(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184122
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】チタン酸バリウム粒子の分散液、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20221206BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20221206BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
C01G23/00 C
H01G4/12 270
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091787
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 渉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和馬
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G047
5E001
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CB06
4G047CC02
4G047CD04
4G047CD08
5E001AE02
5E001AE03
(57)【要約】
【課題】大量生産が可能で、かつ分散安定性に優れたナノサイズのチタン酸バリウム粒子の分散液、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】この製造方法は、バリウムとチタンの原子比が0.90~1.10となるように、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒を混合して第1溶液を作製する第一工程と、この第1溶液を15℃以下で1時間以上保持する第二工程と、この第二工程で得られた第1溶液と、水を含む第2溶液とを連続式反応器内で15℃以下で混合し、15℃以下の第3溶液を作製する第三工程と、この第3溶液を60℃以上に加熱する第四工程とを順に含む。この製造方法により得られる粒子の分散液は、粒子の平均粒子径(D50粒子径(A))が3~30nm、D90粒子径(B)が8~80nm、結晶子径(C)が5~15nmで、比(A/C)が0.3~5.0である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウムとチタンの原子比(Ba/Ti比)が0.90~1.10となるように、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒を混合する第一工程と、
前記第一工程で得られた第1溶液を15℃以下で1時間以上保持する第二工程と、
前記第二工程で得られた第1溶液と、水を含む第2溶液とを、連続式反応器内で15℃以下で混合する第三工程と、
前記第三工程で得られた第3溶液を60℃以上に加熱する第四工程と、
を順に含むことを特徴とするチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項2】
前記第一工程が相対湿度50%以下の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項3】
前記第二工程において、前記第1溶液を15℃以下で3時間以上保持することを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項4】
(前記第三工程で用いた)前記第2溶液中の水のモル数と、前記第1溶液中のバリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドのモル数の合計とのモル比(水/(バリウムアルコキシド+チタンアルコキシド))が1~10であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項5】
前記第2溶液にはアルコールが含まれ、水とアルコールとの質量比(水/アルコール)が0.05~1.00であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項6】
前記第三工程において、前記第1溶液の送液速度が4L/Hr以上であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項7】
前記第三工程において、前記第1溶液と前記第2水溶液が15℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項8】
前記第四工程の後に、固形分濃度を20~60質量%に調整することを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法。
【請求項9】
粒子の動的光散乱法によるD50粒子径(A)が3~30nm、D90粒子径(B)が8~80nm、結晶子径(C)が5~15nmで、前記D50粒子径と前記結晶子径との比(A/C)が0.3~5.0であることを特徴とするチタン酸バリウム粒子の分散液。
【請求項10】
前記分散液中の固形分に対するハロゲン元素の含有量が500ppm未満であることを特徴とする請求項9に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液。
【請求項11】
前記分散液の溶媒にエタノールを用いて、固形分濃度を30質量%に調整し、当該分散液を50℃で3時間加熱した後、動的光散乱法により得られたD50粒子径(E)と、前記結晶子径(C)との比(E/C)が0.3~7.0である請求項9に記載のチタン酸バリウム粒子の分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性に優れたチタン酸バリウム粒子の分散液、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(以下、BTOと略す)は高誘電体材料として広く知られており、積層セラミックコンデンサ等の電子デバイス部品に使用されている。近年の積層セラミックコンデンサの小型化や大容量化にともない、誘電体層や電極層の薄膜化が進んでいる。この誘電体層や電極層の共材として、分散安定性に優れたナノサイズのBTO粒子が求められ、かつ、この粒子を大量生産できることが求められている。
【0003】
従来、ナノサイズのBTO粒子の製造方法としては、バリウム及びチタンのアルコキシドに水と極性溶媒の混合液を滴下して加水分解させ、10℃以上で加熱熟成することでナノサイズのBTO粒子が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この粒子の分散安定性は十分ではなかった。また、この方法はいわゆるバッチ方式での製造方法であるため、大量生産することが困難であった。
【0004】
また、BTO粒子を連続的に生産する方法として、薄膜流体の中で加水分解を行い、連続的にセラミックスナノ粒子を製造する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法で得られるBTO粒子の分散安定性も十分ではなかった。
【0005】
一方、本出願人は、マイクロミキシングチップを用いた連続生産による製造方法を開示している(特許文献3参照)。この方法では、ナノサイズのBTO粒子を得ることができるものの、分散安定性は十分ではなかった。また、この方法は、連続生産する際に流路内でゲル状物が詰まるおそれがあり、大量生産が困難であった。
【0006】
更に、本出願人は、バリウム水酸化物のアルキルセロソルブ溶液を用いたBTO粒子の製造方法を開示している(特許文献4参照)。この方法によれば、ナノサイズのBTO粒子を安価に製造することは可能であるが、分散安定性は十分ではなかった。また、大量生産が困難であるため生産性は十分なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-306691号公報
【特許文献2】WO2009/008392号
【特許文献3】特開2009-172581号公報
【特許文献4】特開2012-240904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
BTO粒子は、その粒子径が小さい程凝集しやすいため、従来のナノサイズのBTO粒子の分散液を長期に保管することが困難であった。そのため、誘電体層や電極層の共材に使用する際に均一に分散することができなかった。そのため、分散安定性に優れたナノサイズのBTO粒子の分散液が要求されている。また、従来の製造方法では、大量生産が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、このような課題を解決するため、以下の製造方法により、BTO粒子の分散液を作製することとした。
【0010】
まず、バリウムとチタンの原子比(Ba/Ti比)が0.90~1.10となるように、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒を混合する(第一工程)。次に、第一工程で得られた第1溶液を15℃以下で1時間以上保持する(第二工程)。次に、この15℃以下に保持された第1溶液と、水を含む第2溶液とを、連続式反応器内で15℃以下で混合する(第三工程)。次に、第三工程で得られた第3溶液を60℃以上に加熱する(第四工程)。
【0011】
このように作製されたBTO粒子の分散液は、粒子の動的光散乱法によるD50粒子径(A)が3~30nm、D90粒子径(B)が8~80nm、結晶子径(C)が5~15nmで、このD50粒子径と結晶子径との比(A/C)が0.3~5.0である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分散安定性に優れるナノサイズのBTO粒子の分散液が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[チタン酸バリウム粒子の分散液の製造方法]
以下、本発明に係るチタン酸バリウム粒子(以下、これを単に「BTO粒子」あるいは「粒子」ということがある)の分散液(以下、これを単に「分散液」ということがある)の製造方法について説明する。
【0014】
この製造方法は、バリウムとチタンの原子比(Ba/Ti比)が0.90~1.10となるように、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒を混合して、第1溶液を作製する第一工程と、次に、この第1溶液を15℃以下で1時間以上保持する第二工程と、この第二工程で得られた第1溶液と、水を含む第2溶液とを、連続式反応器内で15℃以下で混合する第三工程と、この第三工程で得られた第3溶液を60℃以上に加熱する第四工程とを順に含む。これによって、分散安定性に優れるナノサイズのBTO粒子の分散液が得られる。このような製造方法によれば、大量生産も可能となる。
【0015】
以下に、各工程について述べる。
【0016】
〔第一工程〕
バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒を混合して、第1溶液を作製する。
【0017】
バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合は、第1溶液中のバリウムとチタンの原子比(Ba/Ti)が0.90~1.10となるように行う。原子比がこの範囲にあれば、結晶性の高いペロブスカイト型結晶構造のBTO粒子を得ることができる。この原子比は、好ましくは0.95~1.05、より好ましくは0.98~1.02、最も好ましくは1.00である。
【0018】
水酸基を有する有機溶媒は、第1溶液中のバリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの濃度の合計が0.5~10.0mol/kgとなるように混合することが好ましい。ここで、濃度の合計が0.5mol/kg未満であると生産性が低下するおそれがある。逆に、10.0mol/kgを超えるとBTO粒子の分散液の分散安定性が不十分となるおそれがある。この濃度の合計は、より好ましくは1.0~8.0mol/kg、更に好ましくは2.0~5.0mol/kgである。
【0019】
本工程では、金属アルコキシドと水との接触を回避することが好ましい。バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの少なくとも一方と、水とが加水分解すると、高い分散安定性を有するナノサイズのBTO粒子の分散液が得られないおそれがある。このため、第1溶液の作製においては、水の混入を避けることはもちろんのこと、その雰囲気においても注意することが好ましい。
【0020】
例えば、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシド、及び水酸基を有する有機溶媒とを混合する際の相対湿度は50%以下が好ましい。相対湿度が50%より高いと、これらの金属アルコキシドが空気中の水分により加水分解してしまい、ナノサイズのBTO粒子を得ることが難しくなるおそれがある。相対湿度は、より好ましくは45%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは10%以下である。相対湿度を低くする方法としては、グローブボックス内やタンク内を窒素ガスや乾燥空気で置換する方法や減圧する方法、シリカゲル等で空気中の水分を吸着させる方法が好適に適用できる。
【0021】
また、空気中の水分の影響を低減する手段として、液面と空気との接する面積が小さい容器を使用することも有効である。
【0022】
バリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドは、市販のものを用いても良いし、従来公知の方法で、各々の金属、あるいは水酸化物、あるいはハロゲン化物等の化合物から製造したものを用いても構わない。
【0023】
バリウムアルコキシドとしては、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジプロポキシド、バリウムジイソプロポキシド、バリウムジブトキシド、バリウムジイソブトキシド等が挙げられる。チタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトシキド、チタンテトライソブトシキド、チタンテトラステアリルアルコキシド、チタンテトラキス(2-エチル-1-ヘキサノラート)等が挙げられる。
【0024】
これらは、モノマーで使用しても、オリゴマーのようにある程度重合されたものを使用してもよい。また、これらを単独で使用しても、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
水酸基を有する有機溶媒としては、アルコール類、フェノール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ナフトール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
これらは単独で使用しても、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
〔第二工程〕
第一工程で得られた第1溶液を15℃以下で1時間以上保持する。この工程によって、続く第三工程において、ゲル状物の発生が抑制され、生産性が向上される。また、得られる粒子の分散安定性も向上する。この詳細な理由は不明であるが、第三工程において、15℃以下に保持された第1溶液中の金属アルコキシドが、加水分解反応を抑制しつつ、水を含有する溶液と分子レベルで均一に混合されるためと考えている。
【0028】
ここで、温度が15℃よりも高いと、第三工程での加水分解反応が進行し、ゲル状物が発生して、流路を閉塞させるおそれがある。これによって、運転を停めて製造ラインの流路を確保するための清掃が必要となり、生産性が低下するおそれがある。また、得られる粒子の分散安定性が低下するおそれもある。この温度の下限は、溶液の流動性を有していれば特に設定されないが、例えば-40℃である。これは、温度を-40℃より低くしても、求める粒子の生産性や分散安定性が特に向上することはなく、逆に、より高価な冷却装置が必要となり、製造コストに影響するためである。溶液の温度は、好ましくは-20~10℃、より好ましくは-20~5℃である。
【0029】
この第1溶液は15℃以下で3時間以上保持することが好ましい。この詳細な理由は不明であるが、保持時間を3時間以上とすることにより、溶液が均質な状態になるため、続く第三工程において、連続式反応器内でゲル状物が発生することや、BTO粒子の分散安定性の低下を防ぐことができる。保持時間は長いほど好ましく、12時間以上、更に24時間以上が好ましい。保持時間に上限はないが、96時間を超えても、求める粒子の生産性や分散安定性が特に向上することはない。
【0030】
第1溶液の15℃以下での保持においては、第一工程と同様、金属アルコキシドと水との接触を回避することが好ましい。ここで、水との接触とは、空気中の水分との接触も含まれる。水と接触することにより、第1溶液中の金属アルコキシドの加水分解が進行し、後述する第三工程での混合において、連続式反応器内でゲル状物が発生して、流路を閉塞させるおそれや、生産性が低下するおそれがある。また、得られる分散液の分散安定性が低下するおそれがある。そのため、第二工程において、第1溶液は、撹拌等により流動させても構わないが、空気中の水分との接触を低減するために、静置しておくことが好ましい。また、第二工程は、第一工程と同様の相対湿度下、もしくは、それ未満の相対湿度下で行うことが好ましい。より具体的には、真空中もしくは窒素ガスや乾燥空気で置換した雰囲気下で行うことが好ましく、使用する容器も密閉できるものが好ましい。
【0031】
〔第三工程〕
第二工程で15℃以下に保持された第1溶液と、水を含む第2溶液とを混合して、第3溶液を作製する。この混合には、連続式反応器を用いる。連続式反応器は、溶液を一定の割合で定量的に混合し反応させることができる。このように、溶液の定量的な供給、混合、反応、及び、排出が、連続して行えるため、BTO粒子の安定した品質と、大量生産とが実現できる。連続式反応器としては、例えば、連続フロー式マイクロリアクター、強制薄膜式マイクロリアクター、ラインミキサー等が挙げられる。
【0032】
連続フロー式マイクロリアクターとしては、例えば、本出願人による特許文献3に開示した微量反応用装置や、(株)神戸製鋼所製 積層型多流路反応器SMCR等が使用できる。また、強制薄膜式マイクロリアクターとしては、例えば、エム・テクニック(株)製 ULREAシリーズを使用することができる。
【0033】
この第1溶液と、第2溶液との混合に際して、反応の場の温度(混合温度)は、15℃以下である。反応の場の温度が15℃以下であれば、ゲル状物の発生が抑制される。もし、反応の場の温度が、この温度よりも高いと、連続式反応器内でゲル状物が発生して、流路を閉塞させ、生産性が低下するおそれがある。また、第3溶液の温度も15℃を超えるおそれがある。このため、得られる分散液の平均粒子径が大きくなりすぎるおそれや、分散安定性が低下するおそれがある。この温度の下限は特に設定されないが、第二工程での第1溶液と同様の理由で、例えば-40℃である。反応の場の温度は、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。
【0034】
第1溶液と、第2溶液との混合温度が15℃以下であれば、連続式反応器から排出される第3溶液の温度を15℃以下にすることが容易にできる。この温度が15℃よりも高いと、連続式反応器内でゲル状物が発生して流路を閉塞させ、生産性が低下するおそれがある。また、得られる分散液の粒子の平均粒子径が大きくなりすぎるおそれや、分散安定性が低下するおそれもある。この温度の下限は、溶液の流動性を有していれば特に設定されないが、第二工程での第1溶液と同様の理由で、例えば-40℃である。排出される混合溶液の温度は、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0~10℃である。
【0035】
連続式反応器で混合する、第1溶液に含まれるバリウムアルコキシドとチタンアルコキシドのモル数の合計と、第2溶液中の水のモル数との比(水/(バリウムアルコキシド+チタンアルコキシド))は、1~10であることが好ましい。ここで、モル比が1未満であると、これらの金属アルコキシドの加水分解が不十分となるため、結晶性の高いBTO粒子を得ることが困難となるおそれがある。逆に、モル比が10を超えると、連続式反応器内でゲル状物が発生して生産性が低下するおそれ、得られる分散液の粒子の結晶子径が大きくなりすぎるおそれ、及び、分散安定性が低下するおそれがある。モル比(水/(バリウムアルコキシド+チタンアルコキシド))は、より好ましくは2~8、更に好ましくは3~6である。
【0036】
ここで、第2溶液としては、水とアルコールの質量比(水/アルコール)が0.05~1.00の溶液を使用することが好ましい。質量比がこの範囲にあれば、急激な加水分解反応を抑制でき、望むべき結晶子径と平均粒子径のBTO粒子が得られる。
【0037】
ここで、質量比が0.05未満の場合であっても、結晶子径や平均粒子径をこれ以上小さくなるように調整できる可能性は低い。むしろ、得られる第3溶液の濃度が低くなりすぎてしまうために、生産性が低下するおそれがある。逆に、質量比が1.00より高い場合、実質的に水をそのまま使用した場合と変わらない。このため、連続式反応器内でゲル状物が発生して、生産性が低下するおそれがある。また、BTO粒子の結晶子径や平均粒子径が大きくなりすぎるおそれがある。
【0038】
使用するアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが好適である。これらは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。また、アルコール以外の有機溶媒(例えば、グリコールやグリコールエーテル等)や界面活性剤、分散剤等を含んでいても良い。水とアルコールの質量比は、より好ましくは0.10~0.80、更に好ましくは0.30~0.60である。
【0039】
第1溶液の送液速度は、4L/Hr以上であることが好ましい。4L/Hr未満の場合、工業的レベルでは生産性が十分とは言えない。この送液速度の上限は特に設定されないが、前述の市販されている連続式反応器の装置能力を鑑みると、例えば、20L/Hrである。ただし、装置をより大型化して製造したり、複数の装置を並列に並べて製造したりする場合は、20L/Hrを超過することも可能と思われる。
【0040】
ところで、「連続式反応器から排出される第3溶液の温度」及び「反応の場の温度」を管理するためには、連続式反応器内で混合される「第1溶液」と、「第2溶液」の温度が、共に15℃以下であることがより好ましい。これらの溶液の温度がこの範囲にあると、連続式反応器から排出される第3溶液の温度を15℃以下にすることが、容易にできる。もし、これらの溶液の温度が、この温度から逸脱すると、反応の場の温度も所定の温度から逸脱するおそれがあり、連続式反応器から排出される第3溶液の温度も所定の温度から逸脱するおそれがある。このような状態にあると、連続式反応器内でゲル状物が発生して、装置の流路を閉塞させ、生産性が低下するおそれがある。また、例え、分散液が得られたとしても、粒子の平均粒子径が大きくなりすぎるおそれや、分散安定性が低下するおそれがある。
【0041】
これら「第1溶液」と「第2溶液」の溶液の温度は、同じであっても、異なっていてもよい。また、これらの溶液の温度の下限は、溶液の流動性を有していれば特に設定されないが、第二工程での第1溶液と同様の理由で、例えば-40℃である。連続式反応器内で混合される前のこれらの溶液の温度は、より好ましくは-20~10℃、更に好ましくは-20~5℃である。
【0042】
〔第四工程〕
第3溶液を60℃以上に加熱する。この加熱によって、バリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドの加水分解反応、及び脱水縮合反応を促進させ、分散安定性の高い、ナノサイズのBTO粒子の分散液を得ることができる。ここで、加熱温度が60℃未満であると、分散安定性が低くなるおそれがある。加熱温度の上限は特に設定されないが、例えば200℃である。200℃を超えると、高価な耐圧容器が必要となる上、粒子の結晶性や分散安定性がそれ以上高くなることもない。加熱温度は、好ましくは60~130℃、より好ましくは70~100℃である。
【0043】
また、加熱時間は2時間以上が好ましい。2時間以上加熱することで、分散安定性の高いBTO粒子の分散液を容易に得ることができる。ここで、加熱時間が2時間未満であると、十分な結晶化が行われなかったり、分散安定性が低くなったりするおそれがある。加熱時間は、より好ましくは12時間以上、更に好ましくは24時間以上である。
【0044】
〔その他の工程〕
このようにして得られた分散液を、必要に応じて適宜、分散処理、洗浄処理、表面処理、濃度調整処理を行ってもよい。
【0045】
分散処理することで、凝集した粒子が解れれば、粒度分布が分散処理前に比してシャープになり、D50粒子径やD90粒子径を小さくすることができる。分散処理としては、例えば、単純な撹拌を行うだけでもよいが、従来公知の超音波攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ビーズミル等を用いてもよい。
【0046】
分散液を洗浄処理することにより、粒子や分散液中の不純物(特にハロゲン元素)を低減することができる。洗浄方法としては、例えば、従来公知の限外濾過膜による濾過洗浄法やイオン交換樹脂によるイオン交換法、遠心沈降して上澄み液を置換する遠心洗浄法等が挙げられる。
【0047】
表面処理された粒子を用いることにより、積層セラミックコンデンサの高誘電体層、電極層に用いる他の部材、及び、高屈折率膜に使用するUV硬化樹脂、または、添加剤との混合安定性が向上する。表面処理剤としては、ナノサイズの金属酸化物粒子に使用可能な従来公知の表面処理剤であれば特に制限はなく、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、界面活性剤、有機酸等が挙げられる。
【0048】
分散液の固形分濃度は60質量%以下が好ましい。この濃度が極端に低いと、分散液の保管や運搬のコストが高くなるため、濃度調整処理により固形分濃度を上げてもよい。逆に、固形分濃度が60質量%を超えると、分散液の分散安定性が低下するおそれがある。また、この分散液を用いる塗布液についても分散安定性が低下するおそれがある。固形分濃度を調整する方法としては、例えば、限外濾過膜法や蒸留法、減圧蒸留法等により分散液を濃縮する方法、溶媒を添加して希釈する方法が挙げられる。また、分散液の濃縮あるいは希釈と同時に溶媒置換を行っても良い。使用される溶媒としては、例えば、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、モノテルペンアルコール類等が挙げられ、用途によって適宜選択できる。これらは、従来公知の溶媒であれば、特に制限なく使用できる。固形分濃度の下限は特に設定されないが、例えば、10質量%程度である。それよりも低い濃度が必要であれば、適当な溶媒で希釈することで対応できる。分散液の固形分濃度は、より好ましくは20~60質量%、更に好ましくは25~40質量%である。
【0049】
〔BTO粒子の分散液〕
本発明のBTO粒子の分散液は、粒子の動的光散乱法による平均粒子径(D50粒子径(A))が3~30nm、D90粒子径(B)が8~80nm、結晶子径(C)が5~15nmで、D50粒子径(A)と結晶子径との比(A/C)が0.3~5.0である。この粒子の結晶構造は、X線回折により確認できる。なお、このような分散液は、上述の製造方法により得ることができる。
【0050】
ここで、D50粒子径とは粒子の累積分布が50%での粒子径、D90粒子径とは粒子の累積分布が90%での粒子径を表す。
【0051】
D50粒子径(A)が3nm未満であると、分散安定性が低下するおそれがある。逆に、30nmを超えると、薄膜セラミックコンデンサの電極層の共材に使用する際に、均一に分散することが難しくなるおそれがある。また、高屈折率膜を形成する際には透明な被膜が得られないおそれがある。D50粒子径は、好ましくは5~20nmである。
【0052】
D90粒子径(B)が8nm未満であると、分散安定性が低下するおそれがある。逆に、80nmを超えると、薄膜セラミックコンデンサの電極層の共材に使用する際に、均一に分散することが難しくなるおそれがある。また、高屈折率膜を形成する際には透明な被膜が得られないおそれがある。D90粒子径は、好ましくは15~50nmである。
【0053】
結晶子径(C)が5nm未満であると、分散安定性が低くなりやすく、結晶性が不十分で高い誘電率が得られないおそれがある。逆に、15nmを超えると、薄膜セラミックコンデンサの電極層の共材に使用する際に均一に分散することが難しくなるおそれがある。また、高屈折率膜を形成する際には透明な被膜が得られないおそれがある。結晶子径は、好ましくは7~12nmである。
【0054】
比(A/C)が0.3未満のものは、得ること自体が困難である。逆に、比(A/C)が5.0より高いと、分散液中の粒子の凝集度合いが高いことを示し、膜中で均一に分散できないおそれがある。そのため、電極層の共材として使用する際に、電極層を均一にすることができないおそれや、塗布膜のヘーズが上昇するおそれがある。比(A/C)は、好ましくは0.3~3.0である。
【0055】
分散液中のハロゲン元素の含有量は、分散液の固形分に対して500ppm未満であることが好ましい。この含有量が500ppm以上であると、積層セラミックコンデンサの電極層の共材に使用する際に、コンデンサが割れたり変形したりするおそれがある。ハロゲン元素の含有量は、より好ましくは100ppm未満である。ここで、ハロゲン元素とは、F、Cl、Br、Iを表す。
【0056】
分散液の固形分濃度を60質量%以下にすることにより、分散液や塗布液の分散安定性の低下を防ぐことができる。固形分濃度は、その用途に応じた粒子の必要配合量や作業性を考慮して設定されるため、固形分濃度の下限は特に設定されないが、保管や移送のコストを鑑みると、10質量%程度である。それよりも低い濃度が必要であれば、適当な溶媒で希釈することで対応できる。分散液の固形分濃度は、より好ましくは20~50質量%、更に好ましくは25~40質量%である。
【0057】
この分散液の溶媒としては、例えば、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、モノテルペンアルコール類等が挙げられ、用途によって適宜選択できる。溶媒を選択することにより、例えば、積層セラミックコンデンサの高誘電体層や、電極層に用いる他の部材や、高屈折率膜に使用するUV硬化樹脂及び添加剤との混合安定性を向上できる。なお、溶媒を変更する場合は、公知の溶媒置換法が採用できる。
【0058】
また、本発明の分散液は、D50粒子径(E)と、前述の結晶子径(C)との比(E/C)が、0.3~7.0であることが好ましい。D50粒子径(E)は、溶媒にエタノールを用いるとともに、固形分濃度を30質量%に調整した分散液を50℃で3時間加熱してから動的光散乱法によって求めたD50粒子径である。もし、元の分散液の溶媒種や固形分濃度が違う場合は、溶媒をエタノールに置換し、固形分濃度を30質量%に調整して、評価に供する。
【0059】
ところで、分散液は、その固形分濃度が高い程、また、加えられる熱履歴が大きい程、安定性は低下する傾向にある。ここで、この比(E/C)は、前述のような特定の状態に調整した分散液を測定して求められる値であり、分散液の分散安定性の指標の一つとなる。この値が低い程、分散安定性が優れていることを示す。
【0060】
ここで、比(E/C)が0.3未満のものは得ることが難しい。逆に、7.0より高いものは分散安定性が低いため、分散液を長期に保管することができないおそれや、薄膜セラミックコンデンサの電極層の共材に使用する際に均一に分散することができないおそれがある。比(E/C)は、より好ましくは0.5~5.0である。
【0061】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0062】
[実施例1]
〔第一工程〕
30Lのタンク内に窒素ガスを加え、相対湿度を25%に調整した。このタンクに、エチレングリコールモノメチルエーテル14.9kgを入れ、25℃に調節した。これを撹拌しながら、バリウムジエトキシド6.6kgを5分間かけて添加した。続いて、チタンテトライソプロポキシド8.3kgを10分間かけて添加して、第1溶液を作製した。
【0063】
各工程及び溶液の性状について、表1及び表2に示す(以下の実施例及び比較例も同様)。
【0064】
〔第二工程〕
この第1溶液を相対湿度25%に調整された密閉可能な容器に移した。容器内に、冷却後の相対湿度が25%以下となるように窒素ガスを封入し、密閉状態を保ちながら-10℃に冷却して24時間静置した。
【0065】
〔第三工程〕
メタノール9.0kgに純水3.8kgを撹拌しながら加えて、第2溶液を作製し、3℃に調節した。また、第二工程で得られた第1溶液を3℃に調節した。次に、連続フロー式マイクロリアクターとして、特許文献3に示した微量反応用装置を用いて、反応場のマイクロミキシングチップを4℃に保持しながら、第1溶液を5.0L/Hr、第2溶液を2.4L/Hrで送液して、第3溶液を作製した。本条件下で、6.4時間の連続運転を行い、全量を送液した。
【0066】
〔第四工程〕
この第3溶液を70℃に加熱し、この温度を24時間保持して本発明のBTO粒子の分散液を製造した。
【0067】
次いで、この分散液の性状を評価するために、ロータリーエバポレーターを用いて、この分散液を濃縮し、固形分濃度を30質量%とした。
【0068】
この分散液を用いて、以下の方法で性状を測定した。分散液の調製条件、及び測定結果を表1、表2に示す(以下の実施例、比較例も同様)。
【0069】
(1)D50粒子径(A)、D90粒子径(B)
動的光散乱法による粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製NANOTRAC-WAVEII)を用いて、分散液中の粒子のD50粒子径(A)及びD90粒子径(B)を測定した。なお、測定に用いる粒子の屈折率は1.93、密度は6.00とした。
【0070】
(2)結晶構造と結晶子径(C)
分散液を150℃で1時間乾燥させ、得られた粉末を乳鉢にて解砕し、X線回折装置(理学電気社製 RINT1400)を使用して、結晶構造を同定した。また、2θ=31.5°付近の(110)面のピークの半価幅を測定し、下記のScherrerの式により結晶子径を求めた。
【0071】
D=κλ/βcosθ
(式中、Dは結晶子径(Å)、κはScherrer定数、λは波長(Å)、βは半価幅(無次元)、及び θは反射角(rad)を示す。)
【0072】
(3)固形分濃度
分散液5gを採取し、磁製ルツボに精秤して乾燥する。次いで、これを1000℃で1時間焼成して、乾燥剤入りのデシケーターの中で室温まで冷却した後、再度精秤を行い、強熱残留分の質量から固形分を求めた。
【0073】
(4)ハロゲン元素
ICP発光分析装置(島津製作所製ICPS-8100)を用いて、分散液中のハロゲン元素量を測定し、分散液中の固形分に対するハロゲン元素の含有量を求めた。
【0074】
(5)加熱処理後のD50粒子径(E)
溶媒にエタノールを使用して、固形分濃度を30質量%に調整した分散液10gを密閉容器に入れ、50℃で3時間加熱した。加熱後の分散液を前述と同様に、動的光散乱法によるD50粒子径(E)を測定した。この値(E)と前述の結晶子径(C)から、比(E/C)を求めた。
【0075】
(6)大量生産の可否
本実施例において、第三工程の運転が5時間以上連続してできた場合、大量生産が可能であると判断した。
【0076】
第三工程の連続運転が5時間以上 :○
第三工程の連続運転が5時間未満 :×
【0077】
[実施例2]
実施例1と同様にして得られたBTO粒子の分散液を30分間超音波処理した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%のBTO粒子のエタノール分散液を得た。
【0078】
[実施例3]
実施例2と同様にして得られたBTO粒子のエタノール分散液100gに、陰イオン交換樹脂(三菱化学製 SA-20A)30gを添加した。これを室温で30分撹拌した後、イオン交換樹脂を分離した。続いて、表面処理剤としてメチルトリメトキシシラン3gを添加し、30℃で18時間撹拌した。その後、限外濾過膜を用いて濃縮を行い、固形分濃度30質量%の表面処理されたBTO粒子の分散液を得た。
【0079】
[実施例4]
第一工程において、相対湿度を50%に調整し、バリウムジエトキシドを6.3kg、チタンテトライソプロポキシドを8.6kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0080】
第二工程において、この第1溶液を相対湿度50%に調整された密閉可能な容器に移した。容器内に、冷却後の相対湿度が50%以下となるように窒素ガスを封入し、密閉状態を保ちながら12℃に冷却して24時間静置した。
【0081】
第三工程では、メタノール8.9kgに純水3.7kgを撹拌しながら加えて、第2溶液を作製した。次いで、これと、第二工程で得られた第1溶液の温度、及びマイクロミキシングチップの温度を15℃に調節した以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下で、6.4時間の連続運転を行い、全量を送液した。
【0082】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0083】
[実施例5]
第一工程において、バリウムジエトキシドを6.9kg、チタンテトライソプロポキシドを7.8kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0084】
第二工程において、温度を-18℃に冷却して3時間静置した以外は実施例1と同様にした。
【0085】
第三工程では、メタノール8.9kgに純水3.7kgを撹拌しながら加えて、第2溶液を作製した。これと、第二工程で得られた第1溶液の温度とを-18℃に調節し、マイクロミキシングチップの温度を-10℃とした以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下で、6.3時間の連続運転を行い、全量を送液した。
【0086】
第四工程では、この第3溶液を60℃に加熱し、この温度を3時間保持した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0087】
[実施例6]
第一工程において、相対湿度を10%に調整し、エチレングリコールモノメチルエーテルを10.8kg、バリウムジエトキシドを12.0kg、及びチタンテトライソプロポキシドを14.7kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0088】
第二工程において、この第1溶液を相対湿度10%に調整された密閉可能な容器に移した。容器内に、冷却後の相対湿度が10%以下となるように窒素ガスを封入し、密閉状態を保ちながら0℃に冷却して96時間静置した。
【0089】
第三工程では、メタノール16.1kgに純水6.8kgを撹拌しながら加えて、第2溶液を作製し、8℃に調節した。また、第二工程で得られた第1溶液を8℃に調節した。次に、強制薄膜式リアクターとしてエム・テクニック(株)製 ULREA SS-11を用いて、反応場の温度を8℃に保持しながら、第1溶液を5.0L/Hr、第2溶液を3.4L/Hrで送液して、第3溶液を作製した。本条件下で、8.0時間の連続運転を行い、全量を送液した。
【0090】
第四工程では、この第3溶液を耐圧容器に入れて125℃に加熱し、この温度を48時間保持して本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0091】
[実施例7]
第一工程において、200Lのタンクを使用し、エチレングリコールモノメチルエーテルを105.0kg、バリウムジエトキシドを6.0kg、及びチタンテトライソプロポキシドを7.5kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0092】
第二工程において、温度を7℃に冷却した以外は実施例1と同様にした。
【0093】
第三工程では、メタノール76.0kgに純水7.6kgを撹拌しながら加えて、第2溶液を作製し、7℃に調節した。また、第二工程で得られた第1溶液を5℃に調節した。次に反応の場の温度を7℃に保持しながら、第1溶液を20.0L/Hr、第2溶液を16.3L/Hrで送液して、第3溶液を作製した。本条件下で、6.4時間の連続運転を行い、全量を送液した。
【0094】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮し、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0095】
[比較例1]
第一工程において、バリウムジエトキシドを7.2kg、及びチタンテトライソプロポキシドを7.5kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0096】
第二工程及び第三工程では、この第1溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下では、第三工程の運転開始後、4.2時間経過した時点で製造ラインが詰まった(閉塞した)ため、製造ラインを清掃した後、送液を再開して運転した。
【0097】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0098】
[比較例2]
第一工程において、エチレングリコールモノメチルエーテルを14.7kg、バリウムジエトキシドを5.75kg、及びチタンテトライソプロポキシドを9.0kg使用した以外は実施例1と同様にして、第1溶液を作製した。
【0099】
第二工程において、この第1溶液を使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0100】
第三工程では、メタノール8.8kgに純水3.7kgを撹拌しながら加えて第2溶液を作製し、3℃に調節した、この第2溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下では、運転開始後、3.1時間経過した時点で製造ラインが詰まったため、製造ラインを清掃した後、送液を再開して運転した。
【0101】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0102】
[比較例3]
第一工程において、第1溶液を実施例1と同様の方法で作製した。
【0103】
第二工程において、この第1溶液を相対湿度25%に調整された密閉可能な容器に移した。容器内に、25℃における相対湿度が25%以下となるように窒素ガスを封入し、密閉状態を保ちながら25℃に保温して24時間静置した。
【0104】
第三工程では、第二工程で得られた第1溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下では、運転開始後、4.2時間経過した時点で製造ラインが詰まったため、製造ラインを清掃した後、送液を再開して運転した。
【0105】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0106】
[比較例4]
第一工程及び第二工程は、実施例1と同様に行った。
【0107】
第三工程において、第2溶液、及び、第1溶液を20℃に調節した以外は実施例1と同様にして、第3溶液を作製した。本条件下では、運転開始後、2.0時間経過した時点で製造ラインが詰まったため、製造ラインを清掃した後、送液を再開して運転した。
【0108】
第四工程では、この第3溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いて、エタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0109】
[比較例5]
実施例1と同様の方法で第三工程まで実施し、第四工程において、第3溶液を50℃に加温し、この温度を12時間保持した以外は実施例1と同様にして、本発明のBTO粒子の分散液を製造した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて分散液を濃縮した後、限外濾過膜を用いてエタノールに溶媒置換して、固形分濃度30質量%の分散液を得た。
【0110】
【0111】