(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184184
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/02 20060101AFI20221206BHJP
F04B 53/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F04B53/02
F04B53/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091879
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】八塚 慎二
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 力斗
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC06
3H071CC27
3H071CC41
3H071DD07
3H071DD31
(57)【要約】
【課題】摩耗に起因する異物が液体と共に吐出されることを防止することができるポンプを提供する。
【解決手段】本開示に係るポンプは、軸長方向に往復移動する柱状のプランジャ33と、該プランジャ33が摺動可能に貫通しており、内周面が前記プランジャ33の外周面から適長離隔している筒状のスリーブ34と、該スリーブ34が嵌め込まれており、内部にて前記プランジャ33が往復移動するシリンダ32とを備え、前記プランジャ33の往復移動によって、前記シリンダ32の内部に対する前記シリンダ32の一端側の開口32aを経た液体の吸入及び吐出が交互に行なわれることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸長方向に往復移動する柱状のプランジャと、
該プランジャが摺動可能に貫通しており、内周面が前記プランジャの外周面から適長離隔している筒状のスリーブと、
該スリーブが嵌め込まれており、内部にて前記プランジャが往復移動するシリンダと
を備え、
前記プランジャの往復移動によって、前記シリンダの内部に対する前記シリンダの一端側の開口を経た液体の吸入及び吐出が交互に行なわれることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記スリーブの前記内周面の一部に通流溝が設けられており、
該通流溝は前記内周面の全周にわたって延び、
外部から前記通流溝の一部に液体を供給し、該液体を前記通流溝の他部から排出するための給排液部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記給排液部は、
周方向に互いに適長離隔して前記シリンダの周壁に設けられた供給口及び排出口と、
前記供給口及び前記排出口を互いに結ぶようにして前記シリンダの内周面に設けられた給排液溝と、
周方向に互いに適長離隔して前記スリーブの周壁に設けられており、夫々の一端が前記給排液溝に向かうようにして前記スリーブの外周面に開口し、夫々の他端が前記通流溝の内面に開口している複数の貫通孔と
を備えることを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記通流溝は、前記スリーブの軸長方向の中心よりも前記スリーブの軸長方向の一端の側に配されており、
前記スリーブの軸長方向の他端は前記シリンダの前記一端側に向けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のポンプは、シリンダとプランジャとを備える。プランジャはシリンダの内部にて軸長方向に往復移動する。プランジャが一方向に移動した場合、シリンダの内部に液体が吸入される。シリンダの内部に吸入された液体は、プランジャが他方向に移動した場合にポンプの外部に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のポンプにおいては、シリンダとプランジャとの間に、弾性を有するシール部材が介在している。プランジャは往復移動時にシール部材を摩擦するので、摩耗によってシール部材から摩耗屑が生じ、生じた摩耗屑が異物として液体に混入する虞がある。ポンプが吐出する液体の用途によっては異物の混入が許容されないので、摩耗に起因する異物が液体と共に吐出されることを防止する必要がある。
【0005】
本開示の目的は、摩耗に起因する異物が液体と共に吐出されることを防止することができるポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るポンプは、軸長方向に往復移動する柱状のプランジャと、該プランジャが摺動可能に貫通しており、内周面が前記プランジャの外周面から適長離隔している筒状のスリーブと、該スリーブが嵌め込まれており、内部にて前記プランジャが往復移動するシリンダとを備え、前記プランジャの往復移動によって、前記シリンダの内部に対する前記シリンダの一端側の開口を経た液体の吸入及び吐出が交互に行なわれることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、シリンダとプランジャとの間に、弾性を有するシール部材が介在していない。故に、摩耗によってシール部材から摩耗屑が生じる虞がない。
プランジャはスリーブを貫通している。プランジャの外周面はスリーブの内周面から適長離隔している。プランジャはシリンダの内部にて軸長方向に往復移動する。
以下では、シリンダの一端側の開口を単にシリンダの開口といい、シリンダの周壁とシリンダの開口とプランジャとに囲まれる空間をシリンダ室という。
【0008】
プランジャがシリンダの開口から遠ざかった場合、シリンダ室にて生じる負圧により、ポンプの外部からシリンダの開口を経てシリンダ室に液体が吸入される。
プランジャがシリンダの開口に近づいた場合、シリンダ室に吸入された液体は、シリンダ室にて生じる正圧により、シリンダ室からシリンダの開口を経てポンプの外部に吐出される。
【0009】
シリンダ室に吸入された液体の一部は、プランジャの外周面とスリーブの内周面との間隙に浸入する。プランジャとスリーブとの間に介在する液体はプランジャの往復移動時の潤滑液として機能するので、プランジャはスリーブに対して滑らかに摺動する。故に、摩耗によってスリーブから摩耗屑が生じる虞がない。
以上の結果、ポンプに吸入された液体に摩耗屑が異物として混入する虞がないので、摩耗に起因する異物が液体と共にポンプから吐出されることを防止することができる。
【0010】
シリンダ室にて生じる圧力によって、プランジャとスリーブとの間隙を液体が通流する。プランジャとスリーブとの間隙を通流する液体は冷却液としても機能するので、摺動によるプランジャ又はスリーブの焼き付きを防止することができる。
シリンダ室からプランジャとスリーブとの間隙に浸入した液体の一部は、間隙から見てシリンダ室側とは逆側にある空間(以下、非シリンダ室という)に漏れ出る。プランジャの外周面とスリーブの内周面とのクリアランスを適切に設定することにより、プランジャとスリーブとの間隙に浸入する液体の量を低減することができ、延いては非シリンダ室に漏れ出る液体の量を低減することができる。
【0011】
本開示に係るポンプは、前記スリーブの前記内周面の一部に通流溝が設けられており、該通流溝は前記内周面の全周にわたって延び、外部から前記通流溝の一部に液体を供給し、該液体を前記通流溝の他部から排出するための給排液部を更に備えることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、スリーブの内周面の一部に通流溝が設けられている。ポンプの外部にある適宜の供液源からから給排液部を通じて通流溝の一部に供給された液体は、通流溝を通流する。通流溝を通流した液体は、通流溝の他部から給排液部を通じてポンプの外部にある適宜の排液先又は元の供液源に排出される。ただし、通流溝の容量を越える量の液体が通流溝に供給された場合、通流溝の内部の液体の一部はプランジャとスリーブとの間隙に浸入する。
【0013】
ポンプの作動前に給排液部を通じて適量の液体を供給することにより、プランジャとスリーブとの間に液体を予め介在させることができる。通流溝はスリーブの内周面の全周にわたって延びるので、プランジャとスリーブとの間隙において、液体をスリーブの周方向に満遍なく行き渡らせることができる。
【0014】
ポンプの作動中、プランジャの往復移動によってシリンダ室に吸入された液体(以下、主液体という)が、プランジャとスリーブとの間隙を通流して通流溝に浸入する。
ポンプの作動中も給排液部を通じて液体(以下、副液体という)を供給することにより、通流溝の内部にて、副液体が通流溝の一部から他部へ通流し、給排液部を通じてポンプの外部に排出される流れが形成される。しかも、通流溝の内面とプランジャの外周面とのクリアランスは、プランジャとスリーブとのクリアランスよりも大きい。
【0015】
故に、通流溝に浸入した主液体のほとんどが副液体の流れに乗り、給排液部によりポンプの外部に排出される。従って、非シリンダ室に漏れ出る主液体の量を更に低減することができる。
通流溝を通流する副液体は、プランジャ及びスリーブの冷却液としても機能する。
【0016】
本開示に係るポンプは、前記給排液部は、周方向に互いに適長離隔して前記シリンダの周壁に設けられた供給口及び排出口と、前記供給口及び前記排出口を互いに結ぶようにして前記シリンダの内周面に設けられた給排液溝と、周方向に互いに適長離隔して前記スリーブの周壁に設けられており、夫々の一端が前記給排液溝に向かうようにして前記スリーブの外周面に開口し、夫々の他端が前記通流溝の内面に開口している複数の貫通孔とを備えることを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、シリンダの周壁に供給口及び排出口が設けられている。供給口及び排出口夫々は、シリンダの内周面に設けられた給排液溝に通じている。
スリーブの周壁には複数の貫通孔が設けられている。各貫通孔の一端は給排液溝に向かうようにしてスリーブの外周面に開口している。各貫通孔の他端は通流溝の内面に開口している。
【0018】
ポンプの外部から供給口を経て副液体が給排液溝に供給される。供給された副液体は給排液溝を通流する。給排液溝を通流する副液体の一部は貫通孔を通じて通流溝に供給される。通流溝を通流する副液体の一部は貫通孔を通じて給排液溝に戻る。給排液溝を通流する副液体のほとんどは、排出口を経てポンプの外部に排出される。
以上の結果、ポンプの外部から通流溝の一部に副液体が供給され、供給された副液体が通流溝の他部からポンプの外部に排出される。
【0019】
本開示に係るポンプは、前記通流溝は、前記スリーブの軸長方向の中心よりも前記スリーブの軸長方向の一端の側に配されており、前記スリーブの軸長方向の他端は前記シリンダの前記一端側に向けられていることを特徴とする。
【0020】
本開示にあっては、スリーブの通流溝が、スリーブの軸長方向の一側寄りに配されている。スリーブの軸長方向の他端側の開口はシリンダの開口に向けられている。即ち、シリンダ室から通流溝までの距離は、通流溝から非シリンダ室までの距離よりも長い。
【0021】
プランジャの往復移動により、主液体は加圧される。ところが、プランジャとスリーブとの間隙は狭く、シリンダ室から通流溝までは遠いので、シリンダ室から通流溝に向けてプランジャとスリーブとの間隙を通流する主液体の圧力は、通流溝に到達するまでに低下する。故に、通流溝から非シリンダ室側に高圧の液体が流出することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示のポンプによれば、摩耗に起因する異物が液体と共にポンプから吐出されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態に係るポンプの構成を略示する断面図である。
【
図2】
図1におけるクランクケースよりも右側の拡大断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線による断面図である。
【
図4】
図1におけるスリーブの近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、実施の形態に係るポンプの構成を略示する断面図である。
図中1はポンプであり、ポンプ1は外部から吸入した主液体を外部に吐出する。
ポンプ1は台座11及びクランクケース12を備える。
台座11は、例えば略水平な地面に載置される。台座11の上面11aは地面に平行である。
【0026】
クランクケース12は有底筒状をなす。クランクケース12は、軸長方向が地面に平行になるようにして、台座11の上面11aに載置される。クランクケース12を台座11に安定して載置するために、クランクケース12の周壁の外面には複数の脚部121が設けられている。クランクケース12の開口12aは蓋体122に覆われている。
以下では、クランクケース12の軸長方向が左右に向けられているものとし、クランクケース12の底部側を左側、開口12a側を右側という。
【0027】
ポンプ1は、クランクシャフト13、ガイドブロック14、及び受け皿15を備える。
クランクシャフト13は屈曲軸であり、複数のクランクピン131(1つだけ図示)を有する。クランクシャフト13は、クランクピン131が前後方向に延びるようにして、クランクケース12に収容されている。クランクシャフト13が有する図示しないクランクジャーナルはクランクケース12の周壁を貫通し、クランクケース12の外部にて図示しない原動機の出力軸に連結されている。この原動機がクランクシャフト13を駆動することにより、クランクピン131は、前後方向に延びる仮想的な回転軸を中心に一方向に回転移動する。
【0028】
ガイドブロック14は、クランクケース12の内部にてクランクケース12の周壁に一体的に設けられている。ガイドブロック14には複数のガイド21(後述)が設けられている。
クランクシャフト13はクランクケース12の底部の近傍に配されており、ガイドブロック14はクランクシャフト13よりも開口12a側に配されている。
【0029】
受け皿15は、底壁の内面が上向きになるようにして、クランクケース12の蓋体122の下側に配されている。受け皿15の底壁の外面からは滴下筒151が下向きに突出している。滴下筒151の上端の開口の周縁部は受け皿15の底壁に設けられている図示しない開口の周縁部に接続されている。滴下筒151の下端の開口は地面に向けられている。受け皿15は、蓋体122の外面に固定された支持具152を介して、クランクケース12に吊り下げ支持されている。
【0030】
ポンプ1は複数の運動変換部2を備える(1つだけ図示)。複数の運動変換部2は、クランクケース12の内部にて前後方向に並設されている。
運動変換部2は、ガイド21、スライダ22、ピストン23、及びコンロッド24を備える。
ガイド21は、円形の断面を有する貫通孔である。ガイド21は、軸長方向がクランクケース12の軸長方向に平行になるようにして、ガイドブロック14に設けられている。
スライダ22は円筒状をなし、ガイド21の内周面に摺動可能に、且つガイド21に同軸に、ガイド21に嵌め込まれている。
【0031】
ピストン23は円柱状をなし、左端部が常にガイド21に挿入され、且つ右端部が常にガイド21から右向きに突出するようにして、ガイド21に同軸に配されている。ピストン23は、軸長方向に往復移動可能である。
コンロッド24は連結棒である。コンロッド24の一端部は、クランクシャフト13のクランクピン131に連結されている。コンロッド24の他端部は、スライダ22を介してピストン23の左端部に連結されている。
【0032】
ポンプ1は各複数の支持筒31、シリンダ32、プランジャ33、及びスリーブ34を備える(各1つだけ図示)。
図2は、
図1におけるクランクケース12よりも右側の拡大断面図である。
支持筒31は円筒状をなす。
図1及び
図2に示すように、支持筒31は、軸長方向が左右に向き、左端部が蓋体122を貫通して蓋体122に固定されることにより、クランクケース12から右向きに突出している。支持筒31は運動変換部2と一対一対応であり、ガイド21に同軸になるように配されている。
支持筒31の周壁には漏出口311が設けられている。複数の支持筒31は、夫々の漏出口311が受け皿15の底壁の内面に向くようにして、受け皿15の上側にて前後方向に並設されている。
【0033】
図3は、
図2におけるIII-III線による断面図であり、シリンダ32の軸長方向に垂直な断面を模式的に示している。
図2及び
図3に示すように、シリンダ32は円筒状をなす。シリンダ32は、軸長方向が左右に向き、左端部が支持筒31の右端部に取り付けられることにより、支持筒31に同軸に支持されている。シリンダ32の内部は支持筒31の内部に連通している。
シリンダ32の右側の開口32aの内径は、シリンダ32の左側の開口の内径よりも小さい。
【0034】
プランジャ33は円柱状をなす。プランジャ33は、支持筒31及びシリンダ32に同軸に収容されている。
プランジャ33は、プランジャ33の左端部に設けられた係合部331とピストン23の右端部に設けられた被係合部231とが互いに係合することにより、ピストン23に連結されている。
プランジャ33の外径は、シリンダ32の開口32aの内径よりも大きい。
【0035】
スリーブ34は円筒状をなす。スリーブ34は、シリンダ32の内周面の左半分を覆うようにして、シリンダ32に同軸に嵌め込まれている。スリーブ34の外周面とシリンダ32の内周面とは水密に密着している。なお、スリーブ34とシリンダ32との間にシール部材が配されてもよい。
【0036】
スリーブ34にはプランジャ33が摺動可能に且つ同軸に貫通している。後述するようにプランジャ33が往復移動した場合でも、プランジャ33の左右両端部はスリーブ34から左右に突出している。また、プランジャ33の右端部は常にシリンダ32の内部に位置している。
以下では、シリンダ32の周壁とシリンダ32の開口32aとプランジャ33の右端部とに囲まれる空間を、シリンダ室321という。
【0037】
スリーブ34の内周面とプランジャ33の外周面とは互いに適長離隔している。プランジャ33の外周面とスリーブ34の内周面とのクリアランスは微小(例えば12μm~21μm)なので、
図1及び
図2(並びに後述する
図4)においては両者が接触しているように表わされている。
図3において、プランジャ33の外周面とスリーブ34の内周面との間隙5は誇張して示してある。
プランジャ33とスリーブ34とは、何れも耐焼付性及び耐摩耗性を有する。
【0038】
図1及び
図2に示すように、ポンプ1はケーシング16を備える。
ケーシング16は複数のシリンダ32の右側に配されており、図示しない支持体を介してクランクケース12に取り付けられている。ケーシング16には吸液口及び吐液口が設けられている(各不図示)。
主液体の供給源からケーシング16の吸液口を経てポンプ1に主液体が吸入される。例えば主液体の供給源は水道水が貯留された貯水槽であり、主液体は水道水である。
ポンプ1からケーシング16の吐液口を経て主液体が吐出される。吐出された主液体は、例えば被洗浄物の洗浄に用いられる。
【0039】
図2に示すように、ポンプ1は、液体室41、吸入路42、吐出路43、吸入バルブ44、及び吐出バルブ45を備える。
液体室41はシリンダ32毎にケーシング16に設けられている。シリンダ32の右端部はケーシング16に接続されており、液体室41シリンダ室321に連通している。
吸入路42の上流側端部はケーシング16の吸液口であり、吸入路42の下流側端部は液体室41に連通している。吸入路42の中途には吸入バルブ44が接続されている。
吐出路43の下流側端部はケーシング16の吐液口であり、吐出路43の上流側端部は液体室41に連通している。吐出路43の中途には吐出バルブ45が接続されている。
【0040】
シリンダ室321、液体室41、液体室41と吸入バルブ44との間の吸入路42、及び液体室41と吐出バルブ45との間の吐出路43は、互いに連通している閉鎖空間である。後述するようなプランジャ33の往復移動によってシリンダ室321の体積が増減するので、シリンダ室321を含む閉鎖空間にて正圧/負圧が生じる。
【0041】
吸入バルブ44及び吐出バルブ45夫々は逆止弁を有する。シリンダ室321を含む閉鎖空間にて負圧が生じた場合、吸入バルブ44は開き、吐出バルブ45は閉じる。吸入バルブ44が開いている場合、吸入路42にある主液体は、ケーシング16の吸液口から液体室41へ向かう方向に通流可能である。シリンダ室321を含む閉鎖空間にて正圧が生じた場合、吸入バルブ44は閉じ、吐出バルブ45は開く。吐出バルブ45が開いている場合、吐出路43にある主液体は、液体室41からケーシング16の吐液口へ向かう方向に通流可能である。
【0042】
ここで、ポンプ1による主液体の吸入及び吐出について説明する。
前述したようなクランクシャフト13のクランクピン131の回転移動は、コンロッド24を介してスライダ22に伝達される。スライダ22がガイド21の内周面に案内されることにより、クランクピン131の回転移動はスライダ22の軸長方向の往復移動に変換される。スライダ22の往復移動はピストン23を介してプランジャ33に伝達される。この結果、プランジャ33は支持筒31及びシリンダ32の内部にてスリーブ34に摺動しつつ軸方向に往復移動する。
【0043】
プランジャ33が左側に移動した場合、負圧が生じる。負圧により、吸入バルブ44が開いて吐出バルブ45が閉じるので、主液体の供給源から主液体が、ケーシング16の吸液口、吸入路42、及び液体室41をこの順に通流して、シリンダ室321に吸入される。
プランジャ33が右側に移動した場合、正圧が生じる。正圧により、吸入バルブ44が閉じて吐出バルブ45が開くので、シリンダ室321から主液体が、液体室41、吐出路43、及びケーシング16の吐液口をこの順に通流して、ポンプ1の外部に吐出される。
【0044】
シリンダ室321に吸入された主液体の一部は、プランジャ33とスリーブ34との間隙5(
図3参照)に浸入する。
プランジャ33とスリーブ34との間に介在する主液体はプランジャ33の往復移動時の潤滑液として機能するので、プランジャ33はスリーブ34に対して滑らかに摺動する。
シリンダ室321にて生じる圧力によって、間隙5を主液体が通流する。間隙5に浸入した主液体の一部は、間隙5を通過してスリーブ34よりも左側の空間(非シリンダ室)に漏れ出る。本実施の形態では、間隙5を通過した液体は支持筒31の内部に漏れ出る。
【0045】
図4は、
図1におけるスリーブ34の近傍の拡大断面図である。
支持筒31の内部への主液体の漏れを抑制するために、スリーブ34の内周面の一部には通流溝341が設けられている。通流溝341は、スリーブ34の内周面に平行な内底面と、内底面の幅方向の両端から左右に広がるようにして立ち上がる2つの内側面とを有する。
図3に示すように、通流溝341はスリーブ34の内周面の全周にわたって延び、周方向に平行である。通流溝341の深さは、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスよりも十分に大きく、例えば1mm程度である。通流溝341の内底面の幅は、例えば4mm程度である。
【0046】
図4中の一点鎖線はスリーブ34の軸長方向の中心の位置を示す。通流溝341は、スリーブ34の軸長方向の中心よりも左側に配されている。本実施の形態においてはスリーブ34の左端部から通流溝341までの軸長方向の長さはスリーブ34の長さの1/3程度である。
【0047】
主液体の漏れを抑制するために、ポンプ1は給排液部6と供給管17及び排出管18とを更に備える(
図2~
図4参照)。
給排液部6は、ポンプ1の外部から通流溝341の一部に副液体を供給し、供給した副液体を通流溝341の他部からポンプ1の外部に排出するためのものである。本実施の形態の給排液部6は通流溝341に一対一対応であり、
図3及び
図4に示すように、供給口61、給排液溝62、4つの潤滑孔63、及び排出口64を備える。
【0048】
供給口61は円形状をなし、シリンダ32の周壁の上部に設けられている。供給口61はシリンダ32の左端部の近傍に配されている。
複数のシリンダ32夫々の供給口61には共通の供給管17が接続されており、供給管17は副液体の供給源に接続されている。例えば副液体の供給源は上水道、又は主液体の供給源と同じ貯水槽であり、副液体は水道水である。副液体の供給源が上水道である場合、供給管17の上流側の端部は上水道の蛇口に接続される。副液体の供給源が貯水槽である場合、ポンプ1とは異なるポンプが供給管17の中途に接続され、貯水槽から供給管17に水道水を汲み出す。
【0049】
給排液溝62はシリンダ32の内周面の一部に設けられている。給排液溝62はシリンダ32の内周面の全周にわたって延び、周方向に平行である。給排液溝62は、シリンダ32の内周面に平行な内底面と、内底面の幅方向の両端から左右に広がるようにして立ち上がる2つの内側面とを有する。給排液溝62は供給口61の真下に配されており、給排液溝62の内底面の上部に供給口61が位置している。給排液溝62の深さは、例えば0.5mm程度であり、通流溝341の深さよりも浅い。給排液溝62の内底面の幅は、例えば10mm程度であり、通流溝341の内底面の幅よりも広く、供給口61の内径よりも大きい。
【0050】
潤滑孔63はスリーブ34の周壁を厚さ方向に貫通している円形の貫通孔である。潤滑孔63の軸長方向の一端は、給排液溝62の内底面に向かうようにしてスリーブ34の外周面に開口している。潤滑孔63の軸長方向の他端は、通流溝341の内底面に開口している。即ち通流溝341は4つの潤滑孔63を互いに結ぶ。4つの潤滑孔63はスリーブ34の周方向に互いに適長離隔している。潤滑孔63の内径は、例えば4mm程度であり、通流溝341の内底面の幅と同程度の大きさである。
【0051】
排出口64は円形状をなし、供給口61からシリンダ32の周方向に180°離隔している。即ち排出口64はシリンダ32の周壁の下部に設けられている。排出口64は給排液溝62の内底面の下部に位置している。
複数のシリンダ32夫々の排出口64には共通の排出管18が接続されており、排出管18は例えば下水道、又は主液体の供給源と同じ貯水槽に接続されている。
【0052】
供給口61及び排出口64は等配されていなくてもよい。給排液溝62はシリンダ32の内周面の全周にわたって延びる構成に限定されない。例えば供給口61と排出口64とがシリンダ32の周壁の上部にて隣り合い、給排液溝62はシリンダ32の周壁の下部を通って供給口61及び排出口64を互いに結ぶ。
【0053】
本実施の形態では、4つの潤滑孔63はスリーブ34の周方向に等配されている。4つの潤滑孔63の内、1つは供給口61と向かい合っており、他の1つは排出口64と向かい合っている。しかしながら、供給口61及び排出口64夫々の周方向の位置と潤滑孔63の周方向の位置とを高精度に位置合わせする必要はなく、全ての潤滑孔63が供給口61にも排出口64にも向かい合っていなくてもよい。
潤滑孔63の内径に比べて給排液溝62の幅が大きいので、給排液溝62の左右方向の位置と潤滑孔63の左右方向の位置とを高精度に位置合わせする必要はない。
なお、潤滑孔63の個数は4つに限定されない。潤滑孔63は等配されていなくてもよい。
【0054】
供給口61には副液体の供給源から供給管17を通じて副液体が供給される。供給口61を経て給排液溝62に供給された副液体は、給排液溝62を通流する。給排液溝62を通流する副液体の一部は潤滑孔63を通じて通流溝341に供給される。通流溝341に供給された副液体は、通流溝341を通流する。通流溝341を通流する副液体の一部は、潤滑孔63を通じて給排液溝62に戻る。給排液溝62を通流する副液体のほとんどは、排出口64及び排出管18を通じて排出管18の接続先である下水道、又は主液体の供給源等に排出される。
以上の結果、給排液部6を通じてポンプ1の外部から通流溝341の上部に副液体が供給され、供給された副液体が通流溝341の下部からポンプ1の外部に排出される。
【0055】
ポンプ1の使用者は、ポンプ1を作動させる前に、給排液部6を通じてポンプ1に副液体を供給する。給排液部6を通じて通流溝341の一部(例えば上部)に供給された副液体は、通流溝341を通流する。通流溝341を通流した副液体は、通流溝341の他部(例えば下部)から給排液部6を通じて排出される。つまり、通流溝341の内部には、副液体が通流溝341の一部から他部へ通流し、給排液部6を通じてポンプ1の外部に排出される流れが形成される。
【0056】
通流溝341の容量を越える量の副液体を通流溝341に供給することにより、通流溝341を通流する副液体の一部は間隙5に浸入する。ポンプ1の作動前においては、シリンダ32の内部の圧力は大気圧に等しいので、間隙5に浸入した副液体は左右両側に拡散する。この結果、プランジャ33とスリーブ34との間に副液体を予め介在させることができる。通流溝341はスリーブ34の内周面の全周にわたって延びるので、間隙5において、副液体をスリーブ34の周方向に満遍なく行き渡らせることができる。
【0057】
副液体の供給開始後、使用者はポンプ1を作動させる。ポンプ1の作動により、主液体が間隙5を通流して通流溝341に浸入する。
使用者は、ポンプ1の作動中も給排液部6を通じて副液体の供給を継続する。故に、通流溝341においては、副液体が通流溝341を通流し、給排液部6を通じてポンプ1の外部に排出される流れが形成され続ける。しかも、通流溝341の内底面とプランジャ33の外周面とのクリアランス(約4mm)は、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランス(12μm~21μm)よりも十分に大きい。
【0058】
従って、通流溝341に浸入した主液体のほとんどが副液体の流れに乗り、給排液部6を通じてポンプ1の外部に排出される。この結果、ポンプ1の作動中に通流溝341から左側に流出する液体(主液体と副液体との混合物。以下、混合液体という)の量を低減することができる。なお、ポンプ1の作動中に供給される副液体の流量は、ポンプ1の作動前に供給される副液体の流量よりも少なくてもよい。
【0059】
支持筒31の周壁には下向きの漏出口311が設けられているので、支持筒31の内部に漏れ出た混合液体は、漏出口311を経て受け皿15に受け止められる。受け皿15に受け止められた混合液体の一部は滴下筒151を通じて地面に滴り落ちる。通流溝341から左側に通流する混合液体の量は少ないので、混合液体が地面に滴下しても特段の問題はない。
【0060】
間隙5を通流する主液体(又は混合液体)は冷却液としても機能する。また、通流溝341を通流する副液体(又は混合液体)は、プランジャ33及びスリーブ34の冷却液としても機能する。故に、摺動によるプランジャ33又はスリーブ34の焼き付きを防止することができる。
【0061】
プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスを適切に設定することにより、プランジャ33とスリーブ34との間隙5に浸入する主液体の量を最小限に抑えることができ、延いては支持筒31の内部に漏れ出る混合液体の量を最小限に抑えることができる。
仮に、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスが小さすぎる場合、間隙5に十分な量の主液体(又は副液体)が侵入しない。この結果、プランジャ33の往復移動時の摩擦抵抗が大きくなる上に、十分な冷却効果を得ることができず、プランジャ33又はスリーブ34に焼き付きが生じる虞がある。一方、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスが大きすぎる場合、支持筒31の内部への漏れが生じやすい。
【0062】
通流溝341は、スリーブ34の軸長方向の中心又はスリーブ34の軸長方向の中心よりも右側に配されていてもよい。しかしながら、本実施の形態のように通流溝341がスリーブ34の軸長方向の中心よりも左側に配されていることが望ましい。スリーブ34の右端から通流溝341までの距離が長いほど、間隙5に浸入した主液体の圧力損失が大きくなるので、通流溝341から左側へ高圧の混合液体が流出することが抑制される。換言すれば、通流溝341よりも左側の間隙5にある混合液体の圧力は低い。従って、支持筒31の漏出口311から高圧の混合液体が噴出してポンプ1の周囲に飛散する虞がない。
【0063】
以上のようなポンプ1によれば、前述したようにプランジャ33がスリーブ34に対して滑らかに摺動するので、摩耗によってスリーブ34から摩耗屑が生じる虞がない。
また、シリンダ32とプランジャ33との間に、弾性を有するシール部材が介在していないので、摩耗によってシール部材から摩耗屑が生じる虞がない。
以上の結果、ポンプ1に吸入された主液体に摩耗屑が異物として混入する虞がないので、摩耗に起因する異物が主液体と共にポンプ1から吐出されることを防止することができる。故に、摩耗屑が被洗浄物に付着する虞がない。
【0064】
本実施の形態のように、主液体と副液体とは互いに同じであることが望ましい。主液体と副液体とが互いに同じである場合、排出口64を経て排出される混合液体が、排出管18を通じて主液体の供給源に戻されることが望ましい。
なお、主液体と副液体とは互いに異なっていてもよい。例えば主液体が液体洗剤であり、副液体が水道水でもよい。間隙5は狭く、ポンプ1の作動後は高圧の主液体がシリンダ室321に満ちているので、混合液体が間隙5から右側へ流出することはほとんどない。
【0065】
プランジャ33は、少なくとも外周面が耐焼付性及び耐摩耗性を有する構成であればよく、スリーブ34は、少なくとも内周面が耐焼付性及び耐摩耗性を有する構成であればよい。プランジャ33及びスリーブ34夫々は、セラミクス製であることが望ましく、入手が容易なアルミナセラミクス製であることが特に望ましい。
とはいえ、十分な耐焼付性及び耐摩耗性を有するのであれば、これらはセラミクス製に限定されず、金属製又は合成樹脂製等でもよい。ただし、合成樹脂を用いた場合、寸法精度が高いものを製造することが難しいことがある。
【0066】
プランジャ33及びスリーブ34は、互いに同じ材料を用いて製造することが望ましい。プランジャ33の材料とスリーブ34の材質とが互いに異なる場合、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスが所定の範囲から外れる虞がある。
また、一対のプランジャ33及びスリーブ34を、プランジャ33の外径とスリーブ34の内径と互いに調整しながら製造することが望ましい。プランジャ33及びスリーブ34を個別に製造してから組み合わせた場合、プランジャ33及びスリーブ34夫々の寸法公差により、プランジャ33とスリーブ34とのクリアランスが所定の範囲から外れる虞がある。
【0067】
漏出口311は、シリンダ32の周面におけるスリーブ34よりも左側の位置に設けられていてもよい。この場合、支持筒31を介さずにシリンダ32が直接的にクランクケース12の蓋体122に固定されてもよい。
給排液部6の構成は、上述した構成に限定されない。例えば給排液溝62が存在せず、供給口61及び排出口64が直接的に2つの潤滑孔63に連通してもよい。
【0068】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 ポンプ
32 シリンダ
32a 開口(一端側の開口)
33 プランジャ
34 スリーブ
341 通流溝
6 給排液部
61 供給口
62 給排液溝
63 潤滑孔(貫通孔)
64 排出口