(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184293
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】牽引装置およびこれを備える無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B61D 47/00 20060101AFI20221206BHJP
F16H 25/12 20060101ALI20221206BHJP
B60D 1/02 20060101ALI20221206BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B61D47/00 A
F16H25/12 A
B60D1/02 A
B61B13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092059
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】508079304
【氏名又は名称】愛知機械テクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】足立 龍司
【テーマコード(参考)】
3D101
3J062
【Fターム(参考)】
3D101BB16
3D101BB43
3J062AA01
3J062AB31
3J062AC07
3J062BA12
3J062CC13
3J062CC33
(57)【要約】
【課題】無人搬送車における適正な接地圧の確保と牽引装置の高さ寸法のより一層の低減との両立を図ること。
【解決手段】アクチュエータ24の出力軸OSが回転することによって、係合アーム26が、非牽引状態と牽引状態との間で出力軸OSを支点に搖動する構成とすると共に、出力軸OSが無人搬送車1の走行方向および鉛直方向の両方向に直交するように牽引装置20を無人搬送車1に配置する。これにより、牽引装置20の高さ方向の寸法の低減を図ることができる。なお、牽引状態において、ガイドローラ28が台車90の前側フレーム90bの下側に入り込み、台車90を床面Fから持ち上げるため、台車90の重量が牽引装置20を介して無人搬送車1の駆動ユニット4,4に伝達される。これにより、無人搬送車1の走行に必要な接地圧を確保することができる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の下方に配置され該台車を牽引可能な無人搬送車に搭載される牽引装置であって、
回転軸を有するモータと、
前記回転軸に接続された基部と、該基部から前記回転軸に直交する方向に延在すると共に延在方向に平行な係合面を有する延在片部と、を有する台車係合アームと、
前記回転軸からの距離が前記延在方向において最も大きくなる受面を有すると共に前記台車係合アームに一体にされた台車受部と、
前記モータを支持すると共に前記無人搬送車に固定可能な支持台と、
を備える
牽引装置。
【請求項2】
前記台車受部は、軸部と、該軸部に支持されたローラと、を有しており、
前記軸部の軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記係合面の投影は、該仮想投影面上における前記回転軸の軸中心と,該仮想投影面上における前記軸部の軸中心と,を結ぶ仮想直線に平行である
請求項1に記載の牽引装置。
【請求項3】
前記基部は、前記回転軸を中心とする円弧面を有しており、
該円弧面は、前記回転軸の一方側から見たときに、前記回転軸の軸中心を通り前記延在方向に直交する第2仮想直線に関して、少なくとも前記延在片部が配置された側とは反対側に配置されており、
前記支持台は、前記円弧面に当接可能な一対のバックアップローラを有している
請求項1または2に記載の牽引装置。
【請求項4】
台車の下方に配置され該台車を牽引可能な無人搬送車であって、
車体と、
該車体に支持された駆動ユニットと、
前記車体に固定された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の牽引装置と、
前記駆動ユニットおよび前記牽引装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記台車の牽引を開始する際、前記牽引装置の前記台車係合アームが前記車体から突出するよう前記モータを制御し、前記台車の牽引を終了する際、前記台車係合アームが前記車体から突出しないよう前記モータを制御する
無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車を牽引するために無人搬送車に搭載される牽引装置およびこれを備える無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-183149号公報(特許文献1)には、台車を牽引するために無人搬送車に搭載された牽引装置が記載されている。当該牽引装置は、長手方向の一端が車体に回転可能に支持されると共に長手方向の他端に鉤状部を有するアームと、当該アームの長手方向の略中央部を下方から支持すると共にナットが一体にされたアーム支持部材と、無人搬送車の高さ方向に延在すると共にナットにネジ係合されたネジ軸と、当該ネジ軸に接続されたモータと、を備えている。
【0003】
当該牽引装置では、モータの駆動に伴ってネジ軸が回転されることで、アーム支持部材がネジ軸上を軸線方向に移動されて、アームが長手方向の一端を支点に搖動する。これにより、当該牽引装置は、鉤状部が台車のフレームに係合する牽引状態と、鉤状部の台車フレームへの係合が解除される非牽引状態と、の間で状態変化する。
【0004】
上述した公報に記載の牽引装置は、牽引状態の際に、台車の前方側に配置されたキャスターが床面から浮くまでアームを搖動させて、台車の荷重の一部を無人搬送車で受けることで、走行に必要な接地圧を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、無人搬送車の利用可能性の拡大という観点から、床面からの高さが低く、かつ、上面がフラットな低床型の無人搬送車の需要が高まっており、無人搬送車に搭載される各種装置のコンパクト化が望まれている。しかしながら、上述した公報に記載の牽引装置では、アームを搖動させるためのネジ軸が牽引装置の高さ方向、即ち、鉛直方向に延在するため、牽引装置の高さ方向の低減という点において、なお改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、無人搬送車における適正な接地圧の確保と牽引装置の高さ寸法のより一層の低減との両立に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の牽引装置およびこれを備える無人搬送車は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係る牽引装置の好ましい形態によれば、台車の下方に配置され当該台車を牽引可能な無人搬送車に搭載される牽引装置が構成される。当該牽引装置は、回転軸を有するモータと、回転軸に接続された基部と、台車係合アームと、台車受部と、モータを支持すると共に無人搬送車に固定可能な支持台と、を備えている。台車係合アームは、基部から回転軸に直交する方向に延在すると共に延在方向に平行な係合面を有する延在片部と、を有している。そして、台車受部は、回転軸からの距離が延在片部の延在方向において最も大きくなる受面を有すると共に台車係合アームに一体にされている。ここで、本発明における「回転軸に接続された」とは、基部が回転軸に直接接続されている態様の他、間接的に接続されている態様を好適に包含する。なお、基部が回転軸に間接的に接続されている態様としては、例えば、減速機構を介して接続される態様が挙げられる。また、本発明における「一体にされている」とは、ボルトなどの締結部材や接合、ネジ係合などによって、台車受部が台車係合アームに一体にされている態様の他、台車受部と台車係合アームとが一体成形されている態様を好適に包含する。
【0010】
本発明によれば、モータの回転軸が回転することによって、延在片部および台車受部が当該回転軸を支点に搖動する。これにより、牽引装置は、延在片部が台車に係合可能かつ受面で台車の重量の一部を負担可能な牽引状態と、延在片部の台車への係合および受面での台車の重量の一部負担が解除される非係合状態と、を実現することができる。ここで、非係合状態では延在片部が水平方向に延在し、牽引状態では延在片部が鉛直方向に延在するように、牽引装置を無人搬送車に配置することによって、牽引装置の高さ方向の寸法の低減を図ることができる。しかも、モータの回転軸の延在方向を水平方向とすることができるため、牽引装置の高さ方向の寸法をより一層低減することができる。
【0011】
本発明に係る牽引装置の更なる形態によれば、台車受部は、軸部と、当該軸部に支持されたローラと、を有している。そして、軸部の軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における係合面の投影は、当該仮想投影面上におけるモータの回転軸の軸中心と,当該仮想投影面上における軸部の軸中心と,を結ぶ仮想直線に平行である。
【0012】
本形態によれば、台車の重量に起因する負荷を仮想直線上に作用させることができる。即ち、当該負荷が仮想直線上に作用しない場合に、延在片部に作用する当該延在片部を回転させる回転モーメントが発生することがないため、台車の安定した牽引を実現できる。
【0013】
本発明に係る牽引装置の更なる形態によれば、基部は、回転軸を中心とする円弧面を有している。円弧面は、回転軸の一方側から見たときに、当該回転軸の軸中心を通り延在片部の延在方向に直交する第2仮想直線に関して、延在片部が配置された側とは反対側に配置されている。そして、支持台は、円弧面に当接可能な一対のバックアップローラを有している。
【0014】
本形態によれば、片持ち状となる回転軸の撓みをバックアップローラによって抑制できる。
【0015】
本発明に係る無人搬送車の好ましい形態によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係る牽引装置と、を備えている。
【0016】
本発明によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係る牽引装置を備えるため、本発明の牽引装置が奏する効果と同様の効果、例えば、牽引装置の高さ方向の寸法の低減を図ることができる効果を奏することができる。これにより、無人搬送車の高さ方向の寸法の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無人搬送車における適正な接地圧の確保と牽引装置の高さ寸法の低減との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る牽引装置20を搭載した無人搬送車1の構成の概略を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る牽引装置20を搭載した無人搬送車1の構成の概略を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る牽引装置20の外観を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る牽引装置20の分解斜視図。
【
図7】アクチュエータ24の外観を示す斜視図である。
【
図9】係合アーム26を正面から見た正面図である。
【
図10】ガイドローラ28の外観を示す斜視図である。
【
図11】ガイドローラ28を支持した状態の係合アーム26を正面から見た正面図である。
【
図12】支持台22にリミットスイッチLS1,LS2およびバックアップローラBR,BRを取り付けた状態を示す説明図である。
【
図13】牽引装置20を正面から見た正面図である。
【
図14】牽引装置20の組付けの際の様子を示す説明図である。
【
図15】牽引装置20の組付けが完了した様子を示す説明図である。
【
図16】牽引装置20を無人搬送車1に配置した状態を上方から見た説明図である。
【
図17】非牽引状態の牽引装置20を示す説明図である。
【
図18】牽引状態に向けて作動し始めた牽引装置20を示す説明図である。
【
図19】ガイドローラ28によって台車90が床面Fから持ち上げられた様子を示す説明図である。
【
図20】牽引状態の牽引装置20を示す説明図である。
【
図21】台車90の重量が牽引装置20に入力される様子を示す説明図である。
【
図22】変形例の係合アーム126の外観を示す斜視図である。
【
図23】変形例の係合アーム126を正面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0020】
本実施の形態に係る無人搬送車1は、
図1に示すように、車体2と、当該車体2に支持された駆動ユニット4,4、操舵輪6およびキャスター8と、当該車体2に配置されたピン型牽引装置12と、同じく当該車体に配置された本実施の形態に係る牽引装置20と、無人搬送車1全体をコントロールする一対の制御装置10と、を備えている。本実施の形態に係る無人搬送車1は、
図1に示すように、台車90の下方に潜り込んだ状態で当該台車90を牽引する低床タイプとして構成されている。なお、説明の便宜上、以下では、
図1および
図2の上下方向を走行方向と称する。特に、
図1および
図2の下側を前進走行方向、
図1および
図2の上側を後進走行方向と称する。
【0021】
車体2は、
図1および
図2に示すように、走行方向の長さ左右方向(走行方向に向かって左右方向)の長さよりも長い長尺形状を有している。駆動ユニット4,4は、モータ4a,4aと、当該モータ4a,4aに図示しないチェーンなどの動力伝達部材を介して接続された駆動輪4b,4bと、を有している。駆動ユニット4,4は、車体2の走行方向の略中央に配置されている。操舵輪6は、車体2の前端部(走行方向の前側の端部)に配置されている。操舵輪6は、図示しないベアリングを介して車体2に回転可能に支持されている。操舵輪6は、外周面全周に亘って歯(図示せず)を有している。当該歯には、モータの回転軸に接続された歯車が噛合っている。これにより、モータを駆動することで操舵輪6が操舵される。キャスター8は、車体2の後端部(走行方向の後側の端部)に配置されている。なお、キャスター8は、前進走行方向に向かって左寄りの位置に配置されている。
【0022】
ピン型牽引装置12は、
図1および
図2に示すように、車体2の後端部(走行方向の後側の端部)であって、キャスター8の前方(前進走行方向寄り)に配置されている。また、ピン型牽引装置12は、前進走行方向に向かって左寄りの位置に配置されている。ピン型牽引装置12は、鉛直方向(走行方向および走行方向に向かって左右方向の両方向に直交する方向、
図1の上下方向)に延在する係合ピン14と、図示しない運動方向変換機構を介して係合ピン14に接続されたモータ(図示せず)と、を備えている。係合ピン14は、モータが駆動されることで鉛直方向に直線移動する。これにより、ピン型牽引装置12は、係合ピン14が車体2の上面2aから突出する「牽引状態」と、係合ピン14が車体2の上面2aから突出しない「非牽引状態」と、の間で状態を変化する。なお、ピン型牽引装置12は、走行方向の後方側から台車90の後側フレーム90aに係合する。
【0023】
牽引装置20は、
図1および
図2に示すように、車体2の前端部(走行方向の前側の端部)であって、操舵輪6よりも後方(後進走行方向寄り)に配置されている。また、牽引装置20は、前進走行方向に向かって右寄りの位置に配置されている。換言すれば、ピン型牽引装置12と牽引装置20は、車体2において対角線上に配置されていると言うことができる。牽引装置20は、
図3および
図4に示すように、車体2(
図1および
図2のみに記載)に固定される支持台22と、当該支持台22に支持されるアクチュエータ24と、同じく支持台22に支持される一対のバックアップローラBR,BRと、当該アクチュエータ24に接続される係合アーム26と、当該係合アームに支持されるガイドローラ28と、を備えている。
【0024】
支持台22は、
図5および
図6に示すように、支持プレート32と、図示しないボルトによって当該支持プレートに締結される固定プレート34と、から構成されている。支持台22は、側面視略L字状を有している。支持プレート32は、貫通孔32aを有している。貫通孔32aには、アクチュエータ24の後述する出力軸OSが挿通される。また、支持プレート32には、
図7に示すように、2つのリミットスイッチLS1,LS2が配置される。
【0025】
固定プレート34は、
図5に示すように、板状の固定部35と、当該固定部35に突出状に一体にされた膨出部36と、を有している。膨出部36は、固定プレート34のうち支持プレート32が締結される側面寄りに配置されている。換言すれば、膨出部36は、支持台22のうちL字の隅部に配置されていると言うことができる。また、膨出部36は、一対のバックアップローラBR,BR(
図12参照)を支持可能な支持孔36a,36aと、円弧面36bと、を有している。支持孔36a,36aは、貫通孔32aの軸線と平行な軸線を有している。円弧面36bは、
図5に示すように、貫通孔32aの直下に配置される。なお、円弧面36bは、
図6に示すように、貫通孔32aの軸線方向の一方側から見たときに、貫通孔32aと同心の仮想円VS1の一部として構成されている。円弧面36bは、係合アーム26の後述する基部40の円弧面40cの曲率半径r2よりも若干大きい曲率半径r1を有している。
【0026】
アクチュエータ24は、
図7に示すように、モータMと、当該モータMの図示しない回転軸に接続された減速ギヤボックスGBと、を有している。減速ギヤボックスGBは、互いに噛合う図示しない複数のギヤを有しており、出力軸OSから動力を出力する。
【0027】
係合アーム26は、
図8および
図9に示すように、基部40と、当該基部40に一体にされた延在片部42と、を有している。基部40は、アクチュエータ24の出力軸OSが嵌合される嵌合孔40aと、ガイドローラ28の後述する軸部52が嵌合される嵌合孔40bと、円弧面40cと、カム面40dと、を有している。嵌合孔40aおよび嵌合孔40bは、互いに平行な軸線を有している。嵌合孔40aは、出力軸OSの直径よりも若干小さい直径を有している。また、嵌合孔40bは、軸部52の直径よりも若干小さい直径を有している。係合アーム26は、本発明における「台車係合アーム」に対応する実施構成の一例である。
【0028】
円弧面40cは、
図9に示すように、嵌合孔40aの軸線方向の一方側から見たときに、嵌合孔40aと同心の仮想円VS2の一部として構成されている。なお、円弧面40cは、嵌合孔40aの軸線方向の一方側から見たときに、後述する仮想直線VL1に直交する仮想直線VL2に関して、少なくとも延在片部41が配置された側とは反対側に配置されている。円弧面40cは、
図6に示すように、固定プレート34の膨出部36の円弧面36bの曲率半径r1よりも若干小さい曲率半径r2を有している。仮想直線VL2は、本発明における「第2仮想直線」に対応する実施構成の一例である。
【0029】
延在片部42は、
図8および
図9に示すように、嵌合孔40aおよび嵌合孔40bの軸線方向に直交する方向、即ち、アクチュエータ24の出力軸OSおよびガイドローラ28の後述する軸部52に直交する方向に延在している。延在片部42は、当該延在片部42の延在方向、および、嵌合孔40aおよび嵌合孔40bの軸線方向(出力軸OSおよび軸部52)の両方向に直交する方向に法線を有する係合面42aを有している。係合面42aは、
図9に示すように、嵌合孔40a,40bの軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における投影が、当該仮想投影面上における嵌合孔40aの中心と、当該仮想投影面上における嵌合孔40bの中心と、を結んだ仮想直線VL1と平行になるように構成されている。嵌合孔40a,40bの軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における係合面42aの投影が、当該仮想投影面上における嵌合孔40aの中心と、当該仮想投影面上における嵌合孔40bの中心と、を結んだ仮想直線VL1と平行になる態様は、本発明における「前記係合面は、該軸部の軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における投影が、該仮想投影面上における前記回転軸の軸中心と、該仮想投影面上における前記軸部の軸中心と、を結ぶ仮想直線と平行である」に対応する実施構成の一例である。
【0030】
ガイドローラ28は、
図10に示すように、軸部52と、当該軸部52に回転可能支持されたローラ54と、を有している。ローラ54は、台車90の前側フレーム90bに当接可能な受面54aを有している。嵌合孔40aの中心から受面54aまでの距離は、
図11に示すように、ガイドローラ28が係合アーム26に支持されたときに、延在片部42の延在方向(
図11の左右方向)、即ち、仮想直線VL1の延在方向(
図11の左右方向)において最大距離dmaxとなる。ガイドローラ28は、本発明における「台車受部」に対応する実施構成の一例である。
【0031】
バックアップローラBR,BRは、
図4および
図12に示すように、軸部SFT,SFTと、当該軸部SFT,SFTに回転可能に支持されたローラR,Rと、を有している。バックアップローラBR,BRは、軸部SFT,SFTが膨出部36の支持孔36a,36aに支持されることにより、固定プレート34に支持される。なお、
図13に示すように、バックアップローラBR,BRが固定プレート34に支持されたとき、バックアップローラBR,BRの転動面のうち鉛直方向における上方部分は、円弧面36bを含む膨出部36の上面よりも突出している。
【0032】
次に、こうして構成された牽引装置20の組立て方法について説明する。まず、
図12に示すように、支持プレート32と固定プレート34とを締結して支持台22を組み付け、支持プレート32にリミットスイッチLS1,LS2を取り付けると共に、バックアップローラBR,BRを膨出部36に取り付ける。続いて、
図14に示すように、アクチュエータ24を支持プレートに取り付けると共に、
図15に示すように、ガイドローラ28を一体にした係合アーム26を出力軸OSに嵌合させ、図示しないボルトによって固定する。これにより、牽引装置20の組立てが完了する。このとき、
図13に示すように、係合アーム26の円弧面36bは、バックアップローラBR,BRに当接する。これにより、片持ち支持された出力軸OSの撓みが抑制される。また、リミットスイッチLS1が、延在片部42、具体的には、係合面42aと対をなす面42bに接触した状態となっている。
【0033】
こうして組み立てられた牽引装置20は、
図16に示すように、出力軸OSの軸線CLが無人搬送車1の走行方向(
図16の左右方向)および鉛直方向(
図16の紙面に垂直な方向)の両方向に直交するように、即ち、延在片部42の延出方向が無人搬送車1の走行方向(
図16の左右方向)と平行になるように、図示しないボルトによって車体2に固定される。このとき、延在片部42の延在方向は、後進走行方向を向いている。また、牽引装置20が車体2に固定された状態では、
図17に示すように、牽引装置20は車体2の上面2aから突出していない。以下、当該状態を「非牽引状態」と言う。なお、牽引装置20は、車体2の上面2aの開口2bを介して外部に露出している。
【0034】
制御装置10は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。制御装置10には、床面に敷設された誘導帯(図示せず)を検出する図示しない走行センサからの検出信号、図示しないマーカーを検出するマーカーセンサ(図示せず)からのコマンド信号、リミットスイッチLS1,LS2からのオンオフ信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御装置10からは、駆動ユニット4,4(モータ4a,4a)への駆動制御信号や、操舵輪6(図示しないモータ)への操舵制御信号、ピン型牽引装置12(図示しないモータ)および牽引装置20(モータM)への作動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0035】
次に、こうして構成された牽引装置20を搭載した無人搬送車1の動作、特に、牽引装置20が台車90の後側フレーム90aに係合する際の動作について説明する。無人搬送車1が走行を開始すると、制御装置10のCPUは、走行センサからの検出信号やマーカーセンサからのコマンド信号を読み込み、無人搬送車1が誘導帯に沿って走行するように駆動ユニット4,4および操舵輪6を駆動制御する処理を実行する。そして。無人搬送車1が台車90を牽引可能な位置まで到達したときに、マーカーセンサが、ピン型牽引装置12および牽引装置20の駆動指示コマンドが記憶されたマーカーを検出すると共にコマンド信号を出力する。マーカーセンサからのコマンド信号が入力されると、制御装置10のCPUは、ピン型牽引装置12の図示しないモータおよび牽引装置20のモータMを駆動制御する。
【0036】
これにより、ピン型牽引装置12は、係合ピン14が車体2の上面2aから突出しない「非牽引状態」から係合ピン14が車体2の上面2aから突出する「牽引状態」となり、前進走行方向に向かって後方側から台車90の後側フレーム90aに係合する(
図1参照)。
【0037】
一方、牽引装置20は、モータMの駆動に伴って係合アーム26が出力軸OSを支点に搖動する。係合アーム26は、
図18に示すように、出力軸OSの軸線方向の先端側(
図18の紙面手前から奥側に向かう方向)から見たときに、反時計回りに搖動する。これにより、延在片部42およびガイドローラ28が、車体2の上面2aから突出し、まず、ガイドローラ28が無人搬送車1の前進走行方向の前方側から台車90の前側フレーム90bに接触する。
【0038】
当該状態でモータMを駆動し続けると、
図19に示すように、ガイドローラ28が前側フレーム90bの下方に入り込み始め、これによって、台車90が床面Fから持ち上げられる。ここで、ガイドローラ28による台車90の床面Fからの持ち上げの際、係合アーム26から台車90に対して、後進走行方向側(
図19の左側)の力が作用するが、ピン型牽引装置12によって台車90の後進走行方向側の移動が規制されているため、ガイドローラ28による台車90の床面Fからの持上げが安定して実行され得る。また、ガイドローラ28が係合アーム26に対して回転自在に支持されているため、ガイドローラ28による台車90の床面Fからの持ち上げの際の出力軸OSの回転抵抗を低減することができる。なお、係合アーム26は、バックアップローラBR,BRによって支持されているため、出力軸OSの撓みを良好に抑制することができる。
【0039】
さらに、
図20に示すように、延在片部42の延在方向が鉛直方向の上方を向くまでモータMを駆動し続けることで、ガイドローラ28によって台車90が床面Fから持ち上げられ状態で、延在片部42の係合面42aが無人搬送車1の前進走行方向の前方側から前側フレーム90bに係合して、牽引装置20が牽引状態となる。
図21に示すように、リミットスイッチLS2が係合アーム26のカム面40dに接触した状態となる。これにより、制御装置10のCPUは、延在片部42の延在方向が鉛直方向の上方を向いたと判定して、モータMの駆動を停止する。こうして牽引装置20は、「非牽引状態」から「牽引状態」への状態変更を完了する。
【0040】
このように、台車90は、ピン型牽引装置12および牽引装置20によって、走行方向に向かって前後方向から前側フレーム90bおよび後側フレーム90aが挟み込まれる態様で、無人搬送車1により牽引される。このとき、ガイドローラ28によって台車90が床面Fから持ち上げられるため、台車90の重量が牽引装置20を介して無人搬送車1の駆動ユニット4,4に伝達される。これにより、無人搬送車1は走行に必要な接地圧を確保することができる。ここで、台車90の重量は、
図21に示すように、仮想直線VL1上に作用するため、当該台車90の重量に起因する係合アーム26を回転させるような回転モーメントが、係合アーム26に作用することはない。これにより、牽引状態において、意図せず係合アーム26の前側フレーム90bへの係合が解除されることを防止でき、安定した牽引性を実現できる。なお、ピン型牽引装置12および牽引装置20は、車体2において対角線上に配置されているため、走行方向に向かって台車90が左右方向に揺れることを良好に抑制し得る。この結果、台車90を安定して牽引することができる。
【0041】
一方、台車90の牽引を停止するときは、制御装置10のCPUは上述した制御と逆の制御、即ち、係合ピン14が上面2aから突出しないように、ピン型牽引装置12を「非牽引状態」にすると共に、係合アーム26が上面2aから突出をしないように、出力軸OSを当該出力軸OSの軸線方向の先端側(
図18の紙面手前から奥側に向かう方向)から見たときに、時計回りに搖動させて、牽引装置20を「非牽引状態」にする。
【0042】
以上説明した本実施の形態に係る牽引装置20によれば、アクチュエータ24の出力軸OSが回転することによって、延在片部42およびガイドローラ28が車体2の上面2aから突出しない非牽引状態と、延在片部42およびガイドローラ28が車体2の上面2aから突出する牽引状態と、の間で、係合アーム26が出力軸OSを支点に搖動する構成とすると共に、出力軸OSが無人搬送車1の走行方向および鉛直方向の両方向に直交するように牽引装置20を無人搬送車1に配置するため、牽引装置20の高さ方向の寸法の低減を図ることができる。なお、牽引状態において、ガイドローラ28が台車90の前側フレーム90bの下側に入り込み、台車90を床面Fから持ち上げるため、台車90の重量が牽引装置20を介して無人搬送車1の駆動ユニット4,4に伝達される。これにより、無人搬送車1の走行に必要な接地圧を確保することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係る牽引装置20によれば、嵌合孔40aの軸線方向の一方側から見たときの仮想投影面上における嵌合孔40aの中心と、当該仮想投影面上におけるガイドローラ28の中心と、を結んだ仮想直線VL1が、延在片部42の係合面42aと平行になるように構成したため(
図21)、牽引状態において、当該仮想直線VL1の延在方向が鉛直方向と平行になり、台車90の重量が当該仮想直線VL1上に作用する。これにより、当該台車90の重量に起因する係合アーム26を回転させるような回転モーメントが、係合アームに作用することはない。この結果、牽引状態において、意図せず係合アーム26の前側フレーム90bへの係合が解除されることを防止でき、安定した牽引性を実現できる。
【0044】
さらに、本実施の形態に係る牽引装置20によれば、一対のバックアップローラBR,BRによって係合アーム26が支持されるため、片持ち状となる出力軸OSの撓みを抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、ガイドローラ28を係合アーム26に回転可能に支持したが、これに限らない。例えば、ガイドローラ28を係合アーム26に回転不能に支持しても良い。
【0046】
本実施形態では、係合アーム26とは別体のガイドローラ28によって、台車90を持ち上げる構成としたが、これに限らない。例えば、
図22および
図23に例示する変形例の係合アーム126に示すように、台車90を持ち上げるガイドローラ128を係合アーム126に一体に設けても良い。この場合、ガイドローラ128は、ガイドローラ28(受面54a)の曲率半径と同じ曲率半径を有する円弧面128aを有する構成とすることができる。そして、ガイドローラ128は、
図23に示すように、嵌合孔40aの軸線方向の一方側から見たときに、嵌合孔40aの中心から、当該嵌合孔40aの中心を通り係合面42aに平行な仮想直線VL3に直交する円弧面128aの接線TLまでの距離が最大距離dmaxとなるように構成することができる。係合アーム126は、本発明における「台車係合アーム」に対応し、ガイドローラ128は、本発明における「台車受部」に対応する実施構成の一例である。
【0047】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。