(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184301
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092068
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小崎 博史
(57)【要約】
【課題】転写テープ以外のすべての部品を、テープ幅が異なる転写テープ同士で共用化できる塗膜転写具の提供。
【解決手段】転写ヘッド又近傍に、転写テープ及び/又は基材テープがテープ幅方向へ移動することを規制する少なくとも2種類の先端規制部が設けられ、少なくとも2種類の先端規制部は転写テープ及び/又は基材テープのテープ幅方向への移動を規制する規制幅がそれぞれ異なり、ルート形成部と接触する場合と接触しない場合で、転写テープ及び/又は基材テープが通過する先端規制部が異なることを特徴とする塗膜転写具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に巻出コアと巻取コアが回転可能に収納され、前記ケースから転写押圧部を備えた転写ヘッドが突出し、前記巻出コアから転写テープが巻き出され、前記転写押圧部において前記転写テープが被転写面に転写される塗膜と残りの基材テープとに分かれ、前記基材テープが前記巻取コアに巻取られるようになっている塗膜転写具において、
前記巻出コアから巻き出された前記転写テープが前記転写押圧部に到達するまでの間、及び/又は前記転写押圧部で前記塗膜が転写された残り前記基材テープが前記巻取コアに到達するまでの間のそれぞれの前記転写ヘッド又は前記転写ヘッド近傍に、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向へ移動することを規制する少なくとも2種類の先端規制部が設けられ、前記少なくとも2種類の先端規制部は前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向への移動を規制する規制幅がそれぞれ異なり、前記巻出コアから巻き出された前記転写テープが前記転写押圧部よりも前記巻出コア側の前記先端規制部に到達するまでの間、及び/又は前記転写押圧部で前記塗膜が転写された残り前記基材テープが前記転写押圧部よりも前記巻取コア側の前記先端規制部から前記巻取コアに到達するまでの間のそれぞれに前記転写テープ及び/又は前記基材テープと接触して前記転写テープ及び/又は前記基材テープの走行経路を変更可能なルート形成部が少なくとも1箇所設けられ、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが前記ルート形成部と接触する場合と接触しない場合で、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが通過する前記先端規制部が異なることを特徴とする塗膜転写具。
【請求項2】
前記ルート形成部付近に、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが通過する前記先端規制部と同じ規制幅の前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向への移動を規制する第2規制部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字修正用塗膜、接着用の粘着剤塗膜、装飾用塗膜等を被転写体の被転写面に押圧転写するための塗膜転写具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
塗膜転写具では、塗膜の幅の好みが、ユーザーによって異なることが一般的である。このため、塗膜転写具の開発設計では、外観形状が同一で、複数の異なる幅の塗膜を有する転写テープが搭載される塗膜転写具が設計されてきた。異なる幅の塗膜を有する転写テープであったとしても、転写テープの幅を同じにすれば、転写テープ以外の塗膜転写具の部品は共通化することができる。例えば、最も広い幅の塗膜を転写テープの幅と同じにして、それ以外の幅の狭い塗膜は、同じ幅の転写テープの幅方向の一部に塗膜を設ければ、転写テープの幅を同じにすることができる。
【0003】
しかしながら、転写テープの幅方向の一部に塗膜を設けることは、困難かつ非常に非効率的であり、異なる幅の塗膜を有する転写テープの幅を同じにすることは現実的ではない。基材上に塗膜を設けた転写テープは、広い幅の基材全面に塗膜を塗布して、塗膜が塗布された基材を所定の幅にカットすることによって製造するのが、最も容易、かつ効率的である。このため、転写テープの製造は一般的には、この方法で行われているが、この方法では、転写テープの幅の一部に塗膜を設けることはできない。これに対して、転写テープの幅の一部に塗膜を設けようとすると、例えば4mm幅の塗膜であれば、4mmの幅で安定して塗膜を塗布する必要があるが、このような細い塗布幅で塗膜を設ける場合には、塗布幅のばらつきにより、転写テープの歩留まりが低下するという問題がある。また、前記の広い幅の基材全面に塗膜を塗布して、塗膜が塗布された基材を所定の幅にカットする方法であれば、基材の全面に設けた塗膜のほぼすべてを転写用塗膜として使用できるので、基材を無駄なく使用できるとともに、効率的に転写テープを製造することができる。これに対して、転写テープの幅の一部に塗膜を設けようとすると、塗膜を設けない部分の基材が余分に必要になるとともに、同一の面積の基材から得られる転写テープの個数が減少するため、転写テープの製造効率も非常に低下するのである。
【0004】
このように、テープの幅が同じで異なる複数の幅の塗膜を有する転写テープを製造して使用することは、困難かつ現実的ではなかったため、従来から特許文献1などで、押圧部材(転写ヘッド)が複数の異なる押圧幅の押圧部を有していて、押圧部を変更することによって、転写テープの押圧幅が変更可能であり、転写テープは帯状の基材層(基材)と転写物層(塗膜)を備え、当該転写物層(塗膜)には長手方向にスリットが設けられていることによって、1つの塗膜転写具で多くの転写幅の塗膜を転写可能な塗膜転写具が提案されてきた。
【0005】
しかしながら、このようなスリットを塗膜に設けると、例えば、修正テープ塗膜であれば、スリット間の微小な塗膜が転写前に基材から剥離し易くなり、粘着剤塗膜であれば、スリットを設けたとしても、スリットの両側の塗膜同士が自己粘着力により再び結合して、スリットとして機能しなくなるなどの問題があった。このため、塗膜にスリットを設けた転写テープを使用して、塗膜の転写幅を変更することは、現実的ではなかった。一方、このようなスリットを塗膜に設けていない転写テープでは、転写テープ上の塗膜の幅が押圧部の幅より広い場合には、押圧部の幅で一定して塗膜が転写されることはない。押圧部の幅方向両端よりも外側の塗膜は、転写される場合と転写されない場合があり、所謂ギザギザに転写されるとともに、押圧部で押圧されていないので、被転写面から浮き上がった状態となり、修正テープなどの場合には、転写された塗膜の見た目が汚いものとなるなどの問題があった。このため、実際には、転写幅を変更できる塗膜転写具は実用化されておらず、転写幅ごとに異なるテープ幅の転写テープとそのテープ幅に適合する部品を使用した塗膜転写具を使用しているのが実情である。
【0006】
このような転写幅ごとに異なるテープ幅の転写テープを使用する塗膜転写具でも、転写テープの幅が比較的近い場合には、異なるテープ幅の塗膜転写具同士で、転写テープを巻き出すコアと、転写テープから塗膜を転写した後の基材テープを巻き取るコアを共通部品として使用する塗膜転写具はあった。
【0007】
しかしながら、転写テープが走行する塗膜転写具の内高を、転写テープの幅に適合した寸法にしなければ、転写テープが蛇行して、塗膜が意図したように真っ直ぐ転写することができなかったり、転写テープの幅方向端部が塗膜転写具内壁と接触して、転写テープが折れたり、転写テープの幅方向端部の塗膜が剥れて、転写した塗膜が欠けるなどの不具合が生じる。このため、転写テープの幅ごとにコア以外の塗膜転写具部品を別々に準備しなければならず、塗膜転写具の部品を共用化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、転写テープを巻き出す巻出しコアを含む転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品を、テープ幅が異なる転写テープ同士で共用化できる塗膜転写具の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、ケース内に巻出コアと巻取コアが回転可能に収納され、前記ケースから転写押圧部を備えた転写ヘッドが突出し、前記巻出コアから転写テープが巻き出され、前記転写押圧部において前記転写テープが被転写面に転写される塗膜と残りの基材テープとに分かれ、前記基材テープが前記巻取コアに巻取られるようになっている塗膜転写具において、
前記巻出コアから巻き出された前記転写テープが前記転写押圧部に到達するまでの間、及び/又は前記転写押圧部で前記塗膜が転写された残り前記基材テープが前記巻取コアに到達するまでの間のそれぞれの前記転写ヘッド又は前記転写ヘッド近傍に、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向へ移動することを規制する少なくとも2種類の先端規制部が設けられ、前記少なくとも2種類の先端規制部は前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向への移動を規制する規制幅がそれぞれ異なり、前記巻出コアから巻き出された前記転写テープが前記転写押圧部よりも前記巻出コア側の前記先端規制部に到達するまでの間、及び/又は前記転写押圧部で前記塗膜が転写された残り前記基材テープが前記転写押圧部よりも前記巻取コア側の前記先端規制部から前記巻取コアに到達するまでの間のそれぞれに前記転写テープ及び/又は前記基材テープと接触して前記転写テープ及び/又は前記基材テープの走行経路を変更可能なルート形成部が少なくとも1箇所設けられ、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが前記ルート形成部と接触する場合と接触しない場合で、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが通過する前記先端規制部が異なることを特徴とする塗膜転写具である。
【0011】
第2発明は、前記ルート形成部付近に、前記転写テープ及び/又は前記基材テープが通過する前記先端規制部と同じ規制幅の前記転写テープ及び/又は前記基材テープのテープ幅方向への移動を規制する第2規制部をさらに有することを特徴とする第1発明に記載の塗膜転写具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗膜転写具では、転写テープ及び/又は基材テープのテープ幅方向への移動を規制する規制幅がそれぞれ異なる先端規制部を少なくとも2種類設けるとともに、塗膜転写具内に設けたルート形成部と転写テープ及び/又は基材テープが接触する場合と接触しない場合で、転写テープ及び/又は基材テープが通過する先端規制部が異なるようにした。このようにすることで、転写テープ以外の部品を共用化した塗膜転写具において、収納する転写テープのテープ幅に適合したテープルートを選択することができるようになった。したがって、テープ幅の異なる転写テープであっても、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品を共用化した塗膜転写具が提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の塗膜転写具Mを示す。
【
図2】本発明の第2実施形態の塗膜転写具Nを示す。
【
図3】本発明の第3実施形態の塗膜転写具Pを示す。
【
図4】本発明の第4実施形態の塗膜転写具Rを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の第1実施形態の塗膜転写具Mを示す。
図1(a)は上ケースを取外した状態の正面図である。
図1(b)は、
図1(a)のX矢視図(拡大図)である。
図1(c)は
図1(a)のY-Y断面図(拡大図)である。
図1(d)は塗膜転写具Mの底面図である。
図1(e)は転写ヘッド部分の拡大図である。ただし、
図1(b)、
図1(c)と
図1(d)は上ケースを取り付けた状態を示している。
【0015】
塗膜転写具Mは、下ケース5、上ケース6、塗膜を基材テープS上に塗工した転写テ-プT、転写テープTを巻出コア2に巻き回した供給リール、転写テープTに塗工された塗膜を紙等の被転写体の被転写面に転写するために下ケース5と上ケース6で構成される開口部より突出した転写ヘッド4、塗膜を転写した後の基材テ-プSを巻取コア3に巻き取った巻取リール、巻出コア2と巻取コア3に設けられたプーリーに掛け回され、巻出コア2の回転を巻取コア3に伝えるベルト1で構成されるものである。
【0016】
塗膜転写具Mでは、巻出コア2の回転を巻取コア3に伝える伝達方法としてベルト1を使用しているが、ギア等による伝達も可能であり、特に制限はない。また、塗膜転写具Mでは、巻き出し側と巻き取り側の周速差を吸収するスリップ機構もベルト1と、巻出コア2に設けられたプーリーと巻取コア3に設けられたプーリー間のスベリを利用しているが、スリップリング、コイルスプリング、樹脂バネ等によるスベリ機構も利用可能であり、特にその方法を制限するものではない。
【0017】
塗膜転写具Mでは、転写ヘッド4の先端部の転写押圧部4Aで転写テープTを、紙などの被転写面に押圧しつつ、塗膜転写具Mを移動させると、転写テープTから塗膜が被転写面に転写され、転写テープTが巻出コア2から巻き出される。巻出コア2から転写テープTが巻き出されることによって、巻出コア2が回転すると巻出コア2のプーリーに掛けまわされたベルト1もプーリーの回転に伴って移動する。ベルト1が移動することによって、巻出コア2の回転が巻取コア3に伝えられ、巻取コア3が回転する。プーリーによって伝えられた回転によって、転写ヘッド4で塗膜が転写された残りの基材テープSを巻取コア3が巻き取って、転写テープTが弛むことなく走行する。塗膜転写具Mでは、巻取コア3が巻き取る基材テープSの長さが、巻出コア2から巻き出される転写テープTよりも長くなるように、巻出コア2と巻取コア3の回転比率が設定されているので、転写テープが弛むことがない。また、基材テープSの巻き取り長さと転写テープTの巻き出し長さの差は、巻取コア3のプーリーとベルト1が滑ることによって吸収されるので、転写テープTが引っ張られて切れることもない。
【0018】
塗膜転写具Mでは、
図1(a)に示すように、1箇所のルート形成部7が設けられている。塗膜転写具Mのルート形成部7は、下ケース5に設けられたガイドピン5Aである。塗膜転写具Mでは、
図1(a)に示すように、転写押圧部4Aで塗膜を転写した残りの基材テープSはガイドピン5Aと接触するルートとガイドピン5Aと接触しないルートのどちらかを選択可能となっている。
【0019】
塗膜転写具Mの転写ヘッド4には、
図1(b)に示すように、異なる幅の2箇所の先端規制部4Bと4Cが設けられている。先端規制部4Bと4Cは異なるテープ幅のテープ走行に適合するようになっており、先端規制部4Cに設けられた溝幅(規制幅)の方が先端規制部4Bに設けられた溝幅(規制幅)よりも、大きく設定されている。塗膜転写具Mでは、転写ヘッド4を下ケース5や上ケース6とは別の部材としているが、必ずしも別部材とする必要はなく、塗膜を転写する転写ヘッドとしての機能が十分果たせるのであれば、転写ヘッドを下ケース5又は上ケース6と一体に設けてもよい。
【0020】
塗膜転写具Mにおいて、基材テープSがガイドピン5Aと接触しないルートを通ると、
基材テープSは溝幅(規制幅)が狭い方の先端規制部4Bを通る。一方、基材テープSがガイドピン5Aと接触するルートを通ると、基材テープSは先端規制部4Bを通らず、先端規制部4Cのみを通るようになっている。
【0021】
このように、塗膜転写具Mでは、転写テープSが、ルート形成部7であるガイドピン5Aと接触する場合と接触しない場合で、基材テープが通る先端規制部が異なっており、転写テープSが、ルート形成部7であるガイドピン5Aと接触するルートと接触しないルートのいずれかを選択することで、基材テープが通る先端規制部の幅を選択することができるようになっている。本発明の塗膜転写具では、転写ヘッド4の転写押圧部4Aの近傍にこのような先端規制部を設ける。このような先端規制部は、転写テープT及び/又は基材テープSが、これらテープのテープ幅方向への移動を規制するためのものであって、テープ幅方向の移動を規制する範囲は、テープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅が好ましく、より好ましくはテープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅である。このテープ幅方向の移動を規制する範囲が、前記先端規制部4Bと4Cの溝幅(規制幅)である。テープ幅方向の移動を規制する寸法、すなわち、先端規制部の溝幅寸法(規制幅)がテープ幅より広く、先端規制部の溝幅寸法(規制幅)とテープ幅の差が0.5mmを超えると、転写ヘッド4の転写押圧部4Aにおいて、転写テープTがテープ幅方向に移動し易くなり、転写した塗膜が蛇行しやすくなる。一方、先端規制部の溝幅寸法(規制幅)とテープ幅の差が0.2mmより小さくなると、先端規制部に基材テープSがのりあげて、基材テープSの端部に折れが生じ易くなる。
【0022】
塗膜転写具Mでは、前記のように、基材テープSが、ルート形成部7であるガイドピン5Aと接触するルートと接触しないルートを選択することにより、基材テープSが通る先端規制部の幅を選択することができるようになっている。このため、先端規制部4Bと4Cの溝幅(規制幅)を、それぞれ異なるテープ幅の基材テープS(転写テープT)に適合する寸法とすることにより、テープ幅の異なる転写テープTであっても、転写テープT以外のすべての塗膜転写具部品を共用化した塗膜転写具が提供可能となる。
【0023】
たとえば、塗膜転写具Mにおいて、6mm幅の転写テープT1と4mm幅の転写テープT2を使用する場合、先端規制部4Cに設けられた溝幅(規制幅)を6.3mmとし、先端規制部4Bに設けられた溝幅(規制幅)を4.3mmとすると、基材テープSがガイドピン5Aと接触するルートを選択することにより、転写テープT1に適合したテープルートが選択でき、一方、基材テープSがガイドピン5Aと接触しないルートを選択することにより、転写テープT2に適合したテープルートが選択できる。この結果、転写テープT以外のすべての部品を共用化して、転写テープ幅が4mmと6mmの転写テープの両方が搭載可能な塗膜転写具を提供することができる。また、6mm幅の転写テープT1を使用する場合にも、4mm幅の転写テープT2を使用する場合にも、適切な規制幅の先端規制部を基材テープSが通過するので、転写押圧部4Aにおいて、転写テープTが蛇行することがない。
【0024】
塗膜転写具Mでは、ルート形成部7をガイドピン5Aとしたが、このようなガイドピンを使用する場合には、下ケース5又は上ケース6に一体にガイドピンを設け、ガイドピンを設けなかった側の上ケース6又は下ケース5にガイドピンが挿入される穴を設けることによって、ガイドピンが下ケース5と上ケース6の両方で支持される、所謂両持ちの構造とすることが好ましい。塗膜転写具Mでは、
図1(c)に示すように、下ケース5にガイドピン5Aが設けられ、ガイドピン5Aは上ケース6に設けられたガイド穴6Aに挿入されて、ガイドピン5Aは下ケース5と上ケース6の両方で支えられる両持ち構造となっており、ガイドピン5Aが傾くことがないため、ガイドピン5Aの傾きによって基材テープSが蛇行することはない。
【0025】
また、ガイドピン5Aと接触する部分の基材テープSのテープルートの幅寸法は、規制部4Cの溝幅(規制幅)と同様に、テープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅が好ましく、より好ましくはテープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅である。塗膜転写具Mでは、ガイドピン5Aと接触する部分の基材テープSのテープルート幅を、先端規制部4Cと同じ6.3mmである第2規制部5Cとしている。一方、ガイドピン5Aと接触しない基材テープSのテープルートのガイドピン5A付近のテープルート幅寸法も、規制部4Bの溝幅(規制幅)と同様に、テープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅が好ましく、より好ましくはテープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅である。塗膜転写具Mでは、ガイドピン5Aと接触しない基材テープSのガイドピン5A付近のテープルート幅を、先端規制部4Bと同じ4.3mmである第2規制部5Bとしている。このように、塗膜転写具Mでは、先端規制部4B、4Cと同様に、ガイドピン5A周辺の2箇所のテープルートを、規制幅が基材テープSの蛇行を防止できる寸法である第2規制部5B、5Cとしているので、基材テープSの蛇行を確実に防止することができる。第2規制部は、下ケース5の内壁に設けた凸部と上ケース6の内壁に設けた凸部で構成することが好ましい。
【0026】
本発明の塗膜転写具Mでは、先端規制部とルート形成部間のテープルートに、先端規制部の溝寸法(規制幅)及びルート形成部のテープルート幅と同様の規制幅の規制部、すなわち、好ましくはテープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅であり、より好ましくはテープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅である中間規制部を設けてもよい。このような中間規制部を設けることにより、より確実に基材テープSの蛇行を防止することができる。中間規制部は、上ケース6及び下ケース5の内壁に設けた凸部により構成することが、好ましい。また、塗膜転写具Mでは、2種類の先端規制部の両方を転写ヘッド4に設けたが、必ずしも、先端規制部を転写ヘッド4に設ける必要はなく、転写テープ(基材テープ)の転写押圧部での蛇行を防止する効果が十分に果たせるのであれば、一部の先端規制部を転写ヘッドに設け、残りの先端規制部を転写ヘッド以外、例えば上ケースと下ケースに設けてもよい。
【0027】
前記のように、塗膜転写具Mでは、ルート形成部7を下ケース5に固定されたガイドピン5Aとしているが、ルート形成部7を下ケース5に対して回転するローラとしてもよい。特に、基材テープSがガイドピン5Aと接触することにより、基材テープSの張力が増加し、増加した基材テープSの張力に対して巻取コア3での基材テープSの巻き取り力に余裕がなく、巻取コア3での基材テープSの巻き取り不具合が発生するおそれがある場合には、ルート形成部7をローラにすることにより、ルート形成部7での基材テープSの張力の増加を防ぐことができるので、ローラを使用することが好ましい。
【0028】
図2に、ルート形成部7にローラ8を使用した本発明の第2実施形態である塗膜転写具Nを示す。塗膜転写具Nはルート形成部7にローラ8を使用した以外は、塗膜転写具Mと同様である。
図2(a)は上ケースを取外した状態の正面図である。
図2(b)は、
図2(a)のX矢視図(拡大図)である。
図2(c)は
図2(a)のY-Y断面図(拡大図)である。
図2(d)は塗膜転写具Nの底面図である。
図2(e)は転写ヘッド部分の拡大図である。ただし、
図2(b)、
図2(c)と
図2(d)は上ケースを取り付けた状態を示している。
【0029】
塗膜転写具Mと同様に、塗膜転写具Nでも、基材テープSがローラ8と接触する付近に、基材テープSの幅方向への移動を規制する第2規制部5B、5Cを設けることが好ましい。第2規制部5B、5Cの幅は、塗膜転写具Mと同様に、先端規制部4B、4Cの溝幅(規制幅)と同じで、テープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅とすることが好ましく、テープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅とすることがより好ましい。第2規制部は、塗膜転写具Mと同様に、下ケース5の内壁に設けた凸部と上ケース6の内壁に設けた凸部で構成することが好ましい。
【0030】
また、
図2(c)に示すように、ローラ8は下ケース5と上ケース6の両方で回転可能に保持するとともに、ローラ8の長さは第2規制部5Cの幅寸法よりも長く、塗膜転写具Nにローラ8を取り付けた状態では、ローラ8の一方の端部は常に、第2規制部5Cの一端を構成する下ケース5の凸部5Kの面よりも下ケース5側の位置にあり、ローラ8のもう一方の端部は常に、第2規制部5Cのもう一端を構成する上ケース6の凸部6Kの面よりも上ケース6側の位置にあることが好ましい。このようにローラの両端が第2規制部5Cの両端部に入り込んだ状態となっているので、基材テープSの端部がローラ8の端部と第2規制部5Cとの隙間に入り込んで、基材テープSの走行抵抗が増加することや、基材テープSが走行不能となることがない。
【0031】
塗膜転写具Nでは、塗膜転写具Mに比べ、ローラ8を追加部品として必要とするが、塗膜転写具Mと同様に、基材テープSが、ルート形成部7であるローラ8と接触するルートと接触しないルートを選択することにより、基材テープSが通る先端規制部の溝幅(規制幅)を選択することができるようになっている。このため、先端規制部4Bと4Cの溝幅(規制幅)を、それぞれ異なるテープ幅の基材テープS(転写テープT)に適合する寸法とすることにより、テープ幅の異なる転写テープTであっても、転写テープT以外のすべての塗膜転写具部品を共用化した塗膜転写具が提供可能となる。
【0032】
図3に、本発明の第3実施形態である塗膜転写具Pを示す。塗膜転写具Pは、転写テープTを巻出コア2に巻き回した供給リールと転写ヘッド4の転写押圧部4A間にも、ルート形成部7と先端規制部4D、4Eを有し、ルート形成部7(ローラ8)付近に第2規制部5D、5Eを有すること以外は、塗膜転写具Nと同様である。
図3(a)は上ケースを取外した状態の正面図である。
図3(b)は、
図3(a)のX矢視図(拡大図)である。
図3(c)は
図3(a)のY-Y断面図(拡大図)である。
図3(d)は塗膜転写具Pの底面図である。
図3(e)は転写ヘッド部分の拡大図である。ただし、
図3(b)、
図3(c)と
図3(d)は上ケースを取り付けた状態を示している。
【0033】
塗膜転写具Pでは、巻出コア2と転写押圧部4A間(以下、巻出側と言う)にも先端規制部4D、4Eを設け、供給リールと先端規制部4D、4E間にもルート形成部7を設け、そのルート形成部7(ローラ8)付近に第2規制部5D、5Eを設けたので、塗膜転写具Nに比べて、より確実に転写押圧部4Aでの転写テープTの蛇行を防ぐことができる。また、巻出側においても、転写テープTがルート形成部7であるローラ8と接触しないルートを通ると、転写テープTは溝幅(規制幅)が狭い方の先端規制部4Dを通り、転写テープTがローラ8と接触するルートを通ると、転写テープTは先端規制部4Dを通らず、先端規制部4Eのみを通るようになっている。このように、巻出側においても、転写テープTが、ルート形成部7であるローラ8と接触するルートと接触しないルートを選択することにより、転写テープTが通る先端規制部の溝幅(規制幅)を選択することができるようになっている。このため、先端規制部4Dと4Eの溝幅(規制幅)を、それぞれ異なるテープ幅の転写テープTに適合する寸法とすることにより、テープ幅の異なる転写テープTであっても、転写テープT以外のすべての塗膜転写具部品を共用化した塗膜転写具が提供可能となるのは、塗膜転写具M、Nと同様である。
【0034】
転写テープ側部から塗膜が剥ぎ取られ易く、かつ転写後の塗膜の見た目が要求される修正テープなどを転写テープTとして使用する場合、塗膜転写具Pでは、転写押圧部4Aと巻取コア3間(以下、巻取側と言う)に設けた先端規制部4Bと、巻出側に設けた先端規制部4Dでは、転写テープT及び/又は基材テープSの幅方向への移動を規制する幅である溝幅寸法(規制幅)は、巻出側の方を大きくすることが好ましい。同様に、転写押圧部4Aと巻取コア3間の基材テープSのテープルート(巻取側)に設けた先端規制部4Cと、巻出側に設けた先端規制部4Eでは、転写テープT及び/又は基材テープSの幅方向への移動を規制する幅である溝幅寸法(規制幅)は、巻出側の方を大きくすることが好ましい。巻出側の転写テープTの表面には塗膜が積層されており、転写テープTの側部が先端規制部4D又は4Eと強く接触することや、又は先端規制部4D又は4Eに乗り上げることによって、転写テープTの側部の塗膜が先端規制部4D又は4Eによって剥ぎ取られることがある。巻出側で転写テープTの側部から塗膜が剥ぎ取られると、転写後の塗膜の側面の一部が欠けて、見た目が汚い状態になることがある。このため、特に転写後の塗膜の見た目が要求される修正テープなどを転写テープTとして使用する場合には、転写テープTの側部の塗膜が剥ぎ取られることを防止する必要がある。これに対して、転写押圧部4Aで塗膜を転写した残りの基材テープSでは、側部が先端規制部4B又は4Cと強く接触することや、乗り上げることがあったとしても、塗膜がすでに転写された後であるので、不具合を生じることはない。このため、巻取側の基材テープSの側部の方が、巻出側の転写テープTの側部よりも、先端規制部と強く接触させることができる。よって、先端規制部4Bと先端規制部4Dでは、先端規制部4Dの溝幅寸法を大きくすることが好ましく、先端規制部4Cと先端規制部4Eでは、先端規制部4Eの溝幅寸法(規制幅)を大きくすることが好ましい。
【0035】
塗膜転写具Pでも、先端規制部4B及び先端規制部4Cの基材テープSのテープ幅方向への移動を規制する範囲である溝幅(規制幅)は、基材テープ幅よりも0.2mm~0.5mm広い幅が好ましく、より好ましくは基材テープ幅よりも0.3mm~0.4mm広い幅である。これに対して、転写テープ側部から塗膜が剥ぎ取られ易く、かつ転写後の塗膜の見た目が要求される修正テープなどを転写テープTとして使用する場合には、先端規制部4D及び先端規制部4Eの溝幅(規制幅)は、転写テープ幅よりも0.5mm~0.9mm広いことが好ましく、転写テープ幅よりも0.5mm~0.7mm広いことがより好ましい。先端規制部4D及び4Eの溝幅(規制幅)が転写テープ幅より広く、その差が0.5mmよりも小さいと、転写テープTの端部が先端規制部4D又は4Eと強く接触又は乗り上げることにより、転写テープT端部の塗膜が剥ぎ取られるおそれがあり、塗膜が特に剥ぎ取られ易く、かつ剥ぎ取られることによって転写後の塗膜の見た目が汚くなるおそれがある修正テープなどを使用する場合には、好ましくない。一方、先端規制部4D及び4Eの溝幅(規制幅)が転写テープ幅より広く、その差が0.9mmよりも大きいと、先端規制部4D及び先端規制部4Eで転写テープTの蛇行を防止する効果が得られないので好ましくない。
【0036】
また、塗膜転写具Pでは、巻取側に第2規制部5B、5Cを設けたのと同様に、
図3に示すように、巻出側にも第2規制部5D、5Eを設けることが好ましい。第2規制部5D、5Eのテープ幅方向への転写テープTの移動を規制する範囲である溝幅(規制幅)は、先端規制部4D、4Eの溝幅(規制幅)と同様に、それぞれ転写テープ幅よりも、0.5mm~0.9mm広いことが好ましく、それぞれ転写テープ幅よりも、0.5mm~0.7mm広いことがより好ましい。
【0037】
塗膜転写具M、N、Pは、2種類の異なるテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具であるが、本発明の塗膜転写具は3種類以上の異なるテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具とすることも可能である。たとえば、塗膜転写具M、Nでは、巻取側に1箇所のルート形成部を設けることにより、また、塗膜転写具Pでは巻取側と巻出側のそれぞれ1箇所にルート形成部を設けることにより、2種類のテープ幅の異なる転写テープTが、異なるテープルートを通るようにしたが、塗膜転写具M、Nにおいて、巻取側にもう1箇所のルート形成部を追加してルート形成部を2箇所にすることや、塗膜転写具Pにおいて、巻出、巻取側のそれぞれにもう1箇所のルート形成部を追加して、巻出、巻取側のそれぞれに2箇所のルート形成部を設けてもよい。このように2箇所のルート形成部を設けることで、3種類のテープルート選択が可能となるので、3種類のテープルートのそれぞれに対応する位置に異なる3種類の溝幅(規制幅)の先端規制部を設けることによって、3種類のテープ幅の異なる転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具とすることができる。
【0038】
このように、本発明の塗膜転写具では、ルート形成部を増やすことにより、多くの種類のテープ幅の転写テープに対して、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具を提供することができる。しかしながら、このために多くのルート形成部を設けると、塗膜転写具が大型化するという問題がある。本発明の塗膜転写具では、大型化せずに、多くの種類のテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具として、
図4に示す塗膜転写具Rも提供可能である。
【0039】
図4(a)は上ケースを取外した状態の塗膜転写具Rの正面図である。
図4(b)は、
図4(a)のX矢視図(拡大図)である。
図4(c)は
図4(a)のY-Y断面図(拡大図)である。
図4(d)は塗膜転写具Rの底面図である。
図4(e)は、
図4(a)のZ矢視図(拡大図)である。
図4(f)は
図4(a)のW-W断面図(拡大図)である。
図4(g)は転写ヘッド部分の拡大図である。ただし、
図4(b)、
図4(c)、
図4(d)、
図4(e)と
図4(f)は上ケースを取り付けた状態を示している。
【0040】
塗膜転写具Pは、巻出側のルート形成部を通り、かつ巻取側のルート形成部を通るテープルートと、巻出側、巻取側の両方のルート形成部を通らないテープルートの2種類のテープルートにより、2種類のテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具であったのに対して、塗膜転写具Rは、巻出側のルート形成部を通らないで、巻取側のルート形成部を通る第1のテープルートと、巻出側のルート形成部を通り、かつ巻取側のルート形成部を通る第2のテープルートと、巻出側のルート形成部を通らないで、かつ巻取側のルート形成部を通らない第3のテープルートにより、3種類のテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品が共用可能な塗膜転写具である。
【0041】
たとえば、塗膜転写具Rにおいて、6mm幅の転写テープT1と4mm幅の転写テープT2と5mm幅の転写テープT3を使用する場合に、先端規制部4Cと先端規制部4Eに設けられた溝幅(規制幅)を6.3mmとし、先端規制部4Bに設けられた溝幅(規制幅)を4.3mmとし、先端規制部4Dに設けられた溝幅(規制幅)を5.3mmとする。また、
図4に示すように、基材テープSが巻取側のルート形成部7と接触すると、基材テープSは先端規制部4Bを通過せず、先端規制部4Cのみを通過するルートが選択され、基材テープSが巻取側のルート形成部7と接触しないルートを通ると、基材テープSが、先端規制部4Bを通過するルートが選択されるようになっている。同様に、
図4に示すように、転写テープTが巻出側のルート形成部7と接触すると、転写テープTが先端規制部4Dを通過せず、先端規制部4Eのみを通過ルートが選択され、転写テープTが巻出側のルート形成部7と接触しないルートを通ると、転写テープTが、先端規制部4Dを通過するルートが選択されるようになっている。
【0042】
このような構成とすることにより、塗膜転写具Rでは、6mm幅の転写テープT1を使用する場合には、巻出側、巻取側ともにルート形成部7と転写テープT(又は基材テープS)が接触するテープルート(前記第2のテープルート)を選択することにより、転写テープT1は、テープ幅に適合した溝幅(規制幅)が6.3mmの先端規制部4Eのみを通り、転写テープT1から塗膜が転写された残りの基材テープSもテープ幅に適合した溝幅(規制幅)が6.3mmの先端規制部4Cのみを通るようにすることができる。
【0043】
また、塗膜転写具Rでは、4mm幅の転写テープT2を使用する場合には、巻出側、巻取側ともにルート形成部7と転写テープT(又は基材テープS)が接触しないテープルート(前記第3のテープルート)を選択することにより、転写テープT2は、テープ幅よりも1.3mm溝幅(規制幅)が広い5.3mmの先端規制部4Dを通り、転写テープT2から塗膜が転写された残りの基材テープSはテープ幅に適合した溝幅(規制幅)が4.3mmの先端規制部4Bを通るようにすることができる。
【0044】
同様に、塗膜転写具Rでは、5mm幅の転写テープT3を使用する場合には、巻出側ではルート形成部7と転写テープT3が接触しないテープルートで、巻取側ではルート形成部7と基材テープSが接触するテープルート(前記第1のテープルート)を選択することにより、転写テープT3は、テープ幅に適合した溝幅(規制幅)が5.3mmの先端規制部4Dを通り、転写テープT3から塗膜が転写された残りの基材テープSはテープ幅よりも1.3mm溝幅(規制幅)が広い6.3mmの先端規制部4Cを通るようにすることができる。また、
図4に示すように、塗膜転写具Rでも塗膜転写具Pと同様に、第2規制部5B、5C、5D、及び5Eを設けることが好ましい。塗膜転写具Rでは、1箇所の第2規制部が2種類の異なるテープ幅の転写テープルートとなることがある。このため、第2規制部における転写テープの幅方向への移動を規制する規制寸法である溝幅は、その第2規制部を通過する最も幅の広い転写テープに適合する値にする必要がある。したがって、塗膜転写具Rにおける各第2規制部の溝幅(規制幅)は、それぞれ、5Cと5Eが転写テープ幅6mmに適合する値(例えば6.3mm)となり、5Dが転写テープ幅5mmに適合する値(例えば5.3mm)、5Bが転写テープ幅4mmに適合する値(例えば4.3mm)となる。
【0045】
前記のように、塗膜転写具において、転写押圧部での転写テープの蛇行を防止するために、転写押圧部付近の巻出側と巻取側の両方に先端規制部を設ける場合には、テープの蛇行を防止するための先端規制部の溝幅(規制幅)は、巻出側よりも巻取側を狭くすることが好ましい。これに対して、塗膜転写具Rにおいて、6mm幅の転写テープT1を使用する場合には、巻出側と巻取側の先端規制部の溝幅(規制幅)は等しく、5mm幅の転写テープT3を使用する場合には、巻出側の先端規制部の溝幅(規制幅)よりも巻取側の先端規制部の溝幅(規制幅)の方が広くなっている。しかしながら、巻出側の先端規制部の溝幅(規制幅)を巻取側の溝幅よりも広くする理由は、前記のように、特に転写後の塗膜の見た目が要求される修正テープなどを転写テープTとして使用する場合に、転写押圧部で塗膜を転写する前の転写テープTの側部の塗膜が、先端規制部に剥ぎ取られるのを防止することである。したがって、例えば、粘着剤を転写テープから転写するための所謂のりテープを、転写テープとして塗膜転写具に使用する場合には、のりテープの端部の塗膜(のり)は先端規制部に容易に剥ぎ取られることはなく、かつ被転写面に転写したのりは、通常、紙同士などの貼り付けに利用され、外観に現れず、実使用上転写後の見た目が悪くなることもないため、巻出側の先端規制部の溝幅(規制幅)よりも巻取側の先端規制部の溝幅(規制幅)を狭くする必要はない。よって、のりテープなどの転写テープを使用する場合には、塗膜転写具Rを採用することによって、塗膜転写具を特に大きくしないでも、3種類のテープ幅の転写テープで、転写テープ以外のすべての塗膜転写具部品を共用することができる塗膜転写具を提供できる。
【0046】
前記塗膜転写具M、N、P、Rは、転写テープ上の塗膜をすべて転写し終えると、巻出コアに転写テープを巻き回した供給リール自体を新品に交換しなければ、塗膜転写具を再利用することができず、一般の塗膜転写具ユーザーでは、塗膜転写具を再利用することが困難な所謂、使い捨てタイプの塗膜転写具となっている。しかしながら、本発明の塗膜転写具は使い捨てタイプに限定されるものではなく、一般のユーザーでも容易に転写テープを交換して塗膜転写具の一部が再利用可能な、所謂交換タイプの塗膜転写具とすることも可能である。塗膜転写具M、N、P、Rでは、ユーザーが握って使用することができるように、内部部品の周囲をほぼ完全に覆う状態となる上ケースと下ケースで構成された筐体に直接内部部品を収納した形態の塗膜転写具としている。しかしながら、例えば、これら上ケースと下ケースを再利用可能とするために、内部部品を1枚のシート状の部品に装着した交換カセットとし、この交換カセットを上ケースと下ケースで構成された本体カセットに装着すれば、交換カセットを交換可能な形態とすることも可能である。
【0047】
1:ベルト
2:巻出コア
3:巻取コア
4:転写ヘッド
4A:転写押圧部
4B、4C、4D、4E:先端規制部
5:下ケース
5A:ガイドピン
5B、5C、5D、5E:第2規制部
5K、6K:凸部
6:上ケース
6A:ガイド穴
7:ルート形成部
8:ローラ
M、N、P、R:塗膜転写具
T:転写テープ
S:基材テープ