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  • 特開-ダイアグシステム 図1
  • 特開-ダイアグシステム 図2
  • 特開-ダイアグシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184326
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ダイアグシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20221206BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01M17/007 H
B60R16/02 650J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092104
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】天野 あゆ
(57)【要約】
【課題】作業者に煩雑な作業を強いることなく、効率的にダイアグを実行するための技術を提供する。
【解決手段】ダイアグシステム100は、モータECU110と、HVECU140と、センサ群120が組み付けられる電動車両の異常診断を行う。モータECU110は、HVECU140またはセンサ群120のいずれかが組み付け中である場合には、ダイアグをマスクする。一方、モータECU110は、HVECU140及びセンサ群120の組み付けが終了している場合には、ダイアグを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御ユニットと、第2制御ユニットと、少なくとも1つ以上のセンサが組み付けられる電動車両の異常診断を行うダイアグシステムであって、
前記第1制御ユニットは、
前記電動車両の動作時に、必ず接続される前記第2制御ユニット及び前記1つ以上のセンサの組み付け状態を監視し、
前記第2制御ユニットまたは前記1つ以上のセンサの少なくともいずれかが組み付け中である場合には、ダイアグをマスクする一方、
前記第2制御ユニット及び前記1つ以上のセンサの組み付けが終了している場合には、前記ダイアグを実行する、ダイアグシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の自己診断を行うダイアグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車などの電動車両には、各種制御を行うためのECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる複数の制御ユニットが搭載されている。各ECUは、異常診断(いわゆるダイアグ)を実行し、ダイアグにより得られた異常診断の結果をダイアグ情報として各自のEEPROMなどに逐次記憶する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-185606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両工場などにおいては、組み付けるべき複数のECUの一部のECUのみが車両に組み付けられた状態(いわゆる、組み付け中の段階)で電源が投入される場合がある。このような段階で電源が投入されると、組み付け中のECU(例えば、モータECUなど)は、電源の投入に応じてダイアグを実行することになるが、この段階では、不要な異常ダイアグ(例えば、必要な部品が組み付けられていないことを起因とした異常発生など)を検出してしまう。
【0005】
従来は、都度、作業者がECUに書き込まれた不要な異常ダイアグの消去や要因確認などを行う必要があり、作業者に煩雑な作業を強いるとともに、作業に多くの時間を費やす必要があった。
【0006】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、作業者に煩雑な作業を強いることなく、効率的にダイアグを実行するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るダイアグシステムは、第1制御ユニットと、第2制御ユニットと、少なくとも1つ以上のセンサが組み付けられる電動車両の異常診断を行うダイアグシステムであって、第1制御ユニットは、電動車両の動作時に、必ず接続される第2制御ユニット及び1つ以上のセンサの組み付け状態を監視し、第2制御ユニットまたは1つ以上のセンサの少なくともいずれかが組み付け中である場合には、ダイアグをマスクする一方、第2制御ユニット及び1つ以上のセンサの組み付けが終了している場合には、ダイアグを実行することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業者に煩雑な作業を強いることなく、効率的にダイアグを実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る電動車両のダイアグシステムの概略構成を示す図である。
図2】マスク判断情報を例示した図である。
図3】マスク制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、車両用の制御装置の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0011】
A.本実施形態
(1)構成
図1は、本実施形態に係る電動車両のダイアグシステム100の概略構成を示す図である。
ダイアグシステム100は、例えば高電圧のエネルギーラインを有するハイブリッド車両などに搭載されており、モータ用電子制御ユニット(モータECU)110と、センサ群120と、その他の電子制御ユニット(その他ECU)130と、ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)140とを備えて構成される。
【0012】
車両内には、多重通信バス等からなるLAN150が構築されており、モータECU110、センサ群120、その他ECU130、HVECU140は、LAN150を介して相互に接続されている。
【0013】
本実施形態では、車両工場において、電動車両に対する上記各部品の組み付けが行われる際に、不要なダイアグ(異常診断)を実行しないように、適切なタイミングでダイアグを無効化(以下、ダイアグマスク)することを可能とする。なお、以下の説明では、HVECU140の制御のもと、モータECU110が適切なタイミングでダイアグマスクする場合を想定する。
【0014】
モータECU(第1制御ユニット)110は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、各種プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、ダイアグマスクの要否を判断するためのマスク判断情報MIを記憶するメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。モータECU110のメモリに記憶されるマスク判断情報MIについては、後述する。
【0015】
モータECU110には、電動車両に搭載された複数のモータを駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。また、モータECU110からは、インバータ(図示略)を構成するスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU110は、HVECU140と通信ポートを介して接続されており、HVECU140からの制御信号(例えば、モータの要求トルクをあらわす信号など)に基づき、各モータを駆動制御するとともに、必要に応じて各モータの駆動状態に関するデータをHVECU140に出力する。
【0016】
センサ群120は、本車両のモータシステムの動作時に、必須で接続される少なくとも1つ以上のセンサであり、モータの回転角度を検出するセンサや、モータ電流を検出するセンサなどによって構成されている。センサ群120によって検出される回転角度やモータ電流などは、モータECU120やHVECU140などに出力される。
【0017】
その他ECU130は、例えば電動車両に搭載されたDC/DCコンバータを制御するDC/DC-ECUや、エンジンを制御するエンジンECUなどによって構成されている。その他ECU130もモータECU110と同様、HVECU140と通信ポートを介して接続されており、HVECU140との間で各種データやコマンドの授受が可能となっている。
【0018】
HVECU(第2制御ユニット)140は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU140は、モータECU110をはじめとして、本車両の動作時に、必須で接続される制御ユニットである。HVECU140には、電動車両に搭載されている様々なセンサからの信号が入力される。HVECU140は、上述したように、モータECU110やセンサ群120、その他ECU130と通信ポートを介して接続されており、モータECU110やセンサ群120、その他ECU130との間で各種制御信号やデータを授受することが可能となっている。
【0019】
図2は、モータECU110のメモリに格納されているマスク判断情報MIを例示した図である。
マスク判断情報MIは、モータECU110の状態パターンと、ダイアグマスクの要否との組み合わせを示す情報であり、図2では3つのパターンが示されている。
【0020】
パターン1は、モータECU110が組み付けられ、電源が投入されたにもかかわらず、他の部品(例えば、センサ群120やHVECU140など)との間で全く通信が行われていない状態(=組み付け中(通信未開始))を示す。この場合、モータECU110は、不要なダイアグを回避するために、ダイアグマスクは必要(要)と判断する。
【0021】
パターン2は、モータECU110に電源が投入され、他の部品との間で通信が開始された後に、何等かの異常(例えば、通信相手の部品が抜かれるなど)が生じて正常終了できなかった状態(=組み付け中(異常終了))を示す。この場合も、モータECU110は、不要なダイアグを回避するために、ダイアグマスクは必要(要)と判断する。
【0022】
パターン3は、モータECU110に電源が投入され、他の部品との間で通信が開始された後に、正常終了できた状態(=組み付け終了(正常終了))を示す。この場合は、本車両の動作に必要な全ての部品の組み付けが終了していることから、モータECU110によるダイアグの実行が必要となる。よって、モータECU110は、ダイアグマスクは不要(否)と判断する。
【0023】
モータECU110は、メモリに格納されているマスク判断情報MIを参照し、現時点での自身の状態パターンが、パターン1~パターン3のいずれに該当するかを把握する。詳述すると、モータECU110は、電動車両に対する各部品(センサ群120やHVECU140など)の組み付け状態を監視することで、現時点での自身の状態パターンが、パターン1~パターン3のいずれに該当するかを把握する。そして、モータECU110は、把握した自身の状態パターンに基づき、適切なタイミングでダイアグマスクを実行する。以下、車両工場において、部品組み付けの際にモータECU110によって実行されるマスク制御処理について、図3を参照しながら説明する。
【0024】
(2)動作
図3は、マスク制御処理を示すフローチャートである。
モータECU110は、電動車両に対する部品の組み付けが開始されると(ステップS1)、メモリに格納されたマスク判断情報を参照し、モータECU110の状態パターンを把握する。そして、モータECU110は、把握した自身の状態パターンに基づき、ダイアグマスクが必要か否かを判断する(ステップS2)。
【0025】
<ダイアグマスクが必要な場合>
ステップS2において、モータECU110は、自身の状態パターンがパターン1やパターン2(すなわち、組付け中)に該当することから、ダイアグマスクが必要であると判断すると(ステップS2;YES)、ステップS3に進み、ダイアグマスクを実行する。
【0026】
作業者は、モータECU110のダイアグが無効化(マスク)された状態で、部品の組み付け作業を進めていく。一方、モータECU110は、各部品との接続、通信状況などを確認するなどして、部品の組み付けが終了したか否かを判断する(ステップS4)。
【0027】
モータECU110は、未だ組み付けが終了していないと判断した場合には(ステップS4;NO)、ステップS3に戻り、ダイアグマスクを継続する。
【0028】
一方、モータECU110は、組み付けが終了したと判断すると(ステップS4;YES)、ダイアグマスクを解除する(ステップS5)。そして、モータECU110は、組み付け後のダイアグを実行し(ステップS6)、処理を終了する。
【0029】
<ダイアグマスクが不要な場合>
ステップS2において、モータECU110は、自身の状態パターンがパターン3(すなわち、組み付け終了)に該当することから、ダイアグマスクは不要であると判断すると(ステップS2;NO)、ステップS6に進み、組み付け後のダイアグを実行し、処理を終了する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両工場などにおいて、電動車両に対する上記各部品の組み付けが行われる際に、不要なダイアグを実行しないように、適切なタイミングでダイアグマスクが実行される。これにより、不要な異常ダイアグ(すなわち、必要な部品が組み付けられていないことを起因とした異常発生など)の検出を未然に防ぐことができ、作業者に煩雑な作業を強いることなく、効率的にダイアグを実行することが可能となる。
【0031】
B.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【0032】
また、本実施形態では、マスク制御処理の対象として、モータECU110を例示したが、これに限る趣旨ではない。例えば、その他ECU130を構成するDC/DC-ECUなど、HVECU140によって制御される様々なECU(第1制御ユニット)に適用可能である。
【0033】
C.その他
本明細書において説明したマスク制御処理を実施するプログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、ダイアグシステム100を構成するコンピュータ(例えばモータECU110)に、上記プログラムをインストールすることができる。ここで、上記プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば、CD-ROM等の記録媒体であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
100…ダイアグシステム、110…モータECU、120…センサ群、130…その他ECU、140…HVECU、150…LAN、MI…マスク判断情報。
図1
図2
図3