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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184245
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】発酵乾燥装置および発酵乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/06 20060101AFI20221206BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20221206BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20221206BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20221206BHJP
   C05F 17/95 20200101ALI20221206BHJP
   C05F 17/993 20200101ALI20221206BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20221206BHJP
   C05F 9/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C05F3/06 B
C02F11/02 ZAB
C02F11/13
B09B3/00 A
C05F17/95
C05F17/993
C05F7/00 301B
C05F9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091967
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(71)【出願人】
【識別番号】597150795
【氏名又は名称】中部エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】中久保 亮
(72)【発明者】
【氏名】石田 三佳
(72)【発明者】
【氏名】小島 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 友子
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA04
4D004BA04
4D004CA15
4D004CA19
4D004CA42
4D004CB04
4D004CB27
4D004CC07
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA11
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059BA03
4D059BA29
4D059BA44
4D059BD01
4D059BD24
4D059BJ03
4D059BJ15
4D059BK01
4D059CA08
4D059CC01
4D059CC03
4D059DA54
4D059DA56
4D059DA64
4D059EA10
4D059EB01
4D059EB10
4D059EB15
4D059EB16
4D059EB20
4H061AA03
4H061CC36
4H061CC42
4H061CC55
4H061EE66
4H061GG10
4H061GG14
4H061GG18
4H061GG43
4H061GG49
4H061LL02
(57)【要約】
【課題】発酵原料の投入後における発酵の遅延を抑制し、発酵を安定的に実施できる発酵乾燥装置および発酵乾燥方法を提供する。
【解決手段】発酵乾燥装置1は、送気手段6により容器2内に外気を導入し、かつ、排気手段9により容器2内から内気を排気しつつ、容器2内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置であって、任意の指標に基づいて、送気手段6により容器2内に導入される外気の量を制御する第1制御を行う第1制御手段と、発酵原料の投入タイミングから任意の期間、第1制御とは異なる第2制御で、送気手段6により容器2内に導入される外気の量を制御する第2制御手段とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、前記容器内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置であって、
前記発酵乾燥装置は、任意の指標に基づいて、前記送気手段により前記容器内に導入される外気の量を制御する第1制御を行う第1制御手段と、前記発酵原料の投入タイミングから任意の期間、前記第1制御とは異なる第2制御で、前記送気手段により前記容器内に導入される外気の量を制御する第2制御手段とを有することを特徴とする発酵乾燥装置。
【請求項2】
前記第1制御手段は、前記容器内に導入される外気の温度と量、前記容器内から排気される内気の温度と量に基づき算出される所定時間当たりの発酵熱量、または、前記容器内から排気される内気の温度を前記指標として外気の量を制御することを特徴とする請求項1記載の発酵乾燥装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記発酵原料の投入タイミングにおける前記容器内に導入される外気の量に基づいて、前記第2制御での外気の量を制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の発酵乾燥装置。
【請求項4】
前記第2制御手段は、前記第2制御での外気の量を、前記発酵原料の投入タイミングにおける前記容器内に導入される外気の量に固定することを特徴とする請求項3記載の発酵乾燥装置。
【請求項5】
前記第2制御手段は、前記第2制御の期間において取得される前記容器内から排気される内気の温度Tが、閾値Tthを超えた場合に、前記第2制御を終了することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の発酵乾燥装置。
【請求項6】
前記閾値Tthは、前記発酵原料の投入タイミングにおいて取得される前記容器内から排気される内気の温度をTとしたとき、T+α(-10<α<10)に設定されることを特徴とする請求項5記載の発酵乾燥装置。
【請求項7】
前記温度Tは、1分~180分の時間間隔で取得されることを特徴とする請求項5または請求項6記載の発酵乾燥装置。
【請求項8】
前記第2制御手段は、前記温度Tにかかわらず、前記発酵原料の投入タイミングから所定時間経過後に前記第2制御を終了することを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項記載の発酵乾燥装置。
【請求項9】
送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、前記容器内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置の発酵乾燥方法であって、
前記発酵乾燥方法は、任意の指標に基づいて、前記送気手段により前記容器内に導入される外気の量を制御する第1制御工程と、前記発酵原料の投入タイミングから任意の期間、前記第1制御工程とは異なる制御で、前記送気手段により前記容器内に導入される外気の量を制御する第2制御工程とを有することを特徴とする発酵乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜排泄物や食品残渣や下水汚泥などの有機性廃棄物を処理するための発酵乾燥装置および発酵乾燥方法に関する。なお、これらによって得られる発酵乾燥物は堆肥や化石燃料代替燃料などに利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜排泄物や、食品廃棄物、下水汚泥などの発酵原料の発酵・乾燥を行う装置として、微生物の発酵作用を利用した発酵乾燥装置が知られている。この装置は、円筒縦型のタンク形状であり、密閉容器内に投入された発酵原料に強制通気しつつ乾燥と発酵を行なっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、送気手段と、排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置が開示されている。この装置では、所定時間当たりの発酵熱量や蒸発水分量を発酵指標とし、この発酵指標に基づいて容器内に導入される外気の量を調整している。指標となる発酵熱量や蒸発水分量は、容器に導入する外気の温度と流量、および容器内から排出される内気の温度と流量に基づいて算出されている。
【0004】
特許文献1の発酵乾燥装置による入気量制御では、所定時間間隔で発酵熱量を算出し、任意の算出時の発酵熱量がその前回に算出された発酵熱量に対して、増加した場合には容器内に導入される外気の量を一定幅で増加させ、減少した場合には容器内に導入される外気の量を一定幅で減少させることが記載されている。この入気量制御は、容器内の温度が上昇する温度上昇期において有効であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-172272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発酵乾燥装置を用いた発酵乾燥処理では、容器上部の投入口から発酵原料が定期的(例えば1日毎)に投入される。投入される発酵原料は、外気温と同程度の温度であり、容器内の発酵途中の発酵乾燥物に比べて低温である。また、発酵原料投入の際に、外気が容器上部の空間に混入する。そのため、発酵原料の投入により、容器上部の温度が急激に低下し、それに伴って当該部分を通過する排気の温度が急激に低下する。この排気温度の低下は、発酵乾燥における微生物活性の低下による温度低下とは異なり、見かけの温度低下といえる。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の入気量制御では、排気温度の見かけの温度低下に伴って発酵熱量が急激に低下する。その結果、容器内に導入される外気の量が急激に低下し、発酵原料の投入後において発酵が遅延するおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発酵原料の投入後における発酵の遅延を抑制し、発酵を安定的に実施できる発酵乾燥装置および発酵乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発酵乾燥装置は、送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置であって、上記発酵乾燥装置は、任意の指標に基づいて、上記送気手段により上記容器内に導入される外気の量を制御する第1制御を行う第1制御手段と、上記発酵原料の投入タイミングから任意の期間、上記第1制御とは異なる第2制御で、上記送気手段により上記容器内に導入される外気の量を制御する第2制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
上記第1制御手段は、上記容器内に導入される外気の温度と量、上記容器内から排気される内気の温度と量に基づき算出される所定時間当たりの発酵熱量、または、上記容器内から排気される内気の温度を上記指標として外気の量を制御することを特徴とする。
【0011】
上記第2制御手段は、上記発酵原料の投入タイミングにおける上記容器内に導入される外気の量に基づいて、上記第2制御での外気の量を制御することを特徴とする。上記第2制御手段は、上記第2制御での外気の量を、上記発酵原料の投入タイミングにおける上記容器内に導入される外気の量に固定することを特徴とする。
【0012】
上記第2制御手段は、上記第2制御の期間において取得される上記容器内から排気される内気の温度Tが、閾値Tthを超えた場合に、上記第2制御を終了することを特徴とする。また、上記閾値Tthは、上記発酵原料の投入タイミングにおいて取得される上記容器内から排気される内気の温度をTとしたとき、T+α(-10<α<10)に設定されることを特徴とする。さらに、上記温度Tは、1分~180分の時間間隔で取得されることを特徴とする。
【0013】
また、上記第2制御手段は、上記第2制御の期間において取得される発酵熱量Hが、閾値Hthを超えた場合に、上記第2制御を終了してもよい。また、上記第2制御の期間において取得される上記容器の内容物の上部および中部の温度の平均値が所定温度以下となった場合に、上記第2制御を終了してもよい。
【0014】
上記第2制御手段は、上記温度Tにかかわらず、上記発酵原料の投入タイミングから所定時間経過後に上記第2制御を終了することを特徴とする。
【0015】
本発明の発酵乾燥方法は、送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置の発酵乾燥方法であって、上記発酵乾燥方法は、任意の指標に基づいて、上記送気手段により上記容器内に導入される外気の量を制御する第1制御工程と、上記発酵原料の投入タイミングから任意の期間、上記第1制御工程とは異なる制御で、上記送気手段により上記容器内に導入される外気の量を制御する第2制御工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発酵乾燥装置は、送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により容器内から内気を排気しつつ、容器内に投入される発酵原料を撹拌しながら発酵および乾燥させる発酵乾燥装置であって、任意の指標に基づいて、送気手段により容器内に導入される外気の量を制御する第1制御を行う第1制御手段と、発酵原料の投入タイミングから任意の期間、第1制御とは異なる第2制御で、送気手段により容器内に導入される外気の量を制御する第2制御手段とを有するので、第1制御によって入気量制御を行いつつ、発酵原料の投入作業に連動して、異なる制御によって入気量制御を行うことで、発酵原料の投入後における発酵の遅延を抑制し、発酵を安定的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の発酵乾燥装置の一例を示す縦断面図である。
図2】第1制御による入気量制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】第2制御による入気量制御の一例を示すグラフである。
図4】第2制御による入気量制御の他の例を示すグラフである。
図5】第2制御の終了条件の設定画面の一例を示す図である。
図6】第2制御の終了パターンの概要を説明するグラフである。
図7】第2制御による入気量制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第1制御と第2制御を組み合わせた入気量制御の試験結果を示すグラフなどである。
図9】堆肥温度のシミュレーションの条件を示す図である。
図10】微生物の活性回復のために必要な乾物分解率を示すグラフである。
図11】発酵乾燥処理の安定運転時などの各種温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の発酵乾燥装置の概要を図1に基づいて説明する。図1は発酵乾燥装置の構成の一例を示す縦断面図である。図1に示すように、発酵乾燥装置1は、円筒縦型の容器2と、容器2内に縦方向に設けられた回転軸3と、回転軸3周りに多段に付設された複数枚の撹拌翼4と、容器2内に外気を取り入れるための送気手段6と、容器2内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段9とを備えてなる密閉縦型の発酵乾燥装置(コンポ)である。この発酵乾燥装置は、堆肥化を行なう場合は堆肥化装置ともいえる。本発明における該装置は、容器2の内容積が10m以上である業務用の大型の装置を主な対象としている。撹拌翼4の形状は、特に制限なく、例えば、回転軸3から容器2の内壁側に向けて直線的に延設されたピッチドパドル形状とし、その回転方向前側に傾斜面を有する形状などとできる。
【0019】
最下段の撹拌翼の下部に通気孔4aを有し、送気手段6から送られる外気(入気)を回転軸内に設けられた配管6aを介して該通気孔より容器内に導入している。発酵槽である容器2は、金属製外層と断熱層とを有する断熱容器であり、かつ、通気孔から導入される以外の外気とは接触しにくい気密性容器である。また、容器2の上部に発酵原料の投入口2aと、排気口2cとを有し、底部に処理後の発酵乾燥物の取出口2bを有する。排気口2cは排気手段9に連結されている。投入口2aおよび取出口2bには、容器の気密性を確保するための開閉可能な蓋などが設けられている。
【0020】
図1に示す形態では、容器2の下方に機械室5が設けられ、この機械室内に回転軸3の駆動手段8と、上述の送気手段6が設けられている。回転軸3は、機械室5内に貫通しており、駆動手段8により所定回転数で回転させられる。また、必要に応じて、送気手段6から送られる外気を加温するためのヒータ7が設けられている。送気手段6には、ブロワが使用される。ブロワとしては、入気量を調整可能とするため、ブロワ回転数をインバータ周波数で制御できるものを用いることが好ましい。また、配管6aの途中に、入気量を調整する送気バルブを設けてもよい。
【0021】
容器内で発生したガスや水蒸気などは、排気口2cから排気手段9を介して外気へ排気される。排気手段9は、排気管10と、排気ファン11と、脱臭装置12とを有する。排気ファン11は、容器内のガスなどを強制的に排気させる。脱臭装置12は、例えば、ガスなどに洗浄液としての水や酸などを接触させて臭気成分を捕捉する吸収塔などである。臭気成分としては、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸などの低級脂肪酸やアンモニアなどが挙げられる。
【0022】
排気管10において、排気口2cから排気ファン11までの排気経路上には、容器2内から排出される内気の温度を検出する温度センサ13が設けられる。また、図1では省略するが、送気経路上には、容器2へ導入する空気の温度を検出する温度センサや、容器2へ導入する空気の流量を検出する流量センサなどが設けられる。発酵乾燥装置1には、その動作を確認するための種々のセンサが設けられている。
【0023】
図1において、制御装置15は、例えば発酵乾燥装置1の運転を制御する制御盤14に備え付けられている。制御盤14により、例えば、自動運転モードと手動運転モードの切り替えや、自動運転モードの各種設定操作、手動運転モードにおける各種操作(例えば、送気手段6のON/OFF、排気ファン11のON/OFF、駆動手段8のON/OFF、バケット(図示省略)の昇降など)を行うことができる。
【0024】
本発明の発酵乾燥装置において、発酵乾燥処理の対象となる発酵原料には、家畜排泄物や、食品廃棄物、下水汚泥などを用いることができ、発酵原料が下水汚泥を含むことが好ましい。下水汚泥は、生活排水などの下水を浄化処理する浄化施設において生じる汚泥である。発酵原料に用いる下水汚泥の含水率は、例えば70質量%~90質量%であり、好ましくは、75質量%~85質量%である。発酵乾燥装置における発酵乾燥処理は、容器内において、好気性発酵菌の存在下で通気しながら好気発酵させて行なう。好気性発酵菌としては、30~90℃程度で活性化する発酵菌が好ましく、例えば、ジオバチルス属やバチルス属などが挙げられる。
【0025】
下水汚泥を発酵乾燥させる場合、発酵原料としては、下水汚泥に、さらに肉骨粉または廃白土、石炭灰、および種汚泥を加えることが好ましい。具体的な数値としては、発酵原料全体に対して、下水汚泥が70質量%~85質量%、肉骨粉または廃白土が10質量%~20質量%、石炭灰が5質量%~20質量%、種汚泥が1質量%~5質量%含まれることが好ましい。石炭灰は、石炭火力発電所などにおいて、副産物として発生するフライアッシュやクリンカーアッシュを指す。種汚泥は順養化された発酵菌(好気性微生物)を含む汚泥堆肥または乾燥汚泥である。また、上記発酵原料には、さらに消石灰などが含まれていてもよい。
【0026】
図1の発酵乾燥装置1において、投入口2aから発酵原料を容器2の内部に投入し、容器内で発酵乾燥後に容器下部の取出口2bより発酵乾燥物(例えば堆肥や燃料)を取り出す。発酵乾燥物の含水率は、例えば10質量%~40質量%であり、好ましくは15質量%~30質量%である。発酵および乾燥は、送気手段6により最下段の撹拌翼の通気孔4aから所定の入気量で外気を導入し、かつ、排気口2cと排気手段9から内気を排気しつつ、各撹拌翼4を低速で回転させて、発酵原料の下水汚泥などを通気撹拌し、好気発酵させることで行なう。また、通気により同時に乾燥もされる。排気口2cから排気される空気は、通気孔から容器内に導入されて処理物中を通過しながら上方へ流れてきた空気に、発酵原料より生じたガスや水蒸気を含むものである。
【0027】
運転手順としては、まず、発酵乾燥装置に、該装置の内容積に対して10~30%の空間(ヘッドスペース)を残して、発酵原料を投入する。10~30%の空間を残して発酵原料を投入することにより、撹拌が十分になされるため、発酵および乾燥が効率よくなされる。投入は毎日行ない、所定の滞留期間(3日~20日程度)発酵および乾燥して、一定期間(例えば毎日)毎に所定量(例えば20質量%程度)の発酵乾燥物を取り出す。上記投入は、発酵乾燥物を取り出した後に行なう。このように、一定時間サイクルで発酵原料の一部投入と発酵乾燥物の一部取り出しを繰り返して、連続的に処理を行なう。得られる発酵乾燥物は、通常はサラサラとした粉粒状となっている。
【0028】
本発明の発酵乾燥装置1は、送気手段6により容器内に導入される外気の量を制御する入気量制御手段を有する。図1において、制御装置15は、入気量制御手段を有し、周知のCPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置15は、各種センサにおける検出結果を出力信号として取得し、その検出結果に基づいて各種制御を行う。制御装置15は、各種検出結果を連続で取得、記憶できる構成となっており、各種演算機能も有している。
【0029】
本発明において、入気量制御手段は、任意の指標に基づいて、容器内に導入される外気の量を制御する第1制御を行う第1制御手段と、発酵原料の投入タイミングから任意の期間、第1制御とは異なる第2制御で、容器内に導入される外気の量を制御する第2制御手段とを有する。発酵乾燥装置による入気量制御において、第1制御がメインの制御であり、第2制御が発酵原料の投入作業に連動して行われる制御である。以下に、各制御について説明する。
【0030】
(第1制御)
第1制御手段は、発酵熱量などの指標を算出し、その算出した指標に基づいて、入気量を調整する。入気量の調整は、例えば、送気ブロワのインバータ周波数の増減により行える。また、入気量を調整可能な送気バルブを設けた構成では、この送気バルブの開度を増減させて、入気量を調整してもよい。なお、以後は、インバータ周波数を用いた入気量制御について述べる。
【0031】
発酵熱量は、下記の式(1)より算出できる。
【数1】
【0032】
上記式(1)中の排気エンタルピーは、排気中の(A)水蒸気エンタルピー+(B)乾き空気エンタルピー、の式より算出した。
(A)排気(水蒸気)エンタルピーは、ノルマル換算した排気(水蒸気)流量、水分子量、標準状態モル体積、飽和蒸気比エンタルピーから算出した。飽和蒸気比エンタルピーは、飽和蒸気表のデータセットをプロットして作られた近似式より求めた。なお、ノルマル換算した排気(水蒸気)流量算出時の相対湿度(%RH)は、100%RHに固定した。
(B)排気(乾き空気)エンタルピーは、ノルマル換算した排気(乾き空気)流量、乾き空気分子量、標準状態モル体積、空気比熱、排気温度から算出した。
【0033】
上記式(1)中の送気エンタルピーは、送気中の(A)水蒸気エンタルピー+(B)乾き空気エンタルピー、の式より算出した。
(A)送気(水蒸気)エンタルピーは、ノルマル換算した送気(水蒸気)流量、水分子量、標準状態モル体積、飽和蒸気比エンタルピーから算出した。飽和蒸気比エンタルピーは、飽和蒸気表のデータセットをプロットして作られた近似式より求めた。なお、ノルマル換算した送気(水蒸気)流量算出時の相対湿度(%RH)は、75%RHに固定した。
(B)送気(乾き空気)エンタルピーは、ノルマル換算した送気(乾き空気)流量、乾き空気分子量、標準状態モル体積、空気比熱、送気温度から算出した。
【0034】
第1制御手段の発酵熱量を指標としたインバータ周波数の調整処理の一例について、図2のフローチャートを用いて説明する。図2のスタートからエンドに至るまでの処理は、後述する第2制御が実行されない限り、発酵乾燥装置の動作が終了となるまで、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0035】
まず、ステップS11において発酵熱量を算出する。発酵熱量は上述の式(1)を用いて算出する。続いて、算出された発酵熱量を、前回算出された発酵熱量と比較して、増加しているか否かを判定する(ステップS12)。そして、発酵熱量が増加している場合(ステップS12:Yes)は、インバータ周波数を増加する(ステップS13)。一方、発酵熱量が増加していない場合(ステップS12:No)は、インバータ周波数を減少する。ステップS13やステップS14では、予め決められた周波数の変更幅分(例えば0.2Hz)だけ周波数を増減させる。なお、第1制御手段による周波数の調整間隔は適宜設定でき、例えば3分間隔に設定される。
【0036】
第1制御手段による入気量制御は、上述の発酵熱量を指標とする制御方式に限らず、任意の制御方式を用いることができる。
【0037】
例えば、第1制御手段は、排気温度を指標とした入気量制御を行うことができる。図1に示す温度センサ13によって検出される排気温度は30℃~70℃程度である。排気温度が高いほど容器内で発酵が活発に行われているといえるため、排気温度が高い場合にインバータ周波数を増加させて入気量を増大させることが好ましい。例えば、図2のフローチャートにおける発酵熱量の代わりに排気温度を用いることができる。また、排気温度に対応したインバータ周波数を予め設定しておき、任意の時間間隔(例えば3分間隔)で取得された排気温度に応じてインバータ周波数を調整するようにしてもよい。
【0038】
このように発酵熱量や排気温度などを指標として、容器内に導入される入気量を調整することで、容器内の発酵状態に合わせて追従性良く送気を行なうことができ、発酵を安定的に実施できる。
【0039】
また、第1制御手段のその他の入気量制御として、時間を指標とし、所定の時間間隔ごとに入気量を一定にする制御を行ってもよい。これにより、装置設備などを簡略化でき、また入気量制御の処理負担を軽減できる。所定の時間間隔は適宜設定でき、例えば、0.5時間ごとや、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごとなどに設定できる。各時間ごとのインバータ周波数は特に限定されず、例えば30Hz~60Hzの範囲の周波数に設定される。
【0040】
また、上述したような指標を用いた第1制御による入気量制御を行いながら、例えば、容器内容物上部および中部の温度(すなわち撹拌エリア)の平均値が所定温度(例えば55℃)以下となった場合には、強制的に入気量を最小入気量(インバータ周波数の場合は30Hz程度)にするようにしてもよい。なお、送気経路上に逆止弁を設けた構成では、送気ブロワを一旦OFFにして間欠稼働するようにしてもよい。後述するように、容器内容物上部および中部の温度が所定温度以下になると、微生物の活性が過度に低下してしまうおそれがあることから、入気量を制限することで、第1制御によって発酵状態が悪化し続けるような場合であっても更なる悪化を防止することができる。この入気量の制限は、例えば、容器内容物上部および中部の温度の平均値が所定温度(例えば55℃)を超えた場合に解除される。解除されると、通常の第1制御に戻る。なお、容器内容物上部および中部の温度に関する知見については、詳細を別途後述する。
【0041】
(第2制御)
第2制御手段は、発酵原料の投入タイミングから任意の期間、第2制御によって入気量を調整する。投入タイミングは、発酵原料の投入を開始するタイミングであり、例えば、作業者によって投入開始ボタン14a(図1参照)が押されたタイミングや、投入口の蓋が開放されたタイミングとすることができる。投入タイミングは、概ね1日1回、ある程度決まった時間帯に設定される。
【0042】
第2制御手段による入気量制御は、発酵原料の投入タイミングにおける入気量に基づいて行われる。一例として、当該入気量制御は、投入タイミング時の入気量(インバータ周波数)に固定して行われる。図3には、その入気量制御の概略を示す。図3に示すように、発酵原料の投入作業までは、第1制御による入気量制御が行われ、発酵熱量などの指標の変動によってインバータ周波数も変動する。その後、投入タイミング(図3において10時)を起点として、入気量制御が第2制御に切り替わる。図3において、第2制御が開始されると、第1制御のような周波数制御が行われなくなり、その間は、投入タイミング時のインバータ周波数を引き継いだ一定の周波数の運転となる。そして、任意のタイミング(図3において14時)で、第2制御が終了すると、入気量制御が第1制御に切り替わる。この際には、第2制御開始前の周波数を用いて第1制御による周波数制御が再開される。
【0043】
一般に、発酵乾燥装置では、発酵乾燥処理を行いながら発酵原料が投入される。投入された発酵原料は発酵途中の発酵乾燥物の上に覆いかぶさるため、容器下部から容器上部へ流れる空気は当該発酵原料に熱を奪われることで、排気温度が急激に低下する。この排気温度の低下は、見かけの温度低下といえるが、第1制御の入気量制御では、投入作業に伴う見かけの温度低下は考慮されていない。そのため、結果として、過度な入気量の低下を招き、発酵が遅延するおそれがある。
【0044】
そこで、図3に示す第2制御では、発酵原料の投入タイミングから任意の期間、インバータ周波数を維持することで、排気温度の低下に引っ張られて入気量が急激に低下することを抑制している。一般に、原料の投入直後は、新規の有機物が補給され、容器内の微生物の活性が高まる段階といえるため、入気量を維持することで、微生物へ供給される酸素量を確保し、発酵を速やかに進行させることができる。
【0045】
また、第2制御手段による入気量制御は、図3に示す態様に限らない。例えば、図4に示すように、投入タイミングからしばらくの間(期間A)は、インバータ周波数を、投入タイミング時のインバータ周波数から漸減させ、その後、任意のタイミングでインバータ周波数を一定にする態様としてもよい。原料の投入作業によって容器内の温度は低下するが、この際入気量が大きいと容器内の温度を過度に低下させるおそれがあることから、図4に示すように、期間Aはインバータ周波数を漸減させることで、容器内の過度な温度低下を抑制しやすくなる。なお、漸減させる場合、インバータ周波数は緩やかに(例えば1時間に0.5Hz~2Hz程度)減少させる。この場合も、後述の図8(a)に示すようなインバータ周波数の急激な低下を回避でき、原料投入後における速やかな発酵を維持できる。
【0046】
図4に示す第2制御における期間Aおよび期間Bは任意に設定できる。例えば、発酵原料の投入タイミング前(例えば投入タイミングの30分前から投入タイミングまで)の排気温度の変化から直線回帰して、(実測排気温度)≦(回帰排気温度)の期間を期間Aとして、(実測排気温度)>(回帰排気温度)の期間を期間Bとすることができる。またこの場合、期間Aにおけるインバータ周波数を回帰排気温度に対応するように設定してもよい。
【0047】
なお、図3および図4に示す第2制御は、少なくとも周波数を固定する期間を有しているが、例えば、第2制御が終了するまで、周波数を任意の減少率で漸減させるようにしてもよい。
【0048】
ここで、第2制御手段による第2制御は、任意の終了条件を満たすことで終了する。図5には、第2制御の終了条件を設定する設定画面の一例を示す。この設定画面は、例えば、制御盤の表示画面のTOP画面にて投入開始ボタンを押すことなどで表示される。
【0049】
図5では、第2制御の期間において取得される排気温度Tに基づいて終了する設定になっている。ここで、排気温度Tは、サンプリング周期毎に一次取得された各値の温度収集時間における平均値として算出される。図5では、排気温度Tは、1秒ごとに一次取得された値の5分間の平均値として取得される。つまりこの場合、排気温度Tは5分の時間間隔で取得される。なお、排気温度Tの取得の時間間隔は、例えば1分~180分であり、1分~60分が好ましく、3分~10分がより好ましい。
【0050】
図5において、第2制御手段は、取得された排気温度Tが閾値Tthを超えた場合に、第2制御を終了する。閾値Tthは適宜設定されるが、発酵原料の投入タイミングにおいて取得される排気温度(図5の投入前排気温度)をTとしたとき、T+α(図5の終了温度調整)に設定されることが好ましい。また、αは-10<α<10(℃)の範囲の任意の値であることがより好ましい。図5では、αが5℃であり、閾値Tthが45℃(=40℃+5℃)に設定される。
【0051】
また、図5では、排気温度の突発的な変化や誤検出などによって、第2制御が予期せず終了することを防止するため、必須停止時間が設けられている。また、図5に示す最終停止時間は、排気温度Tにかかわらず、第2制御を終了する時間である。すなわち、必須停止時間は第2制御の最小停止時間、最終停止時間は第2制御の最大停止時間といえ、これらは経験則などによって適宜設定される。なお、図5において、最終停止時間を「有効」とせずに、第2制御を排気温度Tに基づいてのみ終了するように設定してもよい。
【0052】
図6には、図5の設定による第2制御の終了パターンを示す。図6(a)は、排気温度Tが閾値Tthを超えたパターンを示す。図6(a)に示すように、投入タイミングから必須停止時間(60分)経過後において、排気温度Tが閾値Tthを超えているため、第2制御が終了している。一方、図6(b)は、第2制御の時間が最終停止時間を経過したパターンを示す。図6(b)に示すように、排気温度Tは閾値Tthを超えていないものの、投入タイミングから最終停止時間(90分)を経過したため、第2制御が終了している。
【0053】
次に、第2制御手段による入気量制御について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7のフローチャートは、投入開始ボタンが押されるなどして、投入タイミングを起点として開始される。
【0054】
まず、ステップS21において、投入タイミングtにおける排気温度Tおよびインバータ周波数Fを取得する。続いて、取得された排気温度Tに基づいて、閾値Tthを設定し(ステップS22)、インバータ周波数をFに固定する(ステップS23)。そして、投入タイミングからの経過時間tが、必須停止時間tを経過すると(ステップS24:Yes)、排気温度Tを取得する(ステップS25)。続くステップS26では取得された排気温度Tと閾値Tthを比較する。T>Tthである場合(ステップS26:Yes)、第2制御を終了する(ステップS27)。つまり、インバータ周波数Fの固定を終了して、第1制御による入気量制御を再開する(例えば図2参照)。
【0055】
ステップS26がNoの場合、つまり排気温度Tが閾値Tthを超えていない場合、ステップS28に進み、投入タイミングからの経過時間tと最終停止時間tを比較する。経過時間tが最終停止時間tを経過していない場合(ステップS28:No)、再度、排気温度Tを取得して、その排気温度Tが閾値Tthを超えているか否かを判定する(ステップS25、S26)。このように、最終停止時間tを経過するまでは、ステップS25、S26、S28を繰り返し実施する。なお、排気温度Tは任意の時間間隔ごとにその都度取得される。そして、最終停止時間tを経過した場合(ステップS28:Yes)、第2制御を終了する(ステップS27)。
【0056】
以上、図7では、第2制御手段による入気量制御について説明したが、当該入気量制御はこれに限定されるものではない。例えば、上記では、第2制御の期間においてインバータ周波数をFに固定したが、これに代えて、インバータ周波数をFから所定の計算方法により求められるFにしてもよい。なお、Fは固定値でもよく、変数でもよい。
【0057】
また、上記では、第2制御をその間に取得される排気温度に基づいて終了する構成としたが、排気温度に代えて発酵熱量を用いてもよい。発酵熱量を用いる場合でも、排気温度と同様の入気量制御を行うことができる。具体的には、投入タイミングにおける発酵熱量Hを用いて閾値Hth(=H+β)を設定し、第2制御の期間において取得される発酵熱量Hが閾値Hthを超えた場合に、第2制御を終了するようにしてもよい。発酵熱量Hの取得の時間間隔は、例えば1分~180分であり、1分~60分が好ましく、3分~10分がより好ましい。また、必須停止時間や最終停止時間も適宜採用することができる。
【0058】
さらに、第2制御の期間中において、容器内容物上部および中部の温度(すなわち撹拌エリア)の平均値が所定温度(例えば55℃)以下となった場合には、強制的に入気量を最小入気量にする、または間欠稼働するようにしてもよい。つまりこの場合、第2制御手段は、第2制御の期間において取得される容器内容物上部および中部の温度の平均値が所定温度以下となった場合に、第2制御を終了する。容器内容物上部および中部の温度の取得の時間間隔は、例えば1分~180分であり、1分~60分が好ましく、3分~10分がより好ましい。第1制御に第2制御を加えてもなお発酵状態が回復しない場合も考えられ、このような場合に入気量を制限することで、発酵状態の更なる悪化を防止することができる。この入気量の制限は、例えば、容器内容物上部および中部の温度の平均値が所定温度(例えば55℃)を超えた場合に解除され、その後は第1制御に戻る。
【0059】
続いて、図8に示す下水汚泥を原料とする発酵乾燥試験例を用いて、第2制御による入気量制御の効果について説明する。この試験では、発酵乾燥装置として中部エコテック社製コンポC-40ET(容積39m)を用いた。この発酵乾燥装置は、除塵塔およびアンモニア吸収塔からなる湿式脱臭設備(処理能力25m/分)を有する。また、送気手段として、インバータ周波数によって入気量を調整可能な送気ブロワを有する。発酵原料は主に下水汚泥とし、その投入量は約2トン/日とした。
【0060】
試験例としては、発酵熱量を指標にした第1制御のみの運転(図8(a))、発酵熱量を指標にした第1制御とインバータ周波数を固定する第2制御とを組み合わせた運転(図8(b))をそれぞれ実施した。第2制御による入気量制御の各パラメータは、排気温度Tの取得の時間間隔1分、閾値Tth60℃、必須停止時間180分、最終停止時間600分とした。また、投入タイミングにおける排気温度Tおよびインバータ周波数Fは、投入開始ボタンの押下のタイミングで自動取得した。なお、いずれの試験も連続運転で数日間実施し、そのうちの1日の排気温度とインバータ周波数の推移を図8に示している。
【0061】
図8(a)に示すように、第1制御のみの運転の場合は、原料の投入作業に伴って排気温度が急激に低下し、その結果インバータ周波数も急激に低下した。この場合、排気温度が投入前の水準まで回復するのに3.7時間を要した。
【0062】
一方、図8(b)に示すように、第1制御と第2制御を組み合わせた運転の場合、排気温度は大きく低下するものの、その回復は速やかで2.6時間で排気温度の回復に至った。なお、第2制御は必須停止時間経過後に終了した。また、図8(b)では、第2制御終了後の発酵状態(排気温度)も安定していた。
【0063】
このように、第1制御に第2制御を組み合わせることで、発酵原料の投入後における発酵の遅延を抑制し、ひいては発酵の一層の安定化に繋がることが分かる。
【0064】
また、第1制御による入気量制御および第2制御による入気量制御において、上述の制御を主としつつ、さらに、他の条件を加えるようにしてもよい。
【0065】
以下には、容器内容物上部および中部の温度について説明する。
【0066】
一般に、密閉型の発酵乾燥装置を用いた発酵乾燥処理では、一定時間サイクルで発酵原料の一部投入と発酵乾燥物の一部取り出しを繰り返して、数日間連続的に行われる。原料の投入間隔は概ね1日程度であるが、スケジュールなどによってはその日の原料投入を行えず、前回の原料投入から次回の原料投入まで2日~3日程度空く場合もある。投入間隔が空いた場合、発酵原料が投入されないことにより堆肥は過乾燥状態となり、その温度と含水率は低下した状態になる。このような状態で2、3日ぶりに原料投入が行われると、堆肥温度が更に低下してしまい、ひいては微生物の活性低下を招くおそれがある。微生物の活性が一旦低下すると、その活性を回復させるために乾物分解による熱量が必要となる。そのため、本来は乾燥に消費される熱量が、微生物の活性回復に消費されることで、乾燥効率の悪化を招くおそれがある。
【0067】
このような観点から、微生物の活性回復のために必要な乾物分解率をシミュレーションによって計算した。なお、以下では、原料の投入間隔が概ね1日程度の場合を「安定運転時」といい、原料の投入間隔が2~3日程度の場合を「未投入時」という。
【0068】
まず、容器内の堆肥温度および堆肥含水率のシミュレーションの条件を図9に示す。図9において、撹拌エリアは、堆肥と投入原料が混合されるエリアである。また、排出待機エリアは、堆肥の排出によって落下した撹拌エリア下部の堆肥により構成されるエリアであり、このエリアでは新たな原料とは混合されず、排出まで動きが少なくなっている。
【0069】
容器内の各部の温度は、熱電対センサTt(上部)、熱電対センサTm(中部)、熱電対センサTb(下部)によって検出される。熱電対センサTtは、底部から天井部までの高さをhとしたとき、例えば底部から0.6h~0.8hの高さ、好ましくは0.65h~0.75hの高さに設置される。また、熱電対センサTmは、例えば底部から0.3h~0.5hの高さに設置される。このシミュレーションにおいて、堆肥温度とは熱電対センサTtによって検出される容器内容物上部の温度である。
【0070】
図10には、図9の条件でシミュレーションした結果として、微生物の活性回復のために必要な乾物分解率を示す。この乾物分解率(%)は、投入原料を60℃まで昇温するのに必要な熱量を発生させ得る乾物分解量を、乾物投入量で除して算出した。なお、乾物分解量は、投入原料中の乾物量と排出される発酵乾燥物中の乾物量の差によって算出され、乾物投入量は、原料投入量と原料の乾物率の積によって算出される。なお、1日の乾物分解率は7%程度と想定される。
【0071】
図10に示すように、乾物投入量の1.4%~5.3%の量の分解熱が、堆肥の昇温のために必要であることが分かる。堆肥温度が50℃以下となるような未投入時には、1日の分解乾物量の50%~75%以上が昇温のために消費される。昇温のために消費される熱量は、水の蒸発には使われず、その結果、乾燥効率の悪化に繋がるおそれがある。一方、堆肥温度が60℃や55℃の安定運転時には、昇温のために消費される熱量が少なくて済み、その多くを水の蒸発(乾燥)に使うことができる。
【0072】
続いて、図11には、実際に発酵乾燥装置を用いた下水汚泥を原料とする発酵乾燥試験例を示す。図11の各図には、容器内容物上部の温度、容器内容物中部の温度、および排気温度の推移を示している。なお、各図において、排気温度が急激に低下している箇所は、それぞれ発酵原料の投入作業を行った時期である。
【0073】
図11(a)に示すように、安定運転時には、容器内容物上部および容器内容物中部の温度は50℃以上を維持しており、微生物の至適温度を確保していると考えられる。一方、未投入時-1(図11(b))の場合は、2月3日の原料投入前の段階で、既に容器内容物上部および容器内容物中部の温度が大きく低下しており、原料投入により、更にこれらが低下している。その結果、容器内容物上部および容器内容物中部の温度が50℃以下となっている。2月3日の原料投入後には、各温度は徐々に上昇するものの、温度の上昇は緩やかであり、微生物の活性回復に時間を要していると考えらえる。
【0074】
また、未投入時-2(図11(c))の場合は、2月11日の原料投入では、容器内容物上部および容器内容物中部の温度が50℃以下となり、2月13日の原料投入では、容器中部の温度のみが50℃以下となっている。各原料投入後において、各種温度の上昇を比較すると、2月13日の原料投入後の方が各種温度の回復が速やかであるといえる。
【0075】
図11の結果より、微生物の活性を低下させないようにするため、特に容器内容物上部および中部(すなわち撹拌エリア)の温度が50℃を下回らないようにすることが好ましいと考えられる。したがって、それを未然に防ぐため、発酵乾燥処理時において容器内容物上部および中部の温度(すなわち撹拌エリア)の平均値が、例えば55℃以下になるような場合には、第2制御を解除して、入気量を制限する入気量制御を行うことが好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の発酵乾燥装置は、発酵原料の投入作業時において、見かけの温度低下による影響を受けない入気量制御を行うことで、発酵の遅延などを解消し、発酵原料に応じた最適な発酵乾燥処理を実現できるので、例えば、下水処理施設で生じる下水汚泥を発酵乾燥するための装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 発酵乾燥装置
2 容器
2a 投入口
2b 取出口
2c 排気口
3 回転軸
4 撹拌翼
4a 通気孔
5 機械室
6 送気手段
7 ヒータ
8 駆動装置
9 排気手段
10 排気管
11 排気ファン
12 脱臭装置
13 温度センサ
14 制御盤
14a 投入開始ボタン
15 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11