(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184298
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
A47C 1/025 20060101AFI20221206BHJP
B60N 2/235 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092065
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 風太
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇弘
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA17
(57)【要約】
【課題】ギヤプレートとロックギヤとの相対角度がずれた場合でも、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とを適切に噛合可能な構成を提供する。
【解決手段】ロックギヤ61のギヤ側面61dとベースプレート30に設けられる第1案内面31aとの間に第1可動ガイド63が配置され、ギヤ側面61eと第2案内面32aとの間に第2可動ガイド64が配置される。そして、第1案内面31aは、半径方向内側ほどギヤ側面61dとの距離が近くなるように凹状に湾曲して形成され、第2案内面32aは、半径方向内側ほどギヤ側面61eとの距離が近くなるように凹状に湾曲して形成される。また、第1可動ガイド63は、ギヤ側面61dに押圧される側面63aが当該ギヤ側面61dに面接触し、第1案内面31aに押圧される凸状側面63bが凸状に湾曲するように形成され、第2可動ガイド64は、ギヤ側面61eに押圧される側面64aが当該ギヤ側面61eに面接触し、第2案内面32aに押圧される凸状側面64bが凸状に湾曲するように形成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレートと、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートに対して半径方向に摺動可能に組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
摺動方向に沿う前記ロックギヤのギヤ側面と前記ベースプレートに設けられる案内面との間に配置される可動ガイドと、
前記ロックギヤの半径方向の移動を制御可能であって、前記外歯を前記内歯に噛合させるロック方向に付勢されるカムと、
前記可動ガイドを前記ギヤ側面と前記案内面との双方に押圧する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記案内面は、半径方向内側ほど前記ギヤ側面との距離が近くなるように凹状に湾曲して形成され、
前記可動ガイドは、前記ギヤ側面に押圧される一方の側面が当該ギヤ側面に面接触し、前記案内面に押圧される他方の側面が凸状に湾曲するように形成されることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記可動ガイド及び前記案内面は、前記ロックギヤに対して左右一対設けられることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置として、下記特許文献1に開示されるリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置では、リクライニング操作レバーの操作に応じて回動するカムと4つのロックギヤとの当接状態に応じて、ロックギヤの外歯がギヤプレートの内歯に噛合するロック状態とその噛合を解除するアンロック状態とを切り替えるように構成されている。
【0003】
また、ロックギヤと固定ガイドとの間には、摺動可能な可動ガイドがそれぞれ介在しており、これら可動ガイドは、外方端から内方端に向かって漸次幅が狭く形成され、可動ガイドの摺動面のうち、ロックギヤ側の摺動面はロックギヤの移動方向に平行に設けられ、固定ガイド側の摺動面は前記ロックギヤ側の摺動面に対し傾斜して設けられている。そして、各可動ガイドにはそれぞれスプリングが係合され、当該スプリングによってベースプレートの内方向へと付勢されている。このため、可動ガイドはロックギヤと固定ガイドとの間に常に食い込んだ状態となるため、これら固定ガイドとロックギヤと可動ガイドとは相互に緊合して、各部材間における隙間が消滅することとなる。これにより、シートバックの前後方向へのガタが確実に解消されることとなり、確実なロック及びその解除を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベースプレートに設けられた案内面に沿ってロック方向に移動したロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とがずれることなく完全に噛合する噛合状態(以下、単に、完全噛合状態ともいう)は、ギヤ歯のピッチごとに存在する。このため、シートフレームのねじれ等によりギヤプレートとロックギヤとの相対角度が上記完全噛合状態からずれている場合、上記案内面に沿ってロック方向に移動したロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とが不完全な噛合状態で噛合してしまう。例えば、2°/歯のギヤ歯のピッチで、ギヤプレートが上記完全噛合状態から相対的に0.5°ずれてしまうと、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とが十分に噛合せずに噛合不足が生じてしまう。このような噛合不足が生じる場合には、噛合部分等にて強度不足になるだけでなく、フレームねじれ等を助長してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ギヤプレートとロックギヤとの相対角度がずれた場合でも、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とを適切に噛合可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
相対的に傾動する第1の部材(11,11a)と第2の部材(12,12a)との傾動角度を調整するリクライニング装置(20)であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレート(30)と、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯(41)を有するギヤプレート(40)と、
前記ベースプレートに対して半径方向に摺動可能に組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯(61a)を有するロックギヤ(61)と、
摺動方向に沿う前記ロックギヤのギヤ側面(61d,61e)と前記ベースプレートに設けられる案内面(31a,32a)との間に配置される可動ガイド(63,64)と、
前記ロックギヤの半径方向の移動を制御可能であって、前記外歯を前記内歯に噛合させるロック方向に付勢されるカム(70)と、
前記可動ガイドを前記ギヤ側面と前記案内面との双方に押圧する方向に付勢する付勢部材(82)と、
を備え、
前記案内面は、半径方向内側ほど前記ギヤ側面との距離が近くなるように凹状に湾曲して形成され、
前記可動ガイドは、前記ギヤ側面に押圧される一方の側面(63a,64a)が当該ギヤ側面に面接触し、前記案内面に押圧される他方の側面(63b,64b)が凸状に湾曲するように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、摺動方向に沿うロックギヤのギヤ側面とベースプレートに設けられる案内面との間に可動ガイドが配置される。案内面は、半径方向内側ほどギヤ側面との距離が近くなるように凹状に湾曲して形成され、可動ガイドは、ギヤ側面に押圧される一方の側面が当該ギヤ側面に面接触し、案内面に押圧される他方の側面が凸状に湾曲するように形成される。
【0009】
これにより、カムからロック方向の力を受けて半径外側に移動したロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とが噛合する際には、可動ガイドは、凸状に湾曲した他方の側面にて、ベースプレートの凸状に湾曲した案内面によって案内される。このため、ギヤプレートとロックギヤとの相対角度が上記完全噛合状態からずれた状態で噛合する際には、上記ロック方向の力によって、可動ガイドの他方の側面とベースプレートの案内面との接触位置がその湾曲形状に沿ってずれることで、上記完全噛合状態からのずれをなくすように可動ガイド及びロックギヤがギヤプレートに対して傾くことになる。すなわち、ギヤプレートとロックギヤとの相対角度がずれた場合でも、上記完全噛合状態となるようにロックギヤが傾けるので、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とを適切に噛合させることができる。
【0010】
請求項2の発明では、可動ガイド及び案内面は、ロックギヤに対して左右一対設けられるため、可動ガイド及びロックギヤが傾ける角度が大きくなるので、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とをより確実に噛合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のリクライニング装置が設置される車両用シートの構成概要を示す側面図である。
【
図4】
図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
【
図5】
図2に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
【
図6】
図6(A)は、噛合直前でのロックギヤ及び両可動ガイドの状態を説明する説明図であり、
図6(B)は、不完全な噛合状態でのロックギヤ及び両可動ガイドの状態を説明する説明図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6(B)の状態からロックギヤが傾動することで完全噛合状態になった状態を説明する説明図であり、
図7(B)は、
図7(A)における区形状の二点鎖線領域を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るリクライニング装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備えた車両用シート10は、シートクッション11とシートバック12を主な構成要素とし、シートクッション11にはシートブラケット(下側ブラケット)11aが、シートバック12にはシートバックブラケット(上側ブラケット)12aがそれぞれ固定されている。
【0013】
下側ブラケット11a及び上側ブラケット12aは、ラウンドリクライニングユニット21の相対回動する部位にそれぞれ固定されることで、互いに相対回動可能に連結されている。これにより、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。なお、シートクッション11及び下側ブラケット11aは、「第1の部材」の一例に相当し、シートバック12及び上側ブラケット12aは、「第2の部材」の一例に相当し得る。
【0014】
ラウンドリクライニングユニット21の中央のセンターシャフト22にはリクライニング操作レバー23が装着されている。ラウンドリクライニングユニット21、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23によりリクライニング装置20が構成されている。リクライニング操作レバー23を上方に引くとリクライニング装置20がアンロック状態となりシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。ここで、シートバック12を後方に倒した
図1にて示す角度Aの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離すとその時の角度位置にシートバック12がロックされる傾度調整範囲であり、シートバック12を前方に倒した
図1にて示す角度Bの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離してもアンロックの状態が持続するロックフリー状態に対応する自由回動範囲である。
図1から判るように、シートバック12は、シートクッション11と接する前倒しの位置からシートクッション11とフラットになる後倒しの位置まで回動可能である。このようなリクライニング装置20の構造について以下説明する。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ラウンドリクライニングユニット21は、略円板状のベースプレート30と略お椀形状のギヤプレート40を重ね合わせてカバーブラケット50を組み付けることで、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されるように構成されている。なお、便宜上、
図2及び
図3では、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23の図示を省略しており、
図4及び
図5では、ギヤプレート40は内歯41近傍のみ図示して、カバーブラケット50の図示を省略している。
【0016】
ベースプレート30とギヤプレート40の間にはキャビティ(空間)Cが形成される。このキャビティC内には、
図2~
図5に示すように、一対のロックギヤ61、一対の第1可動ガイド63と一対の第2可動ガイド64の計4枚の可動ガイド、中央のカム70、一対のバネ部材81と一対のバネ部材82、略円板状のカムレバー90等のロック、アンロックのための部材が配設されている。なお、
図2において、図面左側を軸方向一側、図面右側を軸方向他側として、以下説明する。
【0017】
ベースプレート30は、軸方向一側の側面(以下、取付面30aともいう)に複数の突起30bが形成されており、これら各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該下側ブラケット11aに取り付けられる。
【0018】
図4に示すように、ベースプレート30には、軸方向他側の側面に、両ロックギヤ61を半径方向へ摺動可能に案内するための4つの案内凸部31,32,31,32が形成されている。案内凸部31のロックギヤ61側に位置する側面(以下、第1案内面31aともいう)と、案内凸部32のロックギヤ61側に位置する側面(以下、第2案内面32aともいう)とは、ロックギヤ61及び可動ガイド63,64を案内するための一対の案内面として機能するように形成されている。特に、第1案内面31a及び第2案内面32aは、半径方向内側ほどロックギヤ61におけるギヤ側面との距離が近くなるように凹状に湾曲して形成されている。第1案内面31a及び第2案内面32aの詳細形状等については後述する。
【0019】
また、ベースプレート30の軸方向他側の側面には、センターシャフト22の軸部(図示略)が挿通する挿通孔35を介して対向するように、2つの凹部36が形成されている。両凹部36は、それぞれ渦巻状のバネ部材81を収容するためのもので、バネ部材81の一端側が係合される係合片36aが底面から軸方向他側に延出するように形成されている。
【0020】
ギヤプレート40の内周面には、全周にわたって内歯41が形成されている。ギヤプレート40は、その背面(軸方向他側の面)に複数の突起40aが形成されており、これら各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該上側ブラケット12aに取り付けられる。
【0021】
また、ギヤプレート40の内周面には、内歯41と同軸的に形成された円弧状段部が180°間隔に2つ配置されている。当該円弧状段部は、上述したロックフリー状態を実現するためのもので、ロックギヤ61の突起61c(後述する)が内周側から当接する角度範囲が上記自由回動範囲に対応するように形成されている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、ロックギヤ61の外周側には、ギヤプレート40の内歯41と噛合可能な外歯61aが形成されている。また、ロックギヤ61には、軸方向他側(ギヤプレート側)に突出する突起61bが設けられており、この突起61bは、後述するように回動するカムレバー90によって案内されることで、ロックギヤ61の半径方向移動を制御するように機能する。また、ロックギヤ61には、突起61bの外側に突起61cが設けられており、この突起61cは、ギヤプレート40の円弧状段部に内周側から当接することで、内歯41と外歯61aとの噛合を解除した状態が維持されるように形成されている。
【0023】
ロックギヤ61は、摺動方向に沿う略平面状のギヤ側面61d,61eにて、可動ガイド63及び可動ガイド64の双方に面接触するように挟持された状態で、案内凸部31の第1案内面31aと案内凸部32の第2案内面32aとの間に配置されている。
【0024】
両第1可動ガイド63は、略平面状に形成される一方の側面(以下、側面63aともいう)にてギヤ側面61dに面接触し、凸状に湾曲するように形成される他方の側面(以下、凸状側面63bともいう)にて第1案内面31aにR接触(凸状曲面と凹状曲面との接触)した状態で、ロックギヤ61と案内凸部31との間にそれぞれ配置されている。凸状側面63bは、その曲率がR16程度であって、第1案内面31aの曲率(本実施形態では、R100程度)よりも小さくなるように形成されている。第1可動ガイド63には、バネ部材82の一端を係合するための係合穴63cが形成されるとともに、係合穴63cに対して内方となる位置から軸方向他側に延出する突起63dが形成されている。
【0025】
両第2可動ガイド64は、略平面状に形成される一方の側面(以下、側面64aともいう)にてギヤ側面61eに面接触し、凸状に湾曲するように形成される他方の側面(以下、凸状側面64bともいう)にて第2案内面32aにR接触した状態で、ロックギヤ61と案内凸部32との間にそれぞれ配置されている。凸状側面64bは、その曲率がR16程度であって、第2案内面32aの曲率(本実施形態では、R100程度)よりも小さくなるように形成されている。第2可動ガイド64には、バネ部材82の他端を係合するための係合穴64cが形成されるとともに、係合穴64cに対して内方となる位置から軸方向他側に延出する突起64dが形成されている。
【0026】
本実施形態では、第1可動ガイド63は、第2可動ガイド64に対して、側面63aの半径方向長さ(
図4での上下方向長さ)が側面64aの半径方向長さよりも長くなるように形成されている。
【0027】
図5に示すように、第1可動ガイド63の係合穴63c及び第2可動ガイド64の係合穴64cにバネ部材82の一端及び他端が係合されることで、当該バネ部材82によって第1可動ガイド63及び第2可動ガイド64がそれぞれベースプレート30の内方向へ付勢される。この付勢によって、両第1可動ガイド63は、側面63aにてギヤ側面61dに面接触した状態で凸状側面63bにて第1案内面31aに押圧され、両第2可動ガイド64は、側面64aにてギヤ側面61eに面接触した状態で凸状側面64bにて第2案内面32aに押圧される。このため、両第1可動ガイド63がロックギヤ61と案内凸部31との間に常に食い込んだ状態になるとともに、両第2可動ガイド64がロックギヤ61と案内凸部32との間に常に食い込んだ状態になる。これにより、各部材間における隙間が消滅し、シートバック12の前後方向におけるガタが解消される。なお、バネ部材82は、「付勢部材」の一例に相当し得る。
【0028】
このため、両ロックギヤ61は、上述のように付勢される第1可動ガイド63及び第2可動ガイド64によって、ギヤ側面61d及びギヤ側面61eにて第1可動ガイド63の側面63a及び第2可動ガイド64の側面64aのそれぞれに面接触するように案内されて、半径方向へ摺動可能にそれぞれ支承される。
【0029】
ベースプレート30には、センターシャフト22の軸部を挿入するための貫通孔71が形成される板状のカム70が、回動可能に配設されている。カム70は、両ロックギヤ61の内側端面61fに対してそれぞれカム面72にて半径方向内側から当接し、回動軸となる上記軸部を中心に所定の状態に回動した際にロックギヤ61の外歯61aをギヤプレート40の内歯41に噛合させるように形成されている。また、カム70には、軸方向一側の側面に凹部36内のバネ部材81の他端側が係合する2つの突起73が形成され、軸方向他側の側面にカムレバー90が係合する2つの突起74が形成されている。
【0030】
図4に示すように、カム70は、突起73にてバネ部材81の他端側とそれぞれ係合することにより、ロック回動方向(
図4及び
図5にて時計方向)に強く付勢されている。これにより、カム70は、カム面72にて両ロックギヤ61の内側端面61fに当接することで、上記両バネ部材81によるロック回動方向の付勢力により両ロックギヤ61を半径方向外側に強く付勢することとなる。
【0031】
カム70の貫通孔71には、センターシャフト22の軸部が挿入され、このセンターシャフト22を回動させることにより両バネ部材81の付勢力に抗してカム70をアンロック回動方向(
図4及び
図5にて反時計方向)に回動させることができるようになっている。
【0032】
図5に示すように、カムレバー90には、カム70の両突起74にそれぞれ嵌合する貫通孔91と、一対のカム孔92及び一対のカム孔93と、一対のカム面94とが設けられている。カム孔92は、挿通した突起61bを利用して、アンロック時にロックギヤ61を半径方向内側へ移動させるように形成されている。また、カム孔93は、第2可動ガイド64の係合穴64cに係合するバネ部材82の他端側と突起64dとが挿通し、挿通した突起64dを利用して、アンロック時に第2可動ガイド64の半径方向内側へ移動を規制するように形成されている。また、カム面94は、突起63dを利用して、アンロック時に第1可動ガイド63の半径方向内側へ移動を規制するように形成されている。
【0033】
カムレバー90は、両貫通孔91と両突起74とをそれぞれ嵌合させ、両カム孔92に突起61bをそれぞれ挿通させるとともに両カム孔93に突起64dをそれぞれ挿通させた状態で、カム70に組み付けられている。
【0034】
これにより、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向に回動すると、カム孔92の内周縁がロックギヤ61の突起61bにそれぞれ当接する。さらにカムレバー90がアンロック回動方向に回動すると、両突起61bが各カム孔92の内周縁により半径方向内側に付勢されて、各ロックギヤ61が半径方向内側に連動して移動することとなる。
【0035】
このように構成されるリクライニング装置20は、両ロックギヤ61及び可動ガイド63,64やカム70などをキャビティC内に配設して一体に組み付けたベースプレート30及びギヤプレート40の側周部をカバーブラケット50によりリングかしめをして一体化される。これにより、ベースプレート30及びギヤプレート40は、相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されることとなる。
【0036】
そして、カム70の貫通孔71に軸部を挿入したセンターシャフト22に対してリクライニング操作レバー23を組み付けることで、
図2に示すリクライニング装置20が完成する。このように構成されるリクライニング装置20に対して、ベースプレート30の各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴に係合させるとともに、ギヤプレート40の各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴に係合させることで、シートクッション11及びシートバック12がリクライニング装置20により相対傾動可能に連結されることとなる。
【0037】
次に、上述ように構成される本実施形態に係るリクライニング装置20のアンロック状態およびロック状態について、以下に説明する。
【0038】
(アンロック状態)
まず、リクライニング装置20におけるアンロック状態について説明する。
乗員がシートバック12の傾斜角度を調整するためロックを外す時は、リクライニング操作レバー23を操作してセンターシャフト22をアンロック回動方向に回動させる。すると、カム70は、センターシャフト22とともに両バネ部材81の付勢力に抗してアンロック回動方向に回動する。
【0039】
カム70がアンロック回動方向に回動することにより、カム70のカム面72と両ロックギヤ61のそれぞれの内側端面61fとの当接が解除されて、両ロックギヤ61を半径方向外側へ付勢しているカム70による付勢力が解除される。これにより、両ロックギヤ61は半径方向内側に移動することが可能になり、ギヤプレート40の内歯41と両ロックギヤ61の外歯61aとの噛合が解除可能状態となる。
【0040】
そして、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向に回動することにより、カムレバー90の両カム孔92の内周縁が両ロックギヤ61の突起61bに当接して、両ロックギヤ61を積極的に半径方向内側に移動させて内歯41と外歯61aとの噛合が解除される。
【0041】
上述のように、内歯41と外歯61aとの噛合が解除されると、ギヤプレート40の回動が自由になり、ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になる。ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になれば、リクライニング装置20がアンロック状態になり、シートバック12を後方に倒す場合には、当該シートバック12の傾斜角度を自由に調整可能な状態になる(
図1の角度A参照)。
【0042】
(ロックフリー状態)
次に、リクライニング装置20におけるロックフリー状態について説明する。
上述のようなアンロック状態において、シートバック12を前方に倒す場合には、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動し、突起61cがギヤプレート40の円弧状段部に当接可能な位置に両ロックギヤ61が移動する。この状態でリクライニング操作レバー23を緩めると、カム70が、両バネ部材81の付勢力によりロック回動方向に回動し、このカム70の回動により両ロックギヤ61が半径方向外側に付勢される。
【0043】
このとき、両ロックギヤ61の突起61cがギヤプレート40の円弧状段部にそれぞれ当接するため、内歯41と外歯61aとの噛合が解除された状態が維持される。このため、突起61cがギヤプレート40の円弧状段部に当接する間、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動するようにシートバック12を前方に倒しても、アンロック状態が維持されることとなる(
図1の角度B参照)。
【0044】
(ロック状態)
次に、リクライニング装置20におけるロック状態について説明する。
乗員によるシートバック12の傾斜角度の調整が終了すると、リクライニング操作レバー23を緩めることにより、カム70が、両バネ部材81の付勢力によりロック回動方向に回動する。
【0045】
この回動するカム70のカム面72が両ロックギヤ61のそれぞれの内側端面61fに当接することにより、両ロックギヤ61が半径方向外側に付勢される。これにより、両ロックギヤ61の外歯61aがギヤプレート40の内歯41に噛合するように半径方向外側へ移動する。そして、両ロックギヤ61の外歯61aがギヤプレート40の内歯41に噛合することにより、ギヤプレート40の回動が制限され、リクライニング装置20がロック状態になる。
【0046】
次に、第1可動ガイド63及び第2可動ガイド64と第1案内面31a及び第2案内面32aとによる噛合状態改善効果について、図面を参照して説明する。
ベースプレートに設けられた案内面に対して半径方向のみ移動可能にロックギヤが設けられる従来の構成では、シートフレームのねじれ等によりギヤプレートとロックギヤとの相対角度が完全噛合状態(ロック方向に移動したロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とがずれることなく完全に噛合する噛合状態)からずれている場合、上記案内面に沿ってロック方向に移動したロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯とが不完全な噛合状態で噛合してしまう。
【0047】
例えば、
図6(A)に例示するように、所定のギヤ歯のピッチ(例えば、2°/歯のピッチ)で、ギヤプレート40が上記完全噛合状態から相対的に所定角度(例えば0.5°)ずれてしまうと、ロックギヤ61が傾動しない限り、
図6(B)に例示するように、ロックギヤ61の外歯61aとギヤプレート40の内歯41とが十分に噛合せずに噛合不足が生じてしまう。このような噛合不足が生じる場合には、噛合部分等にて強度不足になるだけでなく、フレームねじれ等を助長してしまうおそれがある。
【0048】
このため、本実施形態に係るリクライニング装置20では、ロックギヤ61のギヤ側面61dとベースプレート30に設けられる第1案内面31aとの間に第1可動ガイド63が配置され、ギヤ側面61eと第2案内面32aとの間に第2可動ガイド64が配置される。そして、第1案内面31aは、半径方向内側ほどギヤ側面61dとの距離が近くなるように凹状に湾曲して形成され、第2案内面32aは、半径方向内側ほどギヤ側面61eとの距離が近くなるように凹状に湾曲して形成される。また、第1可動ガイド63は、ギヤ側面61dに押圧される側面63aが当該ギヤ側面61dに面接触し、第1案内面31aに押圧される凸状側面63bが凸状に湾曲するように形成され、第2可動ガイド64は、ギヤ側面61eに押圧される側面64aが当該ギヤ側面61eに面接触し、第2案内面32aに押圧される凸状側面64bが凸状に湾曲するように形成される。
【0049】
特に、第1案内面31a及び第2案内面32aにおける凹状の湾曲形状と凸状側面63b及び凸状側面64bにおける凸状の湾曲形状は、係合穴63cに係合するバネ部材82の付勢力によって第1案内面31a及びギヤ側面61dを介して第1可動ガイド63に作用する力と、係合穴64cに係合するバネ部材82の付勢力によって第2案内面32a及びギヤ側面61eを介して第2可動ガイド64に作用する力とが、ほぼ等しくなるように設定されている。
【0050】
これにより、カム70からロック方向の力を受けて半径外側に移動したロックギヤ61の外歯61aとギヤプレート40の内歯41とが噛合する際には、第1可動ガイド63及び第2可動ガイド64は、凸状側面63b及び凸状側面64bにて、ベースプレート30の第1案内面31a及び第2案内面32aによって案内される。
【0051】
そして、ギヤプレート40とロックギヤ61との相対角度が上記完全噛合状態からずれた状態(
図6(B)参照)で噛合する際には、上記ロック方向の力によって、第1可動ガイド63の凸状側面63bと第1案内面31aとの接触位置及び第2可動ガイド64の凸状側面64bと第2案内面32aとの接触位置がその湾曲形状に沿ってそれぞれずれる。これにより、
図7(A)(B)に例示するように、上記完全噛合状態からのずれをなくすように、第1可動ガイド63及び第2可動ガイド64とロックギヤ61とがギヤプレート40に対して傾くことになる。すなわち、ギヤプレート40とロックギヤ61との相対角度がずれた場合でも、上記完全噛合状態となるようにロックギヤ61が傾けるので、ロックギヤ61の外歯61aとギヤプレート40の内歯41とを適切に噛合させることができる。
【0052】
特に、本実施形態では、可動ガイド63,64及び案内面31a,32aは、ロックギヤ61に対して左右一対設けられるため、可動ガイド63,64及びロックギヤ61が傾ける角度が大きくなるので、ロックギヤ61の外歯61aとギヤプレート40の内歯41とをより確実に噛合させることができる。
【0053】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、1つのロックギヤ61に対して可動ガイド63,64及び凹状の案内面31a,32aが左右一対設けられるリクライニング装置20に適用されることに限らず、1つのロックギヤに対して一組の可動ガイド及び凹状の案内面が左右のどちらか一方に設けられるリクライニング装置に適用されてもよい。
【0054】
(2)本発明は、一対のロックギヤ61が採用されるリクライニング装置20に適用されることに限らず、3つ以上のロックギヤが採用されるリクライニング装置に適用されてもよい。
【0055】
(3)本発明は、ベースプレート30が下側ブラケット11aに取り付けられてギヤプレート40が上側ブラケット12aに取り付けられるリクライニング装置20に適用されることに限らず、ベースプレートが上側ブラケット12aに取り付けられてギヤプレートが下側ブラケット11aに取り付けられるリクライニング装置に適用されてもよい。なお、このような構成では、上側ブラケット12a及びシートバック12が「第1の部材」に相当し、下側ブラケット11a及びシートクッション11が「第2の部材」に相当し得る。
【符号の説明】
【0056】
10…車両用シート
11…シートクッション(第1の部材)
11a…下側ブラケット(第1の部材)
12…シートバック(第2の部材)
12a…上側ブラケット(第2の部材)
20…リクライニング装置
30…ベースプレート
31a…第1案内面(案内面)
32a…第2案内面(案内面)
40…ギヤプレート
41…内歯
61…ロックギヤ
61a…外歯
61d,61e…ギヤ側面
63…第1可動ガイド(可動ガイド)
63a…側面(一方の側面)
63b…凸状側面(他方の側面)
64…第2可動ガイド(可動ガイド)
64a…側面(一方の側面)
64b…凸状側面(他方の側面)
70…カム
81…バネ部材
82…バネ部材(付勢部材)
90…カムレバー