(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184095
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】レゾルバ用輪状絶縁キャップ構造
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20221206BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091738
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅宏
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605CC06
5H605EC07
5H605EC08
5H605GG18
(57)【要約】
【課題】本発明は、別々構成の各輪状絶縁キャップを用いて、端子台の剛性の向上及び車輌へのレゾルバ搭載を可能とすることである。
【解決手段】本発明によるレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造は、所定角度間隔毎に突出する多数の突出磁極(10)を有する輪状ステータ(2)の一面(2A)及び他面(2B)に設けられた第1、第2輪状絶縁キャップ(3,4)と、前記第1輪状絶縁キャップ(3)のみの周縁(3C)の一部に突出して形成され、端子ピン(13)を保持するための端子台(12)と、前記端子台(12)に一体に形成されたハリ部(11)と、からなり、前記端子台(12)の剛性を、前記ハリ部(11)が形成されていない時の従来剛性よりも前記ハリ部(11)によって向上させる構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔毎に突出する多数の突出磁極(10)を有する輪状ステータ(2)の一面(2A)及び他面(2B)に設けられた第1、第2輪状絶縁キャップ(3,4)と、前記第1輪状絶縁キャップ(3)のみの周縁(3C)の一部に突出して形成され、端子ピン(13)を保持するための端子台(12)と、前記端子台(12)に一体に形成されたハリ部(11)と、からなり、
前記端子台(12)の剛性を、前記ハリ部(11)が形成されていない時の従来剛性よりも前記ハリ部(11)によって向上させる構成としたことを特徴とするレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造。
【請求項2】
前記第1、第2輪状絶縁キャップ(3,4)は、互いに接続及び固定されることなく、かつ、互いに同一外径の前記第1、第2輪状絶縁キャップ(3,4)を用いて、複数の互いに異なる外径形状の前記輪状ステータ(2)に対して装着することができるように構成したことを特徴とする請求項1記載のレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造。
【請求項3】
前記輪状ステータ(2)を有するレゾルバ(21)は、車輌に装着されていることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造。
【請求項4】
前記ハリ部(11)は、少なくとも一対よりなり、かつ、前記端子台(12)の突出方向(P)に沿って突条状に延設されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ用輪状絶縁キャップ構造に関し、特に、一対の第1、第2輪状絶縁キャップを輪状ステータに対して接続又は固定することなく装着する場合、一方の第1輪状絶縁キャップのみに設けられた端子台にハリ部を設け、端子台の剛性を従来よりも向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の輪状ステータに設けられる輪状絶縁キャップ構造の第1従来構成としては、一般に、
図7で示すように、レゾルバ21のマグネットワイヤからなるステータ巻線1と輪状ステータ2の突出磁極10との間の絶縁を達成するために、輪状ステータ2の一面2A側と他面2B側に、射出成形によるインサート成形にて一体成形された第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を有する一体状輪状絶縁キャップ5が設けられている構成が一般に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、第2従来構成としては、特に、図示していないが、前述の
図7に沿って説明すると、前記第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を、各々別物として射出成形し、射出成形後の一対からなる第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を輪状ステータ2の一面2A側と他面2B側に各々配設し、例えば、各輪状絶縁キャップ3、4に図示しない周知の突起又は受孔を設け、前記突起を輪状ステータ2のスロット2Cに貫通させて前記受孔に挿入することによって、輪状ステータ2の一面2Aと他面2Bに第1、第2輪状絶縁キャップ3、4をそれぞれ固定させ、各突出磁極10の外周に前記第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を介してステータ巻線1を巻回させている。すなわち、第1従来構成においては、1回の射出成形によって第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を輪状ステータ2と共にインサート成形による一体成形で形成し、第2従来構成においては、第1、第2輪状絶縁キャップ3、4を別々に独立して成形して輪状ステータ2を間に挟む構成であり、本発明は、後者の第2従来構成に属し、ハリ部によって端子台12の剛性を向上させるようにした構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来の第1従来構成においては、輪状ステータ2を射出成形機の金型内の所定位置に、中子を介して装着し、金型内に対して所定の樹脂を射出することにより、輪状ステータ2に対して一対の第1、第2輪状絶縁キャップ3、4及び端子台12を一体状に成形していたため、所定外形寸法の輪状ステータにしか適用できず、そのため、輪状ステータの外形寸法が変更される毎に、金型の変更をして別サイズの成形をしなければならず、金型の変更及び成形の追加によってレゾルバのコストダウンを達成することが非常に困難であった。
【0006】
また、前述の第2従来構成においては、一対の予め射出成形された一体ではなく別々の独立した第1、第2輪状絶縁キャップ3、4によって前記輪状ステータ2を挟むと共に、第1、第2輪状絶縁キャップ3、4に設けられていた図示しない周知の突起と受孔を用いてスナップ式に一体状接続を行っていたため、輪状ステータの外径が変わる毎にサイズを合わせた第1、第2輪状絶縁キャップを必要とし、前述の第1従来構成と同様に生産性向上の大きい障害となっていた。
また、前述の第1、第2従来構成においては、端子台12に対して特に、その剛性を向上させるための対策を施していなかったため、車輌の振動に対して端子台が共振し、損傷が発生することもあった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、一対の第1、第2輪状絶縁キャップを輪状ステータに対して接続又は固定することなく装着する場合、一方の第1輪状絶縁キャップのみの端子台にハリ部を設けて端子台の剛性を従来よりも向上させ、輪状ステータの外径に関係なく、安定した輪状絶縁キャップを得ることである。すなわち、構成としては、第2従来構成の改良型に相当するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造は、所定角度間隔毎に突出する多数の突出磁極を有する輪状ステータの一面及び他面に設けられた第1、第2輪状絶縁キャップと、前記第1輪状絶縁キャップのみの周縁の一部に突出して形成され、端子ピンを保持するための端子台と、前記端子台に一体に形成されたハリ部と、からなり、前記端子台の剛性を、前記ハリ部が形成されていない時の従来剛性よりも前記ハリ部によって向上させる構成であり、また、前記第1、第2輪状絶縁キャップは、互いに接続及び固定されることなく、かつ、互いに同一外径の前記第1、第2輪状絶縁キャップを用いて、複数の互いに異なる外径形状の前記輪状ステータに対して装着することができるようにした構成であり、また、前記輪状ステータを有するレゾルバは、車輌に装着されている構成であり、また、前記ハリ部は、少なくとも一対よりなり、かつ、前記端子台の突出方向に沿って突条状に延設されている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造は以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、所定角度間隔毎に突出する多数の突出磁極を有する輪状ステータの一面及び他面に設けられた第1、第2輪状絶縁キャップと、前記第1輪状絶縁キャップのみの周縁の一部に突出して形成され、端子ピンを保持するための端子台と、前記端子台に一体に形成されたハリ部と、からなり、前記端子台の剛性を、前記ハリ部が形成されていない時の従来剛性よりも前記ハリ部によって向上させるようにした構成であるため、一対の輪状絶縁キャップを接続することなく、車載の振動に耐える高耐久のレゾルバが得られる。
また、前記第1、第2輪状絶縁キャップは、互いに接続及び固定されることなく、かつ、互いに同一外径の前記第1、第2輪状絶縁キャップを用いて、複数の互いに異なる外径形状の前記輪状ステータに対して装着することができるようにした構成であるため、同一の外形寸法の各輪状絶縁キャップによってレゾルバが製造でき、レゾルバ製造のコストダウンを達成することができる。また、多種の外径でなく、1種の外径の輪状絶縁キャップによって、多種の外径の輪状ステータに適用できる。
また、前記輪状ステータを有するレゾルバは、車輌に装着することができることにより、ハリ部により車輌との共振を防止して車載用レゾルバとして通用するため、レゾルバの原価を大幅に低下させることができる。
また、前記ハリ部は、少なくとも一対よりなり、かつ、前記端子台の突出方向に沿って突条状に延設されていることにより、端子台の根元に十分な長さのハリ部を形成して十分な剛性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバ用の輪状ステータに設けられる一方の第1輪状絶縁キャップのみの全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の第1輪状絶縁キャップを示すA-A’断面図である。
【
図5】本発明による第1、第2輪状絶縁キャップを輪状ステータに搭載したレゾルバを示す構造の斜視図である。
【
図7】従来のレゾルバ用輪状ステータ構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一対の第1、第2輪状絶縁キャップを輪状ステータに対して接続又は固定することなく装着する場合、一方の第1輪状絶縁キャップのみに設けられた端子台にハリ部を設け、端子台の剛性を従来よりも向上させることである。
【実施例0012】
以下、図面と共に、本発明によるレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等の部分には、同一符号を用いて説明する。
図1は、
図7の第1、第2輪状絶縁キャップ3、4の中の第1輪状絶縁キャップ3のみを示している。本実施の形態による一対のハリ部11をこの第1輪状絶縁キャップ3の端子台12に形成した状態を示している。本実施の形態における
図1の前記第1輪状絶縁キャップ3のみの平面図の構成を
図7の従来構成の第1輪状絶縁キャップ3と比較すると、前記ハリ部11が従来の第1輪状絶縁キャップ3に追加されていることのみである。
【0013】
図1の第1輪状絶縁キャップ3は、前述のように、
図2及び
図5で示される所定角度間隔毎に内方に向けて突出した多数の突出磁極10を有する輪状ステータ2の一面2A及び他面2Bのうち、一面2Aに装着されており、前記他面2Bには、第2輪状絶縁キャップ4が前記第1輪状絶縁キャップ3と同様の構成で装着されている。
【0014】
図3に示す前記第1、第2輪状絶縁キャップ3、4の中の第1輪状絶縁キャップ3のみの周縁3Cの一部には、前記周縁3Cから突出して端子台12が形成され、この端子台12は端子ピン13を保持すると共に、この端子台12には、ハリ部11が一体に形成され、このハリ部11は、少なくとも一対よりなり、かつ、前記端子台12の突出方向Pに沿って突条状に延設されている。前記ハリ部11により、端子台12の剛性を、ハリ部11が形成されていない時の従来剛性よりも大幅に剛性を向上させることができる。
【0015】
前記輪状ステータ2の一面2Aに設けられた第1輪状絶縁キャップ3と、その他面2Bに設けられた第2輪状絶縁キャップ4は、従来構成のように、突起と受孔の組み合わせ構成、又は、輪状ステータ2の寸法に合わせて、各輪状絶縁キャップ3、4の外径を変更するための金型のサイズ変更構成等の細工は一切必要ではなく、前記各輪状絶縁キャップ3、4は、前記ハリ部11によって端子台12が十分な剛性を有しているため、互いに接続及び固定されることなく、同一外径の各輪状絶縁キャップ3、4により、複数の互いに異なる外径形状の輪状ステータ2に対して装着することができる。尚、前記各輪状絶縁キャップ3、4は、前記輪状ステータ2の一面2Aと他面2Bに各々装着された時に、各突出磁極10に各輪状絶縁キャップ3、4の各舌片3A、4Aを介してステータ巻線1が巻回され、その時に輪状ステータ2に各輪状絶縁キャップ3、4が装着されていることとなる。
【0016】
前記ハリ部11を有する端子台12を一体とした第1輪状絶縁キャップ3を有する輪状ステータ2(
図5に示す)とロータ20とからなるレゾルバ21を自動車等の車輌(図示せず)に搭載して走行した結果、車輌の振動に対して前記端子台12は、前記ハリ部11によって剛性が従来剛性よりも向上しているため、共振することはなく、端子台12が損傷することなく、安定したレゾルバ出力を得ることができた。
本発明によるレゾルバ用輪状絶縁キャップ構造は、第1輪状絶縁キャップのみに設けられた端子台にハリ部が形成されているため、端子台12の剛性を従来よりも向上させることができ、車輌に搭載した場合も、車輌の振動に共振することなく、安定したレゾルバ出力を得ることができる。