(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184202
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】平板型固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20221206BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221206BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091911
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA12
5H126AA15
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE22
5H126GG08
5H126JJ00
(57)【要約】
【課題】セルの面方向において大きな温度差が生じるのを簡単な構成により抑制することができる平板型固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】平板型固体酸化物形燃料電池は、セル2と、インターコネクタ31、32と、伝熱板4と、を備える。燃料極側のインターコネクタ31は、セル2の燃料極層21側の板面に沿って配置され、燃料ガスの流路310を構成する。空気極側のインターコネクタ32は、セル2の空気極層23側の板面に沿って配置され、空気の流路320を構成する。伝熱板4は、燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。燃料極側のインターコネクタ31又は空気極側のインターコネクタ32の板面と伝熱板4の板面とが面接触するように、セル2と燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32と伝熱板4とが積層されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極層、電解質層及び空気極層を有する平板状をしたセルと、
前記セルの前記燃料極層側の板面に沿って配置され、燃料ガスの流路を構成する平板状をした燃料極側のインターコネクタと、
前記セルの前記空気極層側の板面に沿って配置され、空気の流路を構成する平板状をした空気極側のインターコネクタと、
前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する伝熱板と、を備え、
前記燃料極側のインターコネクタ又は前記空気極側のインターコネクタの板面と伝熱板の板面とが面接触するように、前記セルと前記燃料極側のインターコネクタと前記空気極側のインターコネクタと前記伝熱板とが積層されている、
平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記伝熱板は、前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱膨張率の60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有する、
請求項1に記載の平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
燃料極層、電解質層及び空気極層を有する平板状をしたセルと、
前記セルの前記燃料極層側の板面に沿って配置され、燃料ガスの流路を構成する平板状をした燃料極側のインターコネクタと、
前記セルの前記空気極層側の板面に沿って配置され、空気の流路を構成する平板状をした空気極側のインターコネクタと、を備え、
前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱伝導率は、SUSの熱伝導率よりも大きい、
平板型固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板型固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板型の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。平板型固体酸化物形燃料電池は、燃料極層、電解質層及び空気極層を有するセルがインターコネクタにより電気的に接続されかつ積層されている。平板型固体酸化物形燃料電池は、その形状ゆえに面方向に温度分布が生じやすいと共に動作温度が高温であるため、気体の入口側部分と出口側部分との間に大きな温度差がついて、最高温度と最低温度との差が大きくなりやすい。内部に大きな温度差が生じると、平板型固体酸化物形燃料電池の一部が熱応力により破損しやすくなる。そこで、従来、様々な対策が施された平板型固体酸化物形燃料電池が開発されている。
【0003】
特許文献1に開示される平板型固体酸化物形燃料電池にあっては、単位セルが、アノード、カソードのいずれか一方の電極面に、燃料気体流入口側から燃料気体流出口側へ向けて連続的又は段階的に面積が減少する表面被覆層を有している。これにより、単位面積当たりの表面被覆層による被覆割合が大きな燃料気体流入口部の近傍での燃料改質反応を抑制して吸熱反応による温度低下を防止し、燃料気体入口側から出口側にかけての温度の均一化を図ることが可能となる。しかしながら、特許文献1に開示される平板型固体酸化物形燃料電池にあっては、構造的に複雑となって製造が困難であると共に、経年劣化により燃料気体流入口部の近傍での燃料改質反応の性能が低下してくると、依然として温度差が大きくなりやすいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされた発明であり、セルの面方向において大きな温度差が生じるのを簡単な構成により抑制することができる平板型固体酸化物形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る平板型固体酸化物形燃料電池は、セルと、燃料極側のインターコネクタと、空気極側のインターコネクタと、伝熱板と、を備える。前記セルは、燃料極層、電解質層及び空気極層を有する平板状をしたものである。前記燃料極側のインターコネクタは、前記セルの前記燃料極層側の板面に沿って配置され、燃料ガスの流路を構成する平板状をしたものである。前記空気極側のインターコネクタは、前記セルの前記空気極層側の板面に沿って配置され、空気の流路を構成する平板状をしたものである。前記伝熱板は、前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するものである。前記燃料極側のインターコネクタ又は前記空気極側のインターコネクタの板面と伝熱板の板面とが面接触するように、前記セルと前記燃料極側のインターコネクタと前記空気極側のインターコネクタと前記伝熱板とが積層されている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、前記伝熱板は、前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱膨張率の60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有する。
【0008】
請求項3に係る平板型固体酸化物形燃料電池は、セルと、燃料極側のインターコネクタと、空気極側のインターコネクタと、を備える。前記セルは、燃料極層、電解質層及び空気極層を有する平板状をしたものである。前記燃料極側のインターコネクタは、前記セルの前記燃料極層側の板面に沿って配置され、燃料ガスの流路を構成する平板状をしたものである。前記空気極側のインターコネクタは、前記セルの前記空気極層側の板面に沿って配置され、空気の流路を構成する平板状をしたものである。前記燃料極側のインターコネクタ及び前記空気極側のインターコネクタの熱伝導率は、SUSの熱伝導率よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明にあっては、平板型固体酸化物形燃料電池が伝熱板4を備えることにより、平板型固体酸化物形燃料電池の面方向の熱伝導性が向上し、平板型固体酸化物形燃料電池の面方向において大きな温度差が生じるのが抑制される。この結果、平板型固体酸化物形燃料電池の内部に大きな温度差が生じて、平板型固体酸化物形燃料電池の一部が熱応力により破損するのが抑制される。すなわち、伝熱板という簡単な構成により、セルの面方向において大きな温度差が生じるのを抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明にあっては、伝熱板の熱膨張をインターコネクタの熱膨張に追従させやすくなり、伝熱板の熱膨張率とインターコネクタの熱膨張率の差により伝熱板とインターコネクタとの間に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0011】
請求項3に係る発明にあっては、インターコネクタの熱伝導率をSUSの熱伝導率よりも大きくするだけで、平板型固体酸化物形燃料電池の面方向において大きな温度差が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一実施形態の燃料電池スタックにおけるセルカセットの断面を含む部分の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の実施形態における燃料電池スタックの一部の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の実施形態におけるセルカセットの数値解析モデルの平面図である。
【
図4】
図4は、同上の実施形態におけるセルカセットの数値解析の結果一覧である。
【
図5】
図5は、第二実施形態の燃料電池スタックの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(概要)
本発明は、平板型固体酸化物形燃料電池に関する。平板型固体酸化物形燃料電池は、いずれも平板状をしたセル及びインターコネクタを備える。セルに供給される燃料ガス及び空気は、セルの板面に沿って通流するため、セルの面方向において温度分布が生じやすい。セルの面方向において大きな温度差が生じると、セルに熱応力が生じてセルが破損しやすくなる。本発明においては、セルの面方向において大きな温度差が生じるのを抑制するべく、平板型固体酸化物形燃料電池に伝熱板が設けられる。
【0014】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る平板型固体酸化物形燃料電池の第一実施形態について、
図1~
図4に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、平板型固体酸化物形燃料電池は、セル2と、インターコネクタ3と、伝熱板4と、を備える。
【0015】
(セル)
セル2は、燃料極層21、電解質層22及び空気極層23を有する。セル2は、平板状をしている。燃料極層21は、燃料ガスに接触するアノードとして機能するもので、多孔質材料により平板状に構成される。燃料極層21を構成する材料としては、酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアのサーメット(NiO-YSZ)や酸化ニッケルとスカンジア安定化ジルコニアのサーメット(NiO-ScSZ)等との複合材料等が好適に用いられるが、燃料極層21として公知の材料が適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0016】
電解質層22は、イオン伝導性を有する(特に酸化物イオン(O2-)の透過性が高い)固体電解質からなるもので、平板状に構成される。電解質層22を構成する材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等が好適に用いられるが、電解質層22として公知の材料が適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0017】
空気極層23は、空気(特に酸素)に接触するカソードとして機能するもので、多孔質材料により平板状に構成される。空気極層23を構成する材料としては、ランタンストロンチウムマンガナイト(La1-XSrXMnO3+δ)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(La1-XSrXFe1-YCoYO3+δ)といったペロブスカイト型複合酸化物等が好適に用いられるが、空気極層23として公知の材料が適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0018】
セル2は、電解質層22の一方の板面に燃料極層21の板面が重ね合わされ、電解質層22の他方の板面に空気極層23の板面が重ね合わされて、燃料極層21、電解質層22、空気極層23の順で積層されて構成される。
【0019】
(集電体)
第一実施形態では、セル2の燃料極側の板面に沿って集電体5が配置される。集電体5は、通気性を有する多孔質又はメッシュ状をした部材により平板状に構成されるので、その材料としては、ニッケル、SUS等が好適に用いられるが、その他の材料も適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0020】
(インターコネクタ)
インターコネクタ3は、隣接する二個のセル2を電気的に接続するもので、平板状に構成される。インターコネクタ3を構成する材料としては、SUS材料(SUS430、SUS445等)が好適に用いられるが、インターコネクタ3として公知の材料が適宜利用可能であり、特に限定されない。第一実施形態では、インターコネクタ3はSUS445により形成される。
【0021】
隣接する二個のセル2は、それぞれの板面が互いに対向するように配置され、間にインターコネクタ3が配置される。第一実施形態ではインターコネクタ3として、それぞれ別体である燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32とを有する。
【0022】
燃料極側のインターコネクタ31は、セル2の燃料極側の板面に沿って配置される。燃料極側のインターコネクタ31は、燃料ガスの流路310を構成する。具体的には、燃料極側のインターコネクタ31のセル2側の板面には、燃料ガスの流路310となる凹溝が形成されている。燃料極側のインターコネクタ31は、このセル2の燃料極層21へ供給される燃料ガスの流路310と、隣接するセル2の空気極層23へ供給される空気の流路320とを仕切るセパレータとしての機能を併せ持つ。
【0023】
空気極側のインターコネクタ32は、セル2の空気極側の板面に沿って配置される。空気極側のインターコネクタ32は、空気の流路320を構成する。具体的には、空気極側のインターコネクタ32のセル2側の板面には、空気の流路320となる凹溝が形成されている。第一実施形態では、空気の流路320の延びる方向は、燃料ガスの流路310の延びる方向と直交している。空気極側のインターコネクタ32は、このセル2の空気極層23へ供給される空気の流路320と、隣接するセル2の燃料極層21へ供給される燃料ガスの流路310とを仕切るセパレータとしての機能を併せ持つ。
【0024】
(伝熱板)
伝熱板4は、セルカセット10の面方向の熱伝導性を向上させるために設けられる。伝熱板4は、その板面がインターコネクタ3の板面と面接触するように、インターコネクタ3及びセル2と積層されている。ここで、セル2及びセル2を構成する燃料極層21、電解質層22、空気極層23、燃料極側のインターコネクタ31、空気極側のインターコネクタ32、伝熱板4は、いずれも積層方向と直交する方向に延びる板状をしたものであり、これらの板面は積層方向を向いており、面方向(板面に沿う方向)は積層方向と直交する方向である。
【0025】
第一実施形態では、伝熱板4は、隣接するセルカセット10間の全てに設けられる。伝熱板4の一方の板面は、一のセルカセット10の燃料極側のインターコネクタ31の板面に合わせられ、伝熱板4の他方の板面は、別のセルカセット10の空気極側のインターコネクタ32の板面に合わせられる。
【0026】
伝熱板4は、燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32の熱伝導率(単位:W/m・K)よりも高い熱伝導率を有するものである。伝熱板4を構成する材料としては、銅、フェライト系合金等が好適に用いられるが、インターコネクタ3の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料であればよく、特に限定されない。第一実施形態では、伝熱板4は銅により形成される。銅により形成される伝熱板4の熱伝導率は371(W/m・K)であり、SUS445により形成されるインターコネクタ3の熱伝導率は24.9(W/m・K。但し500℃の時)であり、伝熱板4の熱伝導率はインターコネクタ3の熱伝導率よりも大きい。インターコネクタ3の材料として好適なSUSの熱伝導率は、SUSの種類にもよるが概ね最大値が28(W/m・K)であり、伝熱板4の熱伝導率は30(W/m・K)以上であることが求められる。
【0027】
第一実施形態では、伝熱板4は、燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32の熱膨張率(線膨張率とする。単位:1/K)と同程度の熱膨張率を有している。具体的には、伝熱板4は、燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32の熱膨張率の例えば60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有する。銅により形成される伝熱板4の熱膨張率は16.7×10-6(1/K)であり、SUS445により形成されるインターコネクタ3の熱膨張率は12.2×10-6(1/K)であり、伝熱板4の熱膨張率のインターコネクタ3の熱膨張率に対する比率は約137%である。
【0028】
(燃料電池スタック、セルカセット)
上述した伝熱板4、燃料極側のインターコネクタ31、集電体5、セル2及び空気極側のインターコネクタ32が積層されて、セルカセット10が構成される。また、複数のセルカセット10が積層されて、燃料電池スタック1(セルスタック)が構成され、燃料電池スタック1が平板型固体酸化物形燃料電池を構成する。
【0029】
(数値解析)
第一実施形態に係る燃料電池スタック1のセルカセット10について数値解析を行ったので、以下に説明する。
図3に、セルカセット10の数値解析モデル(実施例)の平面図を示す。
【0030】
セルカセット10は、
図1に示すセルカセット10と同様の構成である。燃料極層21、電解質層22、空気極層23、インターコネクタ3(燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32)、伝熱板4及び集電体5は、それぞれ平面視正方形状をしている。燃料極層21、電解質層22、空気極層23、インターコネクタ3、伝熱板4及び集電体5の厚みと一辺の長さを表1に示す。
【0031】
【0032】
インターコネクタ3は、流路310、320となる凹溝の深さ34(
図1参照)が2mm、凹溝を除いたベース部の厚み33(
図1参照)が2mm、計4mmである。なお、数値解析上は、インターコネクタ3の厚み方向において凹溝を有する側の2mmの部分は、気孔率50%の多孔質体であるとした。
【0033】
伝熱板4の材質は銅であり、集電体5の材質はニッケルであり、集電体5はメッシュ状をしている。
【0034】
また、セルカセット10には、燃料ガスの流路310の入口11及び出口12が形成され、インターコネクタ3及び集電体5には、入口11及び出口12に対応する開口が形成されている。また、セルカセット10には、空気の流路320の入口13及び出口14が形成され、インターコネクタ3及び集電体5には、入口13及び出口14に対応する開口が形成されている。入口11、出口12、入口13及び出口14は、長さが170mm、幅が20mmである。
【0035】
燃料ガスは、入口11から出口12に向かって、セル2の全面を流れ、空気は、入口13から出口14に向かって、セル2の全面を流れる。入口11から出口12に至る燃料ガスの流れの向き(
図3中の矢印参照)と、入口13から出口14に至る空気の流れの向き(
図3中の矢印参照)は、直交している。
【0036】
セルカセット10において発電させるための運転条件を表2に示す。
【0037】
【0038】
表2中のUfは燃料利用率(有効に利用された燃料の割合)、Uaは空気利用率である。また、セルカセット10の上下面は断熱とし、セルカセット10の側面の放熱条件は、セル2の平均温度が実施例と比較例とで同じとなるように調整する。この運転条件を基に、実施例及び比較例について数値解析を行った。なお、比較例は、実施例と比較して、伝熱板4を有しない点のみで異なり、その他の条件は実施例と同一である。
【0039】
数値解析の結果を
図4に示す。数値解析の結果として、セル2の温度分布、セル2の平均温度、セル2の最高温度、セル2の最低温度、セル2の温度差(最高温度-最低温度)及びセル2で発生する電圧、をそれぞれ実施例及び比較例について示す。
【0040】
図4に示す数値解析の結果より、セル2の温度差が、比較例では74℃であるのに対して、実施例では42℃となっており、実施例では大幅に小さくなっていることが分かる。また、セル2で発生する電圧は殆ど同じで、運転に支障ないことが分かる。
【0041】
(効果)
第一実施形態においては、燃料電池スタック1(平板型固体酸化物形燃料電池)が伝熱板4を備えている。伝熱板4が設けられることにより、燃料電池スタック1の面方向の熱伝導性が向上し、セル2の面方向において大きな温度差が生じるのが抑制される。この結果、燃料電池スタック1の内部に大きな温度差が生じて、燃料電池スタック1の一部が熱応力により破損するのが抑制される。すなわち、伝熱板4という簡単な構成により、燃料電池スタック1の面方向において大きな温度差が生じるのを抑制することができる。
【0042】
また、伝熱板4は、インターコネクタ3の熱膨張率の60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有することにより、伝熱板4の熱膨張をインターコネクタ3の熱膨張に追従させやすくなり、伝熱板4の熱膨張率とインターコネクタ3の熱膨張率の差により、伝熱板4とインターコネクタ3との間に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0043】
(変形例)
集電体5は設けられる必要はなく、インターコネクタ3が集電体5の機能を併せ持ってもよい。
【0044】
インターコネクタ3は、燃料ガスの流路310と空気の流路320とを仕切るセパレータとしての機能を併せ持つ必要はなく、セパレータは別に設けられてもよい。空気の流路320となる凹溝の長手方向は、燃料ガスの流路310となる凹溝の長手方向と平行であってもよい。この場合、燃料ガスの流れる向きと空気の流れる向きとが同じ向きであってもよいし、反対向きであってもよい。インターコネクタ3に設けられている凹溝は任意の構成であり、特に設けられる必要はない。
【0045】
伝熱板4は、隣接するセルカセット10間の全てに設けられる必要はない。伝熱板4は、燃料電池スタック1において少なくとも一枚設けられればよい。
【0046】
伝熱板4は銅以外では例えばクロム又はニッケルにより形成されることが好ましい。
【0047】
クロムは、熱伝導率が96(W/m・K)であると共に熱膨張率が17.0×10-6(1/K)であり、熱伝導率がSUS445の熱伝導率よりも大きく、熱膨張率がSUS445の熱膨張率に対して139%となるため、伝熱板4として好ましい。
【0048】
また、ニッケルは、熱伝導率が84(W/m・K)であると共に熱膨張率が12.8×10-6(1/K)であり、熱伝導率がSUS445の熱伝導率よりも大きく、熱膨張率がSUS445の熱膨張率に対して105%となるため、伝熱板4として好ましい。
【0049】
また、伝熱板4は、銀やアルミニウムにより形成されてもよいし、その他の金属又は合金により形成されてもよい。
【0050】
伝熱板4は、インターコネクタ3の熱膨張率の90%以上でかつ110%以下の熱膨張率を有することが好ましいが、インターコネクタ3の熱膨張率の80%以上でかつ120%以下、あるいは、70%以上でかつ130%以下、あるいは本実施形態のように60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有するものであってもよく、また、インターコネクタ3の熱膨張率の60%以上でかつ140%以下の熱膨張率を有しなくてもよい。
【0051】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る燃料電池スタック1について、
図5に基づいて説明する。なお、第二実施形態に係る燃料電池スタック1は、第一実施形態に係る燃料電池スタック1と大部分において同じである。このため、第一実施形態と重複する説明は省略し、主に異なる点について説明する。
【0052】
第一実施形態では、燃料電池スタック1は、インターコネクタ3とは別に伝熱板4を備えていた。これに対して、第二実施形態では、燃料電池スタック1は、インターコネクタ3を伝熱板4と兼用するものである。燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32の熱伝導率は、SUSの熱伝導率よりも大きくする。具体的には、第二実施形態では、インターコネクタ3は、銅により構成される。なお、従来のインターコネクタ3は、主にSUS等からなり、その熱伝導率は銅の熱伝導率よりも小さい。
【0053】
また、第二実施形態では、燃料極側のインターコネクタ31及び空気極側のインターコネクタ32が一体となったインターコネクタ3が設けられる。すなわち、第一実施形態においては、インターコネクタ3とは別体の伝熱板4が設けられるため、燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32が別体となり、隣接するセルカセット10間において燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32の間に伝熱板4が設けられていた。
【0054】
これに対して、第二実施形態では、インターコネクタ3と別に伝熱板4を設ける必要がないため、燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32とを一体化させることが可能となる。インターコネクタ3の積層方向における一方の側には、一のセルカセット10の空気の流路320が形成される。また、このインターコネクタ3の積層方向における他方の側には、別のセルカセット10の燃料ガスの流路310が形成される。一のセルカセット10において、インターコネクタ3は、積層方向の一方の端部にのみ設けられる。
【0055】
(効果)
第二実施形態においては、燃料電池スタック1(平板型固体酸化物形燃料電池)のインターコネクタ3が伝熱板としての機能を備えていることにより、燃料電池スタック1の面方向の熱伝導性が向上し、セル2の面方向において大きな温度差が生じるのが抑制される。すなわち、インターコネクタ3の熱伝導率をSUSの熱伝導率よりも大きくするだけで、燃料電池スタック1の面方向において大きな温度差が生じるのを抑制することができる。
【0056】
(変形例)
伝熱板4は、ニッケル、クロム、アルミニウム又は銀により形成されてもよいし、その他の金属又は合金により形成されてもよい。
【0057】
集電体5は設けられる必要はなく、インターコネクタ3が集電体5の機能を併せ持ってもよい。
【0058】
また、インターコネクタ3は、燃料極側のインターコネクタ31と空気極側のインターコネクタ32とから構成されてもよい。
【0059】
なお、上述した実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0060】
1 燃料電池スタック
10 セルカセット
11 入口(燃料ガス)
12 出口(燃料ガス)
13 入口(空気)
14 出口(空気)
2 セル
21 燃料極層
22 電解質層
23 空気極層
3 インターコネクタ
31 燃料極側のインターコネクタ
310 流路
32 空気極側のインターコネクタ
320 流路
33 ベース部の厚み
34 凹溝の深さ
4 伝熱板
5 集電体