(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184299
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】固定子鉄心の修理方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H02K15/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092066
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村松 誠二郎
(72)【発明者】
【氏名】麻生 大樹
(72)【発明者】
【氏名】保坂 航太
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA05
5H615PP01
5H615PP06
5H615RR01
5H615RR07
5H615SS18
5H615SS33
5H615SS59
(57)【要約】
【課題】
本発明は、固定子鉄心の表面から深い位置の損傷を修理する場合であっても、低コスト、短期間で、固定子鉄心の損傷を修理する固定子鉄心の修理方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、固定子コイルが設置されるスロットが形成され、珪素鋼板が積層されて形成される固定子鉄心の修理方法であって、固定子コイルをスロットに保持したまま、固定子鉄心を形成する珪素鋼板を部分的に移動し、固定子鉄心の損傷箇所がある珪素鋼板の積層間に、ギャップを形成し、珪素鋼板の積層間に形成されたギャップから、珪素鋼板の損傷箇所に対して、絶縁物を追加することによって、珪素鋼板の損傷箇所を修理することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コイルが設置されるスロットが形成され、珪素鋼板が積層されて形成される固定子鉄心の修理方法であって、
前記固定子コイルを前記スロットに保持したまま、前記固定子鉄心を形成する珪素鋼板を部分的に移動し、前記固定子鉄心の損傷箇所がある珪素鋼板の積層間に、ギャップを形成し、
前記珪素鋼板の積層間に形成されたギャップから、珪素鋼板の損傷箇所に対して、絶縁物を追加することによって、前記珪素鋼板の損傷箇所を修理することを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項2】
請求項1に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記絶縁物は、絶縁板を貼り付ける、又は、絶縁塗料を塗布することによって、追加されることを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項3】
請求項2に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記絶縁板はL字型の絶縁板が貼り付けられ、又は、前記絶縁塗料はL字型の刷毛によって塗布されることを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項4】
請求項1に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記珪素鋼板を部分的に移動し、前記珪素鋼板の積層間にギャップを形成する前に、
棒状部材である鉄心圧縮ロッドと前記鉄心圧縮ロッドに固定される固定部材である鉄心圧縮タブとを設置し、部分的に移動させない前記珪素鋼板を軸方向に固定することを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項5】
請求項4に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記鉄心圧縮タブは、前記固定子鉄心の損傷箇所の近傍にある中間ダクトに設置されることを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項6】
請求項5に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記固定子鉄心の外周側に設置される固定子主板と前記固定子主板の近傍の中間ダクトとの間に背面ストッパーを設置し、部分的に移動させない前記珪素鋼板を軸方向に固定することを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【請求項7】
請求項1に記載する固定子鉄心の修理方法であって、
前記固定子コイルの軸方向端部であるコイルエンド部をチェーンブロックによって事前に吊り下げ、コイルエンド部を油圧ジャッキによって事前に押し上げることを特徴とする固定子鉄心の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子鉄心の修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所や原子力発電所に設置されるタービン発電機などの大型の回転電機の固定子は、固定子鉄心と固定子コイル(固定子巻線)とを有し、特に、固定子鉄心は、板厚1mm以下の薄い珪素鋼板を積層して形成される。珪素鋼板は、両面に絶縁が施され、積層される珪素鋼板は互いに電気的に絶縁される。
【0003】
固定子鉄心には、複数のスロット(溝)が形成され、スロットに固定子コイルが埋め込まれ、固定子コイルは、ウェッジ(楔)によって固定される。なお、スロットに埋め込まれる固定子コイルは、固定子コイルの軸方向端部(コイルエンド部)における固定子鉄心の軸方向外側で、電気的に接続される。
【0004】
そして、回転電機は、運転開始後、数年毎に、定期検査を実施する。定期検査では、固定子鉄心の健全性も検査され、回転電機の異常運転や経年劣化により、固定子鉄心の損傷(絶縁の異常)が見つかる場合があり、こうした損傷の状態に応じて、固定子鉄心の修理が必要となる場合がある。
【0005】
こうした技術分野の背景技術として、例えば、欧州特許EP1594213B(特許文献1)や欧州特許EP1592110B(特許文献2)がある。特許文献1には、機能拡張が、積層を固定子フレームに水平に挿入することができる、レールとして使用することが記載されている(要約参照)。特許文献2には、積層が固定子フレームの中に水平に移動することが記載されている(要約参照)。つまり、特許文献1や特許文献2には、固定子鉄心の損傷を修理する場合、回転電機を横置きの状態で修理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許EP1594213B
【特許文献2】欧州特許EP1592110B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2には、固定子鉄心の損傷を修理する場合に、回転電機を横置きの状態で修理することが記載されている。
【0008】
また、固定子鉄心の損傷を修理する場合、固定子鉄心の損傷(絶縁の異常)が、固定子鉄心の表面付近の位置(内径側)にある場合には、グラインダーやエッチング液によって、損傷を修理することができる。
【0009】
しかし、損傷が、表面から深い位置(外径側)にある場合には、グラインダーやエッチング液によって、損傷を修理することができない。このため、損傷を修理するためには、回転電機の回転子を除去し、ステータフレームを直立し、固定子コイルを解体し、固定子鉄心を解体し、損傷がある固定子鉄心(珪素鋼板)を交換する、又は、絶縁物を追加する必要がある。
【0010】
珪素鋼板の交換や絶縁物の追加は、ステータフレームの直立、固定子コイルや固定子鉄心の解体など、大掛かりな工事が必要となりになり、修理費用が高くなり、修理時間も長くなる。
【0011】
そこで、本発明は、上記した課題に鑑み、固定子鉄心の表面から深い位置の損傷を修理する場合であっても、低コスト、短期間で、固定子鉄心の損傷を修理する固定子鉄心の修理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明は、固定子コイルが設置されるスロットが形成され、珪素鋼板が積層されて形成される固定子鉄心の修理方法であって、固定子コイルをスロットに保持したまま、固定子鉄心を形成する珪素鋼板を部分的に移動し、固定子鉄心の損傷箇所がある珪素鋼板の積層間に、ギャップを形成し、珪素鋼板の積層間に形成されたギャップから、珪素鋼板の損傷箇所に対して、絶縁物を追加することによって、珪素鋼板の損傷箇所を修理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定子鉄心の表面から深い位置の損傷を修理する場合であっても、低コスト、短期間で、固定子鉄心の損傷を修理する固定子鉄心の修理方法を提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成、及び効果については、下記する実施例の説明によって、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施例に記載する回転電機100の構成を説明する説明図である。
【
図2】本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から見て説明する断面図である。
【
図3】本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を斜視的に見て説明する斜視図である。
【
図4】
図2の矢印方向から見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3とを説明する断面図である。
【
図5】本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から見て、固定子鉄心2の修理方法を説明する断面図である。
【
図6】
図5の矢印方向Aから見て、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する平面図である。
【
図7】
図5の矢印方向Bから見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3と、及び、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する断面図である。
【
図8】本実施例に記載する鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30と斜視的に見て説明する斜視図である。
【
図9】
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(工程1)を説明する断面図である。
【
図10】
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(工程2)を説明する断面図である。
【
図11】
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(代案)を説明する断面図である。
【
図12】本実施例に記載する回転電機100の構造を横方向から見て、固定子コイル3の軸方向端部を支持するチェーンブロック38と油圧ジャッキ39とを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用し、説明する。なお、図面において、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例0017】
先ず、本実施例に記載する回転電機100の構成を説明する。
【0018】
図1は、本実施例に記載する回転電機100の構成を説明する説明図である。なお、
図1は、説明の都合上、一部を除去して示される。
【0019】
一般に、回転電機100は、出力(容量)に応じて、固定子コイル3が水冷され、機内が水素ガスで冷却される水冷却回転電機、固定子コイル3及び機内が水素ガスで冷却される水素冷却回転電機、固定子コイル3及び機内が空気で冷却される空気冷却回転電機の3種類に大別される。水冷却回転電機及び水素冷却回転電機は、機内に加圧した水素ガスを充満する。
【0020】
本実施例に記載する回転電機(タービン発電機)100は、機内に水素ガスを充満し、機内を水素ガスで冷却する。
【0021】
回転電機100は、回転子1と、回転子1と所定の間隙を形成し、対向配置される固定子4と、を有する。固定子4は、固定子鉄心2と固定子コイル3とを有する。
【0022】
また、回転電機100は、固定子コイル3からの電流を機外に出力する高圧ブッシング(電力供給用端子)5と、固定子コイル3と高圧ブッシング5とを接続し、電流経路を形成する亘り線13及び口出し線14、機内で発電する電流を機外に取り出すリード線37(
図12参照)などの電力線と、回転子1、固定子4、亘り線13、口出し線14などが収納され、内部に水素ガスが充満される回転電機外箱6と、回転電機外箱6に接続し、回転電機外箱6の下部に設置されるターミナルボックス7と、回転電機外箱6に接続し、機内を水素ガスで冷却するための水素冷却器8と、回転電機外箱6の軸方向端部を塞ぎ、軸受けなどを収納するエンドブラケット9と、回転子1のコイルに直流電流を供給する集電管やカーボンブラシなどを収納するロッカ装置10と、回転電機外箱6が固定される脚11と、高圧ブッシング5から機外に出力される電流を測定する変流器12と、を有する。
【0023】
回転電機100は、例えば、蒸気タービンやガスタービンに接続され、蒸気タービンやガスタービンの回転エネルギーを回転子1に伝達し、回転子1を固定子4の内側で高速回転させることよって発電する。
【0024】
固定子4は、板厚1mm以下(0.35~0.50mm)の薄い珪素鋼板を軸方向に積層して形成され、積層される珪素鋼板は互いに電気的に絶縁され、複数のスロットが形成される固定子鉄心2と、スロットに埋め込まれ、ウェッジによって固定され、固定子鉄心2に装着される固定子コイル3と、を有する。つまり、固定子鉄心2は、固定子コイル3が設置される複数のスロットが形成され、珪素鋼板が軸方向に積層されて形成される。
【0025】
次に、本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から、及び、斜視的に見て説明する。
【0026】
図2は、本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から見て説明する断面図である。
【0027】
図3は、本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を斜視的に見て説明する斜視図である。
【0028】
図2及び
図3に示すように、回転電機100の軸方向端部であって、固定子鉄心2の軸方向端部には、薄い珪素鋼板を軸方向(積層方向)に両端から挟むコアクランプ20が設置され、コアクランプ20と固定子鉄心2との間には、固定子鉄心2に軸方向の圧縮力を伝達するエンドダクトピース22が設置される。つまり、コアクランプ20は、エンドダクトピース22を介して、固定子鉄心2を両端から圧縮する。
【0029】
また、固定子鉄心2の外周側には、固定子鉄心2を外周側から支持するキーバー23が設置され、キーバー23の軸方向端部は、キーバーボルト24及びキーバーナット25を介して、コアクランプ20に固定(ボルト締め)される。つまり、キーバー23、キーバーボルト24及びキーバーナット25は、コアクランプ20を介して、固定子鉄心2を、両端から、また、外周側から、圧縮する。
【0030】
また、キーバー23の外周側(固定子鉄心2の外周側)には、固定子主板31を有し、内部に水素ガスが充満される回転電機外箱6が設置される。なお、固定子主板31は、回転電機外箱6の内部に所定の空間を形成し、回転電機外箱6を支持する。また、複数の固定子主板31が、回転電機外箱6の内部にリング状に設置され、軸方向に所定の間隔で設置される。
【0031】
一方、固定子鉄心2の軸方向外側では、固定子コイル3は湾曲した形状を有し、固定子コイル3は、コアクランプ20に固定されるアキシャルサポート16に一体に設置されるパーマネントリング17及び支えリング18に、硝子繊維のロービングによって縛り付けられ、エポキシワニスによって固定される。
【0032】
そして、固定子コイル3は、固定子コイル3の軸方向端部における固定子鉄心2の軸方向外側で、電気的に接続される。
【0033】
このように、アキシャルサポート16、パーマネントリング17及び支えリング18によって構成されるコイルエンドサポート(コイルエンド部)は、固定子鉄心2の軸方向端部に設置されるコアクランプ20に固定される。
【0034】
そして、固定子鉄心2の軸方向外側では、例えば、ガラス積層板、非磁性金属、ガラス繊維、エポキシワニスなどによって、固定子コイル3の軸方向端部が固定され、コイルエンドサポートが形成される。
【0035】
また、アキシャルサポート16とコアクランプ20との間には、銅シールド21が設置され、アキシャルサポート16は、銅シールド21を介して、コアクランプ20に固定される。
【0036】
また、銅シールド21の外側には、固定子鉄心2に軸方向の圧縮力を伝達するスライドベアリング(スライド軸受)15が設置される。なお、スライドベアリング15は、アキシャルサポート16に設置され、固定子コイル3の温度上昇に伴う固定子鉄心2との熱伸び差を吸収する。
【0037】
また、固定子鉄心2には、軸方向に所定の間隔で、複数の中間ダクト28が設置される。中間ダクト28は、複数枚が積層される固定子鉄心2(珪素鋼板)と複数枚が積層される固定子鉄心2(珪素鋼板)との間に形成され、水素ガスが流通するギャップであり、例えばH鋼などによって形成される。
【0038】
なお、固定子主板31が設置される所定の間隔は、中間ダクト28が設置される所定の間隔よりも、大きい。
【0039】
次に、
図2の矢印方向から見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3とを説明する。
【0040】
図4は、
図2の矢印方向から見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3とを説明する断面図である。
【0041】
固定子コイル3は、上コイル3-1と底コイル3-2とから構成され、固定子コイル3の軸方向端部における固定子鉄心2の軸方向外側で、互いに電気的に接続される。固定子コイル3の直線部は、固定子鉄心2の内径側に形成されるスロット19に、底コイル3-2、上コイル3-1の順に埋め込まれ、スロット19の内径側がウェッジ26によって固定される。これにより、底コイル3-2と上コイル3-1と(固定子コイル3)が、固定子鉄心2に形成されるスロット19に、ウェッジ26によって、固定される。
【0042】
<従来の固定子鉄心2の修理方法>
ここで、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法を説明する前に、従来の固定子鉄心2の修理方法を説明する。
【0043】
従来の固定子鉄心2の修理方法において、例えば、固定子鉄心2に損傷が見つかった場合、先ず、回転子1及びエンドブラケット9を取り外す。
【0044】
そして、損傷が表面付近の位置(内径側)にある場合には、直接、損傷箇所(損傷部)を削り取ることによって、損傷を修理する。しかし、損傷が表面から深い位置(外径側)にある場合には、直接、損傷箇所を削り取ることによって、損傷を修理することができない。
【0045】
この場合に損傷を修理するためには、固定子コイル3を解体し、回転電機外箱6を90°回転し、回転電機外箱6の軸方向が鉛直方向になるように置き直し、上側から銅シールド21、コアクランプ20、エンドダクトピース22を解体し、固定子鉄心2の一部を解体し、損傷がある固定子鉄心2(珪素鋼板)を交換する、又は、絶縁物を追加する。
【0046】
なお、損傷が、エンドダクトピース22から比較的近い位置にある場合には、回転電機外箱6を動かさずに、銅シールド21、コアクランプ20、エンドダクトピース22を解体し、固定子鉄心2の一部を解体し、損傷がある固定子鉄心2(珪素鋼板)を交換する、又は、絶縁物を追加する場合もある。
【0047】
しかし、従来の固定子鉄心2の修理方法において、珪素鋼板の交換や絶縁物の追加は、固定子コイル3や固定子鉄心2の解体など、大掛かりな工事が必要となりになり、修理費用が高くなり、修理時間も長くなる。
【0048】
そこで、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法は、固定子鉄心2の表面から深い位置の損傷を修理する場合であっても、固定子コイル3や固定子鉄心2を解体せずに、固定子鉄心2の損傷を修理する。なお、ここで、固定子鉄心2の表面から深い位置とは、直接、損傷箇所を削り取ることによって、損傷を修理することができない位置であり、固定子鉄心2の表面(内径側)に対して、外径側にある位置である。
【0049】
<本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法>
次に、本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から見て、固定子鉄心2の修理方法を説明する。
【0050】
図5は、本実施例に記載する回転電機100の軸方向端部の構造を横方向から見て、固定子鉄心2の修理方法を説明する断面図である。
【0051】
本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法は、固定子鉄心2の表面から深い位置の損傷を修理する場合であっても、回転電機外箱6を動かさずに、固定子コイル3や固定子鉄心2を解体せずに、固定子鉄心2の損傷を修理する。
【0052】
つまり、珪素鋼板が積層される固定子鉄心2の損傷箇所27(絶縁損傷)を開き、珪素鋼板の損傷箇所(絶縁損傷)にアクセスする。そして、珪素鋼板の絶縁損傷は、絶縁物を追加(絶縁板を貼り付け又は絶縁塗料(絶縁ワニス)を塗布)することによって、修理することができる。
【0053】
この固定子鉄心2の損傷箇所27は、例えば、固定子鉄心2の外周に巻かれたケーブルに電流を流すことによって、固定子鉄心2の内部に主磁束を発生させる。固定子鉄心2に損傷箇所27が存在する場合には、主磁束を打ち消す方向に、損傷箇所27を通過する循環電流が発生するため、固定子鉄心2の損傷箇所27が局部的に温度上昇し、どの位置の珪素鋼板に絶縁損傷があるかが検出される。
【0054】
なお、固定子コイル3を解体せず、固定子鉄心2の一部を(固定子鉄心2を部分的に)移動し、固定子鉄心2の損傷箇所27を開くためには、つまり、固定子鉄心2の損傷箇所27がある、珪素鋼板の積層間に、所定のギャップ(間隙)を形成するためには、以下の制約が発生する場合がある。
【0055】
(i).固定子鉄心2の一部を移動するためには、コアクランプ20を固定子鉄心2の軸方向に移動する必要がある。しかし、コアクランプ20は、銅シールド21を介して、固定子コイル3に固定されるアキシャルサポート16に固定されるため、軸方向に移動することができない。
【0056】
(ii).固定子鉄心2は、両端からコアクランプ20やキーバー23などによって圧縮される。これにより、コアクランプ20を移動し、固定子鉄心2の一部を移動することができたとしても、圧縮している固定子鉄心2が軸方向に膨張するため、コアクランプ20や固定子鉄心2の移動量が小さい(数mm程度)場合には、珪素鋼板の積層間に、所定のギャップを形成することができない。
【0057】
そこで、こうした制約を踏まえ、以下の手順(工程)によって、珪素鋼板の損傷箇所を、つまり、固定子鉄心2の損傷箇所27(固定子鉄心2の損傷)を修理する。なお、本実施例における固定子鉄心2の修理方法は、以下の手順を有する。
【0058】
(1)回転子1及びエンドブラケット9を取り外す。
【0059】
(2)固定子鉄心2に形成されるスロット19から、固定子コイル3が固定されるウェッジ26を取り外す。
【0060】
(3)鉄製棒状部材である鉄心圧縮ロッド29と鉄製固定部材である鉄心圧縮タブ30とを設置する。鉄心圧縮タブ30は貫通孔を有し、この貫通孔に、軸方向に設置される鉄心圧縮ロッド29を貫通させ、鉄心圧縮ロッド29に鉄心圧縮タブ30を嵌合させ、鉄心圧縮タブ30を鉄心圧縮ロッド29に固定する。なお、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とは、固定子鉄心2の内周側の数箇所に設置される。
【0061】
また、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とは、回転子1が取り外された空間にアクセスし、設置される。
【0062】
なお、鉄心圧縮ロッド29には、ボルトのように外表面にネジ山が形成され、鉄心圧縮タブ30には、ナットのように内表面にネジ山が形成され、鉄心圧縮ロッド29を回転させることによって、鉄心圧縮タブ30を移動させる。例えば、鉄心圧縮ロッド29を右側(時計回り)に回転させることによって、鉄心圧縮タブ30を内側(
図5中、右側)に移動させる。
【0063】
また、鉄心圧縮タブ30は、中間ダクト28に嵌まる(固定される)突起部を有する。この突起部は、鉄心圧縮タブ30の外表面に形成される。そして、鉄心圧縮タブ30の突起部が中間ダクト28に固定されることによって、中間ダクト28が固定される。
【0064】
鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30を、固定子鉄心2の損傷箇所27の近傍にある中間ダクト28に設置(固定)する。固定子鉄心2の損傷箇所27の近傍にある中間ダクト28とは、固定子鉄心2の損傷箇所27に対して、エンドダクトピース22と反対側(
図5中、右側)にある最初の中間ダクト28である。
【0065】
一方、鉄心圧縮タブ30が設置される側と反対側の鉄心圧縮ロッド29の端部にも、鉄心圧縮タブ30と同様な、他端のタブである鉄心圧縮タブ(図示せず)を設置する。そして、鉄心圧縮ロッド29を回転させることによって、鉄心圧縮タブを移動させる。例えば、鉄心圧縮ロッド29を右側(時計回り)に回転させることによって、鉄心圧縮タブを内側(
図5中、左側)に移動させる。この鉄心圧縮タブに形成されるネジ山の向きを、鉄心圧縮タブ30に形成されるネジ山の向きと逆向きとする。なお、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブは、固定子鉄心2の損傷箇所27から最も遠い位置にある中間ダクト28又は固定子鉄心2の損傷箇所27から遠い位置にあるエンドダクトピース22に設置される。
【0066】
つまり、本実施例では、固定子鉄心2の損傷箇所27からエンドダクトピース22側にある固定子鉄心2(固定子鉄心2の一部)を、エンドダクトピース22側(
図5中、左側:矢印方向C参照)に、軸方向に移動させる。そして、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30及び鉄心圧縮タブによって、固定子鉄心2の損傷箇所27に対して、エンドダクトピース22と反対側にある固定子鉄心2(鉄心圧縮タブ30と鉄心圧縮タブとの間にある、移動させる必要がない固定子鉄心2:移動させる固定子鉄心2の一部ではない他の残りの固定子鉄心2)が固定される。
【0067】
つまり、固定子鉄心2を形成する珪素鋼板を部分的に軸方向に移動し、珪素鋼板の積層間にギャップを形成する前に、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30及び鉄心圧縮タブとを設置し、部分的に軸方向に移動させる必要がない珪素鋼板が軸方向に移動しないように固定する。
【0068】
このように、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30及び鉄心圧縮タブで挟み込むことによって、移動させる必要がない固定子鉄心2を固定する。これにより、キーバー23、キーバーボルト24及びキーバーナット25を使用し、固定子鉄心2の圧縮を緩めた場合であっても、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30及び鉄心圧縮タブで挟み込まれた固定子鉄心2の膨張を抑制することができ、上記した制約(ii)を回避することができる。
【0069】
(4)回転電機外箱6の内部に所定の空間を形成し、回転電機外箱6を支持し、固定子鉄心2の外周側に設置される固定子主板31と固定子主板31の近傍の中間ダクト28との間に背面ストッパー32を設置する。
【0070】
背面ストッパー32は、その一端に、エンドダクトピース22と反対側の固定子主板31の面に接する突起部を有し、その他端に、中間ダクト28に嵌まる(固定される)突起部を有する。つまり、背面ストッパー32は、その一端が、エンドダクトピース22と反対側の固定子主板31の面に接し、その他端が、中間ダクト28に固定される。そして、背面ストッパー32の突起部が中間ダクト28に固定されることによって、背面ストッパー32が固定される。つまり、固定子主板31と固定子主板31の近傍の中間ダクト28との間に背面ストッパー32を設置し、部分的に軸方向に移動させる必要がない珪素鋼板を軸方向に固定する。なお、背面ストッパー32は、固定子鉄心2の外周側の数箇所に設置される。
【0071】
また、背面ストッパー32は、回転電機外箱6に形成される定期検査用のマンホールから、回転電機外箱6の内部に形成される所定の空間にアクセスし、設置される。
【0072】
なお、固定子主板31の近傍の中間ダクト28とは、固定子鉄心2の損傷箇所27に対して、エンドダクトピース22と反対側にある最初の固定子主板31よりもエンドダクトピース22と反対側にある、最初の中間ダクト28である。
【0073】
これにより、キーバー23、キーバーボルト24及びキーバーナット25を使用し、固定子鉄心2の圧縮を緩めた場合であっても、固定子鉄心2の膨張を抑制することができ、上記した制約(ii)を回避することができる。
【0074】
(5)キーバーボルト24に締め付けられているキーバーナット25を緩め、キーバーナット25を取り外す。
【0075】
(6)コアクランプ20の軸方向の移動を可能にするため(コアクランプ20の軸方向の可動域を作るため)、スライドベアリング15を解体する。これにより、上記した制約(i)を回避することができる。
【0076】
なお、本実施例では、アキシャルサポート16がスライドベアリング15を有する回転電機100における、固定子鉄心2の修理方法を説明するが、アキシャルサポート16がスライドベアリング15を有しない回転電機100における、固定子鉄心2の修理方法では、アキシャルサポート16とコアクランプ20とを接合するスライドベアリング15を、他の接合(例えば、ボルト締めなど)に置き換えて説明することができる。
【0077】
(7)固定子コイル3を元の位置に(スロット19に)保持したまま、コアクランプ20を、軸方向(矢印方向C)に、固定子鉄心2の損傷箇所27を開くように、移動させる。先端がとがった治具35を、コアクランプ20とエンドダクトピース22との間に差し込み、コアクランプ20を全周均一に軸方向に移動させる。コアクランプ20とエンドダクトピース22と間にギャップが形成され、コアクランプ20を移動させた後に、治具35を抜く。
【0078】
(8)固定子コイル3を元の位置に(スロット19に)保持したまま、エンドダクトピース22を、軸方向(矢印方向C)に移動させる。先端がとがった治具35を、エンドダクトピース22と固定子鉄心2との間に差し込み、エンドダクトピース22を全周均一に軸方向に移動させる。エンドダクトピース22と固定子鉄心2との間にギャップが形成され、エンドダクトピース22を移動させた後に、治具35を抜く。
【0079】
(9)固定子コイル3を元の位置に(スロット19に)保持したまま、固定子鉄心2の一部(固定子鉄心2の損傷箇所27に対して、エンドダクトピース22側にある固定子鉄心2)を、軸方向(矢印方向C)に、固定子鉄心2の損傷箇所27を開くように、移動させる。先端がとがった治具35を、固定子鉄心2の損傷箇所27に、矢印方向Dのように(固定子鉄心2の内径側から外径側に向かって)差し込み、固定子鉄心2の一部を全周均一に軸方向に移動させ、固定子鉄心2の損傷箇所27に、所定のギャップを形成する。
【0080】
つまり、固定子コイル3を元の位置に(スロット19に)保持したまま、固定子鉄心2を形成する珪素鋼板を軸方向に部分的に移動させ、固定子鉄心2の損傷箇所27がある珪素鋼板の積層間に、ギャップを形成する。
【0081】
固定子鉄心2の損傷箇所27に所定のギャップが形成され、固定子鉄心2の一部を移動させた後に、治具35を抜く。
【0082】
なお、移動させる固定子鉄心2が厚い場合には、複数回に分けて、移動させる。
【0083】
このように、固定子コイル3を元の位置に(スロット19に)保持したまま、固定子鉄心2の一部を移動させることによって、固定子鉄心2の損傷箇所27にアクセスするための所定のギャップを形成することができ、固定子コイル3や固定子鉄心2の解体など、大掛かりな工事を省略することができ、低コスト、短期間で、固定子鉄心2の損傷箇所27を修理することができる。
【0084】
(10)固定子鉄心2の損傷箇所27を、例えば、ファイバースコープなどによって、検出し、検出された珪素鋼板の損傷箇所に、絶縁物を追加(絶縁板を貼り付け又は絶縁塗料を塗布)することによって、固定子鉄心2の損傷箇所27(珪素鋼板の損傷箇所)を修理する。
【0085】
つまり、珪素鋼板の積層間に形成されたギャップから、珪素鋼板の損傷箇所に対して、絶縁物を追加(絶縁板を貼り付け又は絶縁塗料を塗布)することによって、珪素鋼板の損傷箇所を修理する。
【0086】
なお、ここで検出される固定子鉄心2の損傷箇所27は、この珪素鋼板における絶縁損傷の位置である。つまり、ここでは、この位置が、固定子鉄心2の表面からどの程度の位置(深さ)にあるかを検出する。
【0087】
(11)固定子鉄心2の損傷箇所27を修理した後、スライドベアリング15を設置し(組み立て)、キーバーボルト24にキーバーナット25を取り付け、キーバーナット25を締め付ける。そして、移動した固定子鉄心2の一部、エンドダクトピース22、コアクランプ20を元の位置に戻す。
【0088】
(12)キーバーボルト24及びキーバーナット25を規定トルクで締め付け、固定子鉄心2の一部、エンドダクトピース22、コアクランプ20を元の位置に戻した後、鉄心圧縮ロッド29、鉄心圧縮タブ30及び鉄心圧縮タブを取り外す。
【0089】
これにより、本実施例によれば、固定子鉄心2の表面から深い位置にある珪素鋼板の損傷箇所を修理する場合であっても、回転電機外箱6を動かさずに、固定子コイル3や固定子鉄心2を解体せずに、低コスト、短期間で、固定子鉄心2の損傷箇所27を修理することができる。
【0090】
そして、本実施例によれば、回転電機100を横置き(横向き)の状態で、固定子鉄心2の損傷箇所27を修理することができる。
【0091】
次に、
図5の矢印方向A(固定子鉄心2の内径側)から見て、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する。
【0092】
図6は、
図5の矢印方向Aから見て、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する平面図である。
【0093】
図6に示すように、鉄心圧縮ロッド29は、ウェッジ26が取り外されたスロット19上に設置され、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30は、中間ダクト28に設置される。そして、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とは、固定子鉄心2の内周側の数箇所に設置される。
【0094】
次に、
図5の矢印方向B(軸方向)から見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3と、及び、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する。
【0095】
図7は、
図5の矢印方向Bから見て、固定子鉄心2に形成されるスロット19と固定子コイル3と、及び、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とを説明する断面図である。
【0096】
図7に示すように、鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30とは、ウェッジ26が取り外され、上コイル3-1と底コイル3-2とが元の位置に保持されたままのスロット19上に設置される。
【0097】
次に、本実施例に記載する鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30と斜視的に見て説明する。
【0098】
図8は、本実施例に記載する鉄心圧縮ロッド29と鉄心圧縮タブ30と斜視的に見て説明する斜視図である。
【0099】
図8に示すように、鉄心圧縮ロッド29は、ウェッジ26が取り外されたスロット19上に設置され、鉄心圧縮ロッド29に設置された鉄心圧縮タブ30は、鉄心圧縮タブ30の突起部が中間ダクト28に嵌まる(固定される)ように、中間ダクト28が設置される。なお、
図8では、固定子コイル3は省略する。
【0100】
このように、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法は、固定子コイル3が設置されるスロット19が形成され、珪素鋼板が積層されて形成される固定子鉄心2の修理方法であって、固定子コイル3をスロット19に保持したまま、固定子鉄心2を形成する珪素鋼板を軸方向に部分的に移動し、固定子鉄心2の損傷箇所27がある珪素鋼板の積層間に、ギャップを形成し、珪素鋼板の積層間に形成されたギャップから、珪素鋼板の損傷箇所33に対して、絶縁物を追加(絶縁板を貼り付け又は絶縁塗料を塗布)することによって、珪素鋼板の損傷箇所33を修理する。
【0101】
これにより、本実施例によれば、固定子鉄心2の表面から深い位置にある珪素鋼板の損傷箇所33を修理する場合であっても、低コスト、短期間で、固定子鉄心2の損傷箇所27を修理することができる。
【0102】
次に、
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(一案)を説明する。
【0103】
図9は、
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(工程1)を説明する断面図である。
【0104】
図10は、
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(工程2)を説明する断面図である。
【0105】
図9及び
図10では、例えば、固定子鉄心2の損傷箇所27における珪素鋼板の損傷箇所(短絡箇所)33が、固定子鉄心2の表面(内径側)から深い位置(外径側)にある場合であって、特に、固定子コイル3の背面側(裏側)(スロット19の底部の外径側)にある場合を示す。なお、
図9及び
図10は、説明の都合上、
図4及び
図7とは、反転して示す。
【0106】
この場合、
図9に示すように、例えば、マイカなどで形成されるL字型の絶縁板34を径方向(矢印方向E)に挿入し、絶縁板34の先端部分(L字の横辺部分)がスロット19の底部を通過した後、
図10に示すように、絶縁板34を周方向(矢印方向F)に移動し、絶縁板34の先端部分を珪素鋼板の損傷箇所33に到達させる。そして、絶縁板34を残す(貼り付ける)ことにより、珪素鋼板の損傷箇所33を修理することができる。
【0107】
これにより、固定子コイル3を解体することなく、珪素鋼板の積層間に、固定子鉄心2の損傷箇所27にアクセスするための所定のギャップを形成することができ、例えば、珪素鋼板の損傷箇所33が、固定子コイル3があるためアクセスが困難な固定子コイル3の背面側にある場合であっても、珪素鋼板の損傷箇所33を修理することができる。
【0108】
次に、
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(代案)を説明する。
【0109】
図11は、
図5の矢印方向Bから見て、本実施例に記載する固定子鉄心2の修理方法(代案)を説明する断面図である。
【0110】
図11でも、固定子鉄心2の損傷箇所27における珪素鋼板の損傷箇所33が、固定子鉄心2の表面から深い位置にある場合であって、特に、固定子コイル3の背面側にある場合を示す。なお、
図11も、説明の都合上、
図4及び
図7とは、反転して示す。
【0111】
この場合、
図11に示すように、珪素鋼板の損傷箇所33に絶縁塗料を塗布するL字型の刷毛36(L字の横辺部分の先端に刷毛が設置される治具)を、径方向に挿入し、刷毛36がスロット19の底部を通過した後、刷毛36を周方向に移動し、刷毛36を珪素鋼板の損傷箇所33に到達させる。そして、刷毛36を使用し、珪素鋼板の損傷箇所33に絶縁塗料を塗布することによって、珪素鋼板の損傷箇所33を修理することができる。
【0112】
これにより、固定子コイル3を解体することなく、珪素鋼板の積層間に、固定子鉄心2の損傷箇所27にアクセスするための所定のギャップを形成することができ、例えば、珪素鋼板の損傷箇所33が、固定子コイル3があるためアクセスが困難な固定子コイル3の背面側にある場合であっても、珪素鋼板の損傷箇所33を修理することができる。
【0113】
次に、本実施例に記載する回転電機100の構造を横方向から見て、固定子コイル3の軸方向端部を支持するチェーンブロック38と油圧ジャッキ39とを説明する。
【0114】
図12は、本実施例に記載する回転電機100の構造を横方向から見て、固定子コイル3の軸方向端部を支持するチェーンブロック38と油圧ジャッキ39とを説明する断面図である。
【0115】
本実施例では、
図12に示すように、固定子コイル3の軸方向端部であるコイルエンド部が自重でたわまないように、コイルエンド部の垂直方向及び水平方向の移動量をダイヤルゲージで監視しつつ、コイルエンド部を、回転電機外箱6からチェーンブロック38によって、上から吊り下げる。また、コイルエンド部であるアキシャルサポート16を、油圧ジャッキ39によって、下から押し上げる。これにより、コイルエンド部の位置を保持し、コイルエンド部に過大な外力が加わることを防止する。
【0116】
なお、珪素鋼板の損傷箇所33を修理する際に、チェーンブロック38や油圧ジャッキ39を使用する場合には、回転子1及びエンドブラケット9を取り外した後、スライドベアリング15を取り外す前に、チェーンブロック38や油圧ジャッキ39を使用し、コイルエンド部を吊り下げ、アキシャルサポート16を押し上げる。
【0117】
そして、固定子鉄心2の修理後、鉄心圧縮ロッド29、鉄心圧縮タブ30を取り外した後に、チェーンブロック38や油圧ジャッキ39を撤去する。
【0118】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0119】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
1…回転子、2…固定子鉄心、3…固定子コイル、3-1…上コイル、3-2…底コイル、4…固定子、5…高圧ブッシング、6…回転電機外箱、7…ターミナルボックス、8…水素冷却器、9…エンドブラケット、10…ロッカ装置、11…脚、12…変流器、13…亘り線、14…口出し線、15…スライドベアリング、16…アキシャルサポート、17…パーマネントリング、18…支えリング、19…スロット、20…コアクランプ、21…銅シールド、22…エンドダクトピース、23…キーバー、24…キーバーボルト、25…キーバーナット、26…ウェッジ、27…固定子鉄心2の損傷箇所、28…中間ダクト、29…鉄心圧縮ロッド、30…鉄心圧縮タブ、31…固定子主板、32…背面ストッパー、33…珪素鋼板の損傷箇所、34…絶縁板、35…先端がとがった治具、36…刷毛、37…リード線、38…チェーンブロック、39…油圧ジャッキ、100…回転電機。