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  • 特開-管継手 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184251
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/06 20060101AFI20221206BHJP
   F16L 19/025 20060101ALI20221206BHJP
   F16B 39/284 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F16L19/06
F16L19/025
F16B39/284 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091976
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】391006636
【氏名又は名称】ハードロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 克彦
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014CA02
3H014FA04
(57)【要約】
【課題】 緩み止め機能を有する薄肉管用の管継手を提供する。
【解決手段】 薄肉管Pが挿入される円筒状のパイプ接続部2を有する継手本体3と、薄肉管Pを継手本体3に固定するようにパイプ接続部2に螺着されるナット4と、パイプ接続部2とナット4との間に装着される偏心リング6とを有する。
パイプ接続部2の外周には、雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分2cが設けられる。ナット4の内周には、薄肉管Pを継手本体3に固定したときにねじ無し外周面部分2cに外嵌するねじ無し内周面部分4cが設けられる。
ねじ無し外周面部分2c及びねじ無し内周面部分4cのうちいずれか一方は管軸に対して偏心しており、これによりねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cとが周方向一部において半径方向に圧接する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入される円筒状のパイプ接続部を有する継手本体と、前記パイプを前記継手本体に固定するように前記パイプ接続部に螺着されるパイプ固定用ナットとを備え、前記ナットの内周には雌ねじが設けられ、前記パイプ接続部の外周には前記雌ねじに螺合する雄ねじが設けられた管継手において、
前記パイプ接続部の外周には、前記雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分が設けられ、
前記ナットの内周には、前記パイプを前記継手本体に固定したときに前記ねじ無し外周面部分に外嵌するねじ無し内周面部分が設けられ、
前記ねじ無し外周面部分が前記雄ねじに対して偏心しているか、若しくは、前記ねじ無し内周面部分が前記雌ねじに対して偏心しており、これにより前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分とが周方向一部において半径方向に圧接するよう構成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の管継手において、前記パイプ固定用ナットは、前記継手本体に挿入されたパイプの外周面に接触して該パイプを保持するパイプ保持部をさらに備え、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記パイプ接続部の基端側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記ナットの開口縁部に設けられ、前記パイプ保持部が、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合部位によって、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との偏心嵌合部位から隔てられている、管継手。
【請求項3】
請求項2に記載の管継手において、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との偏心嵌合部位が、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合部位に近接している、管継手。
【請求項4】
請求項1に記載の管継手において、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記継手本体側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記ナットの開口縁部に設けられ、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との偏心嵌合部位が、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合部位に近接している、管継手。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の管継手において、前記ねじ無し外周面部分及び前記ねじ無し内周面部分は、いずれも直円筒面により構成されている、管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行い得る管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
薄肉ステンレス鋼管用の管継手として、例えば、下記の特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
この従来の管継手は、継手本体と、継手本体に設けられた複数のパイプ接続部と、各パイプ接続部に装着されるパイプ固定用ナットとを備えている。パイプ接続部はパイプを挿入可能な内径を有する円筒状であって、パイプ接続部の外周にはパイプ固定用ナットが螺着される雄ねじが形成されている。
【0004】
パイプ固定用ナットの内周には前記雄ねじに係合する雌ねじが設けられている。継手本体から離れたナットの端部には、雌ねじよりも径方向内方に突出する内向きフランジが設けられている。パイプの管端部近傍には拡径部が設けられており、ナットの内向きフランジの内端には、前記拡径部の外周に軸方向に係合するクランプ面が形成されている。
【0005】
したがって、薄肉管などのパイプの端部に拡径加工を行い、拡径加工が施されたパイプ端部を継手本体のパイプ接続部に挿入し、ナットをパイプ接続部に締結することによって、パイプを継手本体に固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-142293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の管継手は種々の用途に使用し得るが、用途によっては種々の振動に晒される場合があるため、何らかの緩み止め対策を講じることが求められている。
【0008】
本発明は、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行い得る管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による管継手は、パイプが挿入される円筒状のパイプ接続部を有する継手本体と、前記パイプを前記継手本体に固定するように前記パイプ接続部に螺着されるパイプ固定用ナットとを備える。前記ナットの内周には雌ねじが設けられ、前記パイプ接続部の外周には前記雌ねじに螺合する雄ねじが設けられている。
【0010】
前記パイプ接続部の外周には、前記雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分が設けられていてよい。
【0011】
前記ナットの内周には、前記パイプを前記継手本体に固定したときに前記ねじ無し外周面部分に外嵌するねじ無し内周面部分が設けられていてよい。なお、ねじ無し外周面部分の外径は、ねじ無し内周面部分の内径よりも僅かに大きくすることができる。
【0012】
前記ねじ無し外周面部分が前記雄ねじに対して偏心しているか、若しくは、前記ねじ無し内周面部分が前記雌ねじに対して偏心していてよい。これにより前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分とが周方向一部において半径方向に圧接するよう構成される。
【0013】
かかる本発明の管継手によれば、ナットをパイプ接続部に締結すると、ナットのねじ無し内周面部分がパイプ接続部のねじ無し外周面部分に偏心嵌合して、いわゆるクサビ効果によって強力な緩み止め作用を生じさせることができる。
【0014】
上記本発明の管継手の好ましい態様において、前記パイプ固定用ナットは、前記継手本体に挿入されたパイプの外周面に接触して該パイプを保持するパイプ保持部をさらに備え、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記パイプ接続部の基端側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記ナットの開口縁部に設けられ、前記パイプ保持部が、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合部位によって、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との偏心嵌合部位から隔てられている。これによれば、偏心嵌合部位ではナット全体をパイプ接続部の軸心に対して偏心乃至傾斜させる力が作用する一方、螺合部位においてはナット軸心をパイプ接続部の軸心に一致させる調心作用が生じる。かかる螺合部位によって偏心嵌合部位をパイプ保持部から隔てることにより、パイプ保持部の軸心がパイプ接続部の軸心に対して大きく偏心乃至傾斜することを抑制することができ、パイプ保持部に保持されるパイプがパイプ接続部に対して偏心乃至傾斜することを抑制できる。
【0015】
また、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との偏心嵌合部位が、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合部位に近接していることが好ましい。これによれば、螺合部位における調心作用によって、偏心嵌合部位の周方向一部の圧接力を効果的に大きくすることができ、一層優れた緩み止め効果が得られる。
【0016】
好ましくは、前記ねじ無し外周面部分及び前記ねじ無し内周面部分は、いずれも直円筒面により構成されている。これによれば、ねじ無し外周面部分とねじ無し内周面部分とが偏心嵌合することによって所定のプリベリングトルクが生じた状態でナットをパイプ接続部に対して螺進させていくことができ、パイプがナットによって安定的に固定されるまでナットを締結することができるとともに、多少ナットが緩んだ場合でも上記偏心嵌合によるプリベリングトルクが残存するため緩み止め効果を期待できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の管継手によれば、簡単な構造でありながら、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る管継手の断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る管継手の断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る管継手の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る管継手1を示しており、図示左側は締結完了状態を示し、図示右側はナット4を締結する前の状態を示している。この管継手1は、一対の薄肉管として例示されるパイプPを接続するためのものであって、直線上に対向配置された2つのパイプ接続部2を有する継手本体3と、各パイプ接続部2にそれぞれ装着されるパイプ固定用ナット4とを備えている。
【0021】
パイプ接続部2は、パイプPの端部が挿入されて嵌合する内径を有する円筒状に構成され、パイプ接続部2の開口端部の内周にはパッキン5を保持する溝2aが周方向に延びている。
【0022】
パイプ接続部2の外周には、雄ねじ2bと、ねじ無し外周面部分2cとが設けられている。ねじ無し外周面部分2cは、真っ直ぐな直円筒面により構成されている。本実施形態では、ねじ無し外周面部分2cは、雄ねじ2bよりもパイプ接続部2の基端側に設けられており、ねじ無し外周面部分2cの外径は雄ねじ2bのねじ山外径よりも大きい。また、本実施形態では、ねじ無し外周面部分2cは、雄ねじ2bと同心状に設けられている。
【0023】
ナット4は、六角ナット等の適宜の外周面形状を有し、パイプ接続部2に外嵌するナット本体4aを有する。ナット本体4aの内周には、雄ねじ2bに螺合する雌ねじ4bと、パイプPを継手本体3に固定したときにねじ無し外周面部分2cに外嵌するねじ無し内周面部分4cとが設けられている。
【0024】
継手本体3から離れたナット本体4aの端部には、雌ねじ4bよりも径方向内方に突出する内向きフランジからなるパイプ保持部4dが設けられている。このパイプ保持部4dの内端開口径は、パイプPの外径とほぼ等しい。したがって、パイプ保持部4dは、パイプPの外周面に接触してパイプPを保持する。
【0025】
パイプPの管端部近傍には拡径部Paが設けられており、ナット4のパイプ保持部4dには、拡径部Paの外周に軸方向に係合するクランプ面4eが形成されている。
【0026】
本実施形態では、ナット4のねじ無し内周面部分2cは、ナット4の開口端部の内周に形成されており、雌ねじ4bの軸心Oに対して偏心量aだけ僅かに偏心されており、ねじ無し外周面部分4cとねじ無し内周面部分2cとが、周方向一部において半径方向に圧接するよう偏心嵌合する。すなわち、ナット4の開口端部とパイプ接続部2の基部とが偏心嵌合する。この偏心嵌合部位は、雄ねじ2bと雌ねじ4bとの螺合部位に近接している。また、ねじ無し内周面部分の直径は、雌ねじ4bのねじ谷底面の直径よりも僅かに大きい。好ましくは、雌ねじ4bのねじ溝に嵌合している雄ねじ2bのねじ山の荷重面の端部(偏心嵌合部位に近い側の端部)と偏心嵌合部位の端部(螺合部位に近い側の端部)との間の軸方向距離は、雄ねじ2b及び雌ねじ4bのねじピッチよりも小さい。
【0027】
本第1実施形態によれば、比較的大きな継手本体3に偏心加工を行う必要がなく、比較的小さなナット4の開口端部に偏心加工によりねじ無し内周面部分4cを形成すれば良いため、製作容易で簡易な構造でありながら、偏心嵌合によるクサビ作用によってパイプPを固定するナット4の強力な緩み止めを行うことができる。さらに、パイプ保持部4dが、雄ねじ2bと雌ねじ4bとの螺合部位によって、ねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cとの偏心嵌合部位から隔てられることとなるため、ナット4のパイプ保持部4dによって保持されるパイプPが継手本体3のパイプ接続部2に対して偏心したり傾斜することを抑制できる。
【0028】
本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜設計変更できる。例えば、継手本体は、少なくとも一つのパイプ接続部を備えていればよく、3つ以上のパイプ接続部を備えていてもよい。複数のパイプ接続部の配置は、エルボ形状、T字形状、十字形状など、適宜の配置であってよい。また、パイプは薄肉管に限定されず、厚肉管や、可撓性ホースなどであってもよい。継手本体やナットの材質は、ステンレス等の金属が好ましいが、樹脂製であってもよい。また、ねじ無し外周面部分は雄ねじよりもパイプ接続部の軸方向先端側に設けられ、ねじ無し内周面部分は雌ねじよりも奥側(パイプ保持部側)に設けられていてもよい。
【0029】
また、図2に示すように、ねじ無し外周面部分2cを雄ねじ2bの軸心Oに対して偏心量bだけ僅かに偏心させ、ねじ無し内周面部分4cは雌ねじ4bと同心状に設けることによって、ねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cとを偏心嵌合させることもできる。
【0030】
また、図3に示すように、雄ねじ2bの端部とねじ無し外周面部分2cとの間に、雄ねじ2bの谷径よりも小径の環状溝2dを設けることもでき、これによれば、雄ねじ2bの切削加工性を良好なものとすることができる。
図1
図2
図3