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特開2022-184256システム、方法、製造方法、食品、及び、清酒
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  • 特開-システム、方法、製造方法、食品、及び、清酒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184256
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】システム、方法、製造方法、食品、及び、清酒
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/022 20190101AFI20221206BHJP
   C12H 1/00 20060101ALI20221206BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221206BHJP
   A23L 27/50 20160101ALI20221206BHJP
   A23L 11/50 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
C12G3/022 119K
C12H1/00
A23L5/00 J
A23L27/50 103A
A23L11/50 116
A23L27/50 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091987
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 範匡
【テーマコード(参考)】
4B035
4B039
4B115
4B128
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LP42
4B035LP59
4B035LT20
4B039LB01
4B039LC01
4B039LC20
4B039LQ12
4B039LQ22
4B115CN64
4B115CN72
4B128AP05
4B128AT12
(57)【要約】
【課題】加振工程における作業ばらつきを抑制することが可能な手段を提供すること。
【解決手段】システム1は、食品(例えば、清酒)、食品の原材料(例えば、米)、原材料から食品となる間の中間生成物(例えば、もろみ)のいずれかである対象物を振動させるための加振器2と、対象物から発生される音を集音するためのマイク3と、マイク3によって集音された音に基づいて、加振器2による対象物の振動を制御するPC4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるための振動部と、
前記対象物から発生される音を集音するための集音部と、
前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部による前記対象物の振動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記振動部に、前記対象物の状態を観測するための第1信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記振動部に前記第1信号を出力したときに、前記対象物から発生され、前記集音部によって集音される音を解析し、解析結果に基づいて、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴する請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記振動部に、前記対象物を振動させるための第2信号を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部に前記第2信号を出力することにより、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記振動部に、前記対象物の状態を観測するための第1信号を出力し、
前記振動部に、前記対象物を振動させるための第2信号を出力し、
前記振動部に前記第1信号を出力したときに、前記対象物から発生され、前記集音部によって集音される音を解析し、解析結果に基づいて、前記振動部に前記第2信号を出力することにより、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記解析結果が、前記対象物が固形であること示す場合、前記第2信号の音圧を上げ、又は、振幅を大きくすることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記解析結果が、前記対象物が固形でないこと示す場合、前記第2信号の音圧を下げ、又は、振幅を小さくすることを特徴とする請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記振動部は、加振器であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記対象物は、もろみであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のシステムにより製造されたことを特徴とする食品。
【請求項12】
少なくとも、前記対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、
前記工程において、
前記制御部は、前記振動部により前記もろみを振動させ、前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部による前記もろみの振動を制御することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムによって製造されたことを特徴とする清酒。
【請求項14】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、
前記振動工程において、前記対象物から発生される音に基づいて、前記対象物の振動を制御することを特徴とする方法。
【請求項15】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、
前記振動工程において、前記対象物から発生される音に基づいて、前記対象物の振動を制御することを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする食品。
【請求項17】
少なくとも、前記対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、
前記工程は、前記振動工程を備え、
前記振動工程において、前記もろみから発生される音に基づいて、前記もろみの振動を制御することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって製造されたことを特徴とする清酒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を振動させるシステム、方法、製造方法、食品、及び、清酒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樽等の容器内の発酵中の酒等を振動させることが行われている。例えば、特許文献1には、醗酵液を入れて酵母菌を醗酵活動させる醸造容器、醗酵液中、醸造容器の外側面、醸造容器の底面のいずれかに設けられた加振器等を備える装置が開示されている。
【0003】
醸造樽等内部の酒等を振動させるため、醸造樽等への加振を行う場合、連続した単純信号の加振では、他の製造業者との違いがなく、独自性に乏しく、また、発酵過程の状態の違いに対して、意図した加振を行うことができない。また、オペレーターの判断によるマニュアル操作で加振制御を行う場合、オペレーターは、日にち、季節感覚等に頼ることになるため、醸造現場等で樽が複数あると、それらの各制御をそれぞれ個別に行う必要があり、各樽における品質のばらつき、工数増、ヒューマンエラーが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-149971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、オペレーターのマニュアル操作で、加振の制御を行おうとすると、樽によって品質のばらつきが生じる可能性がある等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、品質のばらつきを抑制することが可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のシステムは、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるための振動部と、前記対象物から発生される音を集音するための集音部と、前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部による前記対象物の振動を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明では、制御部は、集音部によって集音された、対象物から発生される音に基づいて、振動部による対象物の振動を制御する。これにより、可能な限り、オペレーター等による操作を排除することができるため、品質のばらつきを抑制することができる。
【0009】
第2の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記振動部に、前記対象物の状態を観測するための第1信号を出力することを特徴とする。
【0010】
第3の発明のシステムは、第1又は第2の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記振動部に前記第1信号を出力したときに、前記対象物から発生され、前記集音部によって集音される音を解析し、解析結果に基づいて、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴する。
【0011】
第4の発明のシステムは、第1~第3のいずれかの発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記振動部に、前記対象物を振動させるための第2信号を出力することを特徴とする。
【0012】
第5の発明のシステムは、第4の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部に前記第2信号を出力することにより、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴とする。
【0013】
第6の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記振動部に、前記対象物の状態を観測するための第1信号を出力し、前記振動部に、前記対象物を振動させるための第2信号を出力し、前記振動部に前記第1信号を出力したときに、前記対象物から発生され、前記集音部によって集音される音を解析し、解析結果に基づいて、前記振動部に前記第2信号を出力することにより、前記振動部による前記対象物の振動を制御することを特徴する。
【0014】
第7の発明のシステムは、第6の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記解析結果が、前記対象物が固形であること示す場合、前記第2信号の音圧を上げ、又は、振幅を大きくすることを特徴とする。
【0015】
第8の発明のシステムは、第6又は第7の発明のシステムにおいて、前記制御部は、前記解析結果が、前記対象物が固形でないこと示す場合、前記第2信号の音圧を下げ、又は、振幅を小さくすることを特徴とする。
【0016】
第9の発明のシステムは、第1~第8のいずれかの発明のシステムにおいて、前記振動部は、加振器であることを特徴とする。
【0017】
第10の発明のシステムは、第1~第9のいずれかの発明のシステムにおいて、前記対象物は、もろみであることを特徴とする。
【0018】
第11の発明の食品は、第1~第10のいずれかの発明のシステムより製造されたことを特徴とする。
【0019】
第12の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、少なくとも、前記対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、前記工程において、前記制御部は、前記振動部により前記もろみを振動させ、前記集音部によって集音された音に基づいて、前記振動部による前記もろみの振動を制御することを特徴とする。
【0020】
第13の発明の清酒は、第12の発明のシステムによって製造されたことを特徴とする。
【0021】
第14の発明の方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、前記振動工程において、前記対象物から発生される音に基づいて、前記対象物の振動を制御することを特徴とする。
【0022】
第15の発明の製造方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、前記振動工程において、前記対象物から発生される音に基づいて、前記対象物の振動を制御することを特徴とする。
【0023】
第16の発明の食品は、第15の発明の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0024】
第17の発明の方法は、第14の発明の方法において、少なくとも、前記対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、前記工程は、前記振動工程を備え、前記振動工程において、前記もろみから発生される音に基づいて、前記もろみの振動を制御することを特徴とする。
【0025】
第18の発明の清酒は、第17の発明の方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、品質のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの概要を示す図である。
図2】清酒の製造工程の一例を示す図である。
図3】もろみから発生される音(スペクトラム)の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシステム1の概要を示す図である。システム1は、醸造タンク100内のもろみ(醪)(対象物)を振動し、もろみから発生する音を集音し、集音した音を解析し、解析した結果に基づいて、もろみの振動を制御する。システム1は、加振器2、マイク3、パーソナルコンピューター(以下、「PC」という。)4等を備える。
【0029】
加振器2(振動部)は、醸造タンク100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させるためのものである。加振器2は、例えば、醸造タンク100の側面に設けられている。加振器2は、信号に基づいて振動し、加振器2が設置された被設置面(ここでは、醸造タンク100の側面)を振動させることで、醸造タンク100内のもろみを振動させる。加振器2は、例えば、ハウジングによって規定される内部空間内に、内磁型の磁気回路を備える動電型の加振器である。加振器2は、軸方向に沿って、交流的に変化する駆動力を発生させることで、加振器2が載置される板材等の被設置面を振動させる。
【0030】
マイク3(集音部)は、醸造タンク100内に設置され、もろみから発生される音を集音するためのものである。マイク3は、PC4に接続されており、マイク3によって集音された受信音は、PC4に出力される。
【0031】
PC4(制御部)は、マイク4によって集音されたもろみから発生される音を受信する。PC4は、加振器2にTSP(Time-Stretched-Pulse method)信号(第1信号)、又は、加振信号(第2信号)を出力する。TSP信号は、もろみの状態を観測するための信号である。PC4は、加振器2にTSP信号を出力したときに、もろみから発生され、マイク4によって集音される音を解析する。加振信号は、もろみを振動させるための信号である。PC4は、マイク3によって集音された音、言い換えれば、音の解析結果に基づいて、加振器2に加振信号を出力することにより、加振器2によるもろみの振動を制御する。
【0032】
上述したTSP信号は、周波数帯域が判別可能な信号である。PC4は、TSP信号を定期的に加振器2に出力する。醸造タンク100(樽)内に設けられたマイク3は、TSP信号を受信する。PC4は、伝達波形から内容の状態を判断し、意図する加振を行う。例えば、もろみから清酒を製造する場合、もろみの発酵が進むと、音が伝わりやすい状態(ドロドロに溶けた状態)となり、加振信号が材料に伝達するが、米に近い状態では、加振信号の伝達は非常に悪い。本実施形態では、これら材料の状態における伝達波形を把握し、意図する加振を自動で行うことで、独自性と定量的な値を基にしたバラつきを抑えたシステムとなっている。また、自動で加振を制御できるため、オペレーターによる操作が必要なく、空の醸造タンク100(樽)、発酵が基準に達していない醸造タンク100(樽)等も判別可能となる。
【0033】
PC4は、醸造タンク100内のもろみを振動させるために、加振器2に加振信号(例えば、音楽信号)を出力する。このとき、PC4は、定刻0分~1分の間に測定時間を設け、TSP信号を加振器2に出力し、TSP信号の応答を観測する。空の振動伝達音(あらかじめ取得)である場合、PC4は、加振信号の再生を行わない。また、高域伝達が設定値(基準値)以下(すなわち、もろみが固形状態)である場合、加振効果を上げるため、PC4は、加振信号の音圧を上げ、又は、振幅を大きくする。例えば、PC4は、設定した最大音圧に上げる、又は、振幅の大きい曲、加振信号を選択する。また、高域伝達が設定値(基準値)以上(すなわち、もろみが溶けた状態)である場合、過剰な加振を抑えるため、PC4は、加振信号の音圧を下げ、又は、振幅を小さくする。例えば、PC4は、設定した最小音圧に下げる、又は、振幅の小さい曲、加振信号を選択する。
【0034】
さらに、製造が完了し、醸造タンク100(樽)内が空の状態である場合、PC4は、空の振動伝達音を検出し、加振信号の再生を止める。
【0035】
以上説明したシステム1は、清酒を製造する清酒製造システムの一部を構成する。ここで、「清酒」とは、米、米麹、及び水を主な原料として酵母により発酵したものであり、日本の酒税法で定める清酒である。清酒製造システムは、図2に示す工程を実行する。なお、図2に示す工程は、従来から行われている工程の一例である。例えば、「生酒」であれば、後述する「火入れ」の工程は、行われないし、「生貯蔵酒」であれば、「火入れ」の工程は、一度となる。
【0036】
「精米」工程は、米(酒米)を精米するする工程である。「洗米」工程は、精米した米を洗い、糠(ぬか)を取る工程である。「浸漬(しんせき)」工程は、洗米の後、適量の水分を米に吸収させるために、米を水に浸す工程である。「蒸米」工程は、水分を含ませた米を蒸す工程である。米は、甑(こしき)と呼ばれるおおきなせいろ、又は、蒸米機によって蒸される。「放冷」工程は、蒸した米を、麹(こうじ)造り、酒母造り、掛米(もろみ)用、それぞれに応じた温度に冷ます工程である。
【0037】
「麹造り」工程は、清酒の素となる麹にする工程で、「製麹(せいきく)」とも呼ばれる。具体的には、麹菌を米に付着させ、米の中で麹菌を繁殖させる。「酒母」とは、アルコール発酵を促す酵母を大量に増殖させたものである。「酒母造り」工程では、麹と水とを合わせたものに、酵母と乳酸菌、さらに蒸米を加える。一般的には、2週間から1か月で酒母が完成する。なお、酒母を手作業で造りあげる製法は、「生(き)もと造り」と呼ばれている。生もと造りの場合、乳酸は添加されず、蔵の空気中の乳酸菌が取り込まれる。
【0038】
「もろみ・仕込み」工程は、酒母をタンクに入れ、麹、蒸米、水を加えて発酵させる工程である。発酵には、約3週間から1か月かかり、清酒の元となる、発酵した状態を「もろみ」と呼ぶ。なお、酒母の中に、麹、蒸米、水を入れる際、全量ではなく、3回に分けて、ゆっくりと発酵させる。これを「三段仕込み」という。なお、「もろみ・仕込み」工程は、もろみを仕込む仕込工程と、もろみを発酵させる発酵工程と、に分けられる場合もある。
【0039】
「上槽」工程は、発酵期間終了後、もろみをしぼって(圧搾)、清酒と酒粕とに分ける工程である。しぼったばかりの清酒には、細かくなった米、酵母等の小さな固形物が残っているため、それを除去するために濾過(ろか)する工程が、「濾過」工程である。その後の加熱処理が、「火入れ」工程である。火入れの後、熟成させるために貯蔵する工程が、「貯蔵」工程である。約半年から1年かけて貯蔵・熟成された清酒は、まろやかな味わいに変化する。熟成した原酒を、ブレンド(調合・割水)する工程が、「調合・割水」工程である。出荷前、調合された清酒にもう一度火入れをし、安定させる工程が、「火入れ」工程である。その後、瓶やパックに詰める工程が、「瓶詰め」工程で、完成する。
【0040】
上述した「もろみ・仕込み」工程の、もろみを熟成させる工程において、もろみが振動される。本実施形態では、もろみを材料とする清酒の製造に、システム1が適用される例を示している。これに限らず、葡萄酒、醤油など、発酵過程で状態が変化する対象について、原材料に関わらず、同様の、振動、及び、振動制御などを適用可能である。また、成分分析や温度など、その他のステータスパラメーターを含んだデータを蓄積することで、味との相関データをより高精度なものへと発展させることができる。
【0041】
図3は、もろみから発生される音(スペクトラム)の一例を示すグラフである。時間経過ごとに、同条件で収録したスペクトラムである。図3(a)は、初日であり、図3(b)は、5日後であり、図3(c)は、8日後であり、図3(d)は、10日後であり、図3(e)は、13日後である。図3から、日を追う(もろみが溶けていく過程)ごとに高域周波数が伸びていることが、スペクトラムから観察することができる。
【0042】
ここで、食品等の音楽加振により、食品等の味が変化することは広く知られている。音の伝わりやすさによっても仕上がりが変化することが考えられるから、状態により適した加振信号が求められる。すなわち、最適な加振信号は、都度、アップデートすることがよい。本実施形態のように、音の伝達と加振信号とを関連させ、自動で加振を行うシステムを提供することで、複数ある加振製造現場で、一定の加振品質、及び、意図した加振方法を提供することができる。
【0043】
本実施形態では、加振器2により振動させる対象物として、「もろみ」を例示した。加振器2により振動させる対象物としては、食品、食品の原材料、原材料から食品となるまでの中間生成物のいずれかであればよい。「もろみ」は、原材料である「米(酒米)」から食品である「清酒」となるまでの中間生成物である。従って、例えば、清酒の場合、原材料の米を振動させてもよいし、食品である清酒を振動させてもよい。醤油で言えば、食品である醤油、醤油の原材料である大豆、大豆から醤油となるまでの中間生成物であるもろみを振動させてもよい。葡萄酒(ワイン)で言えば、食品である葡萄酒、葡萄酒の原材料である葡萄を振動させてもよい。もちろん、醤油、葡萄酒は、一例であり、種々の食品(ウイスキー、焼酎、パン等)、原材料(麦等)、中間生成物(麦汁、麹、中種等)に適用可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、PC4は、マイク3によって集音された、対象物(例えば、もろみ)から発生される音に基づいて、加振器2による対象物の振動を制御する。これにより、可能な限り、オペレーター等による操作を排除することができるため、品質のばらつきを抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0046】
上述の実施形態では、対象物を振動させる手段として、加振器を例示した。これに限らず、例えば、バイブレーター等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、対象物を振動させるシステム、方法、製造方法、食品、及び、清酒に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0048】
1 システム
2 加振器(振動部)
3 マイク(集音部)
4 PC(制御部)
100 醸造タンク
図1
図2
図3