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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184324
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】振動搬送装置、制御装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/32 20060101AFI20221206BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65G27/32
H02P5/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092102
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太
(72)【発明者】
【氏名】竹本 皓樹
【テーマコード(参考)】
3F037
5H572
【Fターム(参考)】
3F037AA04
3F037BA03
3F037CA02
3F037CB04
3F037CC03
5H572AA08
5H572DD02
5H572DD10
5H572EE03
5H572EE06
5H572GG02
5H572GG06
5H572HB09
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ13
5H572JJ17
5H572JJ22
5H572JJ23
5H572JJ24
5H572JJ25
5H572KK05
5H572LL01
5H572LL33
5H572LL50
(57)【要約】
【課題】振動モータの位相を検出することなく、トラフを所定の振動角に制御して被搬送物を搬送すること可能な振動搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】振動搬送装置100のトラフ50には、加速度センサ60が取り付けられている。振動搬送装置100が備える制御部12は、加速度センサ60により検出された物理量に基づいて、トラフ50が振動するときの角度である振動角推定値を算出し、振動角推定値を目標角度に近づけるべく、第1振動モータ30の回転速度、及び第2振動モータ31の回転速度の少なくともいずれかを第1,第2インバータ回路20,21に調整させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動することで被搬送物を所定の搬送方向に搬送するトラフと、
回転軸に対して偏心した偏心体を回転させることで、前記トラフが振動するための加振力を前記トラフに加える振動モータと、
前記振動モータを回転駆動させる駆動部と、
前記駆動部による前記振動モータの回転を制御する制御部と、
前記トラフに取り付けられており、当該トラフの振動に伴う加速度、速度及び位置変化の少なくともいずれかである物理量を検出するセンサと、を備え、
前記振動モータは少なくとも第1振動モータと第2振動モータとがあり、前記第1振動モータと前記第2振動モータとは、互いの前記回転軸を、水平方向のうち前記搬送方向と交差する方向に向けて前記トラフに取り付けられており、前記第1振動モータにおける前記回転軸の回転方向は、前記第2振動モータにおける前記回転軸の回転方向と逆方向であり、
前記制御部は、
前記センサにより検出された前記物理量に基づいて、前記トラフが振動するときの角度である振動角推定値を算出し、
前記振動角推定値を目標角度に近づけるべく、前記第1振動モータの回転速度、及び前記第2振動モータの回転速度の少なくともいずれかを前記駆動部に調整させる振動搬送装置。
【請求項2】
前記センサは、水平方向での前記物理量である第1物理量と、垂直方向での前記物理量である第2物理量と検出し、
前記制御部は、前記第1物理量と前記第2物理量とに基づいて、前記振動角推定値を算出する請求項1に記載の振動搬送装置。
【請求項3】
前記第1振動モータと前記第2振動モータとは、前記トラフにおける、前記搬送方向での前記トラフの重心の両側に取り付けられており、
前記センサは、前記トラフにおける、前記搬送方向での前記第1振動モータと前記第2振動モータとの間に取り付けられている請求項1又は2に記載の振動搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、
第1速度指令値に基づいて、前記第1振動モータの回転速度を前記駆動部に制御させ、かつ第2速度指令値に基づいて、前記第2振動モータの回転速度を前記駆動部に制御させ、
前記振動角推定値と前記目標角度との差分に基づいて、前記第1速度指令値を補正し、
前記振動角推定値を前記目標角度に近づけるべく、補正後の前記第1速度指令値に基づいて、前記第1振動モータの回転速度を前記駆動部に調整させる請求項1~3のいずれか一項に記載の振動搬送装置。
【請求項5】
振動することで被搬送物を搬送方向に搬送するトラフと、回転軸に対して偏心した偏心体を回転させることで、前記トラフが振動するための加振力を前記トラフに加える振動モータと、前記振動モータを回転駆動させる駆動部と、を備える振動搬送装置に適用される制御装置であって、
前記振動モータは少なくとも第1振動モータと第2振動モータとがあり、前記第1振動モータと前記第2振動モータとは、互いの前記回転軸を、水平方向のうち前記搬送方向と交差する方向に向けて前記トラフに取り付けられており、前記第1振動モータにおける前記回転軸の回転方向は、前記第2振動モータにおける前記回転軸の回転方向と逆方向であり、
センサにより検出された前記トラフの振動に伴う物理量に基づいて、前記トラフが振動するときの角度である振動角推定値を算出し、前記物理量は、前記トラフにおける加速度、速度及び位置変化の少なくともいずれかであり、
前記振動角推定値を目標角度に近づけるべく、前記第1振動モータの回転速度、及び前記第2振動モータの回転速度の少なくともいずれかを前記駆動部に調整させる制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフを振動させて被搬送物を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの振動モータの回転によりトラフを振動させて、トラフに供給された被搬送物を搬送する振動搬送装置が記載されている。振動モータは、回転軸に対して偏心する偏心体を有しており、偏心体が回転することで、トラフに対して加振力を与えることができる。特許文献1では、2つの振動モータから検出された位相差を用いて各振動モータの偏心体における機械角が同期する位相を調整することで、トラフの振動角を制御できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11-511106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動搬送装置において、振動モータにおける偏心体の位相差を用いて振動角を制御する構成では、例えば、トラフに対する外乱に起因して、位相差と振動角との間の関係が変化し、トラフの振動角を所望とする角度に制御できない場合がある。また、振動モータの位相を検出するためのセンサが必要となるため、振動モータの構成が複雑化することも懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、振動モータの位相を検出することなく、トラフを所定の振動角に制御して被搬送物を搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、振動することで被搬送物を所定の搬送方向に搬送するトラフと、回転軸に対して偏心した偏心体を回転させることで、トラフが振動するための加振力をトラフに加える振動モータと、振動モータを回転駆動させる駆動部と、駆動部による振動モータの回転を制御する制御部と、トラフに取り付けられており、トラフの振動に伴う加速度、速度及び位置変化の少なくともいずれかである物理量を検出するセンサと、を備える振動搬送装置に関する。振動搬送装置が備える振動モータは少なくとも第1振動モータと第2振動モータとがあり、第1振動モータと第2振動モータとは、互いの回転軸を、水平方向のうち搬送方向と交差する方向に向けてトラフに取り付けられており、第1振動モータにおける回転軸の回転方向は、第2振動モータにおける回転軸の回転方向と逆方向である。制御部は、センサにより検出された物理量に基づいて、トラフが振動するときの角度である振動角推定値を算出し、振動角推定値を目標角度に近づけるべく、第1振動モータの回転速度、及び第2振動モータの回転速度の少なくともいずれかを駆動部に調整させる。
【0007】
上記構成の振動搬送装置では、トラフを振動させるための加振力を与える振動モータは、少なくとも第1振動モータと第2振動モータとがあり、第1振動モータと第2振動モータとは、互いの回転軸を搬送方向と交差する方向のうち同一方向に向けた状態でトラフに取り付けられている。制御部は、センサにより検出された物理量に基づいて、トラフが振動するときの角度である振動角推定値を算出する。制御部は、算出された振動角推定値を目標角度に近づけるべく、第1振動モータの回転速度、及び第2振動モータの回転速度の少なくともいずれかを駆動部に調整させる。これにより、トラフの物理量から算出された振動角推定値に基づいて、第1振動モータの偏心体と第2振動モータの偏心体とが同じ機械角となるときの位相が調整され、トラフの振動角を目標角度に近づけることができる。その結果、振動モータの位相を検出することなく、トラフを所定の振動角に制御して、被搬送物を搬送することができる。
【0008】
本発明は、種々の形態により実現することが可能であり、振動搬送装置の発明以外にも、振動搬送装置に適用される制御装置の発明としても実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動モータの位相を検出することなく、トラフを所定の振動角に制御して、被搬送物を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】振動搬送装置の構成図。
図2】振動角の制御を説明する図。
図3】振動角を制御する手順を説明するフローチャート。
図4】振動角推定値の算出方法を説明する図。
図5】振動角推定値の算出方法を説明する図。
図6】第2実施形態に係る振動搬送装置の構成図。
図7】第3実施形態に係る振動搬送装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態係に係る振動搬送装置を、図面を参照しつつ説明する。以下では、振動搬送装置が設置される設置面と水平な方向を水平方向D1とし、重力が加わる方向を垂直方向D2とする。垂直方向D2は、水平方向D1に直交する方向でもある。図1において、水平方向D1は、右側を正とし、左側を負と定義する。振動搬送装置により搬送される被搬送物としては、例えば所定サイズの粉粒体(食品、薬品、工業用製品の材料、石灰など)である。
【0012】
振動搬送装置100は、コントローラ10と、インバータ回路20,21と、振動モータ30,31と、トラフ50と、加速度センサ60と、防振ばね70とを主に備えている。
【0013】
トラフ50は、振動することにより、被搬送物を搬送方向D3で搬送する。トラフ50は、搬送方向D3におけるいずれかの方向D31,D32から見た場合に、凹状の断面形状を有する部位である。具体的には、トラフ50は、底壁51と、底壁51の両端から垂直方向D2に延びる一対の側壁52とを有しており、両側壁52と底壁51とにより凹状の断面形状を形成している。
【0014】
本実施形態では、トラフ50の底壁51は、振動搬送装置100の停止時において、水平方向D1と平行な向きで保持されているため、搬送方向D3は、水平方向D1と平行な向きである。搬送方向D3は、左側D31を上流とし、右側D32を下流とする場合の向きを正方向とし、右側D32を上流とし、左側D31を下流とする場合を負方向としている。また、トラフ50において、一方の側壁52から他方の側壁52までを結ぶ方向を幅方向とも記載する。幅方向は、水平方向D1と平行な方向であり、かつ搬送方向D3と直交する方向でもある。
【0015】
トラフ50は、防振ばね70を介して、設置場所に吊り下げられた状態で設置されている。具体的には、トラフ50は、搬送方向D3での両側にフック部を有しており、このフック部により防振ばね70の一方の端と係合されている。防振ばね70における他方の端は、設置場所における不図示の取付け部に係合されている。これにより、トラフ50を設置場所において、振動可能に設置させることができる。これ以外にも、振動搬送装置100は、防振ばね70を下側から支持する脚部を有し、トラフ50を防振ばね70の上に配置することで、トラフを振動可能に保持する構成であってもよい。
【0016】
トラフ50は、底壁51において、被搬送物が供給される面とは反対の下面側に、振動モータ30,31を取り付けるための部位であるモータ取付け部53を備えている。モータ取付け部53は、搬送方向D3において、トラフ50の底壁51のうち、トラフ50の重心の両側にそれぞれ位置している。各モータ取付け部53には、振動モータ30,31が、回転軸の延びる方向を搬送方向D3と交差する方向(即ち、トラフの幅方向)に向けた状態で取付けられている。具体的には、2つの振動モータ30,31は、回転軸が延びる方向を、幅方向において同一方向に向けた状態でモータ取付け部53に取り付けられている。
【0017】
2つの振動モータのうち、回転軸の先端が向く方向で見た場合(即ち、図1で示す向き)に、搬送方向D3の左側D31にある振動モータを第1振動モータ30と称し、搬送方向D3の右側D32にある振動モータを第2振動モータ31と称す。
【0018】
本実施形態では、第1振動モータ30と第2振動モータ31とは、ACモータであり、回転軸にはこの回転軸の延びる方向と交差する方向に偏心するアンバランスウェイト32,33を有している。具体的には、第1振動モータ30と第2振動モータ31において、アンバランスウェイト32,33は、幅方向に延びる回転軸の両端に取り付けられている。第1,第2振動モータ30,31の回転に伴い、アンバランスウェイト32,33が回転することで、トラフ50には、回転軸から外側に向けた遠心力が加振力として加えられる。本実施形態では、アンバランスウェイト32,33が偏心体の一例である。
【0019】
搬送方向D3において、トラフ50のモータ取付け部53の間には、加速度センサ60が取り付けられている。加速度センサ60は、トラフ50の振動に伴う水平方向D1及び垂直方向D2での加速度の変化を加速度検出値A1,A2として検出する。具体的には、加速度センサ60は、水平方向D1において、トラフ50の重心から近い位置に取り付けられており、トラフ50の振動に伴うピッチ振動の影響を受けにくい状態でトラフ50の加速度を検出することができる。本実施形態では、加速度検出値A1,A2により示される値が、トラフ50の振動に伴う物理量の一例である。
【0020】
コントローラ10は、操作部11と、制御部12と、を備えており、トラフ50とは別々に設置場所に設置されている。操作部11は、作業者による操作を受付け、受付けた操作に応じた信号を出力するユーザインタフェースである。操作部11には、振動搬送装置100に不図示のメイン電源を投入する操作を受付ける電源投入ボタン、振動搬送装置100の搬送を開始させる操作を受付ける開始ボタン、搬送を停止させる操作を受付ける停止ボタンを有している。これ以外にも、操作部11は、被搬送物の種別の変更操作を受付ける変更キーを有していてもよい。本実施形態では、コントローラ10が制御装置の一例である。
【0021】
制御部12は、CPU、ROM、RAM等を備えるプログラマバブルコントローラである。制御部12は、操作部11からの信号、及び加速度センサ60により検出された加速度検出値A1,A2が入力される。制御部12の出力ポートは、インバータ回路20,21の入力ポートに接続されている。
【0022】
制御部12は、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、指令値設定部13、振動角算出部14、偏差算出部15、補正値算出部16、指令値補正部17の各機能を実現する。制御部12は、上記した各部13~17の機能により、第1,第2振動モータ30,31の回転速度を、所定の速度指令値に制御する速度制御を行う。具体的には、制御部12は、第1振動モータ30の回転速度を制御するための第1速度指令値Ts1を第1インバータ回路20に出力し、第2振動モータ31の回転速度を制御するための第2速度指令値Ts2を第2インバータ回路21に出力する。制御部12における各部の詳細については後述する。
【0023】
第1,第2振動モータ30,31の回転が左周りに制御される場合、第1,第2振動モータ30,31の位相を、0°を基準として、360°までの範囲で定義する。一方、第1,第2振動モータ30,31の回転が、右回りに制御される場合、第1,第2振動モータ30,31の位相を、-360°を基準として、0°までの範囲で定義する。
【0024】
第1インバータ回路20は、第1振動モータ30に対して、第1速度指令値Ts1に応じた回転速度で回転させるための第1駆動信号Sg1を出力する。第2インバータ回路21は、第2振動モータ31に対して、第2速度指令値Ts2に応じた回転速度で回転させるための第2駆動信号Sg2を出力する。第1,第2駆動信号Sg1,Sg2は、第1,第2速度指令値Ts1,2に応じたデューティ比を有するパルス信号である。図1では、第1,第2インバータ回路20,21は、コントローラ10とは異なる装置として記載しているが、コントローラ10が、第1,第2インバータ回路20,21を有していてもよい。
【0025】
第1、第2速度指令値Ts1、Ts2により、第1振動モータ30と第2振動モータ31とは互いに逆回転となるように駆動する。被搬送物を搬送方向D3における左側D31から右側D32(即ち、正方向)に搬送する場合、トラフの振動角が0°から90°の範囲となるようにアンバランスウェイト32、33の位相角を調整する。一方、被搬送物を搬送方向D3における右側D32から左側D31(即ち、負方向)に搬送する場合、トラフ50の振動角が90°から180°の範囲となるようにアンバランスウェイト32、33の位相角を調整する。搬送速度をゼロとする場合、トラフ50の振動角を90°または0°とする。
【0026】
次に、図2を用いて、トラフ50の振動方向を示す振動角Ywと、アンバランスウェイト32,33の機械角との関係を説明する。図2は、第1,第2振動モータ30,31の側方側(即ち、アンバランスウェイト32,33側)から見た場合の図である。第1,第2振動モータ30,31において、アンバランスウェイト32,33は、回転軸の両端に取り付けられている。しかし、図2では、説明を容易にするため、第1,第2振動モータ30,31には、片方のアンバランスウェイトのみを示している。図2では、被搬送物を正方向に搬送させる場合の振動角Ywを示している。第1振動モータ30において、アンバランスウェイト32の機械角を「Ym1」として示し、第2振動モータ31において、アンバランスウェイト33の機械角を「Ym2」として示している。
【0027】
アンバランスウェイト32,33の回転により、トラフ50には、加振点Pを基準として、振動角Ywに向く加振力Fが加わる。ここで、加振点Pは、トラフ50において、アンバランスウェイト32,33の回転により、加振力Fが加わる位置として仮想的に定義された位置である。加振力Fは、アンバランスウェイト32,33それぞれの回転により生じた力を合成した合成力である。第1振動モータ30と第2振動モータ31とが、トラフ50における、搬送方向D3でのトラフ50の重心の両側に取り付けられていることで、加振力Fは、トラフ50に対して、搬送方向D3における第1振動モータ30と第2振動モータ31との間に仮想的に存在する加振点Pからの力として示すことができる。
【0028】
各アンバランスウェイト32,33の機械角Ymが同期する場合に、アンバランスウェイト32,33の回転により生じる力の向きが同じになるため、加振力Fは最大となり、このときの機械角Ymを振動角Ywと定義している。言い換えれば、振動角Ywは、第1,第2振動モータ30,31の回転によりトラフ50に加わる加振力Fが最大となる位相とも言える。本実施形態では、第1振動モータ30と第2振動モータ31とは、回転方向が逆方向であるが、右周りと左周りとで位相の範囲の定義が異なるため、同じ角度となる。一方で、図2で示す円座標上で、各アンバランスウェイト32,33の機械角Ymが180°異なる場合に、アンバランスウェイト32,33の回転により生じる力の向きが逆方向となるため、加振力Fは最小となる。
【0029】
振動搬送装置100は、振動角Ywを任意の角度で制御して、被搬送物を搬送することができる。例えば、振動搬送装置100は、異なる駆動モードで被搬送物を搬送する場合に、駆動モードに応じた振動角Ywで、被搬送物を搬送する。例えば、駆動モードの一例である「搬送モード」は、振動搬送装置100において、被搬送物を搬送することを主目的に、トラフ50を振動させるモードである。「滞留モード」は、例えば、振動搬送装置100において、被搬送物を乾燥させることを主目的に、トラフ50を振動させるモードである。具体的には、「滞留モード」では、振動角Ywを、大きくすることで、被搬送物が流れる速度を「搬送モード」よりも遅くしている。これ以外にも、振動搬送装置100は、被搬送物の種別に応じた振動角Ywを設定することで、被搬送物を搬送することができる。
【0030】
コントローラ10は、アンバランスウェイト32,33が同期する位相を調整することで、トラフ50の振動角Ywを任意の角度に調整する。例えば、図2では、第1振動モータ30の回転速度を、第2振動モータ31の回転速度よりも遅らせることにより、アンバランスウェイト32,33が同期する機械角Ymを0°以上かつ90°以下の範囲で大きくし、調整後の振動角Ywaを調整前の振動角Ywよりも大きくしている。一方で、第1振動モータ30の回転速度を、第2振動モータ31の回転速度よりも速めることにより、アンバランスウェイト32,33が同期する機械角Ymを0°以上かつ90°以下の範囲で小さくし、振動角Ywを調整前の振動角Ywよりも小さくすることができる。
【0031】
振動角Ywを、任意の角度に調整するために、第1,第2振動モータ30,31におけるアンバランスウェイト32,33の位相差を検出して、検出された位相差を用いて振動角Ywを調整することが考えられる。しかし、トラフ50に対する外乱に起因して位相差と振動角Ywとの間の関係が変化することで、調整後の振動角Ywが、所望とする角度指令値Tyに制御できない場合がある。また、第1,第2振動モータ30,31の位相を検出するため、第1,第2振動モータ30,31の構成が複雑化することも懸念される。そこで、本実施形態では、制御部12は、加速度センサ60により検出されたトラフ50の物理量を用いて、振動角Ywを角度指令値Tyに制御するようにしている。
【0032】
次に、図3図4図5を用いて、制御部12により、振動角Ywを調整する手順を説明する。図3で示す処理は、操作部11を介して、被搬送物の搬送を開始する操作を受付けたことを契機に、制御部12により実行される処理であり、主体は制御部12である。
【0033】
ステップ10(以下、ステップをSとも記載する)では、停止条件が成立したか否かを判断する。例えば、振動搬送装置100における全ての駆動モードが終了した場合や、作業者が操作部11を操作して、振動搬送装置100を停止させた場合に、停止条件が成立する。S10を否定判定すると、S11に進む。
【0034】
S11では、振動角Ywの制御を行うか否かを判断する。コントローラ10は、各モードに応じたプログラムをバッジ単位で実行しているため、振動角の制御を行う場合、現在実行中の駆動モードを判断することが可能である。これ以外にも、コントローラ10は、カウンターの計時時間に応じて、現在の駆動モードを判断するものであってもよい。S11を肯定判定する場合、S12に進む。
【0035】
S12では、指令値設定部13は、第1,第2振動モータ30,31の回転速度を制御するための指令値を設定する。指令値設定部13は、例えば、上述した駆動モードや、被搬送物の種別に応じて、第1,第2振動モータ30,31の回転速度を制御するための角度指令値Ty、第1速度指令値Ts1、第2速度指令値Ts2を設定することができる。角度指令値Tyは、トラフ50の振動角Ywの目標角度である。本実施形態では、第1速度指令値Ts1の初期値は、第2速度指令値Ts2に対して回転方向が逆であり、絶対値が同じ値である。
【0036】
S13では、加速度センサ60により検出された加速度検出値A1,A2から、トラフ50の加速度を示す合成加速度A3を算出する。図4に示すように、ある位相でのトラフ50の加速度の大きさは、水平方向D1でのトラフ50の加速度検出値A1と、垂直方向D2でのトラフ50の加速度検出値A2とを合成した合成加速度A3の大きさとして算出することができる。具体的には、合成加速度A3の大きさは、下記(式1)を用いて、算出することができる。
|A3|=(A1+A2(1/2) … (式1)
本実施形態では、S13で設定された第1速度指令値Ts1から振動モータにおける回転の1周期(=1/Ts1)を算出する。そして、算出された1周期での合成加速度A3の大きさを順次取得する。
【0037】
S14では、振動角算出部14は、振動角推定値Yeを算出する。振動角推定値Yeは、トラフ50の振動角Ywを推定した値である。図5に示すように、合成加速度A3は、トラフ50に加わる合成加振力により変化する。ここで、振動角Ywは、トラフ50に加わる合成加振力が最大であるときの角度であるため、合成加速度A3の絶対値が最大となるときの角度が、振動角Ywとなる。そのため、例えば、振動角推定値Yeは、S15で取得された1周期での合成加速度A3のうち、最大となる合成加速度A3での加速度検出値A1,A2を用いて、下記(式2),(式3)により算出することができる。
Ye=arctan(A2/A1) … (式2)
Ye=180-arctan(A2/A1) … (式3)
【0038】
上記(式2)は、水平方向D1での加速度検出値A1と垂直方向D2での加速度検出値A2とが同じ符号(即ち、同相)となる場合の振動角推定値Yeの算出式であり、振動角推定値Yeは、0°以上、90°以下の値として算出される。上記(式3)は、水平方向D1での加速度検出値A1と垂直方向D2での加速度検出値A2とが異なる符号(即ち、逆相)となる場合の振動角推定値Yeの算出式であり、振動角推定値Yeは、90°よりも大きく、かつ180°以下の値として算出される。上記(式2),(式3)以外にも、「Ye=arcsin(A2/A3)」や、「Ye=arccos(A1/A3)」を用いて、振動角推定値Yeを算出するものであってもよい。
【0039】
S15では、偏差算出部15は、S12で設定された角度指令値Tyと、S14で算出された振動角推定値Yeとの差(Ty-Ye)を示す角度偏差を算出する。角度偏差は、算出された振動角推定値Yeが、角度指令値Tyからどれだけ乖離しているかを示す値である。
【0040】
S16では、補正値算出部16は、S15で算出された角度偏差に応じた、速度補正値を算出する。速度補正値は、第1速度指令値Ts1に対する補正値である。補正値算出部16は、周知のPI制御(Proportional-Integral)制御により、補正後の第1速度指令値Ts1が、角度偏差をゼロに近づける値となるように、速度補正値を算出する。
【0041】
S16において、補正値算出部16は、PI制御に代えて、周知のP制御(比例制御)や、PID制御により、角度偏差から速度補正値を算出してもよい。
【0042】
S17では、指令値補正部17は、第1速度指令値Ts1に、S16で算出された速度補正値を加算することで、第1速度指令値Ts1を補正する。
【0043】
S18では、補正後の第1速度指令値Ts1を第1インバータ回路20に出力する。S19では、指令値設定部13により設定された第2速度指令値Ts2を、第2インバータ回路21に出力する。これにより、第1,第2振動モータ30,31は、トラフ50の振動角Ywが角度指令値Tyに近づくように、回転速度が調整される。
【0044】
S19の処理が終了すると、S10に戻る。S10を否定判定すると、S11に進み、振動角Ywの制御を行うか否かを判断する。振動角Ywの制御を継続する場合、S11を肯定判定し、S12~S19の処理を実行する。これにより、トラフ50の振動角Ywは、S12で設定された角度指令値Tyに制御される。
【0045】
S11を否定判定する場合、S18に進む。この場合、S18では、所定の第1速度指令値Ts1を第1インバータ回路20に出力する。S19では、所定の第2速度指令値Ts2を第2インバータ回路21に出力する。これにより、トラフ50の振動角Ywを強制的に制御することなく、トラフ50を振動させて被搬送物を搬送する。この場合、各アンバランスウェイト32,33の機械角は、第1,第2振動モータ30,31が発生させる引き込みトルクにより同期し、振動角Ywは所定の角度に収まる。その後、振動搬送装置100の停止条件が成立すると、S10を肯定判定し、図3に示す処理を終了する。
【0046】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
振動搬送装置100は、トラフ50における加速度を検出する加速度センサ60を備えている。制御部12は、加速度センサ60により検出されたトラフ50の加速度に基づいて、トラフ50が振動するときの角度である振動角推定値Yeを算出し、算出された振動角推定値Yeを角度指令値Tyに近づけるべく、第1振動モータ30の回転速度を第1インバータ回路20に制御させる。これにより、トラフ50の物理量から算出された振動角推定値Yeに基づいて、第1振動モータ30のアンバランスウェイト32と第2振動モータ31のアンバランスウェイト33とが同じ機械角Ymとなるときの位相が調整され、トラフ50の振動角Ywを目標角度に近づけることができる。その結果、第1,第2振動モータ30,31の位相を検出することなく、トラフ50を所定の振動角に制御して、被搬送物を搬送することができる。
【0047】
加速度センサ60は、水平方向D1での加速度を示す加速度検出値A1と、垂直方向D2での加速度を示す加速度検出値A2とに応じた値を、振動角推定値Yeとして算出する。これにより、振動角推定値Yeの算出精度を高めることができ、トラフ50の振動角Ywを精度よく制御することができる。
【0048】
第1振動モータ30と第2振動モータ31とは、トラフ50における、搬送方向D3でのトラフ50の重心の両側に取り付けられている。加速度センサ60は、トラフ50における、搬送方向D3での第1振動モータ30と第2振動モータ31との間に取り付けられている。これにより加速度センサ60は、トラフ50の重心から近い位置に取り付けられることで、ピッチ振動の影響を受けにくい状態で合成力による物理量を検出することができる。その結果、ピッチ振動に伴う、振動角推定値の算出精度の低下を抑制することができる。
【0049】
制御部12は、第1速度指令値Ts1に基づいて、第1振動モータ30の回転速度を第1インバータ回路20に制御させ、かつ第2速度指令値Ts2に基づいて、第2振動モータ31の回転速度を第2インバータ回路21に制御させる。制御部12は、振動角推定値Yeと角度指令値Tyとの差分に基づいて、第1速度指令値Ts1を補正し、振動角推定値を目標角度に近づけるべく、補正後の第1速度指令値に基づいて、第1振動モータ30の回転速度を第1インバータ回路20に調整させる。これにより、振動角推定値Yeを用いて第1速度指令値を調整するため、トラフの振動角を目標角度に精度よく近づけることができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0051】
第1実施形態では、制御部12は、振動角Ywを調整するために、第1速度指令値Ts1のみを補正した。これに代えて、制御部12は、振動角Ywを調整するために、第1速度指令値Ts1と第2速度指令値Ts2とを共に補正する。
【0052】
図6に示すように、本実施形態に係る制御部12では、補正値算出部16により算出された速度補正値は、第1指令値補正部17と、第2指令値補正部18とに入力される。第1指令値補正部17は、第1実施形態での指令値補正部17であり、図3のS17において、第1振動モータ30に対する第1速度指令値Ts1に、算出された速度補正値を加算することで、第1速度指令値Ts1を補正する。また、第2指令値補正部18は、S17において、第2振動モータ31に対する第2速度指令値Ts2に、算出された速度補正値を加算することで、第2速度指令値Ts2を補正する。なお、第1速度指令値Ts1と第2速度指令値Ts2とは、異なる方向であるため、例えば、第1速度指令値Ts1を減速側に補正される場合、第2速度指令値Ts2は加速側に補正される。
【0053】
図3のS18では、補正後の第1速度指令値Ts1を第1インバータ回路20に出力する。S19では、補正後の第2速度指令値Ts2を第2インバータ回路21に出力する。
【0054】
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第3実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0056】
第1実施形態では、第1,第2振動モータ30,31は、第1,第2インバータ回路20,21からの駆動信号により駆動した。これに代えて、本実施形態では、図7に示すように、第1,第2振動モータ30,31は、第1,第2サーボアンプ22,23からの駆動信号により駆動する。
【0057】
第1サーボアンプ22は、速度差算出部221と、駆動信号算出部222とを有している。速度差算出部221には、第1振動モータ30からの回転速度信号と、制御部12からの補正後の第1速度指令値Ts1とが入力される。本実施形態では、第1,第2振動モータ30,31は回転速度を示す回転速度信号を出力する。速度差算出部221は、第1速度指令値Ts1から回転速度信号を引いた偏差を算出する。駆動信号算出部222は、速度差算出部221から出力された偏差を0に近づけるべく、周知のPI制御により第1振動モータ30の駆動信号を生成する。第1サーボアンプ22により生成された駆動信号Sg3は、第1振動モータ30に出力され、第1振動モータ30を補正後の第1速度指令値Ts1に応じた回転速度で駆動させる。
【0058】
第2サーボアンプ23は、速度差算出部231と、駆動信号算出部232とを有している。速度差算出部231には、第2振動モータ31からの回転速度信号と、制御部12からの第2速度指令値とが入力され、第2速度指令値から回転速度信号を引いた偏差を算出する。駆動信号算出部232は、速度差算出部231から出力された偏差を0に近づけるべく、周知のPI制御により第2振動モータ31の駆動信号を生成する。第2サーボアンプ23により生成された駆動信号Sg4は、第2振動モータ31に出力され、第2振動モータ31を補正後の速度指令値に応じた回転速度で駆動させる。
【0059】
以上説明した本実施形態では、第1,第2振動モータ30,31をサーボアンプ22,23により駆動させる構成においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述した各実施形態では、物理量として、加速度センサ60により検出された加速度を用いて、振動角推定値Yeを算出した。これに代えて、制御部12は、トラフ50における、水平方向D1及び垂直方向D2での速度、又は変位量を用いて振動角推定値Yeを算出してもよい。この場合において、トラフ50には、速度を検出するための速度センサ、又は変位量を検出するための変位量センサが取り付けられている。そして、図3のS13で、合成加速度A3を算出することに代えて、トラフ50の振動に伴う速度又は変位量の合成値を算出する。そして、S14で、S13で取得された合成値を用いて、振動角推定値Yeを算出すればよい。
【0061】
上述した実施形態では、振動搬送装置100は、2つの振動モータにより、トラフ50を振動させて、被搬送物を搬送させた。これに代えて、振動搬送装置100は、3つ以上の振動モータにより、トラフ50を振動させて、被搬送物を搬送してもよい。
【0062】
制御部12は、第1振動モータ30及び第2振動モータ31と一体となった所謂モータコントローラであってもよい。この場合、制御部12は、コントローラ10に実装されておらず、第1,第2モータ30,31と一体となって、トラフ50のモータ取付け部53に取り付けられている。
【0063】
上述した実施形態では、第1,第2振動モータ30,31はACモータであった。これに代えて、第1,第2振動モータは、DCモータであってもよい。この場合において、インバータ回路に代えて、サーボアンプを備え、サーボアンプはコントローラ10から出力される信号に応じて、第1,第2振動モータ30,31に直流電圧の駆動信号を出力する。
【0064】
上述した実施形態では、第1,第2振動モータ30,31それぞれは、トラフ50の底壁51よりも下方に配置されていた。これに代えて、第1,第2振動モータ30,31それぞれは、トラフ50の底壁51よりも上方に配置されていてもよい。第1,第2振動モータ30,31のうち、一方がトラフ50の底壁51よりも下方に配置され、他方がトラフ50の底壁51よりも上方に配置されていてもよい。
【0065】
上述した実施形態では、制御部12は、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、指令値設定部13、振動角算出部14、偏差算出部15、補正値算出部16、指令値補正部17の各機能を実現した。これに代えて、制御部12は、上記各部11~17の機能を実現するハードウェア回路を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…コントローラ、12…制御部、20…第1インバータ回路、21…第2インバータ回路、30…第1振動モータ、31…第2振動モータ、50…トラフ、60…加速度センサ、100…振動搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7