(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184146
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】スプレー式毛髪着色料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20221206BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20221206BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/00
A61Q5/06
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091824
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】住吉 美弥
(72)【発明者】
【氏名】薦田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 紗也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB132
4C083AC102
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC812
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD202
4C083BB21
4C083BB34
4C083CC36
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顔料使用の際の振とう混合時における顔料の分散性を向上させた、顔料の色調がバランスよく毛髪に塗布できるスプレー式毛髪着色料組成物を提供する。
【解決手段】(A)顔料、(B)カチオン性高分子を含有することを特徴とする、スプレー式毛髪着色料組成物による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)顔料、(B)カチオン性高分子を含有することを特徴とする、スプレー式毛髪着色料組成物。
【請求項2】
前記(A)顔料は、赤色202号を含有することを特徴とする請求項1に記載のスプレー式毛髪着色料組成物。
【請求項3】
前記(B)カチオン性高分子は、カチオン性アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプレー式毛髪着色料組成物。
【請求項4】
前記(A)顔料の含有量に対する前記(B)カチオン性高分子の含有量の比(B)/(A)が、0.03~20であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスプレー式毛髪着色料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の分散性を向上させたスプレー式毛髪着色料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料などの着色剤を毛髪の表面に付着させて、髪を一時的に着色するための毛髪着色料は、特別な日に髪を一日だけ着色したい時や、休みの日に気分転換で髪の色を変えたい時など、手軽に使えて更には簡単にシャンプーで洗い落とせることから、近年広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、良好な顔料分散性と共に、被覆力、風合い、耐摩擦性及び耐水性においてバランス良く良好な性能を示す、少なくとも顔料とアミノ変性ポリエーテル変性シリコーンとを含有する毛髪着色料が開示されている。ここでの良好な顔料分散性とは、毛髪着色料の調製後に1か月保存した際の顔料の沈降又は凝集の有無について評価した結果を示すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
毛髪着色料とは、何種類かの顔料を含有してその顔料が髪の表面に付着することで髪の色を変化させるものである。顔料は保存時に沈降し凝集してしまうため、毛髪着色料の使用時には、容器を振とうして、顔料を均一に再分散させてから使用するが、振とう混合時における顔料の分散性が悪く、顔料の分散が不十分であると、塗布する毛髪の色調にバラツキが生じてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、毛髪着色料の振とう混合時における顔料の分散性に着目し、それを向上させることを目的とする。すなわち、本発明の課題は、振とう混合時における顔料の分散性に優れ、顔料の色調がバランスよく毛髪に塗布できるスプレー式毛髪着色料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、スプレー式の毛髪着色料組成物に顔料とカチオン性高分子とを含有させることにより振とう混合時の顔料の分散性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の顔料とカチオン性高分子とを含有することを特徴とするスプレー式毛髪着色料組成物である。
上記課題を解決するための本発明のスプレー式毛髪着色料組成物は、(A)顔料、(B)カチオン性高分子を含有することを特徴とするものである。
本発明のスプレー式毛髪着色料組成物によれば、使用時における振とう混合の際の顔料の分散性が向上したスプレー式毛髪着色料組成物を提供することができる。
【0009】
また、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物の一実施態様としては、(A)顔料は、赤色202号を含有することを特徴とするものである。
上記の実施態様によれば、分散性の悪い赤色202号を含有させた場合においても、振とう混合の際の赤色202号の分散性を向上させたスプレー式毛髪着色料組成物を提供することができる。
【0010】
また、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物の一実施態様としては、(B)カチオン性高分子は、カチオン性アクリル樹脂であることを特徴とするものである。
上記の実施態様によれば、カチオン性高分子の中でもカチオン性アクリル樹脂を含有させることにより、使用時における振とう混合の際の顔料の分散性が向上したスプレー式毛髪着色料組成物を提供することができる。
【0011】
また、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物の一実施態様としては、(A)顔料の含有量に対する(B)カチオン性高分子の含有量の比(B)/(A)が、0.03~20であることを特徴とするものである。
上記の実施態様によれば、(A)顔料と(B)カチオン性高分子の含有量の比(B)/(A)を一定の範囲内とした時に、使用時における振とう混合の際の顔料の分散性がより向上し、また、毛髪に使用した際のごわつきをより軽減したスプレー式毛髪着色料組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、振とう混合時における顔料の分散性に優れ、顔料の色調がバランスよく毛髪に塗布できるスプレー式毛髪着色料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、顔料とカチオン性高分子とを含有することを特徴とするスプレー式毛髪着色料組成物であり、振とう混合時における顔料の分散性に優れ、顔料の色調がバランスよく毛髪に塗布できるスプレー式毛髪着色料組成物である。
【0014】
以下、本発明に係るスプレー式毛髪着色料組成物の実施態様について、詳細に説明する。
なお、本実施態様に記載するスプレー式毛髪着色料組成物については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0015】
[スプレー式毛髪着色料組成物]
本発明におけるスプレー式毛髪着色料組成物とは、各種の顔料を毛髪に対して物理的な付着力により一時的に付着させ毛髪を着色する着色機構を有する組成物を、高圧の空気などのガスや機械的な運動(指やピエゾ素子など)により液体を霧、泡などの状態で噴霧する装置を用いて毛髪に塗布するものである。
【0016】
本発明のスプレー式毛髪着色料組成物は、高圧な空気などのガスや液化ガス、圧縮ガスなどの噴射剤を用いて、毛髪に塗布することができる。前記(A)顔料と、(B)カチオン性高分子とを含有したスプレー原液と噴射剤との割合は、特に制限されず、目的とする噴射形態に照らして、適宜設定されるものあるが、例えば、スプレー原液:噴射剤=20:80~80:20である。前記噴射剤の割合が20以上の場合、しっかりと吐出することが可能であり、毛髪上に顔料を均一に塗布することができる。また、前記噴射剤の割合が80以下の場合、噴射の勢いが適切であり、顔料などの着色剤が飛散して衣服や周囲を汚してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
以下、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物を構成する各成分について詳しく説明する。
<顔料>
顔料とは、着色に用いる粉末で水や油に不溶のものであり、本発明における顔料は、毛髪を着色させるために用いるものである。
顔料の種類は特に限定されないが、例えば、無機顔料、有機顔料、染料樹脂固溶体、昼光蛍光顔料又は天然顔料等が挙げられる。これらの顔料は、所望する毛髪の色調に応じて1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記無機顔料は、鉱物性顔料とも言われ、化学的に無機質な顔料のことである。天然鉱物のまま、又は、天然鉱物を加工や粉砕することにより作られるものや、亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム等の化合物を原料として作られるものとがある。耐光性、耐熱性がよく、有機溶剤に溶けない性質を有する。様々な種類があるが、色別に分けると、白色顔料(酸化チタン等)、赤色顔料(べんがら等)、黄色顔料(黄鉛等)、緑色顔料(エメラルド緑等)、青色顔料(コバルト青等)、紫色顔料(マンガン・バイオレット等)、黒色顔料(カーボンブラック等)、透明性白色顔料(シリカ白等)がある。無機顔料としては、特に制限されないが、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、ベンガラ、酸化クロム、酸化コバルト、黒酸化鉄、黄酸化鉄、水酸化クロム、水酸化アルミニウム、紺青、硫酸バリウム、含水珪酸塩、無水珪酸、珪酸アルミニウム、タルク、カオリン、カルミン、雲母、炭酸マグネシウム、ベントナイト、群青、マンガンバイオレット、カーボンブラック、アルミニウム、銅、金、雲母チタン等が挙げられる。
【0019】
上記有機顔料は、有機化合物からなる色素を主体とする顔料である。有機顔料は、色素自身が水に不溶の有機色素顔料と、水溶性染料を何らかの手段、例えば、金属塩等を加える等して、不溶性としたレーキ顔料に大別される。有機顔料は、色相が豊富で鮮明であり、着色力や透明性も大きいという長所を有する。有機顔料としては、特に制限されないが、例えば赤色202、203、204、205、206、207、208、219、220、221、228、405の各号、だいだい色203、204、401の各号、黄色205、401の各号、青色404号等が挙げられる。
赤色202号(リソールルビンBCA)は、法定色素であり、タール色素に分類されるモノアゾ系の顔料である。赤色202号は、振とう混合時における分散性が他の顔料と比較して特に悪い。
【0020】
赤色202号(リソールルビンBCA)は、以下の式(1)のような構造を有する化合物である。
【化1】
【0021】
赤色202号について、振とう混合時における分散性が他の顔料と比較して悪い理由は明確ではないが、式(1)からカルシウム(Ca)を有していることが分かる。カルシウムは、例えば有機酸水溶液に炭酸カルシウム(CaCO3)を入れると、有機酸カルシウムを析出する反応が知られている。赤色202号においても同様に、含有するカルシウムがスプレー式毛髪着色料組成物に含有されるその他の成分と相互作用を起こし、それによって振とう混合時の分散性がより悪いのでないかと推察される。
【0022】
昼光蛍光顔料とは、蛍光顔料の1種であって、有機質のものである。通常光下で鮮やかな発色をするのが特徴である。紫外線等による光の刺激で輝度が向上する。
【0023】
上記天然顔料としては、特に制限されないが、例えばクレー等の鉱物顔料、マダーレーキやコチニールレーキ等の天然染料レーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0024】
スプレー式毛髪着色料組成物における顔料の含有量は、特に制限されないが、例えば0.1~15質量%である。下限値としては、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。顔料の含有量が0.1質量%以上であると、毛髪の着色効果を十分に発揮できる。顔料の含有量が15質量%以下であると、顔料分散性がより向上できる。
【0025】
<カチオン性高分子>
カチオン性高分子とは、陽イオン化する置換基を有する高分子であり、その置換基は、アミノ基、アンモニウム基等がある。
本発明におけるカチオン性高分子は、スプレー式毛髪着色料組成物における振とう混合の際の顔料の分散性を向上させるために用いるものである。本発明におけるカチオン性高分子は、顔料の中でも特に赤色202号の振とう混合時の分散性向上に効果を発揮する。
【0026】
また、本発明におけるカチオン性高分子は、市販品を用いることができる。本実施形態に配合されるカチオン性高分子としては、特に限定されないが、例えばカチオン性多糖類、カチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子が挙げられる。これらのカチオン性高分子は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記カチオン性多糖類は、多糖類にカチオン基を付与したカチオン性糖誘導体である。カチオン性糖誘導体は、糖類に含まれる水酸基の一部が第4級窒素含有基で置換された構造を持つ。好ましい第4級窒素含有基は、第4級アンモニウム基であり、例えば、糖類にグリシジルトリアルキルアンモニウム塩、3-ハロゲノ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩を反応させ、糖類の水酸基の一部に第4級アンモニウム基を導入することにより、カチオン性多糖類を得ることができる。
【0028】
上記カチオン性多糖類としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化カッシア、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化デンプン等が挙げられる。
【0029】
上記カチオン化セルロースは、カチオン基を有するセルロース系のポリマーである。ヒドロキシエチルセルロースに、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム、または塩化3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムを部分的に化学結合させることにより得られる。具体的には、例えば、ポリクオタニウム-4(塩化ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム)、ポリクオタニウム-10(塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)等が挙げられる。
【0030】
上記カチオン化グアーガムは、ガラクトースとマンノースとが1:2の比率で存在している多糖類であるグアーガムについて、主鎖のマンノース及び側鎖のガラクトースのヒドロキシルメチル基及びヒドロキシル基を4級アンモニウム化することにより、カチオン化変性させた水溶性高分子である。具体的には、例えば、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
【0031】
上記カチオン化タラガムは、ガラクトースとマンノースとが1:3の比率で存在している多糖類であるタラガムを、カチオン化変性させた水溶性高分子である。具体的には、例えば、カエサルピニアスピノサヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
また、上記カチオン化ローカストビーンガムは、ガラクトースとマンノースとが1:4の比率で存在している多糖類であるローカストビーンガムを、カチオン化変性させた水溶性高分子である。具体的には、例えば、ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
また、上記カチオン化カッシアは、ガラクトースとマンノースとが1:5の比率で存在している多糖類であるカッシアガムを、カチオン化変性させた水溶性高分子である。具体的には、例えば、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
また、上記カチオン化フェヌグリークガムは、ガラクトースとマンノースとが1:1の比率で存在している多糖類であるフェヌグリークガムを、カチオン化変性させた水溶性高分子である。具体的には、例えば、コロハヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
また、上記カチオン化デンプンは、でんぷんをカチオン化変性させた高分子である。具体的には、例えば、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン等が挙げられる。
【0032】
上記カチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子におけるカチオン性モノマーとしては、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジエチルジアリルアンモニウム、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸ジエチルの硫酸塩(硫酸塩として、例えばジエチル硫酸)、塩化2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリル酸アミドプロピルラウリルジモニウム等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルアミドは、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリル酸アミドとメタクリル酸アミドの混合物のいずれかを意味する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の混合物のいずれかを意味する。(メタ)アクリロイルは、アクリロイル基含有、メタクリロイル基含有、アクリロイル基含有とメタクリロイル基含有のいずれかを意味する。
【0033】
上記カチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子としては、例えば、ポリクオタニウム-6等のポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリクオタニウム-7等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリクオタニウム-11等のビニルピロリドン・N、N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ポリクオタニウム-16等のビニルピロリドン・メチルビニルイミダゾリウム共重合体、ポリクオタニウム-52等のエチル[(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニウムエチル硫酸塩・N、N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体が挙げられる。上記カチオン性高分子においては、赤色202号の分散性向上という観点から、カチオン性アクリル樹脂が好ましい。
【0034】
本発明におけるカチオン性高分子の含有量は、特に限定されないが、例えば0.01~10質量%である。含有量の下限値として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。含有量の上限値として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。これにより、顔料と一体となったカラーペーストを形成し、顔料の分散性をより一層向上させることができる。
【0035】
カチオン性高分子は、顔料の振とう混合時の分散性を向上するが、顔料の中でも、アニオン性に傾きやすい性質を有する顔料に特に有効と考えられる。例えば、赤色202号は、式(1)に示す構造を有しており、その構造中にフェノール性の水酸基を有している。フェノール性の水酸基は比較的アニオンになりやすいため、赤色202号は、アニオン性の性質を示しやすいと考えられる。そうすると、カチオン性高分子との相互作用が起きやすく、カチオン性高分子との相互作用によって赤色202号の粒子の凝集等が抑制されることにより、振とう混合時における赤色202号等の顔料の分散性が良くなるのではないかと推察される。
【0036】
赤色202号は、前述のとおり、含有するカルシウムがスプレー式毛髪着色料組成物に含有されるその他の成分と相互作用を起こし、それによって振とう混合時の分散性がより悪いのでないかと推察されるが、フェノール性の水酸基も有しているため、カチオン性高分子との相互作用を起こしやすく、よって、特に赤色202号の振とう混合時の分散性向上にカチオン性高分子が効果を発揮するものと推察される。
【0037】
カチオン性高分子による振とう混合時の分散性向上の効果が表れやすい顔料として、赤色202号を用いて説明したが、赤色202号に限定されるものではない。顔料の構造として、例えば、フェノール性の水酸基を含有するような、比較的アニオン性に傾きやすい構造を有していれば、カチオン性高分子による振とう混合時の分散性向上の効果が表れやすいと考えらえる。
【0038】
<カチオン性アクリル樹脂>
カチオン性アクリル樹脂とは、カチオン性の官能基と(メタ)アクリロイル基とを有するモノマーを重合してなる重合体、又は、カチオン性の官能基と(メタ)アクリロイル基とを有するモノマーと、その他の共重合可能なモノマーとの共重合体である。
本発明において、カチオン性高分子をカチオン性アクリル樹脂とすることにより、スプレー式毛髪着色料組成物における振とう混合の際の顔料の分散性をより一層向上させることができる。
【0039】
カチオン性の官能基としては、それ自体カチオンを形成している基及びそれ自体カチオンを形成していないが中性付近(pH6~8)においてプロトンの結合により容易にカチオンを形成するアミン系及びイミン系の官能基を挙げることができる。例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩、イミノ基(-NH-基及び=NH基)、アミジノ基、イミジノ基、ヒドラジノ基、ピリジル基等が挙げられる。
【0040】
カチオン性の官能基と(メタ)アクリロイル基とを有するモノマーとしては、例えば、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アミノアルキルアクリレート類、アミノアルキルメタクリレート類、N-アミノアルキルアクリルアミド類、N-アミノアルキルメタクリルアミド類、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素等であるハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化ベンジル基等で4級塩化された、上記アミノ(メタ)アルキルアクリレート類とN-アミノアルキルアクリルアミド又はN-アミノアルキルアクリルアミド類との4級塩類等が挙げられる。
【0041】
その他の共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、スチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド等のアミド類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類等を挙げられる。
【0042】
本発明におけるカチオン性アクリル樹脂としては、顔料の分散性の向上、特に赤色202号の分散性の向上という観点から、下記式(2)、(3)の構造を有する化合物を含有する共重合体が好ましい。また、下記式(4)の構造を有する化合物を含有することもできる。
【0043】
【化2】
(ここで、R
1は水素又はメチル基であり、R
2は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0044】
式(2)におけるR2の炭素数は、好ましくは1~4である。
【0045】
【化3】
(ここで、R
3は水素又はメチル基である。R
4は炭素数1~6の炭化水素基である。R
5は炭素数1~3のアルキル基である。R
5は同一でも異なっていてもよい。)
【0046】
式(3)におけるR4の炭素数は、好ましくは1~4である。
【0047】
【化4】
(ここで、R
6は水素又はメチル基である。R
7及びR
8は、炭素数1~6の炭化水素基である)
【0048】
上記式(4)におけるR7及びR8の炭素数は、好ましくは1~4である。
【0049】
上記式(2)、(3)又は上記式(2)、(3)及び(4)に示す構造を有する化合物の共重合体の内、メタクリル酸ブチル・塩化メタクロイルエチルトリアンモニウム共重合体、又はメタクリル酸ブチル・メタクリル酸エトキシエチル・塩化メタクロイルエチルトリアンモニウム共重合体が好ましく、メタクリル酸ブチル・メタクリル酸エトキシエチル・塩化メタクロイルエチルトリアンモニウム共重合体が特に好ましい。
【0050】
また、本発明におけるカチオン性アクリル樹脂としては、顔料の分散性の向上、特に赤色202号の分散性の向上という観点から、上記式(3)、下記式(5)の構造を有する化合物を含有する共重合体も好ましい。
【0051】
【0052】
上記式(3)及び(5)に示す構造を有する化合物の共重合体としては、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液が特に好ましい。
【0053】
本発明におけるカチオン性アクリル樹脂の含有量は上述のカチオン性高分子と同様、特に制限されないが、例えば0.01~10質量%である。含有量の下限値として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。含有量の上限値として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。これにより、顔料と一体となったカラーペーストを形成し、顔料の分散性をより一層向上させることができる。またスプレー式毛髪着色料組成物の毛髪に対する良好な被覆力、毛髪に対する少々の摩擦によっては色移りしない耐摩擦性、また水に濡れた状態での耐摩擦性(耐水性)の効果を発揮することができる。
【0054】
<含有量の比(B)/(A)>
(A)顔料の含有量に対する(B)カチオン性高分子の含有量の比(B)/(A)は、0.01~100である。比の下限値として、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上である。比の上限値として、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下である。これにより、スプレー式毛髪着色料組成物における振とう混合の際の顔料の分散性を向上させることができるとともに、スプレー式装置における内容物の詰まりを防ぐことができる。
【0055】
<その他の成分>
本発明のスプレー式毛髪着色料組成物は、上記成分以外にも、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、樹脂、界面活性剤、油性成分、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸メチル等の有機溶媒、グリセリン、1、3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸等の保湿剤、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、アスコルビン酸、無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、殺菌剤、紫外線吸収剤、動物抽出成分、植物抽出成分等が挙げられる。
【0056】
<樹脂>
その他の成分として、本発明には樹脂を含有することができる。樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、両性樹脂、アニオン性樹脂又は非イオン性樹脂が挙げられる。これらの中から、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。樹脂の総含有量は、特に制限されないが、例えば0.1~15質量%である。総含有量の下限値として好ましくは0.5質量%以上である。総含有量の上限値として、好ましくは10質量%以下である。これにより、スプレー式毛髪着色料組成物の毛髪に対する良好な被覆力、毛髪に対する少々の摩擦によっては色移りしない耐摩擦性、また水に濡れた状態での耐摩擦性(耐水性)の効果を得ることができる。
【0057】
前記両性樹脂とは、1分子内に陽イオンと陰イオンとを併せ持つ樹脂である。前記両性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、両性アクリル系高分子化合物等を挙げられる。前記両性アクリル系高分子としては、具体的には、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド等と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等を共重合し、ハロゲン化酢酸で両性化した化合物、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体等を挙げられる。市販品としては、三菱化学社のユカフォーマーAM75-201、202、204、R205、R205S、206、W、WH、ナショナルスターチ(National Starch)社のアンフォマー(Amphomer)等を挙げられる。
【0058】
前記アニオン性樹脂とは、水溶液とした場合に、電気的性質としてアニオン性を有する樹脂である。前記アニオン性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、酢酸ビニルエーテル系高分子化合物、酸性ポリ酢酸ビニル系高分子化合物、酸性アクリル系高分子化合物等を挙げられる。前記酢酸ビニルエーテル系高分子化合物としては、具体的には、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の低級アルキルハーフエステル等を挙げられる。市販品としては、GAF社のガントレッツES-225、ES-335、ES-425等を挙げられる。また、前記酸性ポリ酢酸ビニル系高分子化合物としては、具体的には、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/N-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン共重合体等を挙げられる。市販品としては、BASF社のルビセットCA、CAP、ナショナルスターチ(NationalStarch)社のレジン28-1310、28-2930、ダウケミカル(Dow Chemical)社のデューレックス等を挙げられる。また、前記酸性アクリル系高分子化合物としては、具体的には、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/N-アルキルアクリルアミドの共重合体を挙げられる。市販品としては、互応化学のプラスサイズL-53P、53D、7400、7410、7420、7480、53PB、8011、BASF社のウルトラホールド8等を例示できる。
【0059】
前記非イオン性樹脂とは、水溶液とした場合に、イオンにならない樹脂である。前記非イオン性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン系高分子化合物等を挙げられる。前記ポリビニルピロリドン系高分子化合物としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン/メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル/アルキルアミノアクリレート共重合体等を挙げられる。市販品としては、BASF社のルビスコル(Luviscol)K、VA、VAPや、GAF社のPVPX、PVP/VA等を挙げられる。
【0060】
前記カチオン性高分子による、振とう混合時の顔料の分散性向上の強化という観点から、前記樹脂としては、両性樹脂又はアニオン性樹脂が好ましい。また、両性樹脂としては、両性アクリル系高分子化合物が好ましく、アニオン性樹脂としては、アニオン性アクリル系高分子化合物が好ましい。これは、両性樹脂又はアニオン性樹脂であれば、(A)カチオン性高分子と相互作用することが考えられ、当該相互作用により(A)カチオン性高分子の振とう混合時の顔料の分散性向上効果が強化されるためである。
【0061】
<界面活性剤>
その他の成分として、本発明には界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の種類は、特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられる。これらの中から、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~10質量%である。含有量の下限値として、好ましくは0.05質量%以上である。含有量の上限値として、好ましくは5質量%以下である。これにより、スプレー式毛髪着色料組成物を毛髪に使用した際のごわつきを軽減し、毛髪に対する良好な被覆力、毛髪に対する少々の摩擦によっては色移りしない耐摩擦性の効果を得ることができる。
なお、以下の記載において、POEはポリオキシエチレン鎖、POPはポリオキシプロピレン鎖を示し、これに続くカッコ内の数字は、その付加モル数を示している。また、アルキルに続くカッコ内の数字は、脂肪酸鎖の炭素数を示している。
【0062】
上記非イオン界面活性剤としては、例えば、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEモノ脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEラノリン、POEフィトステロール等が挙げられる。
POE、POPの繰り返し単位数としては、例えば、2~100が挙げられ、界面活性作用を示すものであればいずれのものも使用可能である。
【0063】
スプレー式毛髪着色料組成物におけるノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。上限値として、より好ましくは7.5質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0064】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0065】
より具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエ-テルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示され、1又は2種以上を使用することができる。
【0066】
スプレー式毛髪着色料組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。上限値として、より好ましくは7.5質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0067】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0068】
好ましくはアルキル4級アンモニウム塩類であり、さらに好ましくはモノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩であり、特に好ましくはモノアルキル型4級アンモニウム塩である。
【0069】
製剤安定性の観点からモノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウム、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。特に好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムである。
【0070】
ジアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアルキル(12~15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0071】
スプレー式毛髪着色料組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。上限値として、より好ましくは7.5質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0072】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0073】
アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤等が挙げられる。グリシン型両性界面活性剤の具体例としては、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエトキシエチル-N’-カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメトキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、パーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。アミノプロピオン酸型両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0074】
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。スルホベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0075】
<油性成分>
油性成分は、例えば、高級アルコール、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン油、フッ素油等が例示される。これらの油性成分から、1種又は2種以上を選んで用いることができる。
【0076】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、フィトステロール、フィトスタノール、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロール等が挙げられる。
【0077】
油脂は、トリグリセリドすなわち脂肪酸とグリセリンとのトリエステルである。例えば、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0078】
ロウ類は、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルである。例えば、ミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0079】
炭化水素は、炭素と水素よりなる化合物である。例えば、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、オゾケライト、セレシン、ポリエチレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワラン、スクワレン、水添スクワラン、リモネン、テレビン油等が挙げられる。
【0080】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0081】
エステル類は、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、脂肪酸(C10-30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0082】
シリコーン油は、有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子である。例えば、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650~10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0083】
上記のうち、アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0084】
本発明のスプレー式毛髪着色料組成物における油性成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~30質量%である。下限値として、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限値としては、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【実施例0085】
以下、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物に係る実施例を示し、更に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
表中の以下の成分については、次の市販品を使用した。
・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸エトキシエチル・塩化メタクロイルエチルトリアンモニウム共重合体:互応化学工業株式会社製「プラスサイズL-514」
・N-メタクロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体:三菱ケミカル株式会社製「ユカフォーマー202」
・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸共重合体:互応化学工業株式会社製「プラスサイズL-53」
【0086】
表1及び表2に示す含有量によって、実施例及び比較例に係る本発明のスプレー式毛髪着色料組成物を得た。これらについて、下記評価基準に従って、易分散性、被覆力、ごわつきのなさ、耐水性、耐摩擦性、速乾性、洗浄性を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、本発明の評価試験で用いる人毛毛束は、特に限定しない限り、試験毛束に均一に着色できているかを確認するため、BM-W-A(白髪100%:ビューラックス社製)の毛束を使用することとする。
【0087】
<易分散性の評価方法>
易分散性について、下記の試験により評価した。
実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物30gを耐圧瓶に充填し、40℃の恒温槽で1ヶ月静置後、手動にて上下に10回振とうした時の顔料の分散状態をパネラー10名による目視にて評価した。結果はパネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:全て均一に分散しており、顔料の凝集物もない(非常に良好)
4:ほとんど均一に分散しており、顔料の凝集物もない(良好)
3:分散するが、顔料の凝集物がわずかに見られる(普通)
2:あまり分散せず、顔料の凝集物が見られる(悪い)
1:全く分散せず、顔料の凝集物が見られる(かなり悪い)
【0088】
<被覆力の評価方法>
被覆力について、毛束による官能試験により評価した。
白髪毛束1gに対し、実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するように塗布した後、十分に乾燥させ、パネラー10名の目視により被覆力について評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値で示した。
<評価基準>
5:下地となる白髪の色が完全に隠蔽された。
4:下地となる白髪の色の影響を僅かに受けるが隠蔽された。
3:下地となる白髪の色の影響をやや受けるがほぼ隠蔽された。
2:下地となる白髪の影響を受け、若干隠蔽力に欠ける。
1:下地となる白髪の色がほとんど隠蔽されず、色むらが生じた。
【0089】
<ごわつきのなさの評価方法>
ごわつきのなさについて、毛束による官能試験にて評価した。
毛束1gに対し、実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するように塗布した後、十分に乾燥させ、パネラー10名の手の触感による官能試験を行い、ごわつきのなさについて評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:毛髪のごわつきを感じない。
4:毛髪のごわつきがほぼない。
3:毛髪のごわつきが少ない。
2:毛髪のごわつきがややある。
1:毛髪のごわつきが強い。
【0090】
<耐水性の評価方法>
毛束1gに対し、スプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するように塗布した後、十分乾燥させ、この毛束に対し霧吹きで水を吹きかけて濡らし、濡れた毛束を白色布ではさんだときの布への色移りをパネラー10名による目視にて観察し、評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:全く色移りがない。
4:少し色移りがある。
3:色移りがある。
2:かなり色移りがある。
1:激しい色移りがある
【0091】
<耐摩擦性の評価方法>
耐摩擦性について、毛束による官能試験にて評価した。
毛束1gに対し、実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するように塗布した後、十分乾燥させ、白色布で当該毛束をこすったときの色移りを、パネラー10名による目視で観察し、評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:全く色移りがない。
4:少し色移りがある。
3:色移りがある。
2:かなり色移りがある。
1:激しい色移りがある
【0092】
<速乾性の評価方法>
速乾性について、毛束による官能試験にて評価した。
毛束1gに対し、実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するよう塗布した後、3分乾燥後すぐに白色布で当該毛束をこすったときの布ヘの色移りをパネラー10名による目視にて観察し、評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:全く色移りがない。
4:少し色移りがある。
3:色移りがある。
2:かなり色移りがある。
1:激しい色移りがある
【0093】
<洗浄性の評価方法>
洗浄性について、毛束による官能試験にて評価した。
毛束1gに対し、実施例及び比較例に係るスプレー式毛髪着色料組成物が0.1g付着するよう塗布した後、十分乾燥させ、ビゲントリートメントシャンプーにて2回洗浄後の色残りを、パネラー10名による目視にて評価した。結果は、パネラー10名の点数の平均値を示した。
<評価基準>
5:全く色残りがない。
4:少し色残りがある。
3:色残りがある。
2:かなり色残りがある。
1:激しい色残りがある
【0094】
【0095】
【0096】
表1及び表2に示すように、実施例における本発明のスプレー式毛髪着色料組成物は易分散性の評価結果が3~5であり、良好な結果を示した。
【0097】
実施例1、実施例4及び比較例1は、(B)カチオン性高分子を含有しているかどうかという点のみ異なり、それ以外の処方は同じである。実施例1、実施例4及び比較例1の評価結果を比較すると、易分散性についてのみ異なり、比較例1が「1」であるところ実施例1は「5」、実施例4は「4」と良好な結果を示した。これにより、(B)カチオン性高分子が顔料の振とう混合時における分散性を良好にすることが分かった。
【0098】
実施例2と比較例2とを比較すると、(B)カチオン性高分子を含有しているかどうかの違いにより、比較例2は易分散性が「2」であるのに対して実施例2は「5」と良好な結果となった。実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2は、(A)顔料の含有量の総量は変わらないが、実施例1及び比較例1は(A)顔料として赤色202号を含んでいるが、実施例2及び比較例2は含んでいない。ここで、比較例1と比較例2とを比較すると、赤色202号を含んでいる比較例1の方が易分散性について悪いが、実施例1及び実施例2の易分散性の評価は同等である。これらのことから、赤色202号は他の顔料よりも振とう混合時における分散性が悪く、その赤色202号の分散性の悪さ解消に対して(B)カチオン性高分子が良好な効果を発揮することが分かった。
【0099】
実施例1と実施例4とを比較すると、(A)カチオン性高分子として異なる化合物を用いているが、いずれも易分散性の評価は良好である。よって、本発明のスプレー式毛髪着色料組成物では、(A)カチオン性高分子として色々な化合物を用いることができることが分かる。また、易分散性の評価が、実施例1は「5」であるのに対して、実施例4は「4」であることから、(A)カチオン性高分子としては、メタクリル酸ブチル・メタクリル酸エトキシエチル・塩化メタクロイルエチルトリアンモニウム共重合体がより好ましいことが分かる。
【0100】
実施例1、実施例3及び実施例10を比較すると、実施例1及び実施例10は、両性樹脂又はアニオン性樹脂を含有している点で実施例3と異なる。実施例1及び実施例10の方が易分散性の評価が良いことから、両性樹脂又はアニオン性樹脂は、(A)顔料の振とう混合時における分散性をより向上することができる。
【0101】
実施例5~実施例9を比較すると、(A)顔料に対する(B)カチオン性高分子の含有量の質量比(B/A)が高くなると、易分散性が向上することが分かった。
本発明により、顔料使用の際の振とう混合時における顔料の分散性を向上させた、顔料の色調がバランスよく毛髪に塗布できるスプレー式毛髪着色料組成物が提供されるため、毛髪を均一でバランスのよい色調に着色することができる。