(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184225
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】レール支持具
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A01G9/14 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091942
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】松沼 保夫
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029GA05
2B029GA07
(57)【要約】
【課題】レール支持具の設置作業を容易化する。
【解決手段】レール支持具1は、固定部材20と、該固定部材20に対して上下にスライド可能に設けられるスライド部材30を有し、固定部材20には、上下方向に複数設けられた位置決め用溝部20cが設けられ、スライド部材30には、位置決め用溝部20cに係合可能な位置決めピン30cが設けられている。スライド部材30を上下に位置調整し、位置決めピン30cを所定の高さに位置する位置決め用溝部20cに係合させるだけで所望の位置に容易に高さ調整でき、固定部材20のボルト挿通用スリット20dとスライド部材30の固定用穴30d間に固定ボルト40を挿通して締結するだけで固定できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウス内に相互に所定間隔をおいて略平行に2本一対配設される作業台車を走行させるためのパイプ型のレールを、設置面から所定高さの位置で支持するレール支持具であって、
前記2本一対配設されるレール間の間隔以上の大きさをを有し、前記設置面上に敷設される間隔保持部材と、
前記間隔保持部材上に、前記各レールに対応する間隔をおいて2個一対配置される所定高さの固定部材と、
上部に前記レールを受けるレール受け部を備え、前記各固定部材に対して上下にスライド可能に設けられる2個一対のスライド部材と
を有し、
前記固定部材には、上下方向に適宜間隔で複数設けられた位置決め用溝部が設けられていると共に、前記スライド部材に対峙する面に上下方向に長いボルト挿通用スリットが形成され、
前記スライド部材には、前記位置決め用溝部に係合可能で、係合位置により前記固定部材に対する前記スライド部材の相対高さを調整する位置決めピンが設けられていると共に、前記ボルト挿通用スリットを介して挿通される固定用ボルトの先端部を貫通させて固定するための固定用穴が形成されている
ことを特徴とするレール支持具。
【請求項2】
前記固定部材は、2枚一対の側面と前記各側面間を接続する背面とを有する平面視で略コ字状に形成され、
前記各側面のそれぞれに、前記複数の位置決め用溝部がそれぞれ同じ高さとなるように、前記各側面の開放側の端縁から前記背面方向に向かって切り欠かれて形成され、
前記背面に、前記ボルト挿通用スリットが形成されている請求項1記載のレール支持具。
【請求項3】
前記スライド部材は、2枚一対の側面と前記各側面間を接続する背面とを有する平面視で略コ字状に形成され、その背面を前記固定部材の背面に対峙させ、各側面を前記固定部材の各側面に重ね合わせて配設され、かつ、
前記各側面間に前記位置決めピンが少なくとも一つ掛け渡されて配設され、前記背面に前記固定用穴が形成されている請求項2記載のレール支持具。
【請求項4】
前記位置決めピンが上下方向に複数設けられていると共に、上下に隣接する位置決めピン同士の間隔が、それぞれを前記位置決め用溝部に位置させた際に、各位置決め用溝部の下縁部に接する寸法で設けられている請求項3記載のレール支持具。
【請求項5】
少なくとも前記固定部材及び前記スライド部材の各側面同士の少なくとも一部が重なる範囲であって、前記位置決めピンが前記位置決め用溝部から離脱し、前記スライド部材が前記固定部材に対して上下にスライド調整可能な状態において、前記固定用ボルトが、前記ボルト挿通用スリット及び前記固定用穴間に掛け渡される長さを有している請求項3又は4記載のレール支持具。
【請求項6】
前記スライド部材の各側面が、前記固定部材の各側面の外側に配置される請求項3~5のいずれか1に記載のレール支持具。
【請求項7】
前記レール受け部は、前記2本一対のレール間の中間方向を内側、その反対方向を外側としたときに、内側端縁の位置が、前記レールの中心を基準として内側に55~65度の範囲に位置し、外側端縁の位置が、前記レールの中心を基準として外側に110~120度の範囲に位置し、かつ、前記内側端縁及び外側端縁間の開口側の角度が、前記レールの中心を基準として180度より大きい請求項1~6のいずれか1に記載のレール支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の通路に配設される作業台車を走行させるためのパイプ型のレールを、設置面から所定高さの位置で支持するレール支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、農業用ハウス(温室)内における隣接する栽培ベッド間の通路に、暖房用の湯を通すために敷設された給湯配管をレールとして用い、このレールに収穫した果実や枯死した植物の運搬等、各種作業に利用される作業台車を走行させ、省力化するシステムが知られている。レールとして用いられる給湯配管は、床面に取り付け金具を用いて配設している。
【0003】
特許文献2では、同じく暖房用に用いる放熱管をレールとして用いるにあたって、略平行に配置される2本のレール(放熱管)を放熱性を考慮して所定の高さで支持するため、設置面上に基台を設置し、その基台に所定間隔をおいてボルト部を立設し、そのボルト部にナットを螺合し、ナット位置より上方の範囲のボルト部に、円筒状の脚部を挿入する機構が開示されている。脚部の上部には、レール受け部が設けられており、ナットを回転させることで、脚部の位置の微調整を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-346427号公報
【特許文献2】特開2007-182681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業台車走行用の上記のレール(給湯配管や放熱管等)は、作業台車の傾きがなく円滑な走行を実現できるように、2本が略平行に配置されると共に、走行方向に略水平に設けられる。しかるに、特許文献1のレール支持具に相当する金具は、床面に固定されているだけで高さ調整ができない。そのため、2本のレールの高さにずれが生じたりする場合には、作業台車の円滑な走行に支障がでる可能性がある。
【0006】
特許文献2に開示のレール支持具に相当するボルト部、ナット及び脚部の組み合わせは、ナットにより脚部の位置調整が可能である。しかしながら、ナットを回転させる手段では、脚部の位置を大きく変位させるには時間がかかる。また、これらのレール支持具は、レールの配設方向に沿って、例えば1m程度の間隔で配設されるため、温室内に多数(温室の大きさによっては10000個以上)配設される。これらの全てについて、ナットを回転させて高さ調整するのは非常に労力がかかる。また、一旦、所定の高さでセットした後の微調整ならともかく、最初に、所定の高さでセットする際にナットの位置を全てのレール支持具について統一するのは非常に手間がかかる。
【0007】
一方、実際の栽培現場においては、固定部材に対して上下にスライド可能であると共に、上部にレール受け部を有するスライド部材を配設し、位置合わせをした後に、複数のビスで固定するものも知られている。しかしながら、複数のビス(通常3~5本)をビス穴に位置合わせし、それを一つずつ締結していくのは非常に手間がかかる。しかも、温室内に多数配設されるレール支持具の一つ一つについて行わなければならず、長時間の作業を強いられ、また、レール支持具は、地面上の低い位置にセットされるため、作業姿勢も腰をかがめながらになり、いずれの場合も、レール支持具の設置作業は大きな負担となっていた。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、高さ調整が容易であると共に、調整した高さを維持するための作業も容易で、多数配設されるレール支持具の配設作業を容易化し、作業時間の短縮化に貢献できるレール支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明のレール支持具は、
農業用ハウス内に相互に所定間隔をおいて略平行に2本一対配設される作業台車を走行させるためのパイプ型のレールを、設置面から所定高さの位置で支持するレール支持具であって、
前記2本一対配設されるレール間の間隔以上の大きさをを有し、前記設置面上に敷設される間隔保持部材と、
前記間隔保持部材上に、前記各レールに対応する間隔をおいて2個一対配置される所定高さの固定部材と、
上部に前記レールを受けるレール受け部を備え、前記各固定部材に対して上下にスライド可能に設けられる2個一対のスライド部材と
を有し、
前記固定部材には、上下方向に適宜間隔で複数設けられた位置決め用溝部が設けられていると共に、前記スライド部材に対峙する面に上下方向に長いボルト挿通用スリットが形成され、
前記スライド部材には、前記位置決め用溝部に係合可能で、係合位置により前記固定部材に対する前記スライド部材の相対高さを調整する位置決めピンが設けられていると共に、前記ボルト挿通用スリットを介して挿通される固定用ボルトの先端部を貫通させて固定するための固定用穴が形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
前記固定部材は、2枚一対の側面と前記各側面間を接続する背面とを有する平面視で略コ字状に形成され、
前記各側面のそれぞれに、前記複数の位置決め用溝部がそれぞれ同じ高さとなるように、前記各側面の開放側の端縁から前記背面方向に向かって切り欠かれて形成され、
前記背面に、前記ボルト挿通用スリットが形成されていることが好ましい。
【0011】
前記スライド部材は、2枚一対の側面と前記各側面間を接続する背面とを有する平面視で略コ字状に形成され、その背面を前記固定部材の背面に対峙させ、各側面を前記固定部材の各側面に重ね合わせて配設され、かつ、
前記各側面間に前記位置決めピンが少なくとも一つ掛け渡されて配設され、前記背面に前記固定用穴が形成されていることが好ましい。
【0012】
前記位置決めピンが上下方向に複数設けられていると共に、上下に隣接する位置決めピン同士の間隔が、それぞれを前記位置決め用溝部に位置させた際に、各位置決め用溝部の下縁部に接する寸法で設けられていることが好ましい。
少なくとも前記固定部材及び前記スライド部材の各側面同士の少なくとも一部が重なる範囲であって、前記位置決めピンが前記位置決め用溝部から離脱し、前記スライド部材が前記固定部材に対して上下にスライド調整可能な状態において、前記固定用ボルトが、前記ボルト挿通用スリット及び前記固定用穴間に掛け渡される長さを有していることが好ましい。
前記スライド部材の各側面が、前記固定部材の各側面の外側に配置されることが好ましい。
【0013】
前記レール受け部は、前記2本一対のレール間の中間方向を内側、その反対方向を外側としたときに、内側端縁の位置が、前記レールの中心を基準として内側に55~65度の範囲に位置し、外側端縁の位置が、前記レールの中心を基準として外側に110~120度の範囲に位置し、かつ、前記内側端縁及び外側端縁間の開口側の角度が、前記レールの中心を基準として180度より大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレール支持具は、固定部材と、該固定部材に対して上下にスライド可能に設けられるスライド部材を有し、固定部材には、上下方向に適宜間隔で複数設けられた位置決め用溝部が設けられ、スライド部材には、位置決め用溝部に係合可能な位置決めピンを備えている。よって、スライド部材を上下に位置調整し、位置決めピンを所定の高さに位置する位置決め用溝部に係合させるだけで所望の位置に容易に高さ調整することができる。そして、固定部材におけるスライド部材に対峙する面には、上下方向に長いボルト挿通用スリットが形成されている一方、スライド部材には固定用ボルトの先端部が貫通する固定用穴が設けられている。よって、上記のように高さ調整を行った後、固定用ボルトを固定部材側のボルト挿通用スリットを介して通し、その先端部をスライド部材の固定用穴から貫通させて締結すれば容易に調整した高さでスライド部材を固定することができる。すなわち、本発明によれば、1本の固定用ボルトで、高さ調整と固定作業を行うことができ、温室内に多数配設されるレール支持具の配設作業、高さ調整作業の省力化、作業時間の短縮化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係るレール支持具を栽培ベッド間の通路に配置した状態を示す図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態のレール支持具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、レース支持具の固定部材及びスライド部材を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、固定部材の側面図であり、
図4(b)は、固定部材の正面図であり、
図4(c)は、固定部材の平面図である。
【
図5】
図5(a)は、スライド部材の側面図であり、
図5(b)は、スライド部材の正面図であり、
図5(c)は、スライド部材の平面図であり、
図5(d)は、
図5(a)のa部拡大図である。
【
図6】
図6は、固定部材にスライド部材を仮留めした状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、固定部材にスライド部材を固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
図1に示したように、隣接する栽培ベッド1000,1000間の通路2000には、温室内を保温したり、栽培ベッド1000で栽培されている植物に熱を供給したりするなど、所定の生育環境を形成するために給湯配管や放熱管などが設けられる。そこで、これらを2本一対ずつ相互に所定間隔をおいて略平行に設けることで、作業台車を走行させるためのレール100として利用される。なお、2本一対の給湯配管や放熱管は、例えば、通路2000の長手方向に沿って隣接する一方の栽培ベッド1000寄りにおいて直線状に設けられ、妻面付近あるいは温室の長手方向略中央に位置する中央通路付近等においてカーブして180度反転し、さらに隣接する他方の栽培ベッド1000寄りに直線状に設けられる。本実施形態のレール支持具1は、この給湯配管等として機能するパイプ型のレール100を所定高さで支持するために配設される。
【0017】
本実施形態のレール支持具1は、
図2に示したように、間隔保持部材10、固定部材20及びスライド部材30を有して構成される。間隔保持部材10は、隣接する栽培ベッド1000,1000間の通路2000上に敷設される(
図1参照)。上記のように、通路2000の表面(設置面)には相互に所定間隔をおいた2本を一対とする給湯配管や放熱管等からなるレール100,100が設けられるが、間隔保持部材10は、この2本のレール100,100間の間隔以上の大きさ、好ましくは、両者間に跨がる大きさを有している。形状は任意であるが、本実施形態では、平面視で略長方形に形成されており、その長手方向の長さが、2本のレール100,100間に跨がる長さを有している。
【0018】
固定部材20は、
図3及び
図4(a)~(c)に示すように、所定の高さを有し、2枚一対の側面20a,20aと各側面20a,20a間を接続する背面20bとを有する平面視で略コ字状に形成されている。そして、2つの固定部材20,20が、間隔保持部材10の長手方向の各端部付近に、それぞれ、側面20a,20aの開放側の端縁を向かい合わせ、それらの底部を該間隔保持部材10に固定して配設される(
図1参照)。固定部材20の底部の間隔保持部材10への固定手段は任意であり、溶接、かしめ等の手段を採用できる。
【0019】
固定部材20の各側面20a,20aには、開放側の端縁から背面20b方向に向かって切り欠かれた位置決め用溝部20c,20cが形成されている。位置決め用溝部20c,20cは、上下方向に適宜間隔で複数設けられている。具体的には、位置決め用溝部20c,20cには、後述の位置決めピン30c、30cが挿入されるため、上下方向高さは、位置決めピン30c,30cの直径よりも大きく、また、上下に隣接する位置決め用溝部20c,20c間の間隔は、位置決めピン30c、30cが挿入された際に所定の強度を発揮できる範囲で、できるだけ狭いことが好ましい。位置決め用溝部20c,20c間の間隔が狭いほど、位置決めピン30c,30cの挿入位置によって決まるスライド部材30の高さ調整量を細かくできる。
【0020】
固定部材20の背面20bには、ボルト挿通用スリット20dが形成されている。ボルト挿通用スリット20dを介して固定用ボルト40が挿入され、スライド部材30が固定部材20に対して固定される。スライド部材30は、位置決めピン30c,30cの位置決め用溝部20c,20cへの挿入位置により高さ調整されるため、いずれの位置決め用溝部20c,20cに挿入された場合でも固定できるように、ボルト挿通用スリット20dは、背面20bの上下方向に沿って形成されている。また、ボルト挿通用スリット20dは、固定用ボルト40がその先端部40aから挿入され、頭部40bがボルト挿通用スリット20dの外側に残ることになるため、頭部40b又はワッシャ40cの直径よりも狭い幅で形成される。
【0021】
スライド部材30は、間隔保持部材10に2個一対配置される上記の各固定部材20,20に対応して、同じく2個一対設けられる。各スライド部材30,30は、各固定部材20,20に対して上下にスライド可能に設けられる。具体的には、
図3及び
図5(a)~(c)に示したように、スライド部材30は、2枚一対の側面30a,30aと各側面30a,30a間を接続する背面30bとを有する平面視で略コ字状に形成されている。また、各側面30a,30aには、位置決めピン30c,30cを配設するための配設孔30c1,30c1が対向して2つずつ形成され、対向する配設孔30c,30c1間に位置決めピン30c,30cが掛け渡されている。位置決めピン30c,30cが、固定部材20の位置決め用溝部20c,20cに係合することで、その係合位置により固定部材20に対するスライド部材30の相対高さが調整される。位置決めピン30c,30cは、1本でもよいが、本実施形態のように2本設けることにより、上方からのせん断荷重に対し、固定ボルト40のほかに、4箇所で力を受けることができる。位置決めピン30c,30cは、本数が多いほど耐荷重性を増すことができるが、操作性を考慮すると本実施形態のように2本とすることが好ましい。
【0022】
また、複数本の位置決めピン30c,30cを設ける場合、各位置決めピン30c,30cがいずれの位置決め用溝部20c,20cに係合した場合でも必ず各位置決め用溝部20c,20cの下縁部に接することで、上記のような荷重分散を図ることができる。よって、位置決め用溝部20c,20cは、上下に一定間隔で形成し、位置決めピン30c,30cは、位置決め用溝部20c,20c間の間隔に合わせた間隔で設けると共に、直径が位置決め用溝部20c,20cの上縁部と下縁部の間隔以下となるような寸法で形成されることが好ましい。
【0023】
スライド部材30の高さは制限されるものではないが、固定部材20よりも低いと、上下方向の調整量が少なくなり、固定部材20よりも高い場合には、レール100の最低支持高さが高くなってしまう。よって、スライド部材30は、上部に設けるレール受け部31を除いた高さで、固定部材20とほぼ同じ高さとすることが好ましい。また、位置決めピン30c,30cは、上部寄りに設けるほど、上下の調整範囲が狭くなるため、できるだけ、スライド部材30の底部寄りに設けることが好ましい。
【0024】
スライド部材30は、背面30bを固定部材20の背面20bに対峙させ、各側面30a,30aを固定部材20の各側面20a,20aに少なくとも一部が重ね合わせるように、具体的には、スライド部材30の各側面30a,30aと、固定部材20の各側面20a,20aとは、それぞれの開放側の端縁寄りから、位置決めピン30c,30cの配設位置までの範囲が重なり合う。この重なり範囲が浅すぎると、両者を組み付けた際の強度に影響するため、位置決めピン30c,30cは、各側面30a,30aの奥行き方向中央付近かそれよりも若干背面30b寄りに設けることが好ましい。
【0025】
また、スライド部材30の各側面30a,30aは、固定部材20の各側面20a,20aの外側に配置されるよう、若干、スライド部材30の背面30bの幅が固定部材20の背面20bの幅よりも広くなっていることが好ましい。これにより、各側面30a,30a間に掛け渡される位置決めピン30c,30cを位置決め用溝部20c,20cに容易に係合させることができる。
【0026】
スライド部材30の背面30bには、固定部材20のボルト挿通用スリット20dを介して挿通される固定用ボルト40の先端部40aが貫通する固定用穴30dが開設されている。また、
図5(a)に示したように、固定用穴30dの外側には、雌ねじ部41が背面30bに一体に設けられている。この固定用穴30d及び固定部材20のボルト挿通用スリット20dは、それぞれ、背面30b,20bの幅方向略中央付近に形成されていることが好ましい。また、固定用穴30dの上下方向における形成位置は、限定されるものではないが、位置決めピン30c,30cにできるだけ近い位置であることが好ましい。本実施形態では、1本の固定用ボルト40により固定するため、その固定位置として、幅方向に偏在せず、かつ、位置決めピン30c,30cに近い位置であればあるほど、固定部材20及びスライド部材30間のずれが抑制され、安定して固定できる。
【0027】
スライド部材30の上部には、レール受け部31が設けられる。レール受け部31は、側面30a、30aの対向方向に沿って形成され、その形成方向が、給湯配管等のレール100の長手方向が沿った方向となっている。具体的には、
図35及び
図5(a),(d)に示したように、側面30a,30aの上縁部に相当し、該上縁部に円弧状に形成された上縁円弧部30e,30eと、背面30bの上縁部から外方に円弧状に膨出する膨出円弧部30fとを組み合わせて形成されている。このため、膨出円弧部30fは、背面30bと同じ幅を有している。上縁円弧部30e,30eと膨出円弧部30fとの組合せからなるレール受け部31は、レール100を載せやすく、作業台車の車輪が引っ掛からないようになっている一方で、車輪の脱輪を抑制できる構成となっていることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、まず、レール100を載せやすくするために、レール受け部31を端面方向から見て、
図5(d)に示したように、レール31の中心を基準として、開口側の角度θ1を180度より大きくしている。その一方、作業台車の車輪が引っ掛からないように、レール100の中心を通過して下方に延びる垂線と上縁円弧部30e,30eとの交点をレール受け部31の最下部30gとして、レール100の中心を基準とした場合に、該最下部30gから上縁円弧部30e,30eの内側端縁30e1,30e1までの角度θ2を55~65度の範囲としている。また、車輪の脱輪を防止するため、同じくレール100の中心を基準として、レール受け部31の最下部30gから膨出円弧部30fの外側端縁30f1までの角度θ3を110~120度の範囲に設定している。なお、角度θ2及びθ3の関係より、内側端縁30e1及び外側端縁30f1間の開口側の角度θ1は、180度より大きく195度以下に設定されることになる。
【0029】
本実施形態のレール支持具1は次のように設置される。まず、間隔保持部材10を、レール100を敷設予定の位置に対応して所定間隔で配置する。通常、レール100の配設方向(長手方向)に沿って、約1~1.5m間隔で配置され、例えば、面積1haの大規模温室に暖房用の給湯配管を敷設する場合には、10000~11000個程度配設される。
【0030】
次に、各間隔保持部材10の各端部に、2個一対の固定部材20,20を相互に所定間隔をおいて、上記のように溶接やかしめなどの方法を用いて、開放側の端縁同士が相互に向き合う姿勢で立設する。次に、各固定部材20,20に対してスライド部材30,30を配設する。各レール受け部31,31はレール100を所定の高さで略水平に支持する。よって、スライド部材30,30の位置決めピン30c,30cは、レール受け部31,31がその高さとなる位置決め用溝部20c,20cに係合される。その後、固定用ボルト40を固定部材20,20のボルト挿通用スリット20d,20dから挿通し、先端部40a,40aをスライド部材30,30の固定用穴30d,30dに挿入し、反対側の雌ねじ部41に螺合させる。
【0031】
実際の作業現場では、
図6に示したように、複数のレール支持具1,1において、当初は固定用ボルト40,40の先端部40a,40aを固定用穴30d、30d及び雌ねじ部41に仮留め状態として、レール受け部31,31にレール100を支持させる。そして、必要な場合には、スライド部材30,30を固定部材20,20から離間する方向に引き、位置決めピン30c,30cを現在係合している位置決め用溝部20c,20cから離脱させ、スライド部材30,30を上下にずらし、位置決めピン30c,30cを係合させる位置決め用溝部20c,20cを選択し直して再度係合させる。この際、固定用ボルト40,40の先端部40a,40aが固定用穴30d,30dに対して仮留め状態となっているが、固定部材20,20のボルト挿通用スリット20d,20dが上下方向に延びるように形成されているため、仮留め状態のまま、スライド部材30,30を上下にずらすことができる。位置決めピン30c,30cの係合位置が確定したならば、固定ボルト40,40の先端部40a、40aを雌ねじ部41,41に締め付ける。これにより、レール受け部31,31が所定の高さにセットされる。レール100は、このようにセットされたレール受け部31,31上に配設される。
【0032】
本実施形態によれば、スライド部材30,30の固定部材20,20に対する固定を、このように1本の固定用ボルト40の締結のみで行うことができる。上記のように温室の面積によって10000個以上も配置されるレール支持具1,1に対して、従来の複数のビスを用いてスライド部材を所定の高さに固定する作業は非常に労力がかかるが、本実施形態によれば固定用ボルト40を1本締結するだけでよいため、労力削減効果が大きい。また、高さ調整も、特許文献2のようなナットを上下に回転させてずらしていく方法と比較して、位置決めピン30c,30cの係合位置の選択のみで済み、極めて容易である。
【0033】
レール100内は常に温水が流れており、また、レール100上には、例えば重量700kg以上の作業台車が走行する。そのため、徐々に地盤が下がる場合がある。その場合には、スライド部材30,30の高さ調整を行う必要があるが、本実施形態では、1本の固定用ボルト40を緩め、上記の仮留め状態として、スライド部材30,30を上下にずらし、位置決めピン30c,30cを係合させる位置決め用溝部20c,20cを選択し直すのみで済むため、その作業も容易である。
【0034】
また、レール100には、作業台車の車輪が係合して走行するが、本実施形態のレール受け部31,31は、
図5(d)に示したθ1、θ2、θ3の角度が上記のような関係を有するため、レール100の配設作業が容易である一方で、脱輪のない円滑な走行を実現できる。
【符号の説明】
【0035】
1 レール支持具
10 間隔保持部材
20 固定部材
20a 側面
20b 背面
20c 位置決め用溝部
20d ボルト挿通用スリット
30 スライド部材
30a 側面
30b 背面
30c 位置決めピン
30d 固定用穴
31 レール受け部
40 固定用ボルト
41 雌ねじ部
100 レール