IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社今仙電機製作所の特許一覧

<>
  • 特開-リクライニング装置 図1
  • 特開-リクライニング装置 図2
  • 特開-リクライニング装置 図3
  • 特開-リクライニング装置 図4
  • 特開-リクライニング装置 図5
  • 特開-リクライニング装置 図6
  • 特開-リクライニング装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184297
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/025 20060101AFI20221206BHJP
   B60N 2/235 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092064
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 風太
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇弘
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA17
(57)【要約】
【課題】カムがロックギヤに対して相対的に軸方向にずれる場合でも、カムのカム面とロックギヤの内側端面との間で必要な接触面積を確保し得る構成を提供する。
【解決手段】ベースプレート30のうちロックギヤ61,62及びカム70に対向する面には、カム70の軸方向一側が入り込む円形状の凹部36が形成され、カム70は、カム面72の軸方向長さT1がロックギヤ61,62における内側端面61c,62cの軸方向長さT2よりも長くなるように形成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレートと、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートに形成される案内面を利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
所定の回動軸を中心に回動した際に前記ロックギヤの内側端面に対してカム面にて半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカムと、
前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に前記カムを付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記カムを回転駆動することで前記外歯と前記内歯との噛合を解除可能な解除部材と、
を備え、
前記ベースプレートのうち前記ロックギヤ及び前記カムに対向する面には、前記カムの軸方向一側が入り込む凹部が形成され、
前記カムは、前記カム面の軸方向長さが前記ロックギヤにおける前記内側端面の軸方向長さよりも長くなるように形成されることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記カムは、前記カム面の軸方向長さが前記内側端面の軸方向長さと前記凹部の深さとの和に等しくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置として、下記特許文献1に開示されるリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置では、リクライニング操作レバーの操作に応じて回動するカムと4つのロックギヤとの当接状態に応じて、各ロックギヤがギヤプレートに噛合するロック状態とその噛合を解除するアンロック状態とを切り替えるように構成されている。
【0003】
また、ロックギヤと固定ガイドとの間には、摺動可能な可動ガイドがそれぞれ介在しており、これら可動ガイドは、外方端から内方端に向かって漸次幅が狭く形成され、可動ガイドの摺動面のうち、ロックギヤ側の摺動面はロックギヤの移動方向に平行に設けられ、固定ガイド側の摺動面は前記ロックギヤ側の摺動面に対し傾斜して設けられている。そして、各可動ガイドにはそれぞれスプリングが係合され、当該スプリングによってベースプレートの内方向へと付勢されている。このため、可動ガイドはロックギヤと固定ガイドとの間に常に食い込んだ状態となるため、これら固定ガイドとロックギヤと可動ガイドとは相互に緊合して、各部材間における隙間が消滅することとなる。これにより、シートバックの前後方向へのガタが確実に解消されることとなり、確実なロック及びその解除を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-056397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、リクライニング装置の薄型化(軸方向長さの短縮化)が要求されており、リクライニング装置を構成する各部品の軸方向長さの短縮化が図られている。この短縮化のために、カムやロックギヤの軸方向長さを、それぞれ従来品よりも短くする必要がある。
【0006】
ところで、カム及びロックギヤの軸方向長さをそれぞれ短くすると、カムの外周側に設けられるカム面とロックギヤの内側端面(内周側の端面)とが接触する接触面積(軸方向での接触幅)が小さくなる。カム及びロックギヤは、カムレバーやスプリング等とともにギヤプレートとベースプレートとによって構成される収容空間に収容されており、この収容空間内の各部品には、設計上ある程度の移動(ずれ)が許容されるため、カムがロックギヤに対して相対的に軸方向にずれると、上記接触面積がさらに小さくなる。このように上記接触面積が小さくなった状態で、カムがロックギヤを外側へ押圧するロック状態になると、上記接触面積に作用する応力が大きくなるために、接触部位が圧損等してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カムがロックギヤに対して相対的に軸方向にずれる場合でも、カムのカム面とロックギヤの内側端面との間で必要な接触面積を確保し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
相対的に傾動する第1の部材(11,11a)と第2の部材(12,12a)との傾動角度を調整するリクライニング装置(20)であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレート(30)と、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯(41)を有するギヤプレート(40)と、
前記ベースプレートに形成される案内面(33a,33b,34a,34b)を利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯(61a,62a)を有するロックギヤ(61,62)と、
所定の回動軸を中心に回動した際に前記ロックギヤの内側端面(61c,62c)に対してカム面(72)にて半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカム(70)と、
前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に前記カムを付勢する付勢部材(80)と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記カムを回転駆動することで前記外歯と前記内歯との噛合を解除可能な解除部材(90)と、
を備え、
前記ベースプレートのうち前記ロックギヤ及び前記カムに対向する面には、前記カムの軸方向一側が入り込む凹部が形成され、
前記カムは、前記カム面の軸方向長さが前記ロックギヤにおける前記内側端面の軸方向長さよりも長くなるように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ベースプレートのうちロックギヤ及びカムに対向する面には、カムの軸方向一側が入り込む凹部が形成され、カムは、カム面の軸方向長さがロックギヤにおける内側端面の軸方向長さよりも長くなるように形成される。これにより、カムがロックギヤに対して軸方向他側にずれたとしても、凹部に入り込んでいたカム面の部位がロックギヤの内側端面に当接するので、カムのカム面とロックギヤの内側端面との間で必要な接触面積を確保することができる。
【0010】
請求項2の発明では、カムは、カム面の軸方向長さが内側端面の軸方向長さと凹部の深さとの和に等しくなるように形成される。これにより、カムの軸方向一側が凹部の底面に接触するように入り込んだ場合でも、カム面の軸方向他側と内側端面の軸方向他側とが面一状態となるので、カムのカム面とロックギヤの内側端面との間で必要な接触面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のリクライニング装置が設置される車両用シートの構成概要を示す側面図である。
図2】リクライニング装置の断面図である。
図3】リクライニング装置の分解斜視図である。
図4図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
図5図2に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
図6】カムにおけるカム面の軸方向長さとロックギヤにおける内側端面の軸方向長さとベースプレートにおける凹部の深さとの関係を拡大した断面によって説明する説明図である。
図7図7(A)は、カムが軸方向一側にてベースプレートにおける凹部の底面に接触している状態を説明する説明図であり、図7(B)は、図7(A)に対してカム等が軸方向他側にずれた状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るリクライニング装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備えた車両用シート10は、シートクッション11とシートバック12を主な構成要素とし、シートクッション11にはシートブラケット(下側ブラケット)11aが、シートバック12にはシートバックブラケット(上側ブラケット)12aがそれぞれ固定されている。
【0013】
下側ブラケット11a及び上側ブラケット12aは、ラウンドリクライニングユニット21の相対回動する部位にそれぞれ固定されることで、互いに相対回動可能に連結されている。これにより、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。なお、シートクッション11及び下側ブラケット11aは、「第1の部材」の一例に相当し、シートバック12及び上側ブラケット12aは、「第2の部材」の一例に相当し得る。
【0014】
ラウンドリクライニングユニット21の中央のセンターシャフト22にはリクライニング操作レバー23が装着されている。ラウンドリクライニングユニット21、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23によりリクライニング装置20が構成されている。リクライニング操作レバー23を上方に引くとリクライニング装置20がアンロック状態となりシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。ここで、シートバック12を後方に倒した図1にて示す角度Aの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離すとその時の角度位置にシートバック12がロックされる傾度調整範囲であり、シートバック12を前方に倒した図1にて示す角度Bの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離してもアンロックの状態が持続するロックフリー状態に対応する自由回動範囲である。図1から判るように、シートバック12は、シートクッション11と接する前倒しの位置からシートクッション11とフラットになる後倒しの位置まで回動可能である。このようなリクライニング装置20の構造について以下説明する。
【0015】
図2及び図3に示すように、ラウンドリクライニングユニット21は、略円板状のベースプレート30と略お椀形状のギヤプレート40を重ね合わせてカバーブラケット50を組み付けることで、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されるように構成されている。なお、便宜上、図2及び図3では、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23の図示を省略しており、図4及び図5では、ギヤプレート40は内歯41近傍のみ図示して、カバーブラケット50の図示を省略している。
【0016】
ベースプレート30とギヤプレート40の間にはキャビティ(空間)Cが形成される。このキャビティC内には、図2図5に示すように、一対の第1ロックギヤ61と一対の第2ロックギヤ62の計4枚のロックギヤ、中央のカム70、2つの略円弧状のバネ部材80及び略円板状のカムレバー90等のロック、アンロックのための部材が配設されている。なお、図2において、図面左側を軸方向一側、図面右側を軸方向他側として、以下説明する。
【0017】
ベースプレート30は、軸方向一側の側面(以下、取付面30aともいう)に複数の突起30bが形成されており、これら各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該下側ブラケット11aに取り付けられる。また、図4に示すように、ベースプレート30には、軸方向他側の側面に、各ロックギヤ61,62を半径方向に案内するための4つの案内凸部31、32、31、32が形成されている。なお、以下の説明では、図4に示すように、第1ロックギヤ61を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部31の案内面を一方の第1案内面33aとし、案内凸部32の案内面を他方の第1案内面33bとする。また、第2ロックギヤ62を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部32の案内面を一方の第2案内面34aとし、案内凸部31の案内面を他方の第2案内面34bとする。
【0018】
ベースプレート30には、センターシャフト22の軸部(図示略)が挿通する挿通孔35が形成されている。また、ベースプレート30の軸方向他側の側面には、案内凸部31,32の内方となる位置に、円形状の凹部36が挿通孔35に対して同軸的となるように設けられている。凹部36は、図2に示すように、カム70の軸方向一側が相対回動可能に入り込むように形成されている。この凹部36の深さHは、許容されるカム70とロックギヤ61,62の軸方向ずれに等しくなるように設定することができる。
【0019】
ギヤプレート40の内周面には、全周にわたって内歯41が形成されている。ギヤプレート40は、その背面(軸方向他側の面)に複数の突起40aが形成されており、これら各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該上側ブラケット12aに取り付けられる。
【0020】
また、ギヤプレート40の内周面には、内歯41と同軸的に形成された円弧状段部が180°間隔に2つ配置されている。当該円弧状段部は、上述したロックフリー状態を実現するためのもので、第1ロックギヤ61の突起63(後述する)が内周側から当接する角度範囲が上記自由回動範囲に対応するように形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、両第1ロックギヤ61及び両第2ロックギヤ62の外周側には、ギヤプレート40の内歯41と噛合可能な外歯61a、62aがそれぞれ形成されている。各ロックギヤ61,62は、ベースプレート30の案内面33a,33b,34a,34bを利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられている。具体的には、両第1ロックギヤ61は、案内凸部31の一方の第1案内面33aと案内凸部32の他方の第1案内面33bに案内される可動ガイド37(後述する)とに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。また、両第2ロックギヤ62は、案内凸部32の一方の第2案内面34aと案内凸部31の他方の第2案内面34bとに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。
【0022】
また、両第1ロックギヤ61には、軸方向他側(ギヤプレート側)に突出する突起61bがそれぞれ設けられ、両第2ロックギヤ62には、軸方向他側に突出する突起62bがそれぞれ設けられている。両突起61b及び両突起62bは、後述するように回動するカムレバー90によって案内されることで、各ロックギヤ61、62の半径方向移動を制御するように機能する。また、両第1ロックギヤ61には、突起61bの外側に突起63がそれぞれ設けられており、両突起63は、ギヤプレート40の円弧状段部に内周側から当接することで、内歯41と外歯61aとの噛合を解除した状態が維持されるように形成されている。
【0023】
可動ガイド37は、一方端から他方端に向かって漸次幅が狭くなるよう楔状に形成されており、第1ロックギヤ61と案内凸部32の他方の第1案内面33bとの間にて摺動可能にそれぞれ配置されている。両可動ガイド37にはバネ部材80の一端を係合するための係合穴37aが形成されており、この係合穴37aにバネ部材80の一端を係合することで、当該バネ部材80によって両可動ガイド37がベースプレート30の内方向へとそれぞれ付勢されている。これにより、当該可動ガイド37は第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bとの間に常に食い込んだ状態となり、これら第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bと可動ガイド37とが相互に緊合して(堅く合わさって)、各部材間における隙間が消滅する。そのため、シートバック12の前後方向におけるガタが解消されることとなる。なお、バネ部材80は、「付勢部材」の一例に相当し得る。
【0024】
ベースプレート30には、その凹部36を利用して、センターシャフト22の軸部を挿入するための貫通孔71が形成される板状のカム70が、回動可能に配設されている。カム70は、両ロックギヤ61の内側端面61c及び両ロックギヤ62の内側端面62cに対してそれぞれカム面72にて半径方向内側から当接し、回動軸となる上記軸部を中心に所定の状態に回動した際にロックギヤ61,62の外歯61a,62aをギヤプレート40の内歯41に噛合させるように形成されている。また、カム70には、側面にバネ部材80の他端が係合する2つの係合穴73と軸方向他側に突出する2つの円柱状の突起74とが形成されている。
【0025】
特に、カム70は、カム面72の軸方向長さT1がロックギヤ61,62における内側端面61c,62cの軸方向長さT2よりも長くなるように形成される。より具体的には、カム70は、カム面72の軸方向長さT1が内側端面61c,62cの軸方向長さT2とベースプレート30の凹部36の深さHとの和に等しくなるように形成される。このため、図6に示すように、カム70の軸方向一側が凹部36の底面36aに接触するように入り込んだ場合には、カム面72の軸方向他側と内側端面61c,62cの軸方向他側とが面一状態となる。
【0026】
図5に示すように、カム70は、2つのバネ部材80の他端とそれぞれ係合することにより、ロック回動方向(図4及び図5にて時計方向)に強く付勢されている。これにより、カム70は、カム面72にて各ロックギヤ61、62の内側端面61c,62cに当接することで、上記両バネ部材80によるロック回動方向の付勢力により各ロックギヤ61、62を半径方向外側に強く付勢することとなる。
【0027】
カム70の貫通孔71には、センターシャフト22の軸部が挿入され、このセンターシャフト22を回動させることにより両バネ部材80の付勢力に抗してカム70をアンロック回動方向(図4及び図5にて反時計方向)に回動させることができるようになっている。
【0028】
図5に示すように、カムレバー90には、カム70の両突起74にそれぞれ嵌合する貫通孔91と、2つのカム孔92及び2つのカム孔93とが設けられている。カムレバー90は、これら両貫通孔91と両突起74とをそれぞれ嵌合させ、両カム孔92に突起61bをそれぞれ挿通させ、両カム孔93に突起62bをそれぞれ挿通させた状態で、カム70及び各ロックギヤ61、62に組み付けられている。
【0029】
これにより、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向に回動すると、カム孔92の内周縁が第1ロックギヤ61の突起61bにそれぞれ当接するとともにカム孔93の内周縁が両第2ロックギヤ62の突起62bにそれぞれ当接する。さらにカムレバー90がアンロック回動方向に回動すると、これら突起61b、突起62bが各カム孔92、93の内周縁により半径方向内側に付勢されて、各ロックギヤ61、62が半径方向内側に連動して移動することとなる。なお、カムレバー90は、「解除部材」の一例に相当し得る。
【0030】
このように構成されるリクライニング装置20は、各ロックギヤ61、62及び可動ガイド37やカム70などをキャビティC内に配設して一体に組み付けたベースプレート30及びギヤプレート40の側周部をカバーブラケット50によりリングかしめをして一体化される。これにより、ベースプレート30及びギヤプレート40は、相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されることとなる。
【0031】
そして、カム70の貫通孔71に軸部を挿入したセンターシャフト22に対してリクライニング操作レバー23を組み付けることで、図2に示すリクライニング装置20が完成する。このように構成されるリクライニング装置20に対して、ベースプレート30の各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴に係合させるとともに、ギヤプレート40の各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴に係合させることで、シートクッション11及びシートバック12がリクライニング装置20により相対傾動可能に連結されることとなる。
【0032】
次に、上述ように構成される本実施形態に係るリクライニング装置20のアンロック状態およびロック状態について、以下に説明する。
【0033】
(アンロック状態)
まず、リクライニング装置20におけるアンロック状態について説明する。
乗員がシートバック12の傾斜角度を調整するためロックを外す時は、リクライニング操作レバー23を操作してセンターシャフト22をアンロック回動方向に回動させる。すると、カム70は、センターシャフト22とともに両バネ部材80の付勢力に抗してアンロック回動方向に回動する。
【0034】
カム70がアンロック回動方向に回動することにより、カム70のカム面72と各ロックギヤ61、62のそれぞれの内側端面61c,62cとの当接が解除されて、各ロックギヤ61、62を半径方向外側へ付勢しているカム70による付勢力が解除される。これにより、各ロックギヤ61、62は半径方向内側に移動することが可能になり、ギヤプレート40の内歯41と各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aとの噛合が解除可能状態となる。
【0035】
そして、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向に回動することにより、カムレバー90の各カム孔92、93の内周縁が各ロックギヤ61、62の突起61b、62bに当接して、各ロックギヤ61、62を積極的に半径方向内側に移動させて内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除される。
【0036】
上述のように、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除されると、ギヤプレート40の回動が自由になり、ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になる。ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になれば、リクライニング装置20がアンロック状態になり、シートバック12を後方に倒す場合には、当該シートバック12の傾斜角度を自由に調整可能な状態になる(図1の角度A参照)。
【0037】
(ロックフリー状態)
次に、リクライニング装置20におけるロックフリー状態について説明する。
上述のようなアンロック状態において、シートバック12を前方に倒す場合には、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動し、突起63がギヤプレート40の円弧状段部に当接可能な位置に両第1ロックギヤ61が移動する。この状態でリクライニング操作レバー23を緩めると、カム70が、両バネ部材80の付勢力によりロック回動方向に回動し、このカム70の回動により各ロックギヤ61、62が半径方向外側に付勢される。
【0038】
このとき、両第1ロックギヤ61の突起63がギヤプレート40の円弧状段部にそれぞれ当接するため、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除された状態が維持される。このため、突起63がギヤプレート40の円弧状段部に当接する間、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動するようにシートバック12を前方に倒しても、アンロック状態が維持されることとなる(図1の角度B参照)。
【0039】
(ロック状態)
次に、リクライニング装置20におけるロック状態について説明する。
乗員によるシートバック12の傾斜角度の調整が終了すると、リクライニング操作レバー23を緩めることにより、カム70が、両バネ部材80の付勢力によりロック回動方向に回動する。
【0040】
この回動するカム70のカム面72が各ロックギヤ61、62のそれぞれの内側端面61c,62cに当接することにより、各ロックギヤ61、62が半径方向外側に付勢される。これにより、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合するように半径方向外側へ移動する。そして、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合することにより、ギヤプレート40の回動が制限され、リクライニング装置20がロック状態になる。
【0041】
次に、ベースプレート30に凹部36を設けたことによる効果について、図7(A)(B)を参照して説明する。なお、図7(A)(B)では、それぞれ左側の一点鎖線矩形領域にて、右側の一点鎖線矩形領域を拡大した状態を図示している。
【0042】
リクライニング装置20は、軸方向が略水平になるように車両用シート10に組み込まれるため、上述のようなロック状態、アンロック状態、ロックフリー状態の遷移を繰り返す際に、キャビティC内の各部品が軸方向にて許容されるずれの範囲で移動することになる。その際、図7(A)(B)からわかるように、カム70もロックギヤ61,62に対して相対的に軸方向にずれる場合がある。
【0043】
本実施形態に係るリクライニング装置20では、ベースプレート30のうちロックギヤ61,62及びカム70に対向する面には、カム70の軸方向一側が入り込む円形状の凹部36が形成され、カム70は、カム面72の軸方向長さT1がロックギヤ61,62における内側端面61c,62cの軸方向長さT2よりも長くなるように形成されている。
【0044】
このため、ロック状態時において、図7(A)に示すようにカム70の軸方向一側が凹部36の底面36aに接触するように入り込んでいる場合には、カム面72の軸方向他側にてロックギヤ61,62の内側端面61c,62cに当接する。また、図7(B)に示すようにカム70がロックギヤ61,62に対して軸方向他側にずれている場合でも、カム面72の軸方向一側にてロックギヤ61,62の内側端面61c,62cに当接する。すなわち、カム70とロックギヤ61,62との軸方向ずれによってカム面72と内側端面61c,62cとの接触面積が変わることはない。このため、カム70がロックギヤ61,62に対して軸方向にずれたとしても、カム70のカム面72とロックギヤ61,62の内側端面61c,62cとの間で必要な接触面積を確保することができる。
【0045】
特に、カム70は、カム面72の軸方向長さT1が内側端面61c,62cの軸方向長さT2と凹部36の深さHとの和に等しくなるように形成される(図6参照)。これにより、カム70の軸方向一側が凹部36の底面36aに接触するように入り込んだ場合でも、カム面72の軸方向他側と内側端面61c,62cの軸方向他側とが面一状態となるので、カム70のカム面72とロックギヤ61,62の内側端面61c,62cとの間で必要な接触面積を確保することができる。
【0046】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)ベースプレート30の凹部36は、円形状に形成されることに限らず、カム70の軸方向一側が入り込んだ状態で相対回動可能な形状に形成されてもよい。
【0047】
(2)凹部36は、その深さHと内側端面61c,62cの軸方向長さT2との和がカム面72の軸方向長さT1に等しくなるように形成されることに限らず、例えば、リクライニング装置20が採用される環境等に応じて、その深さHと内側端面61c,62cの軸方向長さT2との和がカム面72の軸方向長さT1よりも小さくなるように形成されてもよい。
【0048】
(3)本発明は、ベースプレート30が下側ブラケット11aに取り付けられてギヤプレート40が上側ブラケット12aに取り付けられるリクライニング装置20に適用されることに限らず、ベースプレートが上側ブラケット12aに取り付けられてギヤプレートが下側ブラケット11aに取り付けられるリクライニング装置に適用されてもよい。なお、このような構成では、上側ブラケット12a及びシートバック12が「第1の部材」に相当し、下側ブラケット11a及びシートクッション11が「第2の部材」に相当し得る。
【符号の説明】
【0049】
10…車両用シート
11…シートクッション(第1の部材)
11a…下側ブラケット(第1の部材)
12…シートバック(第2の部材)
12a…上側ブラケット(第2の部材)
20…リクライニング装置
30…ベースプレート
33a,33b…第1案内面(案内面)
34a,34b…第2案内面(案内面)
36…凹部
36a…底面
40…ギヤプレート
41…内歯
61…第1ロックギヤ
61a…外歯
61c…内側端面
62…第2ロックギヤ
62a…外歯
62c…内側端面
70…カム
72…カム面
80…バネ部材(付勢部材)
90…カムレバー(解除部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7