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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184079
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ビス及び固定構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/00 20060101AFI20221206BHJP
   F16B 23/00 20060101ALI20221206BHJP
   F16B 25/10 20060101ALI20221206BHJP
   F16B 39/282 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F16B25/00 A
F16B23/00 B
F16B25/10 A
F16B39/282 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091720
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519201101
【氏名又は名称】株式会社アイテック
(71)【出願人】
【識別番号】519360051
【氏名又は名称】タイファス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】田中 亨
(72)【発明者】
【氏名】陳 義忠
(57)【要約】
【課題】ネジ孔の周縁部の反り上がりを効果的に抑制することができるビス及び固定構造を提供する。
【解決手段】前記課題を解決するために、本発明のビスは、頭部と、前記頭部から一方側に延びるとともにネジ部の形成された外周面を有する軸部と、前記頭部の他方側の端面から前記軸部の内部までの範囲に亘って形成されるとともに、当該ビスを前記軸部の軸回りに回転させるための工具の先端を他方側から挿入可能な穴部と、を備える。前記頭部は、一方側に面するとともに前記軸部の径方向外側に延びる基準面と、前記基準面から一方側に突出するとともに前記軸部の回転方向に並んで形成された複数の突出部と、を有し、前記複数の突出部は、前記軸部から当該軸部の径方向外側に延びる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、
前記頭部から一方側に延びるとともにネジ部の形成された外周面を有する軸部と、
前記頭部の他方側の端面から前記軸部の内部までの範囲に亘って形成されるとともに、当該ビスを前記軸部の軸回りに回転させるための工具の先端を他方側から挿入可能な穴部と、を備え、
前記頭部は、一方側に面するとともに前記軸部の径方向外側に延びる基準面と、前記基準面から一方側に突出するとともに前記軸部の回転方向に並んで形成された複数の突出部と、を有し、
前記複数の突出部は、前記軸部から当該軸部の径方向外側に延びる、ビス。
【請求項2】
請求項1に記載のビスであって、
前記複数の突出部は、前記回転方向のうち締め付け方向を向いて形成された第1の面と、前記回転方向のうち前記締め付け方向とは反対方向を向いて傾斜する第2の面と、を有し、
前記第1の面の前記基準面に対する立ち上がり角度は、前記第2の面の前記基準面に対する立ち上がり角度よりも大きい、ビス。
【請求項3】
請求項2に記載のビスであって、
前記第1の面の前記基準面に対する立ち上がり角度は、90度である、ビス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のビスであって、
前記複数の突出部は、前記回転方向に、互いに等間隔に並んで形成されている、ビス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のビスであって、
前記複数の突出部として、前記回転方向に一列に並ぶ24個未満の突出部が形成されている、ビス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のビスであって、
前記複数の突出部として、前記回転方向に一列に並ぶ18個の突出部が形成されている、ビス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスであって、
前記軸部は、前記頭部に隣接するとともに前記基準面から一方側に向かうにつれて小さくなる直径を有するテーパー部を有する、ビス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のビスと、
前記ビスにより厚み方向に貫通されることにより互いに連結された2枚の金属板と、を備え、
前記軸部は、前記複数の突出部が前記金属板と密着した状態で、前記金属板に係合している、固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス及びこのビスを用いた金属板の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
薄鋼板(金属板)を締め付けるためのビスとして、特許文献1に記載のような鋼板用ネジが知られている。この鋼板用ネジは、ネジ頭と、ネジ頭から延びるとともにネジ部の形成された外周面を有する平行ネジ部と、工具を挿入するための孔と、を備えている。鋼板用ネジにおいては、孔が頭部から軸部に亘って形成されていることにより、頭部を薄くすることができ、締結時における頭部の金属板からの突出寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0003】
また、ネジ頭は、このネジ頭の底面外縁部に形成された環状の凸部と、凸部の内周側に形成された凹部と、を有する。
【0004】
鋼板が凸部に当接した状態で鋼板用ネジを締め付けると、平行ネジ部の推力によって、鋼板のネジ孔の周縁部(凸部の内側の部分)がまくれ上がり(反り上がり)、凹部に入り込んで密着する。その結果、鋼板用ネジの回転抵抗が急激に上昇して鋼板用ネジの回転が停止し、空回りが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-122113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の鋼板用ネジを用いて薄鋼板を締め付ける場合、鋼板用ネジにより薄鋼板に形成されたネジ孔の周縁部が反り上がるため、この反り上がりによりネジ孔の径が拡大する。このため、ネジ孔の内径が鋼板用ネジの外径よりも大きくなることにより、鋼板用ネジの締結時にこの鋼板用ネジが薄鋼板に対して空回りするのを効果的に抑制できないおそれがある。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、空回りを効果的に抑制することができるビス及び固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のビスは、頭部と、前記頭部から一方側に延びるとともにネジ部の形成された外周面を有する軸部と、前記頭部の他方側の端面から前記軸部の内部までの範囲に亘って形成されるとともに、当該ビスを前記軸部の軸回りに回転させるための工具の先端を他方側から挿入可能な穴部と、を備え、前記頭部は、一方側に面するとともに前記軸部の径方向外側に延びる基準面と、前記基準面から一方側に突出するとともに前記軸部の回転方向に並んで形成された複数の突出部と、を有し、前記複数の突出部は、前記軸部から当該軸部の径方向外側に延びる。
【0009】
このビスによれば、穴部は、頭部の他方側の端面から軸部の内部までの範囲に亘って形成されるので、工具を挿入可能な寸法として予め定められている穴部の深さに対して頭部の厚みを相対的に小さくすることができる。このため、ビスを金属板に締め付けたときの頭部の金属板からの突出寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0010】
また、頭部は、基準面から一方側に突出するとともに軸部の回転方向に並んで形成された複数の突出部を有するので、このビスを例えば金属板に締め付ける場合には、複数の突出部と金属板の表面とが噛み合い、頭部と金属板との間の摩擦力が上昇する。このため、ビスの空回りを効果的に抑制することができる。
【0011】
さらに、複数の突出部は、軸部からこの軸部の径方向外側に延びるので、ネジ部からの力を受けて反り上がろうとするネジ孔の周縁部が複数の突出部に当接することによりネジ孔の周縁部の反り上がりを抑制することができる。このため、ネジ孔の周縁部の反り上がりによる孔の拡大を防止することができ、摩擦抵抗の増大によりトルクが上昇しビスの空回りを抑制することができる。
【0012】
前記ビスにおいて、前記複数の突出部は、前記回転方向のうち締め付け方向を向いて形成された第1の面と、前記回転方向のうち前記締め付け方向とは反対方向を向いて傾斜する第2の面と、を有し、前記第1の面の前記基準面に対する立ち上がり角度は、前記第2の面の前記基準面に対する立ち上がり角度よりも大きいのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記第1の面の前記基準面に対する立ち上がり角度は、前記第2の面の前記基準面に対する立ち上がり角度よりも大きい。そのため、ビスを金属板に締め付けるときには、第1の面が金属板の表面に対して噛み込むことにより、締め付けトルクが大きくなり、ビスの空回りを抑制することができる。また、ビスを緩めるときには、金属板の表面に対する第2の面の摺動抵抗が第1の面に対する摺動抵抗よりも相対的に小さくなるため、円滑にビスを回転させることができる。
【0014】
前記ビスにおいて、前記第1の面の前記基準面に対する立ち上がり角度は、90度であるのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1の面とビスの回転方向とが直交するので、ビスの金属板に対する締め付けた時に、複数の突出部間に噛み込まれた金属板を第1の面によって正面から受けることにより、ビスの空回りをより効果的に抑制することができる。
【0016】
前記ビスにおいて、複数の突出部は、回転方向に、互いに等間隔に並んで形成されているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ビスを金属板に締め付ける際に頭部と金属板との間に発生するトルクを、頭部の全周に亘ってほぼ均一にすることができる。
【0018】
また、本発明者らは、回転方向に一列に並ぶ突出部の数量が1~24個である範囲内にビスの締め付けトルクの最大値が存在することを確認した。
【0019】
そこで、前記ビスにおいて、前記複数の突出部として、前記回転方向に一列に並ぶ24個未満の突出部が形成されているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、回転方向に一列に並ぶ突出部の数量が適切に設定されていることにより、ビスの金属板に対する締め付けトルクを効果的に上昇させることができる。このため、ビスを金属板に締め付ける際のビスの空回りを効果的に抑制することができる。
【0021】
さらに、本発明者は、回転方向に一列に並ぶ突出部の数量が24の場合と比較して18の場合の方が締め付けトルクが上昇する点を確認した。
【0022】
そこで、前記ビスにおいて、前記複数の突出部として、前記回転方向に一列に並ぶ18個の突出部が形成されているのが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ビスの空回りをさらに効果的に抑制することができる。
【0024】
前記ビスにおいて、前記軸部は、前記頭部に隣接するとともに前記基準面から一方側に向かうにつれて小さくなる直径を有するテーパー部を有するのが好ましい。
【0025】
この構成によれば、予め定められていた深さ寸法を有する穴部を形成するための領域を軸部のテーパー部に確保しつつ、軸部におけるテーパー部よりも一方側の外径を、テーパー部の他方側の端部の外径に比べて小さくすることができる。これにより、ビスを金属板に締め付ける初期の状態においては、軸部におけるテーパー部よりも一方側の部分の外径が比較的小さいことにより、ビスと金属板との接触面積を小さくすることができる。このため、ビスと金属板との間の摩擦抵抗を小さくすることによりトルクの上昇を抑制しながら頭部の金属板からの突出寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0026】
本発明に係る固定構造は、前記ビスと、前記ビスにより厚み方向に貫通されることにより互いに連結された2枚の金属板と、を備え、前記軸部は、前記複数の突出部が前記金属板と密着した状態で、前記金属板に係合している。
【0027】
この固定構造によれば、前記軸部は、前記複数の突出部が前記金属板と密着した状態で、前記金属板に係合しているので、複数の突出部により反り上がりの防止された金属板と複数の突出部とを噛み合わせることにより金属板同士が強固に固定された固定構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明のビス及び固定構造によれば、ネジ孔の周縁部の反り上がりを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る固定構造を表す縦断面図である。
図2】前記固定構造のビスの側面図である。
図3】前記ビスの頭部を表す上面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】前記ビスの突出部を表す側面図である。
図6】前記ビスを用いて野縁と天井ランナーとを接続した状態を表す分解斜視図である。
図7】前記ビスを用いて2本の間仕切スタッド同士を接続した状態を表す断面図である。
図8】前記ビスを用いて間仕切ランナーとスタッドとを接続した状態を表す分解斜視図である。
図9】前記ビスを用いて間仕切スタッドに金属板を固定した状態を表す分解斜視図である。
図10】前記ビスを用いて野縁に金属板を固定した状態を表す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0031】
本発明の実施形態に係る固定構造1は、図1に示すように、ビス10と、ビス10により厚み方向に貫通されることにより互いに連結された2枚の金属板50,50と、を備える。
【0032】
ビス10は、2枚金属板50,50を貫通することによりこれら金属板50,50同士を固定するための部材である。具体的にビス10は、図2に示すように、平面視円盤形状の頭部20と、頭部20から一方側(図2の紙面下側)に延びるとともにネジ部32の形成された外周面を有する軸部30と、ビス10を軸部30の軸回りに回転させるための工具の先端を他方側から挿入可能な穴部40(図3参照)と、を備える。穴部40は、頭部20の他方側(図2の紙面上側)の端面から軸部30の内部までの範囲に亘って形成される。
【0033】
軸部30は、ビス10を時計回りに回転させることにより、ビス10を金属板50に対して締め付けることができ、ビス10を反時計回りに回転させることにより、ビス10を金属板50に対して緩めることができるように形成されたネジ部32を有する。以下、ビス10の回転方向における時計回り方向を締め付け方向A、反時計回り方向を緩め方向Bと記載する。なお、ビス10締め付け方向A及び緩め方向Bが上記とは逆のネジ部32を有していても良い。
【0034】
頭部20は、ビス10を金属板50に締め付けた状態において、ビス10を締め付け方向Aに回転させようとしたときの金属板50に対する空回りを抑制するための構成を有する。具体的に、頭部20は図4及び図5に示すように、一方側に面するとともに軸部30の径方向外側に延びる基準面22と、基準面22から一方側に突出するとともに軸部30の回転方向に並んで形成された複数の突出部24と、を有する。
【0035】
頭部20の厚みは、ビス10を金属板50に締め付けた状態において、頭部20の金属板50からの突出寸法が大きくなるのを抑制するために、本実施形態では0.55mm~0.70mmの範囲に設定される。
【0036】
複数の突出部24は、ビス10の金属板50に対する締め付ける際に金属板50との間でトルクを生じさせることによりビス10の空回りを抑制するための部位である。これら複数の突出部24は、ビス10を金属板50に締め付ける際に頭部20と金属板50との間に発生する抵抗を頭部20の全周に亘ってほぼ均一にするために、回転方向に互いに等間隔に並んでいる。
【0037】
表1は、突出部24の数量がそれぞれ0個、18個、24個であるビスを金属板50に締め付けるときのそれぞれのビスと金属板50との間に発生する荷重(kgf)の最大値α~γを、それぞれ3回測定した結果及び平均値を表す。具体的に、α~γは、頭部20が金属板50に接触した状態で生じる荷重の最大値を表す。なお、αは突出部24の数量が0個であるビスと金属板50との間に発生する荷重の最大値、βは突出部24の数量が18個であるビスと金属板50との間に発生する荷重の最大値、γは突出部24の数量が24個であるビスと金属板50との間に発生する荷重の最大値、括弧内はそれぞれの突出部24の数量を表す。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1に示すように、本発明者らは、回転方向に一列に並ぶ突出部の数量が1~24個である範囲内にビス10の締め付けトルクの最大値(表1における平均値の最大値)が存在することを確認した。さらに、本発明者は、回転方向に一列に並ぶ突出部の数量が24の場合と比較して18の場合の方が金属板50との間に発生する荷重の最大値の平均値が大きく、締め付けトルクが上昇する点を確認した。
【0040】
このことから、複数の突出部24として、回転方向に一列に並ぶ24個未満の突出部24が形成されるのが好ましく、図4に示すように回転方向に一列に並ぶ18個の突出部24が形成されるのがより好ましい。また、複数の突出部24の高さは、頭部20の厚みの14.3%~36.4%の範囲に設定されるのが好ましい。
【0041】
複数の突出部24は、図4に示すように、軸部30からこの軸部30の径方向外側に延びている。また、複数の突出部24は、図5に示すように、回転方向のうち締め付け方向Aを向く第1の面24aと、回転方向のうち締め付け方向とは反対方向(緩め方向B)を向く第2の面24bと、を有する。第2の面24bは、第1の面24aから緩め方向Bに向かうに従い基準面22に近付くように傾斜する。
【0042】
複数の突出部24は、ビス10を締め付け方向Aに回転させるときの第1の面24aと金属板50との抵抗が、ビス10を緩め方向Bに回転させるときの第2の面24bと金属板50との抵抗よりも大きくなるように設定された形状を有する。具体的に、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は、図5に示すように第2の面24bの基準面22に対する立ち上がり角度よりも大きい。本実施形態では、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は、90度に設定され、第2の面24bの基準面22に対する立ち上がり角度は、90度未満に設定されている。
【0043】
また、本実施形態では、複数の突出部24は、回転方向に隣接して設けられている。具体的に、第2の面24bの他方側の端縁(緩め方向側の端縁)は、隣接する他の突出部24の第1の面24aの締め付け方向A側の端縁に接続されている。
【0044】
また、複数の突出部24が金属板50に効率よく噛み込むために、第1の面24aと第2の面24bとのなす角は図5に示すように、鋭角とされている。なお、複数の突出部24の高さ(軸方向における長さ)は、本実施形態では、0.10mm~0.20mmの範囲内に設定される。
【0045】
軸部30は、頭部20に隣接するとともに基準面22から一方側に向かうにつれて小さくなる直径を有するテーパー部34と、テーパー部34に接続され軸方向に亘って同一の直径を有する胴部35と、胴部35に接続され一方側に向かうにつれて小さくなる直径を有する先端部36と、これらテーパー部34と胴部35と先端部36との外周面に設けられるネジ部32と、を有する。この軸部30は、複数の突出部24が金属板50と密着した状態で、金属板50に係合する。
【0046】
穴部40は、本実施形態では図3に示すように十字型に形成されている。また、穴部40は、頭部20の他方側の端面から軸部30のテーパー部34の内部までの範囲に亘って形成されている。
【0047】
穴部40の深さについては、規格により予め定められているので、穴部40を頭部20にのみ形成する場合には、頭部20の厚みを確保する必要がある。本実施形態では、穴部40が頭部20の他方側の端面から軸部30のテーパー部34の内部までの範囲に亘って形成されていることにより、頭部20の厚みを相対的に小さくすることができる。
【0048】
テーパー部34は、図2に示すように、2枚の金属板50,50のネジ孔の周縁部の反り上がりを抑制するための平坦部38を有する。平坦部38は、テーパー部34における他方側の端部に形成されており、その径方向外側の周面は平坦である。つまり、ネジ部32は、軸部30における平坦部38の一方側の領域に設けられている。
【0049】
平坦部38の軸方向の長さは、2枚の金属板50,50の厚みの合計とほぼ同じ、具体的には、約1.0mmとなるように設定される。また、本実施形態の金属板50としては、0.4mm~0.5mm程度の厚みを有する薄鋼板が用いられる。これにより、金属板50,50は、ビス10における頭部20からネジ部32の他方側の端部までの間の隙間に配置されることとなる。
【0050】
以下、このような固定構造1が適用される実施例について説明する。
【0051】
(1)実施例1
実施例1の固定構造は、図6に示すように、所定方向に延びる天井ランナー102と、所定方向に直交する方向に延びるとともに天井ランナー102に接続される管状の野縁104と、天井ランナー102と野縁104とを固定するビス10と、を有する。
【0052】
天井ランナー102は、野縁104の端部が載置される載置板部を有する。これら天井ランナー102の載置板部及び載置板部の載置面上に載置される野縁104の側壁がそれぞれ金属板50,50に対応する。天井ランナー102の載置板部及び野縁104の側壁にビス10が締め付けられることにより、天井ランナー102の載置板部に対して野縁104の側壁が固定される。
【0053】
(2)実施例2
実施例2の固定構造は、図7に示すように、所定方向に並んで配置される2本の第1スタッド202,202と、これら2本の第1スタッド202,202を接続する第2スタッド204と、これら第1スタッド202,202と第2スタッド204とを固定するビス10とを、有する。
【0054】
第1スタッド202,202、第2スタッド204は、それぞれC形鋼により形成されている。具体的に、第1スタッド202,202、第2スタッド204は、ウェブと、ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと、フランジにおけるウェブが接続されている側の端縁とは反対側の端縁から立ち上がるリップと、をそれぞれ有する。
【0055】
本実施例では、2つの第1スタッド202,202のフランジに跨るように第2スタッド204のウェブが配置されている。これら第1スタッド202,202のフランジと第2スタッド204のウェブがそれぞれ金属板50,50に対応する。第1スタッド202,202及び第2スタッド204のウェブにビス10が締め付けられることにより、第1スタッド202,202のフランジに対して第2スタッド204のウェブが固定される。
【0056】
(3)実施例3
実施例3の固定構造は、図8に示すように、所定方向に延びるとともに所定方向に直交する上に開口する溝を有する間仕切りランナー304と、間仕切りランナー304の溝内に挿入された下端部を有し上下方向に延びる断面視四角形状の管状の間仕切りスタッド302と、間仕切りランナー304と間仕切りスタッド302とを固定するビス10と、を有する。
【0057】
間仕切りランナー304は、間仕切りスタッド302を載置する載置部と、載置部の幅方向の両端から立ち上がって間仕切りスタッド302を挟み込む一対の挟持部と、を有する。
【0058】
スタッド302の側面と、間仕切りランナー304の挟持部とがそれぞれ金属板50,50に対応する。スタッド302の側面及び間仕切りランナー304の挟持部にビス10が締め付けられることにより、スタッド302の側面に対して間仕切りランナー304の挟持部が固定される。
【0059】
(4)実施例4
実施例4の固定構造は、図9に示すように、一列に並んで配置される複数の第1スタッド202と、隣接する2本の第1スタッド202,202の間でこれら第1スタッド202,202に支持される間仕切り壁と、第1スタッド202と間仕切り壁とを接続する接続部材404と、第1スタッド202と接続部材404とを固定するビス10と、を有する。本実施例の第1スタッド202は、実施例2の第1スタッド202と同様のものが用いられる。
【0060】
接続部材404は、第1スタッド202のフランジに密着した状態で固定される板状部と、を有する。第1スタッド202のフランジと、接続部材404の板状部とがそれぞれ金属板50,50に対応する。第1スタッド202のフランジ及び接続部材404の板状部にビス10が締め付けられることにより、第1スタッド202のフランジに対して接続部材404が固定される。
【0061】
(5)実施例5
実施例5の固定構造は、図10に示すように、隣接する2本の野縁104,104と、これら2本の野縁104,104を接続する接続部材504と、野縁104,104と接続部材504とを固定するビス10と、を有する。なお、本実施例の野縁104は、実施例1の野縁104と同様のものが用いられる。
【0062】
接続部材504は、2本の野縁104,104に密着した状態で固定される板状部を有する。野縁104と、接続部材504の板状部とがそれぞれ金属板50,50に対応する。野縁104及び接続部材504の板状部にビス10が締め付けられることにより、野縁104に対して接続部材504が固定される。
【0063】
(作用効果)
本実施形態のビス10によれば、穴部40は、頭部20の他方側の端面から軸部30の内部までの範囲に亘って形成されるので、工具を挿入可能な寸法として予め定められている穴部40の深さに対して頭部20の厚みを相対的に小さくすることができる。このため、ビス10を金属板50に締め付けたときの頭部20の金属板50からの突出寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0064】
また、頭部20は、基準面から一方側に突出するとともに軸部30の回転方向に並んで形成された複数の突出部24を有するので、このビス10を金属板50に締め付ける場合には、複数の突出部24と金属板50の表面とが噛み合い、頭部20と金属板50との間の摩擦力が上昇する。このため、ビス10の空回りを効果的に抑制することができる。
【0065】
さらに、複数の突出部24は、軸部30からこの軸部30の径方向外側に延びるので、ネジ部からの力を受けて反り上がろうとするネジ孔の周縁部が複数の突出部24に当接することによりネジ孔の周縁部の反り上がりを抑制することができる。このため、複数の突出部24と金属板50の表面とが噛み合う部分の面積を大きくすることができ、摩擦抵抗の増大によりトルクが上昇しビス10の空回りを抑制することができる。
【0066】
また、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は、第2の面24bの基準面22に対する立ち上がり角度よりも大きい。そのため、ビス10を金属板50に締め付けるときには、第1の面24aが金属板50の表面に対して噛み込むことにより、締め付けトルクが大きくなり、ビス10の空回りを抑制することができる。また、ビス10を緩めるときには、金属板50の表面に対する第2の面24bの摺動抵抗が第1の面24aに対する摺動抵抗よりも相対的に小さくなるため、円滑にビス10を回転させることができる。
【0067】
また、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は、90度であり、第1の面24aとビス10の回転方向とが直交するので、ビス10の金属板50に対して締め付けた時に、複数の突出部24間に噛み込まれた金属板50を第1の面24aによって正面から受けることにより、ビス10の空回りをより効果的に抑制することができる。
【0068】
また、複数の突出部24は、回転方向に、互いに等間隔に並んで形成されているので、ビス10を金属板50に締め付ける際に頭部20と金属板50との間に発生するトルクを、頭部20の全周に亘ってほぼ均一にすることができる。
【0069】
また、突出部24として、回転方向に一列に並ぶ18個の突出部24が形成されているので、回転方向に一列に並ぶ突出部24の数量が適切に設定されていることにより、ビス10の金属板50に対する締め付けトルクを効果的に上昇させることができる。このため、ビス10を金属板50に締め付ける際のビスの空回りを効果的に抑制することができる。
【0070】
また、軸部30は、頭部20に隣接するとともに基準面22から一方側に向かうにつれて小さくなる直径を有するテーパー部34を有するので、予め定められていた深さ寸法を有する穴部40を形成するための領域を軸部30のテーパー部に確保しつつ、軸部30におけるテーパー部34よりも一方側の外径を、テーパー部34の他方側の端部の外径に比べて小さくすることができる。これにより、ビス10を金属板50に締め付ける初期の状態においては、軸部30におけるテーパー部34よりも一方側の部分(先端部36)の外径が比較的小さいことにより、ビス10と金属板50との接触面積を小さくすることができる。このため、ビス10と金属板50との間の摩擦抵抗を小さくすることにより、トルクの上昇を抑制しながら頭部20の金属板50からの突出寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0071】
また、軸部30は、複数の突出部24が金属板50と密着した状態で、金属板50に係合しているので、複数の突出部24により反り上がりの防止された金属板50と複数の突出部24とを噛み合わせることにより金属板50,50同士が強固に固定された固定構造1を提供することができる。
【0072】
(変形例)
前記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は前記実施形態に限定されない。
【0073】
上記実施形態では、穴部40は十字形に形成されていたが、穴部40の形状は十字形に限られず、例えばマイナス型等の形状に形成されていても良い。
【0074】
上記実施形態では、金属板50として薄鋼板を用いたが、金属板50として用いることができる板は薄鋼板に限られず、例えばアルミニウム板等その他の金属により形成された板を用いても良い。
【0075】
上記実施形態では、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は90度に設定されている。しかし、第1の面24aの基準面22に対する立ち上がり角度は90度に設定されている必要はない。
【0076】
上記実施形態では、複数の突出部24は、回転方向に一列に並んで形成されていたが、複数の突出部24の形成される位置は、これに限られず、例えば、互いに軸部30の径方向に離間した位置に形成されていても良い。
【0077】
上記実施形態では、平坦部38の軸方向の長さは、2枚の金属板50,50の合計厚みにほぼ等しくされているが、必ずしも合計厚みにほぼ等しい必要はない。例えば、平坦部38の軸方向の長さを2枚の金属板50,50の合計厚みより小さくしても良い。これにより、ネジ部32により押し上げられる力を複数の突出部24に噛み込む力として利用することができる。このため、金属板50,50がネジ部32により上向きに押し上げられ、回り止めを強固にすることができる。
【0078】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
1 固定構造
10 ビス
20 頭部
22 基準面
24 突出部
24a 第1の面
24b 第2の面
30 軸部
32 ネジ部
34 テーパー部
35 胴部
36 先端部
38 平坦部
40 穴部
50 金属板
A 締め付け方向
B 緩め方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10