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特開2022-184037コンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体
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  • 特開-コンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184037
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】コンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/18 20060101AFI20221206BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20221206BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03H1/18
G02B5/32
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091655
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓介
(72)【発明者】
【氏名】國安 寛行
(72)【発明者】
【氏名】小倉 教弘
(72)【発明者】
【氏名】打矢 直之
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA06
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA17
2H199DA18
2H199DA25
2H249CA05
2H249CA22
2K008AA13
2K008DD01
(57)【要約】
【課題】ホログラムシートの変色が抑制されたコンバイナを提供する。
【解決手段】一対の基板と、基板を互いに接合するように基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、基板の間に位置し、熱可塑性樹脂材と接触するホログラムシートと、を有するコンバイナであって、ホログラムシートのゲル分率が、30質量%以上である、コンバイナ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記基板を互いに接合するように前記基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、
前記基板の間に位置し、前記熱可塑性樹脂材と接触するホログラムシートと、
を有するコンバイナであって、
前記ホログラムシートのゲル分率が、30質量%以上である、
コンバイナ。
【請求項2】
前記ホログラムシートが、ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する感光性材料の硬化物により構成される、請求項1に記載のコンバイナ。
【請求項3】
前記感光性材料が、前記カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有する、請求項2に記載のコンバイナ。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂材が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンバイナ。
【請求項5】
前記コンバイナが、前記ホログラムシートの少なくとも一方の面に設けられた表面保護シートをさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンバイナ。
【請求項6】
前記コンバイナが、前記ホログラムシートの両側に設けられた一対の表面保護シートをさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンバイナ。
【請求項7】
一対の基板と、
前記基板を互いに接合するように前記基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、
前記基板の間に位置し、前記熱可塑性樹脂材と接触するホログラムシートと、
を有するコンバイナであって、
前記コンバイナを80℃環境下における100時間の耐熱性試験に供した後の、前記ホログラムシートの中心部における波長400nm以上780nm以下の範囲における透過スペクトルのピーク波長と、前記ホログラムシートの端部における前記透過スペクトルのピーク波長との差の絶対値が、20nm以下である、
コンバイナ。
【請求項8】
一対の基板と、前記基板を互いに接合するように前記基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、を有するコンバイナに用いられ、前記熱可塑性樹脂材と接触するように前記基板の間に配置される、コンバイナ用のホログラム部材であって、
前記ホログラム部材が、ゲル分率が30質量%以上のホログラムシートを有する、
ホログラム部材。
【請求項9】
前記ホログラムシートが、ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する感光性材料の硬化物により構成される、請求項8に記載のホログラム部材。
【請求項10】
前記感光性材料が、前記カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有する、請求項9に記載のホログラム部材。
【請求項11】
前記ホログラム部材が、前記ホログラムシートの少なくとも一方の面に設けられた表面保護シートをさらに有する、請求項8~10のいずれか一項に記載のホログラム部材。
【請求項12】
前記ホログラム部材が、前記ホログラムシートの両側に設けられた一対の表面保護シートをさらに有する、請求項8~11のいずれか一項に記載のホログラム部材。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコンバイナにおける前記ホログラムシートを形成するための感光性材料であって、
ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する、感光性材料。
【請求項14】
前記感光性材料が、前記カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有する、請求項13に記載の感光性材料。
【請求項15】
画像光を放出する画像形成装置と、
前記画像光が照射される請求項1~7のいずれか一項に記載のコンバイナと、
を備える、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項16】
請求項15に記載のヘッドアップディスプレイを備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の基板と、基板の間に配置されたホログラムシートと、を有するコンバイナが知られている。このようなコンバイナにおいて、基板の間に、基板を互いに接合する熱可塑性樹脂材が配置される場合がある。この場合、ホログラムシートは、熱可塑性樹脂材と接触し得る。この接触により、ホログラムシートが熱可塑性樹脂材により浸食されるおそれがある。より具体的には、ホログラムシートに記録された干渉縞に、熱可塑性樹脂材に含まれる可塑剤が侵入し、これにより干渉縞が膨張するおそれがある。このため、可塑剤が侵入した部分において、透過スペクトルのピーク波長が長波長側にシフトし、この結果、ホログラムシートが変色するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-119163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、ホログラムシートの変色が抑制されたコンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態による第1のコンバイナは、一対の基板と、基板を互いに接合するように基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、基板の間に位置し、熱可塑性樹脂材と接触するホログラムシートと、を有し、ホログラムシートのゲル分率が、30質量%以上である。
【0006】
上記第1のコンバイナにおいて、ホログラムシートは、ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する感光性材料の硬化物により構成されてもよい。
【0007】
上記第1のコンバイナにおいて、感光性材料は、カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有してもよい。
【0008】
上記第1のコンバイナにおいて、熱可塑性樹脂材は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有してもよい。
【0009】
上記第1のコンバイナは、ホログラムシートの少なくとも一方の面に設けられた表面保護シートをさらに有してもよい。
【0010】
上記第1のコンバイナは、ホログラムシートの両側に設けられた一対の表面保護シートをさらに有してもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による第2のコンバイナは、一対の基板と、基板を互いに接合するように基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、基板の間に位置し、熱可塑性樹脂材と接触するホログラムシートと、を有し、コンバイナを80℃環境下における100時間の耐熱性試験に供した後の、ホログラムシートの中心部における波長400nm以上780nm以下の範囲における透過スペクトルのピーク波長と、ホログラムシートの端部における透過スペクトルのピーク波長との差の絶対値が、20nm以下である。
【0012】
本開示の一実施の形態によるホログラム部材は、一対の基板と、基板を互いに接合するように基板の間に配置された熱可塑性樹脂材と、を有するコンバイナに用いられ、熱可塑性樹脂材と接触するように前記基板の間に配置される、コンバイナ用のホログラム部材であって、ホログラム部材が、ゲル分率が30質量%以上のホログラムシートを有する。
【0013】
上記ホログラム部材において、ホログラムシートは、ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する感光性材料の硬化物により構成されてもよい。
【0014】
上記ホログラム部材において、感光性材料は、カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有してもよい。
【0015】
上記ホログラム部材は、ホログラムシートの少なくとも一方の面に設けられた表面保護シートをさらに有してもよい。
【0016】
上記ホログラム部材は、ホログラムシートの両側に設けられた一対の表面保護シートをさらに有してもよい。
【0017】
本開示の一実施の形態による感光性材料は、上記コンバイナにおけるホログラムシートを形成するための感光性材料であって、ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する。
【0018】
上記感光性材料は、カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを含有してもよい。
【0019】
本開示の一実施の形態によるヘッドアップディスプレイは、画像光を放出する画像形成装置と、画像光が照射される上記コンバイナと、を備える。
本開示の一実施の形態による移動体は、上記ヘッドアップディスプレイを備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、ホログラムシートの変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、ヘッドアップディスプレイを有する移動体を示す概略図である。
図2図2は、図1に含まれるコンバイナを拡大して示す断面図である。
図3図3は、一実施の形態に係るホログラム部材の断面図である。
図4図4は、一般的なコンバイナにおけるホログラムシートの透過スペクトルを 示す図である。
図5図5は、サンプル1~2の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0023】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0024】
本明細書において、「シート」、「フィルム」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。
【0025】
本明細書において、シート状(フィルム状、板状)の部材の法線方向とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材のシート面(フィルム面、板面)への法線方向のことを指す。また、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材を全体的且つ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(フィルム状部材、板状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
【0026】
図面を参照して、コンバイナ、コンバイナ用のホログラム部材、感光性材料、ヘッドアップディスプレイおよび移動体について説明する。
【0027】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ2は、画像形成装置3およびコンバイナ4を有している。ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ4を用いて、画像形成装置3によって形成された画像を使用者5に表示する。コンバイナ4は透明である。このため、使用者5は、コンバイナ4を介して、コンバイナ4の背後を観察することができる。撮像装置が、コンバイナ4を介して、コンバイナ4を観察する使用者5を撮像してもよい。
【0028】
ここで、「透明」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。
【0029】
本実施の形態によるヘッドアップディスプレイ2は、種々の分野に適用可能である。ヘッドアップディスプレイ2は、ヘッドマウントディスプレイに適用されてもよい。ヘッドアップディスプレイ2は、プロンプターに適用されてもよい。プロンプターは、講演や撮像等に使用されてもよい。
【0030】
図1に示す例においては、ヘッドアップディスプレイ2は、移動体1に適用されている。移動体1は、移動可能な装置である。移動体1は、人間が乗った状態で移動可能としてもよい。移動体1として、船、飛行機、ドローン、鉄道車両、図示された自動車等が例示される。図1に示すように、コンバイナ4は、自動車のフロントウインドウに適用されてもよい。
【0031】
画像形成装置3は、画像を形成する画像光を放出する。使用者5は、画像光を受光することによって画像を観察する。画像光には、速度情報、視界補助情報、ナビゲーション情報等の画像情報が含まれる。図1に示すように、画像形成装置3は、ダッシュボード内に配置され、ダッシュボードによって隠蔽されていてもよい。画像形成装置3としては、特に限定されず、画像を形成可能な種々の装置を使用可能である。画像形成装置3として、液晶表示装置、レーザー表示装置、EL表示装置等が例示される。また、画像形成装置3は、光学シートと、光学シートを背面から照明する光源と、を有していてもよい。画像形成装置3からの画像光はコンバイナ4に照射される。画像形成装置3とコンバイナ4の間に、投射光学系(不図示)が設けられていてもよい。投射光学系は、画像形成装置3からコンバイナ4へ画像光を誘導する。投射光学系は、ミラー、レンズ、プリズム、回折光学素子およびこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0032】
コンバイナ4は、画像形成装置3からの画像光を使用者5に向ける。図2に示すように、コンバイナ4は、一対の基板10、12と、熱可塑性樹脂材14と、ホログラムシートを含むホログラム部材20と、を有している。
【0033】
一対の基板10、12は、互いに平行になるように配置されている。基板10、12は、透明な板である。基板10、12は、ホログラム部材20を支持している。図1および図2に示す例においては、基板10、12は、移動体1のフロントウインドウを構成する風防用の部材として機能している。基板10は、使用者5の側、すなわち移動体1の内側に位置している。基板12は、使用者5の側とは反対側、すなわち移動体1の外側に位置している。基板10、12の材料として、ソーダライムガラスや青板ガラス等のガラスを用いてもよい。基板10、12の材料として、(メタ)アクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂を用いてもよい。また、基板10、12は、複数の層を含んでいてもよい。基板10、12の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下であってもよい。基板10および基板12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、異なる材料で構成されてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
【0034】
熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12の間に配置されている。熱可塑性樹脂材14により構成される層を中間層とも称する。熱可塑性樹脂材14は透明である。熱可塑性樹脂材14は、接着性または粘着性を有している。熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12にそれぞれ接触し、一対の基板10、12を互いに接合している。図示された例においては、熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12の間に充填されている。すなわち、熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12の間に隙間なく配置されている。熱可塑性樹脂材の厚みは、例えば、20μm以上1000μm以下であってもよい。
【0035】
以下の熱可塑性樹脂材の説明において、符号は省略する。
熱可塑性樹脂材は、熱可塑性樹脂を含有する。
熱可塑性樹脂として、例えば、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアセタールおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
【0036】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0037】
ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の炭素数は、好ましくは6以下、より好ましくは3以上6以下である。ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラールが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂材を構成する熱可塑性樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)が好ましい。
熱可塑性樹脂材は、熱可塑性樹脂を1種または2種以上含有できる。
【0038】
一般的に、熱可塑性樹脂材は、基板等に対するその接着力をより高めるという観点から、可塑剤を含有する。可塑剤は、一実施の形態において、液状可塑剤である。すなわち、熱可塑性樹脂材は、一実施の形態において、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有し、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含有してもよく、ポリビニルブチラールと可塑剤とを含有してもよい。本開示では、ホログラムシートの架橋密度(緻密さ)が後述するように高いことから、ホログラムシートへの熱可塑性樹脂材からの可塑剤などの低分子量成分の侵入を抑制できる。したがって、ホログラムシートにおける干渉縞の構造の変調を抑制できる。例えば、ホログラムシートの端部まで、すなわちホログラムシート全面を、ホログラム記録部とすることができる。
【0039】
可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤が挙げられ、例えば、一塩基性有機酸エステルおよび多塩基性有機酸エステルなどのエステル系可塑剤;ならびに有機リン酸化合物および有機亜リン酸化合物などのリン酸系可塑剤が挙げられる。
【0040】
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、グリコールと一塩基性有機酸とのエステルが挙げられる。上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびトリプロピレングリコールが挙げられる。一塩基性有機酸としては、例えば、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸およびデシル酸が挙げられる。
【0041】
多塩基性有機酸エステルとしては、例えば、多塩基性有機酸とアルコールとのエステルが挙げられる。多塩基性有機酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸が挙げられる。
【0042】
エステル系可塑剤としては、具体的には、1,3-プロピレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、エチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート、ジエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジカプリエート、ジプロピレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルペンタノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物が挙げられる。
【0043】
リン酸系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェートおよびトリイソプロピルホスフェートが挙げられる。
熱可塑性樹脂材は、可塑剤を1種または2種以上含有できる。
【0044】
熱可塑性樹脂材における可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下でもよく、20質量部以上70質量部以下でもよい。これにより、例えば、熱可塑性樹脂材の接着性および透明性をより向上できる。
【0045】
熱可塑性樹脂材は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、接着力調整剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、顔料、染料、蛍光増白剤、紫外線遮蔽剤、熱線反射剤および熱線吸収剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂材は、添加剤を1種または2種以上含有できる。
【0046】
熱可塑性樹脂材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂材は、例えば、熱可塑性樹脂材を構成する成分を混練して組成物を調製し、該組成物を用いて形成できる。例えば、押出法、カレンダー法およびプレス法などの通常の製膜法により、該組成物をシート状に製膜する方法が挙げられる。
【0048】
ホログラムシートを有するホログラム部材20は、一対の基板10、12の間に配置されている。ホログラム部材20は、熱可塑性樹脂材14と接触するように配置されている。図示された例においては、ホログラム部材20は、一対の基板10、12の間の中央部に配置されており、熱可塑性樹脂材14により囲まれている。しかしながら、このことに限定されず、ホログラム部材20は、基板10の側に配置されて、基板10と接触していてもよい。また、ホログラム部材20は、基板12の側に配置されて、基板12と接触していてもよい。
【0049】
以下、ホログラムシート形成用の感光性材料について説明する。
以下の材料の説明において、符号は省略する。
ホログラムシートの形成に好適に用いられる感光性材料は、一実施の形態において、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂とを含有する。ホログラムシートは、例えば、このような感光性材料の硬化物により構成される。
【0050】
光重合性モノマーは、光照射によって重合又は二量化反応が進行し、かつ、感光性材料層中で拡散移動できる化合物である。感光性材料は、一実施の形態において、ラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーとを少なくとも含有する。ラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーとを併用することにより、例えば、形成されるホログラムシートの架橋密度(緻密さ)や、耐久性を向上できる。光重合性モノマーとしては、さらに、光二量化性化合物を用いてもよい。
【0051】
ラジカル重合性モノマーは、光照射によって光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物である。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、ならびに不飽和カルボン酸のエステル、アミドおよび塩が挙げられる。
【0052】
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸およびマレイン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、不飽和カルボン酸と脂肪族一価アルコールまたは脂肪族多価アルコールとのエステルが挙げられる。不飽和カルボン酸のアミドとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアミド化物が挙げられ、具体的には、不飽和カルボン酸と脂肪族一価アミンまたは脂肪族多価アミンとのアミド化物が挙げられる。
【0053】
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートにおける(メタ)アクリロイル基数は、例えば、2以上10以下、2以上8以下、または2以上6以下である。
【0054】
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;イソボニル(メタ)アクリレートおよびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの脂環含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、β-(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、2,3-ナフタレンジカルボン酸((メタ)アクリロキシエチル)モノエステルおよびビフェニル-2,2’-ジカルボン酸(2-(メタ)アクリロキシエチル)モノエステルなどの芳香環含有(メタ)アクリレート;メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレートなどのグリコール系(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリンおよび2-(9-カルバゾリル)エチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート;トリフェニルメチルチオ(メタ)アクリレートおよびS-(1-ナフチルメチル)チオ(メタ)アクリレートなどの硫黄原子含有(メタ)アクリレート;ならびにこれらのモノマーのハロゲン化物
が挙げられる。
【0055】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、
1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジチオグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドおよびこれらのモノマーのハロゲン化物などの脂肪族系多官能(メタ)アクリレート;
ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)メタン、ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)スルホン、2,3-ナフタレンジカルボン酸(2-(メタ)アクリロキシエチル)(3-(メタ)アクリロキシプロピル-2-ヒドロキシ)ジエステル、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸(2-(メタ)アクリロキシエチル)(3-(メタ)アクリロキシプロピル-2-ヒドロキシ)ジエステル、4,5-フェナントレンジカルボン酸(2-(メタ)アクリロキシエチル)(3-(メタ)アクリロキシプロピル-2-ヒドロキシ)ジエステルなどの芳香族系多官能(メタ)アクリレート;
が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリレート化合物としては、また、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートも挙げられる。
【0057】
ラジカル重合性モノマーとして、例えば、スチレンおよびα-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ならびに酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルモノマーを用いてもよい。
ラジカル重合性モノマーの中でも、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
感光性材料は、ラジカル重合性モノマーを1種または2種以上含有できる。
【0058】
ラジカル重合性モノマーの平均屈折率は、カチオン重合性モノマーの平均屈折率より大きいことが好ましく、0.02以上大きいことが好ましい。このような態様により、例えば、所望の屈折率変調量が得られる。
【0059】
カチオン重合性モノマーは、光照射によって光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸またはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ基およびオキセタン基などのカチオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。
【0060】
カチオン重合性モノマーは、常温で液状であってもよい。これにより、例えば、ラジカル重合性モノマーを比較的低粘度の感光性材料中で重合できる。
【0061】
カチオン重合性モノマーとしては、エポキシ基を有するモノマーが好ましい。エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物、およびエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。多官能エポキシ化合物におけるエポキシ基数は、例えば、2以上10以下、2以上8以下、または2以上6以下である。
【0062】
上記単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイドおよびシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。
【0063】
上記多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-3’,4’-エポキシ-1,3-ジオキサン-5-スピロシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8-ジエポキシオクタンおよび1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタンが挙げられる。
【0064】
オキセタン基を有するモノマーとしては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、および3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどのオキセタン基を1つ有する単官能化合物;1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ(1-エチル(3-オキセタニル))メチルエーテル、およびペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどのオキセタン基を2つ以上有する多官能化合物が挙げられる。該多官能化合物におけるオキセタン基数は、例えば、2以上10以下、2以上8以下、または2以上6以下である。
感光性材料は、カチオン重合性モノマーを1種または2種以上含有できる。
【0065】
感光性材料は、カチオン重合性モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを少なくとも含有することが好ましい。ラジカル重合性モノマーとともに、エポキシ基を有するモノマーを用いることにより、例えば、形成されるホログラムシートの架橋密度(緻密さ)を向上でき、よってホログラムシートへの熱可塑性樹脂材からの可塑剤などの低分子量成分の侵入を抑制できる。
【0066】
感光性材料におけるラジカル重合性モノマーの含有量は、感光性材料の全固形分100質量部中、5質量部以上90質量部以下でもよく、10質量部以上50質量部以下でもよい。固形分とは、溶媒以外の成分をいい、常温で液状のモノマーも固形分に含まれる。
【0067】
感光性材料におけるカチオン重合性モノマーの含有量は、感光性材料の全固形分100質量部中、5質量部以上90質量部以下でもよく、10質量部以上50質量部以下でもよい。このような態様により、例えば、所望の屈折率変調量が得られ、さらに、耐久性に優れるホログラムシートが得られる。
【0068】
感光性材料は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤および光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0069】
光ラジカル重合開始剤は、光照射によって活性ラジカルを生成する化合物である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、ジアゾ化合物、o-キノンジアジド化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、チオキサントン化合物、フェニルケトン化合物、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、イミダゾール化合物、ビスイミダゾール化合物、チタノセン化合物、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリアジン化合物および有機過酸化物;ならびに芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。
感光性材料は、光ラジカル重合開始剤を1種または2種以上含有できる。
【0070】
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤が好ましい。光酸発生剤は、光照射によってブレンステッド酸またはルイス酸を生成する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩および鉄アレーン錯体が挙げられる。オニウム塩としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩などの芳香族ヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などの芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、ならびに芳香族ホスホニウム塩が挙げられる。鉄アレーン錯体としては、例えば、ビスシクロペンタジエニル-(η6-イソプロピルベンゼン)-鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
【0071】
芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩としては、例えば、芳香族ヨードニウムまたは芳香族スルホニウムの、クロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホネートが挙げられる。
感光性材料は、光カチオン重合開始剤を1種または2種以上含有できる。
【0072】
一実施の形態において、感光性材料は、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤とを含有する。これにより、光照射によってラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーの重合を良好に進めることができる。
【0073】
一実施の形態において、感光性材料は、光ラジカル重合開始剤としても光カチオン重合開始剤としても機能する光重合開始剤を含有する。この場合、感光性材料は、このような光重合開始剤を1種のみ含有してもよい。このような光重合開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0074】
光重合開始剤は、記録されたホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものであることが好ましい。
【0075】
感光性材料における光重合開始剤の含有量は、感光性材料の全固形分100質量部中、0.1質量部以上10質量部以下でもよく、1質量部以上5質量部以下でもよい。このような態様により、例えば、光照射により光重合性モノマーが充分に重合し、所望の屈折率変調量が得られる。
【0076】
感光性材料は、光重合開始剤を増感せしめる増感色素をさらに含有してもよい。
増感色素は、一般的に光を吸収する成分であり、光重合開始剤の記録光に対する感度を増感させる働きを有する。感光性材料は、増感色素を含有することによって可視光にも活性となり、可視光を用いてホログラムを記録できる。
【0077】
増感色素としては、例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン染料、ピリリウムイオン系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素およびジフェニルヨードニウムイオン系色素が挙げられる。
感光性材料は、増感色素を1種または2種以上含有できる。
【0078】
感光性材料における増感色素の含有量は、感光性材料の全固形分100質量部中、0.001質量部以上2質量部以下でもよく、0.001質量部以上1.5質量部以下でもよい。このような態様により、例えば、光重合開始剤の感度を向上でき、またホログラムシートの透明性を確保できる。
【0079】
感光性材料は、一実施の形態において、バインダー樹脂を含有する。
バインダー樹脂は、例えば、感光性材料の成膜性、ホログラムシートの膜厚均一性、屈折率変調量、耐熱性および機械的物性を向上させ、ホログラフィ露光により形成されるホログラムを安定化させる。
【0080】
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ-1,2-ジクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-o-メチルスチレン、ポリ-p-メチルスチレン、ポリ-p-フェニルスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、ポリ-α-ビニルナフタレート、スチレン-(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリアリーレート、ポリサルホンおよびポリエーテルサルホンが挙げられる。
【0082】
これらの中でも、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリヘキシル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリフェニル(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリ1-フェニルエチル(メタ)アクリレート、ポリ2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、ポリフルフリル(メタ)アクリレート、ポリジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ポリペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、ポリナフチル(メタ)アクリレートおよびポリ(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
感光性材料は、熱可塑性樹脂を1種または2種以上含有できる。
【0083】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ホログラム記録時の光重合性モノマーの拡散移動能および高温保存安定性という観点から、10,000以上150,000以下でもよく、30,000以上150,000以下でもよい。本開示において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)測定によるポリスチレン換算値である。
【0084】
バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いると、加熱処理により熱硬化性樹脂を硬化させることで、ホログラムシートの強度を高め、ホログラム記録特性が向上し、安定した層構造を形成できる。熱硬化性樹脂の官能基の一部は、光照射により光重合性モノマーの官能基の一部との間で相互作用が起こり、化学結合を形成できる。この場合、ホログラム記録後の光照射により、光重合性モノマーが固定されるため、ホログラムシートの強度を向上できる。
【0085】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ変性不飽和ポリエステル、(メタ)アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性(メタ)アクリル樹脂、アルキド樹脂およびフェノール樹脂が挙げられる。
【0086】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、5,000以上100,000以下でもよく、10,000以上50,000以下でもよい。これにより、例えば、ホログラムシートの強度をより向上できる。
感光性材料は、熱硬化性樹脂を1種または2種以上含有できる。
【0087】
感光性材料におけるバインダー樹脂の含有量は、感光性材料の全固形分100質量部中、5質量部以上90質量部以下でもよく、10質量部以上50質量部以下でもよい。これにより、例えば、ホログラムシートの強度をより向上できる。
【0088】
感光性材料は、一実施の形態において、ラジカル重合性モノマーとしての(メタ)アクリレート化合物と、カチオン重合性モノマーとしてのエポキシ基を有するモノマーと、バインダー樹脂としての(メタ)アクリル樹脂とを含有する。このような態様により、例えば、架橋密度が高く、また屈折率変調性に優れたホログラムシートが得られる。
【0089】
感光性材料は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、例えば、微粒子、熱重合防止剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤および着色剤が挙げられる。微粒子としては、例えば、樹脂骨格として、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ(メタ)アクリルを有する有機微粒子、該有機微粒子を構成する樹脂骨格中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフッ素系微粒子;シリカ、マイカ、タルクおよびチタニアなどの無機粒子が挙げられる。
感光性材料は、添加剤を1種または2種以上含有できる。
【0090】
感光性材料は、塗工適正の向上という観点から、溶媒を含有してもよい。感光性材料のうち、常温で液状である成分が含有されている場合は、溶媒が必要ない場合もある。
【0091】
上記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルおよびエチレングリコールジアセテートなどのエステル溶媒;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブおよびブチルセロソルブなどのセロソルブ溶媒;メタノール、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール溶媒;テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル溶媒;ならびにジクロロメタンおよびクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。上記溶媒は、1種であってもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0092】
ホログラムシートのゲル分率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。ゲル分率の上限は特に限定されないが、例えば、90質量%、80質量%、70質量%または60質量%である。ラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーとを併用することにより、上記のように高いゲル分率を有するホログラムシートを形成できたものと考えられる。
【0093】
ゲル分率は、以下の式で表される。
ゲル分率 = W2/W1×100(%)
ホログラムシートの初期質量をW1とする。ホログラムシートを、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)中に室温(23℃)で24時間浸漬した後、ホログラムシートを取り出し、溶剤をふき取り、乾燥した。乾燥後のホログラムシートの質量をW2とする。
【0094】
感光性材料を用いてホログラムシートを形成する方法の一実施の形態を説明する。ホログラフィ露光(干渉露光)前の光重合性モノマーを含む層を感光性材料層ともいう。
【0095】
感光性材料を支持体に塗布し、必要に応じて乾燥して感光性材料層を形成する。
支持体としては、例えば、ガラス板および(メタ)アクリル樹脂板などの透明な板;ポリエチレンテレフタレートフィルムおよびポリエチレンフィルムなどの透明な樹脂フィルムが挙げられる。支持体は、後述する表面保護シートであってもよい。
【0096】
支持体への感光性材料の塗布方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法およびドクターロールコート法が挙げられる。
【0097】
塗布された感光性材料の乾燥は、例えば、ホットプレート、オーブンおよびベルト炉などを用いて行う。乾燥温度は、例えば、20℃以上130℃以下である。乾燥時間は、例えば、1分以上60分以下である。
【0098】
次に、感光性材料層に対して、ホログラフィ露光を行う。これにより、感光性材料層の露光部または露光量の大きい部分において光重合性モノマーの重合反応が進み、重合体が形成される。その結果、非露光部または露光量の小さい部分から、露光部または露光量の大きい部分へ、光重合性モノマーの移動が起こる。光重合性モノマーの重合および濃度変化によって感光性材料層内に屈折率差が生じ、感光性材料層内に干渉パターン(干渉縞)が形成され、よってホログラムが記録される。このようにして、ホログラムシートが得られる。
【0099】
感光性材料層にホログラムを記録した後、屈折率変調の促進および重合反応完結(定着)のために、ホログラムシートに対して、さらに全面露光や、加熱処理を行ってもよい。全面露光と加熱処理とを共に行う場合、その順序は特に制限されず、全面露光を先に行ってもよく、加熱処理を先に行ってもよい。一実施の形態において、全面露光および加熱処理を行うことが好ましい。これにより、架橋密度および耐久性により優れたホログラムシートが得られる。
【0100】
全面露光では、ホログラムシートに対して、例えば、紫外線を照射する。全面露光で用いられる光源としては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、キセノンアークランプおよびメタルハライドランプが挙げられる。紫外線による全面露光を行う場合の照射エネルギー量としては、例えば、0.1J/cm以上200J/cm以下、または0.3J/cm以上50J/cm以下である。全面露光により、例えば光重合性モノマーの重合が進み、架橋密度がより高いホログラムシートが得られる。
【0101】
加熱処理を行う際の温度は、例えば、50℃以上150℃であり、処理時間は、例えば、5分以上3時間以下である。加熱処理により、例えばエポキシ基を有するモノマーの重合が進み、架橋密度がより高いホログラムシートが得られる。
【0102】
図2および図3を用いて、ホログラム部材20の構成について説明する。
【0103】
図2および図3に示すように、ホログラム部材20は、ホログラムシート30と、一対の表面保護シート40、42と、を有している。このことにより、干渉縞が形成されているホログラムシート30の表面を保護できる。すなわち、ホログラムシート30の表面が熱可塑性樹脂材14と接触することを防止できる。このため、ホログラムシート30の変色をより一層抑制できる。
【0104】
ホログラムシート30は、扁平形状を有している。ホログラムシート30は、平面視において、矩形形状を有していてもよい。ここで、平面視とは、ホログラムシート30の法線方向に沿う方向で観察することを意味する。ホログラムシート30は、透明である。ホログラムシート30は、第1面30aと、第1面30aとは反対側に設けられた第2面30bと、を有している。また、ホログラムシート30は、干渉縞が記録された記録部を有している。記録部は、平面視において、ホログラムシート30の全面に設けられていてもよい。ホログラムシート30は、画像形成装置3から照射された画像光を、干渉縞で回折して、使用者5の側に向ける。これにより、使用者5は、画像光に含まれる画像情報を虚像としてコンバイナ4の背後の観察位置6で背景とともに視認することができる(図1参照)。ホログラムシート30は、体積ホログラムであってもよい。また、ホログラムシート30は、反射型ホログラムであってもよい。しかしながら、このことに限定されず、ホログラムシート30は、透過型ホログラムであってもよい。ホログラムシート30の厚みは、例えば、1μm以上100μm以下であってもよく、5μm以上40μm以下であってもよい。
【0105】
ホログラムシート30は、複数の記録部を有していてもよい。複数の記録部は、互いに異なる波長の光を高効率で回折できる。例えば、画像形成装置3からの画像光は、青色の光、緑色の光、および赤色の光を含み得る。この例において、ホログラムシート30は、青色の光を高効率で回折する記録部、緑色の光を高効率で回折する記録部、および赤色の光を高効率で回折する記録部を含んでもよい。記録部が体積ホログラムである場合には、多重記録によって、単一の記録部が複数の波長域の光を高効率で回折してもよい。
【0106】
図2および図3では、ホログラムシート30の両面に一対の表面保護シート40、42が配置された形態を示しているが、この形態に限定されない。ホログラムシート30の少なくとも一方の面に表面保護シートが配置されていてもよい。例えば、基板10と、ホログラムシート30と、表面保護シート42と、熱可塑性樹脂材14と、基板12とを有する積層構造;基板10と、接着剤層と、ホログラムシート30と、表面保護シート42と、熱可塑性樹脂材14と、基板12とを有する積層構造;基板10と、熱可塑性樹脂材14と、表面保護シート40と、ホログラムシート30と、基板12とを有する積層構造;基板10と、熱可塑性樹脂材14と、表面保護シート40と、ホログラムシート30と、接着剤層と、基板12とを有する積層構造が挙げられる。
【0107】
このように、ホログラム部材20は、コンバイナ4や合わせガラスにおける封入形態に応じて、ホログラムシート30と、表面保護シート40または表面保護シート40とを有してもよく、表面保護シート40と、ホログラムシート30と、表面保護シート42とを有してもよい。ホログラム部材20は、コンバイナ4や合わせガラス用途に好適である。
【0108】
表面保護シート40、42は、例えば、可塑剤などの低分子量成分を含有する熱可塑性樹脂材14における低分子量成分がホログラムシート30へ浸透することを抑制するために設けることができる。したがって、表面保護シート40、42は、例えば可塑剤を含有しないことが好ましい。
【0109】
表面保護シート40、42を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0110】
表面保護シート40、42は、上記熱可塑性樹脂を含有する溶液をホログラムシート30に塗布、乾燥して形成してもよく、上記熱可塑性樹脂から構成されるシートをホログラムシート30にラミネートして形成してもよい。ラミネートの場合は、必要に応じて、ホログラムシート30と表面保護シート40、42との間に接着剤層を設けてもよい。
【0111】
図2および図3において、一対の表面保護シート40、42は、ホログラムシート30の両側に設けられている。より具体的には、ホログラムシート30の第1面30aの側に表面保護シート40が設けられ、ホログラムシート30の第2面30bの側に表面保護シート42が設けられている。表面保護シート40、42は、透明なシートである。表面保護シート40は、ホログラムシート30の第1面30aと接触するように配置されていてもよい。表面保護シート42は、ホログラムシート30の第2面30bと接触するように配置されていてもよい。表面保護シート40は、ホログラムシート30の第1面30aを覆っていてもよい。表面保護シート42は、ホログラムシート30の第2面30bを覆っていてもよい。表面保護シート40、42は、平面視において、ホログラムシート30と重なっていてもよい。すなわち、平面視において、表面保護シート40、42の外周縁とホログラムシート30の外周縁とが重なっていてもよい。しかしながら、このことに限定されず、表面保護シート40、42は、平面視において、ホログラムシート30と部分的に重なっていなくてもよい。表面保護シート40は、ホログラムシート30の表面を保護する役割を有している。表面保護シート40、42の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であってもよい。表面保護シート40および表面保護シート42は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、異なる材料で構成されてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
【0112】
コンバイナ4を構成する各層の間に、接着剤層を設けてもよい。
接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン-ブタジエンゴム系、熱可塑性エラストマー系などのエラストマー系接着剤;エポキシ樹脂系、ポリウレタン系などの合成樹脂系接着剤;反応型アクリル系、シアノアクリレート系などの化学反応型接着剤;紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤;エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性エラストマー系、反応ホットメルト系などのホットメルト系接着剤;水溶性接着剤、エマルション系接着剤、ラテックス系接着剤などの水性接着剤;無機系接着剤が挙げられる。
【0113】
ホログラムシート30と接触する接着剤層の場合には、可塑剤を含有しない接着剤を用いて当該接着剤層を形成することが好ましい。ホログラムシート30および表面保護シート40、42がそれら自体で接着性または粘着性を有する場合には、基板10、12とホログラムシート30との間の接着剤層や、ホログラムシート30と表面保護シート40、42との間の接着剤層を省略できる。
接着剤層の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
【0114】
次に、本実施の形態の作用について説明する。ここでは、本実施の形態によるコンバイナ4の製造方法について説明する。
【0115】
コンバイナ4の製造方法は、一対の基板10、12、熱可塑性樹脂材14およびホログラム部材20を準備する準備工程と、一対の基板10、12の間に熱可塑性樹脂材14およびホログラム部材20を配置する配置工程と、一対の基板10、12を圧着する圧着工程と、を有している。
【0116】
まず、準備工程が行われる。準備工程は、基板10、12を準備する工程と、熱可塑性樹脂材14を準備する工程と、ホログラム部材20を準備する工程と、を含んでいる。
【0117】
基板10、12を準備する工程においては、ガラス等から成る一対の基板10、12が準備される。熱可塑性樹脂材14を準備する工程においては、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む熱可塑性樹脂材14が準備される。
【0118】
続いて、配置工程が行われる。配置工程においては、一対の基板10、12の間に熱可塑性樹脂材14およびホログラム部材20が配置される。熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12にそれぞれ接触するように配置される。ホログラム部材20は、一対の基板10、12の中央部に配置される。ホログラム部材20は、熱可塑性樹脂材14と接触するように配置される。ホログラム部材20は、熱可塑性樹脂材14により囲まれるように配置される。熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12の間に充填される。熱可塑性樹脂材14は、一対の基板10、12の間に隙間なく配置される。
【0119】
次に、圧着工程が行われる。圧着工程においては、一対の基板10、12が圧着される。より具体的には、真空雰囲気下において、一対の基板10、12が、外側から、80℃以上200℃以下、特に100℃以上150℃以下の範囲内の温度で加圧される。これにより、熱可塑性樹脂材14が一対の基板10、12にそれぞれ溶着し、一対の基板10、12が互いに接合(圧着)される。
【0120】
このようにして図2に示すようなコンバイナ4を得ることができる。
【0121】
ここで、一般的なコンバイナにおいては、ホログラム部材におけるホログラムシートは、熱可塑性樹脂材と接触している。ホログラムシートの両側に一対の表面保護シートが設けられている場合でも、ホログラムシートの端部が、熱可塑性樹脂材と接触している。このため、とりわけ上述した圧着工程において、熱可塑性樹脂材に含まれる可塑剤が、ホログラムシートの端部から干渉縞に侵入し得る。この可塑剤の侵入により、干渉縞が膨張するおそれがある。このため、熱可塑性樹脂材が侵入した部分において、図4に示すように、透過スペクトルのピーク波長が長波長側にシフトするおそれがある。
【0122】
図4は、端部が変色した一般的なコンバイナにおけるホログラムシートの透過スペクトルを示している。図4の透過スペクトルにおいて、透過率の低下(ピーク波長)に相当する光が、コンバイナ4のホログラムシート30で回折されている。図4において、実線部は、ホログラムシートの中心部の透過スペクトルを示し、破線部は、ホログラムシートの端部の透過スペクトルを示している。ここで、ピーク波長とは、透過率がピーク値(極小値を含む)を指すときの波長を意味する。また、ホログラムシートの中心部とは、平面視におけるホログラムシートの重心位置を意味し、ホログラムシートの端部とは、ホログラムシートの外周縁から1cm以内の位置を意味する。
本開示において、透過スペクトルの測定には、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K0115準拠品)等が用いられる。分光光度計により直線透過光を測定することで、平行光線透過率が得られる。
【0123】
図4に示すように、一般的なコンバイナにおいては、ホログラムシートの中心部における透過スペクトルのピーク波長とホログラムシートの端部における透過スペクトルのピーク波長との差Δλの絶対値が20nmよりも大きい。ここで、上記透過スペクトルは、80℃環境下における100時間の耐熱性試験に供した後のコンバイナについて、波長400nm以上780nm以下の範囲において測定される。この場合、ホログラムシートの中心部とホログラムシートの端部は、互いに異なる色味として視認され得る。すなわち、ホログラムシートの端部が変色して見えてしまう。
【0124】
これに対して本開示の一実施の形態のコンバイナでは、上記ピーク波長の差Δλの絶対値が、20nm以下である。このようなコンバイナは、例えば、上述したゲル分率を有するホログラムシート、または上述した感光性材料から形成されたホログラムシートを用いることにより製造できる。該ホログラムシートは、架橋密度が高いことから、熱可塑性樹脂材に含まれる可塑剤が、ホログラムシートの端部から干渉縞に侵入し、干渉縞が膨張することを抑制することができる。これにより、ホログラムシートの中心部における透過スペクトルのピーク波長とホログラムシートの端部における透過スペクトルのピーク波長との差Δλの絶対値を20nm以下に抑えることができる。この結果、ホログラムシートの変色を抑制することができる。
【0125】
ホログラムシート30は、一実施の形態において、複数の波長の光に対して回折効率のピークを有し、したがって透過スペクトルが複数のピークを有する。このような場合、上記Δλの絶対値は、各波長の光に関する回折効率のピークに対応する透過スペクトルのピーク波長における上記Δλの絶対値の平均値を意味する。
【0126】
以上において、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
【0127】
ここで、本件発明者等が実施した実験の一例について説明する。
【0128】
図5に示されたコンバイナ4のサンプル1~2を作製した。コンバイナ4は、基板10、基板12、熱可塑性樹脂材14、およびホログラム部材20を有していた。ホログラム部材20は、表面保護シート40、ホログラムシート30および表面保護シート42を有していた。サンプル1~2に係るコンバイナ4は、ホログラム部材20を熱可塑性樹脂材14内に配置した合わせガラスとした。
【0129】
基板10および基板12は、法線方向からの観察において、150mm×150mmの正方形形状とした。ホログラム部材20は、法線方向からの観察において、100mm×100mmの正方形形状とした。ホログラム部材20の周縁が、基板10および基板12の周縁から25mm内側に位置するように、ホログラム部材20を基板10および基板12に対して配置した。
【0130】
<サンプル1>
サンプル1において、基板10の法線方向に沿った厚みT1を2mmとした。基板10として青板ガラスを用いた。基板12の法線方向に沿った厚みT2を2mmとした。基板12として青板ガラスを用いた。熱可塑性樹脂材14として、ポリビニルブチラールと可塑化とを含有する樹脂材を用いた。ホログラム部材20と基板10との間における熱可塑性樹脂材14の厚みT3を380μmとした。ホログラム部材20と基板12との間における熱可塑性樹脂材14の厚みT4を380μmとした。
【0131】
ホログラムシート30は、以下に記載する感光性材料を用いて作製された。ホログラムシート30の厚みT6は、15μmであった。表面保護シート40および表面保護シート42は、ポリエチレンテレフタレート製シートとした。表面保護シート40の厚みT7は、50μmであった。表面保護シート42の厚みT8は、38μmであった。
【0132】
感光性材料として、ラジカル重合性モノマーとして(メタ)アクリレート化合物と、カチオン重合性モノマーとしてエポキシ化合物と、光重合開始剤と、バインダー樹脂として(メタ)アクリル樹脂とを含有する組成物を用いた。ラジカル重合性モノマーと、カチオン重合性モノマーと、バインダー樹脂との質量比は、約1:1:1であった。
【0133】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面上に、上記組成物を塗布し、100℃で10分間乾燥させ、厚み15μmの感光性材料層を形成した。感光性材料層に対してホログラフィ露光(RGBの3色記録)を行った。ホログラフィ露光を行った後、感光性材料層面における照射エネルギー量が1.2J/cmとなるように紫外線照射を感光性材料層全面に行い、さらに、80℃で10分間加熱処理を行った。このようにして、ホログラムシートを形成した。ホログラムシート上に、厚み38μmのPETフィルムをラミネートした。
形成されたホログラムシートのゲル分率は、45質量%であった。
【0134】
得られたコンバイナを、80℃環境下における100時間の耐熱性試験に供した。このコンバイナのホログラムシートの中心部における波長400nm以上780nm以下の範囲における透過スペクトルのピーク波長と、ホログラムシートの端部におけるピーク波長とを、分光光度計を用いて測定した。その結果、両者のピーク波長の差Δλの絶対値は、20nm以下であった。ホログラムシートを観察したところ、ホログラムシートの端部1cm幅程度の領域において、干渉縞の大きな乱れや変色は観察されなかった。
【0135】
<サンプル2>
感光性材料として、ラジカル重合性モノマーとしてウレタンアクリレート系モノマーと、光重合開始剤と、バインダー樹脂としてポリウレタンとを含有する組成物を用いた。この組成物を用い、ホログラフィ露光後に上記紫外線照射を行い、ただし上記加熱処理を行わなかった。このようにして得られたホログラムシートを用いたこと以外は、サンプル1の手順と同様に行った。
形成されたホログラムシートのゲル分率は、26質量%であった。
【0136】
得られたコンバイナを、80℃環境下における100時間の耐熱性試験に供し、次いで上記透過スペクトルを測定した。その結果、上記Δλの絶対値は、20nm超であった。ホログラムシートを観察したところ、ホログラムシートの端部1cm幅程度の領域において、干渉縞の乱れや変色が観察された。熱可塑性樹脂材から、可塑剤などの低分子量成分がホログラムシートの端部に浸透して干渉縞が乱れ、ホログラムシートの端部1cm幅程度の領域に再生光の変色が発生したものと推測される。
【0137】
以上述べた実施の形態によれば、ホログラムシートの変色を抑制することができる。
【0138】
以上において、いくつかの実施の形態とその変形例を説明してきたが、当然に、複数の実施の形態又は複数の変形例を少なくとも部分的に適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0139】
1:移動体、2:ヘッドアップディスプレイ、3:画像形成装置、4:コンバイナ、5:使用者、6:観察位置、10,12:基板、14:熱可塑性樹脂材、20:ホログラム部材、30:ホログラムシート、40,42:表面保護シート
図1
図2
図3
図4
図5