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特開2022-184116モノマー製造システム及びモノマー製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184116
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】モノマー製造システム及びモノマー製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20221206BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 29/128 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C07C69/82 A
C07C67/08
C07C31/20 A
C07C29/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091775
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 亘
(72)【発明者】
【氏名】清木 義夫
(72)【発明者】
【氏名】源田 稔
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA23
4F401AC04
4F401AC10
4F401AC11
4F401AD07
4F401BA06
4F401CA10
4F401CA14
4F401CA51
4F401CA67
4F401CB14
4F401CB34
4F401CB40
4F401DA12
4F401DA16
4F401EA59
4F401FA09Y
4F401FA09Z
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC48
4H006AC91
4H006BB14
4H006BC10
4H006FG24
(57)【要約】
【課題】モノマーの収率を向上させる。
【解決手段】モノマー製造システムは、ポリエステル溶液が貯留される溶解部と、ポリエステル溶液と反応溶媒とが導入されて、ポリエステル溶液中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルを含む第1解重合ポリエステルを反応溶媒に抽出する第1反応部と、第1解重合ポリエステルを更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルである第2解重合ポリエステルを生成する第2反応部と、第2解重合ポリエステルが溶解した反応溶媒を、反応溶媒と、カルボン酸由来のモノマーと、アルコール成分のモノマーと、反応溶媒、カルボン酸由来のモノマー、アルコール成分のモノマー以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質とに分離する分離部と、カルボン酸由来のモノマーと残存物質とを、溶解部に導入する導入管と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸由来のモノマーにポリエステルが溶解したポリエステル溶液が貯留される溶解部と、
前記ポリエステル溶液と、ポリエステルと反応する反応溶媒とが導入されて、前記ポリエステル溶液と前記反応溶媒とを接触させることで、前記ポリエステル溶液中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルを含む第1解重合ポリエステルを前記反応溶媒に抽出する第1反応部と、
前記第1解重合ポリエステルが抽出された前記反応溶媒が導入されて、前記第1解重合ポリエステルを更に前記反応溶媒に反応させることで、前記第1解重合ポリエステルを更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルである第2解重合ポリエステルを生成する第2反応部と、
前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒が導入されて、前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒を、前記反応溶媒と、前記第2解重合ポリエステルに含まれるカルボン酸由来のモノマーと、前記第2解重合ポリエステルに含まれるアルコール成分のモノマーと、前記反応溶媒、カルボン酸由来のモノマー、アルコール成分のモノマー以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質とに分離する分離部と、
前記カルボン酸由来のモノマーと、前記残存物質とを、前記溶解部に導入する導入管と、
を有する、
モノマー製造システム。
【請求項2】
前記導入管は、前記分離部で分離された前記カルボン酸由来のモノマーの一部と、前記分離部で分離された前記残存物質の一部とを、前記溶解部に導入する、請求項1に記載のモノマー製造システム。
【請求項3】
前記ポリエステルを含むポリエステル原料、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質の、前記溶解部への供給を制御する制御部を更に有し、
前記制御部は、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質が前記溶解部に導入された後に、前記ポリエステル原料を前記溶解部に導入する、請求項1又は請求項2に記載のモノマー製造システム。
【請求項4】
前記ポリエステルを含むポリエステル原料、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質の、前記溶解部への供給を制御する制御部を更に有し、
前記制御部は、前記ポリエステル原料の供給量に対する、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質の合計供給量の重量比率を、0.05以上5以下とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモノマー製造システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記カルボン酸由来のモノマーに対する前記残存物質の供給量の重量比率を、0以上5以下とする、請求項4に記載のモノマー製造システム。
【請求項6】
前記溶解部が複数設けられる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモノマー製造システム。
【請求項7】
前記ポリエステル、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質が導入されて、前記ポリエステル溶液を生成する第1溶解部と、
前記第1溶解部で生成された前記ポリエステル溶液が導入されて、導入された前記ポリエステル溶液を前記第1反応部に導出する第2溶解部と、を有する、請求項6に記載のモノマー製造システム。
【請求項8】
前記ポリエステル、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質が導入されて、前記ポリエステル溶液を生成する第1溶解部及び第2溶解部を有し、
前記第1溶解部に前記ポリエステル、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質が導入されている期間においては、前記第2溶解部から前記第1反応部に、前記ポリエステル溶液が導出され、
前記第2溶解部に前記ポリエステル、前記カルボン酸由来のモノマー、及び残存物質が導入されている期間においては、前記第1溶解部から前記第1反応部に、前記ポリエステル溶液が導出される、請求項6に記載のモノマー製造システム。
【請求項9】
前記第1反応部には、前記ポリエステル溶液と前記反応溶媒とが、互いに向き合う方向で導入される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモノマー製造システム。
【請求項10】
前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒として前記分離部に導出されずに、前記第1反応部及び前記第2反応部に残存した成分である非抽出物を、前記溶解部に導入する配管を更に有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のモノマー製造システム。
【請求項11】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであり、前記反応溶媒は、メタノールであり、前記カルボン酸由来のモノマーは、テレフタル酸ジメチルであり、前記アルコール成分のモノマーは、エチレングリコールである、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のモノマー製造システム。
【請求項12】
溶解部において、カルボン酸由来のモノマーにポリエステルが溶解したポリエステル溶液を生成するステップと、
前記ポリエステル溶液と反応溶媒とを接触させることで、前記ポリエステル溶液中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルを含む第1解重合ポリエステルを前記反応溶媒に抽出するステップと、
前記第1解重合ポリエステルを更に前記反応溶媒に反応させることで、前記第1解重合ポリエステルを更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルである第2解重合ポリエステルを生成するステップと、
前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒を、前記反応溶媒と、前記第2解重合ポリエステルに含まれるカルボン酸由来のモノマーと、前記第2解重合ポリエステルに含まれるアルコール成分のモノマーと、前記反応溶媒、カルボン酸由来のモノマー、アルコール成分のモノマー以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質とに分離するステップと、
前記カルボン酸由来のモノマーと、前記残存物質とを、前記溶解部に導入するステップと、
を有する、
モノマー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モノマー製造システム及びモノマー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルのリサイクルにおいて、ポリエステルの重合を解いてモノマー化して、再度重合を行うことが試みられるようになっている。特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート(PET)とテレフタル酸ジメチル(DMT)を混合溶解し、第一反応部において、超臨界状態のメタノールを作用させてPETを解重合し、第二反応部において、解重合したPETをメタノールと更に反応させて、PETをDMTとエチレングリコール(EG)へとモノマー化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4008214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにポリエステルをリサイクルする際に、モノマーの収率を向上させることが求められている。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、モノマーの収率を向上できるモノマー製造システム及びモノマー製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るモノマー製造システムは、カルボン酸のモノマーにポリエステルが溶解したポリエステル溶液が貯留される溶解部と、前記ポリエステル溶液と、ポリエステルと反応する反応溶媒とが導入されて、前記ポリエステル溶液と前記反応溶媒とを接触させることで、前記ポリエステル溶液中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルである第1解重合ポリエステルを前記反応溶媒に抽出する第1反応部と、前記第1解重合ポリエステルが抽出された前記反応溶媒が導入されて、前記第1解重合ポリエステルを更に前記反応溶媒に反応させることで、前記第1解重合ポリエステルを更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルである第2解重合ポリエステルを生成する第2反応部と、前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒が導入されて、前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒を、前記反応溶媒と、前記第2解重合ポリエステルに含まれるカルボン酸由来のモノマーと、前記第2解重合ポリエステルに含まれるアルコール成分のモノマーと、前記反応溶媒、カルボン酸由来のモノマー、アルコール成分のモノマー以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質とに分離する分離部と、前記カルボン酸由来のモノマーと、前記残存物質とを、前記溶解部に導入する導入管と、を有する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るモノマー製造方法は、溶解部において、カルボン酸由来のモノマーにポリエステルが溶解したポリエステル溶液を生成するステップと、前記ポリエステル溶液と前記反応溶媒とを接触させることで、前記ポリエステル溶液中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルである第1解重合ポリエステルを前記反応溶媒に抽出するステップと、前記第1解重合ポリエステルを更に前記反応溶媒に反応させることで、前記第1解重合ポリエステルを更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルである第2解重合ポリエステルを生成するステップと、前記第2解重合ポリエステルが溶解した前記反応溶媒を、前記反応溶媒と、前記第2解重合ポリエステルに含まれるカルボン酸由来のモノマーと、前記第2解重合ポリエステルに含まれるアルコール成分のモノマーと、前記反応溶媒、カルボン酸由来のモノマー、アルコール成分のモノマー以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質とに分離するステップと、前記カルボン酸由来のモノマーと、前記残存物質とを、前記溶解部に導入するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モノマーの収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態におけるポリエステルのリサイクル工程の模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係るモノマー製造システムの模式図である。
図3図3は、モノマー製造システムの動作フローを説明するフローチャートである。
図4図4は、反応部の他の例を示す模式図である。
図5図5は、第2実施形態に係る溶解部の模式図である。
図6図6は、第2実施形態の他の例に係る溶解部の模式図である。
図7図7は、第3実施形態に係るモノマー製造システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
(第1実施形態)
(リサイクル工程)
図1は、本実施形態におけるポリエステルのリサイクル工程の模式図である。本実施形態においては、ポリエステル原料Pmを解重合してモノマー化し、モノマーを再度重合させることで、ポリエステル原料Pmをリサイクル(再生)する工程を行う。具体的には、図1に示すように、ポリエステル原料Pmをフレーク化し(ステップS100)、反応溶媒Mと混合してポリエステル原料Pmを解重合し(ステップS102)、解重合されたポリエステルのモノマーを精製(分離)してカルボン酸由来のモノマーDとアルコール成分のモノマーEとを生成し(ステップS104)、モノマーDを加水分解して副生する反応溶媒Mを分離し(ステップS106)、モノマーDを加水分解して生成したモノマーFとモノマーEとを重合させて(ステップS108)、ポリエステル原料Pmを再生する。なお、本実施形態のモノマー製造システム1は、ステップS108のように再重合する処理まで行わずに、ステップS102、及びステップS104に示すモノマーD、Eを生成する処理のみを行ってよい。また、本実施形態では、解重合する際に、ポリエステル原料Pmに対して、解重合反応で生成されたモノマーDや、残存物質Rも添加するが、詳しくは後述する。
【0012】
(ポリエステル)
本実施形態において解重合の対象となるポリエステル原料Pmは、ポリエステルを含有する物質であるが、ポリエステル成分のみを含有するものに限られず、ポリエステル成分以外の成分(不純物など)も含んでよい。ポリエステル原料Pmは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンブチレンテレフタレート(PEBT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリカーボネート(PC)などの廃品が挙げられる。もっとも代表的な適用例は、PETボトルの再生である。その他、写真用フィルムに代表されるPETフィルム、磁気テープに代表されるPETテープ、ポリエステル繊維として使用されるPET繊維、カップ、トレー、透明包装などに利用されるPETシートなども処理することができる。
【0013】
(反応溶媒)
反応溶媒Mは、ポリエステルと反応して、ポリエステルを解重合させる溶媒である。反応溶媒Mは、例えば、メタノール、エタノール、及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つであってよい。
【0014】
(カルボン酸由来のモノマー)
カルボン酸由来のモノマーDは、ポリエステルの解重合反応により生成された、カルボン基を有するモノマーである。モノマーDは、例えば、カルボン酸ジメチルやカルボン酸ジエチルであってよい。さらに言えば、モノマーDは、テレフタル酸のモノマーであることが好ましく、例えばテレフタル酸ジメチル(DMT)であってよい。
【0015】
(アルコール成分のモノマー)
アルコール成分のモノマーEは、ポリエステルの解重合反応により生成された、アルコール成分のモノマーである。モノマーEは、例えば、ジヒドロキシ化合物(二価アルコール)であってよく、さらに言えば、エチレングリコール(EG)であってよい。
【0016】
以降においては、ポリエステルがPETであり、反応溶媒Mがメタノールであり、モノマーDがDMTであり、モノマーEがEGである場合を例にして説明する。
【0017】
(モノマー製造システム)
図2は、第1実施形態に係るモノマー製造システムの模式図である。第1実施形態に係るモノマー製造システム1は、ポリエステル原料Pmに含まれるポリエステルをモノマー化して、モノマーD、Eを生成するシステムである。図1に示すように、モノマー製造システム1は、貯留部10と、溶解部12と、溶媒貯留部14と、第1反応部16A及び第2反応部16Bを含む反応部16と、分離部18と、制御部20と、を有する。
【0018】
(貯留部)
貯留部10は、ポリエステル原料Pmが導入されて、ポリエステル原料Pmが貯留される槽(ホッパ)である。本実施形態においては、貯留部10には、フレーク化されたポリエステル原料Pmが貯留されるが、ポリエステル原料Pmの形状や大きさは任意であってよい。貯留部10は、導入管10aを介して溶解部12に接続されている。貯留部10内のポリエステル原料Pmは、導入管10aを通って、溶解部12に供給される。導入管10aには、貯留部10から溶解部12に供給されるポリエステル原料Pmの量を調整する調整部10bが設けられている。調整部10bは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、貯留部10内のポリエステル原料Pmを溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、貯留部10内のポリエステル原料Pmの溶解部12への供給を停止させる。ただし、調整部10bは、開閉弁であることに限られず、溶解部12へのポリエステル原料Pmの供給を調整可能な任意の機構であってよい。
【0019】
(溶解部)
溶解部12は、ポリエステル原料Pmに含まれるポリエステルがモノマーDに溶解したポリエステル溶液Pが貯留される槽である。溶解部12には、モノマーDとポリエステル原料Pmとが供給されて、溶解部12内でポリエステル原料Pmに含まれるポリエステルがモノマーDに溶解して、ポリエステル溶液Pが生成される。このようにポリエステルをモノマーDに溶解させることで、粘度を低下させて流動性を向上させることができ、ポリエステルを容易に反応部16に導出できる。さらに言えば、溶解部12には、後述する残存物質Rも供給され、溶解部12内で、ポリエステル原料Pmに含まれるポリエステルがモノマーD及び残存物質Rに含まれるオリゴマーに溶解して、ポリエステル溶液Pが生成される。すなわち、ポリエステル溶液Pは、ポリエステルがモノマーD及び残存物質Rに溶解した溶液といえる。ただし、ポリエステル溶液Pは、ポリエステルの全量がモノマーD及び残存物質Rに溶解していることに限られず、少なくとも一部のポリエステルが、モノマーD及び残存物質Rに溶解しない状態となっていてもよい。
【0020】
溶解部12は、導入管12aを介して、後述する第1反応部16Aに接続されている。溶解部12内のポリエステル溶液Pは、導入管12aを通って、第1反応部16Aに供給される。また、導入管12aには、供給部12b及び加熱部12cが設けられている。供給部12bは、溶解部12内のポリエステル溶液Pを第1反応部16Aに供給させる機構であり、本実施形態ではポンプである。加熱部12cは、ポリエステル溶液Pを加熱する機構である。
【0021】
(溶媒貯留部)
溶媒貯留部14は、反応溶媒Mが導入されて、反応溶媒Mが貯留される槽である。溶媒貯留部14は、導入管14aを介して反応部16に接続されている。溶媒貯留部14内の反応溶媒Mは、導入管14aを通って、反応部16に供給される。より詳しくは、導入管14aには、反応溶媒Mを加圧して加熱する加熱昇圧部14bが設けられている。加熱昇圧部14bは、反応溶媒Mを加圧して加熱することで、反応溶媒Mを超臨界状態、又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とする。反応部16には、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mが供給される。
【0022】
(反応部)
反応部16は、内部にポリエステル溶液P及び反応溶媒Mが供給される容器である。反応部16は、第1反応部16A及び第2反応部16Bを含む。
【0023】
(第1反応部)
第1反応部16Aは、反応部16内に形成される。本実施形態では、第1反応部16Aは、反応部16内において、充填材が充填された箇所といえる。第1反応部16Aには、充填剤として、気液又は液液の接触装置に用いられる公知のものを使用でき、例えば重油と水を接触させて有効成分を取り出す接触装置に用いられる充填材と同様なものを用いることができる。充填材の具体例としては、SUS 等からなるパイプ、ラシヒリング、ベルルサドル、テラレット等が挙げられる。
【0024】
第1反応部16Aには、導入管12aが接続される。より詳しくは、第1反応部16Aには、導入管12aの、溶解部12からのポリエステル溶液Pが導入される開口である導入口16Cが接続される。導入口16Cは、第1反応部16Aの第1方向D1側の表面16A1に接続される。導入管12aは、導入口16Cが、第1方向D1と反対方向の第2方向D2側を向いて開口するように、表面16A1に接続される。このように、本実施形態では、第2方向D2側を向いて開口する導入口16Cが、第1反応部16Aの表面16A1に接続されているが、それに限られない。例えば、導入口16Cは、第1反応部16Aに直接接続されていなくてもよく、第2方向D2側を向いて開口する導入口16Cが、反応部16内における第1反応部16Aの表面16A1よりも第1方向D1側に接続されていてもよい。
【0025】
反応部16には、導入管14aが接続される。より詳しくは、反応部16には、導入管14aの、溶媒貯留部14からの反応溶媒Mが導入される開口である導入口16Dが接続される。導入口16Dは、第1反応部16Aの第2方向D2側の表面16A2よりも、第2方向D2側に接続される。導入管14aは、導入口16Dが、第1方向D1側を向いて、又は側面から中心側を向いて開口するように、表面16A2よりも第2方向D2側に接続される。このように、本実施形態では、第1方向D1側を向いて、又は側面から中心側を向いて開口する導入口16Dが、第1反応部16Aの表面16A2よりも第2方向D2側に接続されているが、それに限られない。例えば、導入口16Dは、第1反応部16Aに直接接続されていてもよく、第1反応部16Aの表面16A2に接続されていてもよい。
【0026】
このように、本実施形態においては、ポリエステル溶液Pが導入される導入口16Cが第2方向D2を向いて開口し、反応溶媒Mが導入される導入口16Dが第1方向D1を向いて、又は側面から中心側を向いて開口する。従って、第1反応部16Aには、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとが、互いに向き合う方向で導入される。
【0027】
導入口16Cから第1反応部16Aに導入されたポリエステル溶液Pは、第1反応部16Aの充填材の表面上を、第2方向D2に向かって移動する。一方、導入口16Dから導入された超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mは、第1反応部16A内を、第1方向D1に向かって移動する。第1反応部16Aにおいて、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mは、ポリエステル溶液Pと接触する。ポリエステル溶液P中のポリエステルは、反応溶媒Mにより解重合(低分子量化)し、解重合されたポリエステルは、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mに抽出される。以下、第1反応部16Aにおいて解重合されたポリエステルを、第1解重合ポリエステルP1と記載し、第1解重合ポリエステルP1と反応溶媒Mとの混合物(第1解重合ポリエステルP1が抽出された反応溶媒M)を、第1溶媒M1と記載する。第1解重合ポリエステルP1を含む第1溶媒M1は、第1反応部16Aを第1方向D1側に進行して、第1反応部16Aの第1方向D1側に導出される。
【0028】
なお、第1解重合ポリエステルP1は、ポリエステル溶液P中のポリエステルが解重合されることで生成されたモノマーD、Eと、ポリエステル溶液Pに元々混合されていたモノマーDと、ポリエステルが解重合されることで生成されたオリゴマーと、を含む。ここでのオリゴマーとは、モノマー化されていないが、ポリエステルから解重合されたカルボン酸やアルコールのオリゴマー(ポリエステルよりも分子量が小さいカルボン酸やアルコールのオリゴマー)といえる。また、ポリエステル溶液P中の残存物質Rに含まれるオリゴマーも、反応溶媒Mによって解重合される。そのため、第1解重合ポリエステルP1は、解重合された残存物質Rも含む。解重合された残存物質Rとは、残存物質Rに含まれて解重合されたオリゴマーや、残存物質Rに含まれるオリゴマーが解重合されることで生成されたモノマーD、Eなどである。
【0029】
(第2反応部)
第2反応部16Bは、反応部16内に形成されており、第2反応部16Bは、第1反応部16Aから第1溶媒M1が導出される箇所に形成されている。本実施形態では、第1溶媒M1は第1方向D1側に導出されるため、第2反応部16Bは、第1反応部16Aの第1方向D1側に形成された空間といえる。
【0030】
第2反応部16Bにおいては、第1溶媒M1に含まれる第1解重合ポリエステルP1が、第1溶媒M1に含まれる反応溶媒Mにより更に解重合(低分子量化)する。以下、第2反応部16Bにおいて更に解重合された第1解重合ポリエステルP1を、第2解重合ポリエステルP2と記載し、第2解重合ポリエステルP2と反応溶媒Mとの混合物(第2解重合ポリエステルPEが含まれる反応溶媒M)を、第2溶媒M2と記載する。第2反応部16Bには、導出管16aが接続される。より詳しくは、第2反応部16Bには、導出管16aの、第2反応部16Bからの第2溶媒M2が導出される開口である導出口16Eが接続される。第2反応部16B内の第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2は、導出口16Eから導出管16aを通って、第2反応部16Bの外部に導出される。
【0031】
なお、第2解重合ポリエステルP2は、第1解重合ポリエステルP1中のオリゴマーが解重合されることで生成されたモノマーD、E、及び、第1解重合ポリエステルP1が解重合されることで生成されたオリゴマーを含む。
【0032】
また、反応部16の底部には、排出管16bが接続されている。より詳しくは、反応部16の底部には、排出管16bの、反応部16内の非抽出物(後述)が排出される開口である排出口16Fが接続される。排出管16bからは、反応溶媒Mに抽出されなかった金属化合物などの不純物や、反応溶媒Mに抽出されなかった未分解ポリエステルの残滓などを含む、非抽出物が排出される。すなわち、反応部16の底部の非抽出物は、排出口16Fから排出管16bを通って、反応部16の外部に排出される。排出管16bから排出される非抽出物は、ポリエステル溶液Pのうちで、第2溶媒M2(第2解重合ポリエステルP2が含まれる反応溶媒M)として分離部18に導出されずに、第1反応部16A及び第2反応部16Bに残存した成分といえる。
【0033】
また、反応部16には、反応部16の内部を加熱する加熱部と、反応部16の内部の圧力を所定値以上に保つ加圧部とが設けられていてもよい。反応部16の内部の温度は、250℃以上400℃以下とされることが好ましく、250℃以上350℃以下とされることがより好ましい。また、反応部16の内部の圧力は、1MPa以上30MPa以下が好ましく、6MPa以上25MPa以下とされることがより好ましい。加圧部及び加熱部は、制御部20により制御されてよい。
【0034】
(分離部)
分離部18は、第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2が導入されて、第2溶媒M2を、反応溶媒Mと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるカルボン酸由来のモノマーDと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるアルコール成分のモノマーEと、残存物質Rとに、分離する。残存物質Rは、第2溶媒M2のうちの、反応溶媒M、モノマーD、及びモノマーE以外の成分であり、オリゴマーが含まれる。
【0035】
本実施形態においては、分離部18は、第1分離部18Aと、第2分離部18Bと、第3分離部18Cとを有する。
【0036】
第1分離部18Aは、導出管16aに接続される分離塔である。第1分離部18Aには、導出管16aを介して、第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2が導入される。第1分離部18Aは、第2溶媒M2を、低沸点成分と、低沸点成分よりも沸点が高い高沸点成分とに分離する。例えば、第1分離部18Aにおいては、第2溶媒M2を所定温度として、気体となった成分を低沸点成分とし、液体成分を高沸点成分としてよい。第1分離部18Aには、導出管18Aa、18Abが接続されている。導出管18Aaからは、低沸点成分が導出され、導出管18Abからは、高沸点成分が導出される。
【0037】
第2分離部18Bは、導出管18Aaを介して第1分離部18Aに接続される分離塔である。第2分離部18Bには、導出管18Aaを介して、低沸点成分が導入される。第2分離部18Bは、低沸点成分を、反応溶媒Mと、モノマーEとに分離する。第2分離部18Bには、導出管18Ba、18Bbが接続されている。導出管18Baからは、反応溶媒Mが導出され、導出管18Bbからは、モノマーEが導出される。なお、導出管18Baは、第2分離部18Bと溶媒貯留部14とに接続されている。従って、第2分離部18Bから導出された反応溶媒Mは、溶媒貯留部14に戻されて、ポリエステルのモノマー化に再利用される。
【0038】
第3分離部18Cは、導出管18Abを介して第1分離部18Aに接続される分離塔である。第3分離部18Cには、導出管18Abを介して、高沸点成分が導入される。第3分離部18Cは、高沸点成分を、更に高沸点の残存物質Rと、反応溶媒M及びモノマーEを含む低沸点成分と、モノマーDとに分離する。第3分離部18Cには、導出管18Ca、18Cb、18Ccが接続されている。導出管18Caは、第2分離部18Bに接続されている。第3分離部18C内で分離された低沸点成分は、導出管18Caを介して、第2分離部18Bに導出される。また、第3分離部18C内で分離されたモノマーDは、導出管18Cbから導出され、第3分離部18C内で分離された残存物質Rは、導出管18Ccから導出される。
【0039】
第3分離部18Cには、導入管18Cdが接続されている。導入管18Cdは、溶解部12にも接続されており、第3分離部18Cから導出されたモノマーDを、溶解部12に導入する。図2の例では、導入管18Cdは、導出管18Cbから分岐している。導入管18Cdには、第3分離部18Cから溶解部12に供給されるモノマーDの量を調整する調整部18Ceが設けられている。調整部18Ceは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、モノマーDを溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、モノマーDの溶解部12への供給を停止させる。ただし、調整部18Ceは、開閉弁であることに限られず、溶解部12へのモノマーDの供給を調整可能な任意の機構であってよい。なお、本実施形態では、調整部18Ceは、導入管18Cdの導出管18Cbからの分岐箇所に設けられているが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。また、導入管18Cdは、導出管18Cbに接続されていなくてもよく、第3分離部18Cに直接接続されていてよい。また例えば、導出管18Cbに、モノマーDを貯留する貯留部(槽)が設けられ、導入管18Cdは、貯留部に接続されていてもよい。
【0040】
第3分離部18Cには、導入管18Cfが接続されている。導入管18Cfは、溶解部12にも接続されており、第3分離部18Cから導出された残存物質Rを、溶解部12に導入する。図2の例では、導入管18Cfは、導出管18Ccから分岐している。導入管18Cfには、第3分離部18Cから溶解部12に供給される残存物質Rの量を調整する調整部18Cgが設けられている。調整部18Cgは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、残存物質Rを溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、残存物質Rの溶解部12への供給を停止させる。ただし、調整部18Cgは、開閉弁であることに限られず、溶解部12への残存物質Rの供給を調整可能な任意の機構であってよい。なお、本実施形態では、調整部18Cgは、導入管18Cfの導出管18Ccからの分岐箇所に設けられているが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。また、導入管18Cfは、導出管18Ccに接続されていなくてもよく、第3分離部18Cに直接接続されていてよい。
【0041】
なお、例えば、導出管18Ccに、残存物質Rを貯留する貯留部(槽)が設けられ、導入管18Cfは、貯留部に接続されていてもよい。また、導入管18Cfには、残存物質R中のオリゴマーを通過させつつ、残存物質R中の異物を捕集するフィルタが設けられていてもよい。
【0042】
図2の例においては、溶解部12に接続される導入管10a、導入管18Cd、及び導入管18Cfは、互いに接続されずに、溶解部12に直接接続されている。ただし、導入管10a、導入管18Cd、及び導入管18Cfの少なくとも2つが接続(合流)され、接続された管が溶解部12に接続されていてもよい。
【0043】
(制御部)
制御部20は、モノマー製造システム1を制御する制御装置である。制御部20は、調整部10bを制御して、貯留部10から溶解部12に供給されるポリエステル原料Pmの量を制御する。制御部20は、供給部12bを制御して、溶解部12から第1反応部16Aに供給されるポリエステル溶液Pの量を制御する。制御部20は、加熱部12cを制御して、ポリエステル溶液Pの加熱度合いを制御する。制御部20は、加熱昇圧部14bを制御して、反応溶媒Mを超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とし、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mの反応部16への供給量を制御する。制御部20は、調整部18Ceを制御して、溶解部12へのモノマーDの供給量を制御する。制御部20は、調整部18Cgを制御して、溶解部12への残存物質Rの供給量を制御する。
【0044】
制御部20は、本実施形態ではコンピュータであり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含むプロセッサと、プロセッサによる演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶する記憶部とを含む。制御部20は、記憶部からプログラムを読み出すことで、モノマー製造システム1の制御を実行する。
【0045】
ただし、モノマー製造システム1は、制御部20によって自動制御されることに限られず、例えば少なくとも一部の処理が、作業員の操作によって制御されてもよい。
【0046】
(モノマー製造システムの動作)
次に、モノマー製造システム1の動作について説明する。制御部20は、調整部10b、18Ce、18Cgを制御して、ポリエステル原料PmとモノマーDと残存物質Rとを、溶解部12に導入して、溶解部12内でポリエステル原料PmとモノマーDと残存物質Rを混合させて、ポリエステル溶液Pを生成させる。制御部20は、モノマーD及び残存物質Rを溶解部12に導入した後に、ポリエステル原料Pmを溶解部12に導入することが好ましい。ポリエステル原料Pmを後で導入することで、ポリエステル原料Pmを適切に溶解させることが可能となる。
【0047】
制御部20は、溶解部12へのポリエステル原料Pmの供給量に対する、溶解部12へのモノマーD及び残存物質Rの合計供給量を、重量比で、0.05以上5以下とすることが好ましく、0.1以上2以下とすることがより好ましく、0.2以上1以下とすることがさらに好ましい。供給量の比率をこの範囲とすることで、ポリエステル原料Pmが多すぎることによる流動性の低下を抑制しつつ、ポリエステル原料PmからのモノマーD、Eの回収を十分に行うことができる。また、制御部20は、溶解部12へのモノマーDの供給量に対する、溶解部12への残存物質Rの供給量を、重量比で、0以上5以下とすることが好ましく、0以上3以下とすることがより好ましく、0.5以上2以下とすることがさらに好ましい。供給量の比率をこの範囲とすることで、モノマーDが少なすぎることによる流動性の低下を抑制しつつ、残存物質RからのモノマーD、Eの回収を十分に行うことができる。
【0048】
本実施形態では、制御部20は、第3分離部18Cから導出されるモノマーDの一部を、溶解部12に導入させ、第3分離部18Cから導出される残存物質Rの一部を、溶解部12に導入させる。第3分離部18Cから導出される残存物質Rの量に対する、溶解部12に導入される残存物質Rの量の比率は、重量比で、30%以上99%以下であることが好ましく、60%以上98%以下であることがより好ましい。このような比率で残存物質Rを戻すことで、残存物質Rに含まれるオリゴマーを解重合させてモノマーの収率を向上させつつ、残存物質R中のオリゴマー以外の不純物の濃度が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0049】
制御部20は、供給部12b及び加熱部12cを制御することで、溶解部12内のポリエステル溶液Pを加熱しつつ、ポリエステル溶液Pを第1反応部16Aに供給する。制御部20は、ポリエステル溶液Pを、250℃以上400℃以下とすることが好ましく、250℃以上350℃以下とすることがより好ましい。
【0050】
制御部20は、加熱昇圧部14bを制御して、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とした反応溶媒Mを、反応部16に供給する。制御部20は、反応溶媒Mを、250℃以上400℃以下とすることが好ましく、250℃以上350℃以下とすることがより好ましい。制御部20は、反応溶媒Mを、1MPa以上30MPa以下とすることが好ましく、6MPa以上25MPa以下とすることがより好ましい。
【0051】
このように、ポリエステル溶液P及び反応溶媒Mが反応部16に供給されることで、第1反応部16Aにおいて、ポリエステル原料Pmに含まれるポリエステルやオリゴマーが解重合して、第1解重合ポリエステルP1が生成される。そして、第2反応部16Bにおいて、第1解重合ポリエステルP1が更に解重合されて、第2解重合ポリエステルP2と反応溶媒Mの混合物である第2溶媒M2が生成される。第2溶媒M2は、第1分離部18A、第2分離部18B、及び第3分離部18Cで、反応溶媒M、モノマーD、モノマーE、及び残存物質Rに分離される。これにより、ポリエステル原料PmからモノマーD、Eが回収され、それらを重合することで、ポリエステル原料Pmを再生することができる。
【0052】
以上説明したモノマー製造システム1の動作のフローを、フローチャートに基づき説明する。図3は、モノマー製造システムの動作フローを説明するフローチャートである。図3に示すように、制御部20は、ポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rを溶解部12に導入させて、ポリエステル溶液Pを生成させる(ステップS10)。そして、制御部20は、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとを第1反応部16Aに導入して解重合させて、第1解重合ポリエステルP1を反応溶媒Mに抽出させる(ステップS12)。そして、第2反応部16Bには、第1解重合ポリエステルP1が抽出された第1溶媒M1が導入されて、第2反応部16Bにおいて第1解重合ポリエステルP1を更に解重合させて、第2解重合ポリエステルP2を生成させる(ステップS14)。そして、分離部18において、第2解重合ポリエステルP2が溶解した第2溶媒M2を、反応溶媒M、モノマーD、モノマーE、及び残存物質Rに分離する(ステップS16)。その後、処理を終了する場合は(ステップS18;Yes)、本処理を終了し、終了しない場合は(ステップS18;No)、ステップS10に戻り、分離部18で分離されたモノマーD及び残存物質Rの一部を、溶解部12に導入させて、本処理を続ける。
【0053】
(効果)
ポリエステル原料Pmを解重合してモノマーD、Eを生成する際には、モノマーD、Eの収率を向上させることが求められている。それに対し、本実施形態においては、分離部18において分離された、反応溶媒M、モノマーD、及びモノマーE以外の物質である残存物質Rを、溶解部12に戻す。残存物質Rには、モノマーまで解重合されなかったオリゴマーが含まれているため、残存物質Rを溶解部12に戻すことで、残存物質Rに含まれるオリゴマーを、再度解重合させて、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。
【0054】
なお、ポリエステル溶液Pには残存物質Rが含まれるため、モノマーD及びポリエステル原料Pmのみが含まれている場合よりも、流動性が低下することが考えられる。そのため、第1反応部16Aにおけるポリエステル溶液Pの流動性が低下して、反応性が低下するおそれがある。それに対し、本実施形態においては、溶解部12へのモノマーDの供給量に対する溶解部12への残存物質Rの供給量の比率を規定している。従って、本実施形態によると、残存物質Rを加えた場合の反応性(解重合性)の低下を抑制することができる。
【0055】
ただし、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとは、互いに向き合う方向で供給されることに限られず、互いに同じ方向で供給されてもよい。図4は、反応部の他の例を示す模式図である。この場合例えば、図4に示すように、反応部16は、二重管構造となっており、内管部分を第1反応部16Abとし、外管部分を第2反応部16Bbとしてよい。この場合、ポリエステル溶液Pの導入口16Cbと、反応溶媒Mの導入口16Dbは、第2方向D2側に開口して、第1反応部16Abの第1方向D1側の表面に接続される。従って、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとは、第2方向D2側に、すなわち同じ方向に、供給される。ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとは、第1反応部16Ab内で反応しつつ第2方向D2側に進行し、第1溶媒M1(第1解重合ポリエステルP1が抽出された反応溶媒M)として第1反応部16Abの先端で第2反応部16Bbに流入して更に反応を続け、第2溶媒M2(第2解重合ポリエステルP2を含む反応溶媒M)として第2反応部16Bbの側部に開口する導出口16Ebから導出される。また、非抽出物は、反応部16の底部に開口する排出口16Fbから排出される。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、溶解部12を複数設ける点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0057】
図5は、第2実施形態に係る溶解部の模式図である。図5に示すように、第2実施形態においては、複数の溶解部12として、第1溶解部12A及び第2溶解部12Bが設けられている。図5の例では、第1溶解部12A及び第2溶解部12Bの2つ設けられているが、溶解部12の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0058】
第1溶解部12Aは、ポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rが導入されて、ポリエステル溶液Pを生成する槽である。第1溶解部12Aは、導入管10aを介して貯留部10に接続されており、貯留部10からポリエステル原料Pmが導入される。第1溶解部12Aは、導入管18Cdを介して第3分離部18Cに接続されており、第3分離部18CからモノマーDが導入される。第1溶解部12Aは、導入管18Cfを介して第3分離部18Cに接続されており、第3分離部18Cから残存物質Rが導入される。
【0059】
第2溶解部12Bは、配管12Aaを介して第1溶解部12Aに接続されており、第1溶解部12Aで生成されたポリエステル溶液Pが導入される。第2溶解部12Bは、導入管12aを介して第1反応部16Aに接続される。第2溶解部12Bに導入されたポリエステル溶液Pは、導入管12aを通って第1反応部16Aに導出される。このように、図5の例においては、第2溶解部12Bが、第1溶解部12Aと第1反応部16Aとの間に設けられており、第1溶解部12Aと第2溶解部12Bとが直列に接続されているといえる。なお、溶解部12が3つ以上ある場合には、第2溶解部12Bと第1反応部16Aとの間に、他の溶解部12が直列で接続され、言い換えれば、それぞれの溶解部12が直列に接続されることとなる。このように、複数の溶解部12を設けて、それらを直列で接続することで、第1溶解部12Aで生成されたポリエステル溶液Pを、バッファ槽としての第2溶解部12Bで一旦貯留することが可能となるため、ポリエステル原料Pmを確実に溶解させて、第1反応部16Aに導入することができる。
【0060】
ただし、溶解部12は直列に接続されることに限られず、並列に接続されてもよい。図6は、第2実施形態の他の例に係る溶解部の模式図である。図6に示すように、溶解部12が並列に接続される場合には、第1溶解部12A及び第2溶解部12Bには、ポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rが導入されて、第1溶解部12A及び第2溶解部12Bで、ポリエステル溶液Pが生成される。第1溶解部12A及び第2溶解部12Bは、導入管12aを介して第1反応部16Aに接続され、第1溶解部12A及び第2溶解部12B内のポリエステル溶液Pは、導入管12aを通って第1反応部16Aに導出される。
【0061】
図6のように並列接続する場合には、各溶解部12について、ポリエステル溶液Pの生成と、ポリエステル溶液Pの第1反応部16Aへの供給とを、交互に切り替えて運用することが好ましい。すなわち例えば、第1溶解部12Aにポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rが導入されている期間においては、第2溶解部12Bにはポリエステル溶液Pが貯留済みであり、第2溶解部12Bから第1反応部16Aに、ポリエステル溶液Pが導出される。そして、第2溶解部12Bにポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rが導入されている期間においては、第1溶解部12Aにはポリエステル溶液Pが貯留済みであり、第1溶解部12Aから第1反応部16Aに、ポリエステル溶液Pが導出される。
【0062】
具体的には、図6の例では、第1溶解部12Aは、導入管10aから分岐する導入管10a1に接続されており、第2溶解部12Bは、導入管10aから分岐する導入管10a2に接続されている。図6の例では、調整部10bは、導入管10a1、10a2が分岐する箇所に設けられており、貯留部10から第1溶解部12Aへのポリエステル原料Pmの供給量と、貯留部10から第2溶解部12Bへのポリエステル原料Pmの供給量とを調整する。また、第1溶解部12Aは、導入管18Cdから分岐する導入管18Cd1に接続されており、第2溶解部12Bは、導入管18Cdから分岐する導入管18Cd2に接続されている。図6の例では、導入管18Cd1、18Cd2が分岐する箇所には、調整部V1が設けられている。調整部V1は、第3分離部18Cから第1溶解部12AへのモノマーDの供給量と、第3分離部18Cから第2溶解部12BへのモノマーDの供給量とを調整する。また、第1溶解部12Aは、導入管18Cfから分岐する導入管18Cf1に接続されており、第2溶解部12Bは、導入管18Cfから分岐する導入管18Cf2に接続されている。図6の例では、導入管18Cf1、18Cf2が分岐する箇所には、調整部V2が設けられている。調整部V2は、第3分離部18Cから第1溶解部12Aへの残存物質Rの供給量と、第3分離部18Cから第2溶解部12Bへの残存物質Rの供給量とを調整する。また、第1溶解部12Aは、導入管12aに合流する導入管12a1に接続されており、第2溶解部12Bは、導入管12aに合流する導入管12a2に接続されている。導入管12a1には、第1溶解部12Aからのポリエステル溶液Pの供給を制御する供給部12b1が設けられており、導入管12a2には、第2溶解部12Bからのポリエステル溶液Pの供給を制御する供給部12b2が設けられている。
【0063】
制御部20は、第1溶解部12Aでポリエステル溶液Pを生成する期間においては、調整部10b、V1、V2を制御して、第1溶解部12Aにポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rを供給させて、第1溶解部12Aでポリエステル溶液Pを生成させつつ、供給部12b1、12b2を制御して、第2溶解部12Bから第1反応部16Aにポリエステル溶液Pを供給させる。制御部20は、この期間においては、第2溶解部12Bにはポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rを供給せず、かつ、第1溶解部12Aから第1反応部16Aにポリエステル溶液Pを供給させない。一方、制御部20は、第2溶解部12Bでポリエステル溶液Pを生成する期間においては、調整部10b、V1、V2を制御して、第2溶解部12Bにポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rを供給させて、第2溶解部12Bでポリエステル溶液Pを生成させつつ、供給部12b1、12b2を制御して、第1溶解部12Aから第1反応部16Aにポリエステル溶液Pを供給させる。制御部20は、この期間においては、第1溶解部12Aにはポリエステル原料Pm、モノマーD、及び残存物質Rを供給させず、かつ、第2溶解部12Bから第1反応部16Aにポリエステル溶液Pを供給させない。なお、図6の構成は一例であり、複数の溶解部12が並列に接続されるものであれば、図6以外のレイアウトとしてもよい。また、溶解部12を並列接続する場合にも、溶解部12の数は3つ以上であってよい。
【0064】
以上説明したように、第2実施形態においては、複数の溶解部12が直列又は並列に接続されているが、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。すなわち例えば、並列に接続された複数の溶解部12に対して、他の溶解部12が直列に接続されていてもよい。
【0065】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、反応部16から排出される非抽出物についても、ポリエステル溶液Pに混合する点で、第1実施形態とは異なる。第3実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。なお、第3実施形態は、第2実施形態にも適用可能である。
【0066】
図7は、第3実施形態に係るモノマー製造システムの模式図である。図7に示すように、第3実施形態に係るモノマー製造システム1Aは、反応部16の底部に接続される排出管16bが、溶解部12に接続されている。反応部16内の非抽出物は、排出管16bを通って、溶解部12に供給される。より詳しくは、排出管16bには、溶解部12への非抽出物の供給量を調整する調整部16b1が設けられている。調整部16b1は、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、反応部16内の非抽出物を溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、反応部16内の非抽出物の溶解部12への供給を停止させる。第3実施形態においては、制御部20が、調整部16b1を制御することで、反応部16内の非抽出物の溶解部12への供給を制御する。非抽出物を反応部16から排出するタイミングは任意であってよく、例えば、反応部16の底部に設けたレベル計を使用して、非抽出物のレベルが所定の範囲に収まるようにレベル制御してもよいし、一定時間ごとに定期的に排出するようにしてもよい。なお、ここでのレベル計は、反応溶媒Mと非抽出物の密度差を検知するものであってよい。なお、調整部16b1は、開閉弁であることに限られず、溶解部12への非抽出物の供給を調整可能な任意の機構であってよい。
【0067】
第3実施形態のように、非抽出物も溶解部12に戻すことで、非抽出物に含まれるオリゴマーをモノマー化することができるため、モノマーの収率を更に向上させることができる。
【0068】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示に係るモノマー製造システム1は、溶解部12と、第1反応部16Aと、第2反応部16Bと、分離部18と、導入管18Cd、18Cfとを有する。溶解部12は、カルボン酸由来のモノマーDにポリエステルが溶解したポリエステル溶液Pが貯留される。第1反応部16Aは、ポリエステル溶液Pと、ポリエステルと反応する反応溶媒Mとが導入されて、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとを接触させることで、ポリエステル溶液P中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルを含む第1解重合ポリエステルP1を反応溶媒Mに抽出する。第2反応部16Bは、第1解重合ポリエステルP1が抽出された反応溶媒M(第1溶媒M1)が導入されて、第1解重合ポリエステルP1を更に反応溶媒Mに反応させることで、第1解重合ポリエステルP1を更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルP1である第2解重合ポリエステルP2を生成する。分離部18は、第2解重合ポリエステルP2が溶解した反応溶媒M(第2溶媒M2)が導入されて、第2解重合ポリエステルP2が溶解した反応溶媒Mを、反応溶媒Mと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるカルボン酸由来のモノマーDと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるアルコール成分のモノマーEと、反応溶媒M、カルボン酸由来のモノマーD、アルコール成分のモノマーE以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質Rと、に分離する。導入管18Cd、18Cfは、カルボン酸由来のモノマーDと、残存物質Rとを、溶解部12に導入する。
【0069】
ポリエステル原料Pmを解重合してモノマーD、Eを生成する際には、モノマーD、Eの収率を向上させることが求められている。それに対し、本実施形態においては、分離部18において分離された残存物質Rを、溶解部12に戻す。残存物質Rには、モノマーまで解重合されなかったオリゴマーが含まれているため、残存物質Rを溶解部12に戻すことで、残存物質Rに含まれるオリゴマーを、再度解重合させて、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。
【0070】
導入管18Cd、18Cfは、分離部18で分離されたカルボン酸由来のモノマーDの一部と、分離部18で分離された残存物質Rの一部とを、溶解部12に導入することが好ましい。モノマー製造システム1によると、モノマーDの一部を溶解部12に戻すため、モノマーDによってポリエステル原料Pmの流動性を向上させつつ、モノマーDの収率が下がることを抑制できる。また、モノマー製造システム1によると、残存物質Rの一部を溶解部12に戻すため、モノマーD、Eの収率を向上させつつ、残存物質Rに含まれる不純物の濃度が高くなることを抑制できる。
【0071】
モノマー製造システム1は、溶解部12へのポリエステル原料Pm、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rの供給を制御する制御部20を更に有する。制御部20は、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rが溶解部12に導入された後に、ポリエステル原料Pmを溶解部12に導入することが好ましい。モノマー製造システム1によると、ポリエステル原料Pmを後から導入することで、ポリエステル原料Pmの溶解不良を抑制できる。
【0072】
モノマー製造システム1は、溶解部12へのポリエステル原料Pm、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rの供給を制御する制御部20を更に有する。制御部20は、ポリエステル原料Pmの供給量に対する、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rの合計供給量の重量比率を、0.05以上5以下とすることが好ましい。ポリエステル原料Pm、モノマーD、残存物質Rの混合比率をこの範囲とすることで、ポリエステル原料Pmが多すぎることによる流動性の低下を抑制しつつ、ポリエステル原料PmからのモノマーD、Eの回収を十分に行うことができる。
【0073】
制御部20は、カルボン酸由来のモノマーDに対する残存物質Rの供給量の重量比率を、0以上5以下とすることが好ましい。残存物質Rの供給量の比率をこの範囲とすることで、モノマーDが少なすぎることによる流動性の低下を抑制しつつ、残存物質RからのモノマーD、Eの回収を十分に行うことができる。モノマーDが少なすぎることによる流動性の低下を抑制しつつ、残存物質RからのモノマーD、Eの回収を十分に行うことができる。
【0074】
モノマー製造システム1は、溶解部12が複数設けられることが好ましい。溶解部12を複数設けることで、ポリエステル原料Pmを溶解する溶解部とポリエステル溶液Pを第1反応部16Aに供給する溶解部とを別々にすることが可能となるため、ポリエステル溶液Pの原料を、所望の混合比率となるように制御しながら仕込まなくてもよく、最終的に所望の混合比率とすればよくなる。また、ポリエステル原料Pmの溶解時間を確保することができるため,未溶解のポリエステル原料Pmによるトラブル(配管閉塞等)を抑制できる。
【0075】
モノマー製造システム1は、ポリエステル、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rが導入されて、ポリエステル溶液Pを生成する第1溶解部12Aと、第1溶解部12Aで生成されたポリエステル溶液Pが導入されて、導入されたポリエステル溶液Pを前記第1反応部16Aに導出する第2溶解部12Bと、を有することが好ましい。このように複数の溶解部12を直列に接続することで、ポリエステル原料Pmを確実に溶解させて、第1反応部16Aに導入することができる。
【0076】
モノマー製造システム1は、ポリエステル、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rが導入されて、ポリエステル溶液Pを生成する第1溶解部12A及び第2溶解部12Bを含むことが好ましい。第1溶解部12Aにポリエステル、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rが導入されている期間においては、第2溶解部12Bから第1反応部16Aに、ポリエステル溶液Pが導出される。第2溶解部12Bにポリエステル、カルボン酸由来のモノマーD、及び残存物質Rが導入されている期間においては、第1溶解部12Aから第1反応部16Aに、ポリエステル溶液Pが導出される。このように複数の溶解部12を並列に接続し、ポリエステル原料Pmを溶解する溶解部とポリエステル溶液Pを第1反応部16Aに供給する溶解部とを切り替えることで、ポリエステル原料Pmを確実に溶解させて、第1反応部16Aに導入することができる。
【0077】
第1反応部16Aには、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとが、互いに向き合う方向で導入されることが好ましい。
【0078】
モノマー製造システム1Aは、非抽出物を溶解部12に導入する排出管16bを有することが好ましい。非抽出物は、分離部18に導出されずに、第1反応部16A及び第2反応部16Bに残存した成分である。非抽出物も溶解部12に戻すことで、モノマーD、Eの収率をさらに向上させることができる。
【0079】
ポリエステル原料Pmは、ポリエチレンテレフタレートを含み、反応溶媒Mは、メタノールであり、カルボン酸由来のモノマーDは、テレフタル酸ジメチルであり、アルコール成分のモノマーEは、エチレングリコールであることが好ましい。モノマー製造システム1によると、テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの収率を適切に向上させることができる。
【0080】
本開示のモノマー製造方法は、溶解部12において、カルボン酸由来のモノマーDにポリエステルが溶解したポリエステル溶液Pを生成するステップと、ポリエステル溶液Pと反応溶媒Mとを接触させることで、ポリエステル溶液P中のポリエステルを解重合し、解重合されたポリエステルを含む第1解重合ポリエステルP1を反応溶媒Mに抽出するステップと、第1解重合ポリエステルP1を更に反応溶媒Mに反応させることで、第1解重合ポリエステルP1を更に解重合し、更に解重合された第1解重合ポリエステルP1である第2解重合ポリエステルP2を生成するステップと、第2解重合ポリエステルP2が溶解した反応溶媒Mを、反応溶媒Mと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるカルボン酸由来のモノマーDと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるアルコール成分のモノマーEと、反応溶媒M、カルボン酸由来のモノマーD、アルコール成分のモノマーE以外の成分でありオリゴマーが含まれる残存物質Rとに分離するステップと、カルボン酸由来のモノマーDと残存物質Rとを、溶解部12に導入するステップと、を有する。本方法によると、残存物質Rを溶解部12に戻すことで、モノマーの収率を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
10 貯留部
12 溶解部
14 溶媒貯留部
16A 第1反応部
16B 第2反応部
18 分離部
18A 第1分離部
18B 第2分離部
18C 第3分離部
18Cd、18Cf 導入管
20 制御部
D、E モノマー
M 反応溶媒
P ポリエステル溶液
Pm ポリエステル原料
P1 第1解重合ポリエステル
P2 第2解重合ポリエステル
R 残存物質
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7