IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-非水電解液二次電池 図1
  • 特開-非水電解液二次電池 図2
  • 特開-非水電解液二次電池 図3
  • 特開-非水電解液二次電池 図4
  • 特開-非水電解液二次電池 図5
  • 特開-非水電解液二次電池 図6
  • 特開-非水電解液二次電池 図7
  • 特開-非水電解液二次電池 図8
  • 特開-非水電解液二次電池 図9
  • 特開-非水電解液二次電池 図10
  • 特開-非水電解液二次電池 図11
  • 特開-非水電解液二次電池 図12
  • 特開-非水電解液二次電池 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184263
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20221206BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20221206BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20221206BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M10/0525
H01M50/538
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092004
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】丸山 舜也
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029HJ03
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA07
5H043EA32
5H043EA36
5H043EA60
5H043HA11E
5H043LA01E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】接続部を集箔するときの外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減すること。
【解決手段】幅が略一定の一端に負極接続部103を備えた帯状の負極板100と、幅が略一定の他端に正極接続部113を備えた帯状の正極板110と、セパレータ120とを備えて積層された積層体が捲回され、扁平に圧縮された電極体10の一端部の負極接続部103が集箔されて負極集電体13に接続され、他端部の正極接続部113が集箔されて正極集電体15に接続されているリチウムイオン二次電池であって、負極接続部103が外周になるにつれて負極接続部側にずれて捲回されるとともに、正極接続部113が外周になるにつれて正極接続部側にずれて捲回され、正極合材層は、負極合材層に対向している。このため接続部を集箔するときの外周部の角度が緩和され、外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅が略一定の帯状の金属箔からなる負極基材と、前記負極基材の両面に設けられた負極合材層と、前記負極基材の長手方向に直交する幅方向の一端部に設けられ前記負極合材層が設けられていない部分である負極接続部とを有する負極板と、
幅が略一定の帯状の金属箔からなる正極基材と、前記正極基材の両面に設けられた正極合材層と、前記正極基材の長手方向に直交する幅方向の他端部に設けられ前記正極合材層が設けられていない部分である正極接続部とを有する正極板と、
前記正極板及び前記負極板の間に設けられたセパレータと
を備えて積層された積層体が、捲回軸を中心に長手方向に捲回されているとともに、幅方向と直交する方向から扁平に圧縮された電極体と、
該電極体の幅方向の前記一端部の負極接続部が集箔された当該負極接続部に溶接により接合されている負極集電体と、前記他端部の正極接続部が集箔された当該正極接続部に溶接により接合されている正極集電体と、
を備える非水電解液二次電池であって、
少なくとも前記負極板が外周になるにつれて負極接続部側にずれて捲回されるか、又は前記正極板が外周になるにつれて正極接続部側にずれて捲回されるとともに、
前記正極板の前記正極合材層は、前記負極板の前記負極合材層に対向していることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
幅方向において、前記負極合材層の幅Wnは前記正極合材層の幅Wpより差ΔLだけ長く形成され、
前記セパレータは、前記負極板の負極合材層全体を覆うように配置され、
捲回された前記電極体の正極端子側の正極合材層の曲面中心部における端部と最外周部における端部との幅方向の位置の差ΔPmaxと、捲回された前記電極体の正極端子側の負極合材層の曲面中心部における端部と最外周部における端部との幅方向の位置の差ΔNmaxとの合計が、前記差ΔLより小さいことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記正極接続部は、前記正極集電体において溶接するために集箔された先端部の位置が一定になるように、捲回された前記電極体の正極端子側の正極合材層の捲回方向の端部の曲面部分の中心における前記正極接続部の端部と、最外周部における前記正極接続部の端部との幅方向の位置の差ΔPが設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記負極接続部は、前記負極集電体において溶接するために集箔された先端部の位置が一定になるように、捲回された前記電極体の負極端子側の負極合材層の捲回方向の端部の曲面部分の中心における前記負極接続部の端部と、最外周部における前記負極接続部の端部との幅方向の位置の差ΔNが設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方は、その両端部が捲回方向に対して設定した傾きを有した平行四辺形に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に係り、詳しくは、基材、合材層、セパレータ等の負担を軽減した非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であることから、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)等の駆動用電源として用いられている。
【0003】
一般的にリチウムイオン二次電池は、正極板及び負極板がセパレータを介して積層されて電極体を構成し、この電極体を電解液が充填された電池ケース内に収容されて構成される。特に近年は、帯状の正極板及び帯状の負極板がセパレータを介して積層され、この状態で積層体が長手方向に捲回され圧縮された状態の電極体が電池ケースに収容される捲回型のリチウムイオン二次電池が、効率が良く、コンパクトであるため、多く採用されている。
【0004】
図11(a)は、このような従来の捲回型のリチウムイオン二次電池の電極体10の製造工程において、負極板100、正極板110、セパレータ120を積層した電極体10の状態を、捲回方向L(図8参照、負極板100、正極板110の長手方向)と直交する幅方向W(図10参照)の断面の模式図である。図11(a)に示すように、負極板100と正極板110は、積層される際に、負極板100と正極板110とが幅方向にずらされて積層される。そして、幅方向の一端には、負極合材層102が設けられていない負極接続部103が多数突出する。また、幅方向の他端には、正極合材層112が設けられていない正極接続部113が多数突出する。
【0005】
図11(b)は、このような従来のリチウムイオン二次電池の電極体10の模式図である。製造工程において、負極接続部103と正極接続部113を、捲回方向L及び幅方向Wと直交する厚み方向に圧縮する。負極集電体13、正極集電体15を溶接した状態の幅方向の水平断面の模式図である。図11(b)に示すように、負極接続部103と正極接続部113とは、それぞれ厚み方向に圧縮されて集箔される。集箔された負極接続部103は負極集電体13に溶接される。正極接続部113は正極集電体15に溶接される。接続部に溶接された集電体の一部は、電池ケースの外部へ露出して設けられ、リチウムイオン二次電池の外部において負極外部端子14、正極外部端子16と接続される(図7参照)。
【0006】
しかしながら、このように接続部と集電体を接続すると、捲回された電極体の外周部分は、集箔される位置までの距離が長く、集箔された接続部における長さがばらばらになってしまう。
【0007】
図12は、特許文献1に示された電極体10が捲回される前の構成を示す図である。このような問題に対し特許文献1に以下のような発明が開示された。図12に示すように、負極接続部103と正極接続部113とは、それぞれ原形が長方形である。捲回外周側から捲回中心側に向けて切取り部104、114の部分で切り取られ、中心側に向かって長さが徐々に短くなっている。図13は、特許文献1に示された電極体10が捲回された後の構成を示す幅方向の部分断面図である。このように負極接続部103から切取り部104が切り取られ、正極接続部113から切取り部114が切り取られたため、この積層体を捲回していくと、図13に示すように、集箔された負極接続部103では、その先端部の位置が揃う。
【0008】
特許文献1のような構成とすれば、接続部の先端部が揃い、捲回された電極体と集電体との溶接部における溶接面積を均一化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-060045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、接続部の先端を揃えても、接続部を集箔するときには、外周部の接続部が中心部に向かって急激に折り曲げられることになる。急激に折り曲げられると、折り曲げ部分に応力が集中し、金属箔からなる基材、樹脂を含む合材層、薄い樹脂製のセパレータ等に負担をかけることになるという問題がある。
【0011】
本発明の非水電解液二次電池が解決しようとする課題は、接続部を集箔するときの外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の非水電解液二次電池では、幅が略一定の帯状の金属箔からなる負極基材と、前記負極基材の両面に設けられた負極合材層と、前記負極基材の長手方向に直交する幅方向の一端部に設けられ前記負極合材層が設けられていない部分である負極接続部とを有する負極板と、幅が略一定の帯状の金属箔からなる正極基材と、前記正極基材の両面に設けられた正極合材層と、前記正極基材の長手方向に直交する幅方向の他端部に設けられ前記正極合材層が設けられていない部分である正極接続部とを有する正極板と、前記正極板及び前記負極板の間に設けられたセパレータとを備えて積層された積層体が、捲回軸を中心に長手方向に捲回されているとともに、幅方向と直交する方向から扁平に圧縮された電極体と、該電極体の幅方向の前記一端部の負極接続部が集箔された当該負極接続部に溶接により接合されている負極集電体と、前記他端部の正極接続部が集箔された当該正極接続部に溶接により接合されている正極集電体と、を備える非水電解液二次電池であって、少なくとも前記負極板が外周になるにつれて負極接続部側にずれて捲回されるか、又は前記正極板が外周になるにつれて正極接続部側にずれて捲回されるとともに、前記正極板の前記正極合材層は、前記負極板の負極合材層に対向していることを特徴とする。
【0013】
幅方向において、前記負極合材層の幅Wnは前記正極合材層の幅Wpより差ΔLだけ長く形成され、前記セパレータは、前記負極板の負極合材層全体を覆うように配置され、捲回された前記電極体の正極端子側の正極合材層の曲面中心部における端部と、最外周部における端部との幅方向の位置の差ΔPmaxと、捲回された前記電極体の正極端子側の負極合材層の曲面中心部における端部と、最外周部における端部との幅方向の位置の差ΔNmaxとの合計が、前記差ΔLより小さいものとすることが好ましい。
【0014】
前記正極接続部は、前記正極集電体において溶接するために集箔された先端部の位置が一定になるように、捲回された前記電極体の正極端子側の正極合材層の捲回方向の端部の曲面部分の中心における前記正極接続部の端部と、最外周部における前記正極接続部の端部との幅方向の位置の差ΔPが設定されていることも好ましい。
【0015】
また、前記負極接続部は、前記負極集電体において溶接するために集箔された先端部の位置が一定になるように、捲回された前記電極体の負極端子側の負極合材層の捲回方向の端部の曲面部分の中心における前記負極接続部の端部と、最外周部における前記負極接続部の端部との幅方向の位置の差ΔNが設定されていることも好ましい。
【0016】
なお、前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方は、その両端部が捲回方向に対して設定した傾きを有した平行四辺形に形成してもよい。
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池である場合に好適に適用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非水電解液二次電池によれば、接続部を集箔するときの外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)本実施形態の電極体における負極板と、正極板との位置関係を示す模式図。(b)図1(a)のように積層した電極体の負極接続部と正極接続部を集箔して、負極集電体と正極集電体をそれぞれ溶接した状態を示す模式図。
図2図1(b)に示す集箔された電極体の正極接続部側の拡大図。
図3】(a)本実施形態の負極板を展開した図。(b)本実施形態の正極板を展開した図。
図4】(a)別の実施形態の負極板を展開した図。(b)別の実施形態の正極板を展開した図。
図5】(a)別の実施形態の電極体における負極板と、正極板との位置関係を示す模式図。(b)図5(a)のように積層した電極体の負極接続部と正極接続部を集箔して、負極集電体と正極集電体をそれぞれ溶接した状態を示す模式図。
図6】(a)さらに別に実施形態の電極体における負極板と、正極板との位置関係を示す模式図。(b)図6(a)のように積層した電極体の負極接続部と正極接続部を集箔して、負極集電体と正極集電体をそれぞれ溶接した状態を示す模式図。
図7】リチウムイオン二次電池のセル電池の斜視図。
図8】捲回される電極体の構成を示す模式図である。
図9】リチウムイオン二次電池の電極体の構成を示す模式図。
図10】捲回された電極体の幅方向の負極接続部側の端部を示す斜視図。
図11】(a)従来のリチウムイオン二次電池の電極体の製造工程において、負極板、正極板、セパレータを積層した電極体の状態を、捲回方向と直交する幅方向の断面の模式図。(b)従来のリチウムイオン二次電池の電極体の製造工程において、負極接続部と正極接続部を、捲回方向と直交する幅方向に圧縮して、負極集電体、正極集電体を溶接した状態を、捲回方向と直交する幅方向の断面の模式図。
図12】特許文献1に示された電極体が捲回される前の構成を示す図。
図13】特許文献1に示された電極体が捲回された後の構成を示す幅方向の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~6を参照して、本発明の非水電解液二次電池を、リチウムイオン二次電池1を例に説明する。
(第1の実施形態の構成)
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池1(図7参照)について、その前提となる構成を説明する。本実施形態と従来のリチウムイオン二次電池は、負極板100と正極板110の配置を除き、基本的にその原理は共通する。そこで本実施形態のリチウムイオン二次電池1の説明に当たっては、説明の単純化のため、先に前提となる従来のリチウムイオン二次電池を図7~10を参照して説明する。
【0020】
<リチウムイオン二次電池1の基本構成>
図7は、リチウムイオン二次電池1の斜視図である。図7に示すようにリチウムイオン二次電池1は、セル電池として構成される。リチウムイオン二次電池1は、上側に開口部を有する直方体形状の電池ケース11を備える。電池ケース11は、電池ケース11を封止する蓋体12を備える。電池ケース11の内部には電極体10が収容される。電池ケース11内には図示しない注液孔から非水電解液17が注入される。電池ケース11及び蓋体12はアルミニウム合金等の金属で構成されている。リチウムイオン二次電池1は、電池ケース11に蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。またリチウムイオン二次電池1は、蓋体12に、電力の充放電に用いられる負極外部端子14、正極外部端子16を備えている。
【0021】
<電極体10>
図8は、捲回される電極体10の構成を示す模式図である。電極体10は、負極板100と正極板110とそれらの間に配置されたセパレータ120とが扁平に捲回されて形成されている。負極板100は、負極基材101上に負極合材層102が形成される。捲回される方向(捲回方向L)に直交する幅方向W(捲回軸方向)の一端側に負極合材層102が形成されておらず負極基材101が露出した負極接続部103が設けられている。正極板110は、正極基材111上に正極合材層112が形成される。正極基材111が捲回される方向(捲回方向L)に直交する幅方向W(捲回軸方向)の他端側に正極合材層112が形成されておらず正極基材111が露出した正極接続部113が設けられている。
【0022】
<電極体10の積層体>
図9は、リチウムイオン二次電池1の電極体10の積層体の構成を示す模式図である。図9に示すように、リチウムイオン二次電池1の電極体10は、負極板100と正極板110とセパレータ120を備える。負極板100は、負極基材101の両面に負極合材層102を備える。正極板110は、正極基材111の両面に正極合材層112を備える。負極板100と、正極板110は、セパレータ120を介して重ねて積層体が構成される。この積層体が捲回軸を中心に長手方向に捲回され、扁平に整形されてなる電極体10を構成する。
【0023】
ここで、負極合材層102の負極接続部側端部を「負極接続部側負極合材層端部102n」といい、負極合材層102の正極接続部側端部を「正極接続部側負極合材層端部102p」という。
【0024】
また、正極合材層112の負極接続部側端部を「負極接続部側正極合材層端部112n」といい、正極合材層112の正極接続側端部を「正極接続部側正極合材層端部112p」という。
【0025】
負極接続部103は、負極板100の負極合材層102から電気を取り出す集電部として機能する。正極接続部113は、正極板110の正極合材層112から電気を取り出す集電部として機能する。
【0026】
<電極体10の端部構成>
図10は、捲回された電極体10の幅方向Wの負極接続部側の端部を示す斜視図である。電極体10は捲回軸を中心に捲回されると、幅方向Wと直交する厚さ方向Dから圧縮されて断面が競走用トラック状の扁平な形状に整形される。扁平な電極体10は、図7に示すように電池ケース11に収容され、負極接続部103には、負極集電体13が溶接される。正極接続部113には正極集電体15が溶接される。接続部と集電体との溶接方法としては、例えば超音波溶接や抵抗溶接、電気溶接がある。そして、蓋体12を貫通して負極集電体13には負極外部端子14が接続され、正極集電体15には正極外部端子16が接続される。
【0027】
捲回された電極体10を構成する負極板100及び正極板110は、中心から渦巻き状に捲回されている、負極接続部側から幅方向Wに見ると、その外観は競走用のトラックのような形状となっており、上端及び下端は半円弧状で、負極板100及び正極板110により「曲面部R」が形成されている。また、中央部は直線状で、負極板100及び正極板110により「平面部F」が形成されている。ここで、本実施形態では、半円弧状の「曲面部R」部分の中心に相当する部分を「曲面中心C」という。
【0028】
<負極板100>
図9に示すように、負極基材101の両面に負極合材層102が形成されて負極板100が構成されている。負極基材101は、実施形態ではCu箔から構成されている。負極基材101は、負極合材層102の骨材としてのベースとなるとともに、負極合材層102から電気を集電する集電部材の機能を有している。負極板100は、金属製の負極基材101上に負極合材層102が形成される。第1の実施形態では負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であり、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いる。
【0029】
負極板100は、例えば、負極活物質と、溶媒と、結着剤(バインダー)とを混練し、混練後の負極合材を負極基材101に塗布して乾燥することで作製される。
<正極板110>
図9に示すように、正極基材111の両面に正極合材層112が形成されて正極板110が構成されている。正極基材111は、本実施形態ではAl箔やAl合金箔から構成されている。正極基材111は、正極合材層112の骨材としてのベースとなるとともに、正極合材層112から電気を集電する集電部材の機能を有している。
【0030】
正極板110は、正極基材111の表面に正極合材層112が形成されている。正極合材層112は正極活物質を有する。正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等を用いることができる。また、LiCoO、LiMn、LiNiOを任意の割合で混合した材料を用いてもよい。
【0031】
また、正極合材層112は、導電材を含む。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛(グラファイト)を用いることができる。
【0032】
正極板110は、例えば、正極活物質と、導電材と、溶媒と、結着剤(バインダー)とを混練し、混練後の正極合材を正極基材111に塗布して乾燥することで作製される。
<セパレータ120>
セパレータ120は、負極板100及び正極板110の間に非水電解液17を保持するためのポリプロピレン製等の不織布である。また、セパレータ120としては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、又は、リチウムイオンもしくはイオン導電性ポリマー電解質膜を、単独、又は組み合わせて使用することもできる。非水電解液17に電極体10に浸漬させるとセパレータ120の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0033】
<非水電解液17>
図7に示す非水電解液17は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)を用いることができる。また、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料でもよい。また、支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
【0034】
<本実施形態の特徴>
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の特徴は、電極体10における負極板100と、正極板110との位置関係にある。
【0035】
<負極板100と、正極板110との位置関係>
図1(a)は、本実施形態の電極体10における負極板100と、正極板110との位置関係を示す模式図である。図1(a)は、図10に示す曲面中心Cに沿ったA-A部分の電極体10の断面図である。なお、図面は、負極板100、正極板110、セパレータ120の実際の厚さ方向D、幅方向Wの長さ等を反映したものではなく、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の電極体10の構成を説明するための模式図である。したがって本実施形態は、図面の寸法に限定されない。他の図面においても同様である。
【0036】
ここで、負極板100を捲回したときに、曲面中心Cから離れる側を「外周側」とする。そうすると、負極板100は、曲面中心Cに配置された負極板100が最も幅方向Wにおいて正極接続部側(図上右側)に配置され、外周側に向かって、負極接続部側(左側)にずれるように配置される。
【0037】
一方、正極板110は、曲面中心Cに配置された正極板110が最も幅方向Wにおいて負極接続部側(図上左側)に配置され、外周側に向かって、正極接続部側(右側)にずれるように配置される。
【0038】
<集箔時の負極板100と、正極板110>
図1(b)は、図1(a)のように積層した電極体10の負極接続部103と正極接続部113を集箔して、負極集電体13と正極集電体15をそれぞれ溶接した状態を示す模式図である。負極板100は、負極接続部103の先端が厚さ方向Dに集箔される。このとき、正極板110は、負極板100より比較的固く、そのため、負極板100は、正極板110の基端部110eで折れ曲がり集箔される。本実施形態では、複数の負極接続部103が集箔されたときに、負極接続部103の先端103tの幅方向Wにおける位置が一定となり、先端103tが揃った状態となるように設定されている。
【0039】
正極板110は、正極接続部113の先端が厚さ方向Dに集箔される。このとき、正極接続部113は、セパレータ120を介して負極板100に挟まれた状態となっている。Al箔からなる正極接続部113は、負極板100より柔らかく、そのため、正極接続部113は、負極板100の基端部100eで、セパレータ120とともに折れ曲がり集箔される。本実施形態では、複数の正極接続部113が集箔されたときに、正極接続部113の先端113tの幅方向Wの位置が一定となり、先端113tが揃った状態となるように設定されている。
【0040】
<第1のずれ量の設定>
図2は、図1(b)に示す集箔された電極体10の正極接続部側の拡大図である。ここでは、第1のずれ量の設定を、正極接続部側の拡大図で説明する。
【0041】
前提として、図1(a)に示すように負極合材層102の幅方向Wの長さである負極合材層の「幅Wn」は、正極合材層112の幅方向Wの長さである正極合材層の「幅Wp」より長く形成されている。この負極合材層の幅Wnと正極合材層の幅Wpの長さの差を「差ΔL」とする。
【0042】
もう一つの前提として、正極合材層112は、必ず負極合材層102に対向する位置に配置される。正極合材層112が負極合材層102に対向していなければ、その部分は、リチウムイオンの遣り取りが困難となるためである。なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、負極容量が正極容量より大きい「正極規制」となっており、正極合材層112のすべてが負極合材層102に対向してリチウムイオンの遣り取りができれば、リチウムイオン二次電池1としての容量が規制されることはない。
【0043】
図2に示すように、負極板100の正極接続部側の端部である基端部100eは、曲面中心Cで最も正極接続部側に位置している。そこから外周側になるに連れて、負極接続部側にずれている。この曲面中心Cでの負極板100の基端部100eの幅方向Wの位置を基準として、外周側の基端部100eの幅方向Wにおける位置の差を「負極位置差ΔN」とする。そうすると、最外周の負極板100の基端部100eの負極位置差ΔNが最も大きくなる。この最外周の負極板100の基端部100eの負極位置差ΔNを「負極最大位置差ΔNmax」とする。
【0044】
同様に、正極板110の正極接続部側の正極合材層112の端部である「正極接続部側正極合材層端部112p」は、曲面中心Cで最も負極接続部側に位置している。そこから外周側になるに連れて、正極接続部側にずれている。この曲面中心Cでの正極接続部側正極合材層端部112pの幅方向Wにおける位置を基準として、外周側の正極接続部側正極合材層端部112pの幅方向Wにおける位置の差を「正極位置差ΔP」とする。そうすると、最外周の正極接続部側正極合材層端部112pの正極位置差ΔPが最も大きくなる。この最外周の正極接続部側正極合材層端部112pの正極位置差ΔPを「正極最大位置差ΔPmax」とする。
【0045】
前述のように、前提として、第1に図1(a)に示すように負極合材層102の幅方向Wの長さである負極合材層の「幅Wn」は、正極合材層112の幅方向Wの長さである正極合材層の「幅Wp」より「差ΔL」だけ長く形成されている。また、第2に正極合材層112は、必ず負極合材層102に対向する位置に配置される。
【0046】
これらの前提条件を考慮すると、正極合材層112は、負極合材層102に対して、最大で差ΔLのずれが許容される。
ここで、正極合材層112の負極合材層102に対するずれ量は、負極最大位置差ΔNmaxと正極最大位置差ΔPmaxの和である。
【0047】
そうすると、
負極最大位置差ΔNmax+正極最大位置差ΔPmax≦ΔL…(式1)
を満たす関係となる。
【0048】
ここで、負極最大位置差ΔNmax若しくは正極最大位置差ΔPmaxは、その値をゼロとすることが許容される。すなわち、負極板100もしくは正極板110のいずれか一方が、幅方向Wにおけるずれがなく、同じ幅方向Wの位置に揃っているような構成も許容される。具体的な構成は、第3の実施形態及び第4の実施形態において説明する。
【0049】
以上のような第1のずれ量の設定で、正極合材層112は、必ず負極合材層102に対向する位置の範囲内で負極合材層102対する正極合材層112の最大のずれ量を設定できる。
【0050】
<第2のずれ量の設定>
ずれ量の設定に関して、第1のずれ量の設定では、最大のずれ量を設定するが、第2のずれ量の設定では、集箔された負極接続部103及び正極接続部113に関するずれ量の設定である。
【0051】
<正極でのずれ量の設定>
図2に示す正極接続部113は、曲面中心C側に隣接する負極板100の基端部100eに沿って折れ曲がり、集箔される。なお、図2においては、実際にはセパレータ120は柔軟なため折れ曲がるが、図解の見やすさからセパレータ120の屈曲の図示を省略して、図を簡略化している。これらの正極接続部113が、正極接続部113の集箔部113aの先端113tの位置が幅方向Wにおいて揃うことが、均一な導電性、機械的な応力の均一化、先端113tに異物が混入しにくいなどの理由から好ましい。
【0052】
そのためには、正極接続部側正極合材層端部112pから負極板100の基端部100eまでの平坦部113cの長さと、負極板100の基端部100eから集箔部113aまでの屈曲部113bの長さの合計が等しいことが望まれる。なお、各正極接続部113の集箔部113aの長さは等しい。
【0053】
<負極でのずれ量の設定>
図1(b)に示す負極接続部103は、曲面中心C側に隣接する正極板110の基端部110eに沿って折れ曲がり、集箔される。なお、図1(b)に示すように、セパレータ120は柔軟なため、負極板100とともに折れ曲がる。これらの負極接続部103が、負極接続部103の集箔部103aの先端103tの位置が幅方向Wにおいて揃うことが、均一な導電性、機械的な応力の均一化、先端103tに異物が混入しにくいなどの理由から好ましい。
【0054】
そのためには、正極板110の基端部110eから集箔部103aまでの屈曲部103bの長さが等しいことが望まれる。なお、各負極接続部103の集箔部103aの長さは等しい。
【0055】
<負極板100の形状>
このような第2のずれ量の設定におけるずれ量を設定するために、本実施形態では以下のような構成を備える。
【0056】
図3(a)は、負極板100を展開した図である。二点鎖線で示す形状は、従来の長方形の正極板の形状を比較のため記載したものである。
図3(a)に示すように、負極板100は、捲回方向Lに捲回すると、図の下部が捲回中心となり、図の上部が外周側となる。この負極板100を捲回し、扁平に整形する。そして電極体10において、図2に示すように、曲面中心部の負極板100の幅方向Wの位置より外周側の負極板100の幅方向Wの位置がΔNmaxだけずれるように、上端部は下端部よりΔNmaxだけ幅方向Wにおいて負極接続部側に位置している。
【0057】
そして、正極板110の基端部110eから集箔部103aまでの屈曲部103bの長さが等しくなるように、その位置が特定され、その位置に基づいた曲線となっている。
その結果、負極板100は、このような構成となっているため、これを捲回し整形すると、正極板110の基端部110eから、負極接続部103の集箔部103aまでの屈曲部103bの長さが等しくなる。
【0058】
<正極板110の形状>
図3(b)は、正極板110を展開した図である。二点鎖線で示す形状は、従来の長方形の正極板の形状を比較のため記載したものである。
【0059】
図3(b)に示すように、正極板110は、捲回方向Lに捲回すると、図の下部が捲回中心となり、図の上部が外周側となる。したがって、この正極板110を捲回し、扁平に整形する。そうすると電極体10において、図2に示すように、曲面中心Cの正極板110の幅方向Wの位置より外周側の正極板110の幅方向Wの位置がΔPmaxだけずれるように、上端部は下端部よりΔPmaxだけ幅方向Wにおいて正極接続部側に位置している。
【0060】
そして、正極接続部側正極合材層端部112pから負極板100の基端部100eまでの平坦部113cの長さと、負極板100の基端部100eから集箔部113aまでの屈曲部113bの長さの合計が等しくなるように、その位置が特定され、その位置に基づいた曲線となっている。
【0061】
その結果、正極板110は、このような構成となっているため、これを捲回し整形すると、正極接続部側正極合材層端部112pから負極板100の基端部100eまでの平坦部113cの長さと、負極板100の基端部100eから集箔部113aまでの屈曲部113bの長さの合計が等しくなる。
【0062】
<負極板100と正極板110との積層>
負極板100と正極板110は、積層されて上述のように、それぞれΔNmax、ΔPmaxだけずれて捲回される。その結果、負極板100と正極板110のずれは、ΔNmax+ΔPmaxとなる。この値は、ΔNmax+ΔPmax≦ΔLに調整されているので、最外周部においても、正極板110の正極合材層112は、負極板100の負極合材層102の範囲を逸脱することがない。その結果、正極合材層112は、必ず負極合材層102に対向した位置になる。
【0063】
<負極板100及び正極板110の製造方法>
上述のような負極板100及び正極板110は、例えば、以下の方法で製造する。負極基材101及び正極基材111は、例えば、十分な面積を持った、Al、Cuなどの金属箔をプレスで所定の形状に打ち抜くようにして作成する。あるいは、一定の幅を持ったAl、Cuなどの金属箔を、所定の長さに切断するとともに、接続部側と反対側の凸となる部分を、プレスロールなどを用いて延伸するようにしてもよい。
【0064】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の電極体10は、上記のような構成を備えるため、次のような作用を奏する。
【0065】
図1(b)に示すように、正極においては、図11(b)に示す従来技術と比較すると、幅方向Wにおける集箔の位置が同じであれば、正極接続部113の屈曲の角度が緩和されるため、正極接続部113の金属箔に係る応力が低減し、正極接続部113に係る負荷を小さくすることができる。
【0066】
また図1(b)に示すように、負極においては、図11(b)に示す従来技術と比較すると、幅方向Wにおける集箔の位置が同じであれば、負極接続部103の屈曲の角度が緩和されるため、負極接続部103の金属箔に係る応力が低減し、負極接続部103に係る負荷を小さくすることができる。
【0067】
図1(b)に示すように、正極においては、図11(b)に示す従来技術と比較すると、幅方向Wにおける集箔の位置が同じであれば、正極接続部113の屈曲の角度が緩和されるため、セパレータ120に係る応力を低減させ、セパレータ120に係る負荷を小さくすることができる。
【0068】
図1(b)に示すように、負極においては、図11(b)に示す従来技術と比較すると、幅方向Wにおける集箔の位置が同じであれば、負極接続部103の屈曲の角度が緩和されるため、セパレータ120に係る応力を低減させ、セパレータ120に係る負荷を小さくすることができる。
【0069】
負極接続部側では、負極接続部側負極合材層端部102nが集箔部103aに近くなるため、強度の低い金属箔のみの部分を短くすることができる。
集箔した場合に、負極接続部103の先端103tの幅方向Wの位置が揃うため、集箔時に外周側の金属箔に過度の張力を与える必要はない。
【0070】
正極板110の正極合材層112は、必ず、負極合材層102に対向して配置されているため、正極規制のリチウムイオン二次電池の場合は、容量が低下することがない。
あらかじめ、負極板100の形状を、捲回し整形し、集箔した場合に、負極接続部103の先端103tが揃うように成形している。このため、所定の負極板100を捲回し整形するだけで、負極接続部103の先端103tを揃えることができる。
【0071】
同様にあらかじめ、正極板110の形状を、捲回し整形し、集箔した場合に、正極接続部113の先端113tが揃うように成形している。このため、所定の正極板110を捲回し整形するだけで、正極接続部113の先端113tを揃えることができる。
【0072】
(第1の実施形態の効果)
(1-1)本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、外周になるにつれて負極接続部103が負極接続部側に、正極接続部113が正極接続部側にずれて捲回される。このため、負極接続部側では、負極接続部側負極合材層端部102nが集箔部103aに近くなるため、強度の低い金属箔のみの部分を短くすることができる。また、正極接続部側では正極接続部側正極合材層端部112pが集箔部113aに近くなるため、強度の低い金属箔のみの部分を短くすることができる。
【0073】
(1-2)また、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、外周になるにつれて正極接続部113が正極接続部側に、負極接続部103が負極接続部側にずれて捲回される。このため、外周ほど薄い金属箔のみで構成される負極接続部103の屈曲角度を緩和して、これに伴う負極板100やセパレータ120の屈曲角度を緩和して、負極板100やセパレータ120の負荷を軽減することができる。
【0074】
(1-3)また、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、外周になるにつれて負極接続部103が負極接続部側に、正極接続部113が正極接続部側にずれて捲回される。このため、外周ほど薄い金属箔のみで構成される正極接続部113の屈曲角度を緩和して、これに伴う正極板110やセパレータ120の屈曲角度を緩和して、正極板110やセパレータ120の負荷を軽減することができる。
【0075】
(1-4)本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、負極板100の負極接続部103の先端103tが、集箔されたときに幅方向Wにおいて一致するように調整されている。また、正極板110の正極接続部113の先端113tが、集箔されたときに幅方向Wにおいて一致するように調整されている。そのため、均一な導電性を得ることができる。また、機械的な応力の均一化ができる。さらに、先端103t、113tに異物が混入しにくいなどの効果がある。
【0076】
(第2の実施形態)
図4(a)は、第2の実施形態の負極板100を展開した図である。図4(b)は、第2の実施形態の正極板110を展開した図である。
【0077】
第2の実施形態は、第1の実施形態と、負極板100と正極板110の形状が異なる点で相違する。それ以外の構成は、負極板100と正極板110の形状が異なる点に起因する構成の違い以外はなく、共通の構成であるため、その説明は省略する。
【0078】
図3(a)に示す第1の実施形態では、負極板100の幅Wnは一定であり、負極板100のずれは、負極板100の集箔部103aの先端103tの位置が揃うようにずれている。すなわち、捲回し整形したときに負極板100の負極接続部103は、正極板110の基端部110eで屈曲し、ここから、負極接続部103の集箔部103aまでの屈曲部103bにより接続される。このとき、同じ長さの負極接続部103の先端103tの位置が揃うようにずらしている。このようなずらし量に基づいて負極板100は、曲線により形状が特定されていた。一方、第2の実施形態の負極板100では、図4(a)に示す下部の捲回中心から、上部の外周側に向けて、捲回中心では、ずれ量がゼロの状態から、上端がずれ量がΔNmaxとなるように、直線で構成される。したがって、第2の実施形態では、負極板100は、捲回し整形すると正極板110の基端部110eから、負極接続部103の集箔部103aまでの屈曲部103bの長さが厳密に等しくならない。つまり、負極接続部103の先端103tの位置が揃わない。
【0079】
しかしながら、第2の実施形態のように直線で構成しても、負極板100は、捲回し整形すると正極板110の基端部110eから、負極接続部103の集箔部103aまでの屈曲部103bの長さが概ね等しくなる。したがって第2の実施形態のリチウムイオン二次電池1が、本発明の接続部を集箔するときの外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減するという課題を解決する手段として、第1の実施形態と概ね同様の効果がある。その一方で、その製造は極めて容易になる。
【0080】
すなわち、幅Wnの負極板100を形成するためには、ずれの傾きを、「傾きθ」としたとき、幅Wn×Cosθの帯状の金属箔を、幅方向と傾きθで切断するだけで、容易に負極板100を製作することができる。
【0081】
以上、負極板100について説明したが、図4(b)に示す正極板110においても、同じ長さの正極接続部113の先端113tが厳密に位置が揃うわけではない。しかしながら、負極板100と同様に本発明の接続部を集箔するときの外周部の基材、合材層、セパレータ等の集箔の際の負担を軽減するという課題を解決する手段として、第1の実施形態と概ね同様の効果がある。その一方で、その製造は極めて容易になる。正極板110においても、同様に幅Wpの正極板110を形成するためには、ずれの傾きを、「傾きθ´」としたとき、幅Wp×Cosθ´の帯状の金属箔を、幅方向と傾きθ´で切断するだけで、容易に正極板110を製作することができる。
【0082】
(第2実施形態の効果)
(2-1)上述のとおり、簡易な製造方法で、第1の実施形態の効果に近い効果を奏することができる。
【0083】
(第3の実施形態)
図5(a)は、第3の実施形態のリチウムイオン二次電池1の電極体10における負極板100と、正極板110との位置関係を示す模式図である。図5(b)は、(a)のように積層した電極体10の負極接続部103と正極接続部113を集箔して、負極集電体13と正極集電体15をそれぞれ溶接した状態を示す模式図である。
【0084】
第1の実施形態のリチウムイオン二次電池1では、負極板100は、曲面中心Cに配置された負極板100が最も幅方向Wが正極接続部側(図上右側)に配置され、外周側に向かって、負極接続部側(左側)にずれるように配置される。
【0085】
一方、正極板110は、曲面中心Cに配置された正極板110が最も幅方向Wが負極接続部側(図上左側)に配置され、外周側に向かって、正極接続部側(右側)にずれるように配置される。
【0086】
これに対し、第3の実施形態のリチウムイオン二次電池1も第1の実施形態と同じように、負極板100は、曲面中心Cに配置された負極板100が最も幅方向Wが正極接続部側(図上右側)に配置され、外周側に向かって、負極接続部側(左側)にずれるように配置される。
【0087】
一方、第3の実施形態の正極板110は、第1の実施形態とは異なり幅方向Wにおけるずれがないように、幅方向Wにおいて同じ位置に揃うように配置されている。
(第3の実施形態の効果)
(3-1)本実施形態のリチウムイオン二次電池では、外周になるにつれて負極接続部103が負極接続部側にずれて捲回される。このため、負極接続部側では、負極接続部側負極合材層端部102nが集箔部103aに近くなるため、強度の低い金属箔のみの部分を短くすることができる。
【0088】
(3-2)また、本実施形態のリチウムイオン二次電池では、外周になるにつれて負極接続部103が負極接続部側にずれて捲回される。このため、外周ほど薄い金属箔のみで構成される正極接続部113の屈曲角度を緩和して、これに伴うセパレータ120の屈曲角度を緩和して、セパレータ120の負荷を軽減することができる。
【0089】
(第4の実施形態)
図6(a)は、第4の実施形態のリチウムイオン二次電池1の電極体10における負極板100と、正極板110との位置関係を示す模式図である。図6(b)は、図6(a)のように積層した電極体10の負極接続部103と正極接続部113を集箔して、負極集電体13と正極集電体15をそれぞれ溶接した状態を示す模式図である。
【0090】
第1の実施形態のリチウムイオン二次電池1では、負極板100は、曲面中心Cに配置された負極板100が最も幅方向Wが正極接続部側(図上右側)に配置され、外周側に向かって、負極接続部側(左側)にずれるように配置される。
【0091】
一方、正極板110は、曲面中心Cに配置された正極板110が最も幅方向Wが負極接続部側(図上左側)に配置され、外周側に向かって、正極接続部側(右側)にずれるように配置される。
【0092】
これに対し、第4の実施形態のリチウムイオン二次電池1でも、第1の実施形態と同様に正極板110は、曲面中心Cに配置された正極板110が最も幅方向Wが負極接続部側(図上左側)に配置され、外周側に向かって、負極接続部側(左側)にずれるように配置される。
【0093】
一方、第4の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、負極板100は、幅方向Wにおけるずれがないように幅方向Wにおいて同じ位置に揃うように配置されている。
(第4の実施形態の効果)
(4-1)第4の実施形態のリチウムイオン二次電池1では、外周になるにつれて正極接続部113が正極接続部側にずれて捲回される。このため、外周ほど薄い金属箔のみで構成される負極接続部103の屈曲角度を緩和して、これに伴うセパレータ120の屈曲角度を緩和して、セパレータ120の負荷を軽減することができる。
【0094】
(4-2)第4の実施形態のリチウムイオン二次電池1では、外周になるにつれて負極接続部103が負極接続部側にずれて捲回される。このため、正極接続部側では、正極接続部側正極合材層端部112pが集箔部113aに近くなるため、強度の低い金属箔のみの部分を短くすることができる。
【0095】
(その他の別例)
第1~4の実施形態は、以下のように実施することができる。
〇ずらし方は、図3、4のような捲回方向Lに対して側端部が傾きを有した負極板100、正極板110を用いた方法でなく、矩形状の負極板100、正極板110自体を用いて捲回方向を長手方向に対して傾けてずらしてもよい。この場合、矩形状の負極板100、正極板110の捲回基端部と捲回終端部では、捲回方向Lと直交した方向にならない。
【0096】
〇また、集箔にあたり、負極板100の負極接続部103の先端103tや、正極板110の正極接続部113の先端113tは、必ずしも第1の実施形態のように、揃える必要はない。
【0097】
〇また、ずれ量は、少なくともセパレータ120に応力が集中することによる負担が軽減されれば、十分である。このため、すべての隣接する極板で均等にずれていなくてもよく、ずれ量が均一でなかったり、一部ずれていない箇所があったりしてもよい。
【0098】
○図面で例示した、電極体10の捲回数、積層数や、厚さ・幅・長さのバランス、ずれ量、角度等は、説明のため簡略化若しくはデフォルメされており、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0099】
○実施形態では、積層体が捲回されたのちに扁平に整形されたものを例示したが、必ずしも捲回型のリチウムイオン二次電池は扁平に整形されたものに限定されるものではない。例えば、電極体10が円柱形に形成されるものにも本発明は好適に適用できる。
【0100】
○本実施形態のリチウムイオン二次電池は本発明の一実施形態であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、実施形態に限定されず当業者によりその構成を付加し、削除し、若しくは変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
1…リチウムイオン二次電池
10…電極体
11…電池ケース
12…蓋体
13…負極集電体
14…負極外部端子
15…正極集電体
16…正極外部端子
17…非水電解液
100…負極板
100e…基端部
101…負極基材
102…負極合材層
102p…正極接続部側負極合材層端部
102n…負極接続部側負極合材層端部
103…負極接続部
103a…集箔部
103b…屈曲部
103t…先端
110…正極板
110e…基端部
111…正極基材
112…正極合材層
112p…正極接続部側正極合材層端部
112n…負極接続部側正極合材層端部
113…正極接続部
113a…集箔部
113b…屈曲部
113c…平坦部
113t…先端
120…セパレータ
C…曲面中心部
R…曲面部
F…平面部
W…幅方向
Wn…負極合材層の幅
Wp…正極合材層の幅
ΔL…差(=Wn-Wp)
ΔN…負極位置差
ΔNmax…負極最大位置差
ΔP…正極位置差
ΔPmax…正極最大位置差
D…厚さ方向
L…捲回方向(長手方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13