(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184220
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法及び混合装置
(51)【国際特許分類】
C08F 216/14 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
C08F216/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091935
(22)【出願日】2021-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 紳介
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AC21P
4J100BB11P
4J100BB18P
4J100BC59P
4J100CA01
4J100DA09
4J100DA12
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】樹脂材料と、当該樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とが均一に混合された樹脂組成物を効率良く製造するための、樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物の製造方法は、樹脂材料2と、樹脂材料2が液状化する温度において樹脂材料2よりも低い粘度を有する添加物とを容器1に入れ、樹脂材料2が液状化する温度にて、樹脂材料2が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように樹脂材料2を容器1内で位置変換させて、樹脂材料2及び前記添加物を混合することを含む。第1状態は、樹脂材料2が第1比表面積を満たす状態である。第2状態は、樹脂材料2が、前記第1比表面積に対する比率が70%以下である第2比表面積を満たす状態である。前記第1比表面積及び第2比表面積は、式(1)によって求められる比表面積である。式(1):比表面積[cm
-1]=樹脂材料の表面積[cm
2]/樹脂材料の体積[cm
3]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物の製造方法であって、
前記製造方法は、樹脂材料と、前記樹脂材料が液状化する温度において前記樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とを容器に入れ、前記樹脂材料が液状化する温度にて、前記樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように前記樹脂材料を前記容器内で位置変換させて、前記樹脂材料及び前記添加物を混合することを含み、
前記第1状態は、前記樹脂材料が第1比表面積を満たす状態であり、
前記第2状態は、前記樹脂材料が、前記第1比表面積に対する比率が70%以下である第2比表面積を満たす状態であり、
前記第1比表面積及び第2比表面積は、下記式(1)によって求められる比表面積である、
比表面積[cm-1]=樹脂材料の表面積[cm2]/樹脂材料の体積[cm3] …(1)
樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1比表面積は、0.3cm-1以上、10cm-1以下であり、
前記第2比表面積は、0.2cm-1以上、5cm-1以下である、
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記容器は、一軸方向に延びる形状を有し、
前記容器の長手方向における一端と他端との位置が逆になる方向に、前記容器を回転又は反転させることによって、前記容器内の前記樹脂材料及び前記添加物が混合される、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記容器の回転数R及び反転周期は、L[m]を前記容器の前記一軸方向の長さ、μ[Pa・s]を前記樹脂材料の粘度としたとき、下記式(2)及び(3)を満たし、
1.5<R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]<10 …(2)
反転周期[回/min]=R×2 …(3)
ここで、前記樹脂材料の粘度とは、前記樹脂材料及び前記添加物の混合温度における前記樹脂材料の粘度である、
請求項3に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記容器の回転又は反転によって、前記樹脂材料の全てが前記容器の前記一端の位置から前記他端の位置へと位置変換する時間を、前記樹脂材料の位置変換周期とし、かつ
前記容器の回転又は反転によって、前記添加物の全てが前記容器の前記一端の位置から前記他端の位置へと位置変換する時間を、前記添加物の位置変換周期とした場合、
前記添加物の位置変換周期は、前記樹脂材料の位置変換周期よりも小さい、
請求項3又は4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料の粘度は、前記樹脂材料及び前記添加物の混合温度において、10Pa・s以上、1000Pa・s以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記添加物の粘度は、前記樹脂材料及び前記添加物の混合温度において、0.001Pa・s以上、1Pa・s以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料は、含フッ素重合体を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記含フッ素重合体は、実質的に水素原子を含まず、かつ全フッ素化されている、
請求項8に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記含フッ素重合体は、下記構造式(1)で表される構成単位を有する重合体を含む、
請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
【化1】
(構造式(1)中、R
ff
1~R
ff
4は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキルエーテル基を表す。R
ff
1及びR
ff
2は連結して環を形成してもよい。)
【請求項11】
前記含フッ素重合体は、下記構造式(2)で表される構成単位を有する重合体を含む、
請求項10に記載の樹脂組成物の製造方法。
【化2】
【請求項12】
前記樹脂材料と前記添加物とが均一に混合されるまで、前記樹脂材料が前記第1状態と前記第2状態とを交互に繰り返すように前記樹脂材料を前記容器内で位置変換させる、
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
第1物質と、前記第1物質よりも低い粘度を有する第2物質とを混合する混合装置であって、
一軸方向に延びる形状を有する容器と、
前記容器の長手方向における一端と他端との位置が逆になる方向に、前記容器を回転又は反転させる機構と、
を備え、
前記容器の回転数R及び反転周期は、L[m]を前記容器の前記一軸方向の長さ、μ[Pa・s]を前記第1物質の粘度としたとき、下記式(4)及び(5)を満たし、
1.5<R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]<10 …(4)
反転周期[回/min]=R×2 …(5)
ここで、前記第1物質の粘度とは、前記第1物質及び前記第2物質の混合温度における前記第1物質の粘度である、
混合装置。
【請求項14】
前記容器の回転又は反転によって、前記第1物質の全てが前記容器の前記一端の位置から前記他端の位置へと位置変換する時間を、前記第1物質の位置変換周期とし、かつ
前記容器の回転又は反転によって、前記第2物質の全てが前記容器の前記一端の位置から前記他端の位置へと位置変換する時間を、前記第2物質の位置変換周期とした場合、
前記第2物質の位置変換周期が、前記第1物質の位置変換周期よりも大きくなるような回転数又は反転周期で、前記容器が回転又は反転する、
請求項13に記載の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法と、混合装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
粘度が互いに異なる2種以上の物質を均一に混合する技術は、様々な技術分野において有用である。例えば、光学部材用の材料を作製する場合、屈折率調整等の目的で、高粘度の樹脂に低粘度の添加物を混合しなければならない場合がある。例えば、プラスチック光ファイバー(以下、「POF」と記載する。)のコア部分の材料(コア材料)には、一般に、樹脂に屈折率調整剤等の各種添加物が混合されることによって得られる樹脂組成物が用いられる。コア材料に用いられる樹脂は、一般に、高い粘度を有する。一方、屈折率調整剤には、一般に、比較的低分子量の化合物が用いられる。したがって、屈折率調整剤は、低い粘度を有する。したがって、POFのコア材料として使用可能な樹脂組成物を作製するためには、通常、高粘度の樹脂に低粘度の添加物を均一に混合することが求められる。
【0003】
粘度が互いに異なる2種以上の物質を均一に混合する場合は、攪拌羽根を利用して混合物を攪拌する方法が一般に用いられる。しかし、POFのコア材料の作製に攪拌羽根を用いた場合、攪拌羽根を構成している成分(例えば、金属成分)がコア材料に混入し、コア材料の特性が損なわれてしまう。したがって、POFのコア材料のような、不純物の混入を極力避けなければならない材料の作製には、攪拌羽根を利用する方法を用いることができない。
【0004】
攪拌羽根を利用せずに、粘度が互いに異なる2種以上の物質を均一に混合できる方法として、例えば特許文献1には、液状の樹脂原料に固体状のフィラーが配合された高粘度の粘性材料を均一に攪拌することができる攪拌方法が開示されている。特許文献1に開示されている攪拌方法では、高粘度の粘性材料を変形可能な袋状容器に収容し、この袋状容器を繰り返し伸縮変形させることによって袋状容器内の粘性材料を攪拌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法によれば、液状の樹脂原料に固体状のフィラーが配合された高粘度の粘性材料を均一に攪拌することができる。しかし、粘度が互いに異なる2種以上の物質が、高粘度の液状の物質及び低粘度の液状の物質である場合、それらを効率良く均一に混合することは非常に難しい。したがって、特許文献1に開示されている方法のような袋状容器を繰り返し伸縮変形させる方法では、高粘度の液状の樹脂材料と低粘度の液状の添加物とを効率良く均一に混合して、POFのコア材料として使用できるような樹脂組成物を作製することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、樹脂材料と、当該樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とが均一に混合された樹脂組成物を効率良く製造するための、樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、粘度が互いに異なる少なくとも2種の物質を効率良く均一に混合することができる混合装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る樹脂組成物の製造方法は、樹脂材料と、前記樹脂材料が液状化する温度において前記樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とを容器に入れ、前記樹脂材料が液状化する温度にて、前記樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように前記樹脂材料を前記容器内で位置変換させて、前記樹脂材料及び前記添加物を混合することを含み、
前記第1状態は、前記樹脂材料が第1比表面積を満たす状態であり、
前記第2状態は、前記樹脂材料が、前記第1比表面積に対する比率が70%以下である第2比表面積を満たす状態であり、
前記第1比表面積及び第2比表面積は、下記式(1)によって求められる比表面積である。
比表面積[cm-1]=樹脂材料の表面積[cm2]/樹脂材料の体積[cm3] …(1)
【0009】
本発明の第2の態様に係る混合装置は、
第1物質と、前記第1物質よりも低い粘度を有する第2物質とを混合する混合装置であって、
一軸方向に延びる形状を有する容器と、
前記容器の長手方向における一端と他端との位置が逆になる方向に、前記容器を回転又は反転させる機構と、
を備え、
前記容器の回転数R及び反転周期は、L[m]を前記容器の前記一軸方向の長さ、μ[Pa・s]を前記第1物質の粘度としたとき、下記式(4)及び(5)を満たし、
1.5<R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]<10 …(4)
反転周期[回/min]=R×2 …(5)
ここで、前記第1物質の粘度とは、前記第1物質及び前記第2物質の混合温度における前記第1物質の粘度である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様に係る樹脂組成物の製造方法によれば、樹脂材料と、当該樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とが均一に混合された樹脂組成物を、効率良く製造することができる。また、本発明の第2の態様に係る混合装置によれば、第1物質と前記第1物質よりも低い粘度を有する第2物質とを効率良く均一に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の樹脂組成物の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。
【
図2A】
図2Aは、樹脂材料が、容器の底の形状に沿って変形しているものの、容器の底の一部分にのみに存在しており底全体に溜まっていない様子を模式的に示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、樹脂材料が容器の底全体に溜まっていると想定する場合の、樹脂材料の様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の樹脂組成物の製造方法の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、樹脂材料と、この樹脂材料が液状化する温度においてこの樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とを容器に入れ、樹脂材料が液状化する温度にて、樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように樹脂材料を容器内で位置変換させて、樹脂材料及び添加物を混合することを含む。本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、内部に収容された樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように、例えば容器自体を動作させる。例えば、容器を回転させたり反転させたりすることによって、内部に収容された樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返す位置変換が実施されてもよい。なお、上記樹脂材料および上記添加物は、混合時に液状であればよい。したがって、上記樹脂材料および上記添加物は、容器にいれる時点においては、固体であってもよいし、液状であってもよい。
【0014】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、樹脂材料と添加物とが均一に混合されるまで、樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように、樹脂材料を容器内で位置変換させることが好ましい。
【0015】
ここで、樹脂材料の第1状態とは、当該樹脂材料が第1比表面積を満たす状態のことである。また、樹脂材料の第2状態とは、当該樹脂材料が、第1比表面積に対する比率が70%以下である第2比表面積を満たす状態のことである。第1比表面積及び第2比表面積は、下記式(1)によって求められる比表面積である。
【0016】
比表面積[cm-1]
=樹脂材料の表面積[cm2]/樹脂材料の体積[cm3] …(1)
【0017】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、樹脂材料と、当該樹脂材料が液状化する温度において当該樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とが、樹脂材料が液状化する温度にて、樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように樹脂材料を容器内で位置変換させて、混合される。このような位置変換を生じさせる方法で樹脂材料と添加物とが互いに混合される場合、混合時に、樹脂材料と添加物とは互いに接触する位置を変えながら、かつ互いに接触しながら混合され得る。したがって、本実施形態の樹脂組成物の製造方法によれば、粘度の差が大きく、従来の方法では均一に混合することが困難であった2種以上の液状物質を、効率良く均一に混合することができる。
【0018】
ここでの「樹脂材料の表面積」とは、樹脂材料と添加物との混合に用いられる容器に収容されて液状化した状態における、樹脂材料の表面積を意味する。したがって、樹脂材料の表面積は、樹脂材料と添加物との混合に用いられる容器の形状及びサイズ、並びに、容器内における樹脂材料の状態から求められ得る。容器内における樹脂材料の状態とは、例えば、樹脂材料が容器のどの部分に位置し、そしてどのような形状で存在しているのかということである。例えば、事前に、容器を動作させた際(例えば、回転又は反転させた際)に当該容器が取り得る位置と、それらの容器の位置ごとにおける内部の樹脂材料の表面積との関係を求めておくことにより、容器の動作時における樹脂材料の表面積を求めることができる。
【0019】
本実施形態では、例えば、容器を所定の方式で動作させた際に、内部に収容された樹脂材料の表面積が最も大きくなる状態を第1状態とし、最も小さくなる状態を第2状態とすることができる。すなわち、容器を所定の方式で動作させた際に繰り返される、容器1内における樹脂材料の位置変換において、樹脂材料の表面積が最大となるときの状態及び最小になるときの状態が、上述の第1状態及び第2状態の関係を満たす場合、その方式で容器を動作させることにより本実施形態の製造方法が実施されると認定できる。
【0020】
容器は、動作させた際に容器内部の樹脂材料の表面積の変化が大きくなるような形状を有することが好ましく、例えば、角柱及び円柱のような一軸方向に延びる形状を有することが好ましい。容器が一軸方向に延びる形状を有する場合、容器の長手方向における一端と他端との位置が逆になる方向に容器を回転又は反転させることによって、容器内部の樹脂材料の表面積の変化を大きくすることができる。したがって、このような容器を用いることにより、樹脂材料を第1状態と第2状態との間で位置変換させることが容易となる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、一軸方向に延びる形状を有する容器を用いて、容器の長手方向における一端と他端との位置が逆になる方向に、容器を回転又は反転させることによって、容器内の樹脂材料及び添加物が混合されることが好ましい。容器内における樹脂材料の位置変換は、例えば、容器を回転又は反転させる際の回転数又は反転周期を調整することにより実現し得る。
【0021】
容器として、一軸方向に延びる形状を有する容器が用いられる場合、具体的には
図1に示すような筒状体の容器1が用いられる場合を例にして、第1状態及び第2状態をより具体的に説明する。
【0022】
図1に示すように、容器1を、容器1の長手方向における一端1aと他端1bとの位置が逆になる方向に回転又は反転させることにより(
図1の状態(a)~(e))、樹脂材料2を容器1内で位置変化させることができる。その場合、容器1内において樹脂材料2が最も大きい表面積を有し得るのは、容器1の長軸方向Aが水平方向とほぼ平行になる状態のとき、すなわち容器1が
図1の中央に示された状態(c)のときである。一方、容器1内において樹脂材料2が最も小さい表面積を有し得るのは、容器1の長軸方向Aが鉛直方向とほぼ平行になる状態のとき、すなわち容器1が
図1の両端に示された状態(a)及び状態(e)のときである。
【0023】
容器1内における樹脂材料2の状態は、例えば、次の方法によって確認することができる。まず、混合に使用される容器1と同じ形状を有し、かつ外側から内部を確認し得る透明材料(例えば、ガラス)からなる透明容器を準備する。この透明の容器内に、混合に用いられる量の樹脂材料のみを入れて、混合時に実施される方式(例えば、回転又は反転等)で透明容器を動作させて、透明容器の動作と当該容器内での樹脂材料の状態(形状及び位置)との関係を事前に確認することができる。
【0024】
容器1内の樹脂材料2が、
図1に示すように、容器1の回転又は反転に伴い、重力によって容器1内を移動するように、容器1の回転数又は反転周期が設定される場合、樹脂材料2は、容器1内において状態(c)のときに最大の表面積を有し、状態(a)及び状態(e)のときに最小の表面積を有する。この場合、容器1の長軸方向Aが水平方向とほぼ平行になる状態(c)のときに、その容器1の底に溜まった状態の樹脂材料2の表面積を求め、求められた表面積から第1状態の比表面積が求められる。一方、容器1の長軸方向が鉛直方向とほぼ平行になる状態(a)及び状態(e)のときに、その容器1の底に溜まった状態の樹脂材料2の表面積を求め、求められた表面積から第2状態の比表面積が求められる。なお、樹脂材料2の粘度、並びに容器1の長手方向の大きさによっては、状態(c)のときに、樹脂材料2が、容器1の底の形状に沿って変形しているものの容器1の底の一部分にのみに存在しており、底全体に溜まっていない場合もありえる(
図2A参照)。このような場合は、樹脂材料2が容器1の底全体に溜まっていると想定して(
図2B参照)、樹脂材料2の体積と状態(c)のときの容器1の底部分の形状とを用いて樹脂材料2の表面積を求めてもよい。
【0025】
第1比表面積は、0.3cm-1以上10cm-1以下であることが好ましく、0.4cm-1以上5cm-1以下であることがより好ましい。第2比表面積は、0.2cm-1以上5cm-1以下であることが好ましく、0.28cm-1以上3cm-1以下であることがより好ましい。樹脂材料2の第1比表面積及び第2比表面積が上記範囲を満たすことにより、樹脂材料2を低粘度の添加物と、より効率良く均一に混合することができる。
【0026】
容器1を回転又は反転させることによって、容器1内の樹脂材料2及び添加物3が混合される場合、容器1の回転数R及び反転周期は、L[m]を容器1の一軸方向の長さ、μ[Pa・s]を樹脂材料2の粘度としたとき、下記式(2)及び(3)を満たすことが好ましい。
1.5<R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]<10 …(2)
反転周期[回/min]=R×2 …(3)
ここで、樹脂材料の粘度とは、樹脂材料及び添加物の混合温度における樹脂材料の粘度である。
【0027】
容器1が上記式(2)及び(3)を満たすことにより、樹脂材料2の容器1内での第1状態と第2状態との間の位置変換がより確実に実現でき、樹脂材料2及び添加物3の混合が容易となる。
【0028】
ここで、樹脂材料2の粘度は、回転式の粘度測定方法によって測定される値であり、回転式レオメータを用いて測定される。例えば、測定装置として、回転型レオメータ「HAAKE MARS III」(サーモフィッシャーサイエンティフック株式会社製)が用いられる。ジオメトリーとして、例えばコーンプレート(φ20mm、4°)が用いられる。測定方法は、例えば、測定温度で安定したコーンプレート上に、15分以内に樹脂サンプルのセットを完了し、測定を開始する。せん断速度0.01-5(1/s)、測定時間10minで、粘度測定が実施される。
【0029】
容器1の回転又は反転によって、樹脂材料2の全てが容器1の一端1aの位置から他端1bの位置へと位置変換する時間を、樹脂材料2の位置変換周期とし、かつ容器1の回転又は反転によって、添加物3の全てが容器1の一端1aの位置から他端1bの位置へと位置変換する時間を、添加物3の位置変換周期とした場合、添加物3の位置変換周期は、樹脂材料2の位置変換周期よりも小さいことが好ましい。添加物3の位置変換周期と樹脂材料2の位置変換周期とがこのような関係を満たすことにより、樹脂材料2と添加物3とを、より効率良く均一に混合することができる。
【0030】
容器1の回転数又は反転周期を調整することにより、上記の関係を満たす添加物3の位置変換周期及び樹脂材料2の位置変換周期を実現できる。添加物3の位置変換周期及び樹脂材料2の位置変換周期と、容器1の回転数又は反転周期との関係を、事前に予備測定にて確認しておくことが好ましい。例えば、混合に使用される容器1と同じ形状を有し、かつ外側から内部を確認し得る透明材料(例えば、ガラス)からなる透明容器を準備する。この透明の容器内に、混合に用いられる量の樹脂材料2のみ、又は添加物3のみを入れて、透明容器を回転又は反転させ、このときに樹脂材料2又は添加物3が透明容器の一端の位置から他端の位置へと位置変換する時間を測定する。これを回転数又は反転周期を変化させながら繰り返し行い、回転数又は反転周期と、樹脂材料2及び添加物3の位置変換周期との関係を求めておくとよい。
【0031】
なお、樹脂材料2と添加物3とを十分に均一に混合するためには、容器1を回転又は反転させることが望ましい。しかし、均一の度合いが低くてもよい場合や、樹脂材料の粘度がそれほど高くない場合等は、容器を90度程度回転させて元に戻す、という容器1の動作であってもある程度の効果が得られる。ただし、十分に均一な混合を得るためには、少なくとも反転させることが求められる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法で用いられる樹脂材料2の粘度は、特に限定されないが、樹脂材料2の粘度は、樹脂材料2及び添加物3の混合温度において、例えば10Pa・s以上、1000Pa・s以下であってもよい。樹脂材料2がこのように非常に高い粘度を有する場合であっても、本実施形態の製造方法によれば、低粘度の添加物3との均一な混合が可能となる。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法で用いられる添加物3の粘度は、特に限定されない。樹脂材料2との均一な混合を考慮して、添加物3の粘度は、樹脂材料2及び添加物3の混合温度において、例えば0.001Pa・s以上、1Pa・s以下であってもよい。添加物3がこのような低い粘度を有する場合であっても、本実施形態の製造方法によれば、樹脂材料2との均一な混合が可能となる。
【0034】
樹脂材料2と添加物3との粘度の差は、特には限定されない。上述のように、樹脂材料2の粘度は、例えば10Pa・s以上、1000Pa・s以下であり、添加物3の粘度は、例えば0.001Pa・s以上、1Pa・s以下である。本実施形態の樹脂組成物の製造方法によれば、このように粘度差が大きい物質同士を効率良く均一に混合することができる。
【0035】
混合温度は、本実施形態の製造方法に用いられる樹脂材料2及び添加物3に応じて適宜選択されることができる。例えば、樹脂材料2が溶融し、かつ添加物3が揮発しない温度範囲で混合が行われる。製造される樹脂組成物が、例えばPOFのコア材料に用いられる場合、混合温度は、例えば200~300℃の範囲であり、一例として約270℃が挙げられる。
【0036】
樹脂材料は、例えば含フッ素重合体を含む。含フッ素重合体は、POFや露光部材などの光学部材として、あるいは表面改質剤等として使用され、幅広い分野で利用される有用な物質である。したがって、含フッ素重合体を含む樹脂材料が用いられて、本実施形態の製造方法によって製造される樹脂組成物は、POFのような光学部材の材料として用いられることができ、例えばPOFのコア材料として用いられることができる。
【0037】
本実施形態において、樹脂材料が含フッ素重合体を含む場合、含フッ素重合体はは、C-H結合の伸縮エネルギーによる光吸収を抑制する観点から、実質的に水素原子を含んでいないことが好ましく、炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子に置換されていることが特に好ましい。すなわち、樹脂材料に含まれる含フッ素重合体は、実質的に水素原子を含まず、かつ全フッ素化されていることが好ましい。本明細書において、含フッ素重合体が実質的に水素原子を含んでいないとは、含フッ素重合体における水素原子の含有率が1モル%以下であることを意味する。
【0038】
含フッ素重合体は、含フッ素脂肪族環構造を有することが好ましい。含フッ素脂肪族環構造は、含フッ素重合体の主鎖に含まれていてもよく、含フッ素重合体の側鎖に含まれていてもよい。含フッ素重合体は、例えば、下記構造式(1)で表される構成単位(A)を有する。
【化1】
【0039】
構造式(1)中、Rff
1~Rff
4は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキルエーテル基を表す。Rff
1及びRff
2は、連結して環を形成してもよい。「パーフルオロ」は、炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子に置換されていることを意味する。構造式(1)において、パーフルオロアルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1であることがさらに好ましい。パーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0040】
構造式(1)において、パーフルオロアルキルエーテル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。パーフルオロアルキルエーテル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。パーフルオロアルキルエーテル基としては、パーフルオロメトキシメチル基などが挙げられる。
【0041】
Rff
1及びRff
2が連結して環を形成している場合、当該環は、5員環であってもよく、6員環であってもよい。この環としては、パーフルオロテトラヒドロフラン環、パーフルオロシクロペンタン環、パーフルオロシクロヘキサン環などが挙げられる。
【0042】
構成単位(A)の具体例としては、例えば、下記構造式(A1)~(A8)で表される構成単位が挙げられる。
【化3】
【0043】
構成単位(A)は、上記構造式(A1)~(A8)で表される構成単位のうち、構成単位(A2)、すなわち下記構造式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【化2】
【0044】
含フッ素重合体は、構成単位(A)を1種又は2種以上含んでいてもよい。含フッ素重合体において、構成単位(A)の含有量は、全構成単位の合計に対し、20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。構成単位(A)が20モル%以上含まれることにより、含フッ素重合体は、より高い耐熱性を有する傾向がある。構成単位(A)が40モル%以上含まれる場合、含フッ素重合体は、高い耐熱性に加えて、より高い透明性及び高い機械的強度も有する傾向がある。含フッ素重合体において、構成単位(A)の含有量は、全構成単位の合計に対し、95モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0045】
構成単位(A)は、例えば、下記構造式(3)で表される化合物に由来する。構造式(3)において、R
ff
1~R
ff
4は、構造式(1)と同じである。なお、構造式(3)で表される化合物は、例えば特表2007-504125号公報に開示された製造方法をはじめ、すでに公知である製造方法によって得ることができる。
【化4】
【0046】
上記構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(M1)~(M8)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0047】
含フッ素重合体は、構成単位(A)以外に、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。他の構成単位としては、以下の構成単位(B)~(D)が挙げられる。
【0048】
構成単位(B)は、下記構造式(4)で表される。
【化6】
【0049】
構造式(4)中、R1~R3は各々独立に、フッ素原子、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキル基を表す。R4は、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、環構造を有していてもよい。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0050】
含フッ素重合体は、構成単位(B)を1種又は2種以上含んでいてもよい。含フッ素重合体において、構成単位(B)の含有量は、全構成単位の合計に対し、5~10モル%が好ましい。構成単位(B)の含有量は、9モル%以下であってもよく、8モル%以下であってもよい。
【0051】
構成単位(B)は、例えば、下記構造式(5)で表される化合物に由来する。構造式(5)において、R
1~R
4は、構造式(4)と同じである。構造式(5)で表される化合物は、パーフルオロビニルエーテル等の含フッ素ビニルエーテルである。
【化7】
【0052】
構成単位(C)は、下記構造式(6)で表される。
【化8】
【0053】
構造式(6)中、R5~R8は各々独立に、フッ素原子、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、環構造を有していてもよい。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0054】
含フッ素重合体は、構成単位(C)を1種又は2種以上含んでいてもよい。含フッ素重合体において、構成単位(C)の含有量は、全構成単位の合計に対し、5~10モル%が好ましい。構成単位(C)の含有量は、9モル%以下であってもよく、8モル%以下であってもよい。
【0055】
構成単位(C)は、例えば、下記構造式(7)で表される化合物に由来する。構造式(7)において、R
5~R
8は、構造式(6)と同じである。構造式(7)で表される化合物は、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレン等の含フッ素オレフィンである。
【化9】
【0056】
構成単位(D)は、下記構造式(8)で表される。
【化10】
【0057】
構造式(8)中、Zは、酸素原子、単結合、又は-OC(R19R20)O-を表し、R9~R20は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のパーフルオロアルコキシ基を表す。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルコキシ基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。s及びtはそれぞれ独立に0~5でかつs+tが1~6の整数(ただし、Zが-OC(R19R20)O-の場合、s+tは0であってもよい)を表す。
【0058】
構成単位(D)は、好ましくは下記構造式(9)で表される。なお、下記構造式(9)で表される構成単位は、上記構造式(8)においてZが酸素原子、sが0、かつtが2の場合である。
【化11】
【0059】
構造式(9)中、R141、R142、R151、及びR152は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のパーフルオロアルコキシ基を表す。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルコキシ基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0060】
含フッ素重合体は、構成単位(D)を1種又は2種以上含んでいてもよい。含フッ素重合体において、構成単位(D)の含有量は、全構成単位の合計に対し、30~67モル%が好ましい。構成単位(D)の含有量は、例えば35モル%以上であり、60モル%以下であってもよく、55モル%以下であってもよい。
【0061】
構成単位(D)は、例えば、下記構造式(10)で表される化合物に由来する。構造式(10)において、Z、R
9~R
18、s及びtは、構造式(8)と同じである。構造式(10)で表される化合物は、2個以上の重合性二重結合を有し、かつ環化重合し得る含フッ素化合物である。
【化12】
【0062】
構成単位(D)は、好ましくは下記構造式(11)で表される化合物に由来する。構造式(11)において、R
141、R
142、R
151、及びR
152は、構造式(9)と同じである。
【化13】
【0063】
構造式(10)又は構造式(11)で表される化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF=CF2
CF2=CFOCF(CF3)CF=CF2
CF2=CFOCF2CF2CF=CF2
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2
CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2
CF2=CFOCFClCF2CF=CF2
CF2=CFOCCl2CF2CF=CF2
CF2=CFOCF2OCF=CF2
CF2=CFOC(CF3)2OCF=CF2
CF2=CFOCF2CF(OCF3)CF=CF2
CF2=CFCF2CF=CF2
CF2=CFCF2CF2CF=CF2
CF2=CFCF2OCF2CF=CF2
CF2=CFOCF2CFClCF=CF2
CF2=CFOCF2CF2CCl=CF2
CF2=CFOCF2CF2CF=CFCl
CF2=CFOCF2CF(CF3)CCl=CF2
CF2=CFOCF2OCF=CF2
CF2=CFOCCl2OCF=CF2
CF2=CClOCF2OCCl=CF2
【0064】
含フッ素重合体は、構成単位(A)~(D)以外の他の構成単位をさらに含んでいてもよいが、実質的に構成単位(A)~(D)以外の他の構成単位を含まないことが好ましい。なお、含フッ素重合体が実質的に構成単位(A)~(D)以外の他の構成単位を含まないとは、含フッ素重合体における全構成単位の合計に対し、構成単位(A)~(D)の合計が95モル%以上、好ましくは98モル%以上であることを意味する。
【0065】
含フッ素重合体の重合方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合などの一般的な重合方法を利用できる。含フッ素重合体を重合するための重合開始剤は、全フッ素化された化合物であってもよい。
【0066】
含フッ素重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、例えば100℃~140℃であり、105℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。本明細書において、Tgは、JIS K7121:1987の規定に準拠して求められる中間点ガラス転移温度 (Tmg)を意味する。
【0067】
樹脂材料は、含フッ素重合体を主成分として含んでいてもよく、実質的に含フッ素重合体のみからなることが好ましい。
【0068】
添加物は、例えば屈折率調整剤である。屈折率調整剤として、例えば、光学部材用の材料として用いられる樹脂組成物に用いられる公知の屈折率調整剤が用いられ得る。例えば、本実施形態で製造される樹脂組成物がPOFの材料として用いられる場合、POFの材料に用いられる公知の屈折率調整剤が使用され得る。
【0069】
本実施形態の製造方法によって製造される樹脂組成物は、屈折率調整剤以外の他の添加物を含んでいてもよい。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法において、樹脂材料2と添加物3との質量比は、目的とする樹脂組成物の組成に応じて適宜決定されるため、特には限定されない。ただし、添加物(例えば、屈折率調整剤)の機能を十分に発揮させ、かつ樹脂材料2と添加物3とを効率良く均一に混合するために、樹脂材料2に対する添加物3の質量比(添加物/樹脂材料)は、0.005以上0.3以下が好ましい。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法によって得られた樹脂組成物は、その後、成形工程等を経て、所望の用途の部材として利用される。
【0072】
(実施形態2)
本発明の混合装置の実施形態について説明する。
【0073】
本実施形態の混合装置は、第1物質と、第1物質よりも低い粘度を有する第2物質とを混合する混合装置である。したがって、本実施形態の混合装置は、実施形態1で説明した樹脂組成物の製造方法において、樹脂材料と、当該樹脂材料よりも低粘度の添加物との混合に用いることが可能である。
【0074】
本実施形態の混合装置を、
図1を援用しながら説明する。
【0075】
本実施形態の混合装置は、一軸方向に延びる形状を有する容器1と、容器1の長手方向における一端1aと他端1bとの位置が逆になる方向に、容器1を回転又は反転させる機構(図示せず)と、を備える。
【0076】
上記機構は、容器1の回転数R及び反転周期が下記式(4)及び(5)を満たすように、容器1を動作させる。なお、下記式(4)において、L[m]は容器1の一軸方向の長さ、μ[Pa・s]は第1物質の粘度である。
1.5<R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]<10 …(4)
反転周期[回/min]=R×2 …(5)
ここで、第1物質の粘度とは、第1物質及び第2物質の混合温度における第1物質の粘度である。
【0077】
本実施形態の混合装置によれば、第1物質と第2物質とを効率よく均一に混合することができる。
【0078】
本実施形態の混合装置は、上記機構が容器1を上記の回転数R及び反転周期で回転又は反転させるように、上記機構を制御する制御部をさらに備えていてもよい。
【0079】
本実施形態の混合装置において、上記機構は、さらに以下のように容器1を回転又は反転させることが好ましい:
容器1の回転又は反転によって、第1物質の全てが容器1の一端1aの位置から他端1bの位置へと位置変換する時間を、第1物質の位置変換周期とし、かつ容器1の回転又は反転によって、第2物質の全てが容器1の一端1aの位置から他端1bの位置へと位置変換する時間を、第2物質の位置変換周期とした場合、第2物質の位置変換周期が、第1物質の位置変換周期よりも大きくなるような回転数又は反転周期で、容器1を回転又は反転させる。
【0080】
第1物質の位置変換周期と第2物質の位置変換周期とが上記の関係を満たすことにより、第1物質と添加物とを、より効率良く均一に混合することができる。
【0081】
本実施形態の混合装置によって効率良く均一に混合される第1物質及び第2物質の好ましい粘度は、実施形態1で説明した樹脂材料及び添加物の好ましい粘度に相当する。第1物質及び第2質は、それぞれ、実施形態1で説明した樹脂材料及び添加物であってもよい。
【実施例0082】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0083】
(実施例1)
樹脂材料として、パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン(PFMMD)を重合させることによって得られる重合体が作製された。具体的な作製方法は以下のとおりであった。
【0084】
ガラスチューブ内に、PFMMD10gと、パーフルオロベンゾイルパーオキサイド80mgとを封入した。このガラスチューブを、3サイクルの冷凍/解凍真空機で脱気して、アルゴンを再充填した。ガラスチューブを封止し、1日間、50℃で加熱した。これによりガラスチューブの内容物は固体となり、さらにガラスチューブを4日間、70℃で加熱して、10gの透明棒状物を得た。この透明棒状物の一部をヘキサフルオロベンゼン溶液に溶解し、クロロホルムを加えて沈殿させることで精製した。開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキサイドを用い、Fluorinert FC-75(住友スリーエム社製)中でモノマーの溶液重合が行われた。これにより、PFMMDポリマーが得られた。このPFMMDポリマーが樹脂材料として用いられた。
【0085】
得られた樹脂材料(上記PFMMDポリマー)の270℃における粘度は420Pa・sであり、密度が1950kg・m-3であった。添加物として、1、1、3、5、6-ペンタクロロパーフルオロヘキサンが用いられた。添加物の270℃における粘度は0.01Pa・sであった。なお、粘度の測定装置として、回転型レオメータ「HAAKE MARS III」(サーモフィッシャーサイエンティフック株式会社製)が用いられた。ジオメトリーとして、コーンプレート(φ20mm、4°)が用いられた。測定温度で安定したコーンプレート上に、15分以内に樹脂サンプルのセットを完了し、測定を開始した。せん断速度0.01-5(1/s)、測定時間10minで、粘度測定が実施された。
【0086】
直径67mm、高さ(一軸方向の長さ)180mmの透明な円筒容器に、樹脂材料を200g及び添加物を22g投入し、蓋で容器を密封した。樹脂材料の体積は、103cm3であった。
【0087】
樹脂材料及び添加物が収容された容器を、把持可能な回転軸を有するオーブン内に垂直に固定し、270℃で6時間容器を回転させた。このときの回転数は0.067rpmであった。本実施例において、R[rpm]×L[m]×μ[Pa・s]=0.067×180×10-3×420=5.0652であり、上記式(2)を満たしていた。
【0088】
容器回転時、容器が横になっているとき(容器の長軸方向が水平方向とほぼ平行のとき)、容器内において、樹脂材料は容器の底のほぼ全体に溜まっている状態になっていることが、目視にて確認できた。すなわち、容器が横になっているとき、容器内において、樹脂材料の比表面積が約1.3cm-1と算出された。容器が縦になっているとき(容器の長軸方向が鉛直方向とほぼ平行のとき)、容器内において、容器の底全体に溜まっている状態になっていることが目視にて確認された。すなわち、容器が縦になっているとき、容器内において、高密度樹脂材料の比表面積が約2.3cm-1と算出された。これらの結果から、容器が横になっているときの樹脂材料の状態を第1状態とでき、かつ容器が縦になっているときの高密度樹脂材料の状態を第2状態とできるので、本実施例の方法では、樹脂材料は、第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように容器内で位置変換されて、添加物と混合された。
【0089】
容器の回転後、容器を270℃で20時間静置させ、冷却後に容器から樹脂材料と添加物との混合物である樹脂組成物を取り出した。目視にて確認したところ、得られた樹脂組成物では、樹脂材料と添加物とが均一に混合されていた。
【0090】
(比較例1)
容器の回転数を0.13rpmに変更した点以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の樹脂組成物の製造方法を実施した。
【0091】
容器回転時に目視にて確認したところ、比較例1では回転が速すぎて、容器が横になっているとき(容器の長軸方向が水平方向とほぼ平行のとき)に、樹脂材料が容器の底の形状に沿って変形せずに元の場所(容器の一端)にとどまっていた。すなわち、比較例1の方法では、樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように容器内で位置変換されなかった。このような、樹脂材料の位置変換が生じない方法で混合を40時間行ったが、樹脂材料と添加物とは均一に混合されなかった。
【0092】
以上の実施例1および比較例1の結果から、樹脂材料が第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように、樹脂材料を容器内で位置変換させながら添加物と混合することにより、粘度差が大きい物質同士であっても効率良く均一に混合できることが確認された。
本発明の樹脂組成物の製造方法によれば、樹脂材料と、当該樹脂材料よりも低い粘度を有する添加物とを効率良く均一に混合することができるので、あらゆる用途、例えば光学部材用の材料(特にPOF用の材料)の樹脂組成物の製造に利用可能である。
容器回転時、容器が横になっているとき(容器の長軸方向が水平方向とほぼ平行のとき)、容器内において、樹脂材料は容器の底のほぼ全体に溜まっている状態になっていることが、目視にて確認できた。すなわち、容器が横になっているとき、容器内において、樹脂材料の比表面積が約2.3cm
-1
と算出された。容器が縦になっているとき(容器の長軸方向が鉛直方向とほぼ平行のとき)、容器内において、容器の底全体に溜まっている状態になっていることが目視にて確認された。すなわち、容器が縦になっているとき、容器内において、高密度樹脂材料の比表面積が約1.3cm
-1
と算出された。これらの結果から、容器が横になっているときの樹脂材料の状態を第1状態とでき、かつ容器が縦になっているときの高密度樹脂材料の状態を第2状態とできるので、本実施例の方法では、樹脂材料は、第1状態と第2状態とを交互に繰り返すように容器内で位置変換されて、添加物と混合された。