(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184329
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】管理装置、管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221206BHJP
G09F 21/04 20060101ALI20221206BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20221206BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20221206BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20221206BHJP
【FI】
G06Q30/02 380
G09F21/04 C
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092108
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 要
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】車両のディスプレイに表示されたコンテンツについて通行人が視認したときに、通行人がそのコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう可能性を低減する「管理装置、管理システムおよび管理方法」を提供する。
【解決手段】管理サーバ1は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする11管理部を備え、あるコンテンツを視認した通行人が、後方の車両を利用して、そのコンテンツと同一のコンテンツを視認できるようにしている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツを表示可能なディスプレイが外装に設けられた車両を管理する管理装置であって、
一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする管理部を備える
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記管理部は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを所定時間以上、視認する通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記管理部は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該一の車両の後方の所定範囲内に存在する他の車両のそれぞれ、または、当該一の車両の後方の所定台数の他の車両のそれぞれのディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記管理部は、当該一の車両のディスプレイに表示された当該一のコンテンツを通行人が視認した視認時間および当該一の車両の車速に応じて、前記視認時間が短いほど前記所定範囲が大きくなるかまたは前記所定台数の値が大きくなるようにすると共に、前記車速が速いほど前記所定範囲が大きくなるかまたは前記所定台数の値が大きくなるようにする
ことを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記管理部は、前記車速が一定以上の場合には、当該一の車両の後方の他の車両のコンテンツを切り替えない
ことを特徴とする請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記管理部は、前記車速が一定以上であるため当該一の車両の後方の他の車両のコンテンツを切り替えない場合において、通行人の進行方向にデジタルサイネージが存在する場合、そのデジタルサイネージに当該一の車両のディスプレイに表示されていたコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記管理部は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が所定人数以上、存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項8】
前記管理部は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該一の車両の後方の他の車両であって、通行人により当該一のコンテンツが視認されたときの当該一の車両の位置に所定時間以内に到達し得る車両について、ディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項9】
前記管理部は、道路上の一定範囲内に複数の車両が存在しているときに、異なる複数の車両のディスプレイに表示されたコンテンツを異なる複数の通行人が視認している場合、各コンテンツについて、コンテンツのターゲットとコンテンツを視認する通行人とがどれだけマッチしているかの度合いを示すマッチ度を導出し、当該一定範囲内に存在する車両のディスプレイに、最もマッチ度の高いコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項10】
前記管理部は、道路上の一定範囲内に複数の車両が存在しているときに、異なる複数の車両のディスプレイに表示されたコンテンツを異なる複数の通行人が視認している場合、一の車両のディスプレイに表示されていた一のコンテンツを通行人が視認していたとして、通行人が当該一のコンテンツを視認したときに当該一の車両が位置していた場所に後方の他の車両が位置したときに、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項11】
前記管理部は、車両に搭載され、車外を撮影するカメラの撮影画像データの分析結果を取得することによって、或いは、撮影画像データを分析することによって車両のディスプレイに表示されたコンテンツを視認する通行人が存在するか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項12】
コンテンツを表示可能なディスプレイが外装に設けられた車両に搭載された車載装置と、前記車載装置とネットワークを介して通信可能な管理装置とを備える管理システムであって、
前記管理装置は、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるよう当該他の車両の前記車載装置に指示にする管理部を備える
ことを特徴とする管理システム。
【請求項13】
コンテンツを表示可能なディスプレイが外装に設けられた車両の管理方法であって、
管理装置の管理部が、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在することを判定するステップと、
前記管理装置の前記管理部が、このような通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにするステップとを含む
ことを特徴とする管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理システムおよび管理方法に関し、特に、コンテンツを表示可能なディスプレイが外装に設けられた車両を管理する管理装置、当該車両に搭載された車載装置と当該管理装置とを含む管理システムおよび当該管理装置による管理方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像(静止画でも動画でもよい)を表示可能なディスプレイ(一例として液晶ディスプレイ、有機ELパネル)が外装に設けられた車両が存在する。そして、この種の車両のディスプレイにコンテンツ(例えば広告)を表示した状態で道路を走行させ、通行人にコンテンツを提供することが行われている。この種の車両に関し、特許文献1には車両の周囲の環境を取得し、環境に応じてディスプレイ(車外用表示部)の表示内容を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、ディスプレイにコンテンツを表示した状態で道路を走行させ、通行人にコンテンツを提供する際に以下の課題があった。すなわち車両のディスプレイに表示されたコンテンツを通行人が視認し、興味を持った可能性があるにもかかわらず、通行人がコンテンツの内容を把握する前に車両が移動し通行人からコンテンツが見えなくなってしまい、結局、通行人がコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう事態が生じることがあった。このような事態が生じると、例えばコンテンツが広告の場合には、広告機会を損失することになり得る。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両のディスプレイに表示されたコンテンツについて通行人が視認したときに、通行人がそのコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明では、一の車両が走行し、かつ当該一の車両の後方で他の車両が走行しているときに、当該一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在する場合、当該他の車両のディスプレイに当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、通行人が一の車両のディスプレイに表示されたコンテンツを視認した場合、当該一の車両の後方の他の車両に、そのコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示される。このため通行人は、当該一の車両が移動した後も、当該一の車両の後方の車両を利用して、当該一の車両のディスプレイに表示されていたコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツを引き続き視認し内容を確認することができる。従って通行人がコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る管理システムの構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る管理システムを構成する各装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図10】第2対象状態の第1変形例の説明に利用する図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る管理サーバの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず本実施形態に係る管理サーバ1(特許請求の範囲の「管理装置」に相当)が管理の対象とする車両2(以下「対象車両2」という)について説明する。対象車両2は、その外装に対象車両ディスプレイ3(特許請求の範囲の「ディスプレイ」に相当)が設けられた車両である。対象車両ディスプレイ3は、画像(静止画でも動画でもよい)を表示可能な表示装置である。対象車両ディスプレイ3は、その画像表示領域が車外の通行人から視認できる態様で対象車両2の外装に設けられている。
【0010】
ディスプレイのタイプは何でもよく、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイを対象車両ディスプレイ3として機能させることができる。あるいは、対象車両2の外装の一部である窓ガラスを対象車両ディスプレイ3として利用し、車室内から窓ガラスに画像を投影して車外からその画像を視認できるようにしたプロジェクションタイプのディスプレイを採用してもよい。また対象車両ディスプレイ3が対象車両2に設けられる態様(位置や、向き、形状、大きさ等)は限定されるものではない。また対象車両2は、人間が運転して移動する車両に限られず、人間を乗せた状態(当然、乗せていなくてもよい)で自動運転を行う自動運転車両または人間を乗せずに自律的に走行する自律走行車両であってもよい。
【0011】
図1(A)は、対象車両2の一例を模式的に示す図である。
図1(A)の例では対象車両2はバンを有するトラックタイプの車両であり、バンの左側面の広い領域(外装)に対象車両ディスプレイ3が設けられている。
図1(A)では図示が省略されているもののバンの右側面にも対象車両ディスプレイ3が設けられている。対象車両ディスプレイ3の画像表示領域は外部に露出しており、車外の通行人から視認可能である。
【0012】
図1(A)で示すように、
図1(A)の対象車両2では、対象車両ディスプレイ3の下方であって、画像表示領域の前後方向の中央部にカメラ4が設けられている。カメラ4の意義については後述する。
図1(B)は、対象車両2の別の例を模式的に示す図である。
図1(B)の例では対象車両2は、セダンタイプの車両であり、ドアのサイドドアのドアパネル(外装)に対象車両ディスプレイ3が設けられている。ただし
図1で例示した2つの対象車両2はあくまで一例である。
【0013】
図2は本実施形態に係る管理システム5の構成例を示す図である。
図2で示すように管理システム5は、管理サーバ1と、複数の車載装置7と、複数のデジタルサイネージ8とを含んで構成されている。管理サーバ1、複数の車載装置7および複数のデジタルサイネージ8はそれぞれ、インターネット、電話網、その他の通信網を含むネットワークNに接続されている。
【0014】
管理サーバ1は、各種サービスを提供するサーバ装置である。
図2および後述する
図3では、管理サーバ1を1つのブロックとして表しているが、これは管理サーバ1が単一の装置で構成されていることを意味するものではなく、管理サーバ1は複数の装置で構成されていてもよく、所定のシステムの一部であってもよい。
【0015】
車載装置7は、対象車両2に搭載された装置である。車載装置7は、ネットワークNを介して管理サーバ1にアクセスする機能を備えている。車載装置7は、後述する処理を実行する専用機でなくてもよい。一例としてカーナビゲーション装置や、対象車両2に持ち込まれた携帯端末を車載装置7として機能させることができる。
【0016】
デジタルサイネージ8は、デジタルサイネージディスプレイ9を備え、設置場所に固定的に設けられた装置である。デジタルサイネージディスプレイ9は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プロジェクタ装置、その他の表示装置である。デジタルサイネージ8は、デジタルサイネージディスプレイ9に広告、ニュース、天気予報、その他のコンテンツを表示し、デジタルサイネージディスプレイ9を視認する者(例えば、デジタルサイネージ8の周辺を通行する通行人)にコンテンツを提供する。デジタルサイネージ8は、例えば路上に専用の装置として設けられ、また例えば屋内或いは屋外の物体(例えば建造物の外壁或いは内壁や、建造物の柱等)に取り付けられている。
【0017】
図3は、管理サーバ1、車載装置7およびデジタルサイネージ8の機能構成例を示すブロック図である。
図3で示すように管理サーバ1は、サーバ通信部10および管理部11を備えている。車載装置7は、車載装置通信部12および車載装置制御部13を備えている。デジタルサイネージ8は、デジタルサイネージ通信部14およびデジタルサイネージ制御部15を備えている。上記各機能ブロック10~15は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~15は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0018】
図3で示すように、管理サーバ1は記憶部として、サーバ記憶部20を備えている。車載装置7は記憶部として、車載装置記憶部21を備えている。デジタルサイネージ8は記憶部として、デジタルサイネージ記憶部22を備えている。
【0019】
管理サーバ1のサーバ通信部10は、所定の通信規格に従ってネットワークNに接続された各種装置と通信する。以下の説明では管理サーバ1によるネットワークNを利用した通信は、サーバ通信部10の機能により適切に行われるものとする。車載装置7の車載装置通信部12は、所定の通信規格に従ってネットワークNに接続された各種装置と通信する。以下の説明では車載装置7によるネットワークNを利用した通信は、車載装置通信部12の機能により適切に行われるものとする。デジタルサイネージ8のデジタルサイネージ通信部14は、所定の通信規格に従ってネットワークNに接続された各種装置と通信する。以下の説明ではデジタルサイネージ8によるネットワークNを利用した通信は、デジタルサイネージ通信部14により適切に行われるものとする。
【0020】
図3で示すように車載装置制御部13には、対象車両ディスプレイ3およびカメラ4のほか、車速検出ユニット25および位置方位検出ユニット26が接続されている。
図3では対象車両ディスプレイ3を1つのブロックとして表しているが、1つの対象車両2に2つ以上の対象車両ディスプレイ3が設けられてもよい。カメラ4についても同様である。
【0021】
カメラ4は、対象車両ディスプレイ3の画像表示領域に対向する所定領域を少なくとも撮影範囲に含む撮影装置である。画像表示領域に対向する所定領域は、対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認する通行人が存在し得る領域という観点で定められる領域である。
図1(A)で例示した対象車両2のカメラも、対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認する通行人が存在し得る領域を撮影することを目的として設けられている。
【0022】
車速検出ユニット25は、自車両の車速を検出し、車速を示す車速情報を所定周期で車載装置制御部13に出力する。車速検出ユニット25は、例えば車速パルスを検出するセンサとこのセンサの制御装置を備えるユニットであり、また例えば自車両の各種機構を制御するECUである。
【0023】
位置方位検出ユニット26は、GPSユニット、ジャイロセンサおよび加速度センサを備えている。位置方位検出ユニット26は、自車両の位置、自車両の相対的な方位および自車両に作用する加速度を示す自車両位置関連情報を所定周期で車載装置制御部13に出力する。本実施形態において自車両位置関連情報に含まれる車両(対象車両2)の位置は、緯度および経度によって表される地図上の位置である。以下、車両(対象車両2)の位置を特に「車両地図位置」という。
【0024】
デジタルサイネージ制御部15には、デジタルサイネージディスプレイ9が接続されている。
【0025】
さて上述の通り、対象車両2には1つ以上の対象車両ディスプレイ3が設けられており、対象車両2は道路を走行中、対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示することが可能である。なお対象車両2が道路を走行するとは、対象車両2が道路上で物理的に動いていることを意味するのではなく、道路上で規則に従って移動したり停止したりしている状態を意味する。また本実施形態において、対象車両ディスプレイ3に表示されるコンテンツとは、対象車両ディスプレイ3に表示される対象の総称を意味するではなく、対象車両ディスプレイ3に表示される対象をその内容に従って区別したときの1つ1つの対象を意味する。従って商品Aの広告のコンテンツ(実体は動画または静止画)と、商品Aとは異なる商品Bの広告のコンテンツとは、それぞれ独立した異なるコンテンツである。以下、対象車両ディスプレイ3に表示された状態のコンテンツを「表示コンテンツ」という場合があり、対象車両2の対象車両ディスプレイ3にコンテンツが表示されることを単に、「対象車両2に表示コンテンツが表示される」といった表現をする場合がある。1つのコンテンツは、例えば、商品、イベント、その他の事象の広告であり、また例えばニュース、天気予報、その他の有益な情報である。
【0026】
対象車両2が道路を走行中に対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示することは、通行人に対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認してもらい、通行人にコンテンツを提供することを目的として行われる。近年、MaaSの普及に伴って、各種の移動体(当然、車両を含む)を広告媒体として利用することの有効性に注目が集まっており、ディスプレイにコンテンツを表示した車両を走行させることは今後、ますます普及していくと考えられている。以下の説明では、対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示した状態で対象車両2が道路を走行することを「コンテンツ表示走行」という。
【0027】
まず、対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示するときの車載装置7の基本的な処理について説明する。対象車両ディスプレイ3へのコンテンツの表示を開始する際(以下、表示を開始しようとしているコンテンツを「開始コンテンツ」と表現する)、車載装置7の車載装置制御部13は、開始コンテンツのコンテンツIDを認識する。コンテンツIDとは、コンテンツを識別するための識別情報であり、コンテンツごとに一意な値が付与されている。次いで車載装置制御部13は、車載装置記憶部21に記憶された車載装置コンテンツデータベース28を参照する。
【0028】
車載装置コンテンツデータベース28とは、コンテンツごとにコンテンツIDと対応付けてコンテンツ関連データが登録されたデータベースである。コンテンツ関連データとは、車載装置制御部13が対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示するために必要な情報を含むデータである。コンテンツ関連データには少なくとも、コンテンツの画像ファイルが含まれている。画像ファイルはコンテンツが静止画の場合は静止画に関する所定フォーマットのファイルであり、コンテンツが動画像の場合は動画像に関する所定フォーマットのファイルである。
【0029】
車載装置コンテンツデータベース28を参照した後、車載装置制御部13は、車載装置コンテンツデータベース28において開始コンテンツのコンテンツIDと対応付けられたコンテンツ関連データを取得する。次いで車載装置制御部13は、取得したコンテンツ関連データに基づいて対象車両ディスプレイ3に開始コンテンツを表示する。
【0030】
以上の通り車載装置制御部13は、あるコンテンツを対象車両ディスプレイ3に表示する場合、車載装置コンテンツデータベース28を参照し、車載装置コンテンツデータベース28からそのコンテンツに対応するコンテンツ関連データを取得し、取得したコンテンツ関連データに基づいて対象車両ディスプレイ3にコンテンツを表示する。なお、あるコンテンツを対象車両ディスプレイ3に表示しているときに表示コンテンツを別のコンテンツに切り替える場合にも、車載装置制御部13は、同様の処理を行う。すなわち車載装置制御部13は、車載装置コンテンツデータベース28から当該別のコンテンツに対応するコンテンツ関連データを取得し、取得したコンテンツ関連データに基づいて表示コンテンツを当該別のコンテンツへと切り替える。
【0031】
次にコンテンツ表示走行中に車載装置7が実行する処理について、管理サーバ1の処理と共に説明する。コンテンツ表示走行中、車載装置7の車載装置制御部13は、所定周期で到来するタイミングごとに以下の処理を実行する。以下、一のタイミング(以下「注目タイミング」という)で車載装置制御部13が実行する処理について説明する。
【0032】
注目タイミングにおいて車載装置制御部13は、車速検出ユニット25から車速情報を入力する。ここで入力した車速情報は、注目タイミングにおける対象車両2の車速を示す情報である。
【0033】
更に注目タイミングにおいて車載装置制御部13は、位置方位検出ユニット26から自車両位置関連情報を入力する。ここで入力した自車両位置関連情報は、注目タイミングにおける対象車両2の車両地図位置、対象車両2の相対的な方位および対象車両2に作用する加速度を示す情報である。車載装置制御部13は、車載装置記憶部21に記憶された地図データ29を利用し、入力した自車両位置関連情報に基づいて、対象車両2が走行する道路のリンクIDおよび対象車両2の進行方向の絶対的な方位(以下「車両進行方位」という)を検出する。地図データ29とは道路網を構成するリンクとノードに関する情報を保有するデータベースである。
【0034】
更に注目タイミングにおいて車載装置制御部13は、通行人関連処理を実行する。以下、通行人関連処理について詳述する。上述した通り対象車両2にはカメラ4が設けられている。このカメラ4は、対象車両2の表示コンテンツを視認する通行人が存在し得る領域を少なくとも撮影範囲に含んでいる。通行人関連処理において車載装置制御部13は、カメラ4から撮影画像データを入力し、撮影画像データを分析して、対象車両ディスプレイ3を視認する通行人の有無を判別する。
【0035】
以下の通行人関連処理についての説明では、説明の簡単のため1台のカメラ4から入力する撮影画像データに基づいて車載装置制御部13が実行する処理について説明する。従って、カメラ4が複数台設けられている場合には、車載装置制御部13は、カメラ4ごとに以下の処理を実行する。またカメラ4は、
図1(A)で例示した対象車両2のように、対象車両ディスプレイ3の画像表示領域の幅方向の中央部において、当該画像表示領域が対向する向きに向かって撮影を行う(つまり対象車両ディスプレイ3の画像表示領域の向きと、カメラ4の光軸の向きとが同じ)ものとする。
【0036】
図4は、撮影画像データの一例を模式的に示す図である。
図4を用いて対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認している通行人の有無を判別する処理について詳述すると、車載装置制御部13は、画像処理(特に顔認識処理)により撮影画像データに人間の顔の画像(以下「顔画像」という)が記録されているか否かを判別する。顔画像が1つも記録されていない場合、車載装置制御部13は、対象車両ディスプレイ3を視認している通行人は存在しないと判定する。一方、1つ以上の顔画像が記録されている場合、車載装置制御部13は、顔画像のそれぞれについて、顔画像を囲む矩形の枠(以下、「顔枠」という)の面積が一定以上であるか否かを判別する。
図4の符号4Rは顔枠を示している。この判別は、対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツの視認が困難な程度に対象車両2から離れている通行人が、コンテンツを視認していると判定されることを排除するための処理であり、実行されなくてもよい。
【0037】
顔枠の面積が一定以上の顔画像が1つも存在しない場合、車載装置制御部13は、表示コンテンツを視認している通行人は存在しないと判定する。一方、顔枠の面積が一定以上の顔画像が1つ以上存在する場合、車載装置制御部13は、顔枠の面積が一定以上の顔画像のそれぞれについて、顔画像が示す顔がカメラ4を向いているか否かを判別する。本例では顔がカメラ4を向いている場合、顔が対象車両ディスプレイ3の画像表示領域(=表示コンテンツ)に向いているとみなすことができる。
図4の例では顔画像G41はカメラ4を向いている一方、顔画像G42はカメラ4を向いていない。顔画像が示す顔がカメラ4を向いているか否かの判別は、顔画像に対する画像処理による分析のほか、顔画像を含む身体の画像を対象とした画像処理による骨格検出や姿勢検出を行い、その検出結果を利用して行うことができる。
【0038】
カメラ4を向いた顔を示す顔画像が1つも存在しない場合、車載装置制御部13は、表示コンテンツを視認している通行人は存在しないと判定する。一方、カメラ4を向いた顔を示す顔画像が1つ以上、存在する場合、車載装置制御部13は、カメラ4を向いた顔を示す顔画像のそれぞれに対応する通行人のそれぞれについて、表示コンテンツを視認していると判定し、コンテンツを視認する通行人が存在すると判定する。以下、カメラ4を向いた顔を示す顔画像に対応する通行人を「視認判定通行人」という。
【0039】
以上の通り本実施形態では車載装置制御部13は、撮影画像データを対象とした画像処理による分析の結果、顔が対象車両ディスプレイ3の画像表示領域を向いていると判定した通行人を、コンテンツを視認する通行人と判定している。なお、コンテンツを視認する通行人を判定する処理は例示した処理に限られない。例えば車載装置制御部13が、ある顔画像が示す顔の目による視線が対象車両ディスプレイ3の画像表示領域を向いているかを画像処理によって判別し、向いている場合にその顔画像に対応する通行人がコンテンツを視認していると判定する構成でもよい。
【0040】
また撮影画像データにおいて顔画像が示す顔がどの向きに向いている場合に、対象車両ディスプレイ3の画像表示領域を向いていると判定するかは、カメラ4が設けられている位置、カメラ4の向き、その他の事情に考慮して適切に設定されるべき事項である。
【0041】
表示コンテンツを視認する通行人が存在しないと判定した場合、車載装置制御部13は、通行人関連処理を終了する。一方、表示コンテンツを視認している通行人が存在すると判定した場合、車載装置制御部13は、撮影画像データを分析し、視認判定通行人のそれぞれについて年齢層、性別、通行人位置および通行人進行方位を判定し、通行人関連処理を終了する。
【0042】
年齢層に関し、本実施形態では、例えば小学生以下程度の第1年齢層、中高生程度の第2年齢層、第2年齢層を上回り40歳以下程度の第3年齢層、第3年齢層を上回り60歳以下程度の第4年齢層、および、60歳を上回る第5年齢層のように、予め年齢層が区分けされている。車載装置制御部13は、視認判定通行人の画像を画像処理により分析し、視認判定通行人の容姿や、服装、体の大きさ、体の各部部位のバランス等を踏まえて視認判定通行人の年齢層を判定する。また車載装置制御部13は、視認判定通行人の画像を画像処理により分析し、視認判定通行人の容姿や、服装、体の大きさ、体の各部部位のバランス等を踏まえて視認判定通行人の性別を判定する
【0043】
通行人位置とは、地図上の通行人の位置を意味し、緯度および経度によって表される。通行人位置は、厳密なものである必要はなく、視認判定通行人が位置していると推測される大体の位置でよい。車載装置制御部13は、撮影画像データを分析し、カメラ4に対する視認判定通行人の相対的な位置を導出すると共に、カメラ4に対する視認判定通行人の相対的な位置と、自車両位置関連情報が示す車両地図位置(車両の地図上の位置)とに基づいて通行人位置を判定する。なお通行人位置を判定する方法はどのような方法でもよく、例えば、測距用の特別なセンサ(一例としてステレオカメラまたはLiDAR)を利用して、より高い精度で判定する構成でもよく、車両地図位置に一定のマージンを加味するような、より単純な方法で判定する構成でもよい。
【0044】
通行人進行方位とは、通行人が進行する方位(絶対的な方位)を意味する。通行人方位は、厳密なものである必要はない。車載装置制御部13は、撮影画像データを分析し、視認判定通行人の画像に対して骨格検出による動作推定や姿勢推定を行って視認判定通行人が進んでいる大体の向きを検出すると共に、導出した車両進行方位を利用して、通行人進行方位を判定する。
【0045】
通行人関連処理を実行後、車載装置制御部13は、車両状況通知データを生成する。
図5は車両状況通知データの内容を示す図である。車両状況通知データには
図5で示す各情報が含まれる。車両IDは、対象車両2を識別するための識別情報であり、対象車両2ごとに一意な値が付与されている。日時情報は、現時点の日時(日付+時刻)を示す情報である。つまり日時情報は、注目タイミングの日時を示す情報である。表示コンテンツID情報は、注目タイミングにおいて対象車両ディスプレイ3に表示されているコンテンツのコンテンツIDである。車速情報は、注目タイミングにおける対象車両2の車速を示す情報である。車両地図位置情報は、注目タイミングにおける対象車両2の車両地図位置を示す情報である。走行リンク情報は、注目タイミングにおいて対象車両2が走行するリンクのリンクIDである。車両進行方位情報は、注目タイミングにおける対象車両2の車両進行方位を示す情報である。
【0046】
通行人関連情報は、視認有無フラグと、視認判定通行人情報とを含む。視認有無フラグは、注目タイミングにおける視認判定通行人の有無(つまり表示コンテンツを視認する通行人の有無)を示すフラグであり、視認判定通行人が存在することを示す値(以下「有値」という)と、視認判定通行人が存在しないことを示す値(以下「無値」という)との何れかの値をとる。車載装置制御部13は、通行人関連処理で視認判定通行人が存在すると判定した場合、視認有無フラグを有値とし、存在しないと判定した場合、視認有無フラグを無値とする。
【0047】
視認判定通行人情報は、視認有無フラグが無値の場合、ヌル値とされる。視認有無フラグが有値の場合、視認判定通行人情報は、視認判定通行人ごとの個別情報を有する。ある視認判定通行人に対応する個別情報は、その視認判定通行人の年齢層を示す年齢層情報と、その視認判定通行人の性別を示す性別情報と、その視認判定通行人の通行人位置を示す通行人位置情報と、その視認判定通行人の通行人進行方位を示す通行人進行方位情報とを有する。
【0048】
車両状況通知データを生成した後、車載装置制御部13は、車両状況通知データを管理サーバ1に送信する。車両状況通知データを管理サーバ1に送信するために必要な情報(管理サーバ1のアクセス先等)は、事前に登録されている。車両状況通知データの送信は、実際には例えば車両状況通知データの内容がJSONフォーマットに従ってボディ部に記述されたHTTPリクエストとして行われる(ただし、この方法に限られない)。
【0049】
以上が、車載装置制御部13が注目タイミングにおいて実行する処理である。以上の処理が行われる結果、コンテンツ表示走行を行っている対象車両2のそれぞれについて、車載装置7から管理サーバ1に対して所定周期で車両状況通知データが送信される。なお以上で説明した車載装置7の処理(特に画像処理)が、所定の機械学習手法(例えばディープラーニング)で学習されたモデルを利用して行われてもよいことは勿論である。
【0050】
車載装置7から車両状況通知データが送信されると管理サーバ1の管理部11は、車両状況通知データを受信する。ここでサーバ記憶部20には、対象車両2ごとに(=車両IDの種類ごとに)車両管理データベース30が記憶されている。管理部11は、受信した車両状況通知データの車両IDの値を認識し、車両管理データベース30のうち、認識した車両IDの値に対応する車両管理データベース30を特定する。次いで管理部11は、受信した車両状況通知データを特定した車両管理データベース30に登録する。この結果、ある対象車両2についての車両管理データベース30には、その対象車両2から受信した車両状況通知データが累積的に登録された状態となる。ただし1つの車両管理データベース30に登録可能な車両状況通知データの個数に上限を設け、管理部11が、新たに車両状況通知データを登録する際に、古い車両状況通知データから順番に消去する構成でもよい。
【0051】
次に管理サーバ1の処理について詳述する。管理サーバ1の管理部11は、対象車両2ごとの車両管理データベース30を監視し、現実空間において以下の第1対象状態と第2対象状態との何れかが出現したか否かを判別する。以下、第1対象状態および第2対象状態を総称して「対象状態」という。管理部11は、何れかの対象状態が出現したと判定した場合、出現した対象状態に応じた処理を実行する。以下、対象状態ごとに、どういった状態であるかを説明し、対象状態が出現したときに管理部11が実行する処理について説明する。
【0052】
<第1対象状態>
第1対象状態は、ある対象車両2の対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを通行人が視認したときに、その対象車両2の後方所定範囲に1台以上の対象車両2が走行しており、しかも後方所定範囲に位置する対象車両2の表示コンテンツは誰も視認していない状態である。対象車両2の後方所定範囲とは、対象車両2が走行している道路において、対象車両2を起点として対象車両2の進行向きとは逆向きに向かって所定距離の範囲を意味する。
【0053】
図6(A)は、第1対象状態の一例を示している。
図6(A)は対象車両2を含む車両および通行人が存在する現実空間を上から見た様子を単純化して模式的に示している。
図6(A)において符号J1~J4は、通行人を示している。他の図においても、アルファベットの「J」と数字との組み合わせからなる符号は通行人を示す。
図6(A)において符号K1~K4はそれぞれ対象車両2を示している。他の図においても、アルファベットの「K」と数字との組み合わせからなる符号は対象車両2を示す。
図6(A)において符号N1、N2はそれぞれ対象車両2ではない車両(以下「通常車両」という)を示している。他の図においても、アルファベットの「N」と数字との組み合わせからなる符号は通常車両を示している。図中で通常車両を示す矩形のブロックには、バツ印を記している。
図6(A)では、図中で明示しているように、図中で上に向かう向きが各車両の進行方向であり、この進行方向は北向きである。他の図についても必要な場合には図中に進行方向および方位を明示する。
【0054】
また以下では、コンテンツC1、コンテンツC2、コンテンツC3・・・というように各コンテンツを、「コンテンツ」という文言と、「アルファベットの「C」および数字の組み合わせからなる記号」との組み合わせによって表現することによって、相互に異なるコンテンツを区別する。そして
図6(A)において、対象車両2を表す矩形のブロックに、その対象車両2の対象車両ディスプレイ3にその時点で表示されているコンテンツの記号を示している。例えば
図6(A)において、対象車両K1には、記号「C1」が表示されているが、これは対象車両K1の対象車両ディスプレイ3にコンテンツC1が表示されていることを示している。他の図でも同様とする。
【0055】
また
図6(A)では、ある通行人がある対象車両2のコンテンツを視認している(視認しているとその対象車両2に搭載された車載装置7の車載装置制御部13に判定されている)状態を、その通行人からその対象車両2に向かう破線の矢印によって表現する。他の図でも同様とする。例えば
図6(A)では、通行人J1から対象車両K1に向かう破線の矢印が引かれているが、これは通行人J1が対象車両K1に表示されたコンテンツC1を視認している(そのように判定されている)ことを示す。一方、
図6(A)では通行人J2~J4からは破線の矢印が出ていないが、これは通行人J2~J4が何れの対象車両2の表示コンテンツも視認していないことを示している。
【0056】
図6(A)は、対象車両K1に表示されたコンテンツC1を通行人J1が視認している状態である。また対象車両K1についての後方所定範囲内には対象車両K2、対象車両K3および対象車両K4の3台の対象車両が順番に走行している。これら対象車両K2~K4に表示された各コンテンツについては、誰も視認していない。従って
図6(A)で示す対象状態は、第1対象状態である。なお対象車両K2にはコンテンツC2が、対象車両K3にはコンテンツC3が、対象車両K4にはコンテンツC4がそれぞれ表示されている。
【0057】
管理部11は、現実空間において第1対象状態が出現したことを以下のようにして判定する。すなわち、各対象車両2の車両管理データベース30に直近で登録された車両状況通知データの車両地図位置情報、走行リンク情報、車両進行方位情報および視認有無フラグに基づいて、以下の第1条件が成立したか否かを監視する。(1)一の対象車両2について視認有無フラグが有値である、(2)当該一の対象車両2の後方所定範囲に、1つ以上の他の対象車両2が存在する、(3)当該一の対象車両2の後方所定範囲内に存在する1つ以上の他の対象車両2のそれぞれの視認有無フラグは無値である。
【0058】
(2)に関し、一の対象車両2の後方所定範囲に他の対象車両2が存在するか否かは、(a)当該一の対象車両2と当該他の対象車両2とが走行する道路のリンクIDが共通するか否か、(b)当該一の対象車両2と当該他の対象車両2との車両進行方位が同一性を有するか否か(互いの車両進行方位が一定の範囲内にあれば同一性を有すると判断されるものとする)、および、(c)当該他の対象車両2の車両地図位置が当該一の対象車両2の車両地図位置に対して、当該一の対象車両2の車両進行方位(進行方向)と逆向き側であって、当該一の対象車両2の車両地図位置を基点として一定の距離内にあるか否かにより判別することが可能である。
【0059】
図6(A)では、対象車両K1~K4を表すブロックと並べて、各対象車両K1~K4についての視認有無フラグの値、走行リンク情報の値、車両地図位置情報の値および車両進行方位情報の値を表示している。なお対象車両K1の車両地図位置に対して、対象車両K2~K4のそれぞれの車両地図位置は一定の距離(後方所定範囲に対応する距離)内に位置しているものとする。
【0060】
図6(A)の例では、(1)対象車両K1について視認有無フラグが有値である、(2)対象車両K1の後方所定範囲に、1つ以上の他の対象車両K2~K4が存在する、(3)対象車両K1の後方所定範囲内に存在する1つ以上の他の対象車両K2~K4のそれぞれの視認有無フラグは無値であり、第1条件が成立している。従って管理部11は、現実空間において
図6(A)で示す状態となったときに、第1条件が成立したことを検出し、第1対象状態が出現したと判定する。
【0061】
以下の第1対象状態の説明では、視認有無フラグが有値の対象車両2を「起点車両」といい、起点車両の後方所定範囲内の対象車両2を「後方車両」という。第1対象状態が出現したと判定した場合、管理部11は、以下の処理を実行する。すなわち管理部11は、後方車両のそれぞれに対して、起点車両に表示されているコンテンツと同じコンテンツを表示するよう指示する。具体的な処理として、まず管理部11は、起点車両に係る車両状況通知データに基づいて、起点車両の表示コンテンツのコンテンツIDを認識する。次いで管理部11は、後方車両のそれぞれの車載装置7の車載装置制御部13に対して、起点車両に表示されているコンテンツのコンテンツIDを含み、表示コンテンツを、そのコンテンツIDのコンテンツへと切り替えることを指示する制御データ(一例としてHTTPレスポンス)を送信する。
【0062】
後方車両のそれぞれの車載装置7の車載装置制御部13は、管理部11による指示に応じて、車載装置コンテンツデータベース28を利用して表示コンテンツを切り替える。表示コンテンツを切り替えた後、後方車両のそれぞれの車載装置7の車載装置制御部13は、一定時間以上経過したときに表示コンテンツを、切り替え前の表示コンテンツへと戻す。一定時間は、通行人が起点車両の表示コンテンツを視認したときに起点車両が位置していた場所を後方車両が超えるのに十分な時間とされる。ただし、表示コンテンツの切り替え後に後方車両に係る車載装置制御部13が実行する処理はこれに限られるものではない。
【0063】
例えば
図6(A)の例では、管理部11は、対象車両K2~K4のそれぞれの車載装置制御部13に対して、表示コンテンツをコンテンツC1へと切り替えることを指示する。この指示に応じて対象車両K2~K4のそれぞれの車載装置制御部13は、表示コンテンツをコンテンツC1へと切り替える。この結果、
図6(B)で示すように対象車両K2~K4にコンテンツC1が表示された状態となる。
【0064】
第1対象状態に関し、以上の処理が行われることにより、以下の効果を奏する。すなわち対象車両2は、同じ位置にずっと留まるわけではなく道路上を移動する。従ってある対象車両2に表示されたコンテンツをある通行人が視認し、興味を持ったときに、その通行人がコンテンツの内容を十分に把握しないまま対象車両2が移動してしまい、その後、コンテンツを視認できなくなる、という事態が生じ得る。この場合、通行人がそのコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう。一方、本実施形態によれば、ある対象車両2に表示されたコンテンツをある通行人が視認したときに、第1対象状態であれば、その対象車両2に続く他の対象車両2にも同じコンテンツが表示されることになり、通行人は、同一のコンテンツを引き続き視認し内容を確認することができる。従って通行人がそのコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう可能性を低減することができる。
【0065】
<第1対象状態に関する第1変形例>
次に第1対象状態に関する第1変形例について説明する。上記実施形態では管理部11は、第1対象状態となったことを検出した場合、起点車両から後方所定範囲内に存在する後方車両の表示コンテンツを切り替えた。一方、第1変形例に係る管理部11は、第1対象状態となったことを検出した場合、起点車両の後方の所定台数の対象車両2の表示コンテンツを切り替える。例えば管理部11は、
図6(A)の例において所定台数が2台と定められている場合には、対象車両K2、K3の表示コンテンツを切り替える。また例えば管理部11は、
図6(A)の例において所定台数が3台と定められている場合には、対象車両K2~K4の表示コンテンツを切り替える。以上の構成でも、上記実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
【0066】
<第1対象状態に関する第2変形例>
次に第1対象状態に関する第2変形例について説明する。上記実施形態では管理部11は、第1対象状態となったことを検出した場合、すぐに後方所定範囲内に位置する後方車両の表示コンテンツを切り替えた。一方、第2変形例に係る管理部11は、通行人が起点車両の表示コンテンツを所定時間以上、視認した場合に、後方車両の表示コンテンツを切り替える。
図6(A)を援用して具体的な処理について説明すると、管理部11は、
図6(A)の状態となったことを検出したときに、後方車両の表示コンテンツをすぐに切り替えるのではなく、起点車両たる対象車両K1から所定周期で入力する車両状況通知データを監視する。そして、視認有無フラグが予め定められた所定時間(例えば、3秒)以上、継続して有値であった場合(つまり、視認判定通行人が表示コンテンツを所定時間以上、継続して視認した場合)にのみ、後方車両の表示コンテンツを切り替える。
【0067】
ここで、通行人がコンテンツを視認した場合であっても興味を持たなかった場合は、すぐにコンテンツを見るのをやめると想定される。一方で、通行人がコンテンツに興味を示した場合は、すぐにコンテンツを見るのをやめるのではなく、継続してコンテンツを見るものと想定される。これを踏まえ第2変形例によれば、起点車両に表示されたコンテンツを通行人が単に視認したのではなく、興味を抱いたと想定されるような態様で視認した場合にのみ、後方車両のコンテンツが切り替わる。このため、通行人が起点車両に表示されたコンテンツに興味を示していないのにもかかわらず、後方車両のコンテンツが切り替わってしまうことを防止できる。
【0068】
<第1対象状態に関する第3変形例>
次に第1対象状態に関する第3変形例について説明する。上記実施形態では管理部11は、第1対象状態となったことを検出した場合、一定の大きさの後方所定範囲内に存在する後方車両の表示コンテンツを切り替えた。一方、第3変形例に係る管理部11は、通行人が起点車両の表示コンテンツの視認を開始してから終了するまでの時間(以下「視認時間」という)と、起点車両の車速との組み合わせに応じて後方所定範囲の大きさを変更する。一方で、管理部11は、車速が一定以上の場合には、後方車両の表示コンテンツを切り替えない。より具体的には、管理部11は、起点車両の対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを通行人が視認した視認時間および起点車両の車速に応じて、視認時間が短いほど後方所定範囲が大きくなるようにすると共に、車速が速いほど後方所定範囲が大きくなるようにする。以下、本変形例に係る管理部11の処理について詳述する。
【0069】
本変形例に係る管理部11は、第1対象状態となったときにすぐに後方車両の表示コンテンツを切り替えるのではなく、起点車両に係る車両状況通知データの車速情報を参照し、車速情報が示す車速を認識する。ここで認識した車速は、通行人が起点車両の表示コンテンツを見始めたときの起点車両の車速であり、通行人が表示コンテンツを視認しているときの起点車両の車速とみなすことができる。次いで管理部11は、予め定められた2つの閾値により、認識した車速が低速であるか中速であるか高速であるか(低速<中速<高速)を判別する。つまり本変形例では、車速に関して低速、中速および高速の3つの分類が定義されており、管理部11は、起点車両の車速が何れの分類に属するか判別する。
【0070】
更に管理部11は、通行人が起点車両の表示コンテンツを視認した視認時間が「長時間」であるか「短時間」であるかを判別する。具体的には管理部11は、起点車両に係る車両状況通知データの視認有無フラグを継続して監視し、視認有無フラグが有値となった後、予め定められた閾値が経過する前に無値となった場合「短時間」であると判定し、当該閾値を経過した時点で有値であった場合「長時間」であると判定する。つまり本変形例では、視認時間に関して長時間および短時間の2つの分類が定義されており、管理部11は、視認時間が何れの分類に属するか判別する。
【0071】
図7は、車速の分類と視認時間の分類との組み合わせごとに管理部11が実行する処理を簡易的に示した図である。
図7で示すように管理部11は、視認時間の分類が長時間であり車速の分類が低速の場合、後方所定範囲の大きさを最も小さくする(
図7では「小」と表現)。つまり視認時間の分類が長時間であり車速の分類が低速の場合、他の組み合わせの場合と比較して後方所定範囲の大きさが最も小さい。なお第1変形例を応用して管理部11が所定台数分の後方車両の表示コンテンツを切り替える構成としている場合、管理部11は、所定台数の値を最も小さくする。
【0072】
これにより以下の効果を奏する。すなわち視認時間の分類が長時間であり、車速の分類が低速である場合、通行人は起点車両の表示コンテンツを十分な時間、じっくりと確認できたと想定される。この場合、通行人は起点車両の表示コンテンツの内容を十分に把握し或いはほとんど把握していると考えられるため、起点車両と同じコンテンツを表示させる後方車両は限定的でよく、また同じコンテンツを表示させる後方車両を限定的とすることにより、表示コンテンツを切り替える必要のない対象車両2についてまで表示コンテンツが切り替わってしまうことを防止できる。なお以上の趣旨を鑑みて、視認時間の分類が長時間であり、車速の分類が低速である場合、管理部11が、後方車両の表示コンテンツを切り替えない構成でもよい。
【0073】
また
図7で示すように管理部11は、視認時間の分類が長時間であり車速の分類が中速の場合、後方所定範囲の大きさを、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも大きく、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも小さくする(
図7では「中」と表現)。なお第1変形例を応用して管理部11が所定台数分の後方車両の表示コンテンツを切り替える構成としている場合、管理部11は、所定台数の値を、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも大きく、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも小さくする。
【0074】
これにより以下の効果を奏する。すなわち視認時間の分類が長時間であり、車速の分類が中速である場合、通行人は起点車両の表示コンテンツを「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりはじっくりと確認できなかったものの、ある程度は確認でき、コンテンツの内容をある程度、把握していると考えられる。一方、「視認時間:短時間、車速:中速」のときと比較すると、通行人は起点車両の表示コンテンツの内容をより的確に把握できていると想定される。以上より、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも後方所定範囲を大きくし、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも後方所定範囲を小さくすることによって、通行人に対してより確実に起点車両の表示コンテンツの内容を把握できる機会を与えると共に、不必要に多くの対象車両2について表示コンテンツが切り替わってしまうことを防止できる。
【0075】
また
図7で示すように管理部11は、視認時間の分類が短時間であり車速の分類が低速の場合、後方所定範囲の大きさを、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも大きく、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも小さくする(
図7では「中」と表現)。なお第1変形例を応用して管理部11が所定台数分の後方車両の表示コンテンツを切り替える構成としている場合、管理部11は、所定台数の値を、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも大きく、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも小さくする。
【0076】
これにより以下の効果を奏する。すなわち視認時間の分類が短時間であり、車速の分類が低速である場合、通行人は起点車両の表示コンテンツを「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりはじっくりと確認できなかったものの、ある程度は確認でき、コンテンツの内容をある程度、把握していると考えられる。一方、「視認時間:短時間、車速:中速」のときと比較すると、通行人は起点車両の表示コンテンツの内容をより的確に把握できていると想定される。以上より、「視認時間:長時間、車速:低速」のときよりも後方所定範囲を大きくし、かつ、「視認時間:短時間、車速:中速」のときよりも後方所定範囲を小さくすることによって、通行人に対してより確実に起点車両の表示コンテンツの内容を把握できる機会を与えると共に、不必要に多くの対象車両2について表示コンテンツが切り替わってしまうことを防止できる。
【0077】
また
図7で示すように管理部11は、視認時間の分類が短時間であり車速の分類が中速の場合、後方所定範囲の大きさを、他の組み合わせの場合と比較して大きくする。つまり視認時間の分類が短時間であり車速の分類が中速の場合、他の組み合わせの場合と比較して後方所定範囲の大きさが最も大きい。なお第1変形例を応用して管理部11が所定台数分の後方車両の表示コンテンツを切り替える構成としている場合、管理部11は、所定台数の値を、他の組み合わせの場合と比較して大きくする。
【0078】
これにより以下の効果を奏する。すなわち視認時間の分類が短時間であり、車速の分類が中速である場合、通行人は起点車両の表示コンテンツを多少、確認できたものの、十分には確認できず、コンテンツの内容の把握が不十分であると考えられる。以上より「視認時間:短時間、車速:中速」の場合、後方所定範囲を最も大きくすることによって通行人に対して、より確実に起点車両の表示コンテンツの内容を把握できる機会を与えることを防止できる。
【0079】
また
図7で示すように管理部11は、車速の分類が高速の場合(=車速が一定以上の場合)、視認時間の分類にかかわらず、後方車両の表示コンテンツの切り替えを行わない。これは起点車両の車速が高速の場合、起点車両の表示コンテンツを通行人が視認したとしても、興味を持つ程度に内容を把握できるとは考えられず、この場合、後方車両の表示コンテンツを切り替えないことにより、不必要な表示コンテンツの切り替えの発生を防止できるからである。
【0080】
車速の分類が高速の場合、管理部11は、後方車両の表示コンテンツの切り替えを行わない一方、以下の処理を実行する。すなわち管理部11は、起点車両に係る車両状況通知データの通行人位置情報および通行人進行方位情報を参照し、起点車両の表示コンテンツを視認した通行人の通行人位置および通行人進行方位を認識する。次いで管理部11は、サーバ記憶部20に記憶されたデジタルサイネージ管理データベース32を参照する。
【0081】
デジタルサイネージ管理データベース32は、デジタルサイネージ8の管理に用いるデータベースであり、デジタルサイネージ8ごとにレコードを有する。1件のレコードは少なくとも、デジタルサイネージを識別するためのデジタルサイネージIDと、デジタルサイネージの地図上の位置(以下、「デジタルサイネージ地図位置」という)を示すデジタルサイネージ位置情報とを含んでいる。
【0082】
管理部11は、参照したデジタルサイネージ管理データベース32の各レコードのデジタルサイネージ位置情報に基づいて、起点車両の表示コンテンツを視認した通行人の通行人地図位置を中心とする所定範囲内の領域であって、通行人地図位置を起点として通行人進行方位に向かう方面(通行人の進行方向)にデジタルサイネージ8が存在するか否かを判別する。
【0083】
このような領域にデジタルサイネージ8が存在する場合、管理部11は、そのデジタルサイネージ8に、起点車両の表示コンテンツのコンテンツIDを含み、デジタルサイネージディスプレイ9に表示されるコンテンツを、そのコンテンツIDのコンテンツへと切り替えることを指示する制御データを送信する。
【0084】
デジタルサイネージ8のデジタルサイネージ制御部15は、制御データを受信すると、デジタルサイネージコンテンツデータベース33を参照し、デジタルサイネージディスプレイ9に表示されるコンテンツを切り替える。この結果、デジタルサイネージ8には、起点車両の表示コンテンツと同じコンテンツが表示された状態となる。
【0085】
これにより以下の効果を奏する。すなわち車速の分類が高速の場合、後方車両の表示コンテンツの切り替えが行われないため、通行人は、後方車両の表示コンテンツによって、起点車両に表示されていた表示コンテンツを確認することはない(ただし、たまたま後方車両の表示コンテンツと起点車両の表示コンテンツとが同一と言うことはあり得る)。一方、上記構成によれば、通行人が通行を進めていく過程で視認する可能性のあるデジタルサイネージ8のデジタルサイネージディスプレイ9に起点車両の表示コンテンツと同一のコンテンツが表示されることになる。このため、通行人に、起点車両に表示されていたコンテンツを改めて提供する可能性を確保できる。
【0086】
なお、第3変形例について、管理部11は、
図7の表に厳密に従って処理を実行する必要はない。例えば、視認時間に関する分類或いは車速に関する分類はもっと細かくてもよい。すなわち、管理部11は、一の車両のディスプレイに表示された一のコンテンツを通行人が視認した視認時間および当該一の車両の車速に応じて、視認時間が短いほど後方所定範囲が大きくなるか、または、コンテンツを切り替える台数を示す所定台数の値が大きくなるようにすると共に、車速が速いほど後方所定範囲が大きくなるかまたは所定台数の値が大きくなるようにすればよい。
【0087】
<第1対象状態に関する第4変形例>
上記実施形態では、第1対象状態は、一人の通行人が起点車両の表示コンテンツを視認している状態であった。この点について一人ではなく、所定人数(ただし所定人数≧二人)以上の人数の通行人が起点車両の表示コンテンツを視認している状態を第1対象状態としてもよい。この構成によれば、二人以上の通行人が起点車両の表示コンテンツを視認しており、後方車両の表示コンテンツを切り替えることによって、効果的により多くの人間にコンテンツを訴求できる場合にのみ、後方車両の表示コンテンツの切り替えが行われることになり、不必要に表示コンテンツの切り替えが行われることを抑制できる。
【0088】
<第1対象状態に関する第5変形例>
上記実施形態では、管理部11は、第1対象状態であることを検出したときに、一定の大きさの後方所定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを切り替えた。この点に関し管理部11が、起点車両の後方に位置する対象車両2の車速と車両地図位置とを考慮して、所定時間以内に通行人による表示コンテンツの視認が開始されたときの起点車両の位置に到達し得る対象車両2についてのみ表示コンテンツの切り替えを行う構成でもよい。この構成によれば通行人が視認可能な位置に所定時間以内に到達することができ、従って、通行人が起点車両に続いて引き続き表示コンテンツを視認する可能性が十分にある対象車両2についてのみ表示コンテンツの切り替えを行うことができる。
【0089】
<第1対象状態に関する第6変形例>
上記実施形態では、管理部11は、後方車両の表示コンテンツを、起点車両の表示コンテンツと同一のコンテンツへと切り替えた。この点に関し管理部11が、後方車両の表示コンテンツを、起点車両の表示コンテンツと同一のコンテンツ(これも起点車両の表示コンテンツと同一性を有するコンテンツの1つである)へと切り替えるのではなく、起点車両の表示コンテンツと同一性を有するコンテンツ(ただし、起点車両の表示コンテンツと全く同じものを除く)ものへと切り替える構成、或いは、起点車両の表示コンテンツと連続性のあるコンテンツへと切り替える構成でもよい。
【0090】
起点車両の表示コンテンツと同一性を有するコンテンツとは、起点車両の表示コンテンツと形式的な点で相違はあるものの、実質的な内容が同じコンテンツを意味し、例えば同じ商品を広告する複数のバージョンのコンテンツが作られた場合の、各コンテンツである。また起点車両の表示コンテンツと連続性を有するコンテンツとは、起点車両の表示コンテンツと意味のあるつながりをもったコンテンツを意味し、例えば複数のコンテンツが何らかのストーリーに沿って異なる内容の情報を提示している場合の各コンテンツである。
<第1対象状態に関する第7変形例>
上記実施形態では、一の対象車両2の後方所定範囲に他の対象車両2が存在することの条件に「(a)当該一の対象車両2と当該他の対象車両2とが走行する道路のリンクIDが共通すること」という条件が含まれていた。この点に関し、当該他の対象車両が走行するリンクと、当該一の対象車両2が走行するリンクとが全く同じであることを条件とするのではなく、例えば、当該他の対象車両が走行するリンクが、当該一の対象車両2が走行するリンクと同じであるか、ノードを挟んで連続することを条件としてもよい。
【0091】
<第1対象状態に関するその他の事項>
以上、第1対象状態に関して複数の変形例を説明したが、2つ以上の変形例を組み合わせて実施形態に適用してもよいことは勿論である。
【0092】
<第2対象状態>
次に第2対象状態について説明する。第2対象状態は、ある道路上の一定範囲内に複数の対象車両2が存在しているときに(対象車両2と対象車両2との間に通常車両が存在していてもよい)、異なる複数の対象車両2の表示コンテンツを異なる複数の通行人が視認している状態である。一定範囲内に存在する複数の対象車両2のうち、表示コンテンツが視認されていない対象車両2が存在していてもよい。
【0093】
以下では、第2対象状態について説明の簡単のため、一定範囲内に複数の対象車両2が存在しており、そのうち2台の対象車両2の表示コンテンツをそれぞれ異なる通行人が視認している状態とする。そして通行人が視認する2つの対象車両2のうち、進行方向側に位置する対象車両を「第1対象車両」といい、進行方向と逆側に位置する対象車両を「第2対象車両」という。また第1対象車両の表示コンテンツを「第1コンテンツ」といい、第1コンテンツを視認する通行人を「第1通行人」という。また第2対象車両の表示コンテンツを「第2コンテンツ」といい、第2コンテンツを視認する通行人を「第2通行人」という。
【0094】
図8は、第2対象状態の一例を示している。
図8では6台の対象車両K1~K6が道路上を並んで走行している。対象車両K1~K6のそれぞれは、一定範囲内に存在している。そして対象車両K1(第1対象車両に相当)に表示されたコンテンツC1を通行人J1が視認し、対象車両K2(第2対象車両に相当)に表示されたコンテンツC2を通行人J2が視認している状態である。対象車両K3~K6の表示コンテンツは誰も視認していない。以上より
図8で示す対象状態は、第2対象状態である。
【0095】
管理部11は、現実空間において第2対象状態が出現したことを、第1対象状態と同様、各対象車両2の車両管理データベース30の車両状況通知データに基づいて検出する。簡単に説明すると、管理部11は、車両状況通知データに基づいて複数の対象車両2が同一の道路上(共通するリンクIDのリンク)において一定範囲内で同じ向きに走行していること、および、複数の対象車両2の表示コンテンツについてそれぞれ異なる通行人が視認していることが検出された場合、第2対象状態が出現したと判定する。
【0096】
第2対象状態が出現したと判定した場合、管理部11は、以下の処理を実行する。すなわち管理部11は、第1コンテンツを視認する第1通行人について、第1コンテンツと第1通行人とのマッチ度を導出し、更に第2コンテンツを視認する第2通行人について、第2コンテンツと第2通行人とのマッチ度を導出する。あるコンテンツとある通行人とのマッチ度とは、その通行人の年齢層および性別を考慮して、そのコンテンツのターゲットとその通行人とがどれだけマッチしているか(どれだけ親和性が高いか)の度合いを示す値である。
【0097】
管理部11は、あるコンテンツとある通行人とのマッチ度を以下の方法で導出する。すなわち本実施形態では、コンテンツのそれぞれについて、通行人の年齢層と性別との組み合わせごとのマッチ度が予め定義されたテーブルが用意されている。これを踏まえ管理部11は、車両状況通知データの表示コンテンツID情報と、年齢層情報(通行人の年齢層を示す情報)と、性別情報(通行人の性別を示す情報)とを取得し、上述したテーブルを参照してマッチ度を導出する。
【0098】
次いで管理部11は、一定範囲内に存在する対象車両の表示コンテンツをマッチ度が最も高いコンテンツへと切り替える。より具体的には管理部11は、第1コンテンツと第1通行人とのマッチ度の方が、第2コンテンツと第2通行人とのマッチ度よりも高い場合、一定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを第1コンテンツに切り替える。一方、管理部11は、第2コンテンツと第2通行人とのマッチ度の方が、第1コンテンツと第1通行人とのマッチ度よりも高い場合、一定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを第2コンテンツに切り変える。
【0099】
例えば
図8において、対象車両K1に係るコンテンツC1と通行人J1とのマッチ度の方が、対象車両K2に係るコンテンツC2と通行人J2とのマッチ度よりも高かったとする。この場合、管理部11は
図9(A)で示すように、対象車両K2~K6の表示コンテンツをコンテンツC1に切り替える。また例えば
図8において、対象車両K2に係るコンテンツC2と通行人J2とのマッチ度の方が、対象車両K1に係るコンテンツC1と通行人J1とのマッチ度よりも高かったとする。この場合、管理部11は
図9(B)で示すように、対象車両K1、K3~K6の表示コンテンツをコンテンツC2に切り替える。
【0100】
なお第1コンテンツについてのマッチ度と第2コンテンツについてのマッチ度とが同等の場合、管理部11は、一定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを、第1コンテンツと第2コンテンツとのうちランダムに定めた一方のコンテンツへと切り替える。ただしマッチ度が同等の場合に管理部11が実行する処理はこれに限られず、例えば、切り替えを行わないようにしてもよい。
【0101】
第2対象状態に関して以上の処理が行われることにより、以下の効果を奏する。すなわち上記構成によれば、異なる複数の対象車両2の表示コンテンツをそれぞれ異なる通行人が視認している場合、一定範囲内の対象車両2について、マッチ度が高い方の表示コンテンツに切り替わることになる。このためマッチ度が低い方の通行人が後方の対象車両2の表示コンテンツを利用して同じコンテンツを引き続き視認するということはできないものの、マッチ度が高い方の通行人が後方の対象車両2の表示コンテンツを利用して同じコンテンツを引き続き視認できる状態を構築できる。これにより効果的に、コンテンツの訴求効果を高めることができる。
【0102】
以上、2つの異なる対象車両2のそれぞれの表示コンテンツを、それぞれ異なる通行人が視認した場合を例として第2対象状態のときの管理部11の処理を説明した。ただし管理部11は、3台以上の対象車両2の表示コンテンツをそれぞれ異なる通行人が視認した場合も同様の処理を実行する。すなわち管理部11は、第2対象状態を検出したときに、一定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを最もマッチ度の高いコンテンツへと切り替える。
【0103】
<第2対象状態に関する第1変形例>
次に第2対象状態に関する第1変形例について説明する。上記実施形態では管理部11は、第2対象状態となったことを検出した場合、一定範囲内に存在する対象車両2の表示コンテンツを最もマッチ度の高いコンテンツへと切り替えた。一方、第1変形例に係る管理部11は、第2対象状態が出現したときに一の対象車両2に表示されていた一のコンテンツを通行人が視認していたとして、そのときに当該一の対象車両2が位置していた場所に、後方の他の対象車両2が位置したときに当該一のコンテンツと同じコンテンツが当該他の対象車両2に表示されるように、各対象車両2の表示コンテンツの切り替えを制御する。
【0104】
例えば
図10(A)で示す態様で第2対象状態が出現したとする。
図10(A)では通行人J1が対象車両K1に表示されたコンテンツC1を視認し、かつ、対象車両K1の後方の対象車両K3に表示されたコンテンツC3を通行人J2が視認している。この場合、管理部11は、
図10(A)の時点で対象車両K1が位置している場所L1に対象車両K1の後方の対象車両2が位置したときに、コンテンツC1が表示されるようにする。更に管理部11は、
図10(A)の時点で対象車両K3が位置している場所L2に対象車両K3の後方の対象車両2が位置したときに、コンテンツC3が表示されるようにする。
【0105】
このような処理が行われる結果、
図10(B)で示すように、
図10(A)の状態から各対象車両2の進行が進み、場所L1に対象車両K2が位置すると共に、場所L2に対象車両K4が位置すると、対象車両K2にコンテンツC1が表示されると共に、対象車両K4にコンテンツC3が表示される。なお管理部11は、場所L1に対象車両K2が位置したことを以下のようにして検出する。すなわち管理部11は、視認有無フラグが有値となったときの対象車両K1に係る車両状況通知データの車両地図位置情報が示す位置を認識し、この位置を中心とした一定の領域を場所L1として記憶しておく。そして管理部11は、対象車両K2に係る車両状況通知データに基づいて随時、対象車両K2の車両地図位置を把握し、対象車両K2の車両地図位置が場所L1に至ったときに、そのことを検出する。管理部11は、任意の対象車両2が場所L1或いは場所L2に至ったことを同様の方法で検出する。管理部11は、対象車両K2が場所L1に至ったことを検出したときに対象車両K2の車載装置7に制御データを送信し、表示コンテンツを切り替えさせる。更に
図10(C)で示すように、
図10(B)の状態から各対象車両2の進行が進み、場所L1に対象車両K3が位置すると共に、場所L2に対象車両K5が位置すると、対象車両K3にコンテンツC1が表示されると共に、対象車両K5にコンテンツC3が表示される。
【0106】
この構成によれば、第2対象状態となったときに各通行人が同一のコンテンツを引き続き視認し内容を確認することができる。従って通行人がそのコンテンツの内容を把握できないままとなってしまう可能性をより効果的に低減することができる。
【0107】
以上、第2対象状態に関する第1変形例を説明したが、第1対象状態に関する変形例の1つ以上の組み合わせを実施形態(或いは第2対象状態に関する変形例)に適用可能な場合には、適用してもよいことは勿論である。
【0108】
次に管理サーバ1による管理方法についてフローチャートを用いて説明する。
図11は、本実施形態に係る管理サーバ1の主要な処理を示すフローチャートである。
図11で示すように、管理サーバ1の管理部11は、一の対象車両2が走行し、かつ当該一の対象車両2の後方で他の対象車両2が走行しているときに、当該一の対象車両2の対象車両ディスプレイ3に表示された一のコンテンツを視認する通行人が存在することを判定する(ステップSA1)。管理サーバ1の管理部11は、このような通行人が存在する場合、当該他の対象車両2の対象車両ディスプレイ3に当該一のコンテンツと同一性或いは連続性のあるコンテンツが表示されるようにする(ステップSA2)。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0110】
例えば、カメラ4の撮影画像データに基づいて車載装置制御部13が実行するとした処理を管理部11が実行する構成でもよい。より詳細には、上記実施形態では、管理部11は、対象車両2に搭載され、車外を撮影するカメラ4の撮影画像データの分析結果を取得するすることによって、対象車両2の対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認する通行人が存在するか否かを判別した。この点に関し、車載装置制御部13が、カメラ4の撮影画像データを分析して得られる情報に代えて、撮影画像データを管理部11に送信する。そして、管理部11が撮影画像データを分析し、各種情報を取得し、また、対象車両2の対象車両ディスプレイ3に表示されたコンテンツを視認する通行人が存在するか否かを判別する構成でもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 管理サーバ(管理装置)
2 対象車両(車両)
3 対象車両ディスプレイ(ディスプレイ)
4 カメラ
5 管理システム
7 車載装置
8 デジタルサイネージ
11 管理部