(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184311
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】深部体温推定装置および方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61B5/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092082
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】八谷 百合子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 崇
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB12
4C117XC11
4C117XD16
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4C117XM01
4C117XM03
4C117XM04
(57)【要約】
【課題】簡易な手法および構成により、深部体温を高精度に推定する深部体温推定装置および方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付ける入力受付部10と、被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、被測定者の上述した時系列データを入力して被測定者の深部体温を推定する推定部11と、推定された被測定者の深部体温を出力する出力部12とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付ける入力受付部と、
所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、前記入力受付部によって受け付けられた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された被測定者の深部体温を出力する出力部とを備えた深部体温推定装置。
【請求項2】
前記入力情報が、前記被験者の年齢に関する情報をさらに含み、
前記入力受付部が、前記被測定者の年齢に関する情報をさらに受け付け、
前記推定部が、前記学習モデルに対して、前記被測定者の年齢に関する情報をさらに入力することによって、前記被測定者の深部体温を推定する請求項1記載の深部体温推定装置。
【請求項3】
前記入力情報が、前記被験者の身長および体重に関する情報をさらに含み、
前記入力受付部が、前記被測定者の身長および体重に関する情報をさらに受け付け、
前記推定部が、前記学習モデルに対して、前記被測定者の身長および体重に関する情報をさらに入力することによって、前記被測定者の深部体温を推定する請求項1または2記載の深部体温推定装置。
【請求項4】
前記入力情報が、前記被験者の測定環境条件に関する情報をさらに含み、
前記入力受付部が、前記被測定者の測定環境条件に関する情報をさらに受け付け、
前記推定部が、前記学習モデルに対して、前記被測定者の測定環境条件に関する情報をさらに入力することによって、前記被測定者の深部体温を推定する請求項1から3いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項5】
前記入力情報が、前記被験者の性別に関する情報をさらに含み、
前記入力受付部が、前記被測定者の性別に関する情報をさらに受け付け、
前記推定部が、前記学習モデルに対して、前記被測定者の性別に関する情報をさらに入力することによって、前記被測定者の深部体温を推定する請求項1から4いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項6】
前記被測定者の運動負荷に関する情報を検出する運動負荷情報検出部を備えた請求項1から5いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項7】
前記被測定者の皮膚表面温度に関する情報を検出する皮膚表面温度検出部を備えた請求項1から6いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項8】
前記被測定者の心拍数に関する情報を検出する心拍情報検出部を備えた請求項1から7いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項9】
前記推定部が、RNN(Recurrent Neural Network)を用いて学習モデルを構築する請求項1から8いずれか1項記載の深部体温推定装置。
【請求項10】
前記RNNが、LSTM(Long Short Term Memory)である請求項9記載の深部体温推定装置。
【請求項11】
深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付け、
所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、前記受け付けた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定し、
該推定した被測定者の深部体温を出力する深部体温推定方法。
【請求項12】
深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付けるステップと、
所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、前記受け付けた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定するステップと、
該推定した被測定者の深部体温を出力するステップとをコンピュータに実行させる深部体温推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の深部体温を推定する深部体温推定装置および方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱中症は、体内の水分が不足して発症する熱失神や熱痙攣、ミネラル(塩分など)が不足して発症する熱疲労、また深部体温が上昇して発症する熱射病に分類され、中でも熱射病は深部体温が40℃以上となり、意識障害や発汗停止の症状を呈し、重症化しやすく腎不全などの後遺症を残したり、死亡するリスクも高いため緊急対応が必要となる。そのため熱射病の予防は特に重要と考えられている。
【0003】
熱射病の発症を予測するためには指標である深部体温の測定が必要であるが、深部体温は、食道内部や直腸内部の温度を測定して求めることができる。そこで、深部体温は、特殊な温度センサを食道内部や直腸内部へ挿入して測定することができるが、被験者にとり不快感が大きく、また簡便に測定できないデメリットがあった。
【0004】
そこで、たとえば非特許文献1においては、特殊なセンサを用いて前額部、胸部など体表から計測部直下の組織温を連続的に計測できる深部体温計が提案されている。また、非特許文献2においては、温度センサを2箇所に配置することで、2点間の熱流束を計測し、双熱流法の原理に基づき深部体温を推定するウェアラブル深部体温計が提案されている。
【0005】
また、特許文献1においては、被測定者の熱画像を撮影し、その熱画像に基づいて、深部体温を推定する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2においては、作業者が用いるヘルメットに、温度センサを備えた深部体温プローブを設けることによって作業者の深部体温を計測する方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献3においては、被測定者の深部体温を非侵襲で求める深部体温計が提案されている。
【0008】
また、特許文献4においては、生体温熱モデルを用いて、センサでの測定に基づいて取得された深部での熱産生から、体内の熱移動および体外との熱交換を熱収支計算式で繰り返し計算することによって、運動中における深部体温を推定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-183564号公報
【特許文献2】特開2018-134137号公報
【特許文献3】特開2018-13395号公報
【特許文献4】特開2017-217224号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】BME Vol.2, No.3,1988
【非特許文献2】安衛研ニュース No.119 (2018-10-05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1~非特許文献2および特許文献1~特許文献4に記載の方法では、特殊なセンサが必要であったり、被測定者の情報を多点で計測する必要があり、コストアップや装置の大型化を招いたり、測定作業が煩雑になる問題などがあった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、簡易な手法および構成により、深部体温を高精度に推定することができる深部体温推定装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の深部体温推定装置は、深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付ける入力受付部と、所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、入力受付部によって受け付けられた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定する推定部と、推定部によって推定された被測定者の深部体温を出力する出力部とを備える。
【0014】
また、本発明の深部体温推定装置においては、上記入力情報として、被験者の年齢に関する情報をさらに含めることができ、入力受付部は、被測定者の年齢に関する情報をさらに受け付けることができ、推定部は、学習モデルに対して、被測定者の年齢に関する情報をさらに入力することによって、被測定者の深部体温を推定することができる。
【0015】
また、本発明の深部体温推定装置においては、上記入力情報として、被験者の身長および体重に関する情報をさらに含めることができ、入力受付部は、被測定者の身長および体重に関する情報をさらに受け付けることができ、推定部は、学習モデルに対して、被測定者の身長および体重に関する情報をさらに入力することによって、被測定者の深部体温を推定することができる。
【0016】
また、本発明の深部体温推定装置においては、上記入力情報として、被験者の測定環境条件に関する情報をさらに含めることができ、入力受付部は、被測定者の測定環境条件に関する情報をさらに受け付けることができ、推定部は、学習モデルに対して、被測定者の測定環境条件に関する情報をさらに入力することによって、被測定者の深部体温を推定することができる。
【0017】
また、本発明の深部体温推定装置においては、上記入力情報として、被験者の性別に関する情報をさらに含めることができ、入力受付部は、被測定者の性別に関する情報をさらに受け付けることができ、推定部は、学習モデルに対して、被測定者の性別に関する情報をさらに入力することによって、被測定者の深部体温を推定することができる。
【0018】
また、本発明の深部体温推定装置においては、被測定者の運動負荷に関する情報を検出する運動負荷情報検出部を備えることができる。
【0019】
また、本発明の深部体温推定装置においては、被測定者の皮膚表面温度に関する情報を検出する皮膚表面温度検出部を備えることができる。
【0020】
また、本発明の深部体温推定装置においては、被測定者の心拍数に関する情報を検出する心拍情報検出部を備えることができる。
【0021】
また、本発明の深部体温推定装置において、推定部は、RNN(Recurrent Neural Network)を用いて学習モデルを構築することができる。
【0022】
また、本発明の深部体温推定装置において、RNNは、LSTM(Long Short Term Memory)とすることができる。
【0023】
本発明の深部体温推定方法は、深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付け、所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、受け付けた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定し、その推定した被測定者の深部体温を出力する。
【0024】
本発明の深部体温推定プログラムは、深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの入力を受け付けるステップと、所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、受け付けた被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定するステップと、その推定した被測定者の深部体温を出力するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の深部体温推定装置および方法並びにプログラムによれば、所定の被験者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力情報とし、所定の被験者の直腸温の時系列の実測値を出力情報として機械学習して構築された学習モデルに対して、被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを入力することによって被測定者の深部体温を推定し、その推定した被測定者の深部体温を出力する。
【0026】
これにより、簡易な手法および構成により、深部体温を高精度に推定することができる。特に、本発明の深部体温推定装置および方法並びにプログラムによれば、運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報について、時系列データを用いるようにしている。すなわち、身体計測から得られた上記情報が連続した状態の変化であると捉えて学習モデルを構築して深部体温を推定するようにしたので、過去に測定された上記情報を用いて、現在の深部体温の推定を行うことができ、深部体温の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の深部体温推定装置の第1の実施形態の概略構成を示すブロック図
【
図2】本発明の深部体温推定装置の第1の実施形態の深部体温推定装置の処理を説明するためのフローチャート
【
図3】本発明の深部体温推定装置の第2の実施形態の概略構成を示すブロック図
【
図4】被験者の歩数、手背部の皮膚表面温度、心拍数および直腸温の測定の流れを示す図
【
図5】学習モデルを用いた直腸温の予測値と直腸温の実測値の時間経過の一例を示す図
【
図6】学習モデルを用いた直腸温の予測値と直腸温の実測値の時間経過のその他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の深部体温推定装置の第1の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の深部体温推定装置1の概略構成図である。
【0029】
深部体温推定装置1は、被測定者の深部体温を推定する装置である。本実施形態の深部体温推定装置1は、深部体温の測定対象である被測定者について、予め設定された6項目の情報を受け付け、その受け付けた情報を、予め機械学習によって構築された学習モデルに入力することによって、被測定者の深部体温を推定する。予め設定された6項目は、被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報、心拍数に関する情報、年齢に関する情報、体重と身長に関する情報、および測定環境条件に関する情報である。
【0030】
深部体温推定装置1は、具体的には、
図1に示すように、入力受付部10と、推定部11と、出力部12とを備えている。
【0031】
入力受付部10は、被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データ、並びに年齢に関する情報、体重と身長に関する情報および測定環境に関する情報の入力を受け付ける。時系列データとは、予め設定された所定の時間間隔で連続的に測定されたデータ群である。
【0032】
運動負荷に関する情報とは、被測定者の運動負荷の状況を示す情報であり、本実施形態では、被測定者の1分間の平均歩数とする。すなわち、本実施形態の入力受付部10は、被測定者の1分間の平均歩数の時系列データの入力を受け付ける。ただし、運動負荷に関する情報としては、これに限らず、たとえば被測定者に対して運動負荷を課している場合には、運動負荷に関する情報として「1」の数値情報の入力を受け付け、被測定者に対して運動負荷を課していない場合には、運動負荷に関する情報として「0」の数値情報の入力を受け付けるようにしてもよい。また、運動負荷に関する情報としては、これらの数値情報に限らず、被測定者の運動負荷の状況を示す情報であれば、その他の情報でもよい。
【0033】
年齢に関する情報としては、たとえば被測定者の年齢がそのまま用いられる。年齢に関する情報は、たとえば後述する入力装置2を用いて設定入力され、入力受付部10は、その設定入力された年齢を受け付ける。
【0034】
体重と身長に関する情報は、被測定者の体重と身長に関する情報であれば如何なる情報でもよいが、本実施形態の入力受付部10は、体重と身長に関する情報として、BMI(Body Mass Index)の値の入力を受け付ける。BMIの値については、たとえばBMIの測定装置から出力された値を入力受付部10が直接受け付けるようにしてもよいし、被測定者について予め測定されたBMIの値を入力装置2を用いて設定入力し、その設定入力された値を入力受付部10が受け付けるようにしてもよい。
【0035】
皮膚表面温度に関する情報は、被測定者の皮膚表面温度に関する情報であれば如何なる情報でもよいが、本実施形態の入力受付部10は、皮膚表面温度に関する情報として、被測定者の胸部または手背部の皮膚表面温度の時系列データの入力を受け付ける。胸部または手背部は、その他の部位と比較する皮膚表面温度が安定しているので、測定対象として望ましい。
【0036】
皮膚表面温度の値については、たとえば温度センサなどから出力された時系列データを入力受付部10が直接受け付けるようにしてもよいが、これに限らず、赤外線サーモグラフにより非接触に計測した値を受け付けるようにしてもよい。また、被測定者について予め測定された皮膚表面温度の時系列データを入力装置2を用いて設定入力し、その設定入力された値を入力受付部10が受け付けるようにしてもよい。
【0037】
心拍に関する情報は、被測定者の心拍数に関する情報であれば如何なる情報でもよいが、本実施形態の入力受付部10は、心拍数に関する情報として、被測定者の心拍数の値の時系列データそのままの入力を受け付ける。
【0038】
心拍数の値については、たとえば心拍数を測定する装置などから出力された時系列データを入力受付部10が直接受け付けるようにしてもよいし、被測定者について予め測定された心拍数の値の時系列データを入力装置2を用いて設定入力し、その設定入力された値を入力受付部10が受け付けるようにしてもよい。
【0039】
心拍数を測定する装置としては、たとえば光電脈波法による透過型脈波測定装置や反射型脈波測定装置を用いることができるが、これに限らず、心電図法により電気パルスを計測する装置、血圧計法により血管圧の変化を計測する装置、心音図法により音を計測する装置などを用いることができる。
【0040】
測定環境条件とは、被験者の直腸温の実測値を測定する際および被測定者の深部体温を推定する際において被験者および被測定者が置かれている環境条件のことであり、たとえば、被験者および被測定者の深部体温に影響を及ぼすと考えられる環境温度(たとえば室温など)を用いることができる。被測定者の深部体温を推定する際、このような測定環境条件を含めることによって、被測定者の置かれた環境を考慮することができるので、深部体温の推定精度をより向上させることができる。
【0041】
測定環境条件としては、上述した環境温度に限らず、たとえば暑さ指数(WBGT(Wet Bulb Globe Temperature))を用いるようにしてもよい。また、暑さ指数を計算する際に用いる乾球温度、湿球温度、輻射温度および湿度などを単独または複数組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0042】
測定環境条件については、たとえば測定環境温度を計測する装置などから出力された値を入力受付部10が直接受け付けるようにしてもよいし、予め測定された測定環境温度を入力装置2を用いて設定入力し、その設定入力された値を入力受付部10が受け付けるようにしてもよい。また、測定環境温度の時系列データの入力を受け付けるようにしてもよい。
【0043】
推定部11は、被測定者の深部体温を推定する。本実施形態の推定部11は、入力受付部10によって受け付けられた6項目の情報を、予め機械学習を行うことによって構築された学習モデルに入力することによって、被測定者の深部体温を推定する。学習モデルは、推定部11に記憶するようにしてもよいし、たとえば深部体温推定装置1と通信ネットワークを介して接続されるサーバ装置などに記憶してもよい。
【0044】
学習モデルは、所定の被験者の上記運動負荷に関する情報、上記皮膚表面温度に関する情報、および上記心拍数に関する情報の時系列データ、並びに上記年齢に関する情報、上記体重と身長に関する情報および上記測定環境条件に関する情報と、その被験者の直腸温の実測値の時系列データとの関係に基づいて、機械学習することによって得られたものである。すなわち、所定の被験者の上記運動負荷に関する情報、上記皮膚表面温度に関する情報、および上記心拍数に関する情報の時系列データ、並びに上記年齢に関する情報、上記体重と身長に関する情報および上記測定環境条件に関する情報を入力情報とし、その被験者の直腸温の実測値の時系列データを出力情報として機械学習することによって得られたものである。
【0045】
機械学習の方法としては、本実施形態では、RNN(Recurrent Neural Network)の1つであり、過去のデータに重みづけをしながら時系列データを学習するLSTM(Long Short Term Memory)を用いる。LSTMは、身体計測から得られた時系列データが連続した状態の変化であると捉えて解析できる特徴があり、過去のデータを参照しつつ、直近のデータの影響を強く受けながらデータを評価する。特に、データの評価を時間的に前に遡るに従って、影響が弱くなるように傾斜をかけられるため、直腸温の予測値の時間的変化は、実測値に近い値で変化する。
【0046】
ただし、機械学習の方法としては、LSTMに限らず、同様に、時系列データの入力を受け付け、過去のデータに重みづけをしながら機械学習を行う方法であれば如何なる方法を用いてもよい。なお、学習モデルの構築方法については、後で詳述する。
【0047】
出力部12は、推定部11によって推定された被測定者の深部体温を出力する。具体的には、本実施形態の出力部12は、推定部11によって推定された被測定者の深部体温を、深部体温推定装置1に接続された後述する表示装置3に表示させる。なお、本実施形態の出力部12の出力先としては、表示装置3に限らず、深部体温推定装置1に対して通信ネットワークを介して接続されたコンピュータやサーバ装置などに出力するようにしてもよいし、プリンタなどの印刷装置に出力するようにしてもよい。
【0048】
また、推定部11によって推定された被測定者の深部体温または深部体温の上昇値が、予め設定された閾値を超えた場合には、出力部12が、表示装置3に警告メッセージを表示させたり、もしくは警告音を発するようにしてもよい。これにより、被測定者の熱射病などの熱中症の発症を防止することができる。
【0049】
深部体温推定装置1は、コンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの半導体メモリ、ハードディスクなどのストレージ、および通信I/F(Interface)などを備えている。
【0050】
また、深部体温推定装置1の半導体メモリまたはハードディスクには、本発明の一実施形態に係る深部体温推定プログラムがインストールされている。CPUまたはGPUが、この深部体温推定プログラムを実行することによって、
図1に示す入力受付部10、推定部11および出力部12が機能する。
【0051】
すなわち、深部体温推定プログラムは、深部体温の測定対象である被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データ、並びに年齢に関する情報、体重と身長に関する情報および測定環境条件に関する情報の入力を受け付けるステップと、上述した学習モデルに対して、上記受け付けステップで受け付けた情報を入力することによって被測定者の深部体温を推定するステップと、その推定した被測定者の深部体温を出力するステップとをコンピュータに実行させる。
【0052】
なお、深部体温推定装置1のハードウェア構成は、上述した構成に限定されない。
【0053】
また、本実施形態においては、上述した入力受付部10、推定部11および出力部12の機能を全て深部体温推定プログラムによって実行するようにしたが、これに限らず、一部または全部の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の電気回路などのハードウェアから構成するようにしてもよい。
【0054】
深部体温推定装置1には、
図1に示すように入力装置2および表示装置3が、有線または無線で接続されている。入力装置2は、上述したような種々の情報を設定入力可能に構成されており、たとえばキーボードやマウスなどを備えている。また、表示装置3は、たとえば液晶ディスプレイなどを備えている。なお、深部体温推定装置1をタブレット端末やウェアラブル端末で構成するようにしてもよい。深部体温推定装置1をウェアラブル端末とする場合の詳細な構成については、後で詳述する。
【0055】
次に、本実施形態の深部体温推定装置1の処理の流れについて、
図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
まず、ユーザが、入力装置2を用いて、被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データ、並びに年齢に関する情報、体重と身長に関する情報および測定環境条件に関する情報を設定入力する(S10)。
【0057】
ユーザによって設定入力された上記6項目の情報は、深部体温推定装置1の入力受付部10によって受け付けられる(S12)。
【0058】
入力受付部10によって受け付けられた6項目の情報は、推定部11に入力される。推定部11は、入力受付部10によって受け付けられた6項目の情報を、上述した学習モデルに入力することによって、被測定者の深部体温を推定する(S14)。
【0059】
推定部11によって推定された被測定者の深部体温は出力部12に出力され、出力部12は、入力された被測定者の深部体温を表示装置3に表示させる(S16)。
【0060】
なお、上記実施形態の深部体温推定装置1においては、学習モデルの入力情報として、上述した6項目の情報を用いるようにしたが、さらに、学習モデルの入力情報として、被験者の性別に関する情報を含めて機械学習を行った学習モデルを用いるようにしてもよい。そして、推定部11が、その学習モデルに対して、被測定者の上述した6項目の情報および性別に関する情報を入力することによって、被測定者の深部体温を推定するようにしてもよい。
【0061】
性別に関する情報としては、たとえば性別が男性である場合には「1」を、女性である場合には「2」を学習モデルに入力するようにすればよい。深部体温は、被測定者が同じ環境下にいたとしても性別によって異なる可能性が考えられるので、深部体温を推定する際、性別に関する情報を含めることによって、深部体温の推定精度をより向上させることができる。
【0062】
次に、本発明の深部体温推定装置の第2の実施形態を備えたウェアラブル端末5について説明する。
【0063】
ウェアラブル端末5は、深部体温を推定するための基本的な構成は、上述した第1の実施形態の深部体温推定装置1と同様であるが、被測定者の運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データの取得方法が異なる。
【0064】
ウェアラブル端末5の形態としては、リストバンド型(腕時計型)でもよいし、メガネ型でもよいし、クリップ型でもよいが、上述した3つの情報を高精度に検出するためには、リストバンド型であることが好ましい。
【0065】
図3は、本実施形態のウェアラブル端末5の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のウェアラブル端末5は、
図3に示すように、本体部50、運動負荷情報検出部55、皮膚表面温度検出部56、心拍情報検出部57および環境温度計測部58を備えている。
【0066】
本体部50は、入力受付部51、推定部52、出力部53および表示部54を備えている。本体部50の入力受付部51、推定部52および出力部53は、基本的な機能は、上述した第1の実施形態の深部体温推定装置1の入力受付部10、推定部11および出力部12と同様の構成である。
【0067】
表示部54は、たとえば液晶ディスプレイを備え、出力部12から出力された深部体温を表示する。また、表示部54をタッチパネルから構成し、深部体温を表示部54に表示させるとともに、表示部54において種々の情報の設定入力を受け付けるようにしてもよい。
【0068】
運動負荷情報検出部55は、被測定者の運動負荷に関する情報を検出する。運動負荷情報検出部55としては、たとえば歩数計を用いることができる。たとえば歩数計によって計測された歩数を入力受付部51が受け付け、推定部52が、入力された歩数に基づいて、運動負荷に関する情報として、上述した1分間の平均歩数の時系列データを演算し、これを学習モデルに入力するようにすればよい。
【0069】
皮膚表面温度検出部56は、被測定者の皮膚表面温度に関する情報を検出する。皮膚表面温度検出部56としては、たとえば温度センサを用いることができる。たとえばウェアラブル端末5をリストバンド型とした場合には、温度センサによって手背部に近い部分の皮膚表面温度を計測することができるので、深部体温の推定精度を向上させることができる。
【0070】
心拍情報検出部57は、被測定者の心拍数に関する情報を検出する。心拍情報検出部57としては、たとえば反射型脈波センサを用いることができる。そして、反射型脈波センサによって計測された心拍数を入力受付部51が受け付ける。
【0071】
環境温度計測部58は、被測定者の測定環境温度を計測する。環境温度計測部58としては、たとえば温度センサを用いることができる。環境温度計測部58によって測定環境温度をリアルタイムに計測することによって、測定環境温度の時系列データの入力を受け付けることができ、深部体温の推定精度を向上させることができる。
【0072】
ウェアラブル端末5において、年齢に関する情報および体重と身長に関する情報については、たとえば表示部54がタッチパネルから構成される場合には、そのタッチパネル上において設定入力すればよい。
【0073】
または、本体部50が有する通信I/Fによって通信ネットワークを介して他の通信端末装置に接続し、その通信端末装置において年齢に関する情報および体重と身長に関する情報を設定入力可能としてもよい。
【0074】
他の通信端末装置としては、スマートフォンやタブレット端末などがある。たとえばスマートフォンやタブレット端末において専用アプリケーションをインストールし、その専用アプリケーション上において年齢に関する情報並びに体重および身長に関する情報の設定入力を受け付けるようにしてもよい。また、専用アプリケーション上において、出力部53から出力された深部体温を表示するようにしてもよい。
【0075】
また、ウェアラブル端末5においても、上記実施形態の深部体温推定装置1と同様に、学習モデルに対して、被験者および被測定者の性別に関する情報を入力するようにしてもよい。また、被験者の性別に関する情報については、表示部54または上述した専用アプリケーションにおいて設定入力すればよい。また、被験者および被測定者の測定環境条件についても、表示部54または上述した専用アプリケーションにおいて設定入力してもよい
【0076】
ウェアラブル端末5のその他の作用については、上記実施形態の深部体温推定装置1と同様である。
【実施例0077】
以下、本発明の深部体温推定装置のより具体的な実施例について説明する。まず、深部体温の推定に用いる学習モデルの生成方法の一実施例について説明する。
【0078】
本実施例では、12人の被験者(被験者番号1~12,平均年齢24.6±5.8歳)について、人工気候室において運動負荷を行わせて運動負荷に関する情報、皮膚表面温度に関する情報および心拍数に関する情報の時系列データを取得した。人工気候室の測定環境条件は、測定環境条件1として、低リスクで注意レベルの室温25℃、湿度50%およびWBGT22℃とし、測定環境条件2として、高リスクで厳重警戒レベルの室温35℃、湿度50%、WBGT30℃とした。測定環境条件1および測定環境条件2の両条件で、トレッドミル80wによる運動負荷を行わせた。
【0079】
そして、被験者の歩数、手背部の皮膚表面温度、心拍数および直腸温(以下、この4項目を生体情報という)を測定した、測定の流れを
図4に示す。
図4に示すように、10分間安静にして準備期間を置いた後、無負荷の状態における生体情報を6分間収集した。次に、トレッドミルで80wの運動負荷を18分間行って「運動負荷1」とした。運動負荷1の後、12分間の休憩を置き、さらに18分間の運動負荷を行って「運動負荷2」とした。その後、12分間の休憩を置き、後処理として10分間、無負荷の状態で生体情報を測定して終了した。生体情報の測定は、準備期間の後から開始し、運動負荷2の後の休憩の終了まで行い、測定の合計時間は66分間であった。生体情報の測定は、10秒毎に行った。
【0080】
直腸温および手背部の皮膚表面温度は、熱電対センサを用いて測定した。心拍数は日本光電BSM-2401を用いて測定した。人工気候室内の測定環境条件については、VAISALA社温度計を用いて環境温度(室温)を測定した。また、被験者の歩数については、富士通製のバイタルセンシングバンドを用いて測定し、10秒毎に出力される1分間の平均歩数を取得した。
【0081】
これらの測定値はキーエンス社データロガーのリアルタイムデータ収録装置NR-500で記録した。
【0082】
また、上述した準備期間において、被験者の身長および精密体重を測定し、その測定値からBMIを求めた。
【0083】
なお、本実施例では、上述したように12人の被験者について2つの測定環境条件下で生体情報を測定したので、12人×2の24個の時系列データセットが得られたが、そのうち1名(被験者番号2)は直腸温が測定されておらず、また1名(被験者番号8)は、環境温度(室温)25℃での測定のみで、環境温度(室温)35℃では直腸温の測定が途中から不可能となったので、最終的に、11人の被験者(平均年齢24.6±6.0歳)について、21個の時系列データセットを得た。この時系列データセットに対して、データセット番号1~21を付する。
【0084】
そして、被験者の歩数、手背部の皮膚表面温度および心拍数について10秒毎に測定された時系列データと、被験者の年齢およびBMIと、環境温度(室温)との6項目を独立変数とし、直腸温の実側値を教師データとしてAIを用いてディープラーニングを行って学習モデルを構築し、その学習モデルを用いて深部体温の予測を行った。
【0085】
ディープラーニングの学習モデルは、LSTM(Long Short Term Memory)を用いた。
【0086】
AIのプラットフォームはAnaconda(登録商標)ver.4.4.0を使用し、プログラムはPython(登録商標)ver.3.7で作成し、AIライブラリとしてTensorflow(登録商標)ver.2.1、Keras(登録商標)等を実装した。
【0087】
LSTMの設定は、伝達関数は全結線型ニューラルネットワーク1層とし、活性化関数はlinear(正規化線形関数、正規化の範囲は-1~+1)、最適化関数はAdam(Adaptive Moment Estimation、確率的勾配降下法)、誤差関数は最小二乗法を用い、レイヤー(階層)は、中間層256層(隠れ層36層を含む)+出力層(全結線型ニューラルネットワーク)1層=257層とし、ノード数は32個、epock数(繰り返し学習する回数)は50回に設定し、バッチサイズは32に設定して機械学習を行った。
【0088】
そして、本実施例では、10秒毎に生体情報を測定しているので、LSTMの隠れ層を36層に設定したことで、約6分間前から現時点までの時系列データセットを使用して、10秒後の直腸温(深部体温)を予測した。すなわち、10秒前までの時系列データセットを用いて現在の直腸温(深部体温)の予測値を取得した。LSTMは、現在のデータセットに近いほど予測値に対する影響を大きく(weightを重く)し、遠いほど予測値に対する影響を小さく(weightを軽く)して参照する。なお、本実施例では、6分前~10秒前のデータセットを用いて現在の予測値を得るようにしたので、隠れ層を36層に設定したが、これに限らず、データセットの測定間隔や何分前までのデータセットを用いるかによって隠れ層の層数を任意に変更してもよい。
【0089】
そして、予測値と実測値を比較することによって予測精度を評価した。予測精度の評価は、k-fold crossvalidation法で行った。この方法は、k個のサンプルデータからテストデータを1つ抽出し、残りの(k-1)個のデータセットから学習結果(学習モデル)を得て、この操作を順番に行うことによって、(k-1)個の学習モデルの予測精度の平均から学習モデルの性能を評価する方法である。
【0090】
本実施例では、上述したように、11人の被験者から21個の時系列データセットを得ているため、1つの時系列データセットをテストデータとして除外し、残りの20個の時系列データセットで機械学習して学習モデルを構築し、その構築した学習モデルを用いて、上記テストデータの検証を行った。そして、この操作を順番に20回繰り返して20個の学習モデルをそれぞれ構築し、各学習モデルを用いてテストデータの検証を行って各学習モデルを評価した。
【0091】
図5は、被験者番号1の環境温度25℃の時系列データセット(テストデータ)を学習モデルに入力することによって得られた直腸温の予測値と直腸温の実測値の時間経過を示す図である。
図5では、予測値を破線で示し、実測値を実線で示している。
【0092】
図5に示す例では、上述したようにデータセット番号1の時系列データセットを除いた残りの全ての時系列データセットで直腸温の予測を学習させ、その結果得られた学習モデルを使って、データセット番号1について直腸温を予測している。予測値と実測値を比較すると、誤差を±0.1℃以内で許容した場合は、一致率が74%であり、この誤差を±0.2℃以内まで許容した場合は、一致率は95%であった。
【0093】
また、
図6は、データセット番号2から21までの20個の時系列データセットについて、それぞれデータセット番号1と同じ操作を行った場合の予測値と実測値をまとめた図である。また、下表1は、データセット番号1~21の予測値と実測値との一致率を示す表である。
図6および下表1に示すように、実測値と予測値の一致率は高く、特に、データセット番号18の一致率が最もよく、直腸温の予測は±0。2℃以内の誤差でほぼ100%一致した。また、一致率が最も低いデータセット番号14の場合においても、
図5および
図6の結果から判断すると、直腸温の上昇を事前に察知して熱中症を予防するという目的には、十分に使用できる結果であった。
【表1】
【0094】
なお、上記実施例は、被験者の歩数、手背部の皮膚表面温度および心拍数の時系列データと、被験者の年齢およびBMIと、環境温度(室温)との6項目を用いて学習モデルを構築し、被測定者の上記6項目を学習モデルに入力して直腸温(深部体温)を推定するようにしたが、歩数、手背部の皮膚表面温度および心拍数の時系列データと、環境温度(室温)との4項目を用いて、上記実施例と同様にして学習モデルを構築し、直腸温を推定した場合の予測値と実測値の一致率を下表2に示す。下表2に示すとおり、上記4項目の場合でも、上記6項目の場合と同等の精度を得ることができた。
【表2】
【0095】
なお、上記実施例は、本発明の深部体温推定装置の一実施例であり、本発明の深部体温推定装置は、上記実施例に限定されるものではない。