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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184296
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20221206BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092063
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 匠平
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】勝田 大士
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AB03
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】 長時間、マスクを着用する際においても、着用者のムレ感が低減されるマスクを提供すること。
【解決手段】 少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有するマスクであって、口元層が、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層されてなる不織布シートで構成されてなり、不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに30°以下であり、不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbが10.0μm以上45.0μm以下であり、口元層において、不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなる、マスク。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有するマスクであって、
前記口元層が、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層されてなる不織布シートで構成されてなり、
前記不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する前記不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、
前記不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに30°以下であり、
前記不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbが10.0μm以上45.0μm以下であり、
前記口元層において、前記不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなる、マスク。
【請求項2】
前記不織布シートの任意の一方向を0°とし、22.5°毎に180°まで不織布シートの面内で回転させて測定して得られる該不織布シートの破断強力のうち、最低破断強力σminに対する最高破断強力σmaxの比(σmax/σmin)が1.2以上4.0以下である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記不織布層(A)および前記不織布層(B)が、ともに長繊維不織布からなる層である、請求項1または2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水速乾性に優れた不織布シートで構成されてなる口元層と、耳掛け部と、を有するマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
花粉症などのアレルギー性疾患やインフルエンザなどの感染症に対する対策として、マスクが用いられている。特に、近年、新型コロナウィルス感染症に対する感染対策としても、外出時などに長時間、マスクを着用するため、以前よりもさらにマスクを着用している際の快適性の向上を求める声が高まっている。この快適性が損なわれてしまう主因としては、呼気中の水分や汗などの液体がマスク内にとどまることによる、口鼻部のムレ感が挙げられている。そこで、マスクを着用している際のムレ感を低減させるべく、マスクにおいて口鼻部と接する部分に用いられる不織布について、吸水性や速乾性を付与させる技術が提案されており、この技術を用いたマスクも提案されている。
【0003】
不織布に吸水性を付与する手段として、親水性の繊維からなる不織布を用いることや不織布に親水性処理を施すことが提案されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、不織布への吸水速乾性の付与を目的に、長繊維を含む繊維層の積層構造を有する積層不織布であって、疎水性繊維を含む疎水性層と繊維間距離や扁平率が特定の範囲にある親水性繊維を含む親水性層から構成され、上記疎水性層を不織布表面に配置してなる積層不織布が提案されている。(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
さらに、不織布を積層する技術として、特定の範囲の平均繊維直径を有する繊維を含む第1および第3不織布構成層と、上記第1および第3不織布層の間に、より繊維直径の細い繊維を含む第2不織布構成層を配する積層不織布が提案されている。(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/199883号
【特許文献2】国際公開第2018/167881号
【特許文献3】特表2013-518698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術においては、親水性の繊維からなる不織布を用いることや不織布に親水性処理を施すことで一定の吸水性を発現する。しかしながら、吸水した水分をマスクの着用者側から外側に移行させる機能がないため、速乾性が十分なものではなく、長時間の着用においては、ムレ感が生じる。
【0008】
特許文献2に開示された技術においては、不織布の厚み方向に親水性勾配が形成されるため、最表層に疎水性層を配した面であっても一定の吸水性能が発現する。しかし、最表面が疎水性層であるため、汗や唾液などの多量の液体を吸収するためには吸水性が十分でなく、また液残りが生じやすいために速乾性も不十分なものである。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された技術においては、吸水性物品のバリアカフに使用されるような、流体の裏抜けを防止する、すなわち水分を通さないようにするための構造であるため、不織布表面に液残りが生じやすく、吸水性や速乾性が不十分なものである。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、長時間、マスクを着用する際においても、着用者のムレ感が低減されるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
不織布の吸水性を高めるためには不織布自体の親水性を高めることが有効であることから、本発明者らは、まず、親水性のみを高めた不織布を、着用者の口鼻部と接するマスク本体部の口元層に用いることを試みた。この場合、マスクを着用した直後には着用者の口鼻部付近の水分が素早く吸収され、一時的なドライ感は得られることが判明したものの、長時間着用した時には、口元層の口鼻部側の最表面が水分を含んだまま乾かずに、ムレ感を生じることを確認した。
【0012】
一方、不織布の速乾性を高めるために、不織布の一部に疎水性繊維を用いること、そして、不織布の厚み方向に親水度勾配を付与することを試みた。これらの場合には、結果的に不織布表面の吸水性を低下させることとなり、口鼻部付近の液残りが生じて、ムレ感を生じることを確認した。
【0013】
そこで、本発明者らが、鋭意検討した結果、積層不織布において、各不織布層を構成する繊維の平均単繊維直径の比を特定の範囲とし、各不織布層を特定の構成で積層させ、さらに各不織布層の水との接触角を特定の範囲とすることで、十分な吸水性および速乾性を有した不織布シートとなることを見出した。そして、この不織布シートを特定の向きでマスク本体部の口元層に配したときには、長時間、着用した際にもムレ感を感じにくく、さらに口鼻部側の最表面の不織布層の平均単繊維直径を特定の範囲とすることにより、マスク本体部の毛羽を抑制することができるという、副次的な効果も有したマスクとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0015】
本発明のマスクは、少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有するマスクであって、前記の口元層が、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層されてなる不織布シートで構成されてなり、前記の不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する前記の不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、前記の不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに30°以下であり、前記の不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbが10.0μm以上45.0μm以下であり、前記の口元層において、前記の不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなる。
【0016】
本発明のマスクの好ましい態様によれば、前記の不織布シートの任意の一方向を0°とし、22.5°毎に180°まで不織布シートの面内で回転させて測定して得られる該不織布シートの破断強力のうち、最低破断強力σminに対する最高破断強力σmaxの比(σmax/σmin)が1.2以上4.0以下である。
【0017】
本発明のマスクの好ましい態様によれば、前記の不織布層(A)および前記の不織布層(B)が、ともに長繊維不織布からなる層である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、着用者の呼気中の水分や汗・唾液などの液体を、着用者の口鼻部付近からマスクの外側に素早く移行させることができるため、長時間、マスクを着用する場合においても、ムレ感を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のマスクは、少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有するマスクであって、前記の口元層が、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層されてなる不織布シートで構成されてなり、前記の不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する前記の不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、前記の不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに30°以下であり、前記の不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbが10.0μm以上45.0μm以下であり、前記の口元層において、前記の不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなる。
【0020】
以下に、本発明のマスクとその構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0021】
[熱可塑性樹脂繊維]
本発明のマスクに係る口元層を構成する不織布シートは、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とからなる。
【0022】
これらの第1の熱可塑性樹脂繊維、第2の熱可塑性樹脂繊維において、「熱可塑性樹脂繊維」とは、熱可塑性樹脂からなる繊維のことを指す。このような熱可塑性樹脂は1種類であってもよいし、複数の熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、「ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート」等の芳香族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン」等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12」等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、「ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン」等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー系ポリマー等であり、これらの中から選んで用いることができる。ポリ乳酸等のバイオ由来の原料やリサイクル原料を使用した場合には、使用後の環境負荷を低減することができる。また、上記のポリマーにおいては、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維は、単成分繊維はもとより、2種類以上の樹脂を複合した複合繊維であってもよい。上記の熱可塑性樹脂繊維が複合繊維の場合、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、芯鞘型や海島型、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型、などから適宜選択すればよい。さらには、繊維の一部もしくは全体が一本の繊維から複数本の繊維に分割される割繊型複合繊維であってもよい。
【0025】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維の断面形状は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、丸断面はもとより、三角や扁平、六角形、中空などの異形断面であっても良い。生産性および柔軟性の観点からは、丸断面が好ましい。
【0026】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維は、いずれも水との接触角が90°未満であることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維における水との接触角は、後述する不織布における水との接触角とは異なる指標であり、該接触角が90°以上であれば疎水性、90°未満であれば親水性となる。なお、本発明の熱可塑性樹脂繊維の水との接触角は、例えば、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置した不織布から取り出した熱可塑性樹脂繊維に対し、インクジェット方式水滴吐出部を搭載した自動接触角計を用いて極少量(15pL)の水滴を繊維表面に着液させた際の、液滴の空気界面と繊維のなす角を測定することにより求められる。
【0027】
なお、第1の熱可塑性樹脂繊維と第2の熱可塑性樹脂繊維とで、構成する熱可塑性樹脂や繊維断面が同一であっても、異なっていてもよい。
【0028】
[第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)]
本発明に係る不織布層(A)は、前記の第1の熱可塑性樹脂繊維から構成される。
【0029】
本発明に係る不織布層(A)は、長繊維不織布からなる層であることが好ましい。不織布層(A)が長繊維不織布からなる層であることにより、高い生産性と優れた力学物性を有した不織布となる。
【0030】
本発明に係る不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daは、1.0μm以上25.0μm以下であることが好ましい。第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径を好ましくは、1.0μm以上、より好ましくは、1.5μm以上とすることにより、不織布層の空隙サイズが向上することで透水性が向上することから、不織布層内の液残りが少なくなる。また、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径を好ましくは、25.0μm以下、より好ましくは、20.0μm以下、さらに好ましくは、16.0μm以下とすることにより、毛細管効果を高めることができ、吸水した水分をマスクの着用者側から外側に素早く移行しやすくなる。
【0031】
ここで言う平均単繊維直径Da(μm)とは、以下のようにして求めるものである。
【0032】
まず、不織布層(A)を構成する繊維の横断面を走査型電子顕微鏡で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。続いて、撮影した画像を用い、画像解析ソフト(例えば三谷商事株式会社製「WinROOF2015」など)を用いて、単繊維の断面輪郭が形成する面積Afを計測し、この面積Afと同一の面積となる真円の直径を算出する。これを同一の不織布層から任意に抽出した単繊維20本について測定し、単純な数平均を求め、単位をμmとして、小数点第2位を四捨五入した値が本発明で言う平均単繊維直径である。
【0033】
[第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)]
本発明に係る不織布層(B)は、前記の第2の熱可塑性樹脂繊維から構成される。
【0034】
本発明に係る不織布層(B)は、長繊維不織布からなる層であることが好ましい。不織布層(B)が長繊維不織布からなる層であることにより、高い生産性と優れた力学物性を有した不織布となる。
【0035】
本発明に係る不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は、10.0μm以上45.0μm以下である。第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径を10.0μm以上、好ましくは、20.0μm以上とすることにより、単繊維の強力を向上させることができ、単繊維の破断に起因する毛羽立ちを抑制することができる。より好ましくは、31.0μm以上とすることにより、単繊維の強力を大幅に向上させることができ、単繊維の破断に起因する毛羽立ちを抑制効果がさらに向上し、結果、長時間、マスクを着用する場合においても、毛羽立ちによる不快感や肌へのダメージを低減することができる。また、第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径を45.0μm以下、好ましくは、40.0μm以下、より好ましくは、35.0μm以下とすることにより、着用時の表面触感や柔軟性を向上させることができる。
【0036】
なお、ここで言う平均単繊維直径Db(μm)とは、前述のDaの測定方法において、不織布層(A)を構成する繊維を測定することを、不織布層(B)を構成する繊維を測定することに替える以外、同様に求めて得られる値である。
【0037】
[不織布層(A)および不織布層(B)の平均単繊維直径]
本発明に係る不織布シートにおいて、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da、以下、単に平均単繊維直径比と略することがある)が1.1以上である。
【0038】
ここで言う平均単繊維直径比とは、前述の手法を用いて、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daと、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbを測定し、その比(Db/Da)を算出し、小数点第2位を四捨五入した値である。
【0039】
一般に、不織布においては、構成する繊維の平均単繊維直径に応じて、繊維同士が織りなす空隙サイズが変化する。このため、平均単繊維直径が異なる不織布層を重ねた場合には繊維間空隙サイズが異なる不織布層が積層されることとなり、水分が付着した場合には、毛細管効果の差により、単繊維直径の大きい繊維からなる不織布層に吸収された水分を、単繊維直径の小さい繊維からなる不織布層に素早く移行させることができるのである。さらに、本発明者らは鋭意検討の結果、平均単繊維直径比を特定の範囲とすることで、毛細管効果の差による吸水性向上効果のみならず、単繊維直径の大きい繊維からなる不織布層の表面に速乾性が付与されることを見出した。
【0040】
したがって、平均単繊維直径比(Db/Da)を1.1以上、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.3以上とすることにより、前述の毛細管効果が作用し、良好な吸水性および不織布層(B)における速乾性を得ることができる。これにより、呼気中の水分のみならず、唾液や汗についてもマスクの着用者側から外側に素早く移行され、常に着用者の口鼻部と接する不織布シートの最も肌側の層をさらっとした状態に保つことができる。
【0041】
平均単繊維直径比(Db/Da)を高めるためには、平均単繊維直径Daを小さくする、もしくは、平均単繊維直径Dbを大きくすることのいずれかの手段があるが、より好ましくは、平均単繊維直径Dbを大きくすることで、より容易に高い毛細管効果を発現させることができ、長時間、マスクを着用する際においても、着用者のムレ感の低減実効が得られることに加え、前述の通り、毛羽立ち抑制効果も容易に得られる。
【0042】
[不織布シート]
本発明に係る不織布シートは、前記の不織布層(A)と前記の不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層されてなる不織布シートであって、かつ、前記の不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに30°以下である。前記の不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角がともに30°以下、好ましくは、20°以下、より好ましくは、10°以下であることにより、不織布が親水性であるため、不織布表面に接触した水分が不織布に吸水されやすく、優れた吸水性を有する不織布となる。また、本発明における水との接触角の下限は0°であるが、水との接触角が0°とは、後述の測定方法においてすべての水が不織布に吸水された状態をいう。
【0043】
なお、前記の不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角、他方の表面の水との接触角は、いずれも不織布シートを構成する繊維に用いられる熱可塑性樹脂の親水性や後工程による親水性油剤付与によって制御することができる。例えば、上記熱可塑性樹脂の親水性が高いほど、また親水性油剤の付着量が多いほど、水との接触角は小さくなる傾向にある。
【0044】
本発明に係る不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角、他方の表面の水との接触角は、以下の方法で測定、算出された値を指す。なお、最も肌側の表面、すなわち、不織布層(B)が最表面に積層されている面を第1面、他方の表面、すなわち、第1面の反対側の面を第2面と定義する。
(1)マスク本体部から口元層の不織布シートを分離する。例えば、マスクの口元層側から家庭用ドライヤーをあてるなどして、数秒間加熱することにより、マスク本体部を構成する不織布シート間の接着剤もしくは熱エンボス部を軟化させることなどで、口元層の不織布シートを分離することができる。
(2)分離した不織布シートを、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置する。
(3)上記処理を施した不織布シートを、同室に設置した接触角計のステージ上に、不織布層(B)が測定面となるようにセットする。
(4)イオン交換水からなる2μLの液滴を針先に作製し、不織布に着液させる。
(5)不織布に液滴が着液してから2秒後の画像より、液滴との接触角を求める。なお、2秒以内にすべての水が不織布に吸水された場合は、液滴の空気との界面が不織布層の表面と同一面に存在すると判断し、水との接触角を0°と定義する。
(6)1水準につき測定位置を変更して5回測定を行い、その算術平均値を第1面と水との接触角とする。
(7)(2)と同様の処理を施した不織布シートを、不織布層(B)が裏面となるようにセットし、上記(2)~(5)の操作を繰り返し行い、その算術平均値を第2面と水との接触角とする。
【0045】
なお、不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角、他方の表面の水との接触角は、不織布シートを構成する繊維に用いられる熱可塑性樹脂の親水性を変更したり、後工程において付与する親水性油剤の付与量を変更したりすることなどにより、調整することができる。
【0046】
また、本発明に係る不織布シートは、この不織布シートの任意の一方向を0°とし22.5°毎に180°まで不織布シートの面内で回転させて測定して得られる該不織布シートの破断強力のうち、最低破断強力σminに対する最高破断強力σmaxの比(σmax/σmin、以下、単に破断強力比と略することがある)が1.2以上4.0以下であることが好ましい。破断強力比を好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.3以上とすることにより、不織布面内のいずれかの方向に繊維が配向しているため、毛細管効果により吸水した水分を繊維配向方向に広げることができ、より高い吸水速乾性を得ることが可能となる。また、破断強力比を好ましくは、4.0以下、より好ましくは、3.5以下とすることにより、極端に破断強力の低い角度がなくなるため、製品加工時および着用時の不織布シートの破れを抑制することができる。
【0047】
なお、破断強力比は、各不織布層を構成する繊維の配向度を変更することにより、調整することができる。不織布シートを形成する方法としてスパンボンド法を採用する場合における、各不織布層を構成する繊維の配向度を変更する方法の一例としては、例えば、エジェクター圧力とコンベア速度の比を変更する方法が挙げられる。この方法によれば、不織布シートのコンベア搬送方向の繊維配向度を容易に変更することができ、結果、不織布シートの破断強力比を調整することができる。
【0048】
本発明に係る不織布シートの破断強力比は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に基づき、以下の方法で測定、算出された値を指す。
(1)マスク本体部から口元層の不織布シートを分離する。
(2)分離した不織布シートの任意の一方向を0°とし、縦方向が上記の方向と一致するよう縦300mm×横25mmの試験片を切り出し、場所を変更して試験片を3枚採取する。
(3)試験片をつかみ間隔200mmで引張試験機にセットする。
(4)引張速度100m/分で引張試験を実施し、採取した3枚の試験片について破断時の強力〔N〕を求め、その算術平均値を破断強力σとする。
(5)0°とした任意の一方向に対して不織布シートの面内で時計回りに22.5°回転させた方向を軸とし、縦方向が上記の軸方向と一致するように縦300mm×横25mmの試験片を切り出し、場所を変更して試験片を3枚採取する。その後、上記(3)~(4)の操作を行い、破断強力σを算出する。
(6)不織布シートの面内での回転角度が180°になるまで上記(5)の操作を繰り返し行い、それぞれの角度における破断強力σを算出する。
(7)上記の方法で算出された破断強力σの内、最低破断強力σminに対する最高破断強力σmaxの比(σmax/σmin)を算出し、不織布シートの破断強力比とする。
【0049】
本発明に係る不織布シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、不織布層(A)および不織布層(B)以外の不織布層を含んでいても良い。不織布層(A)および不織布層(B)以外の不織布層を含む場合、その不織布層を構成する繊維は親水性であることが、吸水性を損なわない点で好ましい。
【0050】
本発明に係る不織布シートは、不織布層(B)が最表面に配された第1面にて測定された吸水速度が20秒以下であることが好ましい。吸水速度を好ましくは、20秒以下、より好ましくは、15秒以下、さらに好ましくは、10秒以下とすることにより、表面に付着した水分を取り除く性能が良好である、すなわち吸水性に優れる不織布となる。
【0051】
ここで言う吸水速度とは、JIS L1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の「7.1.1 滴下法」に基づき測定されるものである。積層不織布に水滴を1滴滴下し、吸収されて表面の鏡面反射が消失するまでの時間を測定し、これを異なる10箇所で測定した値の単純平均を算出し、単位を秒として、小数点第1位を四捨五入した値を、本発明で言う吸水速度とする。
【0052】
本発明に係る不織布シートの目付は、10g/m以上100g/m以下とすることが好ましい。目付を好ましくは、10g/m以上、より好ましくは、13g/m以上、さらに好ましくは、15g/m以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度の不織布シートを得ることができる。また、目付を好ましくは、100g/m以下、より好ましくは、50g/m以下とすることにより、適度な柔軟性を有するマスクを得ることができる。
【0053】
なお、本発明に係る不織布シートの目付(g/m)とは、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値から算出する1m当たりの質量を指すこととする。
【0054】
本発明に係る不織布シートは、これらの不織布層(A)と不織布層(B)とが一体化していることが好ましい。ここでいう一体化とは、これらの層が繊維同士の交絡、接着剤等の成分による固定、それぞれの層を構成する熱可塑性樹脂同士の融着によって接合しているものである。
【0055】
なお、本発明に係る不織布シートは、吸水性をより高くすることを目的として、親水化剤を付与しても良い。親水化剤の種類としては、界面活性剤などが挙げられるが、中でも非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0056】
[マスク]
本発明のマスクは、少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有する。ここで、本発明におけるマスク本体部とは、着用者の口鼻部に接するように配される部分であり、耳掛け部とは、着用者の耳に掛けられる機構を有する部分である。そして、マスク本体部における口元層とは、マスク本体部の中で最も肌側の層であり、すなわち着用者の口鼻部と直接接する層を指す。
【0057】
そして、この口元層は、前記の不織布シートで構成されてなる。さらに、この口元層において、前記不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなる。口元層において、前記不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配されてなることにより、不織布層(B)から速やかに不織布層(A)に水分が移行されるため、着用者の呼気中の水分や汗、唾液等の液体を、着用者の口鼻部付近からマスクの外側に素早く移行することにより、マスク内を常に湿り気のない、さらっとした状態に保つことができる。結果、長時間、マスクを着用する際においても、着用者のムレ感を低減させることができる。
【0058】
さらに、前記不織布層(B)を構成する熱可塑性樹脂繊維2の平均単繊維直径が大きいことにより、単繊維の強力を向上させることができ、着用時の口鼻部との接触による単繊維破断に起因する毛羽立ちを抑制することができる。結果、長時間、マスクを着用する場合においても、毛羽立ちによる不快感や肌へのダメージを低減することができる。
【0059】
本発明のマスク本体部の構成は少なくとも口元層を有していれば、その他の構成要素に特に制限はないが、着用者の口鼻側から、口元層―内層―外層の順に一体化した構成が一般的である。なお、ここで言う「一体化」とは、例えば、後述するように、口元層-内層-外層の順に積層し、熱エンボスロールなどの熱圧着設備によって、積層体の全面を融着させたり、端部のみを融着させたりすることによって、積層体の層間の少なくとも一部が固定されるようにすることを指す。すなわち、本発明で言う「一体化」は、各層間の全てが融着されることのみを指すものではない。
【0060】
マスク本体部を口元層―内層―外層の順に一体化した構成とする場合、内層および外層の材料についても特に制限はないが、例えば、不織布が挙げられる。この不織布としては、例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、フラッシュ紡糸不織布、サーマルボンド不織布、カーディング不織布、または、これらのいくつかを組み合わせた不織布が挙げられる。
【0061】
内層や外層となる不織布を構成する繊維としては、例えば、「羊毛、コットン」などの天然繊維、「レーヨン、アセテート」などの再生繊維、「「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂」などのポリオレフィン、「ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸」などのポリエステル、ポリアミド」などからなる合成樹脂繊維などが挙げられる。
【0062】
また、不織布を構成する繊維は、単一成分で構成されていてもよいし、芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、海島型複合繊維といった、複合繊維で構成されていてもよい。
【0063】
内層や外層となる不織布は、所望の目的に合わせて、単層の不織布でもよいし、積層不織布(スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)不織布)でもよい。
【0064】
前記の不織布シートで構成されてなる口元層と同様に、内層や外層の原料としてポリ乳酸等のバイオ由来の原料やリサイクル原料を使用した場合には、使用後の環境負荷を低減することができ、マスク本体部のすべての層をバイオ由来原料もしくはリサイクル原料からなる繊維で構成する場合には、環境負荷の大幅な低減が可能となる。
【0065】
内層は、マスクの柔軟性向上の観点から、その目付が、40g/m以下であることが好ましく、より好ましくは、30g/m以下、さらに好ましくは、20g/m以下である。一方、目付の下限は、5g/m以上であることが好ましく、より好ましくは、10g/m以上である。
【0066】
マスク本体部において、この内層は、微粒子や飛沫等の口鼻部への侵入を防ぐためのフィルターの役割を担う層である。そのことから、構成繊維の細径化が可能なメルトブロー不織布であることが好ましい。単層のメルトブロー不織布を用いても良いが、力学特性に優れたスパンボンド層を積層一体化した、積層不織布(スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)不織布)とすることにより、工程通過性を向上させることができる。
【0067】
また、本発明に係るマスク本体部において、外層は最も外側に配される層のことである。この外層は不織布であることが好ましく、中でも力学特性に優れたスパンボンド不織布であることが好ましい。外層が、単層のスパンボンド不織布であることで、不織布シートの薄地化に寄与することができ、柔軟性や通気性を損なうことなく、優れた力学特性を有するマスクが得られる。
【0068】
外層の目付は、40g/m以下であることが好ましく、より好ましくは、35g/m以下、さらに好ましくは、30g/m以下である。一方、目付の下限は、10g/m以上であることが好ましく、好ましくは、15g/m以上である。
【0069】
本発明のマスクの耳掛け部について、その材質および形態に特に制限はないが、材質の一例として、ウレタン系繊維、ナイロン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維が挙げられる。形態としては、例えば、着用者の耳を入れるための開口部を有した織布、不織布、または、編紐が挙げられる。また、耳掛け部は、公知のマスクと同様にマスク本体部の左右の両側から外側へ延出するように配していることが好ましい。
【0070】
[不織布シートの製造方法]
次に、本発明のマスク本体部の口元層を構成する不織布シートを製造する好ましい態様を、具体的に説明する。
【0071】
前記の不織布シートを構成する不織布層(A)および不織布層(B)の製造方法は、スパンボンド法、メルトブロー法、短繊維カード法などの公知の製造方法から選ぶことができる。
【0072】
中でも、スパンボンド法は生産性に優れるため、好ましい手法として挙げられる。
【0073】
以下、スパンボンド法に基づいて本発明における不織布シートを製造する好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。
【0074】
スパンボンド法とは、原料である熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクターで牽引し延伸して、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化した後、熱接着する工程を要する不織布の製造方法である。
【0075】
用いられる紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。中でも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくいという観点から、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせを用いることが好ましい態様である。
【0076】
本発明における、紡糸温度は、(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+10℃)以上(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+100℃)以下とすることが好ましい。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0077】
紡出された糸条は、次に冷却されるが、紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0078】
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0079】
本発明に係る不織布シートでは、不織布層(A)および不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径の制御が肝となる。
【0080】
繊維の平均単繊維直径は、紡糸口金の吐出孔当たりの吐出量と牽引速度、すなわち紡糸速度によって決定される。このため、所望の平均単繊維直径に応じて、吐出量と紡糸速度を決定することが好ましい。
【0081】
紡糸速度においては、2000m/分以上であることが好ましく、より好ましくは3000m/分以上である。紡糸速度を2000m/分以上とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み高い強度の長繊維を得ることができる。
【0082】
このように牽引により延伸された長繊維糸条は、移動するネットに捕集されることでシート化された後に、熱接着する工程に供される。
【0083】
本発明に係る不織布シートは、不織布層(A)と不織布層(B)をそれぞれ少なくとも1層積層することにより得られる。2つの不織布層を積層する方法としては、例えば、前記のとおり捕集ネット上にスパンボンド法により第1の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層の上に、スパンボンド法により第2の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層をインラインで連続的に捕集し、積層一体化する方法、別々に得た不織布層(A)および不織布層(B)をオフラインで重ね合わせ、熱圧着などにより積層一体化する方法などを採用することができる。中でも生産性に優れているということから、捕集ネット上にスパンボンド法により第1の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層の上に、スパンボンド法により第2の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層をインラインで連続的に捕集、熱接着により積層一体化する方法が好ましい様態である。
【0084】
前記の不織布層を熱接着により積層一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱接着する方法や、ホーンの超音波振動により熱溶着させる超音波接着などの熱圧着による方法を採用することができる。
【0085】
熱圧着により本発明に係る不織布シートを製造した場合には、複数の不織布層が十分に接着されることで、不織布シートの機械強度が増すため、好ましい。
【0086】
一方で、前記の不織布層を熱接着により積層一体化する方法として、熱風を吹き付ける手法である、いわゆるエアスルー法も挙げることができる。
【0087】
このエアスルー法で本発明に係る不織布シートを製造した場合には、嵩高く、風合いに優れるため、好ましい。
【0088】
このようにして得られた不織布シートに対し、巻取り前に親水化剤を付与しても良い。不織布シートへの親水化剤の付与方法としては、キスロールやスプレーによる塗布やディップコーティングなどが挙げられるが、均一性や付着量制御の容易さからキスロールによる塗布が好ましい。
【0089】
[マスクの製造方法]
次に、本発明のマスクを製造する好ましい態様を、具体的に説明する。
【0090】
本発明のマスクは、少なくとも口元層を有するマスク本体部と、耳掛け部と、を有するマスクであり、マスク本体部の口元層において、前記の不織布シートの最も肌側の層が不織布層(B)となるように配された構成であれば、その他の構成は特に限定されないことから、本発明に係るマスクの製造方法についても特段限定されず、公知の製造方法に従い、製造することができる。
【0091】
ここでは、口元層―内層―外層より構成される、マスク本体部の製造方法の一例として、口元層、内層、外層をそれぞれ別々に得た後に不織布層をオフラインで重ねあわせることによって、積層一体化する方法について説明する。
【0092】
積層一体化する方法としては、口元層となる不織布シートの上に内層、外層の順番に重ね合わせた積層体の全体を熱エンボスロール等の熱圧着設備に供し、一体化する方法に加え、前述の積層体の端部のみを熱エンボスロールやヒートシーラー等の熱圧着設備に供し、一体化する方法が挙げられる。積層体の端部のみを熱圧着する方法は、着用者の口鼻部に直接接するマスク本体部の中央部の嵩高性や柔軟性を損なうことなく一体化することができるため、より好ましい手法である。
【0093】
前述の方法で積層一体化されたマスク本体部に対して、耳掛け部をマスク本体部の両側に設置することで、本発明のマスクを得ることができる。耳掛け部の設置方法については、特に制限はなく、熱エンボス等による公知慣用の方法を採用することができる。
【0094】
また、必要に応じて、マスク本体部にプリーツ加工を施し、ノーズフィッター、および/またはマウスバーの設置を行うことにより、マスク本体部の着用時の口鼻部の動きへの追従性を向上させることができる。
【0095】
本発明に係るマスク本体部を構成する、口元層以外の部分、例えば、内層や外層などについて、これらの製造方法についても特に制限はなく、口元層と同様に、スパンボンド法、メルトブロー法、短繊維カード法などの公知の製造法から選ぶことができる。
【実施例0096】
次に、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0097】
(1) 第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)
得られた不織布シートを構成する不織布層(A)および不織布層(B)を構成するそれぞれの繊維の横断面を走査型電子顕微鏡で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。続いて、撮影した画像を用い、画像解析ソフト(例えば三谷商事株式会社製「WinROOF2015」など)を用いて、それぞれの単繊維の断面輪郭が形成する面積Afを計測し、この面積Afと同一の面積となる真円の直径を算出する。これをそれぞれの不織布層から任意に抽出した単繊維20本について測定し、単純な数平均を求め、単位をμmとして、小数点第2位を四捨五入した値をそれぞれDb、Daとし、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)を求める。
【0098】
(2) 不織布シートの水との接触角
得られた不織布シートに対して、協和界面科学株式会社製の接触角計「DMo-501」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0099】
(3) 破断強力比(σmax/σmin
得られた不織布シートに対して、株式会社オリエンテック製の引張試験機「テンシロンUCT100」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0100】
(4) 吸水速度
得られた不織布シートに対して、前述のとおり測定を行った。
【0101】
(5) マスク着用時のムレ感評価
健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)に日常生活を想定した、4時間のマスク着用試験を実施し、次の4段階で着用時のムレ感を評価した。各マスクについて評価結果の平均点を算出し、マスク着用時のムレ感とした。
4: 湿り気や熱気を感じることは全くなく、さらっとした感触である。
3: 湿り気や熱気を感じることはほとんどない。
2: 湿り気や熱気を感じることがよくある。
1: 湿り気や熱気を感じることが多く、マスク内に汗や水分が残っている。
【0102】
(6) マスク着用時の毛羽感評価
健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)に日常生活を想定した、4時間のマスク着用試験を実施し、次の4段階で着用時の毛羽感を評価した。各マスクについて評価結果の平均点を算出し、マスク着用時の毛羽感とした。
4: ちくちくとしたかゆみを感じることは全くなく、さらさらした感触である。
3: ちくちくとしたかゆみを感じることはほとんどない。
2: ちくちくとしたかゆみを感じることがよくある。
1: ちくちくとしたかゆみを感じることが多く、ざらざらした感触である。
【0103】
(7) マスク着用後の表面毛羽数
健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)に日常生活を想定した、4時間のマスク着用試験を実施後、着用後のマスク口元層において、最も肌側の層の最表面の1cm四方の領域をランダムに3領域選択し、各領域の表面毛羽数を目視でカウントし、毛羽数の平均値を表面毛羽数[個/cm]とした。
【0104】
[実施例1]
(不織布層(A))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、孔径が0.4mmの丸孔を有した矩形口金から、単孔吐出量が0.56g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷風にて冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.08MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネットコンベア上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径は15.5μmであった。
【0105】
(不織布層(B))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、孔径が0.4mmの丸孔を有した矩形口金から、単孔吐出量が1.30g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネットコンベア上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径は24.5μmであった。
【0106】
(不織布シート)
上記で得られた不織布層(A)の上に直接不織布層(B)を捕集する(表1では積層方法について「インライン」と記載した)ことにより、スパンボンド不織布層-スパンボンド不織布層の2層構造(表1では積層構成について「A/B」と表記した)の積層繊維ウェブを得た。
【0107】
このようにして得られた積層繊維ウェブを、上ロールに正円形の凸部がMDおよびCDの両方向に同じピッチで千鳥配置された金属製エンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の加熱機構を有するエンボスロールを用いて、線圧が300N/cmで、熱接着温度が125℃の温度で熱接着し、目付40g/mの不織布シートを得た。その後、親水加工として非イオン性界面活性剤を不織布シート質量に対して有効成分が0.5質量%となるよう、キスロールを用いて不織布シートに塗布した。
【0108】
得られた不織布シートについて、平均単繊維直径比(Db/Da)、不織布シートと水との接触角、破断強力比(σmax/σmin)、吸水速乾性を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
(マスク)
前述の不織布シート上に、内層として、コロナ放電処理によるエレクトレット加工(直流電圧25KV)を施した目付15g/mのポリプロピレン製スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布および、外層として、目付20g/mのポリプロピレン製スパンボンド不織布(S)を用い、各層を口元層(ただし、口鼻側が不織布層(B)、内層・外層側が不織布層(A)となるようにした。)―内層―外層の順に重ね合わせて積層体(表1では「(B/A)-SMS-S」と表記した。以下同様である。)を形成した。そして、この積層体の端部をヒートシーラーで融着させることにより、一体化し、マスク本体部を作製した。
【0110】
得られたマスク本体部に対して、プリーツ加工を施した後で、ポリウレタン製編紐をマスク本体部の左右のそれぞれの辺から、着用者の耳に通すことを想定し、外側へループを描いて延出するようにヒートシーラーにより設置した。最後に、マスク本体部の上部にノーズフィッターを取り付けることにより、マスクを作製し、着用時のムレ感、着用時の毛羽感、および、着用後の表面毛羽数を評価した。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例2]
不織布層(B)の製法において、単孔吐出量を0.90g/分に変更した以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果をそれぞれ表1に示す。
【0112】
[比較例1]
不織布層(B)の製法において、不織布層(A)と同様の条件で不織布層(B)を得た以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表1に示す。
【0113】
[実施例3]
不織布層(A)の製法において、単孔吐出量を0.28g/分に変更し、不織布層(B)の製法において、単孔吐出量を0.45g/分に変更した以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表1に示す。
【0114】
[実施例4]
不織布層(A)の製法において、単孔吐出量を0.70g/分に変更し、不織布層(B)の製法において、単孔吐出量を1.13g/分に変更した以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表1に示す。
【0115】
[比較例2]
不織布層(A)の製法において、単孔吐出量を0.19g/分に変更し、不織布層(B)の製法において、単孔吐出量を0.30g/分に変更した以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表1に示す。
【0116】
[実施例5]
不織布シートの製法において、不織布層(A)の上に以下の方法で得られた不織布層(C)捕集した後、不織布層(B)を捕集した以外は実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表2に示す。
【0117】
(不織布層(C))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、孔径が0.4mmの丸孔を有した矩形口金から、単孔吐出量が0.90g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネットコンベア上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(C)を構成する繊維の平均単繊維直径は20.4μmであった。
【0118】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で不織布層(A)の繊維をネットコンベア上に捕集し、実施例1と同様の方法で熱接着をし、不織布層(A)を得た。不織布層(B)についても同様に、実施例1と同様の方法で不織布層(B)の繊維をネットコンベア上に捕集し、実施例1と同様の方法で熱接着をし、不織布層(B)を得た。このようにして得た不織布層(A)および不織布層(B)を積層させ(表1では積層方法について「オフライン」と記載した)、実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表2に示す。
【0119】
[比較例3]
不織布シートの製法において、親水加工を施さないこと以外は実施例1と同様の方法で、不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表2に示す。
【0120】
[実施例7]
不織布層(A)および不織布層(B)に使用するポリマーを、ポリエチレングリコールを8質量%共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET)とし、以下の方法で不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表2に示す。
【0121】
(不織布層(A))
ポリマーを共重合PETとした以外は実施例1と同様の方法で不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径は12.5μmであった。
【0122】
(不織布層(B))
ポリマーを共重合PETとした以外は実施例1と同様の方法で不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径は19.8μmであった。
【0123】
(不織布シート)
熱接着温度を200℃とし、親水加工を施さないこと以外は実施例1と同様の方法にて積層不織布を得た。
【0124】
[比較例4]
不織布層(A)に実施例7と同様の方法で得られた不織布層(A)を用い、不織布シートの製法において親水加工を施さないこと以外は実施例1と同様の方法にて不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表2に示す。
【0125】
[実施例8]
不織布層(A)に使用するポリマーについて、ポリエチレングリコールを8wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET)とポリアミド6(PA6)とし、以下の方法で不織布層(A)を得たことに加え、不織布層(B)に実施例7と同様の方法で得られた不織布層(B)を用い、不織布シートの製法において親水加工を施さないこと以外は実施例1と同様の方法にて不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表3に示す。
【0126】
(不織布層(A))
共重合PETおよびPA6をそれぞれ押出機で溶融し、中空24分割の割繊型複合矩形口金から、単孔吐出量が0.56g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷風にて冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.08MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られた不織布層(A)は1本の繊維が部分的に複数本の繊維に分割されており、分割後の繊維の平均単繊維直径は3.1μmであった。
【0127】
[実施例9]
マスクの内層をスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布からコロナ放電処理によるエレクトレット加工(直流電圧25KV)を施した多孔フィルム(F)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表3に示す。
【0128】
[比較例5]
マスクの口元層と外層を構成する不織布層を入れ替えたこと以外は、実施例1と同様の方法にて不織布シートおよびマスクを得た。得られた不織布シートおよびマスクの評価結果を表3に示す。
【0129】
[比較例6]
実施例1で得られたマスクの口元層において、最も肌側の層が不織布層(A)となるように配されてなるマスクを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布シートおよびマスクを得た。不織布シートおよびマスクの評価結果を表3に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
実施例1~9のマスクに用いられた不織布シートは、平均単繊維直径比(Da/Db)が大きく、不織布シートの最も肌側の表面の水との接触角と、他方の表面の水との接触角とがともに小さいことから、不織布シートの最も肌側の表面(不織布層(B))を最表面に積層した面において、優れた吸水速度および吸水速乾性を有していることが分かる。マスクの口元層において、最も肌側の層が不織布層(B)となるように配することにより、着用試験においてムレ感および毛羽感の低減を確認し、着用後の着用面の毛羽数も少なかった。
【0134】
一方、比較例1のマスクに用いられた不織布シートは、平均単繊維直径比が小さいため不織布シート内で水分が不織布層(A)側に移行されず、吸水速乾性に劣る。マスク着用試験において、毛羽感は少ないものの、ムレ感が大きくなり、着用快適性に欠けるものであった。
【0135】
また、比較例2のマスクに用いられた不織布シートは、平均単繊維直径比は十分なものの、マスク口元層において、最も肌側に配し、口鼻部に接する不織布層(B)の平均単繊維直径が小さいため、マスク着用試験において、ムレ感は少ないものの、毛羽感が大きくなり、着用後の着用面の表面毛羽数も多くなった。
【0136】
また、比較例3および4のマスクに用いられた不織布シートは、不織布シートの一部もしくは全てに疎水性の繊維を用いているためマスク口元層において、最も肌側に位置する、第1面の水との接触角が大きくなり、吸水速度が遅くなるとともに吸水速乾性も悪化した。マスク着用試験において、毛羽感は少ないものの、ムレ感が大きくなり、着用快適性に欠けるものであった。
【0137】
一方、比較例5および6のマスクに用いられた不織布シートは、本発明に係る不織布シートが口元層を構成していない、もしくは、マスク口元層において、最も肌側に位置する層が不織布層(A)となるように配されてなるため、マスク着用試験において、ムレ感、毛羽感ともに大きくなり、着用後の着用面の毛羽数も多くなった。