特開 2022-184094 固定資産システム、減価償却費算出方法、及び減価償却費算出プログラム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022184094

(43)【公開日】2022-12-13

(54)【発明の名称】固定資産システム、減価償却費算出方法、及び減価償却費算出プログラム

(51)【国際特許分類】

   G06Q 10/06 20120101AFI20221206BHJP

   G06Q 40/00 20120101ALI20221206BHJP

【ＦＩ】

G06Q10/06

G06Q40/00 400

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021091737

(22)【出願日】2021-05-31

(71)【出願人】

【識別番号】398040527

【氏名又は名称】株式会社オービック

(74)【代理人】

【識別番号】110002147

【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】榎本 剛平

(72)【発明者】

【氏名】仲澤 嘉寛

(72)【発明者】

【氏名】上野 剛光

【テーマコード（参考）】

5L049

5L055

【Ｆターム（参考）】

5L049AA06

5L049CC35

5L055BB63

(57)【要約】

【課題】法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で減価償却費の計上を行うこと。
【解決手段】本実施の形態に係る固定資産システムは、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データ入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録手段と、前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出手段と、を備えている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

記憶部及び制御部を備えた固定資産システムであって、
前記制御部は、
資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データを入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録部と、
前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出手段と、
を備えたことを特徴とする固定資産システム。

【請求項2】

前記記憶部には、現在月を登録したマスタが格納されており、
前記月別償却情報データは、月毎に、会計上締まっているか否かを示すフラグを含み、
前記減価償却費算出手段は、前記フラグを、前記マスタの現在月の前月までについて締済みに設定し、月度減価償却額を前記フラグが締め前の月に計上することを特徴とする請求項１に記載の固定資産システム。

【請求項3】

前記マスタの現在月は、自動又は手動で設定されることを特徴とする請求項２に記載の固定資産システム。

【請求項4】

記憶部及び制御部を備えた情報処理装置で実行される減価償却費算出方法であって、
前記制御部において実行される、
資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データを入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録工程と、
前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出工程と、
を含むことを特徴とする減価償却費算出方法。

【請求項5】

記憶部及び制御部を備えた情報処理装置で実行するための減価償却費算出プログラムであって、
前記制御部において、
資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データを入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録工程と、
前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出工程と、
をコンピュータで実行するための減価償却費算出プログラム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、固定資産システム、減価償却費算出方法、及び減価償却費算出プログラムに関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、固定資産の減価償却については、通常、取得し事業供用した月度から減価償却費を計算する。従来、固定資産の減価償却を管理するシステムとして、例えば、特許文献１がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平４－２７１４６９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、上記特許文献１では、法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で減価償却費の計上を行うことに関して何等記載されていない。

【0005】

本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で減価償却費の計上を行うことが可能な固定資産システム、減価償却費算出方法、及び減価償却費算出プログラムを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記憶部及び制御部を備えた固定資産システムであって、前記制御部は、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データ入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録部と、前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出手段と、を備えたことを特徴とする。

【0007】

また、本発明の一態様によれば、前記記憶部には、現在月を登録したマスタを備え、前記月別償却情報データは月毎に、会計上締まっているか否かを示すフラグを含み、前記減価償却費算出手段は、前記フラグを、前記マスタの現在月の前月までについて締済みに設定し、月度減価償却額を前記フラグが締め前の月に計上することにしてもよい。

【0008】

また、本発明の一態様によれば、前記マスタの現在月は、自動又は手動で設定されることにしてもよい。

【0009】

また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記憶部及び制御部を備えた情報処理装置で実行される減価償却費算出方法であって、前記制御部において実行される、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データ入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録工程と、前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出工程と、を含むことを特徴とする。

【0010】

また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記憶部及び制御部を備えた情報処理装置で実行するための減価償却費算出プログラムであって、前記制御部において、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データ入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録工程と、前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出工程と、をコンピュータで実行するための減価償却費算出プログラムであることを特徴とする。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で減価償却費の計上を行うことが可能になるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】図１は、本実施の形態に係る経費支払システムの構成の一例を示すブロック図である。

【図2】図２は、従来のデータ構造を示す図である。

【図3】図３は、本実施の形態のデータ構造を示す図である。

【図4】図４は、従来の減価償却費のイメージを示す図である。

【図5】図５は、本実施の形態の減価償却イメージを示す図である。

【図6】図６は、画面イメージの例を示す図である。

【図7】図７は、現在月管理マスタ１０６ａの設定（更新）を説明するための図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下に、本発明に係る固定資産システム、減価償却費算出方法、及び減価償却費算出プログラムの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。

【0014】

［１．概要］
例えば、固定資産の減価償却については通常、取得し事業供用した月度から減価償却費を計算する。しかしながら、現場で購入した固定資産などは実際の取得月から数か月遅れて経理部に報告されることが多く、既に取得月から報告月までの間の月度は会計上の締めが行われていることがほとんどである。

【0015】

例えば、購買・製造部門といった現場部門にて固定資産の取得・計上報告を経理部門向けに行うような運用を行っている場合、既に経理上の締めが完了した過月度分の報告を行う場面が散見される。その場合、経理部門では、まだ締めていない月度に過月度分の減価償却費の計上を行うような手計算・手入力による調整を固定資産１件ずつに対して行う必要がある。そのため、過月度に対する計上ミス、計上額の認識相違などが監査時に気付くことが多い。

【0016】

そのため、取得月から経理報告月までに時間差があり、既にその間の月度が会計上締まっている場合に、未締月で減価償却費を調整することが望まれる。

【0017】

そこで、本実施の形態では、法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で償却費の計上を調整する機能を搭載した。

【0018】

具体的には、減価償却費については、法人税法に基づき、償却開始日から算出される使用月数と事業月数との割合で年間の減価償却費を計算し、各月度に減価償却費を按分する。本実施の形態によれば、経理部門の運用負荷・ミスの低減を実現することが可能となる。

【0019】

また、本実施の形態では、資産の償却開始日と取得判明月の情報を基に、償却開始日より後に判明した資産について、月別の償却額を算出後、過去月の分に計上すべきであった償却額を当月の償却額に算入させる事によって、可能な限り未計上期間を最短に抑えた固定資産管理を行うことができる。

【0020】

つぎに、本発明の背景を説明する。企業の事業活動における減価償却費の取り扱いについては、以下の（１）～（３）のように、様々であり、保有する資産数や毎月の変動数、その額の大小によって企業の重要度は変わってくる。

【0021】

（１）大型投資を行うことが多く、毎月の減価償却費・営業利益へのインパクトが大きい、ＥＢＩＴＤＡ（Ｅａｒｎｉｎｇｓ Ｂｅｆｏｒｅ Ｉｎｔｅｒｅｓｔ， Ｔａｘｅｓ， Ｄｅｐｒｅｃｉａｔｉｏｎ ａｎｄ Ａｍｏｒｔｉｚａｔｉｏｎ）といった減価償却を重視した経営指標を重視するような不動産業や大型機械製造業等では、資産計上のタイミングをしっかりと把握して正しく月次の減価償却費を把握するため、取得漏れなどの要件が出にくい。

【0022】

（２）１件あたりの投資額や、１月あたりの資産購入件数が少ない流通小売業等では、少額資産の購入が多く、現場部門に購入を一任していることも多いため、実際取得した月と、資産計上を認識する時期がずれる場合が多い。また、月次単位での資産計上額、減価償却費が管理会計に与える影響は軽微であるため、厳密な計上時期を重視しない。

【0023】

（３）上記（１）と（２）が混在するような企業（本来（１）であるが、たまに漏れが見つかるパターン）

【0024】

本実施の形態では、従来のシステムで実現していた（１）といった企業だけでなく、（２）、（３）の要件を満たすように、自動的に減価償却費を調整することで、現行の運用見直しをすることなく、かつ、経理部の業務負荷を低減する。すなわち、本実施の形態は、固定資産業務に着目したシステムの自由度を保ちつつも、固定資産の取得漏れという点に特化し、減価償却費の計上を自動計算・調整する仕組みを提供するものである。

【0025】

本実施の形態の固定資産システムは、現場が固定資産購入を行うような流通小売業や固定資産計上額の確定が実際の計上すべき取得月とずれやすい大型機械製造業等に広く適用可能である。

【0026】

［２．構成］
本実施形態に係る固定資産システム１００の構成について、図１を参照して説明する。図３は、本実施の形態に係る固定資産システム１００の構成の一例を示すブロック図である。

【0027】

固定資産システム１００は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、固定資産システム１００は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、ＰＤＡ（Ｐｅｒｓｏｎａｌ Ｄｉｇｉｔａｌ Ａｓｓｉｓｔａｎｔｓ）、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。

【0028】

固定資産システム１００は、図１に示すように、制御部１０２と通信インターフェース部１０４と記憶部１０６と入出力インターフェース部１０８と、を備えている。固定資産システム１００が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。

【0029】

通信インターフェース部１０４は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、固定資産システム１００をネットワーク３００に通信可能に接続する。通信インターフェース部１０４は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク３００は、固定資産システム１００と、サーバ２００や財務会計システム４００とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやＬＡＮ（Ｌｏｃａｌ Ａｒｅａ Ｎｅｔｗｏｒｋ）等である。なお、後述する記憶部１０６に格納されるデータは、サーバ２００に格納されてもよい。

【0030】

入出力インターフェース部１０８には、入力装置１１２および出力装置１１４が接続されている。出力装置１１４には、モニタ（家庭用テレビを含む）の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置１１２には、キーボード、マウス、およびマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置１１４をモニタ１１４とし、入力装置１１２をキーボード１１２またはマウス１１２として記載する場合がある。また、「出力」とは、出力装置１１４のモニタに表示することや出力装置１１４のプリンタで印刷することを含む。また、モニタ１１４に表示される情報に対して入力装置１１２等でユーザが操作等をすることを、「ＵＩを介したユーザ操作」と記載する場合がある。

【0031】

記憶部１０６には、各種のデータベース、テーブル、およびファイルなどが格納される。記憶部１０６には、ＯＳ（Ｏｐｅｒａｔｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍ）と協働してＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部１０６として、例えば、ＲＡＭ（Ｒａｎｄｏｍ Ａｃｃｅｓｓ Ｍｅｍｏｒｙ）・ＲＯＭ（Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。また、記憶部１０６は、現在月管理マスタ１０６ａと、固定資産コントロールマスタ１０６ｂと、データファイル１０６ｃと、を備えている。

【0032】

現在月管理マスタ１０６ａは、現在月を管理するためのマスタであり、現在月を登録する。現在月管理マスタ１０６ａの現在月は、固定資産コントロールマスタ１０６ｂの設定により、手動又は自動で更新される。現在月管理マスタ１０６ａは、手動により更新される場合は、現在月管理マスタ１０６ａのマスタメンテ画面（図７参照）で設定することができる。

【0033】

固定資産コントロールマスタ１０６ｂは、現在月管理マスタ１０６ａの現在月を「０：手動」又は「１：自動」で更新するかを設定するためのマスタである。固定資産コントロールマスタ１０６ｂは、固定資産コントロールマスタのマスタメンテ画面（図７参照）で設定することができる。

【0034】

データファイル１０６ｃは、資産情報データ、償却情報データ、及び月度償却情報データ等の各種データを格納するためのファイルである。

【0035】

資産情報データは、資産Ｎｏ、枝番、取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数のデータを含んでいてもよい（図３参照）。

【0036】

償却情報データは、資産Ｎｏ、枝番、年度、使用月数、年間減価償却費のデータを含んでいてもよい（図３参照）。なお、ここでは、償却方法・耐用年数を、資産情報データで保持することにしたが、償却情報データで保持する構成としてもよい。

【0037】

月度償却情報データは、資産Ｎｏ、枝番、年度、月度、月度減価償却費、仕訳連携済フラグ（フラグ）のデータを含んでいてもよい（図３参照）。仕訳連携済フラグは、会計上締まっているか否かを示すフラグであり、連携済み、未連携のいずれかが設定される。本実施の形態では、一例として、後述するように、仕訳送信部１０２ｃが、月別の減価償却仕訳を作成して、財務会計システム４００に送信した場合に、当月の会計上の締めが行われたものと判断する。仕訳連携済フラグの「連携済み」は、「当月締済み」、「未連携」は、「当月未締め」と同義である。

【0038】

制御部１０２は、固定資産システム１００を統括的に制御するＣＰＵ等である。制御部１０２は、ＯＳ等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部１０２は、機能概念的に、固定資産台帳登録部１０２ａと、減価償却費算出部１０２ｂと、仕訳送信部１０２ｃと、マスタメンテ部１０２ｄと、画面表示制御部１０２ｅと、を備えている。

【0039】

固定資産台帳登録部１０２ａは、例えば、モニタ１１４に表示される固定資産台帳登録画面において、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データを入力して、データファイル１０６ｃに登録する。

【0040】

減価償却費算出部１０２ｂは、資産情報データに基づいて、償却情報データ及び月別償却情報データを生成して、データファイル１０６ｃに登録する。具体的には、減価償却費算出部１０２ｂは、資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する。

【0041】

月別償却情報データは、月毎に会計上締まっているか否かを示すフラグ（仕訳連携フラグ）を含み、減価償却費算出部１０２ｂは、フラグを、現在月管理マスタ１０６ａの現在月の前月までについて締済みに設定し、月度減価償却額をフラグが締め前の月に計上することにしてもよい。現在月管理マスタ１０６ａの現在月は、自動又は手動で設定されることにしてもよい。

【0042】

仕訳送信部１０２ｃは、データファイル１０６ｃに格納される月別償却情報データに基づいて、月毎に減価償却の仕訳を作成して、財務会計システム４００に送信する。仕訳送信部１０２ｃは、現在月管理マスタ１０６ａの現在月の設定が「自動」に設定されている場合には、仕訳送信が終了すると、現在月管理マスタ１０６ａの現在月を仕訳送信の送信月の次月に自動設定する。例えば、８月分の仕訳送信が完了した場合は、現在月管理マスタの現在月を「０９／０１」に設定する。

【0043】

マスタメンテ部１０２ｄは、例えば、モニタ１１４に表示されるマスタメンテ画面（図７参照）上でのオペレータによる入力装置１１２の操作に応じて、固定資産コントロールマスタ１０６ｂのデータを設定する。また、マスタメンテ部１０２ｄは、現在月管理マスタ１０６ａの現在月の設定が「手動」に設定されている場合には、例えば、モニタ１１４に表示されるマスタメンテ画面（図７参照）上でのオペレータによる入力装置１１２の操作に応じて、その現在月を設定する。

【0044】

画面表示制御部１０２ｅは、モニタ１１４に表示される各種画面（例えば、固定資産台帳画面、減価償却費計算画面、マスタメンテ画面等）の表示及びその入力を制御する。

【0045】

［３．具体例］
図１～図７を参照して、本実施の形態に係る固定資産システム１００の制御部１０２における処理の具体例を説明する。図２～図７は、本実施の形態に係る固定資産システム１００の制御部１０２における処理の具体例を説明するための図である。

【0046】

（３－１．減価償却イメージ）
図２は、従来のシステムのデータ構造を示す図である。図３は、本実施の形態のデータ構造を示す図である。本実施の形態では、図３に示すように、資産情報データに「取得判明月」を追加すると共に、新たに、「現在月」を保持する現在月管理マスタ１０６ａを設けた。

【0047】

図４は、従来の（課題解決前の）固定資産の償却イメージを説明するための図であり、月別の月別償却額を示している。以下では、事業年度が４月期首・３月期末の企業で、６月に購入した資産があることが９月で判明した場合について説明する。取得価額１，２００，０００円、定額法、１０年の耐用年数の資産（償却率０．１００）とする。６月取得のため、使用月は１０か月となる。年間償却額＝１，２００，０００×０．１００×１０か月÷１２か月＝１００，０００、月度償却額＝１００，０００÷１０か月＝１０，０００である。

【0048】

図４において、４月と５月は、月別償却額「￥０」、６月～３月は、月別償却額「￥１０，０００」となっている。６月取得となるため、６月から減価償却費を計上する動きとなる。しかしながら、９月に取得が判明する場合、既に過去月度となる６～８月は財務会計上の締めが行われており、減価償却費（仕訳）の計上を行うことができない。

【0049】

図５は、本実施の形態の固定資産システム１００の減価償却費算出部１０２ｂによる固定資産の償却イメージを説明するための図であり、図５（Ａ）は、月別償却情報データ、図５（Ｂ）は、資産情報データ、図５（Ｃ）は現在月管理マスタ１０６ａの例を示している。図４と同様の条件の場合について説明する。図５（Ａ）において、既に財務会計上は締めが行われている８月までは減価償却費の計上を行わないように制御する。

【0050】

他方、年間の減価償却額は法人税法に則り６月から取得したものとして計算するため、年額と月額合計の乖離が起きないようにする必要がある。そのため、６月～８月に計上すべきであった￥３０，０００（￥１０，０００／月の３か月分）を、財務会計上の締めが行われていない９月に加算計上することで（９月分は、￥１０，０００＋￥３０，０００＝￥４０，０００となる）、年額と月額合計の整合をとるものとする。内部的に、取得した月から現在月までを仕訳済という扱いにし、未仕訳月で減価償却費の計上を行うこととする。

【0051】

一般的に固定資産システムにおいて「締処理」を用意することで、締処理前の減価償却費の計上を行わせない制御が行われる。かかる制御の場合、システム全体が過去月度にさかのぼる処理ができなくなり、自由度が低くなる課題があった。そういった背景から、締処理という概念を廃止していたが、その結果、今回のような過去月度の取得があった場合の減価償却費のコントロールができないという課題があった。

【0052】

そこで、本実施の形態の固定資産システム１００では、かかる課題を解決する方法として、図５（Ｂ）に示すように、資産情報データに「取得判明月」を持たせ、固定資産台帳登録時に判明した月（現在月）を入力し、実際の償却開始日（月）から取得判明月前月までの減価償却費を計上せず、取得判明月に過去月度分も加味して計上するように制御する。

【0053】

通常の企業であれば、取得忘れの資産はごく稀に発生するので上記取得判明月を入力することで実現ができる。一方で、大企業や固定資産購入を現場部門に行わせている場合は、毎月大量に取得報告漏れが発生しうる。そのため、図５（Ｃ）に示すように、現在月管理マスタ１０６ａを持たせ、現在月を管理することで固定資産システム１００に登録するすべての取得資産に対しても同様の制御ができるようにする。

【0054】

（３－２．画面イメージ）
図６は、画面イメージの例を説明する。図６（Ａ）は、現在月管理マスタ１０６ａのデータ設定例、図６（Ｂ）は、固定資産台帳画面の表示例、図６（Ｃ）は減価償却費計算画面の表示例を示す図である。

【0055】

図６（Ａ）に示す現在月管理マスタ１０６ａの例では、現在月「２０２０／０９／０１」が設定されている。現在月「２０２０／０９／０１」が設定されているので、減価償却費算出部１０２ｂにより、月別償却情報データの仕訳連携フラグは、４月～８月については連携済、９月～３月については、未連携が設定される。

【0056】

図６（Ｂ）に示す固定資産台帳画面は、資産Ｎｏ、取得日、取得判明月、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数等の入力欄と、登録ボタン等を備えている。固定資産台帳画面で、入力欄でデータを入力して、登録ボタンを押すと、固定資産台帳登録部１０２ａにより、入力されたデータに応じた資産情報データがデータファイル１０６ｃに登録される。

【0057】

図６（Ｂ）に示す固定資産台帳画面の例では、資産Ｎｏ「ＡＡＡ」、取得日「２０２０／０６／０１」、取得判明月「２０２０／０９／０１」、償却開始日「２０２０／０６／０１」、取得金額「１，２００，０００」、償却方法「定額法」、耐用年数「１０年」が入力されている。

【0058】

減価償却費算出部１０２ｂは、減価償却費計算画面のホーム画面で、対象の資産情報データが指定されると、指定された資産情報データに基づいて、償却情報データ及び月別償却情報データを生成してデータファイル１０６ｃに格納する。図６（Ｃ）は、減価償却費計算画面の計算結果の表示例を示す図である。図６（Ｃ）に示す減価償却費計算画面の例では、年間償却情報（期首帳簿金額、減価償却費、期末帳簿価額）、月別償却費、月別の仕訳連携フラグと、登録ボタンが表示されている。

【0059】

図６（Ｃ）の計算結果は、図６（Ｂ）の固定資産台帳画面の固定資産データの例を使用したものである。計算は以下のようになる。年間償却額は６月取得のため、使用月は１０か月となる。年間償却額＝１，２００，０００（取得額）×０．１００（定額法で１０年の耐用年数の償却率０．１００）×１０か月÷１２か月＝１００，０００、月度償却額＝１００，０００÷１０か月＝１０，０００となる。月別償却額は、６月～８月に計上すべきであった￥３０，０００（￥１０，０００／月の３か月分）を、仕訳連携フラグ＝未連携（財務会計上の締めが行われていない）の９月に加算計上することで、年額と月額合計の整合をとる。

【0060】

図６（Ｃ）に示す減価償却費計算画面の例では、年間償却情報は、期首帳簿金額＝０、減価償却費＝１００，０００、期末帳簿価額＝１，１００，０００となる。月別償却については、４月～８月は、償却額＝￥０、仕訳連携フラグ＝連携済、９月は、償却額＝￥４０，０００、仕訳連携フラグ＝未連携、１０月～３月は、償却額＝￥１０，０００、仕訳連携フラグ＝未連携となる。

【0061】

（３－３．現在月管理マスタの設定）
図７を参照して、現在月管理マスタの設定（更新）イメージを説明する。図７（Ａ）は、固定資産コントロールマスタ１０６ｂのマスタメンテ画面例、図７（Ｂ）は、現在月管理マスタ１０６ａのマスタメンテ画面の例、図７（Ｃ）は、現在月管理マスタ１０６ａの設定例、図７（Ｄ）は、仕訳送信画面の表示例を示す図である。

【0062】

固定資産管理業務において締を行う判断は企業ごとに様々であり、（１）各拠点等からの報告完了を以て固定資産の計上に係る処理を締める場合と、（２）固定資産の減価償却仕訳等を財務会計に記帳することを以て固定資産の計上に係る処理を締める場合がある。

【0063】

現行の固定資産システムにおいては、各拠点等からの報告はシステム外で管理しているため、経理部等が主導にて締を行う要求が発生する。一方で減価償却仕訳等を財務会計に記帳する仕組みは、固定資産システム１００の仕訳送信処理にて実現している。そのため、本実施の形態では、現在月管理マスタ１０６ａの更新を手動・自動両方で設定できるようにしている。企業ごとに自動・手動を選択できるように、システムマスタ上に手動・自動を選ぶパラメータを用意し、そのパラメータに応じて更新手法を変更することができる。

【0064】

図７（Ａ）に示すように、固定資産コントロールマスタ１０６ｂのマスタメンテ画面では、固定資産コントロールマスタ１０６ｂの現在月更新区分を「０：手動」又は「１：自動」に設定することができる。固定資産コントロールマスタ１０６ｂの現在月更新区分：０（手動）の場合に、図７（Ｂ）に示す現在月管理マスタ１０６ａのマスタメンテ画面で現在月管理マスタ１０６ａの現在月を設定（手動）する。固定資産コントロールマスタ１０６ｂの現在月更新区分：１（自動）の場合に、図７（Ｄ）に示すように、仕訳送信部１０２ｃは、仕訳送信処理を実施した際に、図７（Ｃ）に示す現在月管理マスタ１０６ａの現在月を送信月の次月に自動更新する。

【0065】

以上説明したように、本実施の形態によれば、資産番号、資産の取得日、償却開始日、取得金額、償却方法、耐用年数、及び資産の取得判明月を含む資産情報データ入力して前記記憶部に登録する固定資産台帳登録部１０２ａと、前記資産情報データについて、資産の償却開始日に基づいて、使用月数を算出し、取得金額、償却方法、耐用年数、使用月数に基づいて、月度減価償却額を算出し、資産番号、月度減価償却額を含む月別償却情報データを生成し、その際、償却開始日の月から取得判明月の前月までの月度減価償却額を計上せず、取得判明月に過去月度分の月度減価償却額を纏めて計上する減価償却費算出部１０２ｂと、を備えているので、法人税法から要求される年間の減価償却費を正しく計算しつつ、既に会計上締まっている月度には減価償却費は計上させず、未締月で減価償却費の計上を行うことが可能となる。

【0066】

［４．国連が主導する持続可能な開発目標（ＳＤＧｓ）への貢献］
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、ＳＤＧｓの目標８及び９に貢献することが可能となる。

【0067】

また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、ＳＤＧｓの目標１２、１３及び１５に貢献することが可能となる。

【0068】

また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、ＳＤＧｓの目標１６に貢献することが可能となる。

【0069】

［５．他の実施形態］
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。

【0070】

例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。

【0071】

また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。

【0072】

また、固定資産システム１００に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。

【0073】

例えば、固定資産システム１００が備える処理機能、特に制御部１０２にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、ＣＰＵおよび当該ＣＰＵにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて固定資産システム１００に機械的に読み取られる。すなわち、ＲＯＭまたはＨＤＤ（Ｈａｒｄ Ｄｉｓｋ Ｄｒｉｖｅ）などの記憶部などには、ＯＳと協働してＣＰＵに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、ＲＡＭにロードされることによって実行され、ＣＰＵと協働して制御部を構成する。

【0074】

また、このコンピュータプログラムは、固定資産システム１００に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。

【0075】

また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、ＵＳＢ（Ｕｎｉｖｅｒｓａｌ Ｓｅｒｉａｌ Ｂｕｓ）メモリ、ＳＤ（Ｓｅｃｕｒｅ Ｄｉｇｉｔａｌ）カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ＲＯＭ、ＥＰＲＯＭ（Ｅｒａｓａｂｌｅ Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＥＥＰＲＯＭ（登録商標）（Ｅｌｅｃｔｒｉｃａｌｌｙ Ｅｒａｓａｂｌｅ ａｎｄ Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＣＤ－ＲＯＭ（Ｃｏｍｐａｃｔ Ｄｉｓｋ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＭＯ（Ｍａｇｎｅｔｏ－Ｏｐｔｉｃａｌ ｄｉｓｋ）、ＤＶＤ（Ｄｉｇｉｔａｌ Ｖｅｒｓａｔｉｌｅ Ｄｉｓｋ）、および、Ｂｌｕ－ｒａｙ（登録商標） Ｄｉｓｃ等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。

【0076】

また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、ＯＳに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。

【0077】

記憶部１０６に格納される各種のデータベース等は、ＲＡＭ、ＲＯＭ等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。

【0078】

また、固定資産システム１００は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、固定資産システム１００は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア（プログラムまたはデータ等を含む）を実装することにより実現してもよい。

【0079】

更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。

【符号の説明】

【0080】

１００ 固定資産システム
１０２ 制御部
１０２ａ 固定資産台帳登録部
１０２ｂ 減価償却費算出部
１０２ｃ 仕訳送信部
１０２ｄ マスタメンテ部
１０２ｅ 画面表示制御部
１０４ 通信インターフェース部
１０６ 記憶部
１０６ａ 現在月管理マスタ
１０６ｂ 固定資産コントロールマスタ
１０６ｃ データファイル
１０８ 入出力インターフェース部
１１２ 入力装置
１１４ 出力装置
２００ サーバ
２５０ 端末
３００ ネットワーク
４００ 財務会計システム

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】