(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184265
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20221206BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221206BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20221206BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20221206BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A63B37/00 542
A63B37/00 618
A63B37/00 418
A63B37/00 328
A63B37/00 534
A63B37/00 536
C08L21/00
C08K5/09
C08K5/14
C08K5/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092015
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳志
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002EG086
4J002EK027
4J002EV028
4J002FD038
4J002FD156
4J002FD207
4J002GC01
(57)【要約】
【課題】コア内部硬度分布における硬度差を大きく設定すると共に、ボール構造全体の特定荷重負荷時の圧縮変形量の適正化を図ることにより、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善し得るゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層を介在させてなるゴルフボールにおいて、上記コアは、下記(a)~(e)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、
(d)水、及び
(e)老化防止剤として、特定式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されると共に、コア及びボールに、それぞれ初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量が特定範囲に設定されるゴルフボールを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層を介在させてなるゴルフボールにおいて、上記コアは、下記(a)~(e)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、
(d)水、及び
(e)老化防止剤として、以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩
【化1】
(但し、式中Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されると共に、上記コアに初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量が4.1mm以上であり、且つ、ボールに初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量が3.0mm以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記(e)成分が、2-メルカプトベンゾイミダゾールである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して1.0質量部以上であり、上記(e)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.1質量部以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記中間層の材料硬度がショアD硬度で50以上であり、上記カバーの材料硬度がショアD硬度で60以上であり、下記式(1)の硬度関係、
カバー材料硬度>中間層材料硬度>コア表面硬度>コア中心硬度 ・・・(1)
を満たす請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】
コアとカバーとの硬度関係が、下記式(2)
(カバー材料のショアD硬度)-(コア中心のショアD硬度)≧30 ・・・(2)
を満たす請求項4記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと、カバーと、これらの間に挟まれた少なくとも1層の中間層とを具備する3層構造以上のマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、ゴルフボールはツーピースソリッドゴルフボールやスリーピースソリッドゴルフボールが主流となっている。これらのゴルフボールは、通常、ゴム組成物のコアに各種の樹脂材料からなる単層又は複数層のカバーを被覆した構造である。コアは、ゴルフボールの体積の大部分を占め、反発性や打感、耐久性等のボール諸物性に大きな影響を及ぼす。最近では、コアの断面硬度を適宜調整することで特異なコア硬度傾斜を実現し、ドライバーやアイアンのフルショット時のスピン特性適正化による飛距離向上を達成する技術が種々提案されている。コアの表面と中心の硬度差をより拡大することがドライバーのフルショット時のスピンを低減させる効果が分かっており、また、従来の知見からフルショット時のスピン低減は、飛距離向上の実現につながることが分かっている。従って、ゴルフボールの飛距離改善のために、コア内部の硬度差をより拡大させる技術が求められている。この技術を実現させる方法の一つには、コアを2層のゴム層で作る構造の提案がある。しかし、コアを生産するうえでの工数が単層ゴムコアと比較して多くなるため、単層コア内の硬度差を拡大する技術が依然として期待されている。
【0003】
また、コアの断面硬度を調整する方法については、コアのゴム組成物の配合成分や、加硫温度及び時間を適宜調整することなどが挙げられる。また、コアのゴム組成物の配合成分に関しては、共架橋剤や有機過酸化物の種類の選定や配合量を調整することなどが挙げられる。また、共架橋剤については、ゴルフボール分野では、メタクリル酸,アクリル酸及びこれら金属塩を使用することが知られている。しかし、上記の共架橋剤の配合の調整については、主にコアの硬度調整によるボールの打感調整を主眼としておりスピン特性を満足できるものにはなっていない。
【0004】
特開平11-169485号公報には、コア用ゴム組成物に特定量のポリエチレングリコールを配合する技術が提案されている。しかし、この技術は、内部離型剤としてポリエチレングリコールを配合してゴム成形物(コア)の金型離型性を良好なものにすることを目的としており、コア用ゴム組成物を配合成分の種類の選定等によりゴム成形物の内部硬度やボールの低スピン化をより一層実現するための技術の提案ではない。
【0005】
また、特開2013-108079号公報及び特開2013-108080号公報には、ゴルフボール用ゴム組成物中に配合する種々の添加剤について検討した結果、2-メルカプトベンゾイミダゾール等の特定のベンゾイミダゾールを配合することにより、ゴム加硫成形物の反発性を高め、適度な硬度を有する技術が提案されている。しかし、上記のゴム組成物は、ゴム成形物の内部硬度やボールの低スピン化をより一層実現するための技術の提案ではない
【0006】
更に、特開2015-47502号公報には、コア用ゴム組成物において、基材ゴムに水及び/又はモノカルボン酸金属塩を配合することにより、ゴルフボールの反発性を良好に維持し、低スピン化によって飛距離を伸ばすことができ、更には耐久性に優れる技術が提案されている。しかし、この技術においてもゴルフボールの低スピン化効果は十分ではなく、まだ低スピン化の改善の余地がある。
【0007】
そこで、本出願人は、先に、コア材料に、水またはアルコールと共に、老化防止剤として特定のベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩を配合することにより、コアの中心と表面との硬度差を大きく設定してゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させたゴルフボール用ゴム組成物を提案した(特開2020-2233号公報)。しかしながら、この提案はコアの内部硬度のみに着目しており、コアを被覆する各層の構造面での硬度や特定荷重で負荷したときの圧縮変形量(たわみ量)を適正化するものではなく、ボール全体の構造を改善することによりボールの低スピン化を改善する余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-169485号公報
【特許文献2】特開2013-108079号公報
【特許文献3】特開2013-108080号公報
【特許文献4】特開2015-47502号公報
【特許文献5】特開2020-2233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、コア内部硬度分布における硬度差を大きく設定すると共に、ボール構造全体の特定荷重負荷時の圧縮変形量の適正化を図ることにより、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善し得るゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層を介在させたゴルフボールについて、上記コアのゴム組成物の配合成分を、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(c)有機過酸化物、(d)水、及び(e)老化防止剤として、特定式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩の上記(a)~(e)成分を必須成分とすると共に、コア及びボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量(「たわみ量」ともいう。以下、同じ)をそれぞれ特定範囲に設定することにより、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を十分に発揮できるとともに、耐久性を良好に維持できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
なお、本出願人が先に提案した特開2020-2233号公報(特許文献5)では、コアの特定荷重負荷時の圧縮変形量が4.0mm付近の実施例が記載されているが、本発明では、コアの圧縮変形量が4.1mm以上の軟硬度領域であり、この軟硬度領域においても、コア用ゴム組成物に(d)水と(e)特定の老化防止剤とを併用することで、軟硬度領域(たわみ大)でも、コアの中心と表面との硬度差が大きくなる配合を見出し、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量を低減させることに成功したものである。また、通常、上記のようなコアの圧縮変形量が4.1mm以上の軟硬度領域では、ボール自体が軟らかすぎてしまい、割れが多くなり耐久性が悪化するものであるが、本発明のゴルフボールでは、コアを被覆する層を中間層及びカバー(最外層)の2層又はそれ以上に形成することにより耐久性を良好に維持できるものである。
【0012】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層を介在させてなるゴルフボールにおいて、上記コアは、下記(a)~(e)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、
(d)水、及び
(e)老化防止剤として、以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩
【化1】
(但し、式中Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されると共に、上記コアに初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量が4.1mm以上であり、且つ、ボールに初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量が3.0mm以上であることを特徴とするゴルフボール。
2.上記(e)成分が、2-メルカプトベンゾイミダゾールである上記1記載のゴルフボール。
3.上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して1.0質量部以上であり、上記(e)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.1質量部以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記中間層の材料硬度がショアD硬度で50以上であり、上記カバーの材料硬度がショアD硬度で60以上であり、下記式(1)の硬度関係、
カバー材料硬度>中間層材料硬度>コア表面硬度>コア中心硬度 ・・・(1)
を満たす上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール。
5.コアとカバーとの硬度関係が、下記式(2)
(カバー材料のショアD硬度)-(コア中心のショアD硬度)≧30 ・・・(2)
を満たす上記4記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴルフボールによれば、コアの表面と中心との硬度差を大きく設定すると共に、コア及びボールの所定荷重負荷時の圧縮変形量を特定範囲に設定することにより、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】各実施例及び各比較例のゴルフボールの圧縮変形量とドライバー(W#1)打撃時のスピン量との関係を示すグラフである。
【0015】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、特に図示してはいないが、内側からコア、中間層及びカバーを有する3層構造以上のマルチピースソリッドゴルフボールである。本発明では、中間層及びカバーを具備するスリーピース又はそれ以上の多層ゴルフボールであり、特に、軟硬度領域のディスタンス系のゴルフボールとして、以下に記載する最適なゴム組成物(コア配合)を提供するものである。
【0016】
上記コアは、下記の(a)~(e)成分を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されることを特徴とする。
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、
(d)水、及び
(e)老化防止剤として、特定式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩
【0017】
上記(a)成分の基材ゴムについては、特に制限されるものではないが、特にポリブタジエンを用いることが好適である。
【0018】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0019】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0020】
上記ポリブタジエンは、(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。
【0021】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0022】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0023】
なお、基材ゴム中には、上記ランタン系列希土類元素化合物とは異なる触媒にて合成されたポリブタジエンゴムを配合してもよい。また、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよく、これら1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0024】
ゴム全体に占める上記ポリブタジエンの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%、即ち基材ゴムの全てが上記ポリブタジエンであってもよい。
【0025】
次に、(b)成分は共架橋剤であり、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。この不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0026】
(b)成分の配合量は、上記(a)成分の基材ゴム100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、上限としては、好ましくは65質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは55質量部以下である。上記配合量が上記範囲より少ないと、軟らかくなり過ぎて反発性が悪いものとなり、上記範囲より多いと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなるとともに、脆く耐久性に劣るものとなる。
【0027】
(b)成分の共架橋剤は、平均粒度3~30μmを有することが好ましく、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは8~15μmである。上記共架橋剤の平均粒度が3μm未満では、ゴム組成物中で凝集しやすく、アクリル酸同士の反応性が向上してしまい、基材ゴム同士の反応性が減少してしまうため、ゴルフボールの反発性能を十分に得られないことがある。上記共架橋剤の平均粒度が30μmを超えると、共架橋剤粒子が大きくなり過ぎてしまい、得られるゴルフボールの特性のバラツキが大きくなる。
【0028】
(c)成分は有機過酸化物であり、この有機過酸化物としては、特に、1分間半減期温度が110~185℃である有機過酸化物を用いることが好適である。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。そのほかの市販品としては、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0029】
(c)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0030】
(d)成分の水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。
【0031】
(d)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上であり、上限値としては、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。(d)成分の配合量は上記範囲内とすることにより、軟らかいコアの内外の硬度差を大きくすることができる。上記の配合量が多すぎると、硬度が軟化し所望の打感や耐久性や反発性が得られず、配合量が少なすぎると、所望のコア硬度分布が得られず、打撃時のボールの低スピン化を十分に実現できなくなるおそれがある。
【0032】
(e)成分は、以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩であり、老化防止剤として用いられる。
【化2】
【0033】
上記式(1)中のRは、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。上記式(1)を有するベンゾイミダゾールとして、具体的には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール及びこれらの金属塩が例示され、金属塩としては、亜鉛塩であることが好適である。
【0034】
(e)成分の上記特定式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。(e)成分の配合量は上記範囲内とすることにより、上記(d)成分との併用効果により軟らかいコアの内外の硬度差を大きくすることができる。(e)成分の配合量が少なすぎると、コア表面近傍の架橋反応が効率的に促進されずに架橋密度が十分大きくならず、硬度の硬い層が十分形成されず、コア全体としてコア表面とコア中心の硬度差が十分大きくならず、十分な打撃耐久性能が得られないおそれがある。一方、(e)成分の配合量をむやみに多くしても得られる効果は、上記の好適な添加量以上には変わらない。
【0035】
上述した(a)~(e)の各成分の他には本発明の効果を妨げない限り、例えば、充填材や有機硫黄化合物、加工助剤などの各種添加物を配合することができる。
【0036】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0037】
有機硫黄化合物としては、特に制限はないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルポリスルフィド類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができる。具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド、2-チオナフトール等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0038】
有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることが推奨される。有機硫黄化合物の配合量が多すぎると、ゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0039】
加工助剤としては高級脂肪酸やその金属塩等を好適に用いることができる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等が挙げられ、特にステアリン酸が好ましい。高級脂肪酸の金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銅塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、スズ塩、コバルト塩、ニッケル塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等が挙げられ、特にステアリン酸亜鉛が好適に用いられる。加工助剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下とすることができる。この配合量が多すぎると、十分な硬度や反発が得られず、少なすぎると添加薬品が十分に分散せず、期待する物性を得ることができない場合がある。加工助剤の添加方法については、他の薬品と同時にミキサーに投入する方法、予め上記(b)成分等の他の薬品と事前混合して添加する方法、上記(b)成分等の他の薬品の表面にコーティングして添加する方法、上記(a)成分と共に事前にマスターバッチを作成して添加する方法等があるが、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明では、上記(e)成分として特定の老化防止剤が用いられるが、(e)成分とは異なる老化防止剤を(f)成分として含有することができる。この(f)成分として具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸などのヒンダードフェノール系老化防止剤が挙げられ、市販品としては、ノクラック200、同M-17(大内新興化学工業社製)、IRGANOX 1010(BASF社製)、アデカスタブ AO-20(ADEKA社製)等を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0041】
上記コアは、上記ゴム組成物を加硫硬化させることにより得られる加硫成形物である。上記コアは単層又は複数層であってもよく、上記加硫成形物は、単層又は複数層のコアの全部又は一部に用いることができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて、加硫成形物であるコアを製造することができる。
【0042】
上記コアは、上述した配合により、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することができ、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる。
【0043】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0044】
コアの中心硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは65以下である。コアの中心硬度が上記範囲を逸脱すると、打感が悪くなり、または耐久性が低下してしまうことがあり、低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0045】
コアの表面硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値としては、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは88以下である。コアの表面硬度が上記範囲よりも低すぎると、反発性が低くなり飛距離が十分に得られなくなることがある。また、コアの表面硬度が上記範囲よりも高すぎると、打感が硬くなり過ぎ、また、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0046】
上記コアの硬度分布については、表面と中心との硬度差が十分に大きくなり、具体的には、コアの表面(X)と中心(Y)との硬度差(X)-(Y)がJIS-C硬度で20以上であることが好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。上記硬度差の値が小さすぎると、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差の値が大きすぎると、ゴルフボールを実打したときのボール初速が低くなり飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。ここで、上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。また、JIS-C硬度とは、JIS K 6301-1975に規定するスプリング式硬度計(JIS-C形)で測定された硬度を意味する。
【0047】
また、本発明で用いるコアの硬度傾斜は、該コアの中心から表面に向かって、硬度が同等又は増加するものであって減少するものではないことが好適である。
【0048】
また、上記コア(加熱成形物)における初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の圧縮変形量については、4.1mm以上であり、好ましくは4.2mm以上、更に好ましくは4.5mm以上である。一方、コアの圧縮変形量の上限としては、特に制限はないが、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であることが推奨される。上記の値よりも大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎるため、十分な低スピン効果を得られず反発性も低下することがある。また、上記の値よりも小さすぎると、低スピン効果を得られず、打感が硬くなってしまうことがある。
【0049】
本発明では上記コアとカバー最外層との間には少なくとも1層の中間層を設ける。
【0050】
中間層の樹脂材料については、特に制限はないが、ゴルフボールに用いられている各種のアイオノマー樹脂等の公知の熱可塑性樹脂材料を使用することができる。
【0051】
また、中間層材料として、ボールの低スピン化をより一層実現するために、高度に中和されたアイオノマー材料を用いることが特に好ましい。具体的には、下記(i)~(iv)成分を配合した材料を用いることが好ましい。
(i-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(ii-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~0:100になるように配合した(i)ベース樹脂と、(ii)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(iii)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~80質量部と、
(ix)上記(i)成分及び(iii)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを配合する混合材料。特に、上記(i)~(ix)成分の混合材料を用いる場合には、酸基が70%以上中和されているものを採用することが好ましい。
【0052】
上記中間層の材料硬度は、ショアD硬度で50以上であり、好ましくは55以上とすることができる。また、その上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは65以下、より好ましくは60以下とすることができる。
【0053】
上記中間層の厚さは2.0mm以下に設定されるものであり、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。なお、下限値としては、特に制限はないが、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上である。上記中間層の厚さが上記数値範囲を逸脱すると、ドライバー(W#1)による低スピン効果が足りなくなり、飛距離が出なくなる場合がある。
【0054】
上記の中間層の形成方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、コアの周囲に中間層材料を射出成形用金型で射出して被覆球体を得ることや、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップを中間層材として上記コアを包み加熱加圧成形することによりコアを包囲した中間層被覆球体を作製することもできる。
【0055】
カバーの樹脂材料としては、特に制限はないが、上述した中間層材料と同種又は異種のアイオノマー樹脂や高中和型の樹脂材料のほか、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂を主材とすることができる。
【0056】
上記カバーの材料硬度は、ショアD硬度で50以上であり、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上である。その上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは70以下、より好ましくは65以下とすることができる。
【0057】
上記カバーの厚さは2.0mm以下に設定されるものであり、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。なお、下限値としては、特に制限はないが、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上である。上記カバーの厚さが上記数値範囲を逸脱すると、ドライバー(W#1)による低スピン効果が足りなくなり、飛距離が出なくなることがある。また、上記カバーの厚さが小さすぎると、耐久性が悪化することがある。
【0058】
コア、中間層及びカバーの硬度関係は、ドライバー(W#1)打撃時のスピン量の低減化を図るため、下記の式(1)を満たすことが好適である。
カバー材料硬度>中間層材料硬度>コア表面硬度>コア中心硬度 ・・・(1)
即ち上記式(1)を満たしたゴルフボールは、コアからカバー(最外層)に向かって硬度を漸次高くするように設定することで、ディスタンス系ボールに特化したゴルフボールである。
【0059】
また、コアとカバーとの硬度関係について、ドライバー(W#1)打撃時のスピン量の低減化を図るため、下記式(2)を満たすことが好適である。
(カバー材料のショアD硬度)-(コア中心のショアD硬度)≧30 ・・・(2)
(カバー材料のショアD硬度)-(コア中心のショアD硬度)の値は30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上である。
特に、上記式(2)を満たしたゴルフボールは、中心がより軟らかく、カバーがより硬い構造であり、ドライバー(W#1)でのスピン量を十分に低減させたディスタンス系ボールとして最適な構造になり得る。
【0060】
本発明におけるカバーを得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバーを被覆する方法等を採用できる。この場合、カバーの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、これにより、最終的に得られたゴルフボールは、反発性が高く、その上、打感が良く、耐擦過傷性に優れている。また、カバーの形成方法は、上記のほかに、例えば、本発明のカバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【0061】
なお、上記カバーの最外層の表面には、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。特に本発明のカバー材で形成されたカバーにこのような表面処理を施す場合、カバー表面の成形性が良好であるため作業性を良好にして行うことができる。
【0062】
本発明は、コアが軟らかい軟硬度領域のゴルフボールである。ゴルフボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの圧縮変形量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.0mm以上であり、好ましくは3.1mm以上、更に好ましくは3.2mm以上であり、上限値として、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下である。ゴルフボールの圧縮変形量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、十分な低スピン効果を得られず打感も硬くなることがある。一方、上記の圧縮変形量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、コア内外硬度差が小さくなり十分な低スピン効果を得られず反発性も低下してしまうことがある。
【実施例0063】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
〔実施例1~5,比較例1~9〕
実施例1,2及び比較例1,2については、下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム配合によりコア組成物を調整した後、155℃で20分間加硫を行い、コア表面の研磨工程を経て、直径37.6mmのコアを作製した。
また、実施例3~5及び比較例3~9については、下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム配合によりコア組成物を調整した後、上記と同様の条件で、155℃で20分間加硫を行い、コア表面の研磨工程を経て、直径37.6mmのコアを作製する。
【0065】
【0066】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR730」(JSR社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・有機過酸化物(I):ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・有機過酸化物(II):1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーオキサC-40」(日油社製)
・水:蒸留水
・老化防止剤(I):商品名「ノクラックMB」(大内新興化学工業社製)
・老化防止剤(II):商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛3種」(堺化学社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:ZHEJIANG SHOU&FU CHEM社製
【0067】
コアの断面硬度
上記の各実施例及び各比較例の直径37.6mmのコアについて、下記の方法により、表面及び中心を含む各位置の断面硬度を測定する。
(1)コアの表面硬度
23±1℃の温度で、球状のコアの表面部分に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度により、コアの表面の4点をランダムに測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。その測定値を表3に記載する。
(2)コアの断面硬度
断面がコアの中心を通るようにコアを平面状にカットして、23±1℃の温度で、前記平断面に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度計により、半球コアの中心硬度、および、中心から表面方向に向かって2mmごとの位置の硬度を測定し、1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。その測定値を表3に記載する。
【0068】
コア及びボールの圧縮変形量(たわみ量)
コア及びボールの各対象球体について、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までの対象球体の圧縮変形量(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0069】
中間層及びカバー(最外層)の形成
次に、実施例1,2及び比較例1,2については、下記射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表2に示す中間層の樹脂材料Aにより射出成形し、厚さ1.30mmでショアD硬度「57」の中間層を形成した。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示すカバー(最外層)の樹脂材料Cにより射出成形し、厚さ1.25mm、ショアD硬度「62」のカバーを形成した。
【0070】
また、実施例3~5及び比較例3~9については、下記射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表2に示す中間層の樹脂材料A又はBにより射出成形し、厚さ1.30mmでショアD硬度「57」又は「51」の中間層を形成する。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示すカバー(最外層)の樹脂材料C又はDにより射出成形し、厚さ1.25mm、ショアD硬度「62」又は「60」のカバーを形成する。
【0071】
【0072】
上記表中の配合成分の詳細は下記のとおりである。
・「HPF1000」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製
・「ハイミラン1605」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「AM7318」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「AM7327」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「酸化チタン」堺化学工業社製
【0073】
得られた各例のゴルフボールについて、ドライバースピン量を下記方法で調べ、その数値を表3に示す。
【0074】
ドライバー(W#1)打撃時のスピン量
ゴルフ打撃ロボットにブリヂストンスポーツ社製の「PHYZドライバー」(ロフト角10.5°)をつけて、ヘッドスピード(HS)45m/sで打撃した時のバックスピン量を測定する。
【0075】
【0076】
表3に示すように、実施例1~5のゴルフボールは、コアの表面と中心との硬度差が大きくなり、ドライバー打撃時のスピン量が低減し、ボールとしてのスピン性能が改善されることが分かる。
これに対して、比較例1~9は、各実施例と対比すると、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が相対的に多いことが
図1のグラフから分かる。
比較例1は、実施例1,3に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例2は、実施例2,4に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例3は、実施例1,3に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例4は、実施例2,4に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例5は、実施例1,3に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例6は、実施例2,4に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例7は、実施例1~6に対してカバーとコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例8は、実施例1に対してボール変形圧縮量が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。
比較例9は、実施例5に対してコア表面とコア中心の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のボールのスピン量が多い。