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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184028
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】切断装置及び切断プログラム
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20221206BHJP
   B26D 1/18 20060101ALI20221206BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D1/18
G05B19/404 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091637
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 武志
【テーマコード(参考)】
3C024
3C027
3C269
【Fターム(参考)】
3C024AA03
3C027RR08
3C269AB27
3C269BB03
3C269CC02
3C269EF10
3C269QC01
3C269QC02
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】属性に応じた補正量で切断線を補正することにより、切断精度を向上させることが可能な切断装置、及び切断プログラムを提供する。
【解決手段】切断装置は、被切断物を載置可能な載置部材と、切断部を装着可能な装着部と、載置部材と装着部とを相対移動させる移動機構と、載置部材に載置された被切断物を切断線に沿って切断する為の切断データを記憶した記憶部と、記憶部に記憶された切断データに基づいて移動機構を制御可能な制御部と、を備える。切断装置は、切断線の属性を取得する(S11)。切断装置は、取得された属性に基づき、切断線を補正する補正量を決定する(S17、S19)。切断装置は、決定した補正量で補正された切断線に沿って被切断物を切断する為の補正切断データを、憶部に記憶した切断データに基づいて生成する(S23)。切断装置は、生成された補正切断データに基づいて移動機構を制御し、被切断物を切断する(S25)。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断部を装着可能な装着部と、
被切断物を載置可能な載置部材と前記装着部とを相対移動させる移動機構と、
前記載置部材に載置された前記被切断物を切断線に沿って切断する為の切断データを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記切断データに基づいて前記移動機構を制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記切断線の属性を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記属性に基づき、前記切断線を補正する補正量を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定した前記補正量で補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の補正切断データを、前記記憶部に記憶した前記切断データに基づいて生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記補正切断データに基づいて前記移動機構を制御し、前記被切断物を切断する切断手段と
して機能することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記属性は、前記切断線が直線であることを示す第1属性と、前記切断線が曲線であることを示す第2属性とを含み、
前記決定手段は、
前記取得手段により前記第1属性が取得された場合に決定する前記補正量を、前記取得手段により前記第2属性が取得された場合に決定する前記補正量以上とする
ことを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記記憶部は、
連続する2つの前記切断線である第1切断線及び第2切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、
前記決定手段は、
前記第1切断線を補正する前記補正量を決定し、
前記第1切断線と前記第2切断線とのなす角度が所定の角度閾値未満の場合に決定する前記補正量を、前記角度が前記角度閾値以上の場合に決定する前記補正量よりも大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記属性は、前記切断線が直線であることを示す第1属性と、前記切断線が曲線であることを示す第2属性とを含み、
前記決定手段は、
前記取得手段により前記第2属性が取得された場合において、
前記切断線に設定された曲率が所定の第1曲率閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記曲率が前記第1曲率閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以下とする
ことを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項5】
前記記憶部は、
連続する2つの前記切断線である第1切断線及び第2切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、
前記決定手段は、
前記第1切断線を補正する前記補正量を決定し、
前記第1切断線に設定された前記曲率が前記第1曲率閾値以上の場合において、
前記第1切断線及び前記第2切断線のそれぞれの前記曲率が所定の第2曲率閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線及び前記第2切断線の少なくとも一方の前記曲率が前記第2曲率閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以下とする
ことを特徴とする請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記決定手段は、
前記第1切断線及び前記第2切断線のそれぞれの前記曲率が前記第2曲率閾値以上の場合において、
前記第1切断線の長さが所定の長さ閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線の長さが前記長さ閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以上とし、
前記第1切断線及び前記第2切断線の少なくとも一方の前記曲率が前記第2曲率閾値よりも小さい場合において、
前記第1切断線の長さが前記長さ閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線の長さが前記長さ閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以上とする
ことを特徴とする請求項5に記載の切断装置。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記切断線の一方側の端点である始点から、他方側の端点である終点まで前記切断部を相対移動させることにより前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、
前記補正量は、
前記終点に対して前記始点側と反対側に離隔した補正点と前記終点との間の長さである余剰切断長を示し、
前記生成手段は、
前記決定手段により決定した前記余剰切断長に基づき、前記切断線を補正し、補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記補正切断データを生成する
ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の切断装置。
【請求項8】
前記切断部は、
円形の切断刃と、
第1回転軸を中心として前記切断刃を回転可能に支持し、且つ、前記装着部に対して第2回転軸を中心として回転可能な支持部と
を有し、
前記第1回転軸と前記第2回転軸とは交差せず、
前記制御部は、
前記切断部により前記被切断物を切断する設定を受け付けた場合、前記取得手段、前記決定手段、前記生成手段、及び前記切断手段として機能する
ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の切断装置。
【請求項9】
切断部を装着可能な装着部と、被切断物を載置可能な載置部材と前記装着部とを相対移動させる移動機構と、前記載置部材に載置された前記被切断物を切断線に沿って切断する為の切断データを記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された前記切断データに基づいて前記移動機構を制御可能な制御部とを備えた切断装置のコンピュータに、
前記切断線の属性を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記属性に基づき、前記切断線を補正する補正量を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定した前記補正量で補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の補正切断データを、前記記憶部に記憶した前記切断データに基づいて生成する生成ステップと、
を実行させるための切断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断可能な切断装置、及び切断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の被切断物と切断刃とを相対的に移動させて被切断物を切断する切断装置が知られている。又、切断装置において、切断精度を向上させる為の技術の一例としてオーバーランカットが知られている。オーバーランカットは、切断線の終点を超える位置まで切断刃を移動させて余分に切断する切断方法である。例えば特許文献1は、連続して切断される2つの切断線の交差角等に応じてオーバーランカットを実施するか否かを決定するカッティングシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-148694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切断精度の更なる向上の為、オーバーランカットの切断量は、切断線の属性に応じて補正されることが好ましい。しかし、引用文献1に記載のシステムでは、オーバーランカットの切断量は一律で規定されるので、切断線の属性に応じて切断量を補正できないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、属性に応じた補正量で切断線を補正することにより、切断精度を向上させることが可能な切断装置、及び切断プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る切断装置は、切断部を装着可能な装着部と、被切断物を載置可能な載置部材と前記装着部とを相対移動させる移動機構と、前記載置部材に載置された前記被切断物を切断線に沿って切断する為の切断データを記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された前記切断データに基づいて前記移動機構を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記切断線の属性を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記属性に基づき、前記切断線を補正する補正量を決定する決定手段と、前記決定手段により決定した前記補正量で補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の補正切断データを、前記記憶部に記憶した前記切断データに基づいて生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記補正切断データに基づいて前記移動機構を制御し、前記被切断物を切断する切断手段として機能することを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る切断装置は、切断線の属性に応じた補正量を決定して切断線を補正し、被切断物を切断する。このため切断装置は、切断時の精度を向上させることが可能となる。
【0008】
第1態様において、前記属性は、前記切断線が直線であることを示す第1属性と、前記切断線が曲線であることを示す第2属性とを含み、前記決定手段は、前記取得手段により前記第1属性が取得された場合に決定する前記補正量を、前記取得手段により前記第2属性が取得された場合に決定する前記補正量以上としてもよい。この場合、切断装置は、切断線が直線であることを示すか、又は曲線であることを示すかに応じて補正量を変更できる。又、切断線が直線であることを示す場合の補正量を、切断線が曲線であることを示す場合の補正量以上とすることにより、切断装置は、切断時の精度を更に向上させることができる。
【0009】
第1態様において、前記記憶部は、連続する2つの前記切断線である第1切断線及び第2切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、前記決定手段は、前記第1切断線を補正する前記補正量を決定し、前記第1切断線と前記第2切断線とのなす角度が所定の角度閾値未満の場合に決定する前記補正量を、前記角度が前記角度閾値以上の場合に決定する前記補正量よりも大きくしてもよい。第1切断線と第2切断線との間のなす角度が大きい程、切断が不十分となる切り残しが発生しやすくなる。これに対し、切断装置は、第1切断線と第2切断線との間のなす角度が大きい程、補正量を大きくすることにより、切り残しの発生を抑制できる。
【0010】
第1態様において、前記属性は、前記切断線が直線であることを示す第1属性と、前記切断線が曲線であることを示す第2属性とを含み、前記決定手段は、前記取得手段により前記第2属性が取得された場合において、前記切断線に設定された曲率が所定の第1曲率閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記曲率が前記第1曲率閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以下としてもよい。切断線に設定された曲率が大きい程、補正前後での切断線のずれが大きくなる。これに対し、切断装置は、切断線に設定された曲率が大きい程、補正量を小さくすることによって、補正前後での切断線のずれを抑制できる。
【0011】
第1態様において、前記記憶部は、連続する2つの前記切断線である第1切断線及び第2切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、前記決定手段は、前記第1切断線を補正する前記補正量を決定し、前記第1切断線に設定された前記曲率が前記第1曲率閾値以上の場合において、前記第1切断線及び前記第2切断線のそれぞれの前記曲率が所定の第2曲率閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線及び前記第2切断線の少なくとも一方の前記曲率が前記第2曲率閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以下としてもよい。この場合、切断装置は、補正前後での切断線のずれを更に抑制できる。
【0012】
第1態様において、前記決定手段は、前記第1切断線及び前記第2切断線のそれぞれの前記曲率が前記第2曲率閾値以上の場合において、前記第1切断線の長さが所定の長さ閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線の長さが前記長さ閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以上とし、前記第1切断線及び前記第2切断線の少なくとも一方の前記曲率が前記第2曲率閾値よりも小さい場合において、前記第1切断線の長さが前記長さ閾値以上の場合に決定する前記補正量を、前記第1切断線の長さが前記長さ閾値よりも小さい場合に決定する前記補正量以上としてもよい。この場合、切断装置は、第1切断線の長さが長い程、補正量を大きくすることによって、切断の精度を向上させることができる。
【0013】
第1態様において、前記記憶部は、前記切断線の一方側の端点である始点から、他方側の端点である終点まで前記切断部を相対移動させることにより前記被切断物を切断する為の前記切断データを記憶し、前記補正量は、前記終点に対して前記始点側と反対側に離隔した補正点と前記終点との間の長さである余剰切断長を示し、前記生成手段は、前記決定手段により決定した前記余剰切断長に基づき、前記切断線を補正し、補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の前記補正切断データを生成してもよい。この場合、切断装置は、被切断物が切断された時の切断線が、始点と終点とを結ぶ線分より短くなる可能性を軽減できる。
【0014】
第1態様において、前記切断部は、円形の切断刃と、第1回転軸を中心として前記切断刃を回転可能に支持し、且つ、前記装着部に対して第2回転軸を中心として回転可能な支持部とを有し、前記第1回転軸と前記第2回転軸とは交差せず、前記制御部は、前記切断部により前記被切断物を切断する設定を受け付けた場合、前記取得手段、前記決定手段、前記生成手段、及び前記切断手段として機能してもよい。切断部では、第1回転軸と第2回転軸が交差しない為、実際に被切断物が切断された時の切断線が、始点と終点とを結ぶ線分より短くなる可能性が高くなる。これに対し、切断装置は、このような切断部が用いられる場合に切断データを補正して補正切断データを生成するので、切断時の精度を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の第2態様に係る切断プログラムは、切断部を装着可能な装着部と、被切断物を載置可能な載置部材と前記装着部とを相対移動させる移動機構と、前記載置部材に載置された前記被切断物を切断線に沿って切断する為の切断データを記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された前記切断データに基づいて前記移動機構を制御可能な制御部とを備えた切断装置のコンピュータに、前記切断線の属性を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された前記属性に基づき、前記切断線を補正する補正量を決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定した前記補正量で補正された前記切断線に沿って前記被切断物を切断する為の補正切断データを、前記記憶部に記憶した前記切断データに基づいて生成する生成ステップと、を実行させることを特徴とする。第2態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】切断装置1の斜視図である。
図2】ホルダ6が装着部3Bに装着された状態のキャリッジ3の斜視図である。
図3】キャリッジ3、装着部3B、及びホルダ6の正面図である。
図4】切断装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図5】切断線L11~L13、及び切断データD1を示す図である。
図6】切断線L31~L33、及び切断データD3を示す図である。
図7】テーブルTを示す図である。
図8】メイン処理のフローチャートである。
図9】メイン処理のフローチャートであって、図8の続きである。
図10】補正切断線La11、La12、及び補正切断データDa1を示す図である。
図11】切断線L21~L23、及び切断データD2を示す図である。
図12】補正切断線La21~La23、及び補正切断データDa2を示す図である。
図13】補正切断線La31~La33、及び補正切断データDa3を示す図である。
図14】切断線L41~S43、及び切断データD4を示す図である。
図15】補正切断線La41~La43、及び補正切断データDa4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る切断装置1を具体化した実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図1の左下方、右上方、右下方、左上方、上方、及び下方を、各々、切断装置1及びホルダ6の前方、後方、右方、左方、上方、及び下方とする。
【0018】
<切断装置1の概要>
図1図3を参照し、切断装置1の概要を説明する。切断装置1は、保持部90に保持された被切断物9を、ホルダ6に保持された切断刃72を用いて切断することが可能である。保持部90は、例えば合成樹脂材料からなるマットである。被切断物9は、保持部90に載置された状態で、保持部90の上面の粘着層に貼り付けられて保持される。切断装置1は、本体カバー2A、プラテン2B、キャリッジ3、搬送機構2C、及び移動機構2D等を備える。
【0019】
本体カバー2Aには、開口部21、カバー22、及び操作部23が設けられる。開口部21は、本体カバー2Aの正面部に設けられた開口である。カバー22は、本体カバー2Aに回動可能に支持される。図1では、カバー22が開けられ、開口部21が開放されている。以下では、カバー22が開けられた状態を前提として各種構成を説明する。操作部23は、本体カバー2Aの上面右部に設けられ、液晶ディスプレイ(LCD)231、複数の操作スイッチ232、及びタッチパネル233を備える。LCD231には、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等の様々な項目を含む画像が表示される。タッチパネル233は、LCD231の表面に設けられる。ユーザは、指及びスタイラスペンの何れかを用いてタッチパネル233の押圧操作を行う。切断装置1では、タッチパネル233により検知される押圧位置に対応して、どの項目が選択されたかが認識される。ユーザは、操作スイッチ232及びタッチパネル233を用いて、LCD231に表示された模様の選択、各種パラメータの設定、及び入力の操作等を実行できる。
【0020】
プラテン2Bは、本体カバー2A内に設けられる。プラテン2Bは左右方向に延びる板状部材である。プラテン2Bの左右方向の長さは、保持部90及び被切断物9の幅よりも大きい。搬送機構2Cにより後方に搬送された保持部90は、プラテン2Bの内、左右方向両端部を除く部分の上面に載置される。即ち、保持部90に保持された被切断物9は、保持部90を介してプラテン2Bに載置される。
【0021】
搬送機構2C及び移動機構2Dは、プラテン2Bに載置された被切断物9と装着部3Bとを前後方向及び左右方向へ相対移動させるよう構成されている。搬送機構2Cは、従動ローラ24、駆動ローラ(図示略)、及びY軸モータ57(図4参照)を備える。従動ローラ24は、本体カバー2A内、且つ、プラテン2Bよりも前方に回転可能に支持される。駆動ローラは、従動ローラ24に対して下方に対向し、Y軸モータ57の駆動に応じて回転する。搬送機構2Cは、被切断物9を保持する矩形状の保持部90の左右両端部を、従動ローラ24と駆動ローラとの間に挟持する。搬送機構2Cは、この状態で駆動ローラが回転することにより、保持部90を前後方向(「Y方向」とも言う。)に搬送可能である。つまり搬送機構2Cは、保持部90に保持された被切断物9を前後方向に搬送可能である。
【0022】
移動機構2Dは、キャリッジ3を左右方向(「X方向」とも言う。)に移動可能である。移動機構2Dは、ガイドレール26、及びX軸モータ58(図4参照)等を備える。ガイドレール26は、本体カバー2A内に固定され、左右方向に延びる。キャリッジ3は、ガイドレール26に沿ってX方向へ移動可能に、ガイドレール26に支持される。X軸モータ58の回転運動は、X方向の運動に変換され、キャリッジ3に伝達される。X軸モータ58が正転駆動又は逆転駆動すると、キャリッジ3は左方向又は右方向へ移動される。
【0023】
図2及び図3に示すように、キャリッジ3は、支持体3A、装着部3B、接離機構3C、及び圧力変更機構14等を備える。キャリッジ3の内、ホルダ6が装着される部位を除く部分は、図1に示すカバー30により覆われる。図2及び図3においてカバー30は省略されている。支持体3Aは、装着部3B、接離機構3C、及び圧力変更機構14等を支持する。支持体3Aは、それぞれが板状の基部31~33を有する。基部31は前後方向と直交する。基部31は、背面にてガイドレール26(図1参照)に連結する。基部31はガイドレール26により、左右方向に移動可能に支持される。基部31に対して前方に離隔した位置に、支持軸31A、31Cが設けられる。支持軸31A、31Cはそれぞれ円柱状を有し、上下方向に延びる。図3に示すように、支持軸31Aは、基部31の左端部近傍に設けられる。支持軸31Aには後述の圧力変更機構14のバネ3Dが巻回され、且つ、後述のラックギヤ43を上下方向に移動可能に支持する。支持軸31Cは、基部31の右端部近傍に設けられる。支持軸31Cには後述の圧力変更機構14のバネ3Eが巻回される。図2及び図3に示すように、基部32は上下方向と直交し、基部31の下端部から前方に延びる。基部32には、上下方向に貫通する貫通孔32Aが形成される。基部33は左右方向と直交し、基部31の内、支持軸31Aよりも左方から前方に延びる。基部33には、後述する接離機構3Cの一部が支持される。
【0024】
装着部3Bは、支持体3Aの内、基部31よりも前方、基部32よりも上方、支持軸31Cよりも左方、及び支持軸31Aよりも右方に配置される。装着部3Bは、保持体36及びレバー37を有する。保持体36は、装着された状態のホルダ6を保持する。レバー37は、保持体36に保持された状態のホルダ6を固定し、脱離不能とする。
【0025】
図2に示すように、保持体36は、側板部36S、36R、36L、上板部36U、及び下板部36Bを有する。側板部36Sは、支持体3Aの基部31の前側に配置され、前後方向と直交する。側板部36Sは、基部31に対して上下方向に移動可能に連結される。これにより装着部3Bは、支持体3Aに対して上下方向に移動可能に支持される。側板部36Rは、側板部36Sの右端部から前方に向けて延びる。側板部36Lは、側板部36Sの左端部から前方に向けて延びる。側板部36R、36Lは、それぞれ、左右方向と直交する。上板部36Uは、側板部36S、36R、36Lの各々の上端部に設けられる。下板部36Bは、側板部36S、36R、36Lの各々の下端部に設けられる。上板部36U及び下板部36Bは、それぞれ、上下方向と直交する。保持体36の前端部は開放される。
【0026】
上板部36Uには、上下方向に貫通する円形の貫通孔が形成される。下板部36Bには、上下方向に貫通する円形の貫通孔が形成される。保持体36にホルダ6が保持された状態で、ホルダ6は上板部36Uの貫通孔と、下板部36Bの貫通孔とに挿通される。この状態で、ホルダ6の上端部は上板部36Uよりも上方に突出し、ホルダ6の下端部は下板部36Bよりも下方に突出する。
【0027】
図3に示すように、側板部36Lの下端部に可動板部361が設けられ、上端部に可動板部365が設けられる。可動板部361、365は側板部36Lの左面から左方に延び、上下方向と直交する。可動板部361、365には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、支持体3Aの支持軸31Aが挿通される。側板部36Rに可動板部362が設けられる。可動板部362は、側板部36Rの右面から右方に延び、上下方向と直交する。可動板部362には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、支持体3Aの支持軸31Cが挿通される。
【0028】
図2に示すように、レバー37は、保持体36の側板部36R、36Lに揺動可能に支持される。レバー37は、左右方向に長い板状の摘み部37Aを有する。摘み部37Aが下方に移動する方向にレバー37が揺動した状態で、保持体36に保持されたホルダ6は固定され、保持体36から脱離不能となる。一方、摘み部37Aが上方に移動する方向にレバー37が揺動した状態で、保持体36に対してホルダ6が固定された状態は解除される。このため、この状態でホルダ6は保持体36から脱離可能となる。
【0029】
接離機構3Cは、制御部2により制御され、装着部3Bをプラテン2Bに接近させる接近方向(下方)及び装着部3Bをプラテン2Bから離隔させる離隔方向(上方)に装着部3Bを移動させる。装着部3Bが下方に移動することにより、プラテン2Bに載置された被切断物9に対して装着部3Bは近接する。一方、装着部3Bが上方に移動することにより、プラテン2Bに載置された被切断物9から装着部3Bは離隔する。
【0030】
図2及び図3に示すように、接離機構3Cは、Z軸モータ41、ギヤユニット42、及びラックギヤ43等を有する。Z軸モータ41は、支持体3Aの基部33の左側に配置され、基部33により支持体3Aに固定される。Z軸モータ41の回転軸は右方に延び、基部33に形成された貫通孔33Aを右方に貫通する。Z軸モータ41の回転軸にギヤ41Aが設けられる。ギヤ41Aは、基部33よりも右方に配置される。
【0031】
ギヤユニット42は、内歯車42A及びピニオンギヤ42Bを有する。内歯車42Aは円板状を有し、左右方向と直交する。内歯車42Aの左面に、右方に凹む円形の凹部が形成される。凹部の内側面に歯が形成される。内歯車42Aの右面に、ピニオンギヤ42Bが設けられる。ピニオンギヤ42Bの直径は、内歯車42Aの直径よりも小さい。内歯車42A及びピニオンギヤ42Bのそれぞれの回転中心の位置は一致し、左右方向に延びる。以下、内歯車42A及びピニオンギヤ42Bのそれぞれの回転中心を、「ギヤユニット42の回転中心」という。内歯車42A及びピニオンギヤ42Bは、一体で回転する。
【0032】
ギヤユニット42は、支持体3Aの基部33よりも右方に設けられ、基部33に回転可能に支持される。ギヤユニット42の回転中心は、Z軸モータ41の回転軸よりも下方に位置する。Z軸モータ41の回転軸に設けられたギヤ41Aは、内歯車42Aの左面に設けられた凹部に左方から進入し、内歯車42Aの内側面に設けられた歯に噛み合う。Z軸モータ41が駆動してギヤ41Aが回転することに応じ、Z軸モータ41の駆動力は、ギヤ41A及び内歯車42Aを介してギヤユニット42に伝達される。これにより、ギヤユニット42のピニオンギヤ42Bも回転する。
【0033】
ラックギヤ43は、ピニオンギヤ42Bの後方に設けられる。ラックギヤ43は、上下方向に延びる角柱状の基台の前面に、歯43Bを有する。ラックギヤ43は更に、上下方向に貫通する貫通孔を基台に有する。支持体3Aに固定された支持軸31Aは、この貫通孔に挿通する。ラックギヤ43は、支持軸31Aに沿って上下方向(「Z方向」とも言う。)に移動可能である。ラックギヤ43の歯43Bは、ピニオンギヤ42Bに噛み合う。ラックギヤ43は、ピニオンギヤ42Bの回転に応じて上下方向に移動する。
【0034】
圧力変更機構14は、装着部3Bに加える接近方向の圧力を変更可能である。圧力変更機構14は、バネ3D、3Eを備える。バネ3Dは、ラックギヤ43の下方に位置する。バネ3Dは圧縮コイルバネであり、支持軸31Aの下端部近傍に巻回される。バネ3Dの上端部は、ラックギヤ43の下端部に連結する。バネ3Dの下端部は、装着部3Bの可動板部361に連結する。バネ3Dは、ラックギヤ43と装着部3Bの可動板部361との間に介在し、ラックギヤ43を上方に付勢する。これにより、ラックギヤ43の上端部は、装着部3Bの可動板部365に下方から接触し、可動板部365を上方に向けて押す。バネ3Dは、接離機構3CのZ軸モータ41が駆動した場合、ラックギヤ43の上下方向への移動に連動して装着部3Bを上下方向に移動させる。バネ3Dは、ラックギヤ43が下方に移動することに応じて圧縮された場合、装着部3Bに対して下向きの圧力を付加する。
【0035】
バネ3Eは圧縮コイルバネであり、支持軸31Cに巻回される。バネ3Eの上端部は、支持軸31Cの上端部に固定された固定ワッシャ310に下方から接触する。バネ3Eの下端部は、装着部3Bの可動板部362に連結する。バネ3Eは、固定ワッシャ310と装着部3Bの可動板部362との間に介在し、装着部3Bに下方の圧力を付与する。バネ3Eは、接離機構3CのZ軸モータ41の駆動状態に関わらず、常に装着部3Bに対して下向きの圧力を付加する。
【0036】
<ホルダ6の概要>
図3を参照し、ホルダ6について説明する。ホルダ6は、装着部3Bに装着された状態で使用され、切断刃72により被切断物9を切断する。ホルダ6は、筐体6A、軸体6C、及び切断体6Dを有する。
【0037】
筐体6Aは樹脂製であり、後述の軸体6C及び切断体6Dを収容する。筐体6Aは、本体部61、蓋部62、及びスクリューキャップ63を有する。本体部61は、各々が上下方向に延びる角筒部61A及び円筒部61Bを有する。蓋部62は、角筒部61Aの上端部の開口を閉塞する。円筒部61Bは、角筒部61Aよりも下方に設けられる。円筒部61Bの下端部に、スクリューキャップ63が嵌る。以下、円筒部61Bの中心に沿って上下方向に延びる直線を、「第2回転軸U2」という。スクリューキャップ63は円筒状を有し、上下方向の両端部に開口が設けられる。ホルダ6が装着部3Bに装着された状態で、筐体6Aは装着部3Bにより保持される。
【0038】
軸体6Cは円柱状を有し、第2回転軸U2に沿って上下方向に延びる。軸体6Cは、筐体6Aにより回転可能に支持される。軸体6Cは、第2回転軸U2を中心として回転可能である。軸体6Cの下端部は、スクリューキャップ63の下端部よりも下方に突出する。軸体6Cの下端部に、切断体6Dが連結される。
【0039】
切断体6Dは、筐体6Aの下端部に設けられる。切断体6Dは、支持部71、切断刃72、支軸73等を有する。支持部71は、軸体6Cの下端部に連結する。支持部71は、ホルダ6が装着部3Bに装着された状態で軸体6Cが回転することに応じ、装着部3Bに対して第2回転軸U2を中心として回転可能となる。支持部71は、円柱状の支軸73を保持する。支軸73はXY方向(水平方向)に延びる。支軸73に沿ってXY方向に延びる直線を、「第1回転軸U1」という。第1回転軸U1と第2回転軸U2とは、XY方向において離隔する。このため、第1回転軸U1は、支持部71が第2回転軸M2を中心として回転するときも、常に第2回転軸U2と交差しない。第1回転軸U1と第2回転軸U2との間のXY方向の距離を、「距離W」という。切断刃72は円形板状を有し、周端部にて被切断物9を切断可能である。切断刃72の中心には貫通孔が形成される。切断刃72の貫通孔に支軸73が挿通される。切断刃72は、支軸73を介して支持部71に回転可能に支持される。切断刃72の回転中心は、第1回転軸U1と一致する。
【0040】
被切断物9の切断時、装着部3Bに保持されたホルダ6は、被切断物9を保持した保持部90に対してXY方向に相対移動する。このとき、切断体6Dは、ホルダ6が相対移動する方向に応じ、第2回転軸U2を中心として回転する。より具体的には、例えばホルダ6が矢印Y11で示す方向に相対移動する場合、切断体6Dは、第2回転軸U2に対して矢印Y11の向く側と反対側に第1回転軸U1が配置されるように回転する。第1回転軸U1は矢印Y11と直交する。この状態で、切断刃72は、第1回転軸U1を中心として回転しながら、被切断物9を切断する。切断刃72の下端部のうち、第1回転軸U1の真下の部分を、「切断部72の切断位置Pc」という。切断部72は、切断位置Pcにおいて被切断物9を切断する。このとき、切断刃72により切断される被切断物9の切断部分は、XY方向において、切断位置Pcから、第2回転軸U2の相対移動方向(例えば矢印Y11の方向)とは反対方向(第2回転軸U2の後方)に向けて延びる。つまり、余剰切断長を考慮することなく第2回転軸U2を基準として切断刃72を制御する場合、距離W程度の誤差が生まれる。
【0041】
以下、上記のホルダ6のように、切断刃72の回転軸である第1回転軸U1と、切断体6Dの回転軸である第2回転軸U2とが交差しないタイプのホルダを、「偏芯型のホルダ」という。これに対し、切断刃72の回転軸である第1回転軸U1と、切断体6Dの回転軸である第2回転軸U2とが交差するタイプのホルダを、「同芯型のホルダ」という。
【0042】
<電気的構成>
図4を参照して、切断装置1の電気的構成を説明する。切断装置1は、CPU51、ROM52、RAM53、及び入出力(I/O)インタフェイス55を備える。CPU51は、ROM52、RAM53、及びI/Oインタフェイス55と電気的に接続されている。CPU51は、ROM52及びRAM53と共に、制御部2を構成し、切断装置1の主制御を司る。ROM52は、切断装置1を動作させるための各種プログラム等を記憶する。プログラムには、例えば、後述するメイン処理(図8参照)を切断装置1に実行させるためのプログラムがある。RAM53は、各種データ、操作スイッチ232の操作等で入力された設定値、CPU51が演算処理した演算結果等を一時的に記憶する。I/Oインタフェイス55には、更に、記憶部54、操作スイッチ232、タッチパネル233、LCD231、及び駆動回路57A、58A、59Aが接続されている。記憶部54は、各種パラメータ、後述の切断データ等を記憶する不揮発性記憶素子である。
【0043】
制御部2は、LCD231を制御して、画像を表示させる。LCD231は、各種指示を報知できる。駆動回路57A、58A、59Aは各々、Y軸モータ57、X軸モータ58、及びZ軸モータ41を駆動する。制御部2は、切断データに基づき、Y軸モータ57、X軸モータ58、及びZ軸モータ41等を制御する。これにより、制御部2は、保持部90に対して切断刃72を相対移動させ、保持部90に載置された被切断物9を切断線に沿って切断する。
【0044】
<切断データ>
図5図6を参照し、切断データDについて説明する。切断データDは、制御部2が搬送機構2C及び移動機構2Dを制御することによって被切断物9を切断刃72により切断する為のデータである。切断データDは、ユーザにより指定される任意の模様(「切断模様M」という。)を切断するためのデータとして、切断模様M毎に記憶部54に記憶される。切断データDは、座標データ及び切断線データを含む。図5は、切断模様M1を切断する為の切断データD1を示す。図6は、切断模様M3を切断する為の切断データD3を示す。
【0045】
座標データは、切断模様Mを分割した複数の部分に対応する複数の線分(以下、各々を「切断線L」と総称する。)の各々の端部の点の相対位置を、切断可能領域内に設定される切断座標系により示す。例えば図5に示す切断データD1には、点P11、P12、P13・・・の各々を示す座標データが含まれる。点P11は、切断線L11の両端部のうち一方の点の相対位置を示す。点P12は、切断線L11の両端部のうち他方の点、及び、切断線L12の両端部のうち一方の点のそれぞれの相対位置を示す。点P13は、切断線L12の両端部のうち他方の点、及び、切断線L13の両端部のうち一方の点の各々の相対位置を示す。各座標データには、切断順を示すインデックスが対応付けられる。
【0046】
制御部2は、座標データにて示される各点の位置と、ホルダ6の第2回転軸U2(図3参照)の位置とが、XY方向において一致するように、搬送機構2C及び移動機構2Dを制御して装着部3Bを相対移動させる。制御部2は、座標データにより示される複数の点の各々を切断順に特定し、特定した位置とホルダ6の第2回転軸U2とが一致するように装着部3Bを相対移動させる制御を繰り返す。
【0047】
ホルダ6の切断刃72は、座標データにより示される点(始点)から次の点(終点)までの間を相対移動し、始点と終点との間を直線で結んだ切断線Lに沿って被切断物9を切断する。この動作が繰り返されることにより、切断模様Mが切断される。
【0048】
切断線データは、切断線Lと、切断線Lに対応付けられる属性とを含む。属性の種別として、切断線Lが直線であることを示す第1属性と、切断線Lが曲線であることを示す第2属性とがある。切断線Lには、切断順を示すインデックスが対応付けられる。
【0049】
例えば、図5に示すように、切断模様M1を切断する為の切断データD1において、点P11、P12間を結ぶ切断線L11、及び点P12、P13間を結ぶL12の属性は、何れも第1属性である。この場合、切断模様M1のうち、切断線L11、L12に対応する部分が何れも直線であることを示す。一方、図6に示すように、切断模様M3を切断する為の切断データD3において、点P31、P32間を結ぶ切断線L31、点P32、P33間を結ぶ切断線L32、点P33、P34間を結ぶ切断線L33の属性は、何れも第2属性である。この場合、切断模様M3のうち切断線L31、L32、L33に対応する部分が何れも曲線であることを示す。
【0050】
又、切断線データは、属性が第2属性である切断線Lに設定される曲率及び長さを含む。曲率は、切断模様Mのうち切断線Lに対応する部分の曲率を示す。長さは、切断線Lの長さを示す。例えば図6に示す切断データD3において、切断模様M3のうち切断線L31、L32、L33に対応する部分の各々の曲率は、r31、r32、r33である。切断線L31、L32、L33の各々の長さは、s31、s32、s33である。
【0051】
<切断データの補正>
図3に示すように、ホルダ6の第1回転軸U1と第2回転軸U2とは交差せず、XY方向に距離Wだけ離隔する。このため、例えば制御部2が、座標データに基づき、点P11から点P12まで第2回転軸U2が移動するように装着部3Bを相対移動させた場合、切断刃72による切断位置Pcは、点P12に対して点P11側に距離Wだけ離隔した位置まで相対移動して停止する。つまり、切断刃72による切断位置Pcは、点P12まで到達しない。従って、被切断物9は切断線L11に沿って適切に切断されず、切断が不十分で切り残しが発生した状態となる可能性がある。
【0052】
このため制御部2は、切り残しの発生を抑制する為、終点の位置を変更して切断線Lを補正する。より詳細には、制御部2は、切断線Lの終点から、終点に対して始点側と反対側に離隔した補正終点を決定する。制御部2は更に、決定した補正終点に基づき、切断線Lを補正した補正切断線Laを決定する。制御部2は、決定された補正切断線Laに基づいて装着部3Bを移動させることにより、ホルダ6の切断刃72を、補正前の切断線Lの終点まで到達させることができる。これにより制御部2は、切り残しの発生を抑制できるので、被切断物9は切断線Lに沿って適切に切断される。
【0053】
更に、制御部2は、後述のメイン処理を実行して被切断物9を切断する場合、終点と補正終点との間の長さ(以下、「余剰切断長」という。)を、切断線Lの属性、曲率、長さ、次の切断線Lとの間の角度等に基づいて決定する。決定される余剰切断長の候補は、記憶部54に予め記憶される。
【0054】
図7は、記憶部54に記憶される余剰切断長B(1)、B(2)、C(1)~C(6)を示すテーブルTである。余剰切断長B(1)、B(2)、C(1)~C(6)は、以下の(a)~(d)で示す大小関係を有するように設定される。
B(1)>B(2)・・・(a)
C(1)>C(2)≧C(3)≧C(4)≧C(5)≧C(6)・・・(b)
B(1)≧C(1)・・・(c)
C(1)≧B(2)≧C(2)・・・(d)
【0055】
<メイン処理>
図8図9を参照し、メイン処理について説明する。メイン処理は、切断模様Mを指定して被切断物9の切断を開始する開始操作が、タッチパネル233を介して検出された場合、ROM52に記憶されたプログラムを制御部2が読み出して実行することにより開始される。
【0056】
制御部2は、装着部3Bに装着されるホルダのタイプ(同芯型又は偏芯型)を設定する設定操作を、タッチパネル233を介して検出する。制御部2は、検出した設定操作に基づき、ホルダのタイプを受け付ける(S1)。制御部2は、受け付けたホルダのタイプが、同芯型であると判定した場合(S3:NO)、切断データDをそのまま用いて被切断物9を切断する為、処理をS25に進める。一方、制御部2は、取得したホルダのタイプが偏芯型であると判定した場合(S3:YES)、切断データDを補正する為に、処理をS11に進める。
【0057】
制御部2は、開始操作時に指定された切断模様Mに対応する切断データDを、記憶部54から読み出して取得する。制御部2は、取得した切断データDに含まれる切断線データに基づき、切断線Lを切断順に1つ選択する。以下、S11の処理により選択した切断線Lを、「第1切断線」という。更に制御部2は、第1切断線に対応付けられた属性を取得する(S11)。
【0058】
制御部2は、取得した属性の種別が第1属性(直線)であるか判定する(S13)。制御部2は、第1属性であると判定した場合(S13:YES)、第1切断線の次に切断される切断線L(以下、「第2切断線」という。)を、切断データDのうち切断線データに基づき特定する。制御部2は、第1切断線と第2切断線との間のなす角度θを算出する。制御部2は、算出した角度θが所定の第1閾値Th1よりも小さいか判定する(S15)。
【0059】
例えば、図5に示す切断線L12(第1切断線)、L13(第2切断線)のなす角度θ(12)が、第1閾値Th1よりも小さいと判定された場合(S15:YES)、制御部2は、図10に示すように、切断線L12の終点である点P13を補正終点(点Pa13)に補正する為の余剰切断長として、余剰切断長B(1)(図7、t11参照)を決定する(S17)。制御部2は、処理をS21に進める。一方、例えば、図11(切断模様M2を切断する為の切断データD2)に示すように、切断線L22(第1切断線)、L23(第2切断線)のなす角度θ(22)が、第1閾値Th1以上と判定された場合(S15:NO)、制御部2は、図12に示すように、切断線L22の終点である点P23を補正終点(点Pa23)に補正する為の余剰切断長として、余剰切断長B(2)(図7、t12参照)を決定する(S19)。制御部2は、処理をS21に進める。
【0060】
制御部2は、S11の処理によって取得した属性の種別が第2属性(曲線)であると判定した場合(S13:NO)、処理をS31(図9参照)に進める。
【0061】
図9に示すように、制御部2は、切断データDのうち切断線データに基づき、第2切断線を特定し、第1切断線と第2切断線との間のなす角度θを算出する。制御部2は、算出した角度θが所定の第2閾値Th2よりも小さいか判定する(S31)。
【0062】
例えば、図6に示すように、切断線L32(第1切断線)、L33(第3切断線)のなす角度θ(32)が、第2閾値Th2よりも小さいと判定した場合(S31:YES)、制御部2は、図13に示すように、切断線L32の終点である点P33を補正終点(点Pa33)に補正する為の余剰切断長として、余剰切断長C(1)(図7、t21参照)を決定する(S33)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に進める。一方、例えば、図14(切断模様M4を切断する為の切断データD4)に示すように、切断線L42(第1切断線)、L43(第2切断線)のなす角度θ(42)が、第2閾値Th2以上と判定された場合(S31:NO)、処理をS35に進める。この場合、制御部2は、後述のS37、S43、S45、S53、S55の処理によって、図15に示すように、切断線L42の終点である点P43を補正終点(点Pa43)に補正する為の余剰切断長として、余剰切断長C(2)~C(6)の何れかを決定する。詳細は次の通りである。
【0063】
図9に示すように、制御部2は、切断データDの切断線データにおいて、第1切断線に対応付けられた曲率が、所定の第3閾値Th3以上か判定する(S35)。制御部2は、曲率が第3閾値Th3よりも小さいと判定した場合(S35:NO)、余剰切断長C(2)(図7、t22参照)を決定する(S37)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に戻す。
【0064】
制御部2は、第1切断線に対応付けられた曲率が第3閾値Th3以上と判定した場合(S35:YES)、切断データDの切断線データにおいて、第1切断線と第2切断線とのそれぞれに対応付けられた曲率が、何れも所定の第4閾値Th4以上か判定する(S39)。制御部2は、第1切断線及び第2切断線のそれぞれに対応付けられた曲率の少なくとも一方が、第4閾値Th4よりも小さいと判定した場合(S39:NO)、処理をS41に進める。
【0065】
制御部2は、切断データDの切断線データにおいて、第1切断線に対応付けられた長さを特定する。制御部2は、特定した長さが所定の第5閾値Th5以上か判定する(S41)。制御部2は、特定した長さが第5閾値Th5以上と判定した場合(S41:YES)、余剰切断長C(3)(図7、t23参照)を決定する(S43)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に戻す。制御部2は、特定した長さが第5閾値Th5よりも小さいと判定した場合(S41:NO)、余剰切断長C(4)(図7、t24参照)を決定する(S45)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に戻す。
【0066】
制御部2は、第1切断線と第2切断線とのそれぞれに対応付けられた曲率が、何れも第4閾値Th4以上と判定した場合(S39:YES)、処理をS51に進める。
【0067】
制御部2は、切断データDの切断線データにおいて、第1切断線に対応付けられた長さを特定する。制御部2は、特定した長さが所定の第5閾値Th5以上か判定する(S51)。制御部2は、特定した長さが第5閾値Th5以上と判定した場合(S51:YES)、余剰切断長C(5)(図7、t25参照)を決定する(S53)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に戻す。制御部2は、特定した長さが第5閾値Th5よりも小さいと判定した場合(S51:NO)、余剰切断長C(6)(図7、t26参照)を決定する(S55)。制御部2は、処理をS21(図8参照)に戻す。
【0068】
図8に示すように、制御部2は、第2切断線の次の切断順の切断線Lが、切断データDの切断線データに含まれているか判定する(S21)。制御部2は、第2切断線の次の切断順の切断線Lが、切断データDの切断線データに含まれていると判定した場合(S21:YES)、処理をS11に戻す。制御部2は、第1切断線として選択されていない切断線Lを、切断順に1つ選択し(S11)、S13~S21、S31~S55の処理を繰り返す。制御部2は、第2切断線の次の切断順の切断線Lが、切断データDの切断線データに含まれていないと判定した場合(S21:NO)、処理をS23に進める。
【0069】
制御部2は、S17、S19、S33、S37、S43、S45、S53、S55の何れかの処理により決定した余剰切断長に基づいて切断線Lを補正して補正切断線Laを特定する(S23)。制御部2は、補正切断線Laに沿って被切断物9を切断する為の補正切断データを、切断データに基づいて以下のように生成する(S23)。なお、第1切断線と第2切断線との間のなす角度θが第1閾値Th1未満の場合と第1閾値Th1以上の場合とで、切断線Lを補正するときの補正方法が相違する。
【0070】
図5に示すように、切断線L12の属性が第1属性で且つ切断線L12、L13のなす角度θ(12)が第1閾値Th1未満の場合、図10に示すように、切断線L12の終点である点P13から、切断線L12の始点である点P12と反対側に余剰切断長B(1)離隔した点Pa13が、補正終点として特定される。更に、切断順が1つ前の切断線L11の終点である点P12と点Pa13とを結ぶ線分が、切断線L12を補正した補正切断線La12として特定される。制御部2は、特定した補正切断線La12により、切断データD1の切断線データを補正する。又、制御部2は、特定した補正切断線La12の両端部の点を示す座標データにより、切断データD1の座標データを補正する。以上により補正された切断データD1が補正切断データDa1に相当する。
【0071】
なお、詳細説明は省略するが、図6に示すように、切断線L32の属性が第2属性で且つ切断線L32、L33のなす角度θ(32)が第1閾値Th1未満の場合も同様の方法で、余剰切断長C(1)に基づき切断データD3が補正され、補正切断データDa3が生成される(図13参照)。
【0072】
一方、図11に示すように、切断線L22の属性が第1属性で且つ切断線L22、L23のなす角度θ(22)が第1閾値Th1以上の場合、図12に示すように、切断線L22の終点である点P23から、切断線L22の始点である点P22と反対側に余剰切断長B(2)離隔した点Pa23が、補正終点として特定される。更に、切断順が1つ前の切断線L21を補正した補正切断線La21の終点である点Pa22と点Pa23とを結ぶ線分が、切断線L22を補正した補正切断線La22として特定される。制御部2は、特定した補正切断線La22により、切断データD2の切断線データを補正する。又、制御部2は、特定した補正切断線La22の両端部の点を示す座標データにより、切断データD2の座標データを補正する。以上により補正された切断データD2が補正切断データDa2に相当する。
【0073】
なお、詳細説明は省略するが、図14に示すように、切断線L42の属性が第2属性で且つ切断線L42、L43のなす角度θ(42)が第1閾値Th1未満の場合も同様の方法で、余剰切断長C(2)~C(6)に基づき切断データD4が補正され、補正切断データDa4が生成される(図15参照)。
【0074】
図8に示すように、制御部2は、切断データDの座標データ、又は補正切断データDaの座標データに基づき、搬送機構2C及び移動機構2Dを制御して装着部3Bを相対移動させる。制御部2は、座標データにより示される複数の点の各々を切断順に特定し、特定した位置とホルダ6の第2回転軸U2とが一致するように装着部3Bを相対移動させる制御を繰り返す。これにより、制御部2は被切断物9を切断する(S25)。制御部2は、メイン処理を終了させる。
【0075】
<本実施形態の作用、効果>
切断装置1は、切断線Lの属性(第1属性又は第2属性)に応じて余剰切断長を決定する(S17、S19、S33、S37、S43、S45、S53、S55)。切断装置1は、決定した余剰切断長に基づき、切断線Lを補正し(S23)、被切断物9を切断する(S25)。このため切断装置1は、被切断物9を切断する時の精度を向上させることが可能となる。
【0076】
切断線Lの属性が第1属性のときに決定される余剰切断長B(1)は、切断線Lの属性が第2属性のときに決定される余剰切断長C(1)~C(6)以上である(B(1)≧C(1)~C(6)、大小関係(b)(c)参照)。又、切断線Lの属性が第1属性のときに決定される余剰切断長B(2)は、切断線Lの属性が第2属性のときに決定される余剰切断長C(2)~C(6)以上である(B(2)≧C(2)~C(6)、大小関係(b)(d)参照)。このように、切断装置1は、切断線Lが直線であることを示す(第1属性)か、又は曲線であることを示す(第2属性)かに応じて、最適な余剰切断長を決定できる。
【0077】
なお、属性が第1属性である切断線Lを切断するときには精度が低下し易く、属性が第2属性である切断線Lを切断するときには精度が低下し難い。これに対し、切断装置は、属性が第1属性である切断線Lを切断する場合の余剰切断長B(1)を、属性が第2属性である切断線Lを切断する場合の余剰切断長C(1)~C(6)以上とし、属性が第1属性である切断線Lを切断する場合の余剰切断長B(2)を、属性が第2属性である切断線Lを切断する場合の余剰切断長C(2)~C(6)以上とする。これにより、切断装置1は、切断線Lに沿って被切断物9を切断するときの余剰切断長を、切断線Lの属性に応じて最適化できるので、切断の精度を更に向上させることができる。
【0078】
切断装置1は、属性が第1属性である第1切断線と第2切断線とのなす角度θが第1閾値Th1未満の場合に決定する余剰切断長B(1)を、角度θが第1閾値Th1以上の場合に決定する余剰切断長B(2)よりも大きくする(B(1)>B(2)、大小関係(a)参照)。又、属性が第2属性である第1切断線と第2切断線とのなす角度θが第2閾値Th2未満の場合に決定する余剰切断長C(1)を、角度θが第2閾値Th2以上の場合に決定する余剰切断長C(2)~C(6)よりも大きくする(C(1)>C(2)~C(6)、大小関係(b)参照)。このように、切断装置1は、第1切断線と第2切断線とのなす角度θに応じて、最適な余剰切断長を決定できる。
【0079】
なお、連続して切断する第1切断線と第2切断線との間のなす角度θが大きい程、切断が不十分となり、第1切断線と第2切断線との交点がなくなることで切り残しが発生し易くなる。これに対し、切断装置1は、第1切断線と第2切断線との間のなす角度θが大きい程、余剰切断長を大きくすることにより、切り残しの発生を効果的に抑制できる。
【0080】
切断装置1は、第2属性の切断線Lに設定された曲率が、第3閾値Th3以上の場合に決定する余剰切断長C(3)~C(6)を、曲率が第3閾値Th3よりも小さい場合に決定する余剰切断長C(2)以下とする(C(2)≧C(3)~C(6)、大小関係(b)参照)。このように、切断装置1は、第2属性の切断線Lに設定された曲率に応じて、最適な余剰切断長を決定できる。
【0081】
なお、余剰切断長が常に同じ長さの場合、切断線Lに設定された曲率が大きい程、曲率が小さい場合よりも曲率中心と反対の方向へ補正切断線Laにふくらみが生じやすく、切断線Lと補正切断線Laとの位置のずれが大きくなる。これに対し、切断装置1は、切断線Lに設定された曲率が大きい程、余剰切断長を小さくすることによって、切断線Lと補正切断線Laとの位置のずれを抑制できる。
【0082】
切断装置1は、第1切断線及び第2切断線のそれぞれの曲率が何れも第4閾値Th4以上の場合に決定する余剰切断長C(5)、C(6)を、第1切断線及び第2切断線の何れか一方の曲率が第4閾値Th4よりも小さい場合に決定する余剰切断長C(3)、C(4)以下とする(C(3)、C(4)≧C(5)、C(6)、大小関係(b)参照)。このように、切断装置1は、第1切断線及び第2切断線のそれぞれの曲率に応じて、最適な余剰切断長を決定できる。
【0083】
なお、余剰切断長が常に同じ長さの場合、切断線Lに設定された曲率が大きい程、曲率が小さい場合よりも曲率中心と反対の方向へ補正切断線Laにふくらみが生じやすく、切断線Lと補正切断線Laとの位置のずれが大きくなる。これに対し、切断装置1は、第1切断線及び第2切断線のそれぞれの曲率が何れも第4閾値Th4以上の場合における余剰切断長C(5)、C(6)を、第1切断線及び第2切断線の何れか一方の曲率が第4閾値Th4よりも小さい場合の余剰切断長C(3)、C(4)よりも小さくすることによって、切断線Lと補正切断線Laとの位置のずれを更に抑制できる。
【0084】
切断装置1は、第1切断線及び第2切断線のそれぞれの曲率が第4閾値Th4以上の場合において、第1切断線の長さが第5閾値Th5以上の場合に決定する余剰切断長C(5)を、第1切断線の長さが第5閾値Th5よりも小さい場合に決定する余剰切断長C(6)以上とする(C(5)≧C(6)、大小関係(b)参照)。又、切断装置1は、第1切断線及び第2切断線の少なくとも一方の曲率が第4閾値Th4よりも小さい場合において、第1切断線の長さが第5閾値Th5以上の場合に決定する余剰切断長C(3)を、第1切断線の長さが第5閾値Th5よりも小さい場合に決定する余剰切断長C(4)以上とする(C(3)≧C(4)、大小関係(b)参照。)このように、切断装置1は、第1切断線の長さに応じて、最適な余剰切断長を決定できる。
【0085】
なお、切断線の長さが長い程、切断が不十分となり、切り残しが発生し易くなる。これに対し、切断装置1は、切断線の長さが長い場合の余剰切断長C(3)、C(5)を、切断長の長さが短い場合の余剰切断長C(4)、C(6)よりも大きくすることによって、切断の精度を向上させることができる。
【0086】
切断装置1は、切断線Lの終点に対して始点側と反対側に離隔した補正終点と終点との間の長さを、余剰切断長として決定する。切断装置1は、決定した余剰切断長に基づき、切断線Lを補正して補正切断線Laとし、補正切断線Laに沿って被切断物9を切断する補正切断データDaを生成する。この場合、切断装置1は、被切断物9が切断された時の切断線が、始点と終点とを結ぶ線分より短くなる可能性を軽減できる。従って、切断装置1は、始点と終点とを結ぶ線分を切断線Lとして精度よく切断できる。
【0087】
ホルダ6では、第1回転軸U1と第2回転軸U2が交差しないため、実際に被切断物9が切断された時の切断線Lが、始点と終点とを結ぶ線分より短くなる可能性が高くなる。これに対し、切断装置1は、このようなホルダ6が用いられる場合に切断データDを補正して補正切断データDaを生成するので、切断時の精度を向上させることが可能となる。
【0088】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。切断装置1は、固定された保持部90に対し、装着部3BをXY方向に移動させることによって、保持部90に載置された被切断物9を切断刃72により切断してもよい。
【0089】
切断データDの切断線データにおいて、各切断線Lに対応付けられる属性は、第1属性(直線)及び第2属性(曲線)に限定されず、他の属性が対応付けられていてもよい。例えば、各切断線Lには、切断刃72を被切断物9に押し付ける時の圧力、被切断物9に対して切断刃72を相対移動させるときの速度等が、属性として対応付けられてもよい。この場合、切断装置1は、圧力や速度等に応じて、余剰切断長を決定してもよい。又、切断装置1は、被切断物9の材質、ホルダ6の種別、第1回転軸U1と第2回転軸U2との間の距離Wに応じて、余剰切断長を修正してもよい。
【0090】
余剰切断長B(2)を、余剰切断長C(1)以上としてもよい。即ち、切断線Lの属性が第1属性のときに決定される余剰切断長B(1)、B(2)を、切断線Lの属性が第2属性のときに決定される余剰切断長C(1)~C(6)以上としてもよい(B(1)>B(2)≧C(1)~C(6))。余剰切断長B(2)は0でもよい。余剰切断長C(1)~C(6)は0でもよい。
【0091】
第1閾値Th1と第2閾値Th2は、同じ値でもよいし異なる値でもよい。切断装置1は、第1切断線と第2切断線との間のなす角度θに関わらず、共通する余剰切断長を決定してもよい。余剰切断長B(1)よりも余剰切断長B(2)の方が大きい値でもよい。余剰切断長C(1)よりも余剰切断長C(2)~C(6)の方が大きい値でもよい。
【0092】
第3閾値Th3と第4閾値Th4とは、同じ値でもよいし異なる値でもよい。切断装置1は、連続する3つ以上の切断線Lのそれぞれの曲率が、何れも第3閾値Th3以上の場合に、余剰切断長C(5)、C(6)を決定してもよい。切断装置1は、連続する3つ以上の切断線Lの少なくとも何れかの曲率が、第3閾値Th3よりも小さい場合に、余剰切断長C(3)、C(4)を決定してもよい。
【0093】
第1切断線と第2切断線とのそれぞれの曲率が第4閾値Th4以上である場合に長さの判断基準とされる第5閾値Th5と、第1切断線と第2切断線の少なくとも一方の曲率が第4閾値Th4よりも小さい場合に長さの判断基準とされる第5閾値Th5とは、異なる値でもよい。
【0094】
切断装置1は、余剰切断長と異なるパラメータを用いて切断線Lを補正してもよい。例えば、切断装置1は、被切断物9に対して切断刃72が相対移動するときの速度や、切断刃72を被切断物9に押し付ける時の圧力を、切断線Lの属性、第1切断線と第2切断線との間のなす角度、曲率、及び長さに応じて補正してもよい。
【0095】
ホルダ6の切断刃72の形状は円形に限定されず、先の尖った板状でもよい。この場合、切断刃72の尖った先端と、第2回転軸M2とが交差していればよい。
【0096】
メイン処理のうち、S25の処理を除く各処理は、周知のコンピュータにより実行されてもよい。この場合、コンピュータがメイン処理を実行することにより生成された補正切断データDaが、切断装置1に出力されてもよい。切断装置1は、コンピュータか出力された補正切断データDaを記憶部54に記憶してもよい。切断装置1は、記憶部54に記憶した補正切断データDaに基づき、搬送機構2C及び移動機構2Dを制御し、被切断物9を切断してもよい。
【0097】
<その他>
保持部90は、本発明の「載置部材」の一例である。ホルダ6は、本発明の「切断部」の一例である。搬送機構2C及び移動機構2Dは、本発明の「移動機構」の一例である。S11の処理を行う制御部2は、本発明の「取得手段」の一例である。S17、S19、S33、S37、S43、S45、S51、S53の処理を行う制御部2は、本発明の「決定手段」の一例である。S23の処理を行う制御部2は、本発明の「生成手段」の一例である。S25の処理を行う制御部2は、本発明の「切断手段」の一例である。第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、本発明の「角度閾値」の一例である。第3閾値Th3は、本発明の「第1曲率閾値」の一例である。第4閾値Th4は、本発明の「第2曲率閾値」の一例である。第5閾値Th5は、本発明の「長さ閾値」の一例である。S11の処理は、本発明の「取得ステップ」の一例である。S17、S19、S33、S37、S43、S45、S51、S53の処理は、本発明の「決定ステップ」の一例である。S23の処理は、本発明の「生成ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0098】
1 :切断装置
2 :制御部
2C :搬送機構
2D :移動機構
3B :装着部
6 :ホルダ
9 :被切断物
72 :切断刃
90 :保持部
U1 :第1回転軸
U2 :第2回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15