IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特開-気密コンパクト容器 図1
  • 特開-気密コンパクト容器 図2
  • 特開-気密コンパクト容器 図3
  • 特開-気密コンパクト容器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184152
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】気密コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20221206BHJP
   B65D 43/16 20060101ALI20221206BHJP
   A45D 33/00 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
A45D40/00 T
B65D43/16 100
A45D33/00 615C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091836
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】下谷 和彦
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB07
3E084BA01
3E084CA02
3E084CC03
3E084DA02
3E084DC03
3E084FA01
3E084FC01
3E084GA06
3E084GB06
(57)【要約】
【課題】 気密性を維持するとともに、弾性シール部材やヒンジの損傷を抑制することができる気密コンパクト容器を提供すること。
【解決手段】 上端に密封筒22が設けられ、内部に化粧料を収納する中皿Cと、中皿Cを弾性シール部材Sを介して密封状態に保持する中蓋Dと、軸部40と軸受け部41を介して中皿Cに中蓋Dを回動可能に連結するヒンジEとを備える気密コンパクト容器であって、弾性シール部材Sは、中蓋Dの閉蓋時に密封筒22の上面と圧接する環状の第1シール凸部37と、密封筒22の外側面と圧接する第2シール凸部38とを有し、ヒンジEは、軸部40が軸受け部41に対して水平方向のクリアランスKを有することを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に密封筒が設けられ、内部に化粧料を収納する中皿と、中皿を弾性シール部材を介して密封状態に保持する中蓋と、軸部と軸受け部を介して中皿に中蓋を回動可能に連結するヒンジとを備える気密コンパクト容器であって、
弾性シール部材は、中蓋の閉蓋時に密封筒の上面と圧接する環状の第1シール凸部と、密封筒の外側面と圧接する第2シール凸部とを有し、
ヒンジは、軸部が軸受け部に対して水平方向のクリアランスを有することを特徴とする気密コンパクト容器。
【請求項2】
弾性シール部材は、中蓋の成形時に、中蓋に喰い込む突部が間欠的に形成されるようにエラストマーをインサート成形することを特徴とする請求項1に記載の気密コンパクト容器。
【請求項3】
ヒンジは、中蓋が閉蓋した状態で、軸部の径が垂直方向の方が水平方向よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の気密コンパクト容器。
【請求項4】
中皿は、開閉可能な外蓋を有する容器本体に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の気密コンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用の気密コンパクト容器に関し、特に、リフィール容器として用いる気密コンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイシャドー、アイライナー、ファンデーションなどの化粧料は、化粧料の揮発性成分の揮発などを防止する必要があるため、これらの内容物を収納するコンパクト容器は、気密性の高いものが提案されていた。
【0003】
この種のコンパクト容器として、容器本体に中皿が固定され、蓋体の内面に取り付けたシール部材に環状の第1シール突起と第2シール突起を設け、中蓋の閉蓋時に第1シール突起を中皿のフランジ部の上面に圧接し、第2シール突起を中皿のフランジ部の外側面に圧接するようにした気密コンパクト容器が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-262125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の気密コンパクトにあっては、シール突起によって気密性を向上させればさせる程、蓋体開放時、中皿および中蓋間に画成された空間内が減圧状態となってしまうため、コンパクトの使用時に、蓋体が開閉し辛くなり、さらに、中皿と中蓋とを連結するヒンジに負荷をかけてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、気密性を維持するとともに、弾性シール部材やヒンジの損傷を抑制することができる気密コンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、気密コンパクト容器として、上端に密封筒が設けられ、内部に化粧料を収納する中皿と、中皿を弾性シール部材を介して密封状態に保持する中蓋と、軸部と軸受け部を介して中皿に中蓋を回動可能に連結するヒンジとを備える気密コンパクト容器であって、弾性シール部材は、中蓋の閉蓋時に密封筒の上面と圧接する環状の第1シール凸部と、密封筒の外側面と圧接する第2シール凸部とを有し、ヒンジは、軸部が軸受け部に対して水平方向のクリアランスを有することを特徴とする構成を採用する。
【0008】
気密コンパクト容器の実施形態として、弾性シール部材は、中蓋の成形時に、中蓋に喰い込む突部が間欠的に形成されるようにエラストマーをインサート成形することを特徴とする構成を採用し、また、ヒンジは、中蓋が閉蓋した状態で、軸部の径が垂直方向の方が水平方向よりも小さいことを特徴とする構成を採用する。
【0009】
さらに、気密コンパクト容器の具体的実施形態として、中皿は、開閉可能な外蓋を有する容器本体に着脱自在に装着されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気密コンパクト容器は、上記構成を採用することにより、気密性を維持するとともに、中蓋の開閉時に、弾性シール部材やヒンジの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例である気密コンパクト容器を収容するコンパクト容器を示す平面図である。
図2図1のX-X断面図である。
図3】本発明の実施例である気密コンパクト容器を示す断面図である。
図4図3の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の気密コンパクト容器について、実施例を示した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、図2でみて、左右方向を「水平方向」とし、上下方向を「垂直方向」とする。
【実施例0013】
図1および図2において、Aは中皿Cとパフ等の塗布具Pとを収納する容器本体、Bは容器本体Aと外ヒンジHを介して開閉可能に連設される外蓋であり、容器本体Aと、外蓋Bとにより、コンパクト容器を構成しており、容器本体Aと外蓋Bは、ロック部材Lにより閉蓋状態を維持され、開蓋する際は、ロック部材Lを側方から押圧する。
【0014】
図2に示すように、容器本体Aは、側周壁1と、側周壁1の下部を閉鎖する底壁2と、底壁2の中央付近から立設される一対のリブ3とから構成され、容器本体Aの内側には、薄板状の中枠10が配置され、中枠10の中央付近には、着座部11が垂設されており、中枠10には、着座部11を挟んで、塗布具Pを収納する凹所12と、中皿Cを収納する開口13とが形成されている。着座部11の先端部は、リブ3の間にガタつかないように収容されるとともに、底壁2に当接している。
【0015】
外蓋Bは、平面視で楕円形状の天板5と、天板5の周辺から垂下される側板6とから構成され、天板5の裏面には、鏡Mが取り付けられている。
【0016】
図3に示すように、中皿Cは、底板20と、底板20の周縁から立設される周板21と、周板21の上端に形成される密封筒22とを備え、内部に揮発成分を含む化粧料(図示せず)が収納されており、中皿Cは、リフィール容器として機能するように、ヒンジEを介して回動自在に連結する中蓋Dを備えている。
【0017】
中皿Cは、周板21の下部に2個所のフック部23、24を有し、一方の第1フック部23は、図2に示すように、中枠10の着座部11近傍に形成されたフック部分14と係合し、他方の第2フック部24は、中枠10と一体に形成され弾性変形可能な逆L字状断面の係合片15と係合する。これにより、中皿Cは、容器本体Aに対して着脱可能に保持される。
【0018】
中蓋Dは、頂板30と、頂板30のヒンジEと反対側から延設される把手部31と、頂板30の周縁から垂下される側周板32と、側周板32のヒンジEと反対側に設けられる係止部33とを備え、中皿Cの密封筒22と対向する中蓋Dの内面には、エラストマー等の弾性材料からなるリング状の弾性シール部材Sが設けられている。
【0019】
本実施例では、弾性シール部材Sは、中蓋Dに予め一体化されており、例えば、中蓋Dをインサートさせた金型にゲートGからエラストマー等を射出成形し、中蓋Dの頂板30に喰い込む突部34を周方向に間隔をおいて複数形成(実施例は、間欠的に12個)することにより、中蓋Dと強固に一体化させている。
【0020】
弾性シール部材Sは、頂板30の下面周縁に形成される水平部35と、側周板32の内周面に形成される垂直部36とにより逆L字状断面に形成され、水平部35から下方向に突設される第1シール凸部37と、垂直部36から内側方向に突設される第2シール凸部38とを備えている。
【0021】
中皿Cは、ヒンジEと反対側に蓋係合部25を有し、蓋係合部25は、中蓋Dに設けた係止部33に係合して中蓋Dを閉状態にロックし、中皿Cおよび中蓋D間に気密空間を画成する。このため、中蓋Dは、把手部31の引き上げにより、係止部33を外側にベンドさせ、中皿Cと中蓋Dとのフック係合を解除することにより中蓋Dを中皿Cから開蓋することができる。
また、中皿Cの密封筒22の内周縁部にはリングパーツ27が設けられ、メッシュ体が貼設されている。
【0022】
図4に示すように、ヒンジEは、中皿Cに設けられる軸部40に中蓋Dに設けられる軸受け部41が嵌合する簡易ヒンジとして構成され、本実施例における簡易ヒンジとは、後述する縦断面がU字状の軸受け部41の開放部から軸部40が挿入され、軸受け部41と嵌合することで構成されるものを意味する。
【0023】
図1に示すように、軸部40は、中皿Cの周板21の外周面に連なる一対の軸支持片42の間に設けられ、軸受け部41は、中蓋Dが閉じた状態において、軸部40に垂直な断面において径方向外側に開放するU字状をなすとともに、軸部40に沿って延びている。軸受け部41には、軸部40を軸受け部41に嵌合させる際に弾性変形によって軸部40を乗り越えさせる狭窄部43が設けられている。
【0024】
図3に示すように、ヒンジEは、中蓋Dを閉じた状態において、軸部40と軸受け部41との間に、軸部40に垂直かつ密封筒22の中心軸線に垂直な方向である水平方向のクリアランスKを有している。また、クリアランスKは、軸部40から見て密封筒22が位置する側に形成されている。クリアランスKは、中蓋Dを閉じる時に、中蓋Dの回動に伴って密封筒22に案内されることによる水平方向の弾性シール部材Sの移動に対してヒンジEが抵抗を生じない(ヒンジEに負荷が生じない)程度の大きさに設定されている。
【0025】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例の気密コンパクト容器は、中皿Cと中蓋Dとを別体で射出成形するが、中蓋Dは、前述したように、弾性シール部材Sをインサート成形により一体に成形する。
成形後の中皿Cは、軸部40を中蓋Dに形成される軸受け部41の開放部から挿入すると、軸部40は、軸受け部41の弾性変形によって狭窄部43を乗り越え、軸受け部41に軸部40が嵌合され、ヒンジEを備えるリフィール容器として用いる気密コンパクト容器が完成する。
【0026】
次に、気密コンパクト容器は、中皿Cの内部に化粧料を充填した後、中蓋DをヒンジEを介して閉蓋すると、中蓋Dの係止部33は、中皿Cの蓋係合部25に係合して中蓋Dを閉状態に維持するとともに、弾性シール部材Sの第1シール凸部37は、中皿Cの密封筒22の上面に圧接し、第2シール凸部38は、密封筒22の外側面に圧接することにより、気密コンパクト容器内を気密状態に保持する。
【0027】
次に、化粧料を充填した気密コンパクト容器は、図2に示すコンパクト容器の容器本体Aに装着されると、中皿Cは、周板21の下部に設けられる第1フック部23が中枠10のフック部分14と係合し、第2フック部24が中枠10と一体に形成される係合片15と係合することにより、容器本体Aに対して着脱可能に保持される。
【0028】
このように、本実施例では、中蓋Dの閉蓋時に、第1シール凸部37による環状シール部と、第2シール凸部38による環状シール部とが二重に形成されるので、第1シール凸部37と第2シール凸部38の2個所の気密が同時に破られない限り、中皿Cに収納した化粧料の揮発性成分が揮発することがなく、気密状態を確実に保持することができる。
【0029】
また、ヒンジEの軸部40と軸受け部41との間には、クリアランスKが設定されているため、中蓋Dを閉じる時に、中蓋Dの回動に伴って中皿Cの密封筒22に案内されることによる水平方向の弾性シール部材Sの移動に対して、ヒンジEに負荷が生じないようにできる。
なお、本実施例では、クリアランスKが軸部40から見て密封筒22が位置する側のみに形成されているが、その反対側にも所定の大きさのクリアランスKを設ける構成(図4において軸部40と狭窄部43との間に隙間がある構成)としてもよく、この場合、ヒンジEの成形にばらつきがあっても、中蓋Dを閉じた状態において軸部40と軸受け部41との抵抗が抑制され、弾性シール部材Sによる密封状態を良好にできる。
【0030】
また、図4に示すように、中蓋Dが閉じた状態において、垂直方向の軸部40の幅である第1幅W1は、水平方向の軸部40の幅である第2幅W2よりも小さく設定されており、第1幅W1を第2幅W2よりも小さく設定することで、中蓋Dの回動に伴って中蓋Dが水平方向に移動する際に軸部40と軸受け部41との間に生じる摺動抵抗を抑制し、それにより、弾性シール部材Sの水平方向への移動をスムーズにすることができる。
【0031】
さらに、第1幅W1は、軸受け部41の内面における狭窄部43よりも内側の部分の軸部40に垂直な方向(上下方向)の幅である第3幅W3よりも小さく設定されており、これにより、上記摺動抵抗が効果的に抑制されている。
なお、軸部40は第1幅W1を第2幅W2よりも小さくするために断面形状がトラック形状(円の一部を互いに平行な直線で切り欠いた形状)をなしているが、これに限らず例えば楕円形状や、扁平な多角形状等をなしていてもよい。
【0032】
したがって、中蓋Dを閉じる時に、中蓋Dの回動に伴って弾性シール部材Sが水平方向に移動することができるので、中蓋Dの開閉に伴う中皿Cの密封筒22と中蓋Dの弾性シール部材Sとの接触の繰り返しにより、弾性シール部材Sが損傷し、密封性が損なわれることを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の気密コンパクト容器は、気密性を維持するとともに、中蓋の開閉時に、弾性シール部材やヒンジの損傷を抑制することができるので、揮発性成分を含む化粧料を収納するコンパクト容器のリフィール容器として好適である。
【符号の説明】
【0034】
A 容器本体
B 外蓋
C 中皿
D 中蓋
E ヒンジ
G ゲート
H 外ヒンジ
K クリアランス
L ロック部材
M 鏡
P 塗布具(パフ)
S 弾性シール部材
W1、W2、W3 幅
1 側周壁
2 底壁
3 リブ
5 天板
6 側板
10 中枠
11 着座部
12 凹所
13 開口
14 フック部分
15 係合片
20 底板
21 周板
22 密封筒
23 第1フック部
24 第2フック部
25 蓋係合部
27 リングパーツ
30 頂板
31 把手部
32 側周板
33 係止部
34 突部
35 水平部
36 垂直部
37 第1シール凸部
38 第2シール凸部
40 軸部
41 軸受け部
42 軸支持片
43 狭窄部
図1
図2
図3
図4