端部領域、第4端部領域の例である。通常印刷モードにおける通常領域NA1、NA2、NA3、NA4は、それぞれ、第1通常領域、第2通常領域、第3通常領域、第4通常領域の例である。また、通常印刷モードにおけるシート搬送T1bの搬送量は、第1搬送量の例であり、シート搬送T2bの搬送量は、第2搬送量の例である。端部押さえヘッド位置は、特定位置の例である。バーコード印刷モードにおけるヘッド位置P1a、P2aにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第5部分印刷の例であり、通常印刷モードにおけるヘッド位置P2a、P2bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第6部分印刷の例である。通常印刷モードにおけるヘッド位置P3a、P3bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第7部分印刷の例であり、通常印刷モードにおけるヘッド位置P4a、P4bにて実行される2回の部分印刷は、それぞれ、第8部分印刷の例である。
【0094】
B.第2実施例
上記第1実施例では、1つの部分印刷セットは、2回の部分印刷を含んでいる。第2実施例では、1つの部分印刷セットは、3回の部分印刷を含んでいる。
図11は、第2実施例の部分印刷セットの説明図である。
図11(A)~(C)には、それぞれ、2つの部分印刷セットのヘッド位置が示されている。ヘッド位置P2a、P2b、P2cにて実行される3回の部分印刷から成る部分印刷セットは、
図5の領域RA2を印刷する部分印刷セットである。ヘッド位置P3a、P3b、P3cにて実行される3回の部分印刷から成る部分印刷セットは、
図5の領域RA3を印刷する部分印刷セットである。
【0095】
第2実施例では、1つの部分印刷セットは3回の部分印刷を含んでいるので、1つの部分印刷セットを実行する間に2回のセット内搬送が行われる。
図11(A)~(C)において、ヘッド位置P2a、P2bの後に行われるシート搬送T2a、T2bは、ヘッド位置P2a、P2b、P2cにて実行される部分印刷セットのセット内搬送である。ヘッド位置P3a、P3bの後に行われるシート搬送T3a、T3bは、ヘッド位置P3a、P3b、P3cにて実行される部分印刷セットのセット内搬送である。シート搬送T2cは、ヘッド位置P2a、P2b、P2cにて実行される部分印刷セットと、ヘッド位置P3a、P3b、P3cにて実行される部分印刷セットと、の間に行われるシート搬送である。
【0096】
1つの部分印刷セットのセット内搬送の搬送量と、他の部分印刷セットの対応するセット内搬送の搬送量とは、同じにされる。例えば、シート搬送T2aの搬送量と、シート搬送T3aの搬送量とは、同じであり、シート搬送T2bの搬送量と、シート搬送T3bの搬送量とは、同じである。1つの部分印刷セット内の2個のセット内搬送の搬送量は異なっていても以下の規則(1)、(2)に従っていれば良い。このように設定すれば、印刷ヘッド110のノズル間隔NT(
図2(B))の3分の1の間隔でラスタラインが並ぶように、適切に印刷を行うことができる。
(1)2回のセット内搬送のうちの1番目のシート搬送(例えば、T2a)を、1つの部分印刷セットに含まれる部分印刷の回数(3回)で割った余りが、1と2のうちの一方である。
(2)2回のセット内搬送のうちの1番目と2番目のシート搬送(例えば、T2aとT2b)の和を、1つの部分印刷セットに含まれる部分印刷の回数(3回)で割った余りが、1と2のうちの他方である。
【0097】
さらに、第2実施例では、2回のセット内搬送の搬送量は、2回のセット内搬送の搬送量の合計と、2つの部分印刷セットの間に行われるシート搬送T2cの最小値(本実施例では1)と、の和が、確保すべき端部領域SA3の搬送方向ARの長さH(本実施例では6)以上になるように、決定される。
【0098】
第2実施例では、
図11(A)~(C)に示されるセット内搬送の搬送量のいずれか1つが採用される。
図11(A)では、ラスタラインを単位として、シート搬送T2a、T3aの搬送量は、それぞれ、2であり、シート搬送T2b、T3bの搬送量は、それぞれ、5である。シート搬送T2a、T2bの搬送量の合計、および、シート搬送T3a、T3bの搬送量の合計は、それぞれ、7である。
【0099】
図11(B)では、ラスタラインを単位として、シート搬送T2a、T3aの搬送量は、それぞれ、5であり、シート搬送T2b、T3bの搬送量は、それぞれ、2である。シート搬送T2a、T2bの搬送量の合計、および、シート搬送T3a、T3bの搬送量の合計は、それぞれ、7である。
【0100】
図11(C)では、ラスタラインを単位として、シート搬送T2a、T3aの搬送量は、それぞれ、4であり、シート搬送T2b、T3bの搬送量は、それぞれ、4である。シート搬送T2a、T2bの搬送量の合計、および、シート搬送T3a、T3bの搬送量の合計は、それぞれ、8である。
【0101】
第2実施例によれば、2回のセット内搬送の搬送量が、2回のセット内搬送の搬送量の合計と、2つの部分印刷セットの間に行われるシート搬送T2cの最小値(本実施例では1)と、の和が、確保すべき端部領域SA3の搬送方向ARの長さH(本実施例では6)以上になるように、決定されているために、端部領域SA3の搬送方向ARの長さを、確保すべき搬送方向ARの長さHだけ確保することができる。この結果、第1実施例と同様に、適切な端部領域SA3の印刷を実行でき、印刷画像においてバンディングが目立つことを抑制できる。
【0102】
図11(A)~(C)のそれぞれにおいて、ノズル群NG1は、端部領域SA1(
図5)を印刷するノズル群である。ノズル群NG2は、端部領域SA2(
図5)を印刷するノズル群である。ノズル群NG3は、端部領域SA3(
図5)を印刷するノズル群である。シート搬送T2cが最小値(本実施例では1)であっても、ノズル群NG1、NG2、NG3は、それぞれ、搬送方向ARの位置が互いに異なる6個のノズルを含んでいる。このように、シート搬送T2cが最小値(本実施例では1)であっても、端部領域SA1~SA3の搬送方向ARの長さHが確保されることが解る。
【0103】
図12は、比較例の部分印刷セットの説明図である。
図12の比較例では、ラスタラインを単位として、シート搬送T2a、T3aの搬送量は、それぞれ、2であり、シート搬送T2b、T3bの搬送量は、それぞれ、2である。シート搬送T2a、T2bの搬送量の合計、および、シート搬送T3a、T3bの搬送量の合計は、それぞれ、4である。すなわち、
図12の比較例では、
図11の第2実施例と異なり、2回のセット内搬送の搬送量の合計と、2つの部分印刷セットの間に行われるシート搬送T2cの最小値(本実施例では1)と、の和(本実施例では4)が、確保すべき端部領域SA3の搬送方向ARの長さH(本実施例では6)未満である。
【0104】
このために、比較例では、シート搬送T2cが最小値(本実施例では1)である場合に、ノズル群NG3は、搬送方向ARの位置が互いに異なるノズルを5個しか含まない。すなわち、比較例では、シート搬送T2cが最小値(本実施例では1)である場合に、端部領域SA3の搬送方向ARの長さHが確保できないことが解る。
【0105】
C.変形例
(1)上記第1実施例では、1つの部分印刷セットは、2回の部分印刷を含み、第2実施例では、1つの部分印刷セットは、3回の部分印刷を含んでいる。これに代えて、1つの部分印刷セットは、4回以上の部分印刷、例えば、4回や5回の部分印刷によって構成されていても良い。一般には、1つの部分印刷セットは、N回(Nは2以上の整数)の部分印刷によって構成され得る。この場合には、各通常領域内の搬送方向に並ぶ複数本のラスタラインのうち、互いに隣接するN本のラスタラインは、それぞれ、1つの部分印刷セットに含まれる互いに異なる部分印刷にて印刷される。そして、1つの部分印刷セットが実行される間には、(N-1)回のセット内搬送が実行される。(N-1)回のセット内搬送の搬送量は、(N-1)回のセット内搬送の搬送量の合計と、1つの部分印刷セットと次の部分印刷セットとの間のシート搬送の搬送量の最小値と、の和が、端部領域に印刷されるラスタラインの本数分の搬送方向の長さH以上になるように決定される。この構成によれば、端部領域の搬送方向の長さが確保され、印刷画像においてバンディングが目立つことを抑制できる。
【0106】
(2)上記第1実施例では、印刷モードとして通常印刷モードとバーコード印刷モードとを備えている。これに代えて、印刷モードとして通常印刷モードと高速印刷モードとを備えても良い。そして、高速印刷モードにおいて、第1実施例のバーコード印刷モードの印刷が実行されても良い。また、印刷モードとして、バーコード印刷モードや高速印刷モードを備えなくても良い。
【0107】
また、上記第1実施例のバーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxは、通常印刷モードのセット内搬送量ΔTLよりも小さいが、バーコード印刷モードのセット内搬送量ΔTLxは通常印刷モードのセット内搬送量ΔTLと等しくても良い。
【0108】
(3)
図4の印刷処理および
図6の印刷データ出力処理は、一例であり、これに限られない。例えば、
図4、
図6の処理では、画像データの全体を印刷データに変換し(
図4のS130)、その後に
図6の印刷データ出力処理が実行される。これに代えて、例えば、印刷データの変換は、例えば、
図6のS200にてラスタデータを取得する度に、該ラスタデータごとに実行されても良い。また、印刷データ出力処理では、ラスタデータが順次に使用ノズルに割り当てられ、1回の部分印刷分の割り当てが完了する度に、割り当てられたラスタデータ群が1回の部分印刷のための部分印刷データとして出力される。これに代えて、印刷データを分割して全ての部分印刷データを生成し、全てのシート搬送の搬送量を決定した後に、部分印刷データの出力と搬送量データの出力とが行われても良い。
【0109】
(4)印刷媒体として、用紙Mに代えて、他の媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
【0110】
(5)上記各実施例では、
図4の印刷処理を実行する制御装置は、CPU210である。これに代えて、制御装置は、他の種類の装置、例えば、ユーザの端末装置300であっても良い。この場合には、例えば、端末装置300は、ドライバプログラムを実行することによってプリンタドライバとして動作し、該プリンタドライバとしての機能の一部として
図4の印刷処理を実行する。この場合には、端末装置は、部分印刷データと搬送量データとを、印刷実行部としてのプリンタ200に供給することによって、プリンタ200に印刷を実行させる。
【0111】
(6)
図4の印刷処理を実行する制御装置は、例えば、プリンタ200や端末装置300から画像データを取得して、該画像データを用いて上述した部分印刷データや搬送量データを生成し、これらのデータをプリンタ200に送信するサーバであっても良い。このようなサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機であっても良い。
【0112】
(7)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図4の印刷処理のうち、一部の処理は、CPU210の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0113】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0114】
100…印刷機構,110…印刷ヘッド,111…ノズル形成面,120…ヘッド駆動部,130…主走査部,133…キャリッジ,134…摺動軸,140…搬送部,141…下流ローラ対,142…上流ローラ対,145…用紙台,146…部材,200…プリンタ,210…CPU,220…不揮発性記憶装置,230…揮発性記憶装置,231…バッファ領域,260…操作部,270…表示部,280…通信部,300…端末装置,BB…平板,D…ノズル長,HP…高支持部材,HP…高支持部材,LP…低支持部材,M…用紙,PG…コンピュータプログラム,PI,PIb…印刷画像