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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184051
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20221206BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20221206BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/02 A
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091672
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 知巳
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB01
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA43
4E168JA12
5F063AA26
5F063BA45
5F063CB03
5F063CB07
5F063DD27
5F063DD31
5F063DE14
5F063DE23
5F063DE33
5F063DE34
(57)【要約】
【課題】タクトアップを実現し、且つ、内部観察部による観察不良の低減が可能なレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、ステージ2と、レーザ加工ヘッド3と、レーザ加工ヘッド3に設けられたアライメント用カメラ5,6と、透過光I1を対象物20に集光させる透過光集光レンズ43を有し透過光I1により対象物20の内部を観察する内部観察ユニット4と、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる第1鉛直移動機構7Aと、Z方向に沿って内部観察ユニット4を移動させる第2鉛直移動機構7Bと、水平方向に沿ってステージ2を移動させる第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bと、第1鉛直移動機構7A、第2鉛直移動機構7B、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記対象物に対して前記レーザ光を照射する照射部と、
前記照射部に設けられ、前記対象物における前記レーザ光の集光位置の位置合わせに用いられる情報を取得する情報取得部と、
前記対象物に透過性を有する透過光を前記対象物に集光させる透過光集光レンズを有し、前記透過光により前記対象物の内部を観察する内部観察部と、
鉛直方向に沿って前記照射部を前記情報取得部と共に移動させる第1鉛直移動機構と、
鉛直方向に沿って前記内部観察部及び前記透過光集光レンズの少なくとも何れかを移動させる第2鉛直移動機構と、
水平方向に沿って前記支持部を移動させる水平移動機構と、
少なくとも前記第1鉛直移動機構、前記第2鉛直移動機構及び前記水平移動機構の動作を制御する制御部と、を備える、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記水平移動機構は、
第1水平方向に沿って前記支持部を移動させる第1水平移動機構と、
前記第1水平方向に直交する第2水平方向に沿って前記支持部を移動させる第2水平移動機構と、を有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1鉛直移動機構は、第1ベース部に設けられた第1鉛直軸を有しており、前記照射部を前記第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、
前記第2鉛直移動機構は、前記第1ベース部に対して前記第1水平方向に離間する第2ベース部に設けられた第2鉛直軸を有しており、前記内部観察部を前記第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させる、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1鉛直移動機構は、第1ベース部における前記第1水平方向の一方側に設けられた第1鉛直軸を有しており、前記照射部を前記第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、
前記第2鉛直移動機構は、前記第1ベース部における前記第1水平方向の他方側に設けられた第2鉛直軸を有しており、前記内部観察部を前記第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させる、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1鉛直移動機構は、第1ベース部に設けられた第1鉛直軸を有しており、前記照射部を前記第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、
前記第2鉛直移動機構は、前記第1ベース部に対して前記第2水平方向に離間する第2ベース部に設けられた第2鉛直軸を有しており、前記内部観察部を前記第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させる、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記照射部及び前記内部観察部は、水平方向に移動不能に構成されている、請求項1~5の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記支持部は、鉛直方向に沿う回転軸を中心に回転可能に構成されている、請求項1~5の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記情報取得部は、前記対象物に光を照射し、前記対象物から戻る当該光を受光することで、前記レーザ光の集光位置の位置合わせに用いられる情報を取得する、請求項1~7の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記情報取得部で取得した情報に基づいて前記水平移動機構により前記支持部を前記水平方向に沿って移動させ、前記レーザ光の集光位置を前記対象物における所定位置に位置合わせすると共に、当該位置合わせのときの前記支持部の位置情報に関するアライメント情報を取得する処理と、
前記内部観察部により前記対象物の内部を観察する場合に、前記アライメント情報と前記照射部に対する前記内部観察部の位置関係に関する位置補正情報とに基づいて前記水平移動機構により前記支持部を水平方向に沿って移動させ、前記透過光集光レンズの光軸を前記対象物における前記所定位置に合わせる処理と、を実行する、請求項1~8の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記照射部は、前記レーザ光を前記対象物に集光させるレーザ光集光レンズを有し、
前記制御部は、
前記支持部に支持されたテスト用対象物の基準位置が前記レーザ光集光レンズの光軸上に位置するように、前記水平移動機構により前記支持部を前記水平方向に沿って移動させると共に、当該移動後の前記支持部の位置情報である第1情報を取得する処理と、
前記支持部に支持された前記テスト用対象物の基準位置が前記透過光集光レンズの光軸上に位置するように、前記水平移動機構により前記支持部を前記水平方向に沿って移動させると共に、当該移動後の前記支持部の位置情報である第2情報を取得する処理と、
前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記位置補正情報を取得する処理と、を実行する、請求項9に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物にレーザ光を照射することにより、対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置が知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッド(照射部)と、レーザ光の集光位置のアライメント(位置合わせ)に用いられる画像を撮像する撮像ユニット(情報取得部)と、対象物に透過性を有する透過光により対象物の内部を撮像する撮像ユニット(内部観察部)と、を備えたレーザ加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-055030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置では、情報取得部と内部観察部とが、同じ移動機構(鉛直軸)によって鉛直方向にともに移動する。そのため、内部観察部による観察の際に内部観察部を鉛直方向に沿って移動させると、その重量が大きいために振動が大きくなり、観察不良が生じる可能性ある。また、情報取得部及び内部観察部の何れか一方が作動中の場合には、何れか他方は鉛直方向に移動することができず、タクト(作業効率)が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、タクトアップを実現し、且つ、内部観察部による観察不良の低減が可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより、対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、支持部に支持された対象物に対してレーザ光を照射する照射部と、照射部に設けられ、対象物におけるレーザ光の集光位置の位置合わせに用いられる情報を取得する情報取得部と、対象物に透過性を有する透過光を対象物に集光させる透過光集光レンズを有し、透過光により対象物の内部を観察する内部観察部と、鉛直方向に沿って照射部を情報取得部と共に移動させる第1鉛直移動機構と、鉛直方向に沿って内部観察部及び透過光集光レンズの少なくとも何れかを移動させる第2鉛直移動機構と、水平方向に沿って支持部を移動させる水平移動機構と、少なくとも第1鉛直移動機構、第2鉛直移動機構及び水平移動機構の動作を制御する制御部と、を備える。
【0007】
このレーザ加工装置では、情報取得部と内部観察部及び透過光集光レンズの少なくとも何れかとが、互いに別の移動機構によって鉛直方向にそれぞれ移動可能である。これにより、内部観察部による観察の際に鉛直方向に移動させる重量を低減して振動を抑えることができる。また、情報取得部及び内部観察部の何れか一方が作動中でも何れか他方を鉛直方向に移動することができる。したがって、本発明によれば、タクトアップを実現し、且つ、内部観察部による観察不良の低減が可能となる。
【0008】
本発明に係るレーザ加工装置では、水平移動機構は、第1水平方向に沿って支持部を移動させる第1水平移動機構と、第1水平方向に直交する第2水平方向に沿って支持部を移動させる第2水平移動機構と、を有していてもよい。この場合、第1水平方向及び第2水平方向に支持部を移動させることで、照射部による対象物のレーザ光照射位置、情報取得部による対象物の情報取得位置、及び内部観察部による対象物の観察位置を、第1水平方向及び第2水平方向に移動させることが可能となる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置では、第1鉛直移動機構は、第1ベース部に設けられた第1鉛直軸を有しており、照射部を第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、第2鉛直移動機構は、第1ベース部に対して第1水平方向に離間する第2ベース部に設けられた第2鉛直軸を有しており、内部観察部を第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させてもよい。この場合、第2水平方向においてコンパクトな装置構成を実現することができる。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置では、第1鉛直移動機構は、第1ベース部における第1水平方向の一方側に設けられた第1鉛直軸を有しており、照射部を第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、第2鉛直移動機構は、第1ベース部における第1水平方向の他方側に設けられた第2鉛直軸を有しており、内部観察部を第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させてもよい。この場合、第1鉛直軸及び第2鉛直軸を設けるベース部を共用した装置構成を実現することができる。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置では、第1鉛直移動機構は、第1ベース部に設けられた第1鉛直軸を有しており、照射部を第1鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させ、第2鉛直移動機構は、第1ベース部に対して第2水平方向に離間する第2ベース部に設けられた第2鉛直軸を有しており、内部観察部を第2鉛直軸に沿って鉛直方向に移動させてもよい。この場合、第1水平方向においてコンパクトな装置構成を実現することができる。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置では、照射部及び内部観察部は、水平方向に移動不能に構成されていてもよい。この場合、情報取得部及び内部観察部が水平方向に移動しないことから、当該移動に伴う振動の発生を回避することができる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置では、支持部は、鉛直方向に沿う回転軸を中心に回転可能に構成されていてもよい。この場合、支持部を回転させることで、照射部による対象物のレーザ光照射位置、情報取得部による対象物の情報取得位置、及び内部観察による対象物の観察位置を、鉛直方向に沿う回転軸を中心とする回転方向に移動させることが可能となる。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、情報取得部は、対象物に光を照射し、対象物から戻る当該光を受光することで、レーザ光の集光位置の位置合わせに用いられる情報を取得してもよい。この場合、レーザ光の集光位置の位置合わせに用いられる情報の取得を、具体的に実現することができる。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、情報取得部で取得した情報に基づいて水平移動機構により支持部を水平方向に沿って移動させ、レーザ光の集光位置を対象物における所定位置に位置合わせすると共に、当該位置合わせのときの支持部の位置情報に関するアライメント情報を取得する処理と、内部観察部により対象物の内部を観察する場合に、アライメント情報と照射部に対する内部観察部の位置関係に関する位置補正情報とに基づいて水平移動機構により支持部を水平方向に沿って移動させ、透過光の集光位置を対象物における所定位置に合わせる処理と、を実行してもよい。これにより、レーザ光の集光位置を所定位置へ位置合わせすると共に、そのときのアライメント情報を、内部観察部による観察に共用することができる。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置では、照射部は、レーザ光を対象物に集光させるレーザ光集光レンズを有し、制御部は、支持部に支持されたテスト用対象物の基準位置がレーザ光集光レンズの光軸上に位置するように、水平移動機構により支持部を水平方向に沿って移動させると共に、当該移動後の支持部の位置情報である第1情報を取得する処理と、支持部に支持されたテスト用対象物の基準位置が透過光集光レンズの光軸上に位置するように、水平移動機構により支持部を水平方向に沿って移動させると共に、当該移動後の支持部の位置情報である第2情報を取得する処理と、第1情報及び第2情報に基づいて、位置補正情報を取得する処理と、を実行してもよい。この場合、位置補正情報を具体的に取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タクトアップを実現し、且つ、内部観察部による観察不良の低減が可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実行形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
図2図2は、図1の対象物を示す平面図である。
図3図3は、図2の対象物の一部分を示す断面図である。
図4図4は、図1のレーザ加工ヘッドを示す構成図である。
図5図5は、図1の内部観察ユニットを示す構成図である。
図6図6は、図1のレーザ加工装置における動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、図1のレーザ加工装置によるXYθ補正情報の取得処理を示すフローチャートである。
図8図8は、テスト用対象物を示す平面図である。
図9図9は、図1のレーザ加工装置による補正係数取得処理を示すフローチャートである。
図10図10は、補正係数用対象物を示す側面図である。
図11図11は、第2実行形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
図12図12は、第3実行形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細を説明する。なお、各図の説明において、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X軸、Y軸、及び、Z軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。一例として、X方向及びY方向は、互いに交差(直交)する第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に交差(直交)する鉛直方向である。
【0020】
[第1実施形態]
図1に示されるように、第1実施形態に係るレーザ加工装置1は、ステージ(支持部)2と、レーザ加工ヘッド3(照射部)と、アライメント用カメラ(情報取得部)5,6と、内部観察ユニット(内部観察部)4と、第1鉛直移動機構7Aと、第2鉛直移動機構7Bと、第1水平移動機構(水平移動機構)8Aと、第2水平移動機構(水平移動機構)8Bと、制御部9と、GUI(Graphical User Interface)10と、を備える。レーザ加工装置1は、対象物20にレーザ光Lを照射することにより、対象物20に改質領域12(図4参照)を形成する装置である。
【0021】
図2及び図3に示されるように、対象物20は、例えばウェハである。対象物20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。半導体基板21は、表面21a及び裏面21bを有する。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含む。機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、対象物20は機能素子層22を有していても有していなくてもよく、ベアウェハであってもよい。半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0022】
対象物20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、対象物20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、対象物20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実行形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
【0023】
図1に示されるように、ステージ2上には、対象物20が載置される。ステージ2は、例えば対象物20を吸着することにより、対象物20を支持する。ステージ2は、第1水平移動機構8AによりX方向に沿って移動可能である。ステージ2は、第2水平移動機構8BによりY方向に沿って移動可能である。ステージ2は、Z方向に沿う回転軸を中心に回転可能に構成されている。ステージ2は、モータ等の公知の回転駆動装置(不図示)を有し、その駆動力により回転軸を中心回転駆動される。ステージ2の回転(回転駆動装置の動作)は、制御部9により制御される。
【0024】
図1及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド3は、ステージ2に支持された対象物20に対して透過性を有するレーザ光Lを照射する。レーザ加工ヘッド3は、対象物20の内部にレーザ光Lを集光する。ステージ2に支持された対象物20の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光位置(集光領域の少なくとも一部)に対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物20の内部に改質領域12が形成される。
【0025】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延び易いという特性を有している。このような改質領域12の特性は、対象物20の切断に利用される。
【0026】
レーザ加工ヘッド3は、レーザ光集光レンズ33及び観察カメラ35を筐体H3内に有する。レーザ加工ヘッド3の筐体H3内には、外部の光源31からレーザ光Lが入射される。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。レーザ光集光レンズ33は、レーザ光Lをステージ2に支持された対象物20に集光する。レーザ加工ヘッド3では、光源31から入射されたレーザ光Lは、筐体H3内においてダイクロイックミラー32を介してレーザ光集光レンズ33に入射し、レーザ光集光レンズ33により対象物20に集光される。レーザ光集光レンズ33は、複数の対物レンズを含むレンズユニットであってもよい。筐体H3は、その側面に設けられた取付部39を含み、この取付部39を介して後述の第1鉛直移動機構7Aに接続されて支持されている。
【0027】
観察カメラ35は、ステージ2に支持された対象物20を可視光Vにより撮像する。観察カメラ35は、可視光源36から出射した可視光Vによる対象物20の像を撮像する。具体的には、可視光源36から出射した可視光Vは、ダイクロイックミラー37で反射され、ダイクロイックミラー32を透過した後、レーザ光集光レンズ33を介して対象物20に照射される。当該可視光Vは、対象物20のレーザ光入射面で反射され、レーザ光集光レンズ33及びダイクロイックミラー32,37を透過し、レンズ38を介して観察カメラ35で受光される。可視光Vの光路上には、可視光Vに目盛り線を付与するレチクル(不図示)が設けられていてもよい。観察カメラ35は、制御部9に接続されている。観察カメラ35は、撮像した可視画像を制御部9に出力する。観察カメラ35としては、特に限定されず、要求される性能を満たしていれば、公知の種々のカメラを用いることができる。
【0028】
アライメント用カメラ5,6は、対象物20におけるレーザ光Lの集光位置の位置合わせ(以下、単に「アライメント」ともいう)に用いられる情報を取得する。アライメント用カメラ5,6は、光を対象物20に照射し、対象物20から戻る当該光を検出することで、アライメントに用いられる情報として画像を取得する。アライメント用カメラ5,6は、ステージ2に支持された対象物20を、により撮像する。
【0029】
例えばアライメント用カメラ5は、レーザ光入射面である裏面21b側から光を対象物20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また例えば、アライメント用カメラ5は、同様に、裏面21b側から光を対象物20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12の形成位置から戻る光を検出することにより、改質領域12を含む領域の画像を取得する。これらの画像は、アライメントに用いられる。アライメント用カメラ6は、そのレンズがより低倍率である点を除いて、アライメント用カメラ5と同様の構成を備える。アライメント用カメラ6は、アライメント用カメラ5と同様にアライメントに用いられる。
【0030】
アライメント用カメラ5,6は、レーザ加工ヘッド3に設けられ、レーザ加工ヘッド3と一体で移動する。図示する例では、アライメント用カメラ5,6は、レーザ加工ヘッド3の取付部39に固定されている。アライメント用カメラ5,6は、制御部9に接続されている。アライメント用カメラ5,6は、撮像した画像を制御部9に出力する。アライメント用カメラ5,6としては、特に限定されず、要求される性能を満たしていれば、公知の種々のカメラを用いることができる。
【0031】
図1及び図5に示されるように、内部観察ユニット4は、透過光により対象物20の内部を観察する。内部観察ユニット4は、対象物20に透過光を照射し、対象物20から戻る当該透過光を検出することで、対象物20の内部を観察する。例えば内部観察ユニット4は、対象物20に形成された改質領域12及び改質領域12から延びた亀裂14の先端を撮像する。
【0032】
図5に示されるように、内部観察ユニット4は、光源41と、ミラー42と、透過光集光レンズ43と、光検出部44と、を筐体H4内に有する。光源41は、半導体基板21透過性を有する透過光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の透過光I1を出力する。光源41から出力された透過光I1は、ミラー42によって反射されて透過光集光レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側から対象物20に照射される。透過光集光レンズ43は、透過光I1を半導体基板21に集光させるレンズである。透過光集光レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された透過光I1を通過させる。
【0033】
光検出部44は、透過光集光レンズ43及びミラー42を透過した透過光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の透過光I1を検出する。筐体H4は、その側面に設けられた取付部49を含み、この取付部49を介して後述の第2鉛直移動機構7Bに接続されて支持されている。内部観察ユニット4は、制御部9に接続されている。内部観察ユニット4は、撮像した画像(内部画像)を制御部9に出力する。内部観察ユニット4としては、特に限定されず、要求される性能を満たしていれば、公知の種々のカメラを用いることができる。
【0034】
図1に示されるように、第1鉛直移動機構7Aは、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる機構である。第1鉛直移動機構7Aは、柱状の第1ベース部75に設けられた第1鉛直軸71を有する。第1ベース部75は、例えば設置面等に固定されている。第1鉛直軸71は、Z方向に沿って延在する。第1鉛直軸71には、レーザ加工ヘッド3の取付部39がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1鉛直移動機構7Aは、不図示の駆動源の駆動力により、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸71に沿ってZ方向に移動させる。第1鉛直移動機構7Aとしては、特に限定されず、レーザ加工ヘッド3をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0035】
第2鉛直移動機構7Bは、Z方向に沿って内部観察ユニット4を移動させる機構である。第2鉛直移動機構7Bは、例えば設置面等に固定された柱状の第2ベース部76に設けられた第2鉛直軸72を有する。第2ベース部76は、第1ベース部75に対してX方向に離間する。例えば第1ベース部75に対する第2ベース部76の離間距離は、レーザ加工ヘッド3のX方向の幅以上である。
【0036】
第2鉛直軸72は、Z方向に沿って延在する。第2鉛直軸72には、内部観察ユニット4の取付部49がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第2鉛直移動機構7Bは、不図示の駆動源の駆動力により、内部観察ユニット4を第2鉛直軸72に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構7Bとしては、特に限定されず、内部観察ユニット4をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0037】
第1水平移動機構8Aは、X方向に沿ってステージ2を移動させる機構である。第1水平移動機構8Aは、例えば設置面等に固定された第1水平軸81を有する。第1水平軸81は、X方向に沿って延在する。第1水平軸81には、第2水平移動機構8Bを介してステージ2がX方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1水平移動機構8Aは、不図示の駆動源の駆動力により、ステージ2及び第2水平移動機構8Bを第1水平軸81に沿ってX方向に移動させる。第1水平移動機構8Aとしては、特に限定されず、ステージ2をX方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0038】
第2水平移動機構8Bは、Y方向に沿ってステージ2を移動させる機構である。第2水平移動機構8Bは、例えば第1水平移動機構8A上に設けられた第2水平軸82を有する。第2水平軸82は、Y方向に沿って延在する。第2水平軸82には、ステージ2がY方向に沿って移動可能に取り付けられている。第2水平軸82は、ステージ2と共に第1水平軸81に沿って移動可能である。このような第2水平移動機構8Bは、不図示の駆動源の駆動力により、ステージ2を第2水平軸82に沿ってY方向に移動させる。第2水平移動機構8Bとしては、特に限定されず、ステージ2をY方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0039】
制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。制御部9は、レーザ加工装置1の各種の動作を制御する。制御部9は、ステージ2の回転駆動装置、レーザ加工ヘッド3、アライメント用カメラ5,6、内部観察ユニット4、第1鉛直移動機構7A、第2鉛直移動機構7B、第1水平移動機構8A、第2水平移動機構8B及びGUI10の動作を制御する。
【0040】
制御部9は、アライメント用カメラ5,6で取得した情報に基づいてアライメントを実行させると共に、アライメントのときのステージ2の位置情報に関するアライメント情報を取得する処理を実行する。ステージ2の位置情報は、例えばX方向、Y方向及びθ方向(ステージ2の回転軸周りの回転方向)におけるステージ2の位置に関する情報である。
【0041】
制御部9は、内部観察ユニット4により対象物20の内部を観察する場合に、アライメント情報とXYθ補正情報(位置補正情報)とに基づいてステージ2を移動させ、透過光I1の集光位置を対象物20におけるアライメント位置(アライメント時のレーザ光Lの集光位置)に合わせる処理を実行する。XYθ補正情報は、レーザ加工ヘッド3に対する内部観察ユニット4の位置関係に関する情報である。例えばXYθ補正情報は、レーザ加工ヘッド3のレーザ光集光レンズ33の光軸が対象物20の中心に位置するときのステージ2のX方向、Y方向及びθ方向の位置に対する、内部観察ユニット4の透過光集光レンズ43の光軸が対象物20の当該中心に位置するときのステージ2のX方向、Y方向及びθ方向の位置の差異に対応する。
【0042】
制御部9は、ステージ2に支持されたテスト用対象物の基準位置がレーザ光集光レンズ33の光軸上に位置するように、ステージ2の回転駆動装置、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bによってステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させると共に、当該移動後のステージ2の位置情報である第XYθ情報(第1情報)を取得する処理を実行する。制御部9は、ステージ2に支持されたテスト用対象物の基準位置が透過光集光レンズ43の光軸上に位置するように、ステージ2の回転駆動装置、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bによってステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させると共に、当該移動後のステージ2の位置情報である第2XYθ情報(第2情報)を取得する処理を実行する。制御部9は、第1XYθ情報及び第2XYθ情報に基づいて、XYθ補正情報を取得する処理を実行する。制御部9の処理の詳細については後述する。
【0043】
GUI10は、各種の情報を表示する。GUI10は、内部観察ユニット4の撮像結果、及び、アライメント用カメラ5,6の撮像結果を表示する。GUI10は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI10には、ユーザのタッチ等の操作により、加工条件等に関する各種の設定が入力される。
【0044】
レーザ加工装置1では、一例として、半導体基板21の裏面21b側から対象物20にレーザ光Lを照射すると共に、ステージ2をライン15に沿って移動させ、対象物20に対してレーザ光Lの集光位置(集光点)をライン15に沿って相対的に移動させることにより、複数の改質スポットがライン15に沿って並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物20に対する集光位置の相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。本実行形態では、図4に示されるように、ライン15に沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12a,12bを形成する。2列の改質領域12a,12bは、対象物20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12a,12bは、半導体基板21に対して2つの集光位置Cがライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。
【0045】
レーザ加工装置1では、上述したように、レーザ加工ヘッド3の筐体H3が第1鉛直移動機構7AでZ方向に移動可能に支持されており、これにより、レーザ加工ヘッド3及びレーザ加工ヘッド3に設けられたアライメント用カメラ5,6は、Z方向に移動可能で、且つ、X方向及びY方向には移動不能に構成される。レーザ加工装置1では、上述したように、内部観察ユニット4の筐体H4が第2鉛直移動機構7BでZ方向に移動可能に支持されており、これにより、内部観察ユニット4は、Z方向に移動可能で、且つ、X方向及びY方向には移動不能に構成される。
【0046】
次に、レーザ加工装置1の動作の一例について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、起動後、各装置のウォームアップ及びキャリブレーションを行った後、不図示のロボットアームによりステージ2上に対象物20を載置し、対象物20をステージ2上に吸着させる(ステップS1)。
【0048】
続いて、アライメントを行う(ステップS2)。ステップS2では、制御部9により、アライメント用カメラ5又はアライメント用カメラ6で取得された画像(例えば、対象物20が有する機能素子層22の像)に基づいて第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、レーザ光Lの集光位置がアライメント位置に合うようにX方向及びY方向に沿ってステージ2を移動させる。例えばアライメント位置は、Z方向から見てライン15上の加工開始位置(所定位置)である。また、ステップS2では、アライメント時のステージ2の位置情報を、アライメント情報として取得する。
【0049】
続いて、ハイトセットを行う(ステップS3)。ステップS3では、制御部9により、観察カメラ35によって取得された可視画像(例えば、対象物20のレーザ光入射面の像)に基づいて第1鉛直移動機構7Aの動作を制御し、レーザ光Lの集光位置がレーザ光入射面上に位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3(すなわち、レーザ光集光レンズ33)を移動させる。続いて、制御部9により第1鉛直移動機構7Aの動作を制御し、ハイトセット時の位置を基準としてレーザ光Lの集光位置がレーザ光入射面から所定深さに位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3を移動させる。
【0050】
続いて、制御部9により、レーザ加工ヘッド3からのレーザ光LのON/OFF、並びに、第1水平移動機構8A、第2水平移動機構8B及びステージ2の回転駆動装置の動作を適宜制御し、レーザ光Lの集光位置が複数のライン15に沿って相対的に移動するようにステージ2を移動させる。これにより、複数のライン15に沿って対象物20の内部に改質領域12を形成する(ステップS4)。
【0051】
続いて、対象物20の内部観察を行う。対象物20の内部観察では、制御部9によりステージ2の回転駆動装置、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、内部観察ユニット4による内部観察の開始位置に対象物20が位置するようにステージ2を移動させる(ステップS5)。ステップS5では、上記ステップS2で取得したアライメント情報と予め設定されたXYθ補正情報とに基づいて、対象物20のアライメント位置(ここでは、ライン15上の加工開始位置)に透過光集光レンズ43の光軸が合うように、X方向、Y方向及びθ方向における対象物20の位置を制御する。
【0052】
続いて、内部観察ユニット4により対象物20の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS6)。ステップS6では、例えば各ライン15の少なくとも一箇所において、制御部9の制御のもと、内部観察ユニット4により次の内部観察処理を実行する。すなわち、第2鉛直移動機構7BによりZ方向に沿って内部観察ユニット4を移動させ、対象物20の内部の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して内部観察ユニット4の移動量に関する情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。このような撮像データの取得を、同じライン15上又は別のライン15上の他の箇所に透過光集光レンズ43の光軸を合わせて繰り返す。
【0053】
続いて、制御部9により、取得した撮像データに基づいて加工状態を判定する(ステップS7)。ステップS7では、一例として、画像認識によって複数の撮像データにおける内部画像のうち亀裂14の像が相対的に鮮明な何れかを自動的に判定する(AI判定を行う)。制御部9は、判定した当該内部画像を撮像したときの移動量に基づいて亀裂位置を算出する。亀裂位置は、例えば、予め設定された所定の補正係数を移動量に乗じることにより算出できる。補正係数については、後述する。また、制御部9は、取得された亀裂位置等に基づいて、改質領域12の位置等を推定する。続いて、制御部9は、上記ステップS7で判定した判定結果を任意の記憶装置に保存する。制御部9により、上記ステップS7で判定した判定結果をGUI10に表示させる(ステップS8)。以上により、処理を終了する。
【0054】
次に、XYθ補正情報の取得例について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
上述のステップS1~S8の処理に先だって、次のXYθ補正情報の取得処理を実行する。まず、不図示のロボットアームによりステージ2上にテスト用対象物を載置し、テスト用対象物をステージ2上に吸着させる(ステップS11)。図8に示されるように、テスト用対象物20Tは、例えば円板状の半導体基板121を含み、半導体基板121の主面には、中心125を通り且つ周方向に八等分する切欠き等の指示線122が形成されている。
【0056】
制御部9により、レーザ加工ヘッド3の観察カメラ35で取得された可視画像に基づいて、ステージ2の回転駆動装置、第1鉛直移動機構7A、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、レーザ光集光レンズ33の光軸上にテスト用対象物20Tの基準位置(例えば中心125)が位置するように、θ方向、X方向、Y方向及びZ方向に沿ってステージ2を移動させる(ステップS12)。このときのステージ2の位置情報を、第1XYθ情報として取得する(ステップS13)。
【0057】
制御部9により、内部観察ユニット4で取得された画像に基づいて、ステージ2の回転駆動装置、第2鉛直移動機構7B、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、透過光集光レンズ43の光軸上にテスト用対象物20Tの基準位置が位置するように、θ方向、X方向、Y方向及びZ方向に沿ってステージ2を移動させる(ステップS14)。このときのステージ2の位置情報を、第2XYθ情報として取得する(ステップS15)。そして、第1XYθ情報と第2XYθ情報との差分から、XYθ補正情報を取得する(ステップS16)。
【0058】
なお、別例として、アライメント用カメラ5,6とレーザ加工ヘッド3の観察カメラ35との座標が紐づけられ、且つ、アライメント用カメラ5,6と内部観察ユニット4との座標も紐づけられている一方で、レーザ加工ヘッド3の観察カメラ35と内部観察ユニット4との座標が直接的には紐づけられていない場合がある。この場合は、アライメント用カメラ5,6を基準として、間接的に、レーザ加工ヘッド3の観察カメラ35と内部観察ユニット4との座標が紐づけられているという状態になる。
【0059】
次に、内部観察ユニット4による内部観察で用いられる補正係数の取得例について、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
上述のステップS1~S8の処理に先だって、次の補正係数取得処理を実行する。まず、不図示のロボットアームによりステージ2上に補正係数用対象物を載置し、補正係数用対象物をステージ2上に吸着させる(ステップS21)。制御部9により、ステージ2の回転駆動装置、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、制御部補正係数用対象物を内部観察ユニット4の透過光集光レンズ43の下部に移動させる。
【0061】
図10は、補正係数用対象物60を示す側面図である。図10に示されるように、補正係数用対象物60は、裏面60bと、裏面60bの反対側の表面60aと、を含む。補正係数用対象物60には、レーザ加工によって、裏面60b及び表面60aに沿ったX方向に配列された改質領域12及び改質領域12から延びる亀裂が形成されている。特に、補正係数用対象物60は、改質領域12から、Z方向及びX方向に交差する方向に沿って延びる亀裂14が形成されている。補正係数用対象物60では、Z方向に並ぶように複数列の改質領域12が形成されている。
【0062】
補正係数用対象物60には、改質領域12が露出するように切断面が形成されており、改質領域12のそれぞれのZ方向の位置は、例えば亀裂14の位置として、当該切断面の観察により実測されて既知である。この既知の実測値は、制御部9が保持していてもよいし、制御部9がアクセス可能な任意の記憶装置に保持されていてもよい。
【0063】
続いて、透過光I1によって補正係数用対象物60の撮像を行う(ステップS22)。ステップS22では、内部観察ユニット4の制御により、改質領域12から延びる亀裂のうちのZ方向及びX方向に交差する方向に沿って延びる亀裂14を透過光I1により撮像する。ステップS2では、制御部9が、内部観察ユニット4及び第2鉛直移動機構7Bを制御することにより、透過光I1を補正係数用対象物60の裏面60bから入射させると共に、Z方向に沿って内部観察ユニット4を移動させて透過光I1の集光位置をZ方向に沿って移動させ、補正係数用対象物60の内部の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて複数回にわたって補正係数用対象物60を撮像する。これにより、複数の内部画像を取得する。なお、ステップS22では、内部画像の輝度値を調整しながら、及び、観察領域に応じて当該内部画像をシェーディングしながら、補正係数用対象物60の撮像を行ってもよい。
【0064】
続いて、内部画像に関する撮像データが保存される(ステップS23)。ステップS23では、内部画像のそれぞれに対して、その移動量に関する情報が関連付けられて撮像データとして保存される。続いて、制御部9が撮像データを入力する(ステップS24)。そして、制御部9が、亀裂14の形成状態を判定する(ステップS25)。ここでは、一例として、制御部9が、画像認識によって、複数の内部画像のうち、亀裂の像が相対的に鮮明な内部画像を自動的に判定する(AI判定を行う)。
【0065】
続いて、制御部9により補正係数を導出する(ステップS26)。ステップS26では、制御部9は、Z方向に並ぶ複数の改質領域12のそれぞれについて、移動量に補正係数を乗じた値である改質領域12の位置の測定値が対応する実測値となるように、補正係数を導出する。換言すれば、制御部9は、補正係数=実測値/移動量として、補正係数を導出する。その後、制御部9は、導出した補正係数を示すデータを保存し(ステップS27)、処理を終了する。
【0066】
以上、レーザ加工装置1では、アライメント用カメラ5,6と内部観察ユニット4とが、互いに別の移動機構によってZ方向にそれぞれ移動可能である。これにより、内部観察ユニット4による観察の際にZ方向に移動させる重量を低減して振動を抑えることができる。当該振動の静定にかかる時間を低減できる。また、アライメント用カメラ5,6及び内部観察ユニット4の何れか一方が作動中でも何れか他方をZ方向に移動することができる。したがって、レーザ加工装置1によれば、タクトアップを実現し、且つ、内部観察ユニット4による観察不良の低減が可能となる。
【0067】
レーザ加工装置1は、X方向に沿ってステージ2を移動させる第1水平移動機構8Aと、Y方向に沿ってステージ2を移動させる第2水平移動機構8Bと、を有する。この場合、X方向及びY方向にステージ2を移動させることで、レーザ加工ヘッド3による対象物20のレーザ光照射位置(レーザ光Lの集光位置)、アライメント用カメラ5,6による対象物20の撮像位置(情報取得位置)、及び、内部観察ユニット4による対象物20の観察位置を、X方向及びY方向に移動させることが可能となる。
【0068】
レーザ加工装置1では、第1鉛直移動機構7Aは、第1ベース部75に設けられた第1鉛直軸71を有しており、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸71に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構7Bは、第1ベース部に対してX水平方向に離間する第2ベース部76に設けられた第2鉛直軸72を有しており、内部観察ユニット4を第2鉛直軸72に沿ってZ方向に移動させる。この場合、Y方向においてコンパクトな装置構成を実現することができる。X方向が生産ラインの方向に沿うようにレーザ加工装置1を配置することで、当該生産ラインに適した装置構成を実現できる。
【0069】
レーザ加工装置1では、レーザ加工ヘッド3及び内部観察ユニット4は、X方向及びY方向に移動不能に構成されている。この場合、アライメント用カメラ5,6及び内部観察ユニット4がX方向及びY方向に移動しないことから、アライメント用カメラ5,6及び内部観察ユニット4のX方向及びY方向の移動に伴う振動の発生を回避することができる。
【0070】
レーザ加工装置1では、ステージ2はZ方向に沿う回転軸を中心に回転可能に構成されている。この場合、ステージ2を回転させることで、レーザ加工ヘッド3による対象物20のレーザ光照射位置、アライメント用カメラ5,6による対象物20の撮像位置、及び、内部観察ユニット4による対象物20の観察位置を、回転方向に移動させることが可能となる。
【0071】
レーザ加工装置1では、情報取得部としてアライメント用カメラ5,6を用いており、対象物20に光を照射し、対象物20から戻る当該光を受光することで、アライメントに用いられる画像を取得する。この場合、アライメントに用いられる情報の取得及び対象物20の内部観察を、具体的に実現することができる。
【0072】
レーザ加工装置1では、制御部9は、アライメント用カメラ5,6の撮像結果に基づいてステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させ、レーザ光Lの集光位置を対象物20における所定位置にアライメントすると共に、アライメント情報を取得する。制御部9は、内部観察ユニット4により対象物20の内部を観察する場合に、アライメント情報とXYθ補正情報とに基づいてステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させ、透過光集光レンズ43の光軸を当該所定位置に合わせる。これにより、アライメントを行うと共に、そのときのアライメント情報を内部観察ユニット4による観察に共用することができる。
【0073】
レーザ加工装置1では、制御部9は、ステージ2に支持されたテスト用対象物20Tの中心125がレーザ光集光レンズ33の光軸上に位置するようにステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させると共に、当該移動後のステージ2の位置情報である第1XYθ情報を取得する。制御部9は、ステージ2に支持されたテスト用対象物20Tの中心125が透過光集光レンズ43の光軸上に位置するようにステージ2をX方向、Y方向及びθ方向に移動させると共に、当該移動後のステージ2の位置情報である第2XYθ情報を取得する。制御部9は、第1XYθ情報及び第2XYθ情報に基づいて、XYθ補正情報を取得する。この場合、XYθ補正情報を具体的に取得することが可能となる。
【0074】
レーザ加工装置1は、1つのステージ2のみを備えている。換言すると、レーザ加工装置1では、複数のユニット(レーザ加工ヘッド3及び内部観察ユニット4)に対して、1つのステージ2を用いている。このように、1つのステージ2で各処理を実施するので、タクトアップを図ることが可能となる。
【0075】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態と同様な点は省略し、異なる点について説明する。
【0076】
図11に示されるように、第2実施形態に係るレーザ加工装置101が第1実施形態に係るレーザ加工装置1(図1参照)と異なる点は、第1鉛直移動機構7A(図1参照)に代えて第1鉛直移動機構107Aを備え、第2鉛直移動機構7B(図1参照)に代えて第2鉛直移動機構107Bを備える点である。
【0077】
第1鉛直移動機構107Aは、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる機構である。第1鉛直移動機構107Aは、柱状の第1ベース部175におけるX方向の一方側に設けられた第1鉛直軸171を有する。第1ベース部175は、例えば設置面等に固定されている。第1鉛直軸171は、Z方向に沿って延在する。第1鉛直軸171には、レーザ加工ヘッド3の取付部39がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1鉛直移動機構107Aは、不図示の駆動源の駆動力により、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸171に沿ってZ方向に移動させる。第1鉛直移動機構107Aとしては、特に限定されず、レーザ加工ヘッド3をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0078】
第2鉛直移動機構107Bは、Z方向に沿って内部観察ユニット4を移動させる機構である。第2鉛直移動機構107Bは、第1ベース部175におけるX方向の他方側に設けられた第2鉛直軸172を有する。つまり、第1鉛直軸171と第2鉛直軸172とは、第1ベース部175にともに設けられており、且つ、第1ベース部175を介して対向するように配置されている。第2鉛直軸172は、Z方向に沿って延在する。第2鉛直軸172には、内部観察ユニット4の取付部49がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第2鉛直移動機構107Bは、不図示の駆動源の駆動力により、内部観察ユニット4を第2鉛直軸172に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構107Bとしては、特に限定されず、内部観察ユニット4をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0079】
以上、レーザ加工装置101においても、タクトアップを実現し、且つ、内部観察ユニット4による観察不良の低減が可能となる等の効果を奏する。また、レーザ加工装置101では、第1鉛直軸171及び第2鉛直軸172を設けるベース部を第1ベース部175として共用した装置構成を実現することができる。
【0080】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態と同様な点は省略し、異なる点について説明する。
【0081】
図12に示されるように、第3実施形態に係るレーザ加工装置201が第1実施形態に係るレーザ加工装置1(図1参照)と異なる点は、第1鉛直移動機構7A(図1参照)に代えて第1鉛直移動機構207Aを備え、第2鉛直移動機構7B(図1参照)に代えて第2鉛直移動機構207Bを備え、レーザ加工ヘッド3と同様なレーザ加工ヘッド203を更に備える点である。
【0082】
第1鉛直移動機構207Aは、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる機構である。第1鉛直移動機構207Aは、柱状の第1ベース部275に設けられた第1鉛直軸271を有する。第1ベース部275は、例えば設置面等に固定されている。第1ベース部275は、第1水平移動機構8Aの第1水平軸81に対してY方向の一方側に離れて配置されている。第1鉛直軸271は、Z方向に沿って延在する。第1鉛直軸271には、レーザ加工ヘッド3の取付部39がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1鉛直移動機構207Aは、不図示の駆動源の駆動力により、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸271に沿ってZ方向に移動させる。第1鉛直移動機構207Aとしては、特に限定されず、レーザ加工ヘッド3をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0083】
第2鉛直移動機構207Bは、Z方向に沿って内部観察ユニット4をレーザ加工ヘッド203と共に移動させる機構である。第2鉛直移動機構207Bは、柱状の第2ベース部276に設けられた第2鉛直軸272を有する。第2ベース部276は、例えば設置面等に固定されている。第2ベース部276は、第1ベース部275に対してY方向の他方側に離間する。第2ベース部276は、第1水平移動機構8Aの第1水平軸81に対してY方向の他方側に離間する。第2鉛直軸272は、Z方向に沿って延在する。第2鉛直軸272には、内部観察ユニット4の取付部49がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第2鉛直移動機構207Bは、不図示の駆動源の駆動力により、内部観察ユニット4を第2鉛直軸272に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構207Bとしては、特に限定されず、内部観察ユニット4をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0084】
レーザ加工ヘッド203は、上述したレーザ加工ヘッド3と同様に構成されている。レーザ加工ヘッド203は、取付部49に設けられている。レーザ加工ヘッド203は、取付部49にレーザ加工ヘッド3とY方向に対向するように配置されている。
【0085】
以上、レーザ加工装置201においても、タクトアップを実現し、且つ、内部観察ユニット4による観察不良の低減が可能となる等の効果を奏する。また、レーザ加工装置201では、X方向においてコンパクトな装置構成を実現することができる。
【0086】
以上の実施形態は、本発明の一態様を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、任意に変形される。
【0087】
上記実施形態では、情報取得部としてアライメント用カメラ5,6を用いたが、これに限定されず、アライメントに供される情報を取得できれば、センサ等を用いてもよい。上記実施形態では、内部観察ユニット4の全体をZ方向に移動させる第2鉛直移動機構7B,107B,207Bを用いたが、これに代えて、透過光集光レンズ43をZ方向に移動させるアクチュエータ等を第2鉛直移動機構として用いてもよい。この場合、アライメント用カメラ5,6と透過光集光レンズ43とが、互いに別の移動機構によってZ方向にそれぞれ移動可能となる。
【0088】
上記実施形態では、アライメント情報をX方向、Y方向及びθ方向の位置に関する情報としたが、アライメント情報は、X方向及びY方向のみの位置に関する情報であってもよい。上記実施形態では、位置補正情報をX方向、Y方向及びθ方向の位置に関するXYθ補正情報としたが、X方向及びY方向のみの位置に関する情報であってもよい。上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態及び変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,101,201…レーザ加工装置、2…ステージ(支持部)、3…レーザ加工ヘッド(照射部)、4…内部観察ユニット(内部観察部)、5,6…アライメント用カメラ(情報取得部)、7A,107A,207A…第1鉛直移動機構、7B,107B,207B…第2鉛直移動機構、8A…第1水平移動機構(水平移動機構)、8B…第2水平移動機構(水平移動機構)、9…制御部、12…改質領域、20…対象物、20T…テスト用対象物、33…レーザ光集光レンズ、43…透過光集光レンズ、71,171,271…第1鉛直軸、72,172,272…第2鉛直軸、75,175,275…第1ベース部、76,276…第2ベース部、I1…透過光、L…レーザ光。
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