(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184189
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20221206BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221206BHJP
C08K 5/1535 20060101ALI20221206BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221206BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K5/1535
C08K3/04
B60C1/00 A
B60C1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091893
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】荻原 明子
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC22
4J002AC01W
4J002AC03X
4J002DA037
4J002EL066
4J002FD010
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD206
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐カット性に優れたゴム組成物を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明は、天然ゴム及びシス-1,4結合含量が90質量%以上であるポリブタジエン(ハイシスブタジエンゴム)を含有するゴム成分と、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物と、を含み、
前記ゴム成分における、天然ゴムの含有量が20~70質量%であり、且つ、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量が30~80質量%であり、
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量が、前記天然ゴム100質量部に対して0.1~3質量部であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及びシス-1,4結合含量が90質量%以上であるポリブタジエン(ハイシスブタジエンゴム)を含有するゴム成分と、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物と、を含み、
前記ゴム成分における、天然ゴムの含有量が20~70質量%であり、且つ、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量が30~80質量%であり、
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量が、前記天然ゴム100質量部に対して0.1~3質量部であることを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、ヒドロカルビルエステル基を有する環状ポリオール化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、2つ以上の水酸基を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、下記式(1):
【化1】
[式中、Aは炭素数6~30のヒドロカルビルエステル基又は炭素数6~30のヒドロカルビルエーテル基であり、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ独立して-OH又は-R(ここで、-Rは-H又は-CH
2OHである)であり、但し、X
1、X
2、X
3及びX
4のうち少なくとも2つは-OHである]で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物は、式(1)中のAのヒドロカルビル基部分の炭素数が12~24であることを特徴とする、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の融点が、40~100℃であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
カーボンブラックを少なくとも含有する充填剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20~60質量部であることを特徴とする、請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記カーボンブラックが、ISAF、SAF、FEF又はHAFのグレードを有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のゴム組成物を、トレッド部及びサイドウォール部のうちの少なくとも1つに用いたことを特徴とする、タイヤ。
【請求項11】
前記タイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ又は建設車両用タイヤであることを特徴とする、請求項10に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物及びそれを架橋して得られる架橋ゴムの機能向上のために、種々の成分がゴム組成物の添加剤としても用いられている。
例えば、特許文献1には、(A)天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムから選ばれるゴム100重量部に対して、(B)炭水化物を0.5~10重量部、(C)メトキシ化メチロールメラミン樹脂を0.5~10重量部、及び(D)カルボン酸コバルト塩をコバルト量として0.05~1重量部を配合することにより、スチールコードとの加硫接着における接着性及びゴムの硬度を改良する技術が開示されている。
また、特許文献2には、ゴム組成物中に、特定のジエン系ゴム、及び、ガラス転移点及びCTAB吸着比表面積を特定範囲に規定したシリカを含有させることにより、耐摩耗性と、ウェット性能及び氷上性能との両立を図った技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された技術については、耐カット性や、厳しい条件下(高シビリティ条件下)での耐摩耗性に劣っており、タイヤ等のゴム物品への適用を考えるとさらなる改良が望まれていた。
また、特許文献2に開示された技術についても、ゴム組成物が低弾性であるため、加硫後のゴム組成物の耐カット性については、十分な効果が得られておらず、さらなる改良が望まれていた。
【0004】
そのため、近年、ゴム組成物の耐カット性の向上を目的として、ゴム組成物中に、ソルビトール等のポリオール構造を有する化合物を添加する技術が開発されている。
この技術によれば、低発熱性等の物性を悪化させることなく、従来に比べて耐カット性を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-118457号公報
【特許文献2】特開2016-47888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ゴム組成物中に、ソルビトール等のポリオール構造を有する化合物を添加することにより、一定の耐カット性向上効果が得られることがわかった。
しかしながら、耐カット性については、建設車両用タイヤやトラック・バス用タイヤのトレッド部やサイドウォール部のような厳しい条件においても、高いレベルで実現できるように、さらなる改善が望まれていた。
【0007】
そのため、本発明の目的は、耐カット性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、耐カット性に優れたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、より優れた耐カット性を実現するべく鋭意研究を行った。そして、ゴム成分として天然ゴムを多く含有するゴム組成物中に、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物を少量含有させることによって、ゴムの強度を高めつつ、ゴム成分中のハイシスブタジエンゴムの割合を増やすことによって、耐カット性を大きく高めることができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明のゴム組成物は、天然ゴム及びシス-1,4結合含量が90質量%以上であるポリブタジエン(ハイシスブタジエンゴム)を含有するゴム成分と、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物と、を含み、
前記ゴム成分における、天然ゴムの含有量が20~70質量%であり、且つ、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量が30~80質量%であり、
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量が、前記天然ゴム100質量部に対して0.1~3質量部であることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた耐カット性を実現できる。
【0010】
本発明のゴム組成物については、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、ヒドロカルビルエステル基を有する環状ポリオール化合物であることが好ましい。より優れた耐カット性を実現できるためである。
【0011】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、2つ以上の水酸基を有することが好ましい。より優れた耐カット性を実現できるためである。
【0012】
また、本発明のゴム組成物については、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物が、下記式(1):
【化1】
[式中、Aは炭素数6~30のヒドロカルビルエステル基又は炭素数6~30のヒドロカルビルエーテル基であり、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ独立して-OH又は-R(ここで、-Rは-H又は-CH
2OHである)であり、但し、X
1、X
2、X
3及びX
4のうち少なくとも3つは-OHである]で表わされる化合物であることが好ましく、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物は、式(1)中のAのヒドロカルビル基部分の炭素数が12~24であることがより好ましい。より優れた耐カット性を実現できるためである。
【0013】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の融点が、40~100℃であることが好ましい。高温時の耐カット性を向上できるためである。
【0014】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、本発明のゴム組成物が、カーボンブラックを少なくとも含有する充填剤を、さらに含むことが好ましい。耐カット性を良好に維持しつつ、より優れた耐摩耗性を実現できるためである。
【0015】
また、本発明のゴム組成物については、前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20~60質量部であることが好ましい。低発熱性を悪化させることなく、より優れた耐摩耗性を実現できるためである。
【0016】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記カーボンブラックが、ISAF、SAF、FEF又はHAFのグレードを有することが好ましい。より優れた耐カット性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0017】
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部及びサイドウォール部のうちの少なくとも1つに用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた耐カット性を実現できる。
【0018】
また、本発明のタイヤについては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ又は建設車両用タイヤであることが好ましい。耐カット性の向上効果によるメリットが大きいためである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐カット性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、耐カット性に優れたタイヤを提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を具体的に例示説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及びシス-1,4結合含量が90質量%以上であるポリブタジエン(ハイシスブタジエンゴム)を含有するゴム成分と、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物と、を含むゴム組成物である。
【0021】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分については、上述したように、天然ゴム及びシス-1,4結合含量が90質量%以上であるポリブタジエン(ハイシスブタジエンゴム)を含有する。天然ゴムは、後述するヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物とともに用いることで、優れた耐カット性や、補強性、耐摩耗性等を得ることができる。また、ゴム成分としてハイシスブタジエンゴムを含有し、前記天然ゴムとの含有費を適切な範囲にすることによって、耐カット性をさらに高めることが可能となる。
【0022】
ここで、前記ゴム成分中の天然ゴムの含有量は20~70質量%である。前記天然ゴムの含有量を20質量%以上とすることで、後述するヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物とともに用いた際、確実に耐カット性や耐摩耗性の向上が図れるためである。一方、前記天然ゴムの含有量を70質量%以下とすることで、後述するハイシスブタジエンゴムによる耐カット性向上効果を阻害することがない。同様の観点から、前記ゴム成分中の天然ゴムの含有量は、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
また、前記ゴム成分中のハイシスブタジエンゴムの含有量は30~80質量%である。前記ハイシスブタジエンゴムを30質量%以上とすることで、ゴム成分の強度を高め、耐カット性や耐摩耗性の向上を図ることができる。一方、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量を80質量%以下とすることで、前記天然ゴムと後述するヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物とともに用いた際の耐カット性向上効果を阻害することがない。同様の観点から、前記ゴム成分中のハイシスブタジエンゴムの含有量は、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
なお、前記ゴム成分は、前記天然ゴム及び前記ハイシスブタジエンゴムの他にも、任意の合成ゴムを含有することが可能である。
例えば、優れた耐カット性や耐摩耗性を得ることができる点からは、前記ゴム成分は、ジエン系合成ゴムを含むことが好ましい。
【0025】
前記ジエン系合成ゴムについては、例えば、合成ポリイソプレン(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等を挙げられる。なお、前記ゴム成分中のジエン系合成ゴムについては、1種単独で含有してもよいし、2種以上のブレンドとして含有してもよい。また、前記ゴム成分は、要求される性能に応じて、非ジエン系の合成ゴムを含有することも可能である。
【0026】
なお、前記天然ゴム及び前記ハイシスブタジエンゴムを含むゴム成分は、変性剤により変性されていてもよい。変性に用いられる変性剤としては、例えば、窒素、酸素、ケイ素を含む化合物が挙げられる。
【0027】
(ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物)
そして、本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、該ゴム成分中の天然ゴム100質量部に対して0.1~3質量部の、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物をさらに含む。
ゴム組成物中に含有されたヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物は、本発明のゴム組成物の耐カット性を大きく向上させることができる。また、前記ゴム成分のゴム分子と後述する剤との相互作用を高めることによって、架橋後のゴムの物理的特性を均質化させることができる結果、補強性や耐摩耗性についても向上できる。
さらに、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物は、ソルビトール等の化合物に比べて親水部位が少ないため、ゴム組成物中での自己凝集についても抑えることができ、その結果、ゴム組成物の伸長疲労性についても良好に維持できる。
【0028】
ここで、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量は、前記天然ゴム100質量部に対して0.1~3質量部であるが、前記天然ゴム100質量部に対して0.1質量部未満の場合には、当該環状ポリオール化合物が少ないため、十分な耐カット性の向上効果が得られず、伸長疲労性についても十分な効果が得られない。一方、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量が、前記天然ゴム100質量部に対して3質量部を超える場合には、当該環状ポリオール化合物の量が多くなりすぎるため、ゴム組成物中での自己凝集が発生し、伸長疲労性等の物性の悪化を招くおそれがある。
また、同様の観点から、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の含有量は、前記天然ゴム100質量部に対し0.1~2質量部であることが好ましく、0.3~1.5質量部であることがより好ましい。
【0029】
ここで、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物については、2つ以上の水酸基を有することが好ましく、3つ以上の水酸基を有することが好ましい。多くの水酸基を有することにより、ゴム成分と添加剤との相互作用がより強く発揮され、より優れた耐カット性を実現できるからである。
【0030】
さらに、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物については、ヒドロカルビルエステル基を有する環状ポリオール化合物であることが好ましい。より優れた伸長疲労性及び耐カット性を実現できるためである。
【0031】
さらにまた、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物については、より優れた伸長疲労性及び耐カット性を実現する観点から、下記式(1):
【化2】
で表わされる化合物であることがより好ましい。
【0032】
上記式(1)中、Aは炭素数6~30のヒドロカルビルエステル基又は炭素数6~30のヒドロカルビルエーテル基であり、該Aのヒドロカルビル基部分の炭素数は、12~24であることが好ましい。式(1)中のAのヒドロカルビル基部分の炭素数が12~24の範囲であれば、良好な伸長疲労性を維持しつつ、耐カット性がより向上する。
なお、式(1)中のAは、環部分から1番目の原子(即ち、環に結合している原子)、又は環部分から2番目の原子が酸素原子であることが好ましい。環部分から1番目の原子が酸素原子であるAとしては、例えば、-O-A’、-O-CO-A’’で表わされる基が挙げられ、また、環部分から2番目の原子が酸素原子であるAとしては、例えば、-CH2-O-A''、-CH2-O-CO-A’’’で表わされる基が挙げられ、ここで、A'は炭素数6~30のヒドロカルビル基、A''は炭素数5~29のヒドロカルビル基、A’’’は炭素数4~28のヒドロカルビル基であることが好ましく、また、A’、A’’及びA’’’は炭素数12~24のヒドロカルビル基であることがさらに好ましい。
【0033】
また、上記式(1)中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立して-OH又は-R(ここで、-Rは-H又は-CH2OHである)であり、但し、X1、X2、X3及びX4のうち少なくとも3つは-OHである。X1、X2、X3及びX4の3つ以上が-OHであることで、ゴム組成物の耐カット性が更に向上する。
【0034】
さらに、上記式(1)で表わされる化合物の中でも、下記式(2)又は式(3):
【化3】
【化4】
で表わされる化合物が更に好ましく、上記式(2)で表わされる化合物が特に好ましい。
なお、式(2)及び式(3)中、nは自然数であり、11~23の範囲が好ましい。
前記変性環状ポリオール化合物として、上記式(2)又は式(3)で表わされる化合物を配合することで、耐カット性をより向上させることができる。
【0035】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物については、特に限定されるものではないが、例えば、ソルビット、ソルビタン、グルコース、フルクトース等のポリオール化合物に、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール等の脂肪族アルコールや、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸を反応させることで得ることができる。
【0036】
前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の例として、具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のエステル化合物、オクチル-β-D-グルコピラノシド、デシル-β-D-グルコピラノシド、ドデシル-β-D-グルコピラノシド、テトラデシル-β-D-グルコピラノシド、ヘキサデシル-β-D-グルコピラノシド等のエーテル化合物が挙げられる。これら化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの化合物の中でも、伸長疲労性及び耐カット性をより高いレベルで両立できる観点からは、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物は、ソルビタンモノステアレート(ソルビタンモノエステル)であることが好ましい。
【0037】
さらに、前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の融点は、40~100℃であることが好ましく、45~90℃であることがより好ましい。前記ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物の融点が100℃以下の場合、混練、加硫反応時の溶解性を向上でき、40℃以上の場合、高温時の耐カット性を高めることができるためである。
【0038】
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及び環状ポリオール化合物に加え、カーボンブラックを少なくとも含有する充填剤をさらに含むことが好ましい。
カーボンブラックを少なくとも含有する充填剤を前記ゴム成分とともに含むことによって、加硫ゴム組成物の耐カット性や耐摩耗性等の特性をより高めることができる。
【0039】
ここで、前記カーボンブラックの種類については、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられ、これらの中でも、ゴム組成物の耐摩耗性及び耐カット性をより向上させる観点から、ISAF、SAF、FEF又はHAFグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前記カーボンブラックについては、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定する)が20~250m2/gのものを用いることができ、30~200m2/gのものを用いることができ、30~150m2/gのものを用いることができる。
また、前記カーボンブラックについては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量(JIS K 6217-4:2001「DBP吸収量の求め方」に記載の方法により測定される)が、50~200cm3/100gのものを用いることができ、60~150cm3/100gのものを用いることができる。
【0040】
また、前記カーボンブラックの含有量については、特に限定はされないが、前記ゴム成分100質量部に対して、20~80質量部であることが好ましく、25~70質量部であることがより好ましく、30~65質量部であることがさらに好ましい。前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上であれば、耐摩耗性をより向上でき、80質量部以下とすることで低発熱性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0041】
また、前記充填剤は、シリカを含むことが好ましい。より優れた耐カット性及び氷上性能を得ることができるためである。
ここで、前記シリカの種類としては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前記湿式シリカは、沈降シリカを用いることができる。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0042】
さらにまた、前記シリカとしては、特に限定されないが、例えばCTAB比表面積(セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積)を、70m2/g以上、250m2/g以下とすることができる。なお、前記CTAB比表面積は、ASTMD3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、シリカ表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミド1分子当たりの吸着断面積を0.35nm2として、CTABの吸着量から算出される比表面積(m2/g)をCTAB比表面積とする。
また、前記シリカのBET比表面積は、100m2/g以上、250m2/g以下とすることができる。なお、前記BET比表面積は、BET法により求めた比表面積のことであり、本発明では、ASTMD4820-93に準拠して測定することができる。
【0043】
前記シリカの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましく、10~45質量部であることが更に好ましい。前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であれば、加硫ゴム組成物の耐摩耗性や氷上性能をより向上でき、100質量部以下とすることで、ゴム組成物の加工性悪化や低転がり抵抗性の悪化を抑えることができる。
【0044】
また、前記充填剤は、上述したカーボンブラック及びシリカの他、下記一般式(XX):
nM・xSiOy・zH2O ・・・ (XX)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である]で表される無機化合物を含むこともできる。
前記一般式(XX)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように、電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
前記一般式(XX)の無機化合物は、耐摩耗性とウェット性能のバランスの観点から、平均粒径が0.01~10μmであることが好ましく、0.05~5μmであることがより好ましい。
【0045】
ここで、前記充填剤の合計含有量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して20~150質量部であることが好ましく、30~120質量部であることがより好ましく、40~100質量部であることが特に好ましい。前記充填剤の量について適正化を図ることで、例えば、耐摩耗性、耐カット性、低ロス性等のタイヤ特性をより向上できるためである。
【0046】
さらに、前記シリカの含有量に対する前記カーボンブラックの含有量(カーボンブラックの含有量/シリカの含有量)が、質量比で、0.1~15であることが好ましく、0.5~1.5であることがより好ましく、0.7~1.2であることがさらに好ましい。また、別の好適な例としては、4~15であることが好ましく、7~13であることがより好ましい。
前記シリカの含有量に対する前記カーボンブラックの含有質量比が、0.1以上であることで、より優れた耐摩耗性や補強性を得ることができ、前記シリカの含有量に対する前記カーボンブラックの含有質量比が、15以下であることで、低発熱性の悪化を招くことなく、より優れた耐カット性を得ることができる。
【0047】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上述した、ゴム成分、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物及び充填剤、並びに、任意成分としての直鎖状多価アルコールの他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤をその他の成分として含むことができる。その他の成分については、例えば、シランカップリング剤、架橋剤、加硫促進剤、ポリエチレングリコール、軟化剤、樹脂、老化防止剤、亜鉛華等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0048】
また、上述した充填剤としてシリカを含有する場合には、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。シリカによる耐カット性や、補強性、低ロス性の効果をさらに向上させることができるからである。なお、シランカップリング剤は、公知のものを適宜使用することができる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリエトキシシリル)プロピルポリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
さらに、前記シランカップリング剤の含有量については、シランカップリング剤の種類などによっても異なるが、前記シリカの含有量に対して、質量比で0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.09以下であることがさらに好ましい。前記シランカップリング剤の含有量を、前記シリカの含有量に対して質量比で0.2以下と小さくすることで、ゴム組成物の耐カット性をより向上させることができるためである。
【0050】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用のゴム組成物としては、これらの架橋剤の中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部であることが好ましい。
【0051】
また、前記架橋剤として硫黄を用いる場合には、加硫促進剤を含むことが好ましい。該加硫促進剤としては、従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤;DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤;テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。その含有量としては、前記硫黄の含有量よりも少ないことが好ましく、前記ゴム成分100質量部に対し、1~10質量部程度であることがより好ましい。
【0052】
本発明のゴム組成物は、スコーチタイムを短縮し、タイヤの製造時における加硫速度を高める等の作業性をより向上できる点から、グリセロールモノステアレートをさらに含むことが好ましい。
【0053】
なお、前記グリセロールモノステアレートの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満であると、本発明の効果が良好に得られないおそれがある。該含有量は、3.5質量部以下であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。3.5質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり過ぎる傾向がある。
【0054】
さらに、前記ポリエチレングリコールの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満であると、本発明の効果が良好に得られないおそれがある。該含有量は、3.5質量部以下であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。3.5質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり過ぎる傾向がある。
【0055】
さらに、本発明のゴム組成物は、ゴムの柔軟性を高め、より優れたウェット性能及び氷上性能を実現できる点から、軟化剤を含むこともできる。該軟化剤は、従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、アロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の石油系軟化剤や、パーム油、ひまし油、綿実油、大豆油等の植物系軟化剤が挙げられる。使用の際にはこれらの中から1種単独で又は2種以上を適宜選択使用すればよい。
前記軟化剤を含有する場合には、取り扱い容易性の観点から、上述した軟化剤中でも、25℃等の常温で液体であるもの、例えば、アロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の石油系軟化剤を含有することが好ましい。
【0056】
さらに、本発明のゴム組成物は、ゴムの柔軟性を高め、より優れたウェット性能及び氷上性能を実現できる点から、樹脂を含有することができる。前記樹脂としては、種々の天然樹脂及び合成樹脂を使用することができ、具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂等を使用することが好ましい。これら樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定はされない。例えば、上述した、ゴム成分と、少なくともシリカを含有する充填剤と、ヒドロカルビル基を有する環状ポリオール化合物と、任意に配合されるその他の成分等とを、公知の方法で、配合し、混錬することで得ることができる。
【0058】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明の加硫ゴム組成物を、トレッド部及びサイドウォール部のうちの少なくとも1つに用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をトレッド部及び/又はサイドウォール部に適用することで、優れた耐カット性を実現できる。
ここで、本発明のタイヤは、例えば、建設車両用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、航空機用タイヤ、乗用車用タイヤとして用いることができ、特に、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ又は建設車両用タイヤであることが好ましい。トレッド部やサイドウォール部の材料として用いているゴム組成物は、耐カット性に優れており、上述したタイヤとして使用した際のメリットが大きいためである。
【0059】
なお、上述した本発明の加硫ゴム組成物をトレッド部に用いる際は、トレッドの構造として、例えば以下の公報に記載の構造を採用することができる。
特開2016-203842号公報、特開2009-196527号公報、特開2000-225815号公報、特開2000-264019号公報、特開2003-211921号公報、国際公開第2014/196409号
【0060】
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明の加硫ゴム組成物を、タイヤのトレッド部及びサイドウォール部のうちの少なくとも1つに用いること以外は、特に制限はなく、常法に従って製造することができる。なお、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0061】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例、比較例)
表1に示す配合に従って、常法で配合・混練することで、ゴム組成物のサンプルを調製した。
なお、得られた各サンプルについては、加硫処理を施した後、以下の評価(1)~(2)を実施した。
【0063】
(評価)
(1)耐カット性
実施例及び比較例の各サンプルについて、加硫処理を施した後、pure shear型の試験片を作製し、引張試験装置(株式会社島津製作所)を使用して試験片を引っ張った状態で切り込みを入れ、き裂が進展する様子を観察し、き裂進展速度が不連続に増大するエネルギー解放率(転移エネルギー)を測定した。
評価は、測定した各サンプルの転移エネルギーの逆数を算出した。そして表1では、比較例のサンプルの転移エネルギーの逆数を100としたときの指数値として示す。なお、表1の数値は、大きいほど耐カット性が良好であることを示す。
【0064】
【0065】
*1 ブタジエンゴム: 宇部興産社製、「UBEPOL BR150L」、シス-1,4結合含量が98質量%
*2 カーボンブラック: SAF級カーボンブラック
*3 シリカ: 東ソー・シリカ工業社製、商品名「Nipsil AQ」
*4 シランカップリング剤: ビス(トリエトキシシリル)プロピルポリスルフィド、信越化学工業株式会社製
*5 ソルビタン:ソルビタンモノステアレート、株式会社花王製、「レオドールAS-10V」、水酸基数3
*6 老化防止剤: N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック6C」
なお、表1では、記載の配合成分以外に、プロセスオイル、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤を各実施例・比較例で同量含む。
また、加硫促進剤の配合量は、複数種の加硫促進剤の合計配合量を記載した。
【0066】
表1の結果から、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、耐カット性に優れることがわかる。