(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184243
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】印刷装置及び吸収体
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 303
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091965
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】林 翔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056HA01
2C056HA29
2C056JB04
2C056JC10
2C056JC17
2C056JC18
(57)【要約】
【課題】液体が落下して被印刷媒体を汚す可能性を低減できる印刷装置、及び印刷装置に設けられる吸収体を提供する。
【解決手段】印刷装置は、プラテン、ヘッド、支持板34、吸収体72を備える。プラテンには被印刷媒体が載置される。ヘッドは、ノズル面57A、57B、58A、58Bを有する。ヘッドは、ノズル面57A、57B、58A、58Bから下方にインクを吐出する。支持板34は、下方からヘッドを支持する。吸収体72は、支持板34の下側に設けられ、プラテンに対して露出する。吸収体72は、吸水性を有する。吸収体72は、例えばヘッドから吐出されたインクの一部で形成されるミストを吸収する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体が載置されるプラテンと、
ノズル面を有し、前記ノズル面から吐出方向にインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持する支持板と、
前記支持板の前記吐出方向側に設けられ、前記プラテンに対して露出し、かつ液体を吸収する吸収体と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ノズル面は、前記支持板よりも前記吐出方向側に位置し、
前記吸収体は、前記吐出方向において前記支持板と前記ノズル面との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吸収体は、前記液体を吸収した状態で、前記吐出方向において前記支持板と前記ノズル面との間に位置することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ノズル面を払拭するワイパを備え、
前記吸収体は、前記ワイパよりも前記吐出方向と反対側に位置することを特徴とする請求項2または3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記吸収体は、前記吐出方向と交差する方向であり、前記ワイパにより前記ノズル面が払拭される払拭方向の上流側および下流側の少なくとも一方に設けられることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記プラテンは、前記ノズル面に対して副走査方向に相対移動し、
前記吸収体は、前記ノズル面に対して副走査方向側に設けられることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記吸収体は、前記支持板に対して交換可能に設けられることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記吸収体を保持する保持部材を備え、
前記保持部材および前記支持板のうち一方に磁石が設けられ、
前記保持部材および前記支持板のうち他方は、前記磁石に吸着される吸着部を有することを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記支持板は、前記支持板に対する前記吸収体の主走査方向または副走査方向の位置を位置決めする位置決め部を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記吸収体が前記支持板に取り付けられる取付位置に案内する案内部と、
前記吸収体が前記取付位置とは異なる位置で前記支持板に取り付けられることを規制する規制部とを備えることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷装置内部の領域のうち、前記ヘッドが前記プラテンに載置された前記被印刷媒体にインクを吐出する領域である印刷領域以外の領域において、前記吸収体および前記保持部材の少なくとも一方から前記液体を逃す逃し部材を備えることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記吸収体を保持する保持部材を備え、
前記印刷装置内部の領域のうち、前記ヘッドが前記プラテンに載置された前記被印刷媒体にインクを吐出する領域である印刷領域以外の領域において、前記吸収体および前記保持部材の少なくとも一方から前記液体を逃す逃し部材を備えることを特徴とする請求項1~7、9、10のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項13】
前記ノズル面に密着するキャップを備え、
前記逃し部材は、前記ノズル面に前記キャップが密着する場合に、前記吸収体と前記ノズル面との隙間に配置されることを特徴とする請求項11または12に記載の印刷装置。
【請求項14】
被印刷媒体が載置されるプラテンと、ノズル面を有し、前記ノズル面から吐出方向にインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持する支持板とを備える印刷装置に設けられる吸収体であって、
前記吸収体は、前記支持板の前記吐出方向側に設けられ、前記プラテンに対して露出し、かつ液体を吸収することを特徴とする吸収体。
【請求項15】
前記支持板に対して交換可能であり、前記吸収体を保持する保持部材を備えることを特徴とする請求項14に記載の吸収体。
【請求項16】
前記保持部材の端の一部に前記保持部材と異なる中間部材が設けられることを特徴とする請求項15に記載の吸収体。
【請求項17】
前記中間部材は、前記吸収体の一部であることを特徴とする請求項16に記載の吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び印刷装置に設けられる吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプリンタは吐出ヘッドと、キャリッジと、プラテン部とを備える。キャリッジは吐出ヘッドを搭載し、プラテン部に支持された用紙上を往復動する。この往復動の時に吐出ヘッドがインクを吐出することで印刷が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記プリンタでは、吐出ヘッドが吐出したインクの一部はミストになり、キャリッジに付着する可能性がある。さらに、キャリッジに付着したミストは、液滴に成長し、プラテン部に支持された被印刷媒体としての用紙に落下し、被印刷媒体を汚す可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、液体が落下して被印刷媒体を汚す可能性を低減できる印刷装置、及び印刷装置に設けられる吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る印刷装置は、被印刷媒体が載置されるプラテンと、ノズル面を有し、前記ノズル面から吐出方向にインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持する支持板と、前記支持板の前記吐出方向側に設けられ、前記プラテンに対して露出し、かつ液体を吸収する吸収体とを備えることを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、支持板に設けられ、プラテンに対して露出する吸収体により、プラテンに載置された被印刷媒体に液体が落下する可能性を低減できる。従って被印刷媒体が汚れる可能性を低減できる。
【0008】
第一態様において、前記ノズル面は、前記支持板よりも前記吐出方向側に位置し、前記吸収体は、前記吐出方向において前記支持板と前記ノズル面との間に位置してもよい。
【0009】
この場合、印刷装置はノズル面から吐出されたインクが被印刷媒体に付着する前に吸収体により吸収される可能性を低減できる。
【0010】
第一態様において、前記吸収体は、前記液体を吸収した状態で、前記吐出方向において前記支持板と前記ノズル面との間に位置してもよい。
【0011】
この場合、印刷装置は吸収体が液体を吸収した状態でも、ノズル面から吐出されたインクが被印刷媒体に付着する前に吸収体により吸収される可能性を低減できる。
【0012】
第一態様の印刷装置は、前記ノズル面を払拭するワイパを備え、前記吸収体は、前記ワイパよりも前記吐出方向と反対側に位置してもよい。
【0013】
この場合、印刷装置は吸収体に吸収された液体をワイパがノズル面に移す可能性を低減できる。
【0014】
第一態様において、前記吸収体は、前記吐出方向と交差する方向であり、前記ワイパにより前記ノズル面が払拭される払拭方向の上流側および下流側の少なくとも一方に設けられてもよい。
【0015】
この場合、印刷装置はワイパから飛散する液体を吸収体により吸収できる。
【0016】
第一態様において、前記プラテンは、前記ノズル面に対して副走査方向に相対移動し、前記吸収体は、前記ノズル面に対して副走査方向側に設けられてもよい。
【0017】
この場合、印刷装置はプラテンが副走査方向に相対移動する場合において液体を吸収体により吸収できる。
【0018】
第一態様において、前記吸収体は、前記支持板に対して交換可能に設けられてもよい。
【0019】
この場合、吸収体に吸収された液体が被印刷媒体に落下する可能性を、吸収体の交換により低減できる。
【0020】
第一態様の印刷装置は、前記吸収体を保持する保持部材を備え、前記保持部材および前記支持板のうち一方に磁石が設けられ、前記保持部材および前記支持板のうち他方は、前記磁石に吸着される吸着部を有してもよい。
【0021】
この場合、印刷装置のユーザは、吸収体を簡単に交換できる。
【0022】
第一態様において、前記支持板は、前記支持板に対する前記吸収体の主走査方向または副走査方向の位置を位置決めする位置決め部を備えてもよい。
【0023】
吸収体が支持板に対して位置決めされない場合、取り付けられた吸収体と支持板との位置関係が変化することで、吸収体と支持板の取り付けの関係に不均衡が生じる場合がある。この場合、支持板に対する吸収体の取り付けが不安定になる。印刷装置において、位置決め部により吸収体が位置決めされることで、吸収体と支持板の取り付けの関係に不均衡が生じず、吸収体は安定して支持板に取り付けられる。
【0024】
第一態様の印刷装置は、前記吸収体が前記支持板に取り付けられる取付位置に案内する案内部と、前記吸収体が前記取付位置とは異なる位置で前記支持板に取り付けられることを規制する規制部とを備えてもよい。
【0025】
この場合、案内部により案内される吸収体が取付位置と異なる位置で支持板に取り付けられる可能性を低減できる。
【0026】
第一態様の印刷装置は、前記印刷装置内部の領域のうち、前記ヘッドが前記プラテンに載置された前記被印刷媒体にインクを吐出する領域である印刷領域以外の領域において、前記吸収体および前記保持部材の少なくとも一方から前記液体を逃す逃し部材を備えてもよい。
【0027】
この場合、吸収体および保持部材の少なくとも一方に付着した液体を逃がし部材により逃すことで、印刷装置は液体が被印刷媒体を汚す可能性を低減できる。
【0028】
第一態様の印刷装置は、前記吸収体を保持する保持部材を備え、前記印刷装置内部の領域のうち、前記ヘッドが前記プラテンに載置された前記被印刷媒体にインクを吐出する領域である印刷領域以外の領域において、前記吸収体および前記保持部材の少なくとも一方から前記液体を逃す逃し部材を備えてもよい。
【0029】
この場合、吸収体および保持部材の少なくとも一方に付着した液体を逃がし部材により逃すことで、印刷装置は液体が被印刷媒体を汚す可能性を低減できる。
【0030】
第一態様の印刷装置は、前記ノズル面に密着するキャップを備え、前記逃し部材は、前記ノズル面に前記キャップが密着する場合に、前記吸収体と前記ノズル面との隙間に配置されてもよい。
【0031】
この場合、キャップがノズル面に密着する間、吸収体とノズル面との間に配置される逃し部材により、吸収体および保持部材の少なくとも一方に付着した液体を逃し部材を介して逃すことができる。
【0032】
本発明の第二態様に係る吸収体は、被印刷媒体が載置されるプラテンと、ノズル面を有し、前記ノズル面から吐出方向にインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持する支持板とを備える印刷装置に設けられる吸収体であって、前記吸収体は、前記支持板の前記吐出方向側に設けられ、前記プラテンに対して露出し、かつ液体を吸収することを特徴とする。
【0033】
第二態様は、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0034】
第二態様の吸収体は、前記支持板に対して交換可能であり、前記吸収体を保持する保持部材を備えてもよい。
【0035】
この場合、吸収体は保持部材に保持されるので、例えば可撓性を示す材質等の多様な材質の吸収体を印刷装置に対して交換可能になる。
【0036】
第二態様において、前記保持部材の端の一部に前記保持部材と異なる中間部材が設けられてもよい。
【0037】
この場合、中間部材は吸収体を交換する場合において、保持部材の端部とノズル面とが接触する可能性を中間部材により低減できる。
【0038】
前記中間部材は、前記吸収体の一部であってもよい。
【0039】
この場合、中間部材を吸収体により形成させることができるので、中間部材として別部材を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図4】吸収器具7が取り付けられていない状態のキャリッジ30の斜視図である。
【
図5】吸収器具7が取り付けられた状態のキャリッジ30の斜視図である。
【
図7】第2基準位置に位置するキャリッジ30周辺の斜視図である。
【
図8】吸収器具7が取付位置と異なる位置に位置する状態の斜視図である。
【
図9】吸収器具7が取付位置に位置する状態の斜視図である。
【
図10】第2キャップ41B、42Bがノズル面57B、58Bを被覆している状態の斜視図である。
【
図11】第1基準位置にあるキャリッジ30とワイプ機構6との位置関係を示す図である。
【
図12】第1ワイパー60Aがノズル面58Aを払拭する状態を示す図である。
【
図13】第2ワイパー60Bがノズル面58Bを払拭する状態を示す図である。
【
図14】払拭動作が完了した後のキャリッジ30とワイプ機構6との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の一実施形態である印刷装置1を説明する。
図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、及び左上方が、各々、印刷装置1の上方、下方、前方、後方、右方、及び左方である。なお、本実施形態において図面に表される機械的要素は、実際のスケールを示すものとする。
【0042】
<印刷装置1の概要>
印刷装置1は、Tシャツ等の布帛及び紙等の被印刷媒体に、液体を吐出して印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷装置1は、例えば、液体として互いに異なる5種のインク(ホワイト、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタ)を下方へ向けて吐出することで、被印刷媒体にカラー画像を印刷する。
【0043】
以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」という。5色のインクのうち黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合「カラーインク」という。白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「インク」という。白インクは画像の白色を表す部分として、またはカラーインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは、被印刷媒体に直接、または白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0044】
図1に示すように、印刷装置1は、筐体11、プラテン12、プラテン駆動機構14、装着部16等を備える。筐体11は箱状であり、前面に開口部を有する。以下では、筐体11内部の領域を印刷装置1内部の領域といい、筐体11外部の領域を印刷装置1外部の領域という。
【0045】
プラテン駆動機構14は、プラテンモータ(非図示)の駆動によりプラテン12を移動させる副走査駆動部(非図示)を内蔵する。プラテン12は、平面視長方形状の板状である。プラテン12の上面に被印刷媒体が載置される。筐体11の右側に装着部16が設けられる。装着部16にはカートリッジ16Aが接続される。カートリッジ16A内に収容された液体は後述するヘッド31、32に供給される。
【0046】
図2に示すように、筐体11(
図1参照)の内部に、枠体20、ガイドシャフト21A、21B、キャリッジ30、キャップ機構40、洗浄アッセンブリ5が設けられる。枠体20は格子状の構造体である。枠体20は、ガイドシャフト21A、21Bを上端で支持する。枠体20は、左右方向中央、且つ、上下方向においてガイドシャフト21A、21Bよりも下側で、プラテン駆動機構14を支持する。
【0047】
ガイドシャフト21A、21Bは、左右方向に延びる。ガイドシャフト21A、21Bは、前後方向に間隔を空けて、互いに平行に配置される。ガイドシャフト21A、21Bは、キャリッジ30を左右方向(以下、主走査方向ともいう)に移動可能に支持する。
図2、
図3は、キャリッジ30が右端まで移動した状態を示す。キャリッジ30は、インクを吐出するヘッド31、32(
図3参照。以下、夫々を区別しない場合、ヘッド3と総称する)を含む。本実施形態において、ヘッド3は、圧電素子を有する、但し、ヘッド3が、インクを吐出する機構として圧電素子の変わりにヒータを有してもよい。ガイドシャフト21Aに沿って設けられた駆動ベルト210は、主走査モータ(非図示)の駆動により、主走査方向に移動する。キャリッジ30は駆動ベルト210に連結し、駆動ベルト210により主走査方向に移動する。ガイドシャフト21A、21Bにより前後方向から挟まれる領域は、キャリッジ30の移動経路に対応する。
【0048】
プラテン駆動機構14は、ガイドレール14A、14Bを上面に有する。ガイドレール14A、14Bは、前後方向に延びる。ガイドレール14A、14Bは、左右方向に間隔を空けて、互いに平行に配置される。ガイドレール14A、14Bは、プラテン12を前後方向(以下、副走査方向ともいう)に移動可能に支持する。左右方向においてガイドレール14A、14Bの間に位置する領域は、プラテン12の移動経路に対応する。プラテン12は、プラテンモータの駆動によりキャリッジ30に対して前後方向に移動する。
【0049】
図3に示すように、ガイドレール14A、14Bに沿って移動するプラテン12の移動経路は、ガイドシャフト21A、21Bに沿って移動するキャリッジ30の移動経路の主走査方向における中央部の下方を、前後方向に横切る。以下、プラテン12の移動経路が、上下方向においてキャリッジ30の移動経路と交わる領域を、印刷領域20Rという。印刷領域20Rは、左右方向において印刷装置1内部の領域の中央に位置する。
【0050】
枠体20は枠22A、22Bを備える。枠22A、22Bは、前後方向に延びる。枠22A、22Bはガイドシャフト21A、21Bの下側に配置される。枠22Aは、印刷領域20Rの右側に配置される。枠22Bは、印刷領域20Rの左側に配置される。枠22Bの左側、且つ、キャリッジ30の移動経路の下側には、キャップ機構40及び洗浄アッセンブリ5が設けられる。キャップ機構40は、洗浄アッセンブリ5に対して左側に配置される。
【0051】
印刷装置1は、プラテン12により被印刷媒体を副走査方向に搬送させながら、キャリッジ30を主走査方向に往復移動させ。この時、印刷領域20Rにあるプラテン12に載置された被印刷媒体にヘッド3からインクが吐出されることにより、被印刷媒体への印刷が行われる。
【0052】
<キャリッジ30>
図3に示すように、キャリッジ30は、ヘッド31、32、支持板34を有する。ヘッド31、32は、それぞれ支持板34に支持される。支持板34の詳細な説明は後述する。ヘッド31は、構造が共通する第1ヘッド31A及び第2ヘッド31Bを有する。第1ヘッド31Aは、第2ヘッド31Bに対して右側に間隔を空けて配置される。
【0053】
図4に示すように、第1ヘッド31Aは、突出部55Aを有する。第2ヘッド31Bは、突出部55Bを有する。突出部55A、55Bは支持板34よりも下方に突出する。突出部55A、55Bの形状はそれぞれ直方体である。突出部55A、55Bの下面には、ノズル面57A、57Bがそれぞれ形成される。ノズル面57A、57Bの夫々の上下方向の位置は一致する。ノズル面57A、57Bには複数のノズル(非図示)がそれぞれ設けられる。複数のノズルは開口であり、インクを下方に吐出する。
【0054】
図3に示すように、ヘッド32は、第1ヘッド32A及び第2ヘッド32Bを有する。第1ヘッド32Aは、第1ヘッド31Aの前方に位置する。第2ヘッド32Bは、第2ヘッド31Bの前方に位置する。第1ヘッド32Aは、第2ヘッド32Bに対して右側に間隔を空けて配置される。
【0055】
図4に示すように、第1ヘッド32Aは、突出部56Aを有する。第2ヘッド32Bは、突出部56Bを有する。突出部56A、56Bは支持板34よりも下方に突出する。突出部56A、56Bの形状はそれぞれ直方体である。突出部56A、56Bの下面には、ノズル面58A、58Bがそれぞれ形成される。上下方向において、ノズル面58A、58Bの位置はノズル面57A、57Bの位置とそれぞれ一致する。ノズル面57A、57Bには複数のノズル(非図示)がそれぞれ設けられる。複数のノズルは開口であり、インクを下方に吐出する。以下、
図3に示すように、第1ヘッド31A、32Aを区別しない場合、第1ヘッド3Aと総称する。第2ヘッド31B、32Bを区別しない場合、第2ヘッド3Bと総称する。
【0056】
<キャップ機構40>
図3に示すように、キャップ機構40は、ヘッド3を覆うキャップ41、42を有する。以下、キャップ41、42を区別しない場合、キャップ4と総称する。キャップ機構40は、キャップ4を支持する支持部40Aを有する。支持部40Aは、キャップ駆動部(非図示)により上下動可能である。キャップ41は、第1キャップ41A及び第2キャップ41Bを有する。キャップ42は、第1キャップ42A及び第2キャップ42Bを有する。
【0057】
図2に示すように、第1キャップ41Aは、枠体411A、被覆部414Aを有する。枠体411Aは、上部及び下部が開口する角筒状である。平面視において、枠体411Aの内側の大きさは突出部55A(
図4参照)の大きさと同じである。枠体411Aは、突出部412A、413Aを有する。突出部412Aは、枠体411Aの左後端部である。突出部413Aは、枠体411Aの左前端部である。突出部412A、413Aの上端は、上下方向において被覆部414Aの上端よりも上方にそれぞれ位置する。枠体411Aの突出部412A、413A以外の上端は、上下方向において被覆部414Aの上端よりも下方に位置する。被覆部414Aは、枠体411Aの内側に収容される。被覆部414Aは、上部及び下部が開口する。平面視において、被覆部414Aの内側の大きさはノズル面57A(
図4参照)の大きさと同じである。第2キャップ41B、第1キャップ42A、及び第2キャップ42Bの構造は、第1キャップ41Aと共通する。
【0058】
キャリッジ30が移動経路の左端まで移動した状態で、第1ヘッド31Aの下方に第1キャップ41Aが位置する。第2ヘッド31Bの下方に第2キャップ41Bが位置する。第1ヘッド32Aの下方に第1キャップ42Aが位置する。第2ヘッド32Bの下方に第2キャップ42Bが位置する。以下、移動経路の左端まで移動したキャリッジ30の位置を、第1基準位置という。
【0059】
<洗浄アッセンブリ5>
図3に示すように、洗浄アッセンブリ5は、主走査方向において、キャップ機構40と枠22Bとの間に位置する。洗浄アッセンブリ5は、洗浄液槽51、ワイプ機構6を有する。洗浄液槽51は、洗浄液を収容する。洗浄液槽51は、箱状である。洗浄液槽51の上部には、開口52A、52Bが設けられる。
【0060】
<ワイプ機構6>
図2に示すように、ワイプ機構6は第1ワイパー60A、第2ワイパー60Bをそれぞれ2つずつ有する。2つの第1ワイパー60A及び2つの第2ワイパー60Bのそれぞれは、洗浄液槽51の内部に収容される(
図11参照)。2つの第1ワイパー60A及び2つの第2ワイパー60Bのそれぞれは、洗浄液槽51の内部を左右方向に延びる軸周りに回動可能である。2つの第1ワイパー60Aは、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。2つの第1ワイパー60Aのうち、前側の第1ワイパー60Aは、
図4に示すノズル面58Aを払拭する。後側の第1ワイパー60Aは、
図4に示すノズル面57Aを払拭する。
【0061】
2つの第2ワイパー60Bは、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。2つの第2ワイプ機構6Bのうち、前側の第2ワイパー60Bは、前側の第1ワイパー60Aの左前側に設けられる。前側の第2ワイプ機構6Bは、
図4に示すノズル面58Bを払拭する。後側の第2ワイパー60Bは、後側の第1ワイパー60Aの左前側に設けられる。後側の第1ワイプ機構6Aは、
図4に示すノズル面57Bを払拭する。
【0062】
図2に示すように、第1ワイパー60Aは、第1フォームワイパー62A、及び第1ゴムワイパー63Aを有する。第1フォームワイパー62Aは前後方向に長い板状を有し、左右方向と直交する。第1フォームワイパー62Aは、例えば、発泡樹脂等の多孔質材料からなるワイパーであり、吸水性を有する。第1ゴムワイパー63Aは、第1フォームワイパー62Aに対して右方に配置される。第1ゴムワイパー63Aはゴム製である。
【0063】
図2に示すように、第2ワイパー60Bは、第2フォームワイパー62B、及び第2ゴムワイパー63Bを有する。第2フォームワイパー62Bは第1フォームワイパー62Aと同一材料により形成され、同一形状を有する。第2ゴムワイパー63Bは第1ゴムワイパー63Aと同一材料により形成され、同一形状を有する。
【0064】
第1ワイパー60A及び第2ワイパー60Bのそれぞれは、回動により接触位置と非接触位置との間を移動する。
図2に示すように、第1ワイパー60Aの接触位置は、第1フォームワイパー62A及び第1ゴムワイパー63Aが開口52Aから上方に突出する位置である。第2ワイパー60Bの接触位置は、第2フォームワイパー62B及び第2ゴムワイパー63Bが開口52Bから上方に突出する位置である。第1ワイパー60Aの非接触位置は、第1フォームワイパー62A及び第1ゴムワイパー63Aが接触位置から洗浄液槽51の内部の軸周りに180°回転した位置である(
図11参照)。第2ワイパー60Bの非接触位置は、第2フォームワイパー62B及び第2ゴムワイパー63Bが接触位置から洗浄液槽51の内部の軸周りに180°回転した位置である(
図11参照)。第1ワイパー60Aが非接触位置に位置するとき、第1フォームワイパー62A及び第1ゴムワイパー63Aは、開口52Aから上方に突出しない。第2ワイパー60Bが非接触位置に位置するとき、第2フォームワイパー62B及び第2ゴムワイパー63Bは、開口52Bから上方に突出しない。
【0065】
<支持板34>
図2~
図4に示すように、支持板34はヘッド3を、下方から支持する。支持板34の前端は、ガイドシャフト21Aにより主走査方向に移動可能に支持される。支持板34の後端は、ガイドシャフト21Bにより主走査方向に移動可能に支持される。
【0066】
支持板34は、例えばアルミニウム等の非磁性を示す金属からなる。
図4に示すように、支持板34は、板部35A、35B、35C、及び板部36A、36Bを備える。板部35A、35B、35Cは、前後方向に延びる平板である。板部35A、35B、35Cは、左右方向に間隔を空けて、互いに平行に右から順に配置される。
【0067】
板部36A、36Bは、左右方向に延びる平板である。板部36A、36Bは、前後方向に間隔を空けて、互いに平行に後から順に配置される。板部36Aの前端部は、板部35A、35B、35Cの後端部と接続する。板部36Bの後端部は、板部35A、35B、35Cの前端部と接続する。
【0068】
支持板34は、上下方向に貫通する孔37A、37Bを有する。孔37Aは、板部35Aの左端部、板部35Bの右端部、板部36Aの前端部、及び板部36Bの後端部に囲まれる空間である。孔37Bは、板部35Bの左端部、板部35Cの右端部、板部36Aの前端部、及び板部36Bの後端部に囲まれる空間である。突出部55A、56Aは、孔37Aを挿通する。ノズル面57A、58Aは、上下方向において支持板34よりも下側に配置される。突出部55B、56Bは、孔37Bを挿通する。ノズル面57B、58Bは、上下方向において支持板34よりも下側に配置される。
【0069】
支持板34は、磁石38A~38F、位置決め部34A、34Bを備える。磁石38Aは板部36Aの下側、且つ板部35Aに対して後側に設けられる。磁石38Bは板部36Bの下側、且つ板部35Aに対して前側に設けられる。磁石38A、38Bは、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。磁石38C、38Dは、板部35Bの下側、且つ板部35Bの前後方向の中央部に前後方向に並べられる。磁石38Dは、磁石38Cよりも前側に設けられる。磁石38Eは板部36Aの下側、且つ板部35Cに対して後側に設けられる。磁石38Fは板部36Bの下側、且つ板部35Cに対して前側に設けられる。磁石38E、38Fは、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。
【0070】
位置決め部34Aは、板部35Aから下方に延びる。位置決め部34Aの個数は限定されないが、本実施形態において位置決め部34Aの個数は2つであり、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。左右方向において、2つの位置決め部34Aの位置は磁石38A、38Bよりも右側にそれぞれ配置される。
【0071】
位置決め部34Bは、板部35Cから下方に延びる。位置決め部34Bの個数は限定されないが、本実施形態において位置決め部34Bの個数は2つであり、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。左右方向において、2つの位置決め部34Bの位置は磁石38E、38Fよりも左側にそれぞれ配置される。本実施形態では、2つの位置決め部34Bは何れも板部35Cの左端部に配置される。位置決め部34Aと位置決め部34Bとの左右方向の間隔は、後述する吸収器具7の左右方向の大きさと等しい。
【0072】
<吸収器具7>
図5に示すように、支持板34の下側には、吸収器具7が設けられる。吸収器具7は、プラテン12(
図1参照)に対して露出する。ここで「露出する」とは、被印刷媒体が載置されていない状態で、上下方向において、プラテンと、吸収器具7との間に遮るものがない状態を示す。吸収器具7は、保持部材71及び吸収体72を備える。保持部材71は吸収体72を保持する。保持部材71は、前後方向及び左右方向に延びる平板である。保持部材71は、例えばフェライト系ステンレス鋼等の磁性を示す金属からなる。吸収器具7は、保持部材71が磁石38A~38Fに吸着されることで、支持板34に取り付けられる。逆に、吸収器具7は、保持部材71が磁石38A~38Fから取り外されることで、支持板34から取り外される。すなわち、吸収器具7は、支持板34に対して交換可能に設けられる。
【0073】
図6(A)に示すように、保持部材71は、切り欠き部711A、711B、712A、712B、および孔713A、713B、714A、714Bを有する。切り欠き部711Aは保持部材71の左後端が切り欠かれて形成される。切り欠き部711Bは保持部材71の左前端が切り欠かれて形成される。切り欠き部712Aは保持部材71の後端から前方に切り欠かれて形成される。切り欠き部712Bは保持部材71の前端から後方に切り欠かれて形成される。
【0074】
孔713A、713B、714A、714Bはそれぞれ保持部材71を上下方向に貫通する。孔713A、714Aは互いに前後方向に間隔を空けて配置される。713B、714Bは互いに前後方向に間隔を空けて配置される。713B、714Bは孔713A、714Aの左前側にそれぞれ配置される。
図5に示すように、吸収器具7が支持板34に取り付けられた状態で、孔713Aに突出部55Aが挿通する。孔713Bに突出部55Bが挿通する。孔714Aに突出部56Aが挿通する。孔714Bに突出部56Bが挿通する。
【0075】
図6(B)に示すように、吸収体72は、保持部材71の下側に設けられる。吸収体72は、発泡樹脂等の多孔質材料であり、吸水性を有する。吸収体72は、例えばヘッド3から吐出されたインクの一部で形成されるミスト、洗浄液槽51に収容された洗浄液のうちワイプ機構6により跳ね上げられた飛沫を吸収する。液体を吸収した後の吸収体72は、液体を吸収する前の吸収体72と比較して、自重による変形をしておらず、且つ体積が過剰に増加していない。本実施形態では、吸収体72は、メラミン樹脂の多孔質材料で形成される。吸収体72は、貼り付け材(非図示)を介して保持部材71下側の全面に貼り合わされる。貼り付け材は、例えば両面テープである。
【0076】
吸収体72は、保持部材71の左端71Aで一部が折り返される。折り返された吸収体72Aは、保持部材71の上側に貼り付け材を介して貼り付けられる。吸収体72Aで覆われるので、保持部材71の左端71Aは支持板34およびノズル面57Aと接触しない。
【0077】
吸収体72は、孔723A、723B、724A、724Bを有する。孔723A、723B、724A、724Bはそれぞれ吸収体72を上下方向に貫通する。吸収体72が保持部材71に貼り合わされた状態で、吸収体72の孔723A、723B、724A、724Bの位置は、保持部材71の孔713A、713B、714A、714Bにそれぞれ対応する。すなわち、吸収器具7が支持板34に取り付けられた状態で、孔723Aに突出部55Aが挿通する。孔723Bに突出部55Bが挿通する。孔724Aに突出部56Aが挿通する。孔724Bに突出部56Bが挿通する。以下では、孔713A、723Aを合わせて孔73Aといい、孔713B、723Bを合わせて孔73Bといい、孔714A、724Aを合わせて孔74Aといい、孔714B、724Bを合わせて孔74Bという。吸収器具7が支持板34に取り付けられた状態で、ノズル面57A、57B、58A、58Bの前側、後側、右側、及び左側には、吸収体72が配置される。
【0078】
<補助部材23A、23B>
図7~
図9に示すように、補助部材23A、23Bは、吸収器具7を支持板34に取り付ける際に、吸収器具7を案内する。補助部材23A、23Bは、枠22Aにそれぞれ設けられる。補助部材23A、23Bは、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。補助部材23Aは、補助部材23Bの後側に設けられる。補助部材23Bの構造は、補助部材23Aと前後対称である。以下では、補助部材23Aの構造のみ説明し、補助部材23Bの構造の説明を省略する。
【0079】
図7、
図8に示すように、補助部材23Aは板部231A(
図8(B)参照)、232A、233A、234A、235A、236A、237Aを有する。
図8(B)に示すように、板部231Aは、枠22Aの上側に固定される。板部232Aは、板部231Aの右端から右上方に延びる。
図7に示すように、板部233Aは、板部232Aの右端から右下方に延びる。板部233Aの右端は、左右方向において枠22Aの右端よりも右側に位置する。板部234Aは、板部233Aの右端から右下方に延びる。板部234Aの右端は、上下方向において板部233Aの右端よりも下側に位置する。
【0080】
板部235Aは、板部233Aの後端から上方に延びる。板部236Aは、板部235Aの上端から前方に延びる。板部233Aと板部236Aとの上下方向における間隔は一定である。板部236Aの前端は、前後方向において板部233Aの前端よりも後側に位置する。板部236Aの前後方向の長さは、保持部材71の切り欠き部712A、712B(
図6参照)の前後方向の長さよりも短い。板部237Aは、板部236Aの前端から上方に延びる。
【0081】
図8(B)に示すように、板部237Aの上端は、上下方向においてノズル面58Bの上端よりも上側に位置する。板部237Aの右端は、左右方向においてノズル面58Bの右端よりも右側に位置する。
【0082】
補助部材23Bにおける板部233B、235B、236Bは、それぞれ、補助部材23Aの板部233A、235A、236Aに相当する。
【0083】
<吸収器具7の取り付け>
吸収器具7は、第2基準位置に位置する状態で、補助部材23A、23Bを用いて支持板34に取り付けられる。第2基準位置は、キャリッジ30の移動経路における印刷領域20Rよりも右側の位置である。キャリッジ30が第2基準位置に位置する状態で、支持板34に取り付けられる吸収器具7の位置を、取付位置という。
【0084】
図8に示すように、吸収体72が保持部材71の下側に配置された状態で、ユーザは吸収器具7を補助部材23A、23Bに向けて左方に移動させる。ユーザは吸収器具7の左端部を右方から補助部材23A、23Bに挿入する。吸収器具7の左後端部が板部233A、235A、236Aで囲まれた空間に挿入され、吸収器具7の左前端部が吸収器具7の前部を補助部材23Bにおける板部233B、235B、236Bで囲まれた空間に挿入される。
【0085】
図8(B)に示すように、切り欠き部711A、711Bが位置決め部34Bと接触する吸収器具7の位置が取付位置である。吸収器具7が取付位置と異なる位置に位置する場合、ユーザが吸収器具7を支持板34に向けて上方に移動させると、板部236A、236Bに吸収器具7が接触する。この場合において、ユーザは吸収器具7を支持板34に取り付けることができない。
【0086】
図9に示すように、吸収器具7が取付位置に位置する場合、板部236A、236Bの下方に切り欠き部712A、712Bが配置される。従って、ユーザが吸収器具7を支持板34に向けて上方に移動させるときも、板部236A、236Bに吸収器具7は接触しない。吸収器具7が支持板34に向けて上方に移動した場合、保持部材71が磁石38A~38Fに吸着され、吸収器具7は支持板34に取り付けられる。
【0087】
<キャップ4によるヘッド3の被覆>
印刷装置1は、被印刷媒体への印刷が行われていない間、キャリッジ30を第1基準位置に配置する。
図10に示すように、印刷装置1は、支持部40Aを上方に移動させる。支持部40Aが上方に移動するとき、第2キャップ41B、42Bのそれぞれの突出部412A、413Aの右面は、突出部55B、56Bの左面と接触する。支持部40Aがさらに上方に移動すると、突出部412A、413Aは、孔73B、74Bの夫々の内面と突出部55B、56Bの側面の間の隙間45に挿通する。第2キャップ41B、42Bのそれぞれの被覆部414Aは、突出部412A、413Aに案内されてノズル面57B、58Bとそれぞれ上下方向に対向する。
【0088】
図示しないが、支持部40Aが上方に移動するとき、第1キャップ41A、42Aの夫々の突出部412A、413Aの右面は、突出部55A、56Aの左面と接触する。支持部40Aがさらに上方に移動すると、突出部412A、413Aは、孔73A、74Aの夫々の内面と突出部55A、56Aの側面との間の隙間を挿通する。第1キャップ41A、42Aのそれぞれの被覆部414Aは、突出部412A、413Aに案内されてノズル面57A、58Aとそれぞれ上下方向に対向する。
【0089】
第1キャップ41Aはノズル面57A(
図5参照)を覆う。第1キャップ42Aはノズル面58A(
図5参照)を覆う。第2キャップ41Bはノズル面57Bを覆う。第2キャップ42Bはノズル面58Bを覆う。キャップ4は、ノズル面57A、57B、58A、58Bをそれぞれ覆うことで、被印刷媒体への印刷が行われていない間にインクが乾燥することを抑制する。第1キャップ41A、42A、第2キャップ41B、42Bがノズル面57A、58A、57B、58Bをそれぞれ覆った状態で、突出部412A、413Aは、保持部材71、または孔74Aの内面に付着した液体は突出部412A、413Aと接触する。突出部412A、413Aと接触した液体は自重により突出部412A、413Aに沿って保持部材71、吸収体72から下方に流れる。
【0090】
<ワイプ機構6による払拭動作>
図11~
図14を参照し、ワイプ機構6によるノズル面57A、57B、58A、58Bの払拭動作を説明する。
図11~
図14では、ノズル面58A、58Bの払拭動作のみ図示するが、ノズル面57A、57Bについてもノズル面58A、58Bと同様に払拭される。以下、2つの第1ワイパー60A及び2つの第2ワイパー60Bのうち、それぞれの前側の第1ワイパー60A、第2ワイパー60Bによるノズル面57A、57Bの払拭動作を説明する。
【0091】
図11に示すように、印刷装置1は、第1ワイパー60A及び第2ワイパー60Bを非接触位置に移動させる。印刷装置1は、第1基準位置にあるキャリッジ30を、ワイプ機構6に向けて右方へ移動させる(矢印Y13)。
【0092】
図12(A)に示すように、印刷装置1は、第1ワイパー60Aを非接触位置から接触位置に移動させる。なお、第2ワイパー60Bは、非接触位置のまま保持される。第1ワイパー60Aは、非接触位置から上方に向けて移動する際、洗浄液の液面を通過する。第1ワイパー60Aが接触位置にあり、ノズル面58Aと接触していない状態で、上下方向において、下から順にノズル面58Aの上下位置H1、第1ワイパー60Aの先端の上下位置H2、吸収体72の下端の位置H3が並ぶ。吸収体72が液体を吸収した状態でも、位置H1、H2、H3の位置関係は変化しない。
【0093】
図12(B)に示すように、印刷装置1は、キャリッジ30を右方へ移動させる。(矢印Y23)。キャリッジ30の移動の過程で、接触位置にある第1ワイパー60Aの上方を第1ヘッド3Aが通過する。第1ワイパー60Aは、第1フォームワイパー62A及び第1ゴムワイパー63Aの順でノズル面58Aに接触する。第1ワイパー60Aは、ノズル面58Aに対して右方から左方に払拭する。
【0094】
図13(A)に示すように、印刷装置1は、ノズル面58Aを払拭した後、第1ワイパー60Aを接触位置から非接触位置に移動させる。第1ワイパー60Aは、接触位置から下方に向けて移動する際、洗浄液の液面を通過する。印刷装置1は、第2ワイパー60Bを非接触位置から接触位置に移動させる。第2ワイパー60Bは、非接触位置から上方に向けて移動する際、洗浄液の液面を通過する。
【0095】
図13(B)に示すように、印刷装置1は、キャリッジ30を右方へ移動させる(矢印Y51)。キャリッジ30の移動の過程で、第2接触位置にある第2ワイパー60Bの上方を第2ヘッド3Bが通過する。第2ワイパー60Bは、第2フォームワイパー62B及び第2ゴムワイパー63Bの順でノズル面57B、58Bに接触する。第2ワイパー60Bは、ノズル面57B、58Bに対して右方から左方に払拭する。
【0096】
図14に示すように、印刷装置1は、ノズル面57B、58Bを払拭した後、第2ワイパー60Bを接触位置から非接触位置に移動させる。第2ワイパー60Bは、接触位置から下方に向けて移動する際、洗浄液の液面を通過する。印刷装置1は、キャリッジ30の移動を停止する。
【0097】
<本実施形態の作用、効果>
印刷装置1において、支持板34の下側に吸収器具7が設けられる。吸収器具7は、プラテン12に対して露出する。吸収器具7は、吸収体72を備える。吸収体72は、吸水性を有する。印刷装置1は、吸収体72が液体(例えば、ミストとなったインク)を吸収することで、プラテン12に載置された被印刷媒体に液体が落下する可能性を低減できる。従って被印刷媒体が汚れる可能性を低減できる。
【0098】
ノズル面57A、57B、58A、58Bは、上下方向において支持板34よりも下側に位置する。上下方向において、吸収体72の下端の位置H3(H6)は、ノズル面57A、58Aの上下位置H1、及びノズル面57B、58Bの上下位置H4よりも上側に位置する。従って、印刷装置1はノズル面57A、57B、58A、58Bのノズルから吐出されたインクが被印刷媒体に付着する前に吸収体72により吸収される可能性を低減できる。
【0099】
吸収体72は、液体を吸収する前後で自重による変形、及び体積の過剰な膨張をしない。従って、液体を吸収した状態でも、位置H3、H6とH1、H4の位置関係は変化しない。従って、印刷装置1は、吸収体72が液体を吸収した状態でも、ノズル面57A、57B、58A、58Bのノズルから吐出されたインクが被印刷媒体に付着する前に吸収体72により吸収される可能性を低減できる。
【0100】
上下方向において、位置H3、H6は、第1ワイパー60Aの先端の上下位置H2、及び第2ワイパー60Bの先端の上下位置H5よりも上側に位置する。従って、印刷装置1は吸収体72に吸収された液体を第1ワイパー60A又は第2ワイパー60Bがノズル面57A、57B、58A、58Bに移す可能性を低減できる。
【0101】
第1ワイパー60Aは、ノズル面57A、58Aに対して右方から左方に払拭する。第2ワイパー60Bは、ノズル面57B、58Bに対して右方から左方に払拭する。吸収体72は、ノズル面57A、57B、58A、58Bの右側及び左側に配置される。従って、印刷装置1はワイプ機構6から飛散する液体を吸収体72により吸収できる。
【0102】
プラテン12は、プラテンモータの駆動によりキャリッジ30に対して前後方向(副走査方向)に移動する。吸収体72は、ノズル面57A、57B、58A、58Bの前側及び後側に配置される。従って、印刷装置1は、プラテン12が副走査方向に相対移動する場合において液体を吸収体72により吸収できる。
【0103】
吸収体72は、支持板34に対して交換可能に設けられる。従って、印刷装置1は、吸収体72に吸収された液体が被印刷媒体に落下する可能性を、吸収体72の交換により低減できる。
【0104】
保持部材71は吸収体72を保持する。保持部材71は、磁性を示す金属からなる。支持板34の下側には、磁石38A~38Fが設けられる。吸収体72は、保持部材71が磁石38A~38Fに吸着されることで、支持板34に取り付けられる。吸収体72は、保持部材71が磁石38A~38Fから取り外されることで、支持板34から取り外される。従って、ユーザは吸収体72を簡単に交換できる。
【0105】
支持板34は、位置決め部34A、34Bを備える。吸収体72が支持板34に取り付けられる際、切り欠き部711A、711Bと位置決め部34Bとが接触することで、吸収体72が支持板34に対して位置決めされる。吸収体72が支持板34に対して位置決めされない場合、吸収体72と支持板34との位置関係が変化することで、保持部材71を吸着する磁石38A~38Fに過剰な力がかかる場合がある。この場合、支持板34に対する吸収体72の取り付けが不安定になる。印刷装置1において、位置決め部34A、34Bにより吸収体72が位置決めされることで、吸収体72は安定して支持板34に取り付けられる。また、位置決め部34A、34Bのそれぞれは、吸収体72が支持板34に取り付けられた状態で、吸収器具7の左右方向(主走査方向)の移動を規制する。従って、吸収体72は、保持部材71が磁石38A~38Fから外れることなく、安定して支持板34に取り付けられる。
【0106】
支持板34に対する吸収器具7の取り付けの際、ユーザは吸収器具7の後部を補助部材23Aにおける板部233A、235A、236Aで囲まれた空間に挿入する。ユーザは吸収器具7の前部を補助部材23Bにおける板部233B、235B、236Bで囲まれた空間に挿入する。吸収器具7が取付位置と異なる位置に位置する場合、板部236A、236Bは吸収器具7が支持板34に向けて上方に移動することを規制される。ユーザが吸収器具7を板部233A、233Bに沿って左上方に移動させることで、吸収器具7は取付位置に配置される。吸収器具7が取付位置に位置する場合、板部236A、236Bの下方に切り欠き部712A、712Bが配置される。従って、ユーザは板部236A、236Bに規制されることなく、吸収器具7を支持板34に向けて上方に移動させることができる。従って、印刷装置1は、板部233A、233Bに沿って移動される吸収体72が取付位置と異なる位置で支持板34に取り付けられる可能性を低減できる。
【0107】
キャップ4は、印刷装置1内部の領域のうち、印刷領域20Rよりも左側に設けられる。第1キャップ41Aの突出部412A、413Aは、支持板34、または吸収器具7の孔74Aの内面に付着した液体を受け、支持部40Aに向けて下方に逃す。吸収体72及び保持部材71の少なくとも一方に付着した液体を突出部412A、413Aにより逃すことで、印刷装置1は液体が被印刷媒体を汚す可能性を低減できる。
【0108】
突出部412A、413Aは、孔74A、75A、74B、75Bの内面とノズル面57A、58A、57B、58Bの側面の間の隙間45にそれぞれ配置される。従って、印刷装置1は、吸収器具7の孔74A、75A、74B、75Bの内面に付着した液体を突出部412A、413Aを介して逃すことができる。
【0109】
保持部材71は、前後方向及び左右方向に延びる平板である。保持部材71の左端71Aは吸収体72Aで覆われる。従って、保持部材71の左端71Aと支持板34、ノズル面57A等とが接触する可能性を低減できる。
【0110】
保持部材71の左端71Aは、吸収体72の一部が折り返されることで覆われる。保持部材71の左端71Aを覆う構成を吸収体72により形成させることができる。従って、保持部材71の左端71Aを覆う別部材を設ける必要がない。
【0111】
<変形例>
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。ヘッド3とプラテン12のそれぞれの移動機構は上記実施形態に限定されない。例えばヘッド3とプラテン12は、それぞれ、ローラ、ボールねじ等の移動機構によって移動してもよい。ヘッド3はラインヘッドでもよい。ヘッド3がキャップ4と第1ワイパー60Aと第2ワイパー60Bとプラテン12に対して左右方向に相対的に移動可能であればよい。つまり、キャリッジ30が枠体20に対して固定され、キャップ4と第1ワイパー60Aと第2ワイパー60Bとプラテン12が左右方向に移動可能に構成されてもよい。プラテン12が左右方向に移動可能な場合、キャップ4と第1ワイパー60Aと第2ワイパー60Bとプラテン12の一部、例えばキャップ4が左右方向に移動可能に構成されてもよい。プラテン12が枠体20に対して固定され、ヘッド3が前後方向に移動可能に構成されてもよい。
【0112】
キャップ機構40及び洗浄アッセンブリ5は、印刷装置1内部の領域のうち、印刷領域20Rよりも右側に設けられてもよい。キャップ機構40と洗浄アッセンブリ5との左右方向の位置関係は適宜変更してもよい。
【0113】
プラテン12とノズル面57A、57B、58A、58Bとは互いに左右方向に対向してもよいし、互いに前後方向に対向してもよい。例えばプラテン12とノズル面57A、57B、58A、58Bが互いに左右方向または前後方向に対向する場合、ヘッド3はプラテン12に対して上下方向に相対移動してもよい。
【0114】
印刷装置1は、第1ヘッド31A及び第2ヘッド31Bに加えて第3ヘッドを有してもよい。第1ヘッド31Aと第2ヘッド31Bとは、互いに異なる構造であってもよい。第1ヘッド31Aと第2ヘッド31Bとは、共通するインクを吐出してもよい。上記実施形態では、第1ヘッド32A及び第2ヘッド32Bの構造、吐出されるインクの種類、及び互いの位置関係は、ヘッド31の第1ヘッド31A及び第2ヘッド31Bと共通するが、これに限らない。例えば、ノズル面57A、57B、58A、58Bの上下方向の位置は、互いに異なってもよい。
【0115】
突出部412Aは枠体411A右後端部の上端から上方に突出してもよい。第1キャップ41Aは、突出部412A、413Aの他に、支持板34、または吸収器具7の孔74Aの内面に付着した液体を逃す部材を備えてもよい。突出部412A、413Aが液体を逃す方向は、下方に限定されない。
【0116】
吸収体72は、発泡樹脂等の多孔質材料に限らず、吸水性を有する不織布でもよい。不織布は液体を吸収した後、自重で垂れる場合があるので、上記実施形態のように液体を吸収する前後で自重による変形、及び体積の過剰な膨張をしない材料がより好ましい。
【0117】
吸収体72は支持板34に固定されてもよい。この場合、印刷装置1は、補助部材23A、23Bを備えなくてもよい。
【0118】
吸収体72は、支持板34に直接取り付けられてもよい。保持部材71は、熱硬化樹脂に磁性を示す金属がインサートされた構成でもよい。この構成の場合、保持部材71のうちインサートされた金属が磁石38A~38Fに吸着されることで、吸収器具7は支持板34に取り付けられる。この場合、インサートされた金属が本発明の「吸着部」に相当する。保持部材71は非磁性の金属で構成され、保持部材71の上側に磁石が設けられてもよい。この場合、支持板34は磁性を示す金属で構成されてもよい。
【0119】
吸収器具7は、例えば面ファスナーによる接着、ネジの締結等にて支持板34に取り付けられてもよい。
【0120】
吸収体72は、保持部材71下側の全面に配置されなくてもよい。吸収体72は、例えばノズル面57A、57B、58A、58Bの前側、後側、右側、及び左側の何れか一方側に配置されてもよい。
【0121】
保持部材71の左端71A以外の端部(例えば、右端部)が吸収体72Aで覆われてもよい。保持部材71の左端71Aは、吸収体72と異なる部材で覆われてもよい。保持部材71の左端71Aは、ゴム等の弾性部材で覆われてもよい。
【0122】
保持部材71が前端から前方または後端から後方に突出する凸部を備えてもよい。板部236A、236Bが凸部に対応する凹部を備えてもよい。吸収器具7が取付位置に配置された場合に、凸部が凹部を通過することで吸収器具7が支持板34に取り付けられてもよい。
【0123】
補助部材23A、23Bはキャリッジ30に設けられてもよい。この場合、印刷領域20Rに位置するプラテン12と干渉しないよう、補助部材23A、23Bは支持板34よりも下方の位置であり、吸収器具7の支持板34への取り付けを補助する補助位置と、支持板34よりも上方の退避位置とに移動できることが望ましい。
【0124】
<その他>
印刷装置1における下方が本発明の「吐出方向」に相当する。印刷装置1における左方が本発明の「払拭方向」に相当する。保持部材71が本発明の「保持部材」であり、磁性を示し、磁石38A~38Fに吸着される保持部材71全体が「吸着部」でもある。板部233A、235A、236Aで囲まれた空間、及び板部233B、235B、236Bで囲まれた空間が本発明の「案内部」に相当する。板部236A、236Bが本発明の「規制部」に相当する。突出部412A、413Aが本発明の「逃し部材」に相当する。突出部55A、55B、56A、56Bの前面、後面、右面、及び左面が本発明の「側面」に相当する。保持部材71の左端71Aが本発明の「保持部材の端縁の一部」に相当する。吸収体72Aが本発明の「中間部材」に相当する。
【符号の説明】
【0125】
1 印刷装置
3 ヘッド
4 キャップ
6 ワイプ機構
7 吸水器具
12 プラテン
20R 印刷領域
23A、23B 補助部材
34 支持板
57A、57B、58A、58B ノズル面
71 保持部材
72 吸収体
412A、413A 突出部