(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184041
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置による空中像の表示位置調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/60 20200101AFI20221206BHJP
G09F 19/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B30/60
G09F19/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091659
(22)【出願日】2021-05-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521039758
【氏名又は名称】株式会社kiwami
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 千早
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA55
2H199BA62
2H199BB20
(57)【要約】
【課題】 表示装置において、空中像をユーザの見やすい位置に表示する。
【解決手段】 表示装置10は、光学デバイス25を備えた表示部本体20と、支持部30とを備え、光学デバイス25は、端末40の画面40Sに表示された表示用画像を装置外に結像させ、空中像Iを表示する。表示部本体20は、支持部30の溝32A、32Bに沿ってスライド可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示用画像の光を空中に結像させる光学デバイスを設けた表示部本体と、
前記表示部本体を支持可能な支持部とを備え、
前記表示部本体が、前記支持部に対し、空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させる規定された方向に沿って、相対移動可能であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示部本体が、空中像の鉛直方向に沿った表示位置を装置前方側よりも装置後方側に大きく傾斜可能となるように、前記支持部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示部本体が、前記表示部本体の回転移動量に応じた移動量で空中像が回転するように、前記支持部に対して相対移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部本体が、前記表示部本体および前記支持部の少なくとも一方に設けられたガイド機構により規定された方向に沿って、スライド可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記支持部が、装置前後方向に沿った溝を設けた支持面を備え、
前記表示部本体が、前記溝に嵌まるガイドレールを設けた底面を備えることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示部本体が、表示用画像を表示可能な端末を、取り出し可能に本体内で支持し、
前記光学デバイスが、前記端末の画面に表示された表示用画像の光を本体外の空中に結像させるミラーを備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
表示用画像の光を空中に結像させるプレート状ミラーを設け、円弧状の凸面を底面として形成した表示部本体と、
前記底面の形状に応じた凹面を形成し、空中像の表示位置を定めるように前記表示部本体を支持可能な支持部とを備え、
前記表示部本体および前記支持部の少なくとも一方に、空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させる方向に案内するガイド機構が設けられ、
前記表示部本体が、前記ガイド機構によって規定された方向にスライド可能であることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記表示部本体が、表示用画像を表示可能な端末を、取り出し可能に本体内で支持することを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
表示用画像の光を空中に結像させるプレート状ミラーを設け、円弧状の凸面を底面として形成した表示部本体を、前記底面の形状に応じた凹面を形成し、空中像の表示位置を定めるように前記表示部本体を支持可能な支持部に搭載し、
空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させる方向に応じた前記表示部本体の移動方向を規定するガイド機構によって、前記表示部本体を前記支持部に対しスライドさせ、これによって、空中像の表示位置を調整することを特徴とする表示装置による空中像の表示位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、空中像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空中像を表示可能な表示装置では、ディスプレイ画面などに表示された画像をミラーなどの光学デバイスによって空中(空間)に結像させ、画像や映像を空中表示させることができる。例えば、直方体形状の表示装置として、筐体上面にミラーを配置し、筐体内の画面に表示された像の光をミラーに入射させる。ミラーによって像の光が筐体上で結像することにより、ユーザは空中像を視認することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3221631号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ポータブル型の表示装置の場合、ミラーなどの光学デバイスのサイズが制限されることによって、結像距離、空中像のサイズも制限される。これに伴い、視野角に影響される空中像の視認可能な範囲も制限され、ユーザの見る位置によって空中像を視認できない、あるいは視認困難な状況が生じやすい。
【0005】
したがって、空中像をユーザの見やすい位置に表示できることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である表示装置は、表示用画像の光を空中に結像させる光学デバイスを設けた表示部本体と、表示部本体を支持可能な支持部とを備える。表示装置は、デジタルサイネージ、自動受付機などに適用可能であり、様々なDX(デジタルトランスフォーメーション)の場を提供する方向に向けられている。
【0007】
本発明の表示部本体は、支持部に対し、規定された方向に相対移動可能である。その規定された方向は、空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させる方向に対応している。例えば、空中像の移動が回転移動となるように、表示部本体を相対移動させる構成にすることができる。
【0008】
表示部本体に、表示部本体および支持部の少なくとも一方にガイド機構を設けることが可能である。例えば、ガイド機構は、空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させるように、表示部本体を支持部材に対してスライドさせる構成にすればよい。
【0009】
空中像の鉛直方向に沿った表示位置を装置前方側よりも装置後方側に大きく傾斜可能となるように、支持部に対して表示部本体が相対移動する構成にすることができる。また、表示部本体が、前記表示部本体の回転移動量に応じた移動量で空中像が回転するように、前記支持部に対して相対移動可能に支持すればよい。例えば空中像を、その結像面から外れた位置を中心として回転移動させるように、表示部本体が支持部に対して相対移動する構成にすることができる。
【0010】
本発明の一態様である表示装置による空中像表示位置調整方法は、表示用画像の光を空中に結像させるプレート状ミラーを設け、円弧状の凸面を底面として形成した表示部本体を、底面の形状に応じた凹面を形成し、空中像の表示位置を定めるように表示部本体を支持可能な支持部に搭載する。そして、空中像の表示位置を装置前方側および装置後方側に傾斜させる方向に応じた表示部本体の移動方向を規定するガイド機構によって、表示部本体を支持部に対しスライドさせる。これによって、空中像の表示位置を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示装置において、空中像をユーザの見やすい位置に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】表示部本体20をスライドさせたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本実施形態である表示装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態である表示装置の斜視図を示し、
図2は、表示装置の側面図を示す。また、
図3は、表示装置の底面図を示す。
【0015】
表示装置10は、装置外の空間に空中像を表示可能な表示装置であり、自動受付機、デジタルサイネージなどに適用可能である。ユーザが所定の操作(空中入力操作など)を行うと、受付対応する(人の)キャラクター画像、あるいは商品紹介するキャラクター画像などを、空中像として表示することが可能である。
【0016】
表示装置10は、ここでは、スマートフォンなどの端末40に画像を表示させ、その画像を空中像として表示するように構成されている。表示装置10は、空中像を結像させる光学デバイス25を装備した表示部本体20と、表示部本体20を支持する支持部30とを備える。支持部30は、テーブルTなどに搭載可能である。
【0017】
表示部本体20は、本体前面となる傾斜面20Aに光学デバイス25を配置し、反対側に底面20Bを形成した筐体20Cを備える。底面20Bは、ここでは半円型(蒲鉾型)であり、表示部本体20の前方側には、端末挿入口20Fが形成されている。端末40は、表示部本体20に対して取り外し可能に装着可能であり、端末40の一方の端部を支持する支持部材(図示せず)によって本体内で保持され、位置決めされる。
【0018】
光学デバイス25は、端末40の画面40Sに表示される画像の光を表示部本体20の外部へ導き、結像面FPに結像させる。これによって、端末画面に表示された画像が、空中像Iとして空間表示される。ユーザは、例えば、あらかじめ表示用画像を画面表示させた状態で端末40を表示部本体20へ挿入することにより、所望する画像を空中像Iとして表示させることができる。端末40を遠隔操作することで、表示用画像を画面表示させてもよい。
【0019】
光学デバイス25は、公知のプレート状ミラーを適用することが可能である。ここでは、2面コーナーリフレクターアレイ構造をもつミラー、2直交面リフレクターなどの光学素子が配置可能である。光学デバイス25の縦横比、サイズなどは、端末40の画面サイズに応じて定められている。
【0020】
支持部30は、表示部本体20の円弧状底面20Bに応じた曲面で構成される凹面30Bを有し、表示部本体20は凹面30Bに搭載され、支持される。
図1,2の位置(姿勢)で表示部本体20が支持部30に搭載されたとき、空中像Iは、鉛直方向に沿って表示される。
【0021】
支持部30の凹面30Bには、一対の溝32A、32Bが、支持部30の幅方向端部付近に形成されている(
図3参照)。溝32A、32Bは互いに平行であって、装置前後方向に沿って延びるように形成されている。
【0022】
一方、表示部本体20の底面20Bには、底面20Bの曲面形状に沿った円弧状の一対のガイドレール22A、22Bが形成されている。ガイドレール22A、22Bは、支持部30の一対の溝32A、32Bの形成位置に合わせて形成され、支持部30の溝32A、32Bに嵌まるようなサイズに定められている。
【0023】
ガイドレール22A、22Bが一対の溝32A、32Bに嵌まることで、表示部本体20が支持部30によって保持され、位置決めされる。その一方で、ユーザによって表示部本体20に力が加えられると、表示部本体20は、支持部30に対し、装置前後方向にスライド(摺動)することができる。ここでは、支持部30の端末挿入口側を装置前方側、その逆を装置後方側としている。
【0024】
図4は、表示部本体20をスライドさせたときの側面図である。ユーザが表示部本体20の筐体20Cを上部後方側から押すと、表示部本体20は支持部30に対して装置(支持部30)の前方側へスライドする。その結果、光学デバイス25の位置が水平方向に近づくように移動し、空中像Iの表示位置が変化する。
【0025】
具体的には、空中像Iは、鉛直方向に沿った表示位置から、装置後方側へ傾斜する表示位置に移動する。表示部本体20の移動量が多くなるほど、空中像Iの表示位置もより後方側へ傾斜していく。一方、表示部本体20は、支持部30に対して装置前方側だけでなく後方側へもスライド可能であるため、空中像Iを装置後方側へ傾斜させることができる。
【0026】
上述したように、表示部本体20の底面20Bは断面円弧状の曲面で形成されている。そのため、表示部本体20が支持部30に対してスライドするとき、空中像Iの表示位置は、表示部本体20の回転移動に応じて回転し、空中像の回転移動量は、表示部本体20の回転移動量に応じた移動量となる。表示部本体20の回転移動中心は、底面20Bの曲率中心に従って定められ、結像面FP上から外れた位置にある。
【0027】
空中像Iの表示位置を前方側へ表示位置を移動(傾斜)させるように表示部本体20を回転させると、鉛直方向に沿った空中像Iの表示位置(
図4の破線参照)に対して空中像がより前方側へ突き出るように傾斜する。逆に、空中像Iの表示位置を後方側へ移動させるように表示部本体20を回転移動させると、空中像がより後方側へ突き出るように傾斜する。
【0028】
一般的に、空中像Iの視認できる範囲は、視野角(約40°)に依存し、ユーザの空中像Iを見る方向が少し逸れただけでも、空中像Iの視認が困難となる。特に、表示装置10をテーブルTに設置した場合、ユーザ個々の伸長差によって表示装置10の見る角度も相違する。
【0029】
ユーザは、表示部本体20に力を加えることによって、そのユーザにとって空中像Iが視認しやすい位置へ表示部本体20を前方側、あるいは後方側へスライドさせることができる。そして、ユーザが力を加えることを止めると、支持部30はその位置で表示部本体20を保持し、空中像の表示位置を定めるように支持(位置決め)することができる。
【0030】
表示部本体20は、上述したガイド機構によってその移動方向が規定されており、鉛直方向に沿った空中像Iの表示位置を基準として、像の上下関係を維持しながら空中像Iの表示位置を調整するようになっている。表示部本体20の移動方向を自在にするのではなく、規制することによって、空中像Iを視認しやすい表示位置へ適切かつ容易に誘導することが可能となる。
【0031】
特に、空中像Iの結像面から外れた位置を中心として、空中像Iを装置前方側、装置後方側へ回転移動するため、空中像Iの表示位置を微妙に調整することができる。また、ガイドレール22A、22Bが溝32A、32Bと摺動するスライド機構を採用しているため、力の作用を止めた位置で表示部本体20を自重により位置決めすることができる。
【0032】
図1,2に示すように、空中像Iを鉛直方向に沿って表示させたとき、比較的大きな傾斜角度で光学デバイス25が位置決めされるように、表示部本体20が支持部30に搭載されている。そのため、支持部30が表示部本体20を保持できる条件下において、表示部本体20の装置後方側への移動量の方が、装置前方側への移動量より多い。すなわち、空中像Iの鉛直方向に沿った表示位置を、装置前方側よりも装置後方側へ大きく移動させることができる。
【0033】
例えば、
図1のように表示装置10をテーブルTに設置した場合、ユーザが立った姿勢で表示装置10を見ると、表示部本体20を装置後方側(立たせる方向)へ大きくスライドさせる必要性が生じるが、このような状況においても、空中像Iをユーザの視認しやすい表示位置へ調整することができる。一方、表示装置10が比較的高い位置に設置している場合には、表示部本体20を装置前方側へ(寝かせる方向へ)スライドさせることにより、空中像Iを見やすい位置に表示させることができる。
【0034】
上述したスライド機構には限定されず、空中像Iを装置前方側、装置後方側へ傾斜させる方向へ案内するガイド機構であればよい。また、表示部本体20の移動可能な範囲も適宜変更すればよく、光学デバイス25の光学特性(結像させる位置)に応じて表示部本体と支持部との相対的な位置関係及びスライド可能な範囲を定めればよい。
【0035】
本実施形態の表示装置10は、端末40において表示用画像を表示させる構成であるが、あらかじめ表示部本体20内にディスプレイを備えるように構成してもよい。例えば、通信ネットワークを利用してディスプレイに表示用画像データを送信させ、空中像を表示させることも可能である。また、USBメモリなどの記憶媒体を表示部本体20に装着させて空中像Iを表示させてもよい。さらに、2次元画像ではなく、3次元画像を空中像として表示する光学系を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 表示装置
20 表示部本体
22A、22B ガイドレール
25 光学デバイス
30 支持部
32A、32B 溝
40 端末